JP4836824B2 - 金型取付用治具 - Google Patents

Description

本発明は、例えば電子部品等の精密部品のプレス金型装置のスライドと上型との間に設けられる金型取付用治具に関する。

従来、図７，図８に示すように、プレス金型装置は、ボルスター６１に固定された下型６２と、下型６２に対して上下動自在な上型６３とを有している。上型６３は、上下方向に摺動可能に、ブッシュ６４とガイドポスト６５とにより精密に位置決めされている。

また、上型６３はフランジシャンク６６を介してプレス機のスライド６７に取付けられている。フランジシャンク６６は、ラム取付部６８と金型取付部６９とからなり、この分離部がボール継手７０によって連結されている。ラム取付部６８はスライド６７に固定されている。金型取付部６９は、上型６３に固定されており、スライド６７のシャンク取付部の精度やスライド６７のボルスター６１に対する直角度といった金型に及ぼす影響をボール継手７０の球面部の滑りによって吸収している。さらに、プレス稼動中のスライド６７の動的変化に対しても、その変化を絶えず吸収することで、金型への悪影響を防止していた（下記特許文献１参照）。
特開平５―２６１６００

しかしながら、前記従来の構成では、上型６３に負荷される既存プレス機のスライド６７からの荷重Ｆはフランジシャンク６６と上型６３との取付け部分の一箇所Ａで集中して受けられる。これにより、上型６３の一箇所Ａが圧力を受けて圧縮され、図７の仮想線で示すように、上型６３に反り等の変形が発生する。このため、一枚のプレス材料７１で複数個の同じプレス製品をプレス加工によって製造する場合、上型６３の荷重Ｆを受ける一箇所Ａの下部に位置するプレス製品が強く加圧され、一箇所Ａから横方向へ離れるに従って弱い圧力で加圧される現象が発生し、加圧のムラやプレス製品の寸法のバラツキが発生するといった問題がある。特に、近年の精密部品用のプレス金型装置などでは製品のマイクロメートル単位での高精度化および高品質化が求められているが、前記のような加圧のムラやプレス製品の寸法のバラツキの発生により、プレス製品の高精度化および高品質化の要求に対して十分に応じられないといった問題がある。

本発明は、上型の変形の発生を抑制してプレス製品のバラツキを防止し、金型装置の寿命を長期化することができる金型取付用治具を提供することを目的とする。

前記目的を達成するために、本第１発明は、下型と開閉自在な上型とを有するプレス金型装置のスライドと上型との間に設けられる金型取付用治具であって、
スライドと上型との間に配置された中間板と、スライドと中間板とを連結する単数個の上部シャンクと、中間板と上型とを連結するとともに中間板の変形を吸収する複数個の下部連結装置とを有し、
上部シャンクは、スライド側に取付けられた第１の取付部材と、中間板側に取付けられた第２の取付部材と、第１の取付部材と第２の取付部材とが鉛直軸心に対して傾斜するのを許容する球面部とを有し、
各下部連結装置は上部シャンクに対して横方向に振り分けられて配置されているものである。

これによると、上部シャンクの第１の取付部材と第２の取付部材とが、球面部によって、鉛直軸心に対し傾斜することを許容される。このため、スライドとボルスターとの平行度の誤差を上部シャンクによって吸収することができる。

スライドを作動させて上型を下動させて閉じる場合、上型に負荷されるスライドからの荷重は、先ず、上部シャンクと中間板との取付け部分の一箇所で集中して受けられ、次に、中間板から下部連結装置と上型との複数箇所の取付け部分に分散して受けられる。これにより、上型の変形を抑制することができ、このため、プレス製品に負荷される圧力を均一に保つことができ、プレス製品のバラツキを防止することができる。また、金型装置の寿命を長期化することができ、既存のプレス機に対して高い汎用性がある。

尚、前記上型に負荷されるスライドからの荷重によって中間板に反り等の変形が発生しても、このような中間板の変形は下部連結装置により吸収されるため、スライドからの荷重を均一に上型の複数箇所に分散させることができる。

本第２発明は、第１の取付部材と第２の取付部材とは上下方向において係合し、
上部シャンクの第１の取付部材と第２の取付部材とのいずれか一方の取付部材は凹部を有し、他方の取付部材は上下方向から凹部に嵌め込まれた突部を有し、
球面部は突部の先端に形成されて凹部の奥端面に接触しているものである。

本第３発明は、各下部連結装置はそれぞれ、上部シャンクと同じ構成を有する下部シャンクであるものである。
本第４発明は、各下部連結装置はそれぞれ弾性体であるものである。

