JP5832828B2 - 遠心分離装置の可変ダム及び遠心分離装置 - Google Patents

遠心分離装置の可変ダム及び遠心分離装置 Download PDF

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Description

本発明は、回転ボウル内の被処理液のダム深さを調整する遠心分離装置の可変ダム、及び可変ダムを備えた遠心分離装置に関する。
遠心力を利用して固液分離を行う装置として、デカンタと称される遠心分離装置が知られている。図10は、横型のデカンタの基本構造を概略的に示している。横型のデカンタ1は、水平軸廻りに回転可能な回転ボウル11と、この回転ボウル11に内挿されたスクリューコンベア12とが、ケーシング13の内部に収容されている。
回転することによって固形物を含む被処理液に遠心力を与える回転ボウル11は、一端側が円錐形状に形成されている。この円錐形状の部分は、スクリューコンベア12によって移送される固形物が液から離脱するビーチを形成しており、その先端側に固形物出口14が形成されている。また回転ボウル11の胴部は、回転ボウル11の内部に供給される被処理液が滞留する液溜り(プール)を形成しており、回転ボウル11の他端側に分離液出口15が形成されている。一方、スクリューコンベア12の胴部には、螺旋状のスクリュー羽根12aと、被処理液を回転ボウル内に供給するための供給口12bが形成されている。
このような構成において、回転ボウル11を回転させながら被処理液を供給すると、遠心力の作用により回転ボウル11の内周面に固形物が沈降する。スクリューコンベア12は、回転ボウル11に対して相対的な差速をもって回転される。これにより、固形物がスクリュー羽根12aによってビーチの方へ移送され、液から分離される。分離された固形物は、固形物出口14から排出される。一方、被処理液を連続的に供給することによって、固形物が分離された液(分離液)が分離液出口15からオーバーフローして排出される。
回転ボウル11内の液深(=ダム深さ)H1は、デカンタ1の分離効率に影響を及ぼす要因の一つである。そのため、被処理液の液性,固形物の含水率の達成値,分離液中の固形物濃度の達成値など、種々の操業条件に応じてダム深さを調整したい場合がある。しかしながら、従来におけるデカンタの多くは、ダム深さを可変にする機構を備えておらず、例えば特許文献1,2に示すような堰を取り付けてダム深さを調整していた。この場合、装置を停止して堰を取り付ける作業が必要であり、装置の稼働率が低下するという問題があった。また、堰によってダム深さを調整する場合、高さが異なる複数の堰を保有しておかなければならないという問題もある。
特許文献3には、ダム深さを可変にする機構(以後、「可変ダム」と称する)が開示されている。しかしながら、特許文献3に開示されている可変ダムは、ダム深さの調整可能な範囲が小さい上に、調整精度が悪いという課題があった。特に、固形物出口14から排出し難い難排出性固形物や、固形物の含水率の微調整が必要な処理物にあっては、ダム深さの微細な調整が要求される場合があり、特許文献3の可変ダムではその要求に応じることが難しい。さらに、特許文献3に開示されている可変ダムの構造では、ダム深さを変更しているときにピンが欠損するなど、耐久性が低いことも懸念される。
特開2009−136790号公報 特開昭61−167468号公報 特公昭50−6667号公報
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、ダム深さの調整可能な範囲が広く、且つ、調整精度に優れた可変ダムを提供することにある。また、前記可変ダムを備えたことにより、処理条件に応じた良好なダム深さに設定することができ、良好な分離効率を維持することが可能な遠心分離装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ダム深さを変えているときに位置決めピンが欠損するのを防止でき、耐久性に優れている可変ダムを提供することにある。
