JP4833086B2 - 切削用インサート - Google Patents

Description

本発明は、インサート上面と、インサート側面と、コーナ切刃先を介して前切刃先に隣接する主切刃先を備えた切削用インサートに関する。また本発明は、そのような切削用インサートを備えた特に微調整可能な旋削バイト或いはドリルバイトに関する。

旋削バイト、特に精密ドリルバイトは、通常微調整装置を備える。一般に、バイトヘッドに着脱可能に保持された種々の直径の孔をドリル加工或いは旋削加工するための切削用インサートは、微調整装置によって、バイト長手軸線に関し半径方向に調整できる。そのため従来採用されていた切削用インサート或いは切刃プレートは、通常、割出し形インサートとして形成されている。この割出し形インサートは、インサート上面と、該上面と反対側のインサート表面或いはインサート下面と、インサート上面に続くインサート側面を持つ。四角形或いは菱形のインサートの場合、該インサートは４つのインサート側面を持つ。コーナ切刃先も形成するインサートコーナ部において、コーナ切刃先に、インサートの主切刃先および前切刃先が隣接している。

本発明の課題は、好適には微調整装置を備えた、特に旋削バイト又は精密ドリルバイトに対する改善された切削用インサートを提供することにある。また、特に良質の表面に仕上げるためのそのような切削用インサートを備えた旋削バイトを提供することにある。

切削用インサートに関する課題は、本発明に従い請求項１に記載の特徴により解決される。切削用インサートは、コーナ近傍に、前切刃先から主切刃先に向けて延びるチップブレーカベースを持つチップブレーカを備える。以下で主切刃とも呼ぶ主切刃先は、切削用インサートの上面、即ち頂面に対し、チップブレーカのチップブレーカベースの方向に傾斜して延びている。以下で前切刃とも呼ぶ、好適には真っ直ぐな前切刃先は主切刃に向けて下降し、このため前切刃にワイパー形状（wiper geometry）が生ずる。従って、好適には主切刃先と前切刃先とチップブレーカベースは共に閉鎖三角形を形成する。

有利な実施態様では、チップブレーカは、コーナ切刃先から出発しチップブレーカベースに向けて下降するすくい面を形成する。従って該すくい面は、インサート上面で、インサート中心に向けて傾斜している。またチップブレーカは、以下で背後すくい面とも呼ぶすくい面後部を形成する。この背後すくい面は、好適にはチップブレーカベースから出発してインサート上面に向けて上昇、即ちインサート上面からチップブレーカベースに向けて下降している。この結果、インサート平面内に延びる背後すくい面の背後上縁が形成される。この背後上縁と主切刃先と前切刃先は、共に同様に三角形をなしている。

チップブレーカのチップブレーカベースは、好適には、その頂部を湾曲したか丸めた溝状或いは窪み状に形成されている。チップブレーカのチップブレーカベースは、好適には主切刃先に対し４５〜９０°、特に７０±１０°の角度を成して延びている。

切削用インサートの特に有利な実施態様では、前切刃先に、ワイパー切刃、即ちワイパー形状の仕上げ切刃又はワイパー切刃が形成される。好適には、主切刃先と前切刃先は互いに、特に約８０°の角度を成す。

好ましくは、割出し形インサートとして形成された切削用インサートは、インサート上面と前切刃先においてコーナ切刃先に向かって延びる前切刃との間に、負のすくい角を有し、該すくい角は、好適には−６〜−２０°である。インサート上面とチップブレーカのチップブレーカベースとの間における正のすくい角は、＋６〜＋３０°であるとよい。

旋削バイトが、微調整装置並びに旋削バイトに着脱可能に保持された本発明に基づく切削用インサートを有しているとよい。この旋削バイトは、切削用インサートが着脱可能に保持される取替え可能或いは交換可能な旋削ヘッド或いはドリルヘッドを備える。また、切削用インサートをインサートカセットに交換可能に保持し、該カセットを、旋削バイトないし精密ドリルヘッド或いは精密旋削ヘッドの外周に着脱可能に取り付けてもよい。

本発明によって得られる利点は、特に本発明に基づく切削用インサートを精密旋削バイト又は精密ドリルバイトに採用した際、比較的高いか大きな送り行程（即ち大きな１／ｄ比）が可能となり、その際振動問題や精度不良を回避可能な点にある。また主切刃先で作用するチップブレーカを備えた切削用インサートを採用した際、特に前切刃先におけるワイパー形状と組み合わせて、チップ（切り屑）除去式精密旋削中又は精密ドリル中の旋削時或いはドリル時に生じたチップを、加工済み孔内面を傷つける、例えば引っ掻き傷をつけることなしに、確実に孔壁から中心に向けて案内できる利点がある。

