JP4830182B2 - リチウムポリマー二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゲル状ポリマー電解質を隔離部材として正極と負極の間に配したリチウムポリマー二次電池に関する。詳しくは、隔離部材の構成と配置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウムイオンを可逆的に収納・脱離しうるリチウム含有金属酸化物を正極材料とし、該正極材料から脱離するリチウムイオンを充電時に可逆的に収納しうる負極材料からなる非水電解質二次電池、いわゆるリチウム二次電池の薄型化と安全性向上の方策として、一般的なセパレータの代わりに非水電解液を吸収し保持固定しうるポリマー材料、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)に電解液を吸収保持させたゲル状ポリマー電解質を用いることが既に提案されている(例えば、米国特許第5,296,318号明細書または特表平8−507407号公報)。この構成になる電池は、発電要素を簡易な外装体、すなわちアルミニウム箔と樹脂フィルムとの積層ラミネートフィルムを用いて密封したものが代表的であり、現在その商品化への取り組みが積極的に行われている。
【0003】
例えば、上記米国特許に開示され、多くの会社で開発量産されている電池は、正極にLiCoO2またはLiMn24を使用し、負極には黒鉛を始めとした炭素材料を、セパレータを兼ねる電解質にはフッ化ビニリデン系ポリマーに非水電解液を吸収・ゲル化させたものからなっている。ゲル状ポリマー電解質はゲル化により形成されるポリマーの三次元網目構造内に電解液を保持させたものであり、イオン導電性を確保するとともに電解液の固定化により漏液がなくなる特徴を有している。
【0004】
従来、このようなリチウムポリマー二次電池を作製する方法としては、電解液と重合性化合物(モノマー)と重合開始剤とを含む電解質溶液(プレゲル電解質溶液)を正極及び/または負極に塗布または含浸させた後、加熱もしくは紫外線、電子線等の照射により少なくとも電極表面にゲル状ポリマー電解質膜を形成させる方法や、予め作製したゲル状ポリマー電解質膜もしくは多孔質体に塗布してなるゲル状ポリマー電解質膜を正極と負極との間に挟み込んで電池を構成する方法などが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のゲル状ポリマー電解質のみからなる電池系は、電解液がポリマー材料によって固定化されているため可燃性である有機溶媒の蒸気圧が低下し引火性が改善されて、充電された正負極材料と有機溶媒との反応性が抑制されるため発熱速度と量の点においてある程度の耐熱性の向上が認められる。しかし電池外部にある電子回路面での第1段目の安全デバイスである充電器や第2段目の安全デバイスである充電器内の安全回路が故障した場合の安全性には課題が残っている。例えば、ゲル状のポリマー電解質のみからなる電池系には電流遮断機能がなく、その上過充電により電池の温度が上昇すると、ゲルの硬度が低下するためイオンが易動化できて電流が流れやすくなり、安全性確保には一層難しさが増加する。他方、通常の電解液を用いた電池の場合には、遮断効果を持たせた単層あるいは多層のポリオレフィン製セパレータを配置して上記の課題を解決している。
【0006】
リチウムイオン系電池の課題は、過充電に至った場合の安全性確保のほかに、信頼性、特に長期保存時のガス発生による電池の膨れや最終的には電池ケースのベント(開口)の問題がある。特に充電された負極は金属リチウムと同程度に反応性が高いだけに、負極と接している電解液は還元分解され、多量のガス発生に至る。とくに電池が薄型化を指向していく場合に、一般的に採用されるアルミラミネート外装体は金属外装缶に比べて機械的強度に欠け膨張変形しやすいので、このガス発生は致命的なものとなっている。
【0007】