本発明の可変ダムは、回転ボウルによって被処理液に遠心力を付与する遠心分離装置の可変ダムであって、外周面に形成された分離液の導入口と、内周面に形成された分離液の排出口と前記導入口から前記排出口まで連通する分離液の流路が形成された第1の環状部材からなり、該第1の環状部材の一方の表面に複数の位置決めピンが立設されているポンプと、前記回転ボウルの回転軸中心から偏心したところにその中心が位置するように配置され前記ポンプの中央開口部が摺動可能に嵌合されるとともに、前記ポンプの前記排出口と連通する分離液の排出経路が形成された支持リングからなり、前記回転ボウルの分離液排出側の端部に固定配置される固定パーツと、前記固定パーツと記ポンプを挟んで前記固定パーツの中央開口部に摺動可能に嵌合され、内周面で前記位置決めピンを係止する円形の係止穴が各前記位置決めピンごとに形成されている第2の環状部材からなる周動パーツと、前記周動パーツを回転させることにより、前記支持リングの周方向における前記ポンプの前記導入口の位置を変えてダム深さを調整するダム深さ調整機構と、を備えたことを特徴とする。
好ましい一例として、前記位置決めピンを2本とし、この2本のピンを支持リングの中心の同心円上であって、且つ、支持リングの中心を挟んで直径線上に位置するように配置し、2本のピンを係止する2つの円形の係止穴は、回転ボウルの回転軸上に位置する周動パーツの中心の同心円上であって、且つ、周動パーツの中心を挟んで直径線上に配置する。
また、前記係止穴は、最も深いダム深さから最も浅いダム深さまでの最大可変量としてL1[mm]を実現したいとき、前記回転ボウルの回転軸中心からの偏心量をL1[mm]とし、さらに、前記係止穴の直径[mm]をL2(=2L1+L3,L3は位置決めピンの直径[mm]である)とするのが好ましく、いわゆる「遊び」の量を追加して(2L1+L3)以上とするのがさらに好ましい。また、前記セントリペダルポンプは、外周縁の少なくとも一部に、遠心分離実行時に回転ボウル内に形成される分離液の液面に対する入水角θが30°±5°の範囲となる液抵抗軽減部が形成されていることが好ましい。さらに、前記可変ダムは、回転ボウルの回転軸方向において、回転ボウルと回転ボウルの軸受機構との間に配置されていることが好ましい。
本発明の遠心分離装置は、前述の可変ダムを備えたことを特徴とする。
本発明の可変ダムによれば、回転ボウルの回転軸中心から偏心した位置でセントリペダルポンプが周方向に回転可能な構造とし、セントリペダルポンプに立設された位置決めピンを係止する周動パーツの係止穴を円形としたことにより、セントリペダルポンプを回転させるときの位置決めピンの移動距離が増大し、ダム深さの調整可能な範囲を拡張することができ、調整精度を高めることが可能となる。
さらに、本発明の可変ダムによれば、ピンが単純せん断方向に動く特許文献3の可変ダムとは異なり、位置決めピンが回転円運動となって応力が分散するので、ダム深さを変えようとして周動パーツを回転させたときに、位置決めピンに過度の応力が集中するのを抑制できる。その結果、可変ダムの耐久性を向上させることが可能となる。
本発明の好ましい実施形態に従う遠心分離装置の縦断面図である。 上記遠心分離装置の可変ダムを拡大した部分拡大図である。 本発明の好ましい実施形態に従う可変ダムの斜視図である。 上記可変ダムの側面図である。 上記可変ダムの縦断面図である。 上記可変ダムの動作を示す図である。 上記可変ダムによってダム深さを変えるメカニズムを説明する図である。 上記可変ダムのセントリペダルポンプの外周形状を示す平面図である。 上記可変ダムの係止穴の形状による調整代の変化を示す図である。 従来の遠心分離装置の構造を示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態に従う可変ダムについて、添付図面を参照しながら詳しく説明する。図1は、本実施形態に従う可変ダムを備えた遠心分離装置の一例を示しており、具体的には、可変ダムを装着した横型のデカンタを示している。図2は、前記デカンタの可変ダムのところを拡大した部分拡大図である。また、図3〜図5は、それぞれ、本実施形態に従う可変ダムの詳細な構造を示している。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
