以下、本発明の一実施の形態に係るプリンタ10、および液体流通装置としての板状チューブ500について、図1から図8に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、下方側とは、プリンタ10が設置される側を指し、上方側とは、設置される側から離間する側を指す。また、キャリッジ31が移動する方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向であって印刷対象物Pが搬送される方向を副走査方向とする。また、印刷対象物Pが供給される側を給紙側、印刷対象物Pが排出される側を排紙側として説明する。
<プリンタの概略構成>
最初に、プリンタ10の構成の概略について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るプリンタ10の概略構成を示す斜視図であり、紙送りの上流側を手前、紙送りの下流側(排紙側)を奥側に配置している状態を示す図である。また、図2は、プリンタ10の構成を示す概略図である。本実施の形態のプリンタ10は、シャーシ21と、ハウジング22と、キャリッジ機構30と、紙送り機構40と、インク供給機構50と、クリーニング機構60と、制御部70と、を具備している。
これらのうち、シャーシ21は、その下面側が設置面に接触する部分であると共に、各種ユニットが搭載される部分である。また、このシャーシ21には、図1において二点鎖線で示されるハウジング22が取り付けられる。このハウジング22は、上述したシャーシ21と同様な平面形状を有している。
また、キャリッジ機構30は、図1および図2に示すように、キャリッジ31と、このキャリッジ31が摺動するキャリッジ軸32と、印刷ヘッド33と、を具備している。また、キャリッジ機構30は、キャリッジモータ(CRモータ)34と、このCRモータ34に取り付けられている歯車プーリ35と、無端のベルト36と、歯車プーリ35との間にこの無端のベルト36を張設する従動プーリ37と、を具備している。これらのうち、印刷ヘッド33からは、後述するインク供給機構50を介して供給されるインクが、印刷対象物Pに対して吐出される。
また、図2に示すように、紙送り機構40は、紙送りモータ(PFモータ)41と、この紙送りモータ41からの駆動力が伝達される給紙ローラ42等を具備している。
また、本実施の形態におけるプリンタ10は、インクカートリッジ51(供給源に相当)をシャーシ21側に装着する、いわゆるオフキャリッジタイプとなっている。そのため、プリンタ10のインク供給機構50は、図1に示すように、カートリッジホルダ52と、加圧ポンプ53と、可撓性チューブ54と、サブタンク55と、を具備している。また、インク供給機構50は、これらの他に、液体流通装置に相当する板状チューブ500も有している。
これらのうち、図3に示すカートリッジホルダ52は、図4に示すインクカートリッジ51を搭載する部分であり、シャーシ21に対して固定的に取り付けられている。このカートリッジホルダ52には、インクカートリッジ51を差し込むための差込口52aが設けられている。また、このカートリッジホルダ52は、本実施の形態では、プリンタ10の内部であって主走査方向の端部側に、それぞれ1つずつ(合計2つ)設けられている。また、このカートリッジホルダ52のシャーシ21に対する取り付け位置は、キャリッジ31の移動空間域から外れる部位に設けられている。具体的には、カートリッジホルダ52は、キャリッジ31が長手方向において往復動する領域よりも、長手方向外側に設けられると共に、キャリッジ31の往復動の領域よりも例えば印刷対象物Pの排出側に取り付けられている。
また、一対のカートリッジホルダ52には、差込口52aを介して、それぞれ複数(本実施の形態では3つずつ)のインクカートリッジ51が着脱自在に装着される。このインクカートリッジ51は、図4に示すように、ケーシング51aの内部に空気室51bを具備しており、さらにこの空気室51bの内部にインクを充填するインクパック51cが収容されている。インクパック51cは、例えばアルミパックのような、気密性の高い袋状部材であり、このインクパック51cの内部には、インクが収容されている。なお、インクパック51c内のインクは、後述するように、チョーク弁室541の内部に存在する気泡を溶解させて、外部に排出することを可能としている。そのため、以下の説明においては、かかるインクパック51c内のインクは、予め空気の溶解が抑えられている、脱気インクとなっている。また、インクパック51cは、上述のように、気密性が高いため、気泡(空気)の溶解度が飽和せずに、当該気泡(空気)を溶解可能な状態を、非常に長い期間保つことを可能としている。
また、図1に示すように、カートリッジホルダ52には、加圧ポンプ53が接続されている。この加圧ポンプ53は、インクカートリッジ51内の空気室51bの内部に空気を送り込む。そして、この空気室51bの圧力を高めることにより、インクパック51cは押し潰されるように変形させられる。そして、この変形により、インクパック51c内に存在するインクは、板状チューブ500の内部に押し出され、当該板状チューブ500の内部に存在する第1インク流路523等をインクが流れる。なお、この板状チューブ500の構成の詳細については、後述する。