本発明は上記したような課題を解決するものであり、リチウムポリマー二次電池の安全性と信頼性を同時に確保することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のリチウムポリマー二次電池は、まず充電器および安全回路が故障して充電に規制がかからなくなった場合の安全性確保を目標として、その熱暴走反応を誘起する因子を検討解析した。この結果、充電された正極と電解液との反応が、110℃付近からの最初の大きな発熱をもたらす原因であることを解明した。この発熱に引き続き、充電された負極と電解液とが反応して制止の効かない熱暴走反応に至ることが判明した。このとき、最初の正極と電解液との反応による発熱を放散または何らかの形で吸収してやると、引き続く負極と電解液との反応を阻止でき、致命的な熱暴走を阻止できることも判明した。そこで正極での発熱を吸収抑制するために検討を重ねた結果、100℃付近から融解をはじめるポリエチレンの膜や微粒子を正極中またはその近傍に配置することが有効であることが判明した。電池製造を考慮すると、特にポリエチレンの微多孔膜が最も簡便で効果的である。
【0009】
2番目の課題である保存中のガス発生については、発生したガスの成分と組成分析を行うともに、充電した正、負極それぞれを電解液とともにアルミラミネート製の袋に個別に保存し、ガス発生の状況を観察しながら量や成分を測定分析した。この結果、ガス発生は主に充電された負極と電解液との反応によるものであることが判明した。負極表面でのガス発生を抑制するには、負極と電解液を遮断または隔離することが有効であるが、解決策の1つとして負極表面に皮膜を形成してやることがある。ただし、この皮膜は充放電に際して負極から出入りするリチウムイオンを透過しうることが必要である。つまりリチウムイオン伝導性のものでなくてはならない。現在、この皮膜形成には電解液中にビニレンカーボネートやエチレンサルファイトなどの添加が有効であると報告されている。しかし、負極表面に6フッ化シランリチウム(Li2SiF6)を形成すると、非常に有効であることが今回新たに判明した。この場合、電池内部に極微量の水分が共存することが重要因子である。分析結果から類推する反応機構の概略を下記に示す。
【0010】
LiPF6+H2O → LiF+2HF+POF3
4HF+SiO2 → SiF4+2H2
SiF4+2LiF → Li2SiF6
この膜の形成方法を検討した結果では、負極合剤中に二酸化ケイ素の微粉末を添するのが最も簡便であるが、その効果にバラツキがあった。むしろ負極の対向面に予め上記微粉末を配置し、ここで四フッ化シランガスを発生させて、拡散により充電した負極表面で反応させて膜を形成させたほうがバラツキも無く、効果も大きいことが判明した。この機構を具現化するには、負極の対向面に二酸化ケイ素の微粉末を添加したフィルムを設ける必要があるが、単なるフィルムでは効果が小さい。本発明者らは、電解液を吸収しゲル化する材料が好ましく、ゲル化機能を有するフッ化ビニリデン共重合体からなるフィルム中に二酸化ケイ素の微粉末を分散させる方法を見出した。その製造プロセスや目的とするところは異なるが、最終的に得られる膜自体は、米国特許第5,540,741号明細書または特表平10−511216号公報に類似している。
【0011】
本発明では新たな電池構成として、正極の近傍にポリエチレンの微多孔膜を配置し、かつ負極活物質の表面に6フッ化シランリチウム(Li2SiF6)を形成したものである。
【0012】
これにより充電器や安全回路が故障して充電に規制が掛からなくなっても電池の安全性を確保でき、加えて長期保存においてもガス発生を問題の無いレベルにまで抑制できることになり、結果として優れた性能を有するリチウムポリマー二次電池を提供することが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のラミネート材料からなる外装体で密封したリチウムポリマー二次電池の構成を示す。図1において、1は正極、2は負極、3は正極と対向するポリエチレン製微多孔膜、4は負極と対向するゲル状ポリマー電解質膜、5は正極リード、6は負極リード、7はラミネート材からなる外装体、8および9はそれぞれ上下の熱接着シール部、10はリード用絶縁保護フィルムである。微多孔膜3、ゲル状ポリマー電解質膜4、負極2および正極1は最終的には積層捲回された形で外装体7内に収容されている。
【0014】