デカンタ1は、図1に示すように、固形物出口21が一端側の下面に形成されているケーシング2と、ケーシング2内に配置された回転筒状体をなす回転ボウル3と、回転ボウル3内で分離される固形物Sを移送するスクリューコンベア4と、ケーシング2の他端側に配置された可変ダム5を備えている。回転ボウル3は、例えばケーシング2の外部に配置されるベアリング等の主軸受機構22によって支持され、さらにスクリューコンベア4はコンベアベアリング等の軸受機構23によって支持され、回転ボウル3とスクリューコンベア4のそれぞれが独立して水平軸周りに回転可能となっている。図中24で示されるケーシング2内の複数の板は、分離された固形物と分離液とが再び混ざらないようにケーシング2内を区画する仕切板である。
そして、駆動機構である主モーター25の動力が回転ベルト25aを介して回転ボウル3側のプーリー25bに伝達されると、回転ボウル3が回転し、さらに差速発生機構であるギアボックス26及びスプラインシャフト26aを通じてスクリューコンベア4に動力が伝達され、回転ボウル3とスクリューコンベア4とが相対的な差速をもって回転する。限定はされないが、一例として、回転ボウル3を3000rpmで回転させ、スクリューコンベア4を1〜3rpmの差速をもって回転させることができる。
ギアボックス26には、バックドライブモーター27と称されるモーターが回転ベルト27a及びプーリー27bを介して連結されている。バックドライブモーター27は、スクリューコンベア4が回転ボウル3よりも遅く回転するようにブレーキをかけるためのものである。ブレーキをかけることによってバックドライブモーター27に発生する回生電力は、主モーター25に供給するようにし、これにより装置全体の消費電力を抑えるようにしている。但し、バックドライブモーター27は必ずしも設けなくともよい。
デカンタ1は、更に、被処理液を回転ボウル3内に供給するための供給ノズル6を備えている。供給ノズル6は、回転ボウル3及びスクリューコンベア4と接触しないように、これらと離間して、スクリューコンベア4の内部に形成されている空洞(バッファ部)41内まで挿入されている。例えばポンプなどの送液手段(不図示)によって送られてくる被処理液は、この供給ノズル6の先端からバッファ部41内に吐出され、回転するスクリューコンベア4の遠心力によって、スクリューコンベア4の側周面に形成されている供給孔42から回転ボウル3内に供給される。
回転ボウル3は、一端側に形成されている円錐部31および他端側に形成されている円筒部32を含む胴部と、円筒部32の開口部分を塞ぐためのカバー部材33を有している。カバー部材33は、例えばボルト等の固定手段によって円筒部32に脱着可能なように固定される。カバー部材33は、中央部が開口し、断面が概ねL字状の環状部材で構成されている。カバー部材33は、可変ダム5のセントリペダルポンプ51が回転ボウル3の内部空間内に位置するように囲い、L字の端部(すなわち、カバー部材33の内周縁)が僅かな隙間を介して可変ダム5の側周面に近接するように配置される。遠心分離の実行時に回転ボウル3を回転させると、カバー部材33は回転するが、可変ダム5は回転しない固定配置であるため両者の間に僅かな隙間を設けている。勿論、隙間からの液漏れを防止するために、シール部材を用いて封止するようにしてもよい。
遠心分離の実行時には、遠心力の作用によって回転ボウル3の内周面側に被処理液が寄せられ、プール(液溜まり)を形成する。このとき、固形物はスクリューコンベア4によって円錐部31の側に移送されるので、カバー部材33の側には固形物濃度が低い分離液の液溜まりが形成される。この遠心力を付与した状態で被処理液を連続的に供給していくと、図2に示すように、分離液の液面レベルが高くなってセントリペダルポンプ51の液導入口52が液中に浸る状態となる。そうすると、遠心力を駆動力として分離液がセントリペダルポンプ51の液導入口52に進入し、可変ダムの内部に形成されている流路を流れ、ケーシング2外に形成された分離液排出口53から排出される。分離液排出口53には例えばホースや配管などの流路が接続されており、この流路を介して分離液の貯留槽(不図示)が接続されている。本実施形態によるデカンタ1は、特許文献1,2のオーバーフロー方式とは異なり、このような作用によって分離液を装置外に排出する。