また、図1に示すように、板状チューブ500のうち、インクの流れの下流側の端部には、可撓性チューブ54の一端側が連結されている。この可撓性チューブ54は、エラストマ樹脂等のような、可撓性を有する材質から形成されている。それにより、可撓性チューブ54は、柔軟に可撓し、キャリッジ31の主走査方向における往復動を妨げない状態となっている。また、可撓性チューブ54には、その長手方向を貫く、中空のチューブ管路(図示省略)が存在している。そして、インク流路523,532,535と、チューブ管路とは連通して、インクを良好に流通させることを可能としている。
また、可撓性チューブ54の他端側には、サブタンク55が接続されている。このサブタンク55は、キャリッジ31の上部に、原則としてインクカートリッジ51と同じ個数だけ設けられている。このサブタンク55には、インク流路523,532,535およびチューブ管路を流通してきたインクが一時的に蓄えられる。なお、このサブタンク55に蓄えられるインクは、キャリッジ31の下面側に印刷ヘッド33から吐出される。
また、シャーシ21には、図1に示すようなクリーニング機構60が設けられている。このクリーニング機構60は、キャップ61と、吸引ポンプ62と、インク排出チューブ63とを備えている。これらのうち、キャップ61は、印刷ヘッド33のノズル形成面(不図示)を封止する部分である。かかる封止状態で、吸引ポンプ62が作動すると、インク排出チューブ63を介して、インクが不図示の廃液タンクに排出される。このインクの吸引動作により、板状チューブ500、可撓性チューブ54、または印刷ヘッド33等に混入している気泡を、強制的に排出する、いわゆるクリーニング動作を実行可能となっている。
また、図2に示すように、プリンタ10には、制御部70が設けられている。この制御部70は、インタフェース71、不図示のCPU、メモリ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、バス、タイマ等を有している。また、この制御部70には、各種センサからの信号が入力されると共に、このセンサからの信号に基づいて、CRモータ34、PFモータ41、加圧ポンプ53のポンプモータ(図示省略)、吸引ポンプ62のポンプモータ(図示省略)、および印刷ヘッド33等の駆動を司る。
また、プリンタ10は、インターフェース71を具備している。そして、プリンタ10は、このインターフェース71を介して、コンピュータ80に接続されている。なお、このコンピュータ80は、CPU、RAM、ROM、HDD(Hard Disk Drive)、インターフェース等を具備している(図示省略)。このうち、HDDには、画像を加工するためのアプリケーションプログラム、プリンタドライバプログラム、ビデオドライバプログラム等が記憶されている。
<板状チューブの構成の詳細>
続いて、板状チューブ500の構成について、図1、図5および図6に基づいて説明する。図1に示すように、本実施の形態では、主走査方向に沿って、2つの板状チューブ500,500が設けられている。これら2つの板状チューブ500,500は、主走査方向における長さ寸法が異なる等の相違はあるものの、その構成要素は略同一であり、以下の説明においては、纏めて板状チューブ500として説明する。
これら板状チューブ500は、チューブプレート510と、フィルム560とを主要な構成要素としている。これらのうち、チューブプレート510は、例えばアクリルといった、硬度が高い樹脂材を材質として形成されている。また、フィルム560は、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン等のような、熱可塑性樹脂から形成されている。そして、このフィルム560は、チューブプレート510に対して熱圧着する等により取り付けられている。なお、このフィルム560は、複数の層が積層される構成を採用しても良い。かかる構成を採用する場合、上述の材質に対して、ポリプロピレン、又はポリエチレン等の複数の熱可塑性樹脂層を積層し、水蒸気を通過させない構成を採用することが可能である。
ここで、図5に示すように、チューブプレート510は、ホルダ取付部520と、流路形成部530と、チューブ接続部550と、を有している。これらのうち、ホルダ取付部520は、カートリッジホルダ52に対して取付固定される部分であり、本実施の形態では、その外観が、平面視で略正方形を為すように設けられている。このホルダ取付部520のうち、下方側には、インクカートリッジ51の個数の分だけ(本実施の形態では3つ)、貫通孔521が設けられている。この貫通孔521には、加圧ポンプ53から空気を圧送する、不図示の空気チューブが挿通される。なお、空気チューブは、インクカートリッジ51の空気室51bに連通されており、当該空気室51bに空気を圧送して、インクパック51cを押し潰すことを可能としている。
