JP4832593B1 - パルプ繊維強化樹脂原料 - Google Patents

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Abstract

【課題】パルプ繊維複合PPは、パルプ繊維表面および繊維間の残存空気が射出成形時の高圧付与によって分離し、成形品に気泡として残留して意匠性を著しく低下させる。このため、パルプ繊維にエラストマーなどの希薄な溶液に浸漬するなどして含浸させた後に絞液して残存空気を排除させるなどしていたが、反面、衝撃強度の低下をもたらしていた。
【解決手段】この発明に係るパルプ繊維強化樹脂原料は、界面活性剤を含浸したパルプ繊維に、界面活性剤と同種の界面活性剤の存在下で水に分散させた低弾性エラストマーの微粒子が付着し、低弾性エラストマーと熱可塑性樹脂の微細粒子が粘着して成ることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

この発明は、パルプ繊維強化原料に関する。更に詳しくは、回収古紙を解繊して得たパルプ繊維を含む熱可塑性樹脂複合体の原料に関する。
炭酸ガス排出量の抑制と資源の有効利用を目的とした天然素材との複合化により、合成樹脂の使用量削減を目的に、回収紙を繊維状に粉砕して得たパルプ繊維を混入する手段がある。
例えば、パルプ繊維との複合体について、粉砕によって得た解繊状の古紙とPP(ポリプロピレン)とを混合したものを溶融混合する手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、嵩高な植物繊維の取扱いを容易にするため、融点200℃以下の可塑剤またはセルロース疎水化剤を用いて植物繊維の分散を促進出来る状態の塊状物またはペレットを用いてPP(ポリプロピレン)と混練することによって、樹脂への分散性を向上する手段が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、パルプ繊維の表面にあって部分的にフィブリル化して成る微細繊維は、パルプ繊維同士が相互に絡み合って凝集した態様を容易に形成し、樹脂との混合時に受けるせん断力によって解繊することが無く、良好な分散状態が得ることができない。この結果、パルプ繊維を含んだPP(ポリプロピレン)は剛性と耐熱性に優れる反面、衝撃強度や引っ張り伸び量の低下をもたらすなどの脆性が増して、複合化の向上効果を損なわせる。
さらに、前記微細繊維間にある空気が混練過程で容易に排出されずに成形材料内に残留し、射出成形などの高圧下の流動過程で分離して成形品に微細気泡として残留した白化部分を形成するので、意匠性が低下する。
この課題を解決するために、パルプ繊維の表面を樹脂被覆する手段として、オレフィン系の熱可塑性樹脂を溶剤に分散させた液状態で吹き付けるなどして繊維表面に被覆させた後にマトリックスである樹脂と混合して一体化させたことによって、機械強度を改善する手段が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、フィブリル化した繊維表面に弾性樹脂溶液を付与後に絞液して付着させたことによって、繊維本体にフィブリル化した繊維を固着させるようにして用いることで、白化を防止する手段が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開平05−320367号公報 特開平06−073231号公報 特開平08−020021号公報 特開平09−228250号公報 特開平11−5203号公報 特開2003−169978号公報 特開平08−252557号公報
