JP4836270B2 - 微粒子分級方法及び装置 - Google Patents
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Description
回分方式は、チューブやその他の形状の処理容器を用いて、一回の運転毎の対象微粒子を分級処理する方式である。回分方式では、少量ずつの処理しか行えず、バッチ間の粒子の粒径の均一性の保証が困難であるという問題がある。
半連続方式は、連続的な運転が可能な方式である。しかし、この方式では、例えば分級装置内に蓄積された分級微粒子の回収などのために、一定時間運転後には必ず定常運転状態を破らなければならないという問題がある。
完全連続方式は、原理的には定常運転状態を無限に続けることが可能な方式である。定常運転状態の中で試料の供給及び回収を完全に行うことができる。微粒子分級においてこの方式を用いると、分級処理量が飛躍的に増大するだけでなく、分級した回収微粒子の粒径を精密に揃えることへの道が開かれる。なぜなら回分方式の場合、上記のように、たとえ一回のバッチで精密に粒径を揃えた画分が得られたとしても、別のバッチでそれと粒径を精密に揃えることは難しく、どうしても粒径が微妙にずれがちとなる。ところが、完全連続方式では、このような問題はなく、また半連続方式におけるように一定時間運転後には必ず定常運転状態を破らなければならないという問題もないからである。
次に図2は、沈降平衡法を完全連続方式で実現するための装置原理を、従来のスイングローターとの比較で示したものである。完全連続方式の装置においては、試料溶液も階段状の密度勾配もローター内に時間的に連続して供給されるが、密度勾配の上を試料成分が沈降するに伴い浮遊密度の違いにより分離される機構に関しては、完全連続方式の場合もスイングローターの場合と全く同様であることが分る。さらに、このように沈降平衡法を完全連続方式で実現するための装置構造を図3に模式的に示す(米国特許第4425112号(特許文献1)、Pittsburgh Conference, March 2000, New Orleans、 LO、 USA(非特許文献1))。
また、本発明者が先行して出願した特開2004−314068号公報にもその領域まで分画可能な装置が含まれていたが、この先行発明ではでは精密な温度制御が必要であった。
請求項1にかかるい発明は、遠心ローター内分離流路にて、分離対象とする微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離する遠心分離方式を用いた微粒子分級方法であって、
遠心ローターの両端を大口径ベアリングで支持し、遠心ローター回転軸を経由せずに回転駆動力を伝える方式を採用し、遠心ローター回転軸両端からの回転シールによる前記分離流路との流路接続を可能とし、さらに該回転軸の一端に前記分離流路に接続される非連結型流路を設け、遠心ローターへ出入りする総流路数を増やすことを特徴とする微粒子分級方法である。
請求項2にかかる発明は、前記分離流路の入口に連続密度勾配形成器を設け、該連続密度勾配形成器により、液相の溶液密度が遠心ローターの動径方向において空間的に連続した密度勾配場を形成させることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分級方法である。
請求項3にかかる発明は、分離対象となる微粒子試料の供給及び分級した微粒子の回収を時間的に完全連続方式により行うことを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子分級方法である。
請求項4にかかる発明は、前記連続密度勾配形成器と分離流路の配置において遠心ローター内の一周以上を使うことで、連続密度勾配形成器と分離流路の合計長を長くし、試料粒子のローター滞在時間を確保することを特徴とする請求項2または3に記載の微粒子分級方法である。
請求項5にかかる発明は、前記連続密度勾配場の端または人為的に作った密度勾配段差の位置に微粒子試料をロードすることにより、試料バンドの幅広化を抑止する請求項2または3に記載の微粒子分級方法である。
請求項6にかかる発明は、分離対象となる微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離するための分離流路、微粒子試料の供給のための入口および分級した微粒子の回収のための出口が形成された遠心ローターを有し、
