JP2997112B2 - 石膏または石膏水溶液の飼料への利用方法 - Google Patents

石膏または石膏水溶液の飼料への利用方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は石膏または石膏水溶液の
飼料への利用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に動物が健康に育ち、また良質な
肉、乳、卵を得るためにはカルシウム分を充分に摂取さ
せることが必要である。このことから、家畜等にカルシ
ウム分を多く含む飼料を与えたり、飼料中に貝殻やカル
シウム薬剤等を混入して与えることがあるが、このよう
な物質、飼料から、水もしくは動物の消化液に溶出する
カルシウム分は全くの微量であり、殆どのカルシウム分
はそのまま体外に排出され、効率よく家畜に摂取されて
いないのが現状である。
【0003】更に穀物、魚粉等よりなる飼料は、時間の
経過とともに酸化されて酸化物を蓄積するか、もしくは
腐敗が進行する。このような飼料を家畜に与えると下痢
をするなどの症状が表れ、体力を弱らせることがある。
【0004】更に近年家畜が排出するメタンガスによる
環境への影響が注目されている。すなわち、地球温暖化
の元凶として指摘され、また排出規制に関しても各国間
で協議され始められている二酸化炭素の温室効果を遙か
に凌ぎ、一説にはその10乃至10数倍ともいわれてい
る温室効果を有するメタンガスの発生量は、米国エネル
ギー省の推計によると年間4億t以上といわれ、このう
ち、約20%は水田から排出されるが、次いで草食動物
から排出されるメタンガスが約15%と発生源としては
2番目に多い。一般に牛やヤギ等の反芻動物は消化器官
内に生息する微生物の働きで植物繊維を分解・醗酵させ
る過程で発生するメタンガスをいわゆる「ゲップ」によ
って大気中に排出する。例えば牛1日当たりのメタンガ
スの排出量は約360gにも及び、国内での牛の飼育頭
数は約400万頭であり、単純計算で国内の牛だけの年
間約52万tものメタンガスが大気中に放出されている
こととなり、これに加えてヤギで3万頭、羊で約3万頭
が飼育されていることを考慮すると地球の温暖化に及ぼ
す家畜の影響は予想以上に大きいことが指摘されてい
る。
【0005】このような家畜が生成するメタンガスは必
ずしも正常な消化活動に伴うものばかりとは限らず、飼
料の新鮮さの不足によって消化器官内で生じる異常醗酵
により生成されるメタンガスが相当量含まれていると予
想でき、こうしたことから該メタンガスの生成量を抑制
するために飼料や給餌方法等を研究するための予算が1
991年度から農林水産省に計上される等の試みが着手
され始めているが、未だこのような研究は緒についたば
かりであり、実効のある成果は今後の課題として残され
ている。
【0006】また、最近のグルメブームで、例えば海老
や高級魚等の養殖が各地で盛んになるとともに、各種の
魚類が生きたままで料理されることが多くなり、自ずか
らその目的を達成するために活魚を産地から「いけす」
のまま直接輸送され、料理店でも「いけす」で活魚を一
定期間生かしておくことがあるが、魚自らの排泄物(例
えばアンモニア)によって水質が悪化し生存率が低下す
ることがある。このようないけすや水槽での魚の生存率
の向上がそのまま事業の成否に直結するし、元気な状態
で一定期間飼育しないと味にも影響する。そのためにビ
タミン、酸素等を餌と一緒に与えているが、その効果を
充分に発揮しているとはいえない。
【0007】そこで、本発明は上記従来の事情に鑑み、
家畜や魚類を飼育し、該家畜から得られる肉、乳、卵の
味を良くするとともに、魚類の養殖や輸送、飼育にも効
果のあがる飼料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明では以下の手段を採用する。すなわち、水に
極微量の石膏を溶解させた石膏水溶液、または該水を加
熱して石膏を溶解させた後、常温に戻した石膏水溶液
を、家畜等の動物に与えることとした石膏水溶液の飼料