説明を図1に戻すと、回転ボウル3の円錐部31は、スクリューコンベア4によって移送される固形物が液から離脱するビーチを形成しており、ビーチの先端側に固形物の排出口34が形成されている。スクリューコンベア4には、外周面に螺旋状にスクリュー羽根43が形成されており、このスクリュー羽根43によって固形物を移送する。ビーチは、その傾斜面で固形物をスリップさせ、スクリュー羽根43の圧搾力を固形物に作用させる役割と、プール(液溜まり)の有効容積を大きくして被処理液の滞留時間を増加させる機能がある。
続いて、可変ダム5の詳細な構造について、図3〜図5を参照しながら説明する。可変ダムは、図3及び図4の分解図に示されるように、セントリペダルポンプ51,セントリペダルポンプ51を支持する固定パーツ7,ダム深さを変えるためにセントリペダルポンプ51を周方向に例えば180°までの範囲内で回転させる周動パーツ8(81,82,83)を備えており、これらのパーツを同図に示されるように組み立てる。
図3〜図5に示されるように、セントリペダルポンプ51は、中央に円形の開口部を有する概ねリング状の環状部材によって構成されている。セントリペダルポンプ51は、外周面に液導入口52が形成され、内周面に液排出口54が形成され、液導入口52と液排出口54とが内部流路55によって連通している。セントリペダルポンプ51の外周縁は、例えば図7及び図8の平面図に示されるように、中央開口部の中心からの距離が、周方向で変化するように湾曲しており、液導入口52は、周方向において中央開口部の中心から最も遠くなる位置(位相)に形成されている。
さらに詳しくは、セントリペダルポンプ51の外周縁には、液導入口52から回転ボウル3の回転方向とは反対の方向に沿って液抵抗軽減部58が形成されている(図8参照)。液抵抗軽減部58は、セントリペダルポンプ51の外周縁を、回転ボウル3の回転軸を中心とする円(仮想円)の接線との角度θが30°±5°となるように切り欠いた形状とすることによって構成される。
すなわち、遠心分離の実行時には、遠心力の作用によって回転ボウル3の内周面側に液が寄せられ、回転ボウル3の回転軸を中心とするドーナツ状の液層を形成する。従って、回転ボウル3の回転軸を中心とする円(仮想円)の接線との角度θが30°±5°となる部分を形成することにより、その部分(すなわち、液抵抗軽減部58)は液面に対して30°±5°の角度で入水するので、造波抵抗に因る液抵抗を小さく抑えることができる。造波抵抗を小さくできれば、回転ボウル3内の液の乱れを抑制でき、また動力を削減して省電力化を図ることもできる。
さらに、図8に示すように、液抵抗軽減部58および液導入口52の部分を除いた外周縁(概ね2点破線の領域)が、前記仮想円よりも内側に位置するように形成すれば、この領域は遠心分離の実行時に液に浸からないので、さらに液抵抗を小さくすることができる。この領域は、空気抵抗を考慮して円形とし、鋭角部のない滑らかな表面にする事が望ましい。但し、図7及び図8に示した外周縁の形状は、好ましい一例であり、この形状に限定されることはない。他の例として、外周縁が円形であり、円形の中央開口部を外周縁の中心から偏心した位置に形成し、さらに周方向において幅が最も広くなる位置(位相)に液導入口52を形成した形状であってもよい。
セントリペダルポンプ51の内部流路55は、分離液の導入・排出を促進するために、例えば図7の平面図に示されるように、回転ボウル3の回転方向に反る湾曲した形状となっている。本実施形態によるセントリペダルポンプ51の使用方法は、それ自身を連続回転させて液を吸い込むのではなく、前述したように、連続回転する回転ボウル3の遠心力を駆動力として被処理液を導入する。そのため、遠心分離の実行時には、セントリペダルポンプ51は固定配置され、ダム深さを変えるときのみ所定の角度分だけ回転させる。