この電池の発電要素の作製方法について説明する。正極1は、正極活物質LiCoO2にアセチレンブラック導電材とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散系結着剤を混合しペースト化した後、これをAl箔製集電体の両面にダイコーターで均一に塗布し、乾燥圧延の後、所定の大きさに切断して得た。この正極1には正極リード5を集電体の端部に溶接した。負極2は、黒鉛の負極活物質に導電材と水系結着剤を混合してペースト化した後、Cu箔製集電体の両面にダイコーターで均一に塗布し、乾燥圧延の後、所定の大きさに切断して得た。この負極2には負極リード6を集電体の端部に溶接した。セパレータ3は通常市販されているポリエチレン製微多孔膜である。ゲル状ポリマー電解質膜4は、フッ化ビニリデンと6フッ化プロピレンからなる共重合体と二酸化ケイ素微粒子をN−メチルピロリドン溶媒に添加し、攪拌して溶解分散させたペーストをフィルム状に展開し乾燥させたものである。セパレータ3の種類によってはこの面上にゲルポリマーを塗布展開でき、ゲル状ポリマー電解質膜とポリエチレン製微多孔膜とを積層しなくてもそのままで使用できる効果がある。電解液は炭酸エチレンと炭酸ジエチルの等体積混合溶媒に6フッ化リン酸リチウム塩を濃度1M/lに調整したものを用いた。上記の正極1と負極2の間に、微多孔膜3およびゲル状ポリマー電解質膜4を一緒に重ね合わせて配置し、図1に示すような楕円状に捲回した。
【0015】
上記の発電要素を収納する外装体7は、Al箔を中間の1層とし、その内側にポリプロピレンフィルムを、外側にポリエチレンテレフタレートフィルムをそれぞれ配置し一体化したAlラミネート材の袋を使用した。上記の捲回された発電要素を収納した後、正極リード5と負極リード6の先端部が外部に突出した状態で外装体7の上シール部8を封口した。リードの上シール部8に接する部分には絶縁保護フィルム10を貼りつけている。この絶縁保護フィルム10は、正極リード5、負極リード6部分での気密性を確保するために設けた部材である。
【0016】
電池としては、発電要素が収容された外装体7を上記のように既に封口した上シール部8を下にして、まだ開口している下シール部9から所定量の電解液を注入した後、熱溶着により下シール部9を封口して電池を完成させる。
【0017】
【実施例】
次に実施例により本発明を詳細に説明する。
【0018】
(実施例1)
1.正極の作製
正極1は、正極活物質LiCoO2100重量部にアセチレンブラック導電材4部と水系のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散系結着剤5部を混合し、ペースト化した後、これを集電体(Al箔)の両面に単位面積当たり所定の重量および厚みになるようダイコーターで均一に塗布し、乾燥圧延の後、所定の大きさに切断して得た。この正極1には、正極リード5を集電体端部に溶接した。
【0019】
2.負極の作製
負極2は、球状黒鉛粉末100重量部に繊維状黒鉛導電材5部とスチレンブタジエンゴム系(SBR)の水系結着剤5部を混合し、ペースト化した後、集電体(Cu箔)の両面に単位面積当たり所定の重量および厚みになるようダイコーターで均一に塗布し、乾燥圧延の後、所定の大きさに切断して得た。負極2には負極リード6を集電体端部に溶接した。
【0020】
3.セパレータ
セパレータ3には通常市販されている空孔率約40%、厚さ15μmのポリエチレン製微多孔膜を用いた。
【0021】
4.ゲル状ポリマー電解質膜
ゲル状ポリマー電解質膜4は、フッ化ビニリデン88モル%と6フッ化プロピレン12%からなる共重合体100重量部と一次粒子径20nmの二酸化ケイ素50部とをN−メチルピロリドン溶媒に添加し、攪拌して溶解分散させたペーストをフィルム状に展開し、10μmの厚みに乾燥させたものを用いた。正確に言えば、この乾燥膜に電解液を含浸させ、高温で所定時間保持させることにより初めてゲル状の電解質膜となるものである。
【0022】
5.電解液の調製
電解液は炭酸エチレンと炭酸ジエチルの等体積混合溶媒に6フッ化リン酸リチウム塩を濃度1M/lに調整したものを用いた。
【0023】
6.リチウムポリマー二次電池の作製と初期化
上記の方法で作製した正極1と負極2との間に、ポリエチレン製の微多孔膜3とゲル状ポリマー電解質膜4を配置し、全体を重ね合わせ捲回して楕円状の発電要素を作製した。捲回に際してはゲル状ポリマー電解質膜4を負極2に、ポリエチレン製の微多孔膜3を正極1にそれぞれ対向させた形にした。この発電要素をAlラミネート材からなる外装体7に挿入し、正極リード5、負極リード6の先端部が外部に突出した状態で外装体7の上シール部8を封口した。
【0024】