これら手段は、繊維に残存する空気が樹脂成形品表面に移行して成す白化を防止するため、該樹脂溶液が侵入してパルプ繊維とマトリックスを成す樹脂との一体化を達成し、残存する空気を排除することによって係る問題を排除する。しかし、この改質方法に依れば、繊維同士が絡み合って凝集状態を呈して成る場合に、表面のフィブリル化した微細繊維が成す隙間まで樹脂溶液を含浸させることは困難であり、凝集した繊維の分散を促すことができないため、脆性増加が強度や弾性率の上昇を促す反面、衝撃強度の大幅な低下を来すことになる。
つまり、パルプ繊維表面の改質を目的に含浸する樹脂がマトリックス樹脂との親和性を促す必要から同系のものを用いる必要があるため、繊維表面に保持する微細繊維の間隙を埋めるには至らず、なおも残存する気泡に負荷応力が集中してパルプ繊維と樹脂の界面から破壊しやすい態様を残し、パルプ繊維の補強効果が得られず、特に、高速での負荷応力に対する耐力、つまり衝撃強度の低下を招く、という課題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、繊維同士の凝集を抑止して、複合化した樹脂におけるパルプ繊維に優れた分散性が付与されるとともに、エラストマーがパルプ繊維表面に塗布して急激な応力負荷の緩衝部分を形成して複合化に伴う衝撃強度の低下を抑制することができるパルプ繊維強化樹脂原料を提供する。
この発明に係るパルプ繊維強化樹脂原料は、界面活性剤を含浸したパルプ繊維に、界面活性剤と同種の界面活性剤の存在下で水に分散させた低弾性エラストマーの微粒子が付着し、低弾性エラストマーと熱可塑性樹脂の微細粒子が粘着して成ることを特徴とする。
この発明に係るパルプ繊維強化樹脂原料は、界面活性剤を含浸したパルプ繊維に、界面活性剤と同種の界面活性剤の存在下で水に分散させた低弾性エラストマーの微粒子が付着し、低弾性エラストマーと熱可塑性樹脂の微細粒子が粘着して成るので、繊維同士が再度に凝集を抑止して、樹脂との複合化におけるパルプ繊維に優れた分散性を付与したこと、および、エラストマーが前記パルプ繊維表面に塗布して急激な応力負荷の緩衝部分を形成したので、複合化に伴う衝撃強度の低下を抑制することが出来た。
実施の形態1を示す図で、パルプ繊維と複合化したPP(ポリプロピレン)を成形材料として射出成形した試験片を用いて、一般物性を測定した結果を示す図。
実施の形態1.
<概要>
PP(ポリプロピレン)と複合化するパルプ繊維は、その繊維長に応じて衝撃強度に大きな影響を及ぼす反面、パルプ繊維の表面が部分的にフィブリル化して成る微細繊維を備えて、互いが絡み易くなることからPP(ポリプロピレン)などの樹脂と溶融混練による複合化の際に繊維同士が凝集して均一分散を妨げるとともに、絡み合った繊維の微細繊維間に残留した空気が十分に排除できず、射出成形時の高圧下で流動する際に微細気泡が分離し、成形品を部分的に白化させて意匠性の悪化を招く原因を生むほか、強度の発現を抑制することになる。
本発明は、表面にフィブリル化した微細繊維を備えた長繊維を、相互に絡みにくくして均一分散させる手段に関し、基材に用いるPP(ポリプロピレン)の粉末をパルプ繊維表面に保持させることにより、相互の絡み合いを阻害して凝集を抑制し、長繊維を複合樹脂内に均一分散させることを特徴とする。
<手段>
ミキサー内での高速する回転翼との衝突時に生じる専断力によって、凝集したパルプ繊維が一時的な解繊状態を得て浮遊した状態で、界面活性剤の希薄溶液に次いでPIB(ポリイソブチレン)の希薄水分散液を吹き付けた後、PP(ポリプロピレン)の微粉粒を投入してパルプ繊維の表面に保持させたことにより、前記パルプ繊維の凝集を抑制した。
このとき、疎水基と親水基を併せ持つ界面活性剤の希薄溶液をパルプ繊維に吹き付けて微細繊維間に含浸後、粘着性に富むPIB(ポリイソブチレン)の水分散液を重ねて吹き付けたことにより、微細繊維間にある空気を排除できる効果を付与した。