セントリペダルポンプ51は、ダム深さを可変にする機能を実現するために、回転ボウル3の回転軸から偏心した位置で回転可能なように、固定パーツ7の支持リング71に支持されている。ダム深さを変更する際には、支持リング71を軸受けとして例えば0°〜180°の範囲内、実際の操業では0°〜150°の範囲内における任意の角度にセントリペダルポンプ51を回転させ、周方向における液導入口52の位置(位相)を変更する。このセントリペダルポンプ51の回転及び位相の位置決めを実行するために、セントリペダルポンプ51の一面側には、複数の位置決めピン56が立設されている。図3〜図5には、好ましい一例として、セントリペダルポンプ51の円形の中央開口部を中心にして、直径線上の対称位置に2本の位置決めピン56を配置している。位置決めピン56は、周動パーツ8の係止穴84に係止される。なお、位置決めピン56は、1本であっても、反対に3本以上でもよい。3本以上の場合にも位置決めピン56を周方向に等間隔で配置する。
セントリペダルポンプ51の液導入口52は、外周面に一か所設けられているが、セントリペダルポンプ51が回転されて液導入口52がどの位相に設定されたとしても分離液が支持リング71の液導入口72に流れ込めるように、セントリペダルポンプ51の内周面には全周に亘って溝57が形成されている。
固定パーツ7は、概ね円筒状に形成された部材によって構成されている。固定パーツ7は、その円形の開口部の中心が回転ボウル3の中心軸上に位置するように配置され、この開口部に回転ボウル3とスクリューコンベア4の回転軸が通される。固定パーツ7には、周方向に全周に亘ってフランジ73が形成されており、面内の貫通穴に例えばボルト等の固定手段を通してケーシング2の側壁に脱着可能にフランジ73を固定する(図2参照)。これにより、ケーシング2の側面開口部が封止される。一方で、固定パーツ7の一面には、回転ボウル3の中心軸から偏心した位置に支持リング71が形成されている。支持リング71の外周縁は円形に形成されており、セントリペダルポンプ51の円形の中央開口部が摺動可能に嵌め込まれる。これにより、セントリペダルポンプ51の液導入口52が、回転ボウル3の中心軸から偏心したところを中心として、真円軌道で回転する構造となっている。
既述したように、セントリペダルポンプ51の液導入口52は、中央開口部の中心から最も離れた位置に形成されている。加えて、支持リング71は固定パーツ7の一面の偏心位置に形成されている。そして可変ダム5を組み立てるときに、支持リング71の外周縁から固定パーツ7の外周縁までの距離が最も遠くなる位置(位相)に、液導入口52が位置するように組み立てる。説明の便宜上、この位相を0°とする。
支持リング71の側周面には、周方向に間隔をあけて分離液の液導入口72が形成されている。さらに、固定パーツ7には、ケーシング2外に位置するところに、周方向に間隔をあけて分離液の排出口53が形成されている。排出口72,53同士は、固定パーツ7の内部流路75を通じて連通している。従って、セントリペダル51の内周面に形成されている液排出口54及び溝57から排出される分離液は、支持リング71の液導入口72に流れ込み、内部流路75を通じてケーシング2外に配置された排出口53から排出される。排出口53には、例えばホースや配管等の流路(不図示)が接続され、この流路を介して分離液を貯留槽に移送する。
周動パーツは、図の例では、操作板81、操作レバー82、および操作板81と操作レバー82を連結する連結部材83によって構成されている。勿論、3つの部材で構成しなくともよい。
操作板81は、中央に円形の開口部が形成された円形板の部位と、開口部の縁線に沿って一方面側(固定パーツ7側)に形成された円筒状の部位を有する。円筒状の部位は、固定パーツ7の円形の開口部に回転可能に嵌合される。さらに、操作板81の面内には、開口部を挟んで直径線上の対称位置に2つの円形の係止穴84が形成されている。係止穴84は、その内周縁で、セントリペダルポンプ51の位置決めピン56を係止する。位置決めピン56は、周動パーツ8が回転されると、係止穴84の内周縁に沿って移動するように動きが規制され、これによりセントリペダルポンプ51の液導入口52の位相が制御(調整)されることとなる。