次に、封口した上シール部8を下にした状態で外装体7の内部に上記電解液を2.5g注入した。正、負極リードが外部に突出したシール部8と正反対位置にある外装体の下シール部9をゆとりを残して熱溶着してシールした。このあと室温にて電池を0.1CmA(電池を10時間で充電できる電流値)で2.5時間充電し、続いて1C(1時間で放電が完了する電流値)で3.0Vまで放電した。この後、上記のゆとりのある下シール部9の一部を開口して、初期充電で発生したエチレンガスを放出し、その後減圧にした状態で電池を下シール部9のすぐ内側を再度熱溶着して電池としての密封を完了した。引き続き90℃にて1時間加熱して電解質膜をゲル化させ、リチウムポリマー二次電池を作製した。この電池は容量が800mAhで、サイズは厚み5mm、幅34mm、長さ50mmである。この電池を電池Aとする。
【0025】
7.高温保存特性
作製した電池を室温にて定電流560mA(0.7C)で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧にて充電電流が50mAに低下するまで充電した。その後、90℃にて4日間保存し、その温度にて発生したガス量を測定した。
【0026】
8.熱安定性特性
充電器の故障が起こり安全回路の上限値にまで電池が充電される想定の下で検討を行った。作製した電池は室温にて定電流560mA(0.7C)で、充電器の電圧規制値を超えて安全回路の上限値である4.35Vまで充電した。充電した電池を恒温加熱槽に移し、1分間5℃の加熱昇温速度で槽全体を150℃まで昇温し、150℃で2時間放置して電池の耐熱性を試験した。試験には5セルの電池を供した。
【0027】
作製したリチウムポリマー二次電池の90℃での高温保存性と150℃での熱安定性の特性結果を(表1)に示す。
【0028】
【表1】
Figure 0004830182
【0029】
(実施例2)
ゲル状ポリマー電解質膜4を正極1に、ポリエチレン製の微多孔膜3を負極2にそれぞれ対向させた(実施例1とは逆の配置)以外は、実施例1と全く同じに電池を構成した。この電池を電池Bとする。高温保存特性および熱安定性試験とも実施例1と同じ条件にて実施した。
【0030】
(実施例3)
実施例1において、正極と負極の間には10μm〜25μmに厚みを増加させたゲル状ポリマー電解質膜のみを用いた以外は、実施例1と全く同じとして電池を構成した。この電池を電池Cとする。高温保存性および熱安定性試験とも実施例1と同じ条件にて実施した。
【0031】
(実施例4)
実施例1において、正極と負極の間には、添加材である二酸化ケイ素微粉末の代わりに一次粒子径50nmの酸化アルミニウム(Al23)を用いた以外は全く同じ仕様からなるゲルポリマー電解質膜のみを用いた以外は、実施例1と全く同じに電池を構成した。この電池を電池Dとする。高温保存性および熱安定性試験とも実施例1と同じ条件にて実施した。
【0032】
(実施例5)
実施例1において、正極と負極の間には25μmの厚みのポリエチレン製微多孔膜のみを使用した以外は、実施例1と全く同じに電池を構成した。この電池を電池Eとする。高温保存性および熱安定性試験とも実施例1と同じ条件にて実施した。
【0033】
これら実施例2〜5の特性結果も(表1)にまとめて示した。
【0034】
(表1)に示したように、100%充電した電池を90℃4日間高温保存すると、ガス発生に対して対策を行っていない電池は大量のガス発生に伴い外装体が大きく膨れあがり既に電池の形状ではなかった。一方、これまで述べてきたように本発明のような対策をとった電池では、ガス発生量は問題のないレベルまで低減改善されている。発生したガス分析でも対策を取った電池では二酸化炭素ガス(CO2)がほとんどであり、正極と電解液との反応に起因するものであるのに対し、対策を取ってない電池では上記二酸化炭素ガスのみならず、多量の一酸化炭素(CO)やメタンガス(CH4)など負極から発生するガスが存在した。これらのことから本発明になる方策の効果が大きく評価できる。
【0035】
また、150℃の熱安定性試験では当初の考え通り、正極に対向する面に吸熱効果を有するポリエチレン製微多孔膜を配置した電池では全く発火が見られなかった。
【0036】
一方、正極にゲル電解質膜が対向している電池では発火を生じ、明らかに課題を残している。
【0037】
なお、実施例では正極活物質にLiCoO2を用いたが、LiCoO2のほかLiNiO2やLiMn2O4などのリチウム含有遷移金属酸化物を使用することができる。また、負極活物質には球状の黒鉛粉末を用いたが、リチウムイオンを吸蔵・放出し得るカーボン材料やリチウム吸蔵合金なども使用することができる。
