JP4831409B2 - 魚類用の麻酔剤とその使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な魚類用の麻酔剤とその使用方法に関する。詳しくは、固形状炭酸ガス発泡剤からなる魚類用の麻酔剤とその麻酔剤を用いて魚類を麻酔する方法に関する。
魚類養殖や栽培漁業の現場では、ワクチン接種、歯切り、標識装着、各種の測定などの種々の用途で麻酔剤が使用されている。魚類用の麻酔剤としては、従来から、FA100(主成分・オイゲノール)が動物用医薬品として承認されていて、使用されているが、高価である。その上、FA100は、麻酔液が濁ったり、また、液表面に泡が発生して観察しづらいとか、麻酔後死亡個体が発生するケースもある上、独特の臭いがあるなどの理由で必ずしも良い麻酔剤とは言えない。
また、未承認の学術的試薬であるが、2−フェノキシエタノールの麻酔効果がニジマスやマダイについて報告されており、オイゲノールよりも廉価である。しかし、2−フェノキシエタノールは食品添加物などに指定されておらず、食の安全性については全く考慮されていない。
また、炭酸ガスには魚類への麻酔効果があることが広く知られている。従来、炭酸ガスを麻酔剤として魚類用に使用するときは、炭酸ガスボンベを用いて炭酸ガスを水中に通気する方法(例えば特許文献1の方法)、又は水中に炭酸水素ナトリウムと酢酸を規定量添加して炭酸ガスを発生させる方法が採られている。しかし、これらの方法は、ボンベを用意したり、炭酸水素ナトリウムや酢酸を計量して別々に保管するなどの手間がかかり、簡便な方法とは言えない。
本発明者は、このような状況に鑑みて、ヒトにも魚にも安全であると共に簡便に使用でき、その上、従来品よりも廉価な魚類用の麻酔剤を開発することを志向し、ヒトの食用として公認されている原料のみを用いることとし、さらに、麻酔剤を固形状に成形すれば使いやすくなること、その麻酔効果を確認するには市販の入浴剤(固形状炭酸ガス発泡剤)を使用すればよいことに気がつき、まず公知文献について調査した。
特開平5−260880号公報 1983年社団法人日本水産学会発行「日本水産学会誌」第49巻5号、725〜731頁所載『二酸化炭素麻酔の活魚輸送への応用可能性の検討』
公知文献から得られた知見は以下のとおりである。
特許文献1には、pH値を調節した炭酸ガスを溶解させた水溶液を容器Aに入れて、断熱効果が高い容器B内部に吊るか又は置いて、一定量ずつ滴下させて容器B内の水溶液中に拡散させて魚介類に炭酸ガス麻酔を起こさせる方法について開示されている。しかし、この方法は、煩雑であると共に、かなりの設備を必要とする。
非特許文献1には、魚の麻酔剤として、炭酸水素ナトリウムと酸を用いる方法や炭酸ガスと酸素を短時間吹き込む方法などが紹介されているが、魚の麻酔のために固形状の炭酸ガス発泡剤を使用することは何ら開示していない。
よって、本発明者は、あらためて魚類用の固形状の麻酔剤を開発することとし、試験・研究を続けた結果、ようやくにして本発明を完成するに至った。
上記の状況に鑑み、本発明は、ヒトにも魚にも食の安全性を十分に確保すると共に、従来品よりも使用しやすく、かつ、従来品よりも低コストで使用できる新規な魚類用の麻酔剤とその使用方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するための本発明のうち、特許請求の範囲・請求項1に記載する発明は、炭酸水素ナトリウムとコハク酸と固形化促進剤を主原料とし、食品添加物として公認されている原料のみで作った固形状炭酸ガス発泡剤からなる魚類用の麻酔剤である。
また、同請求項2に記載する発明は、炭酸水素ナトリウムとコハク酸と固形化促進剤を混合して成形したものを乾燥させて得られる固形状炭酸ガス発泡剤からなる請求項1に記載の魚類用の麻酔剤である。
また、同請求項3に記載する発明は、炭酸水素ナトリウム40〜60重量%とコハク酸40〜60重量%の合計量に対して、固形化促進剤として無水エタノールを外割りで10〜20重量%加えて作った固形状炭酸ガス発泡剤からなる請求項1又は2に記載の魚類用の麻酔剤である。
また、同請求項4に記載する発明は、炭酸水素ナトリウム40〜60重量%とコハク酸40〜60重量%の合計量に対して、固形化促進剤として食用グリセリンを外割りで5〜15重量%加えて作った固形状炭酸ガス発泡剤からなる請求項1又は2に記載の魚類用の麻酔剤である。
また、同請求項5に記載する発明は、魚類として、シマアジ、カンパチ、マダイ、トラフグ、ブリ、ヒラメ、メバル、クロソイ、コイ、ニジマス、ギンザケ、アユ、ウナギを対象とする請求項1から4のいずれかに記載の魚類用の麻酔剤である。