該遠心ローターの両端を大口径ベアリングで支持し、遠心ローター回転軸を経由せずに回転駆動力を伝えようにし、遠心ローター回転軸両端に回転シールを設けて前記分離流路との流路接続を可能とし、さらに該回転軸の一端に前記分離流路に接続される非連結型流路を設けたことを特徴とする微粒子分級装置である。
請求項7にかかる発明は、前記分離流路の入口に連続密度勾配形成器を設け、該連続密度勾配形成器により、液相の溶液密度が遠心ローターの動径方向において空間的に連続した密度勾配場を形成させるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の微粒子分級装置である。
請求項8にかかる発明は、請求項6または7に記載の分級装置において、非連結型流路の出口付近に羽根を設け、該羽根が遠心ローターとともに回転することでドレインダクト内の気流を形成し、かつ、非連結型流路出口先端付近の気流状態を調整するようにしたことを特徴とする微粒子分級装置である。
請求項9にかかる発明は、請求項8に記載の分級装置において、非連結型流路の出口をノズル状とし、ノズル周囲の気流状態の調整とノズル先端の液切れをよくし、ノズル先端部への固形分析出を抑えるようにしたことを特徴とする微粒子分級装置である。
請求項10にかかる発明は、請求項9に記載の分級装置において、出口のノズル周囲を環状フードで包むことにより、同ノズル先端付近の気流状態を調整するようにしたことを特徴とする微粒子分級装置である。
請求項11にかかる発明は、請求項7に記載の分級装置において、前記密度勾配場の端または人為的に作った密度勾配段差の位置に微粒子試料をロードする試料注入用ポートを設け、試料バンドの幅広化を抑止するようにしたことを特徴とする微粒子分級装置である。
請求項12にかかる発明は、前記非連結型流路の少なくとも出口および羽根が前記回転軸に対して着脱自在になっていることを特徴とする請求項10記載の微粒子分級装置である。
例えば、遠心ローター(以下、単にローターと表記することがある。)と静止している外界との間の流路連結に遠心ローターの回転軸の両端に設けた回転シールを用いているので、特開2004−314068号公報記載の発明と同等の微小粒子まで分画でき、なおかつ密度勾配形成に密度勾配材の濃度差を用いるので温度の精密制御は必要ない。
本発明でそれを可能ならしめた構造は、遠心ローターの回転軸の両端に設けた回転シールで実現できる(2+2=)4本の流路に加え、遠心ローターの回転軸近傍に設けた非連結型の第5流路である。5本の流路のうち、密度すなわち濃度の異なる2種の密度勾配材を2本の流路を使用して遠心ローター内の分離流路に送ることができる。このため、分離流路内での密度勾配形成に密度勾配材の濃度差を用いるので温度の精密制御は必要ない。
この原理は装置の種類によらず成り立つものである。
液相中では微小な粒子の場合、何らかの原因で系のおかれている状況に変動があったとしても、当該粒子に働く遠心力と液相中を移動する際に生じる抵抗力は速やかに等しくなる。簡単のために粒子形状を球とすると、
遠心力=1/6πd3(ρp−ρl)g
抵抗力=3πdμv (ストークスの法則)
d: 粒子直径
ρp: 粒子の浮游密度
ρl: 液相の密度
g: 遠心力場の加速度
μ: 液相の粘度
v: 沈降速度
という関係がある。
ここで、両者を等しいとおき、沈降速度vについて解くと、
v=d2(ρp−ρl)g/18μ ・・・式(1)
となる。
なお、遠心力場の加速度gは、
g=rω2で与えられる。
r: ローター回転軸からの距離
ω: ローター回転の角速度
図11の中でローター本体11と記されている部分の中身が図8の構造である。ここでは、異なる濃度(従って溶液密度)である2つの密度勾配材溶液が遠心ローター内の連続密度勾配形成器に時間連続的に供給される。同時に、試料液も同形成器の下流地点において、空間的に連続した密度勾配場上に供給される。
図6、図7は、連続密度勾配形成器3を示すもので、連続密度勾配形成器3は、入口部と出口部とを有する内部が空洞の略筒状となっており、長手方向での中央部分がくびれた形状となっている。入口部には、図10に示す複数のコネクタ4、4・・を介して複数の密度の異なる液相(密度勾配形成材)が供給できるようになっている。
また、コネクタ4の開口部における上下方向(ローター回転軸に平行な方向)のうちのりは、連続密度勾配形成器のそれに等しいが、コネクタの開口部における横幅(ローター回転軸および流路に直角な方向の幅)は、それぞれのコネクタ開口部における流速の平均線速度の(ローター回転軸から見た)角速度が全てのコネクタ4の間で等しくなるように設定する。