【0038】
さらに、二酸化ケイ素の微粉末を添加したフッ化ビニリデン共重合体膜とポリエチレン微多孔膜を積層状態で用いたが、セパレータの種類によってはこのセパレータ上に直接塗布展開でき、ゲル状ポリマー電解質膜とポリエチレン製微多孔膜とを積層しなくても、そのままで使用できる。また、ポリエチレン製微多孔膜は、その厚みにおいて従来からの25μmから、ゲル状ポリマー電解質膜が積層され保護しているので、現状最も薄い8μmまでのものが使用できる。
【0039】
ゲル状ポリマー電解質膜には、フッ化ビニリデン88モル%と6フッ化プロピレン12モル%からなる最も一般的な共重合体を用いたが、電解液に溶解性のない6フッ化プロピレンの量が15モル%以下であれば、ゲル化させるプロセスの煩雑さ(工数)および出来あがった電池の性能の両面において問題がなかった。
【0040】
ゲル状ポリマー電解質膜に添加した二酸化ケイ素には通常の無機二酸化ケイ素を用いたが、そのガス発生を抑制する機構を示したように、二酸化ケイ素が存在すればよく、表面の少なくとも一部が有機官能基で修飾された二酸化ケイ素粉末であっても効果は変わらなかった。また、この二酸化ケイ素粉末には乾燥重量で50%のものを用いたが、実験の範囲では20重量%以上含有していればガス発生の抑制に効果が見られた。
【0041】
さらに電解液には炭酸エチレンと炭酸ジエチルの等体積混合溶媒に6フッ化リン酸リチウム塩を濃度1M/lに調整したものを用いた。このほかに炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ビニレン(VC)などの環状カーボネート類と炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)などの鎖状カーボネート類との混合有機溶媒中にLiPF6やLiClO4、LiBF4などの電解質を溶解させたものを用いてもよい。
【0042】
【発明の効果】
以上のことから、正極に対向する面にポリエチレンの微多孔膜を配置することにより、充電器が故障して充電に規制が掛からなくなっても熱安定性の面では電池の安全性を確保できる。加えて負極の対向面に二酸化ケイ素の微粉末を添加したフッ化ビニリデン共重合体膜を配置することにより保存中に負極活物質の表面に6フッ化シランリチウム(Li2SiF6)が形成され、高温保存においても問題のないレベルにまでガス発生を抑制できた。この両点から本発明は優れた性能を有するリチウムポリマー二次電池を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリチウムポリマー二次電池の構成を示すラミネート材料からなる外装体を切り開いた概略図
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 ポリエチレン製微多孔膜
4 ゲル状ポリマー電解質膜
5 正極リード
6 負極リード
7 外装体
8 上シール部
9 下シール部
10 絶縁保護フィルム

Claims (4)

  1. 正極と負極との間にゲル状ポリマー電解質を配置した発電要素を外装体内に密封したリチウムポリマー二次電池であって、
    前記ゲル状ポリマー電解質は、非水電解液を吸収してゲル状となるとともに負極に対向しかつ内部に二酸化ケイ素微粉末を分散させたポリフッ化ビニリデン系の薄い膜または層からなり、その正極と対向する面には微多孔性のポリオレフィン薄膜を配置した2層構成から形成され、前記二酸化ケイ素粉末は、通常の無機二酸化ケイ素および表面の少なくとも一部が有機官能基で修飾された二酸化ケイ素粉末から選ばれた少なくとも1つからなるリチウムポリマー二次電池。
  2. 前記微多孔性のポリオレフィン薄膜は、厚さ8〜25μmのポリエチレン製膜からなる請求項1記載のリチウムポリマー二次電池。
  3. 前記ポリフッ化ビニリデン系の薄い層は、それを構成するポリマー材料の少なくとも85モル%がフッ化ビニリデン単位からなる請求項1記載のリチウムポリマー二次電池。
  4. 前記ポリフッ化ビニリデン系の薄い層は、内部に前記二酸化ケイ素微粉末を20〜50重量%含んでいる請求項1〜項のいずれかに記載のリチウムポリマー二次電池。
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