また、上述の貫通孔521の上部には、インク流出孔522が設けられている。このインク流出孔522は、カートリッジホルダ52に設けられる、不図示のインク供給針に連通している。ここで、インクカートリッジ51をカートリッジホルダ52に搭載する場合、当該インクカートリッジ51のインク供給口51d(図4参照)とインク供給針とが連結され、インクパック51c内のインクを、インク流出孔522から流出させることが可能となる。このインク流出孔522は、第1インク流路523へインクを流入させるための入口となっている。
また、インク流出孔522には、第1インク流路523を構成する第1溝部523aが連通している。この第1溝部523aは、チューブプレート510の他の部分よりも凹むように設けられる、溝状通路の部分である。また、この第1溝部523aは、チューブプレート510のうち、カートリッジホルダ52が取り付けられる側とは反対側の面に存在する。なお、以下の説明においては、チューブプレート510のうち、カートリッジホルダ52が取り付けられる側の面を裏面510b(図6で示される側の面)とすると共に、それとは反対側の面(図5で示される側の面)を表面510aとする。
この第1溝部523aは、ホルダ取付部520から流路形成部530に向かって延伸している。ここで、図5に示すように、流路形成部530は、平面視略L字状に形成されている。そして、第1溝部523aは、この略L字状の流路形成部530のうち、ホルダ取付部520から離間する向きの垂直部530aを延伸した後に、垂直部530aに対して直交する平行部530bとの付け根の部分に差し掛かる。ここで、当該付け根の部分には、貫通孔531が設けられている。この貫通孔531は、表面510a側で第1溝部523aと連通していると共に、裏面510b側で第2溝部532aと連通している。
ここで、図6に示すように、平行部530bには、第2溝部532aが設けられている。この第2溝部532aは、後述するチョーク弁室541との干渉を避けるべく、平行部530bの裏面510b側に設けられている。この第2溝部532aは、裏面510bに対するフィルム560の貼付により、第2インク流路532を構成するものである。また、第2溝部532aの下流側の端部には、流入孔533が設けられている。この流入孔533は、平行部530bを貫通していることにより、次に述べるインク導入路534にインクを導入することを可能としている。なお、この流入孔533は、平行部530bの幅方向のうち、一端側(下方側)に位置している。
また、平行部530bの表面510a側には、合計3つのチョーク弁室541(図7参照;液体流入室に相当)と、それぞれのチョーク弁室541にインクを導くためのインク導入路534とをそれぞれ有している。このうち、インク導入路534には、流入孔533からインクが流入されるが、このインク導入路534の他端側は、流入口542においてチョーク弁室541に接続されている。なお、インク導入路534の他端側は、平行部530bの幅方向のうち、他端側(上方側)に位置している。また、インク導入路534においては、外周側の周壁面534aが、チョーク弁室541の周壁面541aに、滑らかに連続するように設けられている。ここで、インク導入路534の周壁面534aと、チョーク弁室541の周壁面541aとは、インボリュート曲線を描くように構成されている。また、インク導入路534のうち、内周側の周壁面534bと外周側の周壁面534aとの間の間隔は、上流側である流入孔533から下流側である流入口542に向かうにつれて、徐々に狭くなるように設けられている。
また、図7に示すチョーク弁室541は、フィルム560の接合によって、チョーク弁540として機能する部分である。このチョーク弁室541は、平行部530bの表面510a側において、流入口542を介してインク導入路534に接続されている。このチョーク弁室541は、上述のように、その周壁面541aのうちの一部(一例として略半分程度)がインボリュート曲線を描くように設けられている。また、このチョーク弁室541は、流入するインクが渦巻くような、サイクロン流路を構成している。そして、インクが渦巻き状に流れることにより、気泡とインクとの接触機会を増大させている。
また、このチョーク弁室541の略中央部には、排出孔543が設けられている。この排出孔543は、チョーク弁室541の底部541bから裏面510b側に向かい、平行部530bを貫通している。そして、この排出孔543は、裏面510b側で第3溝部535aと連通している。それにより、この排出孔543を介して、チョーク弁室541に流入されたインクを、第3溝部535aに向けて流出させることを可能としている。また、底部541bにおいて、排出孔543の周囲には、環状凸部544が設けられている。この環状凸部544は、底部541bから表面側に向かい、リング状に突出している部分である。この環状凸部544の突出端面544aは、略平面状に設けられていて、この突出端面544aにフィルム560が接離可能となっている。