それに対し本実施例では、図9のC近傍の状態(BとCの中間からCとDの中間まで利用できる)の液相を用いて対象微粒子を分級する。まず、A→Cの過程を促進するため、「連続密度勾配形成器」を用いて液相を動径方向に大幅圧縮することにより、密度(密度勾配材の濃度)勾配ΔC/Δrを大きくし、かつ密度勾配材の拡散距離も小さくてすむようにしている。そして連続密度勾配形成器の下流で動径方向の圧縮を元に戻す。この区間で試料粒子の分離が行われるが、Dから分かるように、時間が経過するに従い密度勾配が直線状の区間はその長さこそ短くなるが、直線状という勾配形状とその勾配値はかなり長い時間保持されることを利用するのである。また仮に、密度勾配の勾配値が多少減少したとしても、液相の擾乱さえ起きず、そしてその密度勾配値の減少の程度が安定していさえすれば(時間によって変化しないということであり、システムが安定していればそうなることが期待される。)問題とはならない。以上を踏まえ、密度勾配材としては、密度勾配材としてありふれた低分子のもの(水に対しては蔗糖や塩類)を用いればよく、ランニングコストの低減につながる。
本発明では、沈降速度モードを利用しているので、沈降平衡モードの場合と異なり、形成された液相密度勾配の絶対密度値は重要でない。液相の擾乱が抑止されるとともに運転中の定常状態が保たれさえすればよい。
(1)遠心ローターの両端において大口径ベアリングにより遠心ローターを支持する方式とする。
(2)遠心ローター回転軸を経由せずにギアなどにより回転駆動力を遠心ローターに伝える方式とする。例えばギアを用いる場合、駆動力を伝えるギアと、それとは別にフリーのギアをローターを挟んで反対側に設置し、両者でローターを挟み込む形式とすることによりローター回転軸の安定を図る方法も考えられる。
(3)遠心ローター回転軸に沿って回転軸両端から回転シールなどにより流路を接続する。2流路用の回転シールは既にFFFなどで確立した技術であるが、それを遠心ローターの上下両端に設けることにより、外界と遠心ローターの間に合計4流路を確保出来ることになる。
図11において、符号11は遠心ローターの本体を示し、この遠心ローター11の回転軸12、12は大口径ベアリング13、13で軸支されている。モータ14からの回転駆動力は、ギア15、15を介して回転軸12、12に伝達され、遠心ローター11を高速回転させるようになっている。回転軸12、12のそれぞれの端部には回転シール16、16が設けられ、この回転シール16、16によって遠心ローター11内の分離流路に連通するそれぞれ2本の流路17、17が接続され、合計4本の流路が形成されている。一方の回転軸12の端部には、非連結型流路となる排出ノズル18が設けられており、この排出ノズル18には遠心ローター11内の分離流路に連通するとともに回転軸12内に配されている流路に接続されている。
排出ノズル等により増えた重量を、ローター回転軸に関して排出ノズル等と同じ側の位置でこのようにして重量を取り除くことでキャンセルし、ローター回転軸回りのバランスをとる、という考え方である。凹ませると表現したが、例えば図示したように、ローター回転軸に沿ったある長さ部分について、単に円周状に膨らむ部分を平面状に切り落とすということでもよい。この場合、図24のように、平面状に切り落とした部分の上下にはなだらかな傾斜部分を設けた方が、気流の流れが滑らかとなる。
Claims (8)
- 遠心ローター内の分離流路の入口に連続密度勾配形成器を設け、該連続密度勾配形成器により、液相の溶液密度が遠心ローターの動径方向において空間的に連続した密度勾配場を形成し、分離対象とする微粒子試料を当該密度勾配場を形成している液相中において沈降速度法により分離する遠心分離方式を用いた微粒子分級方法であって、
前記分離流路の入口の試料注入ポートから微粒子試料を供給し、前記分離流路の出口に設けた狭い幅の目的微粒子回収ポートから分級した目的微粒子を回収し、前記分離流路の出口のうち目的微粒子回収ポートを除いた部分で構成される液相回収ポートからそれ以外の液相・微粒子を回収し、
遠心ローターの両端を大口径ベアリングで支持し、遠心ローター回転軸を経由せずに回転駆動力を伝える方式を採用し、遠心ローター回転軸両端からの2流路型回転シールにより静止外界の合計4流路と接続し、当該2流路型回転シールにより静止外界と接続された4流路のうち1流路を用いて微粒子試料液を試料注入ポートへ供給し、他の1流路を用いて目的微粒子回収ポートから分級した目的微粒子を回収し、残りの2つの流路を用いて異なる密度を持つ2つの液相を連続密度勾配形成器に供給し、