本第５発明は、中間板はスライドと上型との間に上下複数層設けられ、
上下で相対向する中間板間を連結するとともに中間板の変形を吸収する複数個の中間部連結装置が設けられているものである。

以上のように本発明によると、上型を閉じる場合、上型に負荷されるスライドからの荷重は、先ず、上部シャンクと中間板との取付け部分の一箇所で集中して受けられ、次に、中間板から下部連結装置と上型との複数箇所の取付け部分に分散して受けられる。これにより、上型の変形を抑制することができ、プレス製品に負荷される圧力を均一に保つことができ、プレス製品のバラツキを防止することができる。また、金型装置の寿命を長期化することができ、既存のプレス機に対して高い汎用性がある。

尚、前記上型に負荷されるスライドからの荷重によって中間板に反り等の変形が発生しても、このような中間板の変形は下部連結装置により吸収されるため、スライドからの荷重を均一に上型の複数箇所に分散させることができる。

以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
（実施の形態１）
先ず、実施の形態１を図１〜図３を参照しながら説明する。

１はＣ型のプレス金型装置に備えられたスライドであり、２は同プレス金型装置に備えられたボルスターである。ボルスター２には下型３が固定されている。下型３の上方には、上型４が対向して上下動自在（上下方向に開閉自在）に配置されており、上型４は金型取付用治具５を介してスライド１側に設けられてる。

下型３には複数のガイドポスト６が立設され、これらガイドポスト６は上型４に設けられたブッシュ７に挿入されている。上型４は、ガイドポスト６により位置決めされて、上下方向（開閉方向）に案内される。

金型取付用治具５は、スライド１と上型４との間に配置された四角形のシャンクプレート１０（中間板の一例）と、スライド１とシャンクプレート１０とを連結する１個（単数個）の上部シャンク１１と、シャンクプレート１０と上型４とを連結する２個（複数個）の下部シャンク１２（下部連結装置の一例）とを有している。

上部シャンク１１は、フリーシャンクであり、ラム１ａによりスライド１側に取付けられた第１の取付部材１４と、シャンクプレート１０側に取付けられた第２の取付部材１５とを有している。第１の取付部材１４（一方の取付部材に相当）は、下部が開口した円形状の凹部１４ａを有している。また、第２の取付部材１５（他方の取付部材に相当）は、上下方向から凹部１４ａに嵌め込まれた突部１５ａを有している。

凹部１４ａの下部には、径方向内側へ張り出した係合部１４ｂが全周にわたり形成されている。また、突部１５ａの上部には、径方向外側へ張り出した鍔部１５ｂが全周にわたり形成されている。これら係合部１４ｂと鍔部１５ｂとによって、第１の取付部材１４と第２の取付部材１５とが上下方向において係合する。突部１５ａの上端には、第１の取付部材１４と第２の取付部材１５とが鉛直軸心１７（又はボルスター２に直交する垂直軸心）に対して傾斜することを許容する球面部１５ｃが形成されている。球面部１５ｃは凹部１４ａの奥端面１４ｃに点接触している。

各下部シャンク１２は、フリーシャンクであり、上部シャンク１１と同じ構成を有しており、シャンクプレート１０側に取付けられた第１の取付部材１９と、上型４側に取付けられた第２の取付部材２０とを有している。上部シャンク１１と同様に、第１の取付部材１９は凹部１９ａと係合部１９ｂと奥端面１９ｃとを有し、第２の取付部材２０は突部２０ａと鍔部２０ｂと球面部２０ｃとを有している。

尚、上部シャンク１１はシャンクプレート１０の中央部に位置し、両下部シャンク１２は上部シャンク１１に対して左右両側方へ振り分けられた位置にある。
以下、前記構成における作用を説明する。

上部シャンク１１の第１の取付部材１４と第２の取付部材１５とが、球面部１５ｃによって、鉛直軸心１７に対し傾斜することを許容される。このため、スライド１とボルスター２との平行度の誤差を上部シャンク１１によって吸収することができる。

一枚のプレス材料２１で複数個の同じプレス製品をプレス加工によって製造する場合、下型３上にプレス材料２１をセットし、スライド１を作動させて上型４を下動させ金型を閉じる。この際、上型４に負荷されるスライド１からの荷重Ｆは、先ず、上部シャンク１１とシャンクプレート１０との取付け部分の一箇所Ａで集中して受けられ、次に、シャンクプレート１０から両下部シャンク１２と上型４との二箇所Ｂ１，Ｂ２（複数箇所）の取付け部分に分散して受けられる。これにより、上型４の変形を抑制することができ、このため、各プレス製品に負荷される圧力を均一に保つことができ、各プレス製品のバラツキを防止することができる。また、金型装置の寿命を長期化することができ、既存のプレス機に対して高い汎用性がある。

