JP4906940B2 - 親水性樹脂の製造方法及びパルプ繊維複合樹脂の成形品 - Google Patents

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本発明は、例えば、空気調和機の加湿機能を付与するエレメントを構成する親水性樹脂に適用するパルプ繊維複合樹脂の成形品に関する。さらに詳しくは、パルプ繊維などとの複合体に高い親水性を付与する改質手段である親水性樹脂の製造方法に関する。
炭酸ガス排出量の抑制と資源の有効利用を目的とした天然素材の活用が進められ、汎用のPP(ポリプロピレン)使用量削減の施策として回収紙を繊維状に粉砕して得たパルプ繊維を混入することによる前記目的の達成手段として注目されつつある。
例えば、パルプ繊維との複合体については、粉砕によって得た解繊状古紙とPP(ポリプロピレン)と溶融混合する手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、嵩高な植物繊維の取扱いを容易とするために植物繊維の分散を促進する融点200℃以下の可塑剤またはセルロース疎水化剤を用いて作製した塊状物またはペレットとPP(ポリプロピレン)とを混練することにより、樹脂への分散性を向上する手段が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、パルプ繊維の表面にあって部分的にフィブリル化して成る微細繊維は、パルプ繊維と樹脂の混合に伴う親和性を阻害する作用を呈することから、繊維と樹脂とが直接的に強固な接合を備えた複合化の態様を得ることが困難である。この結果、パルプ繊維を複合化したPP(ポリプロピレン)は剛性と耐熱性に優れる反面、衝撃強度や引っ張り伸び量の低下をもたらすなど、脆性の増加に伴って複合化の向上効果を損なわせる。フィブリル化とは、繊維内部のフィブリル(小繊維)が、摩擦作用で表面に現れて毛羽立ちささくれる現象をいう。
さらに、前記微細繊維間にある空気が単純な混練では容易に排出せずに残留し、射出成形などの高圧下の流動過程で分離して成形品に気泡として残留し易く、流動方向に白化痕を形成するなどの意匠性低下を来すという課題がある。
この課題を解決するために、パルプ繊維の表面を樹脂被覆する手段として、オレフィン系の熱可塑性樹脂を溶剤に分散させた液状態で吹き付けるなどして繊維表面に被覆させた後にマトリックスである樹脂と混合して一体化させたことによって、機械強度を改善することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、フィブリル化した繊維表面に弾性樹脂溶液を付与後に絞液して付着させ、繊維本体にフィブリル化した繊維を固着させたものを用いる、白化の防止手段が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開平05−320367号公報 特開平06−073231号公報 特開平08−020021号公報 特開平09−228250号公報
しかしながら、上記特許文献1乃至4に記載された手段によれば、繊維表面のフィブリル化した微細繊維が成す隙間に上記溶液が侵入することにより、パルプ繊維とマトリックスを成す樹脂との複合体に気泡が残留せず、意匠性の向上が達成される。しかし、この改質に伴ってパルプ繊維が疎水性の樹脂で被覆されるので、本質的に備える親水性を損なうことになる。
また、パルプ繊維表面の改質には樹脂との接合強化を目的に疎水化処理が成されてマトリックス樹脂との親和性を促す必要があるため、複合化された成形樹脂にはパルプ繊維の表面にあるフィブリル化した微細繊維が樹脂内で広がりを有して親水性を助長する構造が排除され、擬似的な単一繊維の態様を示す構造を成すため、PP(ポリプロピレン)の疎水性のみが反映され、成形品表面に親水性が得られ難い。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、親水基と親油基を備えた両親媒性の化学構造の物質である界面活性剤(カチオンまたはノニオン系)をアジュバント(Adjuvant)として樹脂成分を含浸したパルプ繊維に、同種の界面活性剤を溶解した水中でディスパージョンしたポリイソブチレン(PIB)を担持したうえで、PVA(ポリビニルアルコール)などの親水性樹脂を混練した成形材料を用いて射出成形することによって、親水性を発現する成形品を得ることが出来る親水性樹脂の製造方法及びパルプ繊維複合樹脂の成形品を提供する。