また、同請求項6に記載する発明は、請求項1から4のいずれかに記載の麻酔剤を溶解した水槽中の水に魚類を収容するか又は魚類を収容してある水槽中の水に請求項1から4のいずれかに記載の麻酔剤を溶解して魚類を麻酔する方法である。
さらに、同請求項7に記載する発明は、固形状炭酸ガス発泡剤からなる麻酔剤を魚の種類に応じて定めた希釈倍率によって希釈して用いる請求項6に記載の魚類の麻酔方法である。
さらに、同請求項8に記載する発明は、魚類として、シマアジ、カンパチ、マダイ、トラフグ、ブリ、ヒラメ、メバル、クロソイ、コイ、ニジマス、ギンザケ、アユ、ウナギを対象とする請求項6又は7に記載の魚類用の麻酔方法である。
本発明に係る魚類用の麻酔剤は、上記の構成からなり、炭酸水素ナトリウムとコハク酸と食用グリセリン又は無水エタノールなどの食品添加物として公認されている原料を主成分とする固形状炭酸ガス発泡剤からなるものであるから、ヒトにも魚にも十分に安全である。その上、本発明に係る魚類用の麻酔剤は、魚へのワクチン注射などの短い時間内に麻酔効果があり、しかも、魚がすぐに覚醒するので無用に魚を弱めることがなく、麻酔後の生残率が良好である。また、本発明に係る魚類用の麻酔剤は、固形状であるから、魚の種類に応じて希釈倍率を容易に決めることができるなどきわめて使いやすい。例えば、本発明では、40gの麻酔剤(固形状炭酸ガス発泡剤)1個を100Lの水に溶解すればヒラメの麻酔に有用な濃度である2500倍希釈液を容易に作ることができる。
また、本発明に係る魚類用の麻酔剤は、固形状であるから、保管・流通・運搬にも便利である上、上記のとおり、希釈液を容易に作ることができる。さらに、本発明に係る魚類用の麻酔剤は、入手が容易な炭酸水素ナトリウムとコハク酸と食用グリセリン又は無水エタノールなどを主原料として構成するものであるから、従来のオイゲノールや2−フェノキシエタノールに比べて、また、従来の炭酸ガス通気による麻酔方法に比べて、はるかに廉価であり、大量に使用してもコストを低く抑えることが可能である。
一般に、魚類用の麻酔剤は、魚を短時間で麻酔状態にさせることができると共に、その後短時間で覚醒させることが必要である。また、覚醒の24時間後の魚の生残率が99.5%以上であることが望ましい。すなわち、魚の麻酔は、魚に対してワクチン接種、歯切り、標識装着、各種の測定などなんらかの処置を施すときに必要となるので、魚をたも網などで掬って空中に放置しても暴れなくなる状態(麻酔状態)に4分から5分程度の短時間で到達させる必要がある。また、麻酔後は30分以内程度の短時間で覚醒する方が魚の体力を無用に消耗させないので好ましい。本発明に係る魚類用の麻酔剤は、これらの条件を十分に充当するものである。
また一般に、炭酸塩と有機性酸剤とを混合し、これに固形化促進剤を加えて混練して適宜に成形したものを乾燥すれば、固形状炭酸ガス発泡剤を作ることができる。
本発明に係る魚類用の麻酔剤は、試験の結果に基づいて、炭酸塩として炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )を使用する。また、有機性酸剤としてコハク酸を使用し、固形化促進剤として食用グリセリン又は無水エタノールなどを使用する。すなわち、本発明に係る魚類用の麻酔剤は、炭酸水素ナトリウムとコハク酸とグリセリン又は無水エタノールなどを主原料とし、これらを混練した混練物を成形し、乾燥させて製造する。
本発明で用いる炭酸水素ナトリウムは、重炭酸ソーダ(重曹)とも呼ばれ、食品添加物ないし制酸薬として、またベーキングパウダーの主材として使用されている。当初、本発明者は、炭酸水素ナトリウムの他に、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムにも着目し、試験したところ、炭酸水素ナトリウムは短時間で所期の麻酔効果を奏する上、麻酔剤の溶液が白濁することなく、残渣も生じないことが判明したので、炭酸水素ナトリウムを主原料として使用することに決めた。なお、本発明では、麻酔剤としての効力に影響しない限り、炭酸水素ナトリウムと共に炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムを併用しても差し支えない。
本発明では、炭酸水素ナトリウムと反応して炭酸ガスを発生させる有機性酸剤としてコハク酸を用いる。コハク酸は貝類のフレーバーなどに含まれている食品添加物であり、日本酒などに用いられている。当初、本発明者は、コハク酸の他に、食用有機酸として知られているクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸にも着目し、試験したところ、コハク酸が炭酸水素ナトリウムと反応して最も短時間で所期の麻酔効果を奏することを見いだし、コハク酸を主原料として使用することに決めた。なお、本発明では、麻酔剤としての効力に影響しない限り、コハク酸と共にこれらの食用有機酸を適宜併用しても差し支えない。