なお、フィルム560は、チョーク弁室541の圧力と、フィルム560を挟んでチョーク弁室541とは反対側(外側)との圧力差に応じて、容易に撓むことを可能としている。ここで、チョーク弁室541が、外側の圧力よりも高くなると、フィルム560が底部541bから離間する側に向かって撓む。この場合、突出端面544aとフィルム560との間には、隙間S(図8参照)が存在する状態となる。そして、この隙間Sを介してインクが流通可能となり、排出孔543(第3溝部535a)に向けてインクを流通させることが可能となる。逆に、外側の圧力が、チョーク弁室541の圧力よりも高くなると、フィルム560が底部541bに近接する側に向かって撓む。この場合、フィルム560は、突出端面544aの全周に亘り、途切れることなく接触する。それにより、インクは、排出孔543を介して流出せず、その流れが遮断される。このようにして、チョーク弁540は、インクの流出の開閉を可能としている。
このチョーク弁室541においては、複数の内部トラップ545(気泡捕捉手段、捕捉突起および第2の突起に相当)と、複数の周壁トラップ546(気泡捕捉手段、捕捉突起および第1の突起に相当)と、単数の分離突起547とが設けられている。これらのうち、内部トラップ545は、チョーク弁室541の底部541bから表面510a側に向かって突出している。ここで、本実施の形態では、内部トラップ545の突出端面545cには、上述のフィルム560が貼付される。それにより、内部トラップ545とフィルム560との間には隙間が存在しない状態となり、インクは内部トラップ545同士の間、または周壁面541aと内部トラップ545との間を流通する状態となる。
この内部トラップ545は、その平面形状が、図7に示すような三日月形状となっている。この形状を詳述すると、三日月形状の内部トラップ545は、外周面545aと、内周凹面545b(捕捉部および凹部に相当)とを有している。これらのうち、外周面545aは、三日月形状の外周側に位置する面であり、その接線が内部トラップ545と交差しない面である。この外周面545aは、上側を向くように設けられていると共に、周壁面541aと対向する状態に設けられている。一方、内周凹面545bは、三日月形状の内周側に位置する面であり、その接線が内部トラップ545と交差する面である。この内周凹面545bは、その窪み部分が上方に突出するように設けられている。それにより、この内周凹面545bは、気泡が流れるのを防ぐ(気泡を捕捉する)働きをする。ここで、チョーク弁室541には、インクが流入している。そのため、内周凹面545bで捕捉される気泡は、比較的長い間、インクにさらされる状態となる。それにより、気泡はインクに溶解されていく。
なお、内周凹面545bの直径は、外周面545aの直径よりも、大きいか、または等しくなるように設けられている。また、この内部トラップ545は、チョーク弁室541の大きさに応じた個数だけ配置可能である。しかしながら、内部トラップ545が、排出孔543に近接し過ぎると、フィルム560の撓み量が小さくなり、チョーク弁540としての機能が損なわれる虞がある。そのため、内部トラップ545は、排出孔543に対して、所定の距離だけ離間するように設けられている。
また、内部トラップ545は、図7に示すように、周壁面541aと対向するように、弧状を為す列状(以下、列545Lとする。)に配列されていても良く、その弧状の列545Lが複数列存在していても良い。また、内部トラップ545の配列は、その他、千鳥状の配列、ランダムな配列等、種々の配列とすることが可能である。また、チョーク弁室541の内部においては、気泡は、時間と共に成長する場合がある。そこで、周壁面541aと内部トラップ545との間の間隔、および内部トラップ545同士の間の間隔を、気泡の成長を抑える(気泡が小さい状態を維持する)程度の間隔とすることが好ましい。
また、チョーク弁室541のうち、上方の周壁面541aには、周壁トラップ546が設けられている。この周壁トラップ546は、後述する隙間Lを通過する、比較的小さな気泡を捕捉し、当該気泡が流れるのを防ぐためのものである。なお、この周壁トラップ546は、図7においては、周壁面541aよりも下方に向かって突出する略波型形状を為している。そして、この略波型形状の谷間の部分(上方に位置する部分であり、以下、谷間部546aとする。)で、気泡を捕捉する。また、この周壁トラップ546は、底部541bから離間する突出面においてフィルム560に貼付されている。なお、谷間部546aは、捕捉部および凹部に相当する。
また、チョーク弁室541のうち、流入口542の近傍には、分離突起547(気泡分離手段に相当)が設けられている。図7に示すように、本実施の形態における分離突起547は、内部トラップ545と上下逆の状態で配置されている。すなわち、分離突起547は、その平面形状が図7に示すような三日月形状に設けられている。また、この分離突起547も、外周面547aと内周凹面547bとを有している。しかしながら、分離突起547の内周凹面547b(接線が分離突起547と交差する側の面)は、その窪み部分が下方に向かって突出するように設けられている。また、分離突起547の外周面547a(接線が分離突起547と交差しない側の面)は、下側に向かうように設けられている。