この発明に係る親水性樹脂の製造方法は、界面活性剤を含浸させた後にマトリックスとする熱可塑性樹脂の融点以下で前記界面活性剤を含んで粘性に富む熱可塑性樹脂を塗布したパルプ繊維を、熱可塑性樹脂を非水溶性の親水性樹脂とともに水溶性の親水性樹脂を添加し、それらを溶融混練して成ることを特徴とする。
この発明に係る親水性樹脂の製造方法は、界面活性剤を含浸させた後にマトリックスとする熱可塑性樹脂の融点以下で前記界面活性剤を含んで粘性に富む熱可塑性樹脂を塗布したパルプ繊維を、熱可塑性樹脂を非水溶性の親水性樹脂とともに水溶性の親水性樹脂を添加し、それらを溶融混練して成るので、パルプ繊維の表面にあるフィブリル化した微細繊維が広がりを損なわずに複合化するので、後段で添加したPVA(ポリビニルアルコール)との接触または近接の機会が増えて、成形品に親水性の発現が容易となる。
実施の形態1を示す図で、パルプ繊維とPPの複合樹脂に関し、主要樹脂組成が異なる成形材料の流動性(MI)と、これを用いて射出成形によって得た板状試験片を用い、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度、水の接触角、外観について評価した結果を示す図(実施例)。 実施の形態1を示す図で、パルプ繊維とPPの複合樹脂に関し、主要樹脂組成が異なる成形材料の流動性(MI)と、これを用いて射出成形によって得た板状試験片を用い、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度、水の接触角、外観について評価した結果を示す図(比較例)。
実施の形態1.
<概要>
親水基と親油基を備えた両親媒性の化学構造の物質である界面活性剤(カチオンまたはノニオン系)をアジュバント (Adjuvant)として樹脂成分を含浸したパルプ繊維に、同種の界面活性剤を溶解した水中でディスパージョンしたポリイソブチレン(PIB)を担持したうえで、PVA(ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol))などの親水性樹脂を混練した成形材料を用いて射出成形することによって、親水性を発現する成形品を得ることが出来る。
アジュバント(Adjuvant)とは、薬物の作用を修飾(増強)するために加えられる試薬のことであり、対象物の表面を「濡らす力」と「表面から内部へとしみ込ます力」の両方を併せ持つものをいう。
<手段>
水溶性の界面活性剤を吹き付けた湿潤状態のパルプ繊維に対し、粘性に富む低融点・低分子樹脂であるPIB(ポリイソブチレン)に、同様の界面活性剤を用いてディスパージョン(分散・乳化)した希薄水分散液を吹き付けて、繊維表面に備えるフィブリル化した微細繊維の間隙に担持さることにより、前記パルプ繊維の微細繊維と前記PIB(ポリイソブチレン)を保持させた。
上記の素材構成を有するパルプ繊維に、水に不溶性のPVAに加えて水溶性のPVA(ポリビニルアルコール;例えば日本酢ビ・ポバール社製のJMR−10L)系をPP(ポリプロピレン)と混練して複合材料を得る。これを射出成形などを用いて溶融状態で加圧することによって賦型して得た成形品は、親水性を発現する。
しかし、成形品である加湿エレメントが、その表面に安定した水の薄膜を形成するには、PVAおよびパルプ繊維が膨潤するまでの相応時間、成形品を浸漬する必要があった。
本発明は、この解決手段として、微量の水溶性PVA(ポリビニルアルコール)を併用することにより、使用中に微量が溶出したPVA(ポリビニルアルコール)を成形品の表面に薄膜形成するようにしたものである。少なくとも水溶性のPVA(ポリビニルアルコール)は、成形時の溶融粘度が基材であるPP(ポリプロピレン)よりも低いものを使用し、これによって成形材料が溶融状態で金型内を高速で流動する状態で、低粘度のPVA(ポリビニルアルコール)が成形品表面域に移行して高濃度な層を形成し、PP(ポリプロピレン)が含むパルプ繊維を含めて親水性が一体化することが好ましい。