本発明では、炭酸水素ナトリウムとコハク酸の接着を強固にして固形化を促進させる媒介(固形化促進剤)として食用グリセリン又は無水エタノール(純度99.0%程度のもの)などを用いる。当初、本発明者は、入手が容易な局方エタノール(純度95.0%程度のもの)にも着目し、試験したところ、局方エタノールには約5%の水分が含まれているため、原料の混練中に、この水分に起因すると推察される発泡が認められ、固形化が困難であった。そのため、無水エタノールを用いたところ、発泡することなく、麻酔剤として使用できる固形状炭酸ガス発泡剤を作ることができた。一方、食用グリセリン(食品添加物として公認されているグリセリン)は、そのような問題がなく、麻酔剤としての効果が大きい固形状炭酸ガス発泡剤を作ることができた。なお、本発明では、麻酔剤としての効力に影響しない限り、食用グリセリン又は無水エタノールと共に市販のエタノールを併用しても差し支えない。また、食用グリセリンと共に、食品添加物として公認されているポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートやポリグリセリン脂肪酸エステルなどのグリセリン類を併用しても差し支えない。さらに、本発明では、固形化促進剤として、食用グリセリン又は無水エタノールに限るものではなく、食品添加物として公認されている原料の中から炭酸水素ナトリウムとコハク酸の固形化を促進するのに適当な原料を選択して適宜使用しても差し支えない。
グリセリンは常温下で無色透明でほとんど臭いがなく、甘みのある粘稠な液体である。医薬品(パップ剤、坐薬、軟膏など)、化粧品(クリーム、ローションなど)、トイレタリー品(石鹸、歯磨き、マウスウオッシュなど)、香料などに使用されている。本発明で用いる食用グリセリン(食品添加物として公認されているグリセリン)は、主として食品の甘味料として使用されている。
本発明では、炭酸水素ナトリウムとコハク酸を混合し、これに食用グルセリン又は無水エタノールなどの固形化促進剤を適量加えて混練した後適宜に成形し、乾燥すれば、魚類用の麻酔剤としての固形状炭酸ガス発泡剤を作ることができる。好ましくは、炭酸水素ナトリウムとコハク酸をそれぞれ40〜60重量%ずつ秤取し、両者の合計量に対して食用グリセリンの場合は、外割りで5〜15重量%の食用グリセリンを添加して混練した後適宜に成形して乾燥すれば、魚類用の麻酔剤として好適な固形状炭酸ガス発泡剤を作ることができる。グリセリンの添加量が多くなると発泡剤単位重量当たりの炭酸ガスの発生量が低下し、麻酔の利き目が低下するので15重量%を越えないようにすることが好ましい。また、グリセリンの添加量があまり少ないと均一に混練することが困難になるので5重量%未満にならないように注意する必要がある。
また、無水エタノールを使用する場合は、炭酸水素ナトリウムとコハク酸の合計重量に対して外割りで10〜20重量%の無水エタノールを添加して混練した後適宜に成形したものを乾燥すれば、魚類用の麻酔剤として好適な固形状炭酸ガス発泡剤を作ることができる。無水エタノールの添加量が多くなると、水っぽい状態となり、固形化が困難になるので20重量%を越えないようにすることが好ましい。また、無水エタノールの添加量があまり少ないと均一に混練することが困難になるので10重量%未満にならないように注意する必要がある。
本発明において、炭酸水素ナトリウムとコハク酸とグリセリン又は無水エタノールなどの固形化促進剤との混練物を乾燥させる方法は任意であるが、自然に乾燥させることで十分である。勿論、混練物を乾燥機に入れて乾燥させてもよい。
本発明に係る魚類の麻酔剤は、魚の種類を問わず、あらゆる魚の麻酔剤として使用できる。しかし、特に麻酔効果が著しいことが確認されているのは、シマアジ、カンパチ、マダイ、トラフグ、ブリ、ヒラメ、メバル、クロソイ、コイ、ニジマス、ギンザケ、アユ、ウナギなどである。
本発明に係る魚類の麻酔方法として有用な方法は、本発明に係る魚類の麻酔剤を溶解した水槽中の水に麻酔対象の魚を収容するか又は麻酔対象の魚を収容してある水槽中の水に本発明に係る魚類の麻酔剤を溶解する方法である。この場合、本発明に係る魚類の麻酔剤(固形状炭酸ガス発泡剤)を魚の種類に応じて予め定めてある希釈倍率によって希釈して用いると、短時間で麻酔効果を奏すると共に短時間で覚醒させることができるので、魚に無用の刺激を与えないで効果的に麻酔することができる。例えば、ヒラメの麻酔に好適な麻酔濃度(4分から5分で麻酔がかかる濃度)は2500倍希釈であるが、この濃度は、40gの麻酔剤(固形状炭酸ガス発泡剤)1個を100Lの水に溶解することで容易に作ることができる。また、シマアジは500〜750倍希釈が好適な麻酔濃度、マダイは500〜1000倍希釈が好適な麻酔濃度であり、トラフグやブリは2500倍希釈が好適な麻酔濃度であるが、本発明に係る麻酔方法によれば、いずれの魚種についても容易にその魚種に好適な濃度の希釈溶液を作ることができる。このため、本発明の方法によれば、魚の種類に応じて予め適切な希釈倍率を定めておくことによって魚種に応じて適切な麻酔をすることができる。