さらに、その後に投入したPP(ポリプロピレン)を容易に付着させたことによって、表面にあるフィブリル化した微細繊維同士の絡み合いを抑制し、押出機を用いた溶融混練によって複合樹脂内に均一分散を促し、意匠性の改善と強度の向上効果を得た。
<先行技術>
パルプ繊維の表面を樹脂被覆する手段は、特許文献3(特開平08−020021号公報)によれば、オレフィン系の熱可塑性樹脂を溶剤に分散させた液状態で吹き付けるなどして繊維表面に被覆させることによって機械強度を改善する事例がある。
また、特許文献4(特開平09−228250号公報)では、フィブリル化した繊維表面に弾性樹脂溶液を付与後に絞液して付着させたものを用いることによって、白化を防止する手段が記載されている。
パルプ繊維との複合体については、特許文献1(特開平05−320367号公報)において、粉砕によって得た解繊状の古紙とPPとを混合したものを溶融混合する手段が紹介されている。
また、特許文献2(特開平06−073231号公報)において、融点200℃以下の可塑剤またはセルロース疎水化剤を用いて、植物繊維の分散を促進させたものをPP(ポリプロピレン)と混練することによって分散性を向上する手段が開示されている。
一方、パルプ繊維の樹脂複合体に関する先行文献は、特許文献5(特開平11−5203号公報)に古紙原料を乾式解繊後に接着剤を添加して熱可塑性樹脂を添加空いた成形材料を用いて所定の温度で加熱加圧成形を行う手段が紹介されている。
また、特許文献6(特開2003−169978号公報)では、撹拌によって浮遊した球状綿の表面にバインダー液を吹付けるクッション材の製造方法が示されている。
さらに、特許文献7(特開平08−252557号公報)では、古紙パルプと熱可塑性微細繊維を加熱処理前に均一に混合して古紙ボードを製造する手段が開示されている。
<先行技術との相違点>
本発明は、パルプ繊維表面のフィブリル化した微細繊維が備える空間内にある空気の排除を容易とするため、疎水基と親水基を併せ持つ界面活性剤の希薄溶液を用いたことにより、前記微細繊維と親和性に優れた親水基を備える界面活性剤が容易に含浸して繊維本体収束した状態を確保した後、樹脂との親和性に優れる疎水基の作用によって、希薄溶液に分散した粘性に優れるエラストマーを強固に被覆できる。
一方で、粘性に優れた樹脂を表面部分に被覆したことにより、PP(ポリプロピレン)との混練によって相互が一体化し、両材料の界面部分における緩衝効果を増し、衝撃強度の向上に寄与できる。
また、パルプ繊維と樹脂との複合体の形成において、繊維を凝集状態から解放後に再度の凝集を抑止する手段に関する記述が先行技術文献には無く、本発明の技術上の特徴を捕捉するに至らない。
<効果(進歩性)>
パルプ長繊維に界面活性剤を含浸させた後にパルプ長繊維にPIB(ポリイソブチレン)の水分散液を吹き付けたので、微細繊維間に残存する空気(気泡)を排除し、表面に担持したPP(ポリプロピレン)が繊維同士の絡み合いを抑止して、過剰のPP内で均一に分散した。この結果、射出成形時に気泡の排出に起因する白化の抑制と、複合化した樹脂の強度を向上する。また、低融点で粘性に富むPIB(ポリイソブチレン)を繊維表面に介在させたので、成形時の流動性が過度に低下することなく、剛性が向上しても応力の急激な負荷を緩和できるので、衝撃強度の低下を抑制した。
PIB(ポリイソブチレン)の希薄水分散液を塗布して改質したパルプ繊維と、粉末状態のPP(ポリプロピレン)と、を混練して得る複合樹脂の製造方法について、以下に詳述する。