本発明は、繊維表面に毛羽立った状態にあるフィブリル化した微細繊維に被覆した両親媒性分子を備えた界面活性剤を介してミセル構造を備え、微細な水分散状態を成す粘性樹脂を保持したパルプ繊維とPP(ポリプロピレン)などの熱可塑性樹脂と複合化した成形樹脂を用い、これに親水性樹脂のPVA(ポリビニルアルコール)などを添加して効率的に親水性を発現させたことを特徴とする。一方の物質(混じり合わない液体のうちの一方または両親媒性物質、またはその混合物)が粒状に会合し(異なる分子が層状に分布し)ている構造をミセル(micelle)と呼び、両親媒性物質がミセルを形成すると液滴の分散系が安定化する。
ノニオン系、場合によってはカチオン系の界面活性剤の希薄な溶液または乳濁液を吹き付けて繊維表面の微細繊維に含浸させた。用いた界面活性剤のHLB値が10〜13であることからパルプ繊維と優れた親和性を有して前記微細繊維間にある空気を排出しながら湿潤状態を保持し、微細繊維間に残存する空気の排除を促すことが出来る。さらに、パルプ繊維が湿潤状態を維持して分子量の小さいPIB(ポリイソブチレン)の希薄水分散液から順に吹き付けたので、優れた親和性を有して前記微細繊維の表面に均一被覆して一体化を達成できる。
オレフィン系エラストマーのPIB(ポリイソブチレン)は、パルプ繊維に散布した界面活性剤と同種のものを水に添加した状態でディスパージョンして作製した。従って、パルプ繊維に含浸させた界面活性剤は、PIB(ポリイソブチレン)をパルプ繊維に被覆する際のアジュバンド(Adjuvant)として作用するので、微細繊維間に浸透して前記繊維間にある空気の排除も容易に行える。
以上の処理を経たのち、これを乾燥してPP(ポリプロピレン)およびPVA(ポリビニルアルコール)などの親水性樹脂と混練することによって複合化した成形樹脂は、前記微細繊維がパルプ繊維本体に収束すること無く、PIBが介して展開した態様が得られることになる。
このとき、PP(ポリプロピレン)とともに親水性樹脂であるPVA(ポリビニルアルコール)を混練して分散させたので、複合化した成形樹脂内で分散するパルプ繊維表面にあって展開して態様を成すフィブリル化した微細繊維に、前記PVA(ポリビニルアルコール)の溶融物が近接して親水性を効率的に発現できる。しかも、PIB(ポリイソブチレン)などが付着したパルプ繊維とPP(ポリプロピレン)との複合化樹脂に比較して有意に低い粘度のPVAは、金型内での流動時に剪断力を受けることに伴って表面層へ移行するので、成形品の表面における親水性が一層向上することになる。
また、用いるPVA(ポリビニルアルコール)は非水溶性のものを主体とし、水溶性のものを併用する。水と接触して用いる成形品に分散したPVA(ポリビニルアルコール)のうち、水溶性のものが溶出して成形品表面に薄膜を形成するので、一層の親水性を付与することが出来るほか、乾燥状態の成形品であっても再度の湿潤状態を早期に回復することができる。
<効果(進歩性)>
疎水性を呈するPP(ポリプロピレン)との複合化において、PP(ポリプロピレン)が親水性のパルプ繊維の表面を覆うので親水性を喪失するのに対して、本発明はアジュバンドとして用いた界面活性剤(カチオン系またはノニオン系)を介してPIB(ポリイソブチレン)を浸透させた態様を成した前記パルプ繊維がPP(ポリプロピレン)と混合したので、パルプ繊維の表面にあるフィブリル化した微細繊維が広がりを損なわずに複合化するので、その後に添加したPVA(ポリビニルアルコール)との接触または近接の機会が増えて、成形品に親水性の発現が容易となる。
該複合材料は、水との親和性に劣るPP(ポリプロピレン)などを濡れ性が優れる親水性に改質して、水と接した成形品表面に水を保持し易くし、さらに水溶性のPVA(ポリビニルアルコール)が溶出して成形品表面に保持されるので、一層の親水性を得て水の膜を保持する加湿エレメントとして活用できる。また、溶出したPVA(ポリビニルアルコール)が成形品表面に薄膜を形成するので、乾燥状態から再使用時の親水性の発現までの時間も短縮できる。