以下、試験例をもって本発明をさらに詳しく説明する。
魚類用の麻酔剤として固形状炭酸ガス発泡剤の麻酔効果を確認するには、炭酸水素ナトリウムと酸剤を成分に含む市販の入浴剤が入手しやすいので、まず、これを用いて試験することにした。
《試験例1》
<市販の固形状炭酸ガス発泡剤による魚類の麻酔効果の確認試験>
(1)試験方法
イ)本試験には、市販の固形状炭酸ガス発泡剤(花王(株)の入浴剤「バブ」:以下「入浴剤」と記す。)を用いた。麻酔水槽として100Lのポリカーボネイト水槽を用いた。水量は50Lとした。
ロ)入浴剤の濃度を、シマアジとマダイについては、10000、5000、2000、1000、750、500倍希釈となるように、トラフグとブリについては、0、25000、10000、5000、2500、1250倍希釈となるように入浴剤を濾過海水に溶解した。入浴剤の固まりが水中に目視できなくなって、完全に溶解したことを確認した後、それぞれの入浴剤溶液に供試魚を投入し、投入直後から、供試魚を網で掬っても暴れなくなって体を斜めにするか又は腹部を上に向ける状態(以下「麻酔期II」という。)になるまでの所要時間を測定した。麻酔期IIに到達した供試魚は、直ちに取り上げ、新鮮な濾過海水を流している30Lポリカーボネイト水槽に個別に収容した。収容後通常の遊泳を始めるまでの所要時間(覚醒時間)を測定した。覚醒した供試魚は、さらに別の濾過海水を流している30Lポリカーボネイト水槽に入浴剤溶液の濃度ごとに移し、24時間経過後の生死(生残状況)を確認した。ハ)麻酔期IIに到達した濃度では、安全性を確認するために、到達時間の2倍の時間、同一濃度の入浴剤溶液に浸漬した後生死を確認し、同様に覚醒所要時間の測定及び24時間経過後の生死を確認した。
ニ)試験には、独立行政法人水産総合研究センター・伯方島栽培漁業センターで生産したマダイ稚魚、同上浦栽培漁業センターで生産したシマアジ稚魚、同五島栽培漁業センターで生産したブリ幼魚、同屋島培漁業センター及び民間の養殖業者が生産したトラフグ稚魚を用いた。
ホ)供試した入浴剤の組成は以下のとおりである。
炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、フマル酸、パラフェノールスルホン酸亜鉛、
青色1号、香料
(2)試験結果
試験の結果は表1〜表3に示すとおりである。
Figure 0004831409
Figure 0004831409
Figure 0004831409
(3)所見
イ)表1から、シマアジ(25gサイズ)では、入浴剤を500〜750倍希釈としたところ、1分半から4分で麻酔期IIに到達し、その後2〜5分で覚醒した。また、750〜
1000倍に希釈した入浴剤溶液に10分浸漬したところ、試験終了時でも麻痺状態となることはなく、新鮮海水に移して15分後までに回復すると共に、24時間後でも全ての個体が生残した。以上のことから、市販の入浴剤によるシマアジの麻酔は、麻酔効果があり、生残率の点でも安全であることが確認された。
ロ)表1から、マダイ(30gサイズ)では、入浴剤を500〜750倍希釈としたところ、3分から3分半で麻酔期IIに到達し、その後2分半〜3分で覚醒した。また、750
倍に希釈した入浴剤溶液に10分浸漬したところ、試験終了時でも麻痺状態となることはなく、新鮮海水に移して6分後までに回復すると共に、24時間後でも全ての個体が生残した。以上のことから、市販の入浴剤によるマダイの麻酔は、麻酔効果があり、生残率の点でも安全であることが確認された。
ハ)表2から、トラフグ(21gサイズ)では、入浴剤を1250〜5000倍希釈とした場合に1分半から4分半で麻酔期IIに到達し、それ以上の希釈倍率とすると10分以内
には麻酔期IIに到達しなかった。また、5000倍希釈にした場合には、3分程度で覚醒
したが、それ以下の希釈倍率にすると30分経過後も覚醒しない個体が出現した。
また、表3に示す安全性確認試験では、いずれの濃度からも死亡個体は出現しなかったが、30分以内に覚醒する個体はなかった。
ニ)表2から、トラフグ(56gサイズ)では、入浴剤を1250〜10000倍希釈とした場合に1分から5分45秒で麻酔期IIに到達し、それ以上の希釈倍率とすると10分
以内には麻酔期IIに到達しなかった。また、1250倍希釈にした場合には、6分半で覚
醒したが、それ以上の希釈倍率とすると30分経過後も覚醒しない個体が出現した。