ここで、分離突起547は、インク導入路534から流入する気泡を、その大きさに応じて分離するためのものである。具体的には、図7に示すように、分離突起547の流入口542側の先端547c(尖形部に相当)と、周壁面541aとの間の隙間Lを、気泡が通過可能か否かにより、気泡は、その大きさに応じて分離されている。つまり、隙間Lを通過可能な気泡は、比較的小さな気泡であり、通過後の気泡は、上方への移動によって周壁トラップ546により捕捉される。一方、隙間Lを通過できない気泡は、当該隙間Lよりも大きな直径を有する、比較的大きな気泡である。そのため、隙間Lを通過不能な気泡は、分離突起547の内周凹面547bに沿う流れに沿って、内部トラップ545の列を移動する。そして、この移動の過程において、気泡は、列545Lのうち、いずれかの内周凹面545bにより捕捉される。
また、分離突起547の先端547cは、流入口542側に突き出す、尖形状に設けられている。この先端547cは、気泡を砕く機能をも備えている。すなわち、流入口542から入り込む気泡の中には、この先端547cへの衝突の際に、細かく砕かれるものがある。そして、砕かれた気泡のうち、隙間Lを通過可能なものは、当該隙間Lを通過して上方側へと移動すると共に、砕かれた気泡のうち、隙間Lを通過不能なものは、外周面547aに沿って移動する。
なお、隙間Lを通過可能な気泡の中には、外周面547aに沿って移動するものもあるが、そのうちの一部は、分離突起547と内部トラップ545との間の隙間、または内部トラップ545同士の間の隙間を通過する。また、分離突起547と内部トラップ545との間の隙間、および内部トラップ545同士の隙間は、上述の隙間Lと同程度であるか、または小さいのが好ましい。
また、内部トラップ545の内周凹面545b、および周壁トラップ546の谷間部546aは、親水性を備える材質によって構成されている。この場合、内周凹面545b、谷間部546aは、親水処理を行って、親水性を備えるようにしても良い。ここで、親水処理としては、内周凹面545b、谷間部546a等に対して、ポリアルキルシロキサン、各種の酸、各種のアルコールを含む溶液を塗布するものがある。一般に、親水性を有するためには、親水性基を備える場合等のように、極性または電荷を備えるものが表面に存在していれば良い。そのようなものとしては、親水性基を備える高分子化合物(例えば、上述のポリシロキサン、ポリアルキルシロキサン等)が表面に存在する場合がある。
また、平行部530bには、第3溝部535aが設けられている。この第3溝部535aは、その一端が上述の排出孔543に連通していると共に、その他端側はチューブ接続部550に連通している。なお、この第3溝部535aは、フィルム560の貼付により第3インク流路535を構成する。また、第3溝部535aは、裏面510b側に設けられている。
また、チューブ接続部550は、可撓性チューブ54に接続される。ここで、チューブ接続部550には、パイプ状の接続管551が設けられていて、この接続管551が可撓性チューブ54のチューブ管路に差し込まれる等により、チューブ接続部550とチューブ管路とが連通する。
<インク供給の際のインクの流れ>
以上のような構成を有するプリンタ10を作動させて、インクカートリッジ51からインクを供給する動作について、以下に説明する。
制御部70の指令により、加圧ポンプ53が駆動され、所定の色種のインクカートリッジ51の空気室51bの内部に空気が圧送され、インクパック51cが圧送される空気の圧力によって押し潰される。この押し潰しの動作により、インク(脱気インク)は、インクパック51cから押し出され、インク流出孔522から第1インク流路523へとインクが流れ込む。
ここで、インクパック51cへの圧力の付加により、インクが流れる場合、大きく分けて、印刷に際して供給されるインクの流速と、気泡除去のためのクリーニングを行う際のインクの流速という、2つのインクの流速が存在する。なお、クリーニングを行う場合、その際のインクの流速は印刷の際のインクの流速と比較して格段に速く、チョーク弁室541内部で捕捉されている気泡は、その流速に抗しきれずに、排出孔543から排出される。しかしながら、印刷の際のインクの流速は、クリーニングの際のインクの流速と比較して非常に遅く、内部トラップ545や周壁トラップ546に捕捉されている気泡は、その捕捉状態を維持して、ほとんど外部に排出されない状態となっている。なお、以下のインクの流れの説明においては、基本的には印刷の際のインクの流速に基づいて説明する。