まず、低弾性エラストマーであるPIB(ポリイソブチレン)と界面活性剤を含んだ高温水とを高速攪拌してエマルジョン(水に乳化、分散させたもの)の状態になるまで分散させた。ここで用いたPIB(ポリイソブチレン)は、分子量が100K(Kは×1000であり、100Kは100000を表す。以下、同じ。)以上のものは、溶剤を用いて膨潤または溶解させるなどして粘度を低下させたうえで分散させることが必須となるので、複合樹脂の用途に応じて用いた溶剤を排除させることが必要となる。
パルプ繊維は、酸や塩素などの変色や変質を促す残留薬品が無い回収紙などを選択する。選択した回収紙は、対向する二枚のディスク間に設けた間隙内に投入、せん断力による解繊によって得る。
パルプ繊維の改質は、上記パルプ繊維をヘンシェルミキサーなどの高速回転する羽根を備えた混合機中で攪拌しながら浮遊させた状態で、界面活性剤の希薄水溶液を霧状で吹き付ける。添加する界面活性剤の量は、パルプ繊維に対して0.5〜2.0%、吹付ける水溶液はパルプ繊維の1/10〜1/2量とすることが好ましい。
また、用いる界面活性剤は、エチレンオキサイドを主体とする親水基と直鎖状アルキル基から成る疎水基を併せ持つものが好ましい。これによって、疎水性のPP(ポリプロピレン)と親水性のパルプ繊維との親和と、該界面活性剤と、その後に添加するPIB(ポリイソブチレン)の親和を促すことが出来る。
次に、PIB(ポリイソブチレン)の水分散希薄液を、界面活性剤の水溶液を含有して適度に湿潤した状態にあるパルプ繊維が混合機内で浮遊する状態下で吹付ける。PIB(ポリイソブチレン)は極めて微細な粒子状で水中に均一分散した状態にあって、パルプ繊維が含んでいる界面活性剤との親和性に優れるので、繊維間への侵入が容易となる。ここで用いたPIB(ポリイソブチレン)は、常温で高い粘着性を呈する分子量80K程度のものを5%の希薄分散液とし、パルプ繊維100部に対して2.5部が被覆するように吹付けた。
もし、PIB(ポリイソブチレン)の水分散液を噴霧せずに直接投入をした場合は均質な塗布状態が得られず、部分的に過度な湿潤状態を形成し、該部分がパルプ繊維の表面に備える微細繊維が収束するため短繊維状を成す。このため、十分な強度向上の効果を得ることができない、という問題を有することになる。
上述したPIB(ポリイソブチレン)のパルプ繊維への塗布において、過度な湿潤状態を成した場合は、混合機内でパルプ繊維が浮遊し難くなり、壁面への過度な付着によって継続したPIB(ポリイソブチレン)の均一な塗布を阻害する状態に陥ることになる。この状況または可能性が示唆された場合は、各原料の噴霧を停止し、混合機内に乾燥空気を投入してパルプ繊維の乾燥を促すことが好ましい。
次に、上記の処理を完了したパルプ繊維にPP(ポリプロピレン)粉末を加えて、同様に混合する。PP粉末の添加は、上述したパルプ繊維へのPIB(ポリイソブチレン)塗布による表面処理に継続して行い、所定量を投入して達成する。混合機内では、綿状に凝集したパルプ繊維が高速回転する羽根との衝突から受けるせん断力によって解繊する。この状態でPP(ポリプロピレン)粉末を投入し、両材料が気中に浮遊した状態で均一混合を呈した状態を得た段階で撹拌を停止する。
ここで用いたPP(ポリプロピレン)粉末は、パルプ繊維との複合化による射出成形時の流動性低下を勘案し、低粘度のものを適用する。本実施の形態では、MI(メルトフローインデックス)が40g/10minのものを選択し、溶融混練時にパルプ繊維に塗布したPIB(ポリイソブチレン)の添加量は過度に溶出せずに適度に残存する塗布量を得ており、パルプ繊維の含有量は流動性喪失を抑制するように33wt%を投入して成る。
撹拌の停止によって攪拌機の槽内下部に滞留した状態を得たことにより、パルプ繊維に接触したPP(ポリプロピレン)粉末が繊維表面を覆うとともにPIB(ポリイソブチレン)を介して保持されるので、パルプ繊維同士の凝集が抑止されて粉末流体として扱うことが可能な成形材料である混合物となる。