また、表3に示す安全性確認試験では、いずれの濃度からも死亡個体は出現しなかったが、30分以内に覚醒する個体はなかった。以上のことから、市販の入浴剤によるトラフグの麻酔は、麻酔効果があり、生残率の点でも安全であることが確認された。
ホ)表2から、ブリ(300gサイズ)では、入浴剤を1250〜2500倍希釈とした場合に1分半から6分半で麻酔期IIに到達し、それ以上の希釈倍率にすると10分以内に
は麻酔期IIに到達しなかった。また、いずれの場合でも、2分半〜4分程度で覚醒した。
さらに、表3に示す安全性確認試験では、いずれの濃度からも麻酔直後の死亡個体は出現しなかったが、30分以内に覚醒しない個体も出現した。また、24時間後には死亡する個体もあった。以上のことから、市販の入浴剤によるブリの麻酔は、麻酔効果があり、生残率の点でも安全であることが確認されたが、使用に当たっては浸漬時間を厳守する必要があるものと認められた。
ヘ)シマアジ及びマダイの試験結果とトラフグ及びブリの試験結果を対比すると、有効な希釈倍率が大きく異なる。この要因として、使用した入浴剤のロットが異なる(1年間のタイムラグがある)こと、シマアジなどでは入浴剤溶液に通気を施さなかったのに対してトラフグなどでは通気したことが影響している可能性がある。
以上の試験結果を総合すると、市販の入浴剤(固形状炭酸ガス発泡剤)を用いた魚類の麻酔方法は、麻酔効果があり、生残率の点でも安全である上、使用に当たって不具合のない方法であると考えられる。なお、供試した固形状炭酸ガス発泡剤の組成中フマル酸は、他の食用有機酸に換えて試験することが好ましく、また、パラフェノールスルホン酸亜鉛(肌を整えるための製剤)や青色1号(着色剤)や香料などは、魚類用の麻酔剤には不要であると考えられる。
以下、実施例をもって本発明をさらに詳しく説明する。なお、以下の実施例では、炭酸水素ナトリウムは松井喜一郎商店製のもの(商品名「タンサン」)を、コハク酸は扶桑化学工業製で食品添加物として公認されているものを、食用グリセリンは坂本薬品工業製のものを、それぞれ用いた。
<魚類用の麻酔剤の製造例1>
炭酸水素ナトリウム25g、コハク酸25gを乳鉢で混合し、無水エタノール13mL(約7.5g)を加えて混練した後、この混練物をプラスチック製の型に入れて指で押して成形し、自然乾燥させて固形状の炭酸ガス発泡剤約50gを得た。得られた固形状炭酸ガス発泡剤を試験例2と同じ方法によって濾過海水に溶解して2500倍希釈液を作り、後記する試験例3と同じ出所のヒラメを収容してこのヒラメが麻酔期IIに到達するまでの
時間を確認したところ、4分34秒〜5分11秒で麻酔期IIに達することが確認された。
<魚類用の麻酔剤の製造例2>
炭酸水素ナトリウム30g、コハク酸30gを乳鉢で混合し、これに食用グリセリン9gを加えて混練した後、この混練物をプラスチック製の型に入れてヘラで成形し、乾燥機に入れて加圧乾燥させて固形状の炭酸ガス発泡剤約69gを得た。
<魚類用の麻酔剤の製造例3>
炭酸水素ナトリウム20g、炭酸ナトリウム10g、コハク酸30gを乳鉢で混合し、これに食用グリセリン9gを加えて混練した後、この混練物をプラスチック製の型に入れて指で押して成形し、自然乾燥させて固形状の炭酸ガス発泡剤約69gを得た。得られた固形状炭酸ガス発泡剤を試験例2と同じ方法によって濾過海水に溶解して2500倍希釈液を作り、後記する試験例3と同じ出所のヒラメを収容してこのヒラメが麻酔期IIに到達
するまでの時間を確認したところ、4分55秒〜5分38秒で麻酔期IIに達することが確
認された。
<魚類用の麻酔剤の製造例4>
炭酸水素ナトリウム30g、コハク酸25g、酒石酸5gを乳鉢で混合し、これに食用グリセリン9gを加えて混練した後、この混練物をプラスチック製の型に入れて指で押して成形し、自然乾燥させて固形状の炭酸ガス発泡剤約69gを得た。
《試験例2》
<実施例2で作った麻酔剤と市販の入浴剤の比較試験>
(1)試験方法
実施例2で作った麻酔剤(固形状炭酸ガス発泡剤)を、濃度が5000、2500、1250倍希釈となるように濾過海水に溶解し、固まりが目視できなくなった段階で試験例1と出所を同じくするブリを各5尾収容し、麻酔期IIに到達するまでの所要時間を測定し
た。対照として、市販の固形状炭酸ガス発泡剤(花王(株)の入浴剤「バブ」:以下「入浴剤」と記す。)を濾過海水に溶解して上記と同濃度に希釈し、上記と同様にそれぞれブリ5尾を収容し、麻酔期IIに到達するまでの所要時間を測定した。その他の試験方法・試
験条件は、試験例1と同じである。
(2)試験結果
試験の結果は表4に示すとおりである。
Figure 0004831409
(3)所見
表4から、麻酔期IIへの到達時間は、市販の入浴剤で1分半〜4分であったのに対し、