2つの係止穴84は、同じ大きさで、且つ、中央開口部を中心とする同心円上に形成されている。本例では、セントリペダル51の液導入口52が0°の位置にあるときに、係止穴84が180°の位置で位置決めピン56を係止し、セントリペダルポンプ51を回転させて液導入口52が180°の位置に達したときに、係止穴84が0°の位置で位置決めピン56を係止するように、係止穴84が形成されている(図6,図7参照)。そのため、係止穴84の大きさは、最も深いダム深さから最も浅いダム深さまでの最大可変量としてL1[mm]を実現したいとき、図7に示される回転ボウル3の回転軸中心からのセントリペダルポンプ51の回転軸中心の偏心量をL1[mm]とし、さらに、係止穴84の直径[mm]をL2(=2L1+L3,L3は位置決めピン56の直径[mm]である)とするのが好ましく、いわゆる「遊び」を追加して(2L1+L3)以上とするのがさらに好ましい。一例として、目的とする最大可変量L1が13.5[mm],位置決めピン56の直径L3が6.4[mm]の場合、遊びの量L4を1.6[mm](=2×0.8[mm])とし、係止穴84の直径L2を35.0[mm]とする。
操作レバー82は、ダム深さを変えるときに、作業員が装置外から操作板81を回転させるために使用するレバー82aが固定されたリング状の部材によって構成されている。但し、レバー82aを用いて手動で操作する構成に限られず、例えばモーターなどの駆動機構と、駆動量を制御する制御装置を使って遠隔制御するようにしてもよい。さらに、作業員がレバー82aをどれだけ回転させれば良いかの指標のため、更には現在のダム深さを作業員が把握できるようにするため、例えば固定パーツ7の側周面に目盛を設けるようにしてもよい。
連結部材83は、円筒状の部分83aと、円筒状の部分83aの一端側に円形のフランジ部分83bが形成された構造である。フランジ部分83bには、例えばボルト等の固定手段を通じて操作レバー82のリング状の部材が固定される。さらに、連結部材83の円筒状の部分83aを、フランジ部分83bが固定パーツ7の対向面に当接する位置まで固定パーツ7の開口部内に嵌め込み、例えばボルト等の固定手段を通じて、円筒状の部分83aの端部と操作板81の円筒状の部分とを固定することによって、周動パーツ8が完成する。
従って、図1のように可変ダム5を配置し、図6に示されるようにレバー82aを周方向に回していくと、操作板81が回転ボウル3の回転軸上を中心として周方向に回転する。そして、回転する操作板81の係止穴84によってセントリペダルポンプ51の位置決めピン56が規制されながら移動することにより、支持リング71を軸受けとしてセントリペダルポンプ51が回転する。但し、操作板81の回転軸は回転ボウル3の回転軸と同じであるが、セントリペダルポンプ51の回転軸は、回転ボウル3の回転軸から偏心した位置にある。さらに、セントリペダルポンプ51の外周縁は、中央開口部の中心からの距離が周方向で異なるように形成されており、液導入口は、周方向において円形の開口部の中心から最も遠くなる位置(位相)に形成されている。従って、レバー82aを0°の位置から回転させるに伴ってセントリペダルポンプ51の液導入口52が外方にせり出し、レバー82aを180°の位置まで回したときに液導入口52が最も外方にせり出した状態となる。
レバー82aが180°回されて液導入口52が最も外方にせり出した位置とは、図7(a)に示されるように、液導入口52と回転ボウル3の内周面との距離が最も短くなる位置である。換言すると、ダム深さが最も浅くなる位置である。反対に、レバー82aが0°に設定されて液導入口52が最も中心側に引っ込んだ位置とは、図7(b)に示されるように、液導入口52と回転ボウル3の内周面との距離が最も長くなる位置である。換言すると、ダム深さが最も深くなる位置である。