上述のように、第1インク流路523にインクが供給されると、このインクは、その後貫通孔531から第2インク流路532へと入り込む。さらにインクが第2インク流路532を流れると、当該インクは、流入孔533を介してインク導入路534へと流れ込む。インク導入路534へ流れ込んだインクは、そのインク導入路534に従って、流入口542へと到達し、この流入口542を介してチョーク弁室541へと入り込む。ここで、インクに気泡が混入している場合、インクと共に流れる気泡は、その多くが外周側の周壁面534aに沿って流入口542へと到達する。そして、気泡が、流入口542からさらにチョーク弁室541へと進行する際に、分離突起547の先端547c付近に差し掛かる。
気泡が先端547c付近に差し掛かると、当該気泡が隙間Lを通過可能か否かに応じて、その後の進行経路が異なる。すなわち、気泡の直径が隙間Lよりも小さく、この隙間Lを通過可能な場合には、気泡は隙間Lを通過して、チョーク弁室541の上側に位置する、周壁トラップ546側へと進行する。そして、気泡は、周壁トラップ546の谷間部546aによって捕捉され、この谷間部546aに暫く留まる。また、気泡が比較的大きいものであり、隙間Lを通過できない場合、その気泡は、より中心側の内周凹面547bに沿って移動した後に、列545Lのうち、いずれかの内部トラップ545により捕捉される。すなわち、気泡は、内周凹面545bにより囲まれる湾曲凹面に、暫く留まる状態となる。
なお、気泡が先端547cに衝突すると、その衝突によって、気泡が砕かれる場合もある。ここで、気泡が砕かれた場合、その後の経路については、砕かれた後の気泡が、隙間Lを通過可能か否かにより、上述の説明と同様となっている。
また、上述のように、気泡が波型形状の谷間部546aにおいて留まる場合、および気泡が内周凹面545bに留まる場合のいずれの場合でも、これらの気泡は、インクの中に存在する状態となる。そのため、気泡は、その外表面から徐々にインクに溶解していく。ここで、周壁トラップ546が設けられている近傍は、チョーク弁室541の周壁面541aの付近であるため、インクの流速が、中心側よりも速い。そのため、波型形状の谷間に存在する気泡が、比較的小さなものであっても、その気泡は、インクの流れにより、より多量のインクに触れる状態となる。それにより、気泡は、徐々に溶解していき、究極的な好ましい状態としては、気泡が消滅する。
また、内周凹面545bにより捕捉される、比較的大きな気泡は、チョーク弁室541のうち、中央寄りの部位に位置する。ここで、比較的大きな気泡が、周壁541a側に位置する場合と、チョーク弁室541の中央寄りに位置する場合とを比較すると、中央寄りの方では、気泡は、その全体が脱気インクに接触するため、脱気インクに対する接触面積を増大させることが可能となる。それにより、気泡は、徐々に脱気インクに対して溶解させることが可能となる。
また、インクは、加圧ポンプ53の駆動により、加圧される状態となっている。そのため、チョーク弁室541の内部には、加圧状態のインクが存在しており、それにより気泡のインクへの溶解が速まる状態となっている。
そして、インクは、チョーク弁室541の内部で、渦巻き状に緩やかに流れる。それによっても、インクと気泡との接触機会が増大している。また、気泡を溶解させたインクは、上述のように緩やかに渦巻き状に流れながら、排出孔543へと向かう。そして、インクは排出孔543から流出し、第3インク流路535へと流れ込む。そして、この第3インク流路535を流れるインクは、チューブ接続部550を介して可撓性チューブ54の内部へと流れ込み、さらにこの可撓性チューブ54のチューブ管路をインクが流れてサブタンク55へと供給される。そして、サブタンク55にインクが蓄えられた後に、必要に応じて印刷ヘッド33に供給され、当該印刷ヘッド33の内部に存在する駆動素子の駆動に応じて、印刷対象物Pに向けて吐出される。
なお、印刷実行時には、CRモータ34が駆動され、それに伴ってキャリッジ31が主走査方向に摺動しながらインクを印刷対象物Pに向けて吐出させる。また、1ライン分の印刷が終了した後に、PFモータ41が駆動させられ、印刷対象物Pが副走査方向に送られる。以上の動作を、印刷データに対応する分だけ行うことにより、印刷対象物Pに対する印刷が実行される。
<本発明における実験データ>
本発明においては、印刷時において最も速い速度では、気泡が流出しなく、かつ最も吸引力の小さなインクの強制排出(クリーニング動作)では、気泡が排出されることが望ましい。すなわち、印刷時のインクの流速では、気泡は排出孔543から排出されない一方、クリーニング動作の際のインクの流速では、気泡が排出孔543から排出される必要がある。このような、気泡が排出される/気泡が排出されないという、境界の流速を確認すべく実験を行ったところ、その境界の値(しきい値)として、0.10g/secが得られた。すなわち、インクの流速が、しきい値以上の流速であれば、内部トラップ545および周壁トラップ546で捕捉されている気泡は、その気泡の状態のまま、インクと共に排出孔543から排出されていく。一方、インクの流速がしきい値を下回る場合には、内部トラップ545および周壁トラップ546で、気泡を補足する状態を維持可能となる。