以上の粉末流体の特性を得て連続投入が可能になった上記混合物は、押出機を用いた溶融混練を行った。このときの押出機のシリンダー温度と押出速度は、樹脂温度が190℃、好ましくは180℃を越えないように設定したうえで溶融混練を行うことが好ましい。
混練が完了したPP(ポリプロピレン)とパルプ繊維の複合体で、押出機から吐出されたストランドは、水中での冷却を行うことによって吸湿し、成形時に発泡するなどして外観に支障を来すことがあるので、空冷固化を行い、これを適度に裁断してペレット化することが好ましい。
以下に、上述手段によってパルプ繊維と複合化したPP(ポリプロピレン)を成形材料として射出成形した試験片を用いて、一般物性を測定した結果を図1に示す。
図1は実施の形態1を示す図で、パルプ繊維と複合化したPP(ポリプロピレン)を成形材料として射出成形した試験片を用いて、一般物性を測定した結果を示す図である。
本実施の形態に依らない比較例として、比較例1−1はパルプ繊維に界面活性時のみを塗布した後にPP(ポリプロピレン)粉末とを同一の混合機を用いて混合したものを押出機による溶融混練およびペレット化した成形材料、比較例1−2はパルプ繊維とPP(ポリプロピレン)粉末とを直接混合した後に押出機を用いて溶融混練およびペレット化した成形材料であり、各々、射出成形によって得た試験片の各種物性を併記した。
本実施の形態によるパルプ繊維複合PP(ポリプロピレン)は、PIB(ポリイソブチレン)をパルプ繊維表面の微細繊維間に保持させたことによって、前記条件を満たさない条件で処理したものに比較して、流動性、耐衝撃性および表面意匠性に優れている。界面活性剤のみを含浸させたパルプ繊維は、湿潤状態を保持した状態で、PP(ポリプロピレン)粉末とともに攪拌機の槽内で高速回転する羽根による撹拌状態で受けるせん断力による分散を来たし、押出機における溶融混練時に繊維が保持するPIB(ポリイソブチレン)がPP(ポリプロピレン)に先行して溶融して混練される際に、繊維間にある空気がPP(ポリプロピレン)内に取り込まれずに排除され易く、射出成形時の金型内で受ける高圧によって排除されるので、白化を来すことがない。
これに対し、PIB(ポリイソブチレン)を保持せずに界面活性剤のみを含浸させたパルプ繊維(比較例1−1)は、湿潤状態を保持した状態でPP(ポリプロピレン)粉末とともに攪拌機内で高速回転する羽根によって受けるせん断力で分散を来す反面、PIB(ポリイソブチレン)を表面に保持しないので、押出機による溶融混練時に繊維間の空気を十分に排除できず、射出成形時の金型内で受ける高い圧力で排出されて、僅かながらも白化として視認されることになる。
一方、界面活性剤とPIB(ポリイソブチレン)を用いた処理を行うこと無しに、攪拌機の槽内で高速回転させたPP(ポリプロピレン)とともに撹拌混合したものを押出機よる溶融混練して得たペレット(比較例1−2)は、パルプ繊維と繊維間に保持する空気をPP(ポリプロピレン)の溶融時に受ける高いせん断力を受けても完全に排除できない。その結果、射出成形時の金型内で受ける高圧下での射出流動時に微細な気泡が排出され、これが成形品表面におけるパルプ繊維の凝集した状態を成す部位で、0.1〜3mm程度の白化点が成形品表面に視認できるようになる。
また、界面活性剤およびPIB(ポリイソブチレン)を含まない何れの試験片とも、パルプ繊維の表面に付着したPIB(ポリイソブチレン)の高い粘性による緩衝作用を受けることなく衝撃応力を吸収することになるので、破壊しやすくなり、衝撃強度が優位に低下している。
このことから、本実施の形態によるパルプ繊維強化の手段は、得られたペレットが前記パルプ繊維における空気の残存が抑止されるとともに、比較例に比較して優位に優れた分散性が得られたことに伴って、繊維の凝集に伴う繊維間に保持することもないので白化の発生を抑制できた。また、PIB(ポリイソブチレン)の高粘性による衝撃吸収性を受けて、優れた衝撃強度を発現することも確認できた。