パルプ繊維が界面活性剤をアジュバンドとして低分子量PIB(ポリイソブチレン)の水分散液から順次にパルプ繊維を吹き付けたので、湿潤状態にある微細繊維同士の間隙に侵入し易くなり、残留する空気を排除して意匠性が向上する。
また、上述したパルプ繊維がPP(ポリプロピレン)などの熱可塑性樹脂と混練して複合化した成形樹脂は、微細繊維が展開した状態で保持されるので、パルプ繊維が親水性樹脂によって効率的に親水性が発現出来ることに併せて、低粘度の親水性樹脂が成形品表面に移行するので、高い親水性を確保できた。
さらに、水に可溶性のPVA(ポリビニルアルコール)が、水没状態で使用した成形品の表面に薄膜を形成するので、一層の親水性の確保と、乾燥状態から速やかに親水性が発現する機能を付与できる。
<界面活性剤と低弾性樹脂希薄分散液を被覆したパルプ繊維とPP(ポリプロピレン)との複合体>
PIB(ポリイソブチレン)を水にディスパージョンした希薄水分散液を吹き付けて塗布したパルプ繊維を用いてPP(ポリプロピレン)と混練した複合樹脂について、以下に詳述する。
まず、回収紙に剪断力を付与して粉砕することによって回収したパルプ繊維に、ノニオン系界面活性剤の0.1〜5wt%希薄水溶液を用い、パルプ繊維が密閉容器内で高速回転する攪拌機によって空中浮遊する状態とした後に霧状で散布を行う。このとき、密閉容器の壁面にパルプ繊維が付着しない程度の湿潤状態に留めることが肝要である。
界面活性剤はパルプ繊維に対して0.1〜1.0部を添加することとし、散布に供する希薄水溶液における濃度は、パルプ繊維の20〜100%の溶液量となるように調整し、これを散布する。この溶液散布量は、散布後のパルプ繊維が適度な湿潤状態を保持する状態に調整することが、均一に付着するうえで肝要である。
また、界面活性剤を用いる場合には、安定した分散状態を得た状態で使用するうえで、HLB値が8〜16、好ましくは10〜13のものを用いることが好ましい。HLB値が8以下のものを用いれば、界面活性剤の均一な分散状態が得られず、HLB値が16以上では、水に溶解した状態を成して微細繊維に付着した繊維同士が容易に密着して単一繊維に相似した状態を形成し、強度の向上寄与を減少させるので、好ましくない。
HLB値とは、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値である。HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなる。HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定される。
(1)HLB値が1−3程度では水にほとんど分散せず、消泡剤などに使用される。
(2)HLB値が3−6程度では一部が水に分散し、w/o型エマルジョンの乳化剤として使用される。
(3)HLB値が6−8程度ではよく混合することによって水に分散して乳濁液となり、w/o型エマルジョンの乳化剤、湿潤剤として使用される。
(4)HLB値が8−10程度で水に安定分散して乳濁液となり、湿潤剤やo/w型エマルジョンの乳化剤として使用される。
(5)HLB値が10−13程度では水に半透明に溶解し、o/w型エマルジョンの乳化剤として使用される。
(6)HLB値が13−16程度では水に透明に溶解し、o/w型エマルジョンの乳化剤、洗浄剤として使用される。
(7)HLB値が16−19程度では水に透明に溶解し、可溶化剤として使用される。
さらに、パルプ繊維に散布したのと同じ界面活性剤が溶存する加温水にPIB(ポリイソブチレン)を投入し、ホモジナイザーを用いて強い剪断力を付与する高速撹拌によってディスパージョンし、安定した乳化状態を成す均一分散液を作成、これを上述のパルプ繊維に散布した。PIB(ポリイソブチレン)添加量はパルプ繊維基準の0.5〜2.0部で、パルプ繊維の20〜100%に相当する量に希釈して散布する。このとき、パルプ繊維が過度に湿潤しない状態にすることが好ましい。