への利用方法であり、また石膏を直接飼料に混合して家
畜等の動物に与えることとしてもよい。
【0009】さらには、水槽、またはいけすの水を上記
石膏水溶液で一部置換するか、もしくは微量の石膏を溶
解させる石膏もしくは石膏水溶液の利用方法である。
【0010】
【作用】家畜等の飲用水に石膏を溶解させるか、または
石膏水溶液を与えることにより、効率よくその体内にカ
ルシウム分を吸収させることができ、家畜の生命力を向
上させる。さらに飼料に石膏を添加することにより、飼
料の酸化・腐敗を抑え長期間新鮮な状態を保つととも
に、この石膏が家畜によって直接吸収され、家畜の生命
力を向上する。
【0011】さらに、上記方法によって飼料に配合され
た石膏に含有されるカルシウムを家畜に効率よく摂取さ
せて、該家畜の消化器官内に存在する酸化物を中和する
とともに、上記酸化・疲弊した飼料を新鮮な状態に戻す
ことにより消化器官内の異常醗酵を防止して、メタンガ
スの生成量を抑制する作用を有する。家畜が排便した直
後の畜糞に対して数%以下の量の石膏を混合するとその
匂いが直ちに消滅すること、あるいは、人が食物ととも
に石膏を極微量摂取した場合にその人の排便ににおいが
無く、あるいは、皮膚からの排泄物である腋臭、水虫、
ふきでもの等が全然でなくなることを考慮すると上記石
膏の作用が推測できる。
【0012】また水槽やいけすの水の一部を石膏水溶液
で置換するか、微量の石膏を溶解させることにより、飼
育もしくは養殖されている魚の排泄物や餌の腐敗によっ
て該水に溶出する酸化物を中和して適正な水質に保つ。
また餌とともに石膏を与えることで魚等にカルシウムを
効率よく摂取せしめて、生命力を付与することも可能で
ある。
【0013】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明す
る。 =本鴨= 養鴨ハウス1棟に雄鴨200羽、雌鴨400羽を飼育し
ている香川県沖多度郡満濃町の飼育場において、本発明
の投与試験を行った。
【0014】投与方法は飼料と飲み水に石膏粉末を混入
するかたちでおこなった。投与後、毛並み、くちばしに
艶がでて、特に鼻孔部のピンク色の部分が鮮明になり、
美形となった。得られた鴨の臓器、特に肝臓が良好に肥
大し、また各個体の重量も増加した。 =魚の養殖= 徳島県日和佐県水産研究所において、海水1000重量
部に対して1重量部の石膏粉末を投与するテストを行っ
た。
【0015】水質・透明度 投入前の透明度88.2であったのに対して、投入後5
日間の透明度は86.7〜86.9で、投入前と投入後
で透明度の大きな変化はなく、更に投入後5日間は透明
度の大きな変動はなかった。
【0016】微生物 投入後、5日間で海水中の微生物の死亡はみられなかっ
た。 塩度の分解 投入前後で変化はなかった。
【0017】海水中、溶解率 68%以内である。 酸素濃度 5000/l 吹入度は投入しないものよりやや悪くな
る。
【0018】毒物、有害物質 存在は認められない。また、上記の結果 海水1tに対
して500g程度の石膏粉末の投与が適切であり、その
後時間経過とともに少量ずつ追加投与していくことが望
ましいと判断できた。
【0019】上記海水テストの結果を踏まえて、活魚の
移送または養殖に使用する水槽内の水1000重量部に
1重量部の石膏粉末を溶解させた。水槽内の水中に蓄積
する魚の排泄物(アンモニア)等の酸性物質をカルシウ
ム分が中和して生存率が向上した。
【0020】金魚をいれた水槽を2槽用意し、一方には
水槽の水の10分の1を濃度3%の石膏水溶液と置き換
えた水を用意し、他方は通常の水道水を用意して、空気
発生器を取り付けて「餌」は与えず、何時かは死亡する
という前提で試験を行ったところ、普通の水の方は13
日間で10匹の金魚は全部死亡したが、石膏または石膏
水溶液を使用した方の金魚は2匹が死亡したに過ぎなか
った。 =鶏= 養鶏場において、外掛け1重量%の石膏を添加した配合
飼料を採卵鶏に投与し、採取した卵重、卵径、卵殻強
度、卵殻厚、卵黄色、H.U(ハウユニット)を測定
し、その結果を表2(a) 〜(e) に示す。測定条件は以下