尚、図１の仮想線で示すように、前記荷重Ｆによってシャンクプレート１０の中央部に反り等の変形が発生しても、下部シャンク１２の球面部２０ｃと奥端面１９ｃとの接触点が変移することで前記のようなシャンクプレート１０の変形は下部シャンク１２により吸収され、前記荷重Ｆを均一に上型４の二箇所に分散させることができる。

前記実施の形態１では下部シャンク１２を２個設けているが、３個以上の複数個設けてもよい。
前記実施の形態１では、上部シャンク１１および下部シャンク１２に、フリーシャンクを用いたが、従来のようなフランジシャンクを用いてもよい。

（実施の形態２）
前記実施の形態１では下部連結装置の一例として下部シャンク１２を挙げたが、実施の形態２では、下部連結装置の別の例として、図４に示すように、ウレタンゴム等からなるゴム体２５を設けてもよい。

前記実施の形態２では下部連結装置として、弾性体の一例であるゴム体２５を用いたが、ゴム体２５以外の弾性体、例えばスプリング等を用いてもよい。
前記実施の形態２ではゴム体２５を２個設けているが、３個以上の複数個設けてもよい。

（実施の形態３）
前記実施の形態１では、図１に示すように、スライド１と上型４との間にシャンクプレート１０を上下一層のみ設けているが、実施の形態３では、図５，図６に示すように、スライド１と上型４との間にシャンクプレート１０，２８ａ，２８ｂ（中間板の一例）を上下二層設けている。スライド１と上部のシャンクプレート１０との間には、１個の上部シャンク１１が設けられている。下部のシャンクプレート２８ａ，２８ｂは、上部のシャンクプレート１０の下方にあり、上部シャンク１１に対して左右両側方へ振り分けられた位置にある。尚、上部のシャンクプレート１０は左右に長い長方形であり、下部のシャンクプレート２８ａ，２８ｂは前後に長い長方形であり、上部のシャンクプレート１０と下部のシャンクプレート２８ａ，２８ｂとは平面視において直交するように配置されている。

上部のシャンクプレート１０と一方の下部のシャンクプレート２８ａとの間には、一方の中間部シャンク２９ａ（中間部連結装置の一例）が設けられており、上部のシャンクプレート１０と他方の下部のシャンクプレート２８ｂとの間には、他方の中間部シャンク２９ｂ（中間部連結装置の一例）が設けられている。

一方の下部のシャンクプレート２８ａと上型４との間には下部シャンク１２ａ，１２ｂ（下部連結装置の一例）が設けられ、他方の下部のシャンクプレート２８ｂと上型４との間には下部シャンク１２ｃ，１２ｄ（下部連結装置の一例）が設けられている。尚、両下部シャンク１２ａ，１２ｂは一方の中間部シャンク２９ａに対して前後両側方へ振り分けられた位置にあり、両下部シャンク１２ｃ，１２ｄは他方の中間部シャンク２９ｂに対して前後両側方へ振り分けられた位置にある。

尚、中間部シャンク２９ａ，２９ｂと下部シャンク１２ａ〜１２ｄとはそれぞれ上部シャンク１１と同じ構成を有している。
以下、前記構成における作用を説明する。

一枚のプレス材料２１で複数個の同じプレス製品をプレス加工によって製造する場合、下型３上にプレス材料２１をセットし、スライド１を作動させて上型４を下動させ金型を閉じる。この際、上型４に負荷されるスライド１からの荷重Ｆは、先ず、上部シャンク１１と上部のシャンクプレート１０との取付け部分の一箇所Ａで集中して受けられ、次に、上部のシャンクプレート１０から両中間部シャンク２９ａ，２９ｂと両下部のシャンクプレート２８ａ，２８ｂとの合計二箇所Ｂ１，Ｂ２の取付け部分に分散して受けられ、さらに、両下部のシャンクプレート２８ａ，２８ｂから各下部シャンク１２ａ〜１２ｄと上型４との合計四箇所Ｃ１〜Ｃ４の取付け部分に分散して受けられる。

これにより、上型４の変形を抑制することができ、このため、各プレス製品に負荷される圧力を均一に保つことができ、各プレス製品のバラツキを防止することができる。また、金型装置の寿命を長期化することができ、既存のプレス機に対して高い汎用性がある。