実施例1の炭酸ガス発泡剤は2分半〜4分半であり、市販の入浴剤の方が若干早く麻酔状態に到達したが、大きな差は認められなかった。
この試験結果から、市販の入浴剤を用いなくても、炭酸水素ナトリウム、食用有機酸及び固形化促進剤だけで作った固形状炭酸ガス発泡剤は、魚類に対する麻酔剤として有効であることが確認された。
《試験例3》
<炭酸塩と有機性酸剤の配合割合の検討>
(1)試験方法
固形状炭酸ガス発泡剤に用いる原料の適切な配合割合を決めるために、以下の試験を行なった。炭酸水素ナトリウムとコハク酸の配合量を表5に示す割合で変えながら合計30gとなるように秤取し、この合計量に対して食用グリセリンを外割りで10重量%(約3g)加えて、実施例2に示す製法で固形状炭酸ガス発泡剤を作った。得られた固形状炭酸ガス発泡剤を試験例2と同じ方法によって濾過海水に溶解して1000倍希釈液を作り、それぞれの溶液に供試魚を投入し、投入直後から麻酔期IIに到達するまでの所要時間を測
定した。試験には民間の養殖業者が生産したマダイ稚魚を用いた。
(2)試験結果
試験の結果は表5に示すとおりである。
Figure 0004831409
(3)所見
炭酸水素ナトリウムとコハク酸の配合量を表5に示す割合で変化させたところ、炭酸水素ナトリウムの配合量を12g(40%)未満とした場合、及び、炭酸水素ナトリウムの配合量を18g(60%)より多くした場合には、10分経過しても麻酔期IIに到達しな
かった。また、麻酔所要時間が最も短かったのは炭酸水素ナトリウムとコハク酸を各15g配合した場合であった。以上の結果から、炭酸水素ナトリウムとコハク酸は概ね40〜60重量%ずつ配合することが適切であり、50重量%ずつの配合にすると最も好ましいことが確認された。
《試験例4》
<固形状炭酸ガス発泡剤の素材の検討>
(1)試験方法
イ)供試素材の選定
本試験では、固形状炭酸ガス発泡剤の素材として何が適するのかを、ヒラメを用いて麻酔効果を比較することにより検討した。
炭酸塩として炭酸水素ナトリウムウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムを用いた。また、有機性酸剤としてコハク酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸を用いた。固形化促進剤として無水エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、食用グリセリンを用いた。全て、キシダ化学製の試薬特級を用いた。
ロ)供試した固形状炭酸ガス発泡剤の製法
炭酸塩と有機性酸剤を等重量混合したものに対し、固形化促進剤を外割りで15重量%添加して混練し、その混練物を成形して乾燥機に入れて加圧乾燥させて固形状炭酸ガス発泡剤を作った。
ハ)供試ヒラメは、独立行政法人水産総合研究センター・伯方島栽培漁業センターが生産した36g〜50gサイズを用いた。
ニ)試験の方法
麻酔溶液の水槽として200Lのポリカーボネイト水槽を用いた。水量は100Lとした。所定濃度となるように、試作した固形状炭酸ガス発泡剤を2500倍希釈液となるように濾過海水に溶解し、その固まりが海水中に目視できなくなった段階の水槽にヒラメを各5尾収容した。試験中は600mL/分程度の通気を行なった。たも網で掬っても暴れなくなる「口と鰓蓋を開けて呼吸し、呼吸頻度が少なくなる」状態を麻酔期IIと判定し、
水槽収容直後からこの状態になるまでの時間を測定した。
(2)試験結果
試験結果は表6〜表8に示すとおりである。
Figure 0004831409
Figure 0004831409
Figure 0004831409
(3)所見
イ)表6に示すように、炭酸水素ナトリウムを用いた場合は、2000〜3333倍に希釈したときに4分〜8分半で麻酔期IIに到達した。炭酸ナトリウムを用いた場合は、20
00〜2500倍に希釈したときに8分半〜10分半で麻酔期IIに到達した。すなわち、
麻酔状態に達するのに炭酸ナトリウムは炭酸水素ナトリウムよりも高い濃度を要し、所要到達時間も長いことが確認された。また、炭酸カルシウムを用いた場合は、2000〜3333倍に希釈したときに3分半〜7分で麻酔期IIに到達したので、麻酔効果は炭酸水素
ナトリウムと同様であると認められるが、麻酔溶液が白く濁り、水槽の底に残渣が確認された。以上のことから、魚類麻酔用の固形状炭酸ガス発泡剤に用いる炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウムが有用であると考えられる。
ロ)表7に示すように、試験に供した有機性酸剤は、いずれも麻酔効果が認められた。しかし、マレイン酸は水底に残渣が残ると共に麻酔期IIへ到達する所要時間が長かった。フ
マル酸も水底に残渣が残ると共に麻酔到達所要時間がやや長かった。リンゴ酸も麻酔期II