上述のPIB(ポリイソブチレン)水分散液を湿潤状態にあるパルプ繊維に散布したことによって、ミセル状態を保持したままでパルプ繊維表面にあるフィブリル化した微細繊維間への浸透において、PIB(ポリイソブチレン)がミセル状態を保持した極めて微細な粒状を成しているので、前記微細繊維がパルプ繊維本体と密着することなしに、複合化された状態であっても微細繊維が展開した態様を成すので、強度の発現に有効である。
次に親水性樹脂であるPVA(ポリビニルアルコール)を混合する。ここで用いるPVA(ポリビニルアルコール)はPP(ポリプロピレン)との混練または射出成形時に溶融して成形材料系内で安定分散することが好ましい。つまり、パルプ繊維の微細繊維がPIB(ポリイソブチレン)を含んで広がる状態を得て成るので、PP(ポリプロピレン)に溶融分散したPVA(ポリビニルアルコール)が媒体となってパルプ繊維の親水性が効率的に発現できる。
界面活性剤とPIB(ポリイソブチレン)によって湿潤状態を得たパルプ繊維に親水性樹脂として、2種類のPVA(ポリビニルアルコール)を添加した。PVA(ポリビニルアルコール)は、後段のPP(ポリプロピレン)との溶融混練および射出成形時に溶融し、好ましくは190℃以下のものでPPのMI(流動性)の2倍以上を備える高い流動性を備えることを目安に選択することが好ましい。また、PVA(ポリビニルアルコール)は非水溶性を呈するものの6wt%に併せて、水溶性を呈するものの0.5wt%を併用して用いた。
ここで用いるPVA(ポリビニルアルコール)の多くは、永続的な親水性能を保持するうえで使用中に水に溶出しない非水溶性のものを選択するが、例えば、加湿器のエレメントのように、成形品表面に水の薄膜を保持する高い親水性を得るには不十分である。このため、水没させて用いる際に、微量添加した水溶性のPVA(ポリビニルアルコール)が水に溶解して成形品の表面に薄膜を保持する態様を成すようにしたので、上述の高い親水性が確保できる。
水溶性のPVA(ポリビニルアルコール)は、密閉容器内で高速回転する攪拌機によって湿潤状態を成すパルプ繊維が空中浮遊する状態で水溶液として添加することが好ましく、PIB(ポリイソブチレン)を付着した前記パルプ繊維に付着し、これらが乾燥した状態に至っても分離しにくいので都合がよい。
次に、この混合状態を維持したままで、50℃に加温した乾燥空気を供給し、これらの混合物全体の水分量が5wt%以下に到達するまで乾燥を継続した。
以上の処理を完了してPIB(ポリイソブチレン)と水溶性PVA(ポリビニルアルコール)を含んだパルプ繊維は、PP(ポリプロピレン)と非水溶性PVA(ポリビニルアルコール)の規定量を押出機に供給し、溶融状態で混練しながら押し出したストランドを任意長さに切断することによって、ペレットを作製した。
次に、得られたペレットは、汎用物性の評価用試料を成形できる金型を用いて射出成形によって得られた試験片を用いて、種々物性を評価した。その結果を図1、図2に示す。
ノニオン系界面活性剤を含んだ状態でPIB(ポリイソブチレン)を付着させた後に、非水溶性PVA(ポリビニルアルコール)と水溶性PVA(ポリビニルアルコール)を添加した。ここで、PIB(ポリイソブチレン)はパルプ繊維に対して以下の割合で付着させた。
本発明に基づく組成を備えて該評価に供した成形材料として、以下、実施例について詳述する。界面活性剤が0.2wt%の添加となるように水溶液濃度と散布量を調整したパルプ繊維について、
(1)実施例1−1:分子量(Mn)が150K(=150000)のPIB(ポリイソブチレン)を0.8wt%の添加量でパルプ繊維に塗布したもの;
(2)実施例1−2:分子量が50K+150K+350KのPIB(ポリイソブチレン)について分子量の小さいものから順次に各々0.3wtを塗布したもの;
(3)実施例1−3:分子量が150Kの高分子量PIB(ポリイソブチレン)を0.5wt%過剰に塗布したもの。
であり、各々に水溶性のPVA(デンカポバールのNP−05F)を0.5wt%を含有させたパルプ繊維に、64wt%のPP(ポリプロピレン)と6wt%の非水溶性のPVA(日本酢ビ・ポバール(株)のJMR−10L)の配合比と成るように混練した成形材料を射出成形によって作成した試験片を用いて各種物性を評価した。
一方、各比較例について、実施例との相違を以下に詳述する。
(1)比較例1−1:界面活性剤およびPIB(ポリイソブチレン)を添加しないもの;