なお、上述のしきい値は、外部の環境、チョーク弁室541の形状等によって若干変動するが、しきい値の範囲としては、0.06g/sec〜0.12g/secに収まるのが好ましい。また、かかるインクの流速は、加圧ポンプ53の駆動によりコントロールされるが、そのためのプログラム/データが、制御部70には存在している。
<本発明を適用した場合における効果>
上述のプリンタ10、および板状チューブ500によれば、チョーク弁室541に入り込んだ気泡は、内部トラップ545および周壁トラップ546により補足される状態となる。このため、気泡は、インク中に比較的長い間さらされる状態となり、気泡は、インクに対して徐々に溶解されていく。それにより、複雑かつ特別な装置を用いることなく、気泡をインクに溶解させることが可能となる。そして、気泡をインクに溶解させた後に、印刷に用いる等して外部に排出すれば、印刷に際して不具合が発生するのを防止可能となる。すなわち、印刷ヘッド33のインク室の内部に気泡が混入するのを防止可能となり、印刷品質を向上させることも可能となる。また、上述のように気泡を溶解させることにより、各種のクリーニング動作を低減させることが可能となる。それにより、クリーニング動作に際して無駄に捨てられるインクの量を低減させることが可能となる。
また、本実施の形態では、インクは、インクカートリッジ51から、加圧ポンプ53によって加圧された状態で、チョーク弁室541に供給されている。このため、インクが非加圧状態で供給される場合と比較して、気泡を溶解させ易くなる。それにより、気泡のインクに対する溶解速度を一層速める(加速させる)ことが可能となる。
さらに、本実施の形態では、内部トラップ545および周壁トラップ546が設けられているので、インクが流れる際に、これら内部トラップ545および周壁トラップ546にインクが衝突し、気泡が内部トラップ545および周壁トラップ546に接触する。ここで、内部トラップ545には内周凹面545bが設けられると共に、周壁トラップ546には谷間部546aが設けられているので、上述のように接触した気泡は、内周凹面545bまたは谷間部546aで捕捉される。それにより、気泡は、インクに比較的長い間さらされる状態となり、気泡をインクに徐々に溶解させることが可能となる。
また、気泡を捕捉する内周凹面545bおよび谷間部546aは、その窪み部分が上方に突出する状態で配置されている。そのため、浮力により上昇しようとする気泡を、これら内周凹面545bまたは谷間部546aで、良好に捕捉可能となる。
また、本実施の形態では、内部トラップ545は、その平面形状が三日月形状に設けられている。このため、内部トラップ545の外周面545aは、湾曲凸形状に設けられる。それにより、インクは、この外周面545aに沿って、流体抵抗がさほど大きくない状態で良好に流通する。また、内周凹面545bは、湾曲凹形状に設けられている。そのため、この内周凹面545bでは、気泡を良好に捕捉可能となる。また、気泡がさほど大きくない段階では、気泡の表面張力により、当該気泡は、球形状または扁平している楕円球形状を為す状態で、内周凹面545bと接触すると考えられる。この場合、内周凹面545bと気泡との間に液体が入り込み易くなるので、液体と気泡とが接触する部位(面積)が増大する。それにより、気泡の液体に対する溶解を速める(加速させる)ことが可能となる。
さらに、本実施の形態では、チョーク弁室541の流入口542近傍に、分離突起547が設けられていて、この分離突起547と周壁面541aとの間には、隙間Lが設けられていて、この隙間Lを気泡が通過可能か否かにより、当該気泡はその大きさに応じた分離が為される。そのため、比較的小さな気泡は、隙間Lを通過することができ、周壁面541aに沿った移動が可能となる。一方、比較的大きな気泡は、この隙間Lを通過できない。そのため、この隙間Lを通過可能か否かによって、気泡を分離することが可能となる。
また、分離突起547は、チョーク弁室541の底部541bから離間する側に突出しているので、インクが流れる際に、この分離突起547に気泡を衝突させる(接触させる)ことが可能となる。また、分離突起547のうち流入口542に近い先端547cは、尖形状に設けられていて、この先端547cに対して気泡が衝突することにより、比較的大きな気泡の一部は細かく砕かれる。ここで、気泡が細かく砕かれる場合、気泡の表面積の減少は、気泡の体積の減少よりも小さくなる。そのため、気泡が細かく砕かれると、気泡とインクとの接触面積を増やすことが可能となり、気泡のインクに対する溶解を、一層速める(加速させる)ことが可能となる。
さらに、本実施の形態におけるインクは、予め空気の溶解が抑えられている、脱気インクとなっている。そのため、インクは、気泡を十分に溶解させることが可能であり、気泡のインクに対する溶解を、一層速める(加速させる)ことが可能となる。
また、内周凹面545bおよび谷間部546aは、親水性を備える材質を有している。このため、内周凹面545bおよび谷間部546aは、インクが表面につき易くなるため、気泡と内周凹面545bの接触面積、および気泡と谷間部546aの接触面積は、相対的に小さくなる。それにより、気泡とインクとの接触面積を増加させることが可能となり、気泡のインクに対する溶解を、一層速める(加速させる)ことが可能となる。