このように本実施形態の可変ダム5は、レバー82aを0°及び180°の位置に設定することによってダム深さが最も浅い位置と深い位置にそれぞれ設定可能である。さらに、図6にも示したように、レバー82aを回転するに伴って液導入口52が順次せり出すので、0〜180°の範囲内における任意の角度にレバー82aを回すことによって、無段階でダム深さを調整することが可能である。但し、実際の操業時には、0°〜150°の範囲で使用するのが好ましい。そしてこの可動範囲内において精度の高い調整を実現できるのは、本実施形態が円形の係止穴84を採用したからである。円形以外の形状、例えば特許文献3のような溝の場合、一部の領域で調整精度が著しく低くなるか、或いは調整不能となってしまう。
図9は、本実施形態に従う可変ダム5の調整代の変化を、実際の製作品を使って検証した結果を示す。図9には、セントリペダルポンプ51を5°間隔で回転させた際のダム深さの調整代(言いかえると変化幅)(単位;mm)を示している。比較として、係止穴を溝形状としたことを除いて本実施形態と同じ構造の可変ダムを製作し、調整代の変化を検証した。図9の結果から明らかなように、係止穴を溝形状とした場合は、90°を超えたあたりから調整代が低下していき、140°〜150°の範囲では調整範囲外となってしまう。一方、円形の係止穴の場合は、90°以降も調整代が維持され、溝形状では調整範囲外となる領域でも使用可能であり、且つ、ダム深さを微調整することが可能である。
以上のように、本実施形態の可変ダム5によれば、回転ボウル3の回転軸中心から偏心した位置でセントリペダルポンプ51が周方向に回転可能な構造とし、セントリペダルポンプ51に立設された位置決めピン56を係止する周動パーツ8の係止穴84を円形としたことにより、セントリペダルポンプ51を回転させるときの位置決めピン56の移動距離が増大し、ダム深さの調整可能な範囲を拡張することができ、且つ、調整精度を高めることが可能となる。さらに、説明した図を見れば明らかなように、本実施形態の可変ダム5は部品構成が単純であるため、メンテナンスが容易であるという利点がある。
さらに、本実施形態の可変ダム5によれば、単純せん断方向にピンが動く特許文献3の可変ダムとは異なり、位置決めピン56が回転円運動となって応力が分散するので、ダム深さを変えようとして周動パーツ8を回転させたときに、位置決めピン56に過度の応力が集中するのを抑制できる。その結果、可変ダム5の耐久性を向上させることが可能となる。装置の大型化を図る場合、位置決めピンの本数を増やすことによって更なる応力の分散を図ることも可能である。
さらに、係止穴84を円形としたことにより、溝形状の場合に比べて開口領域が大きくなる。そのため、固形物の侵入による閉塞が起きにくく、また固形物が付着した場合であっても通常の可変動作を行うことによって付着物の除去が可能であるという利点がある。一方、係止穴が溝形状の場合、開口部が小さく閉塞が起こりやすい。さらに固形物が溝内に付着すると、移動するピンが溝内の付着物を圧搾して固めてしまうので、装置を分解しなければ除去できない。
さらに、本実施形態の可変ダム5は、主軸受機構22から完全に分離されているので、軸封シールが容易である利点がある。特許文献3の場合、軸受内部を分離液の移送管が通っているので、主軸受機構への液体侵入によるトラブルが懸念される。
上述の特長を有する可変ダム5を用いれば、従来におけるデカンタ1の用途に加え、難排出性固形物(タンパク残渣等)を含む処理物の遠心分離、固形物中に含有する水分の微調整が必要な処理物の遠心分離(特に、下流工程でポンプを使用する場合等)、含有固形物の粒度分布が変化する処理物の遠心分離への適用が実現可能となる。また、分離条件が運転中に変化する処理物の遠心分離にも適用が可能となる。