この発明の実施の形態に係るパルプ繊維強化樹脂原料は、高速で回転する回転翼を備えたミキサーに凝集して綿状を成すパルプ繊維を投入し、前記回転翼に衝突して生じるせん断力によって解繊された状態を得た繊維の表面に粘着性に富むPIB(ポリイソブチレン)を吹き付けて塗布した後、基材を成すPP(ポリプロピレン)の粉末を投入して混合、保持させたものである。
該パルプ繊維強化樹脂原料は、パルプ繊維との親和性に優れてPIB(ポリイソブチレン)の水分散に用いる界面活性剤と同系の界面活性剤を含浸した湿潤状態で、PIB(ポリイソブチレン)の希薄水分散液を吹き付けてパルプ繊維表面にある微細繊維の間隙および表面に塗布したものである。
上記処理を施したパルプ繊維とPP(ポリプロピレン)粉末の混合物であるパルプ繊維強化樹脂原料は、押出機などを用いて170〜190℃で溶融混練して複合化し、粒状に加工することによって成形材料が得られる。
この発明の実施の形態に係るパルプ繊維強化樹脂原料は、ミキサー内で混合したPIB(ポリイソブチレン)を塗布したパルプ繊維と粉末状態のPP(ポリプロピレン)との混合物が、静置後に前記PPが前記パルプ繊維にPIB(ポリイソブチレン)を介して保持されるので、パルプ繊維が再度に凝集状態を呈することがない。
また、疎水基と親水基を併せ持つ界面活性剤の希薄水溶液を吹き付けて繊維表面の微細繊維に含浸させたので、前記微細繊維間に容易に含浸して空気を排除して射出成形時に成形品表面に白化の形成を抑制できるうえに、湿潤状態を維持したままで同種または同系の界面活性剤を用いたPIB(ポリイソブチレン)の希薄水分散液を微細繊維に塗布したので、パルプ繊維との親和性が向上して表面に保持することができた。
その結果、得られた成形品の表面に白化点発生の抑制と、粘性に富むPIB(ポリイソブチレン)がパルプ繊維とPP(ポリプロピレン)との界面に集中する応力の緩衝作用を備えているので、衝撃強度を向上させることができる。
従って、押出機などに投入して成形材料とするペレット加工する際、PIB(ポリイソブチレン)を介して保持した粉末状態のPP(ポリプロピレン)が溶融混練時にPIB(ポリイソブチレン)がPP(ポリプロピレン)よりも低温で溶融して繊維間にある空気を排除した後、PP(ポリプロピレン)が溶融状態の高いせん断力でパルプ繊維に一層の分散を促して複合化するので、パルプ繊維の高い分散性を得て各種強度の向上効果が得られる。

Claims (4)

  1. 界面活性剤を含浸したパルプ繊維に、界面活性剤の存在下で水に分散させたポリイソブチレンの微粒子が付着し、前記ポリイソブチレンと熱可塑性樹脂の微細粒子が粘着して成ることを特徴とするパルプ繊維強化樹脂原料。
  2. 前記パルプ繊維に含浸された界面活性剤が、エチレンオキサイドを主体とする親水基と直鎖状アルキル基から成る疎水基を併せ持つ界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載のパルプ繊維強化樹脂原料。
  3. 前記ポリイソブチレンが、分子量100K未満のポリイソブチレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のパルプ繊維強化樹脂原料。
  4. 前記ポリイソブチレンが、エチレンオキサイドを主体とする親水基と直鎖状アルキル基から成る疎水基を併せ持つ界面活性剤を用いて水分散したものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパルプ繊維強化樹脂原料。
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