さらに、前記回転軸の一端に前記分離流路の出口の前記液相回収ポートに流路接続される非連結型流路を設け、該非連結型流路は前記回転軸の一端側周面に開口する出口を有しており、前記非連結型流路の出口に対向する位置に、内部が空洞であって、前記回転軸の一端側の端部が全周にわたって開口しているドレインダクトを設け、前記非連結型流路の出口からドレインダクトの開口内に液相回収ポートからの液相を排出して回収することを特徴とする微粒子分級方法。 - 分離対象となる微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離するための分離流路と、分離流路の入口に設けられた連続密度勾配形成器を備えた遠心ローターであって、前記連続密度勾配形成器により、液相の溶液密度が遠心ローターの動径方向において空間的に連続した密度勾配場を形成し、分離対象とする微粒子試料を当該密度勾配場を形成している液相中において沈降速度法により分離する遠心ローターを有し、
前記分離流路の入口に微粒子試料を供給する試料注入ポートを設け、前記分離流路の出口に目的微粒子を回収するための狭い幅の目的微粒子回収ポートを設け、それ以外の液相・微粒子を回収するために前記分離流路の出口のうち目的微粒子回収ポートを除いた部分で構成される液相回収ポートを設け、
前記遠心ローターの両端を大口径ベアリングで支持し、遠心ローター回転軸を経由せずに回転駆動力を伝えるようにし、遠心ローター回転軸両端に2流路型回転シールを設け、前記2流路型回転シールを経由して静止外界の合計4流路と接続し、当該2流路型回転シールにより静止外界と接続された4流路のうち1流路を用いて微粒子試料液を試料注入ポートへ供給し、他の1流路を用いて目的微粒子回収ポートから分級した目的微粒子を回収し、残りの2つの流路を用いて異なる密度を持つ2つの液相を連続密度勾配形成器に供給し、
さらに、前記回転軸の一端に前記分離流路の出口の前記液相回収ポートに流路接続される非連結型流路を設け、該非連結型流路は前記回転軸の一端側周面に開口する出口を有しており、前記非連結型流路の出口に対向する位置に、内部が空洞であって、前記回転軸の一端側の端部が全周にわたって開口しているドレインダクトを設け、前記非連結型流路の出口からドレインダクトの開口内に液相回収ポートからの液相を排出して回収することを特徴とする微粒子分級装置。 - 前記非連結型流路の出口付近に羽根を設け、該羽根が遠心ローターとともに回転することでドレインダクト内の気流を形成し、かつ、非連結型流路出口先端付近の気流状態を調整するようにしたことを特徴とする請求項2記載の微粒子分級装置。
- 前記非連結型流路の出口をノズル状とし、ノズル周囲の気流状態の調整とノズル先端の液切れをよくし、ノズル先端部への固形分析出を抑えるようにしたことを特徴とする請求項3記載の微粒子分級装置。
- 前記非連結型流路の出口のノズル周囲を環状フードで包むことにより、同ノズル先端付近の気流状態を調整するようにしたことを特徴とする請求項4記載の微粒子分級装置。
- 請求項2記載の微粒子分級装置において、前記微粒子試料液のバルク密度、すなわち、試料微粒子が懸濁された状態の溶媒の巨視的な密度が、前記残りの2つの流路から供給される異なる密度を持つ2つの液相の密度のいずれよりも大きい場合には、前記分離流路の入口の外周側端に前記試料注入ポートを配置し、前記残りの2つの流路から供給される異なる密度を持つ2つの液相の密度のいずれよりも小さい場合には、前記分離流路の入口の内周側端に前記試料注入ポートを配置することを特徴とする微粒子分級装置。
- 請求項2記載の微粒子分級装置において、前記微粒子試料液のバルク密度、すなわち、試料微粒子が懸濁された状態の溶媒の巨視的な密度が、前記残りの2つの流路から供給される異なる密度を持つ2つの液相の密度の中間である場合には、前記連続密度勾配形成器の前記分離流路側端において、前記バルク密度と等しい密度が形成されるべき位置から、連続密度勾配形成器内部へ向けて途中まで隔壁を設け、該隔壁の前記分離流路側の端部位置に前記試料注入ポートを配置することを特徴とする微粒子分級装置。
- 前記非連結型流路の少なくとも出口および羽根が前記回転軸に対して着脱自在になっていることを特徴とする請求項5記載の微粒子分級装置。
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