ワークの旋削や精密ドリル時、特に仕上げ時に本発明による切削用インサートの利用で得られる、特に僅かな表面粗さを持つ高い表面品質や精密な表面或いは平滑な表面は、チップブレーカが本発明に基づき、幾何学形状に基づいて主切刃先に対し平行ではなく、むしろ４５〜９０°の角度を成して延びていることによっても達成される。

以下図を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。なお各図において同一部分には同一符号が付されている。

図１〜図１２に種々の観点で示す切削用インサート１は、上面２と、以下で底面とも呼ぶ下面４と、４つの側面５とを備える。これら側面５は上面２と下面４の間を、好適には鋭角ないし鈍角を成して延びている。切削用インサート１の形状は、菱形、三角形又は多角形、例えば六角形である。

切削用インサート１のコーナ近傍に、チップブレーカ６が存在する。該ブレーカ６は、前切刃先８から切削用インサート１の主切刃先９迄延びるチップブレーカベース７を形成している。切削用インサート１は、図２に拡大して示す如く、コーナ近傍にコーナ切刃先１０を備える。このコーナ切刃先１０は所定のコーナ半径又はインサート半径、例えばＲｓ＝０．４を持ち、即ち丸められている。

特に図１と２並びに図８〜１２から明らかな如く、前切刃先８と主切刃先９とチップブレーカベース７は、共に三角形又は三角面を形成している。チップブレーカベース７からインサート上面２に向けて延びるチップブレーカ６の背後すくい面１１は、インサート上面２に背後上縁１２を形成する。該上縁１２は、前切刃先８と主切刃先９と共に同様に三角形又は三角面を形成する。背後すくい面１１はチップブレーカベース７から出発し、インサート上面２に向けて上昇している。換言すれば、背後すくい面１１はインサート上面２の背後上縁１２から出発し、チップブレーカベース７に向けて下降している。

更にチップブレーカ６はすくい面１３を形成し、該面１３は、チップブレーカベース７と主切刃先９と前切刃先８の間で三角形又は三角面状に広がっている。すくい面１３はコーナ切刃先１０から出発しチップブレーカベース７に向けて下降している。換言すればすくい面１３はコーナ切刃先１０から出発しインサート上面２に対し傾斜している。

特に図３並びに図７〜１２で明らかなように、チップブレーカベース７は溝状又は窪み状に形成されている。従って、チップブレーカベース７の底面１４はインサート上面２に関し凹面状に湾曲し、即ち、切削用インサート１内に窪んでいるか、インサート１に窪み状に削設され湾曲している。

図１から明らかな如く、前切刃先８と主切刃先９は互いに鋭角φ、好適にはφ＝８０°を成している。図３で、インサート上面２と前切刃先８のコーナ切刃先１０への経過における前切刃８′との成す負のすくい角αは、特に好適には、−６〜−２０°である。インサート上面２とチップブレーカ６のチップブレーカベース７との間の正のすくい角βは、好適には＋６〜＋３０°である。

前切刃先８はワイパー形状Ｒｗに形成されている。前切刃先８ないし前切刃８′はこのワイパー形状において仕上げ切刃或いはワイパー切刃として作用する。そのワイパー半径ＲｗはＲｗ＝５．０である。その場合、主切刃先９は、切削用インサート１の上面或いはトップ面２に対し、チップブレーカ６のチップブレーカベース７の方向に傾斜して延びている。前切刃先８は真っ直ぐであり、主切刃先９に向けて下降し、このため前切刃先８或いは主切刃先９においてワイパー形状を形成している。従って、好適には主切刃先９と前切刃先８とチップブレーカベース７は閉鎖三角形を形成している。

図１３と１５は、各々微調整装置２１を備えた旋削バイト２０を示す。バイト２０に着脱可能に保持された本発明による切削用インサート１を、微調整装置２１により半径方向Ｒ、即ちバイト２０の軸線方向Ａに対し直角に微調整できる。この微調整により、種々の直径の孔を旋削加工或いはドリル加工できる。

図１３に示す旋削バイト２０の場合、該バイト２０に、図１４に拡大して示すドリルヘッド２２がはめ込まれている。このヘッド２２は、切削側端或いはヘッド端２３において外周に、前切刃先８にチップブレーカ６とワイパー形状８′、即ちＲｗを備えた本発明に基づく切削用インサート１を支持している。その際、切削用インサート１は例えばねじ２４によって、ドリルヘッド２２の端面側ヘッド端２３に着脱可能に保持されている。