<本発明の変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態においては、液体流通装置として、板状チューブ500を用いる場合について説明している。しかしながら、液体流通装置は、板状チューブ500には限られず、例えば管路の中途部分に液体流入室を備えるもの等のように、どのようなものであっても良い。また、液体流通装置は、プリンタ10に用いられる場合について説明している。しかしながら、液体流通装置は、プリンタ10以外の装置に用いられても良い。プリンタ10以外の装置としては、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ等の製造に用いられる、液体を噴射する装置等がある。また、液体は、インク以外の液体であっても良く、たとえば液晶ディスプレイ、ELディスプレイに用いられる液体を噴射する装置においては、色材、電極材が液体となる。また、液体は、脱気インクには限られず、気泡が所定だけ溶解しているインク(飽和しているインク等)を用いても良い。なお、飽和しているインクを用いる場合、加圧または冷却等の別途の作業が必要となる。
また、上述の実施の形態では、内部トラップ545は、その平面形状が略三日月形状を為すように設けられている。しかしながら、内部トラップ545の平面形状は、略三日月形状には限られず、気泡を捕捉する捕捉部が存在するものであれば、どのような形状であっても良い。例えば、内部トラップ545は、内角の異なる2つのV字形状を重ね合わせた形状(V字のブーメラン形状)、U字形状、凹字形状等、種々の形状を為していても良い。また、チョーク弁室541の底部541bには、溝を形成し、この溝がチョーク弁室541の内部において渦巻き状を描くように設けるようにしても良い。この場合、インクが渦巻き状に流れるのが良好にガイドされる状態となる。
また、三日月形状を為す内部トラップ545、分離突起547の配列の向きは、窪み部分が上方に突出する状態で配置されるものには限定されず、例えば三日月形状の2つの先端(交点部分)が、周壁541aと一定の間隔をおく曲線に倣うような配列としても良い。
また、上述の実施の形態では、気泡捕捉手段として、内部トラップ545および周壁とラップ546を用いる場合について説明している。しかしながら、気泡捕捉手段はこれらには限られない。例えば、チョーク弁室541の内部にフィルタを設置し、このフィルタを気泡捕捉手段としても良い。
また、インク導入路534の周壁面534aと、チョーク弁室541の周壁面541aとは、インボリュート曲線を描くように構成されているが、当該インボリュート曲線以外に、サイクロイド曲線、渦巻き曲線等、種々の曲線を描くように構成されていても良い。また、一対の板状チューブ500が、設置面に対して平行に設置される場合、チョーク弁室541の向きは、コリオリの力を考慮して、時計回りにインクが流れるように(ただし北半球の場合)構成しても良い。
また、上述の実施の形態では、内部トラップ545と周壁トラップ546の両方を設ける場合について説明しているが、いずれか一方のみを設ける構成を採用しても良い。また、上述の実施の形態においては、気泡分離手段として、分離突起547を設ける構成を採用しているが、この分離突起547を採用しない構成としても良い。また、気泡分離手段としては、分離突起547には限られず、例えばポール状の突起体、所定の大きさの気泡のみを通過させるフィルタを一部に設ける等、種々の構成を採用することが可能である。
また、上述の構成に加えて、チョーク弁室541の内部に、超音波を印加する手段(超音波発生装置)を具備する構成を採用したり、温度を制御する手段(ペルチエ素子等)を具備する構成を採用しても良い。これらの構成を採用して、各手段を作動させると、気泡の溶解速度を一層速める(加速させる)ことが可能となる。
また、上述の実施の形態におけるプリンタ10は、プリンタ機能以外の機能(スキャナ機能、コピー機能等)を備える構成のような、複合的な機器の一部であっても良い。
10…プリンタ、30…キャリッジ機構、31…キャリッジ、33…印刷ヘッド、50…インク供給機構、51…インクカートリッジ、52…カートリッジホルダ、53…加圧ポンプ、54…可撓性チューブ、55…サブタンク、60…クリーニング機構、70…制御部、500…板状チューブ(液体流通装置に相当)、510…チューブプレート、510a…表面、510b…裏面、520…ホルダ取付部、523…第1インク流路、532…第2インク流路、535…第3インク流路、540…チョーク弁、541…チョーク弁室(液体流入室に相当)、542…流入口、543…排出孔、544…環状凸部、545…内部トラップ(気泡捕捉手段、捕捉突起および第2の突起に相当)、546…周壁とラップ(気泡捕捉手段、捕捉突起および第1の突起に相当)、547…分離突起(気泡分離手段に相当)、547c…先端(尖形部に相当)、550…チューブ接続部、560…フィルム