に示す通りである。 試験対象鶏
【0021】
【表1】
【0022】試験要領 平成2年5月18日より投与を開始し、1カ月毎に各数
値を測定した。 評価の基準 一年のうちで卵質が最も低下する6、7月の成績が投与
開始の5月の成績を下まわることがなければ効果ありと
判断する。 試験結果 表2に示す通り、4回目の測定時(7月4日)の成績は
1回目の成績と遜色がなく、特に猛暑の日が続いた6月
下旬を経ても気候のよい5月と同程度の水準の卵質を維
持したことは、本発明に係る石膏の投与による効果があ
ると認められる。
【0023】またカキ殻、もしくは炭化カルシウムのみ
を上記石膏と同量飼料に配合して投与した鶏では6、7
月の卵質の落ち込みが激しかったのに比べると際立った
効果が確認され、特に上記測定数値中、H.U(ハウユ
ニット)〔卵白のたるみ状態を判断するもので数値が高
いほど新鮮であることを示す指数〕は高い数値を維持し
ており、本発明によるカルシウムが効率良く鶏に吸収さ
れたことを示している。
【0024】
【表2】
【0025】=排泄物= さらに、上記石膏を数%以下を配合した飼料を家畜に摂
取させると、該飼料は効率よく摂取させて、該家畜の消
化器官内に存在する酸化物を中和するとともに、上記酸
化・疲弊した飼料を新鮮な状態に戻す。この結果、消化
器官内の異常醗酵を防止して、メタンガスの生成量が抑
制された。この現象に似た現象として、家畜が排便した
直後の畜糞に対して数%以下(この添加量はいくらでも
よいが、数%以下で足りる)の量の石膏を混合するとそ
の匂いが直ちに消滅すること、あるいは、人が食物とと
もに石膏を極微量摂取した場合にその人の便に匂いが無
く、あるいは、皮膚からの排泄物である腋臭、水虫、ふ
きでもの等が全然でなくなる。即ち、石膏は動物の肛門
から排泄される排泄物ばかりでなく、皮膚あるいは口か
ら排泄させる排泄物に対しても有効に作用する。
【0026】
【発明の効果】以上のように本発明による石膏または石
膏水溶液を飲用水として、または飼料とともに家畜等に
与えることで、肥育の状態は向上し、該家畜からとれる
肉、乳、卵の味は一層引き締まったものとなるととも
に、その収量は従来の飼料のみ与えていた家畜よりも向
上する。
【0027】さらに、本発明によって疲弊・酸化した飼
料に対し石膏を投与することで、家畜体内の酸化物を中
和するとともに、消化器官内での異常醗酵を有効に抑制
し、家畜体内で生じるメタンガスの発生量を抑制する効
果がある。
【0028】また、魚類の水槽やいけすの水もしくは海
水を一部石膏水溶液で置換するか、もしくは微量の石膏
を溶解させることにより長期間にわたって「いき」のい
い魚を生存させることができた。また、こうした石膏ま
たは石膏水溶液またはその原料となる石膏を溶解させる
か餌とともに与えた魚の味は上記家畜の肉、乳、卵と同
様従来よりも「美味しい」ものとすることができる。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水に極微量の石膏を溶解させた石膏水溶
    液、または該水を加熱して石膏を溶解させた後、常温に
    戻した石膏水溶液を、家畜等に与えることを特徴とする
    石膏水溶液の飼料への利用方法。
  2. 【請求項2】 石膏を直接飼料に混合して家畜等の動物
    に与えることを特徴とする石膏の飼料への利用方法。
  3. 【請求項3】 水槽、またはいけすの水を、水に極微量
    の石膏を溶解さ せた石膏水溶液、または該水を加熱して
    石膏を溶解させた後、常温に戻し 石膏水溶液で一部置
    換するか、または上記水槽、またはいけすの水に微量の
    石膏を添加することを特徴とする石膏または石膏水溶液
    の飼料への利用方法。
JP30506891A 1990-11-20 1991-11-20 石膏または石膏水溶液の飼料への利用方法 Expired - Fee Related JP2997112B2 (ja)

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