すなわち、可変ダム5は、デカンタ1の稼動運転中に機械を停止する事無く回転ボウル3内部の滞留液体量を無段階に調整することのできる機構である。通常のデカンタ1では内部の滞留液体量を調整するために装置を停止する必要があるが、本実施形態による可変ダム5を有するデカンタ1ではその必要はない。従って、性状・比重が連続処理中に変化するような液体(例えば、切削油、廃油等)でも運転状態を確認しながらの無段階調整が可能である。また、予備試験等の分離条件が不確定な状況での運転に適しており、連続運転を継続しながら最適な分離条件に調整することが可能である。
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。従って、本発明の範囲は、前述の実施形態及び添付図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
2 ケーシング
3 回転ボウル
4 スクリューコンベア
5 可変ダム
51 セントリペダルポンプ
52 液導入口
53 液排出口
7 固定パーツ
81 周動パーツの操作板
82 操作レバー

Claims (6)

  1. 回転ボウルによって被処理液に遠心力を付与する遠心分離装置の可変ダムであって、
    外周面に形成された分離液の導入口と、内周面に形成された分離液の排出口と前記導入口から前記排出口まで連通する分離液の流路が形成された第1の環状部材からなり、該第1の環状部材の一方の表面に複数の位置決めピンが立設されているポンプと、
    前記回転ボウルの回転軸中心から偏心したところにその中心が位置するように配置され前記ポンプの中央開口部が摺動可能に嵌合されるとともに、前記ポンプの前記排出口と連通する分離液の排出経路が形成された支持リングからなり、前記回転ボウルの分離液排出側の端部に固定配置される固定パーツと、
    前記固定パーツと記ポンプを挟んで前記固定パーツの中央開口部に摺動可能に嵌合され、内周面で前記位置決めピンを係止する円形の係止穴が各前記位置決めピンごとに形成されている第2の環状部材からなる周動パーツと、
    前記周動パーツを回転させることにより、前記支持リングの周方向における前記ポンプの前記導入口の位置を変えてダム深さを調整するダム深さ調整機構と、を備えたことを特徴とする遠心分離装置の可変ダム。
  2. 前記位置決めピンは2本であって、この2本のピンが支持リングの中心の同心円上であ
    って、且つ、支持リングの中心を挟んで直径線上に位置するように配置されており、
    2本のピンを係止する2つの円形の係止穴は、回転ボウルの回転軸上に位置する周動パ
    ーツの中心の同心円上であって、且つ、周動パーツの中心を挟んで直径線上に配置されて
    いることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離装置の可変ダム。
  3. 最も深いダム深さから最も浅いダム深さまでの最大可変量としてL1[mm]を実現し
    たいとき、
    前記回転ボウルの回転軸中心からの偏心量をL1[mm]とし、さらに、前記係止穴の
    直径[mm]を少なくともL2(=2L1+L3,L3は位置決めピンの直径[mm]で
    ある)以上にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の遠心分離装置の可変ダム。
  4. 前記セントリペダルポンプは、外周縁の少なくとも一部に、遠心分離実行時に回転ボウ
    ル内に形成される分離液の液面に対する入水角θが30°±5°の範囲となる液抵抗軽減
    部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可変ダム。
  5. 前記可変ダムは、回転ボウルの回転軸方向において、回転ボウルと回転ボウルの軸受機
    構との間に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の遠心分離装
    置の可変ダム。
  6. 前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の可変ダムを備えたことを特徴とする遠心分離
    装置。
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