(2)比較例1−2:PVA(ポリビニルアルコール)を添加しないもの;
(3)比較例1−3:分子量が8Kである低分子PIB(ポリイソブチレン)の0.8wt%を塗布したもの;
(4)比較例1−4:実施例1−2のPIB(ポリイソブチレン)の組み合わせで、分子量の大きいものから各々0.4wtを順次にPIB(ポリイソブチレン)を塗布したもの;
(5)比較例1−5:非水溶性でPP(ポリプロピレン)と同程度の融点と粘度を備えるPVA(ポリビニルアルコール)を用いたものである。
以上の結果から、本発明による成形品は、水溶性PVA(ポリビニルアルコール)を併用したことにより、水の濡れ性を大幅に向上させる効果を備えることを確認した。これは、PVA(ポリビニルアルコール)が無添加のものと比較して水の接触角度が低下していることによるものであり、溶融粘度の低い前記PVA(ポリビニルアルコール)の少量添加でも、マトリックスを成すPP(ポリプロピレン)と同様粘度のPVA(ポリビニルアルコール)を混合した成形品表面における水の濡れ性と比較して有意に優れ(vs.比較例1−2および比較例1−5)、成形品表面に薄膜を形成して保持する状態を得るに至っていることによる。
さらに、界面活性剤がパルプ繊維の備えるフィブリル化した微細繊維間にPIB(ポリイソブチレン)を有効に浸透させるためのアジュバンドとして有効に作用して前記微細繊維と前記PIB(ポリイソブチレン)の複合を促し、保持されたPIB(ポリイソブチレン)が成形過程で排出される残存空気を排除するので、白化を抑制して外観意匠性の向上に寄与(vs.比較例1−1)する。また、MI(流動性)の向上で示された流動性の改善と、粘性付与に伴う衝撃強度の向上効果についても確認した。

Claims (6)

  1. パルプ繊維に、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値が8〜16の界面活性剤を含浸させ、
    前記界面活性剤を含浸させたパルプ繊維に、前記界面活性剤を分散させた水溶液にポリイソブチレンをディスパージョンした水分散液を吹き付け、
    前記水分散液を吹き付けたパルプ繊維に、水溶性のポリビニルアルコールを添加し、
    前記水溶性のポリビニルアルコールを添加したパルプ繊維を乾燥させ、
    前記乾燥させたパルプ繊維と、ポリプロピレンとを、非水溶性のポリビニルアルコールとともに混練して複合化することを特徴とする親水性樹脂の製造方法。
  2. 前記界面活性剤として、HLB値が10〜13のノニオン系又はカチオン系の界面活性剤を用いることを特徴とする請求項1に記載の親水性樹脂の製造方法。
  3. 前記界面活性剤を含浸させたパルプ繊維に、前記水分散液として、それぞれ分子量が異なるポリイソブチレンを含む複数種類の水分散液を、分子量が低いポリイソブチレンを含むものから順に吹き付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の親水性樹脂の製造方法。
  4. HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値が8〜16の界面活性剤を備えた表面部分を有し、ポリイソブチレンによって前記表面部分が被覆されたパルプ繊維であって、水溶性のポリビニルアルコールによって表面に膜が形成されたパルプ繊維と、ポリプロピレンと、非水溶性のポリビニルアルコールとが複合化して成ることを特徴とするパルプ繊維複合樹脂の成形品。
  5. 前記界面活性剤は、HLB値が10〜13のノニオン系又はカチオン系の界面活性剤であることを特徴とする請求項4に記載のパルプ繊維複合樹脂の成形品。
  6. 前記パルプ繊維の表面部分は、前記ポリイソブチレンとして、それぞれ分子量が異なる複数種類のポリイソブチレンによって被覆され、
    前記複数種類のポリイソブチレンは、分子量が低いものから順に前記パルプ繊維の表面
    部分に付着していることを特徴とする請求項4又は5に記載のパルプ繊維複合樹脂の成形品。
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