尚、前記荷重Ｆによって上部のシャンクプレート１０の中央部に反り等の変形が発生しても、このような上部のシャンクプレート１０の変形は中間部シャンク２９ａ，２９ｂにより吸収される。また、前記荷重Ｆによって各下部のシャンクプレート２８ａ，２８ｂの中央部に反り等の変形が発生しても、このような下部のシャンクプレート２８ａ，２８ｂの変形は各下部シャンク１２ａ〜１２ｄにより吸収される。これにより、前記荷重Ｆを均一に上型４の四箇所に分散させることができる。

尚、前記実施の形態３では、シャンクプレート１０，２８ａ，２８ｂを上下二層に設けているが、三層以上の複数層に設けてもよい。
前記実施の形態３では、上部シャンク１１と中間部シャンク２９ａ，２９ｂと下部シャンク１２ａ〜１２ｄとに、フリーシャンクを用いたが、従来のようなフランジシャンクを用いてもよい。

前記実施の形態３では、中間部連結装置および下部連結装置の一例として、シャンク１２ａ〜１２ｄ，２９ａ，２９ｂを用いたが、前記実施の形態２と同様に、ゴム体やスプリング等の弾性体を用いてもよい。

前記実施の形態１では、上部シャンク１１の第１の取付部材１４が凹部１４ａを有するとともに第２の取付部材１５が突部１５ａを有しているが、第１の取付部材１４が突部１５ａを有するとともに第２の取付部材１５が凹部１４ａを有してもよい。同様に、下部シャンク１２の第１の取付部材１９が凹部１９ａを有するとともに第２の取付部材２０が突部２０ａを有しているが、第１の取付部材１９が突部２０ａを有するとともに第２の取付部材２０が凹部１９ａを有してもよい。また、前記実施の形態３の各シャンク１１，１２ａ〜１２ｄ，２９ａ，２９ｂにおいても同様である。

本発明は、プレス機だけでなく、成形機等の加圧装置に対しても適用できる。

本発明の実施の形態１における金型取付用治具を取付けたプレス金型装置の図 同、金型取付用治具の縦断面図 同、金型取付用治具の平面図 本発明の実施の形態２における金型取付用治具を取付けたプレス金型装置の図 本発明の実施の形態３における金型取付用治具を取付けたプレス金型装置の図 同、金型取付用治具の平面図 従来の金型取付用治具を取付けたプレス金型装置の図 同、金型取付用治具の縦断面図

符号の説明

１ スライド
３ 下型
４ 上型
５ 金型取付用治具
１０ シャンクプレート（中間板）
１１ 上部シャンク
１２，１２ａ〜１２ｄ 下部シャンク（下部連結装置）
１４ 第１の取付部材（一方の取付部材）
１４ａ 凹部
１４ｃ 奥端面
１５ 第２の取付部材（他方の取付部材）
１５ａ 突部
１５ｃ 球面部
１７ 鉛直軸心
２５ ゴム体（下部連結装置，弾性体）
２８ａ，２８ｂ シャンクプレート（中間板）
２９ａ，２９ｂ 中間部シャンク（中間部連結装置）

Claims (5)

1. 下型と開閉自在な上型とを有するプレス金型装置のスライドと上型との間に設けられる金型取付用治具であって、
   スライドと上型との間に配置された中間板と、スライドと中間板とを連結する単数個の上部シャンクと、中間板と上型とを連結するとともに中間板の変形を吸収する複数個の下部連結装置とを有し、
   上部シャンクは、スライド側に取付けられた第１の取付部材と、中間板側に取付けられた第２の取付部材と、第１の取付部材と第２の取付部材とが鉛直軸心に対して傾斜するのを許容する球面部とを有し、
   各下部連結装置は上部シャンクに対して横方向に振り分けられて配置されていることを特徴とする金型取付用治具。
2. 第１の取付部材と第２の取付部材とは上下方向において係合し、
   上部シャンクの第１の取付部材と第２の取付部材とのいずれか一方の取付部材は凹部を有し、他方の取付部材は上下方向から凹部に嵌め込まれた突部を有し、
   球面部は突部の先端に形成されて凹部の奥端面に接触していることを特徴とする請求項１記載の金型取付用治具。
3. 各下部連結装置はそれぞれ、上部シャンクと同じ構成を有する下部シャンクであることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の金型取付用治具。
4. 各下部連結装置はそれぞれ弾性体であることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の金型取付用治具。
5. 中間板はスライドと上型との間に上下複数層設けられ、
   上下で相対向する中間板間を連結するとともに中間板の変形を吸収する複数個の中間部連結装置が設けられていることを特徴とする請求項１から請求項４のいずれか１項に記載の金型取付用治具。

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