到達所要時間がやや長かった。クエン酸、酒石酸及びコハク酸は、略同様の麻酔時間を示し、水底に残渣も残らなかった。以上のことから、魚類麻酔用の固形状炭酸ガス発泡剤に用いる有機性酸剤としては、クエン酸、酒石酸及びコハク酸が有用であると認められた。ハ)表8に示すように、試験に供した固形化促進剤は、いずれも麻酔効果が認められ、麻酔時間にも大差がなかった。これらの素材のうち無水エタノールと食用グリセリンは、ヒトの食用として公認されているが、メタノール及びイソプロピルアルコールは公認されていない。そのため、無水エタノールと食用グリセリンが、本発明に用いる固形化促進剤として有用であると考えられる。
《試験例5》
<食の安全性を考慮した固形状炭酸ガス発泡剤の素材の検討>
(1)試験方法
イ)供試素材の選定
本試験では、食品添加物として公認されている原料のみで作った固形状炭酸ガス発泡剤を用いてヒラメに対する麻酔効果を比較・検討することにした。
炭酸塩として炭酸水素ナトリウム(製品名「タンサン」:松井喜一郎商店製)を使用した。有機性酸剤は食品添加物として公認されているコハク酸(扶桑化学工業製)、クエン酸(製品名「つかれず粉」:素美人製)、L−酒石酸(扶桑化学工業製)を用いた。固形化促進剤として無水エタノール、食用グリセリン(坂本薬品工業製)、食用ポリグリセリン脂肪酸エステル(坂本薬品工業製)を用いた。
ロ)供試した固形状炭酸ガス発泡剤の製法
炭酸塩と有機性酸剤を等重量混合したものに対し、固形化促進剤を外割りで6.7重量%又は15重量%添加して混練し、その混練物を成形して乾燥機に入れて加圧乾燥させて固形状炭酸ガス発泡剤を作った。
ハ)供試ヒラメは、独立行政法人水産総合研究センター・伯方島栽培漁業センターが生産した36g〜50gサイズを用いた。
ニ)試験の方法
麻酔溶液の水槽として200Lのポリカーボネイト水槽を用いた。水量は100Lとした。所定濃度となるように、試作した固形状炭酸ガス発泡剤を2500倍希釈となるように濾過海水に溶解し、その固まりが海水中に目視できなくなった段階の水槽にヒラメを各5尾収容した。試験中は600mL/分程度の通気を行なった。たも網で掬っても暴れなくなる「口と鰓蓋を開けて呼吸し、呼吸頻度が少なくなる」状態を麻酔期IIと判定し、水
槽収容直後からこの状態になるまでの時間を測定した。麻酔期IIに到達したヒラメは直ち
に取り上げ、新鮮な濾過海水を流している30Lポリカーボネイト水槽に個別に収容し、収容直後から通常の状態である「滑走弁のみを動かして呼吸を行なう」までの所要時間(覚醒時間)を測定した。覚醒した供試魚は、さらに別の濾過海水を流している100Lポリカーボネイト水槽に濃度ごとに移し、24時間経過後に生死(生残状況)を確認した。 また、試作品のヒラメに対する安全性を検討する目的で、麻酔期IIに到達する時間の2
倍の時間、麻酔溶液に浸漬した後、別の濾過海水を流している水槽に移し、翌日の生残状況を確認する安全性試験を行なった。
なお、本試験例の固形状炭酸ガス発泡剤の有効性を判定するために、試作品中の「タンサン・食添コハク酸・食用グリセリン」の組み合わせで作った固形状炭酸ガス発泡剤(表9)と既存の魚類用麻酔剤であるFA100とを用いて上記と同様の試験を行なった。
(2)試験結果
試験結果は表9〜表10に示すとおりである。各表中、「エタノール」は無水エタノールを、「グリセリン」は食用グリセリンを、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」は食品添加物として公認されているポリグリセリン脂肪酸エステルを、それぞれ示す。
Figure 0004831409
Figure 0004831409
(3)所見
イ)表9に示すように、有機性酸剤としてつかれず粉(クエン酸)とL−酒石酸を用いた場合は、10分以内に麻酔状態に到達しなかった。なお、つかれず粉を使用した場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いないと固形化できなかった。食用コハク酸を用いて無水エタノール又は食用グリセリンで固形化した場合は、いずれも適正な麻酔効果が認められた。以上のことから、食の安全性を考慮したとき、炭酸水素ナトリウムに対する有機性酸剤としてはコハク酸が、固形化促進剤としては無水エタノールと食用グリセリンが、それぞれ有用であることが確認された。
ロ)表10に、供試した固形状炭酸ガス発泡剤とFA100で、それぞれヒラメを麻酔した場合の麻酔期IIに到達する時間、麻酔状態から覚醒する時間、一昼夜経過後の生残状況