図１５に示す旋削バイト２０の場合、該バイト２０は、端面側ヘッド端２３に、インサートカセット２６を受けるための凹所２５を備える。このインサートカセット２６は、本発明による切削用インサート１を受けるためのインサート凹所２７を有する。切削用インサート１はそこにねじ２４で着脱可能に保持されている。インサートカセット２６は同様にねじ２８により、旋削バイト２０の外周に着脱可能に保持されている。

本発明に基づく切削用インサートの平面図。 本発明に基づくチップブレーカを備えたインサートコーナ部位の図１における部分ＩＩの拡大図。 切削用インサートにおけるチップブレーカの側面図。 切削用インサートの異なった詳細図。 切削用インサートの異なった詳細図。 切削用インサートにおける特にチップブレーカ部の図。 切削用インサートにおける特にチップブレーカ部の図。 切削用インサートにおける特にチップブレーカ部の図。 切削用インサートにおける特にチップブレーカ部の図。 切削用インサートにおける特にチップブレーカ部の図。 切削用インサートにおける特にチップブレーカ部の図。 切削用インサートにおける特にチップブレーカ部の図。 微調整装置と設置可能なバイトヘッド或いは旋削ヘッドを備えた旋削バイトの側面図。 本発明に基づく切削用インサートを備えた図１３における旋削バイトのドリルヘッド或いは旋削ヘッドの平面図。 着脱可能なインサートカセットとその中に着脱可能に保持された本発明に基づく切削用インサートを備えた微調整可能な旋削バイトの分解斜視図。

符号の説明

１ 切削用インサート、２ インサート上面、５ インサート側面、６ チップブレーカ、７ チップブレーカベース、８ 前切刃先、９ 主切刃先、１０ コーナ切刃先、２０ 旋削バイト

Claims (11)

1. インサート上面（２）と、インサート側面（５）と、コーナ切刃先（１０）および前記コーナ切刃先（１０）に続く前切刃（８′）を介して前切刃先（８）に隣接する主切刃先（９）とを備えた切削用インサート（１）であって、コーナ近傍に設けられたチップブレーカ（６）が、前切刃先（８）から主切刃先（９）に向けて延びるチップブレーカベース（７）を備えた切削用インサート（１）において、
   インサート上面（２）と前切刃（８′）との間に前切刃先（８）がコーナ切刃先（１０）に向う方向に６°以上２０°未満の負のすくい角（α）が形成され、且つ、
   主切刃先（９）と前切刃先（８）とチップブレーカベース（７）とが閉じた三角形を形成してなることを特徴とする切削用インサート。
2. チップブレーカ（６）が、コーナ切刃先（１０）から出発してチップブレーカベース（７）に向けて下降するすくい面（１３）を形成することを特徴とする請求項１記載の切削用インサート。
3. チップブレーカ（６）が、チップブレーカベース（７）から出発してインサート上面（２）に向けて上昇する背後すくい面（１１）を形成することを特徴とする請求項１又は２記載の切削用インサート。
4. チップブレーカ（６）のチップブレーカベース（７）が溝状に形成されたことを特徴とする請求項１から３の１つに記載の切削用インサート。
5. チップブレーカ（６）のチップブレーカベース（７）が主切刃先（９）に対し、４５〜９０°の角度（δ）を成して延びることを特徴とする請求項１から４の１つに記載の切削用インサート。
6. 前切刃先（８）に、ワイパー形状の仕上げ切刃或いはワイパー切刃（８′、Ｒｗ）が形成されたことを特徴とする請求項１から５の１つに記載の切削用インサート。
7. インサート上面（２）とチップブレーカ（６）のチップブレーカベース（７）の間に、正のすくい角（β）が形成され、該すくい角（β）が＋６〜＋３０°であることを特徴とする請求項１から６の１つに記載の切削用インサート。
8. 主切刃先（９）および前切刃先（８）が、互いに８０°の鋭角（φ）を成して延びることを特徴とする請求項１から７の１つに記載の切削用インサート。
9. 着脱可能に保持された請求項１から８の１つに記載の切削用インサート（１）を備えることを特徴とする微調整装置（２１）付きの旋削バイト。
10. 切削用インサート（１）を保持する着脱可能な旋削ヘッド或いはドリルヘッド（２２）を備えることを特徴とする請求項９記載の旋削バイト。
11. 切削用インサート（１）を受けるインサートカセット（２６）が着脱可能に取り付けられたことを特徴とする請求項９記載の旋削バイト。

Images