を示す。表10から、供試した固形状炭酸ガス発泡剤は、FA100よりも高濃度で使用する必要があるが、ヒラメの生残状況に差が認められないため、FA100と同様に安全であると考えられる。試作炭酸ガス発泡剤の2000倍希釈と1667倍希釈は、FA100の12500倍希釈や10000倍希釈と麻酔状態に到達する時間が略同じであるが(平均3分〜4分半)、覚醒所要時間を比べると、試作品が平均4分半〜6分であるのに対し、FA100では9分半〜11分を要しており、試作品の方が短く、魚に無用のストレスを与える時間を少なくできる。
ハ)以上の所見に加えて、FA100では麻酔溶液に発泡と濁りが生ずると共に、独特の臭気が発生したことも考慮すると、食品添加物のみを用いて作った固形状炭酸ガス発泡剤は、ヒラメの麻酔剤として安全で効果があり、既存の麻酔剤よりも使いやすいとの結論が得られた。
最後に、魚類用麻酔剤のコスト計算例を以下に示す。
承認医薬品であるFA100は、一般的な販売価格は100mL当たり3200円ほどであり、麻酔剤としての使用濃度は100μL/Lであるから、その麻酔単価(麻酔溶液1Lを作るのに必要な麻酔剤の値段)は「1L当たり3.2円」程度である。これに対して、市販の固形状炭酸ガス発泡剤は、一般的な販売価格が900gにつき900円程度であり、これを用いて1/2500濃度の希釈液を作るとすれば、麻酔剤としての使用量は0.4g/Lであるから(1000g÷2500=0.4g)、その麻酔単価は「1L当たり0.4円」程度である。また、試薬のみで作った試作品は、試薬代が1000g当たり3500円程度であり、市販の発泡剤と同様、麻酔剤としての使用濃度は0.4g/Lであるから、麻酔単価は「1L当たり1.4円」程度となる。さらに、実施例1で作った固形状炭酸ガス発泡剤(食品添加物として公認されている原料のみで試作したもの)は、試薬代が1000g当たり449円程度であり、市販の発泡剤と同様、麻酔剤としての使用濃度は0.4g/Lであるから、この試作品の麻酔単価はわずか「1L当たり0.2円」程度となる。すなわち、この計算によれば、従来から使用されている魚類の麻酔剤(承認医薬品)に比べると、本発明に係る魚類の麻酔剤は、きわめてコストが低廉であることが理解できる。
なお、コハク酸は、酒石酸に比べて単価が安い。すなわち、現在の市況では、1g当たり食添酒石酸が1.46円であるのに対し、食添精製無水クエン酸は0.58円、食添コハク酸も同0.58円である。
以上、詳細に説明したとおり、本発明に係る魚類の麻酔剤は、ヒトにも魚にも十分に安全であることは勿論、魚類を短時間で麻酔状態にできると共に覚醒が早いので、無用に魚を弱めることがなく、生残率が良好である。また、本発明に係る魚類用の麻酔剤は、固形状であるからきわめて使いやすく、その上、保管・流通・運搬にも便利である。さらに、本発明に係る魚類用の麻酔剤は、従来の麻酔剤や麻酔方法に比べてはるかに廉価であり、大量に使用してもコストを抑えることができる。よって、本発明は産業上の利用性がきわめて大きいものがある。

Claims (8)

  1. 炭酸水素ナトリウムとコハク酸と固形化促進剤を主原料とし、食品添加物として公認されている原料のみで作った固形状炭酸ガス発泡剤からなる魚類用の麻酔剤。
  2. 炭酸水素ナトリウムとコハク酸と固形化促進剤を混合して成形したものを乾燥させて得られる固形状炭酸ガス発泡剤からなる請求項1に記載の魚類用の麻酔剤。
  3. 炭酸水素ナトリウム40〜60重量%とコハク酸40〜60重量%の合計量に対して、固形化促進剤として無水エタノールを外割りで10〜20重量%加えて作った固形状炭酸ガス発泡剤からなる請求項1又は2に記載の魚類用の麻酔剤。
  4. 炭酸水素ナトリウム40〜60重量%とコハク酸40〜60重量%の合計量に対して、固形化促進剤として食用グリセリンを外割りで5〜15重量%加えて作った固形状炭酸ガス発泡剤からなる請求項1又は2に記載の魚類用の麻酔剤。
  5. 魚類として、シマアジ、カンパチ、マダイ、トラフグ、ブリ、ヒラメ、メバル、クロソイ、コイ、ニジマス、ギンザケ、アユ、ウナギを対象とする請求項1から4のいずれかに記載の魚類用の麻酔剤。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載の麻酔剤を溶解した水槽中の水に魚類を収容するか又は魚類を収容してある水槽中の水に請求項1から4のいずれかに記載の麻酔剤を溶解して魚類を麻酔する方法。
  7. 固形状炭酸ガス発泡剤からなる麻酔剤を魚の種類に応じて定めた希釈倍率によって希釈して用いる請求項6に記載の魚類の麻酔方法。
  8. 魚類として、シマアジ、カンパチ、マダイ、トラフグ、ブリ、ヒラメ、メバル、クロソイ、コイ、ニジマス、ギンザケ、アユ、ウナギを対象とする請求項6又は7に記載の魚類用の麻酔方法。



















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