JP4830082B2 - カフェインを分解する微生物、ならびにその微生物を用いたカフェインの除去方法およびポリフェノール含有食品の製造方法 - Google Patents

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本発明は、カフェイン分解能を有し、カフェインの脱メチル化物を菌体外に生産しないシュードモナス(Pseudomonas)属微生物に関する。また、本発明は上記微生物を用いたカフェインの除去方法(分解方法)に関し、より詳しくは、ポリフェノール類を含有する植物の水性溶媒抽出液に微生物を接触処理させて、主要な混在物質であるカフェインを処理することを特徴とするカフェインの除去方法に関する。さらに、本発明は、上記微生物を用いたポリフェノール含有食品の製造方法に関する。また、カフェインを含有する排水や下水などの水の処理方法に関する。
我が国では食生活レベルの向上により、世界でも稀な高齢化社会となりつつあるが、その一方で生活習慣病患者、もしくは予備軍は増加の一途をたどっており、特に予備軍の増加が著しい。今後、高齢化の進展もあわせて、ますます医療負担が上昇すると考えられ、病気を治すこと、予防することが極めて重要になってくる。したがってより健康な社会を目指すことが、二十一世紀の大きな課題となってくる。
このような状況のもと、生活習慣病予防の重要性が年々クローズアップされるようになってきた。生活習慣病の一次予防という観点から、科学的裏付けのある食品や食品素材の利用が注目視されており、健康を意識した食品の関心が年々高まっている。厚生労働省は2000年の健康食品市場規模1.3兆円が、2010年には3.2兆円になると推計している。また特に含有される食品成分の具体的薬理効果・効能を謳った特定保健用食品の市場が増加の一途を辿っている。
そこで近年において、ヨーロッパでの「赤ワイン飲酒者は、摂取油脂量が多くても心筋梗塞になりにくい」との疫学調査報告に端を発して、食品中の植物ポリフェノール成分の効能が注目され始めた。
ポリフェノールとは、ほとんどの植物に含まれている色素や渋み・苦みの成分のことで、その種類は8000種を超えるといわれている。ポリフェノールには単純フェノール酸(C6−C1)から、ブラボノイド(C6−C3−C6)やタンニンまで、フェノールの重合度により様々なポリフェノールがある。
たとえば、コーヒー豆のポリフェノールとしては、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、カフェ−酸、フェルラ酸など、ベンゼン環(フェニル、C6)に炭素3個のプロパン(C3)が結合した基本骨格をもつフェニルプロパノイドと呼ばれる化合物群が含まれ、これらの成分の抗酸化作用等を利用して各種の飲食品、化粧品、保健・医薬品等に応用されている。具体的には、たとえば、色素の褪色防止剤(たとえば、特許文献1〜3参照)、天然香料の劣化防止剤(たとえば、特許文献4参照)、飲料の香味劣化防止剤(たとえば、特許文献5参照)、美白化粧料(たとえば、特許文献6〜7参照)、高血圧の予防・改善・治療剤(たとえば、特許文献8参照)などとして応用されている。
また、たとえば、茶やカカオに含まれるポリフェノールとしては、フラボノイドに属するカテキン類があげられる。カテキン類には数種類あり、主要なものとして(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレートがあげられる。カテキンにも強い抗酸化作用があり、消臭効果や血圧、コレステロールの低下、抗アレルギー作用など、さまざまな生理効果があるとされ、抗菌作用(歯周病原因菌付着阻害用組成物、たとえば、特許文献9参照)、血糖上昇抑制作用(シュクラーゼ活性阻害剤、たとえば、特許文献10参照)、美白作用(チロシナーゼ阻害作用剤、たとえば、特許文献11参照)、皮膚老化抑制作用(ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、たとえば、特許文献12参照)、抗酸化効果(活性酸素発生抑制剤および活性酸素起因疾患予防剤、たとえば、特許文献13参照)、抗肥満効果(体内脂肪燃焼促進剤、たとえば、特許文献14参照)などの効果を有しており、食品をはじめ医薬農薬等の各種分野で利用が期待されている。
上記ポリフェノール類は種々の方法で製造されているが、工業的には目的とするポリフェノールを含有する植物から熱水や有機溶媒で抽出され、粗抽出物として提供されることが多く、この場合ポリフェノールを含有する植物の中に多量のカフェインが含まれていることが多い。
上記のポリフェノール類とカフェインが共に含まれている植物体としては、代表的なものとして茶(ツバキ科)、コーヒー(アカネ科)、マテ茶(モチノキ科)、カカオ(アオギリ科)、ガラナ(ムクロジ科)などがあげられる。
カフェインは中枢神経興奮作用、強心作用、利尿作用等の生理活性を有しており、頭痛、感冒等の医薬品に汎用されている。ところが、摂取量や個人差によってはカフェインのもつ強い生理活性作用により、排尿、下痢、不眠症、不安感、胸焼け、心悸亢進、悪心、いらいら等が起こり、カフェイン過敏症の人々にとっては飲食物中のカフェイン含有量が重大な問題となる。このような理由から、ポリフェノールを含有する飲食品などにおいて、カフェインが含有していないものが望まれている。
従来より行われている植物性物質からのカフェイン除去の代表的な方法には、塩素系溶媒により抽出除去する方法(たとえば、特許文献15〜16参照)、超臨界二酸化炭素により抽出除去する方法(たとえば、特許文献17〜18参照)、活性炭等により吸着除去する方法(たとえば、特許文献19参照)、酸水溶液により抽出除去する方法(たとえば、特許文献20参照)などがある。
しかしながら、これらの方法のうち塩素系溶媒を用いる方法は、含塩素溶媒を使用する点で安全上および残留性の問題がある上、環境上も好ましくなく、超臨界二酸化炭素により抽出除去する方法は、大規模な設備を要すため、イニシアルコストが高く、かつ生産性が低いという問題がある。活性炭等により吸着除去する方法は、除去すべきカフェインとともにポリフェノール類も吸着され、ポリフェノール類の損失が大きいという欠点がある。また、酸水溶液により抽出除去する方法は、酢酸エチル等の有機溶媒を必要とする上、ポリフェノール類の回収率が低いという問題がある。
また一方で、より根本的に汚染物質を発生させない化学プロセスが求められており、化学物質の製造の際に、原料から副生成物に至るまで汚染原因となる危険化学物質を使用しない、発生させないことで環境汚染を未然に防止しようとする「グリーンケミストリー」という考えが急速に広まってきており、化学物質を得るプロセスにおいて、微生物の働きを利用することも積極的に行われようとしている。
事実、カフェインを分解する微生物としては、シュードモナス属細菌、アスペルギルス属およびペニシリウム属等の真菌類が知られており、真菌類の中にはカフェインを唯一の窒素源として生育可能な真菌が存在することも報告されている(たとえば、非特許文献1参照)。
しかしながら、現在用いられている方法では、カフェインの分解能力は必ずしも十分でないことから、被処理物のカフェイン含量を低く押さえる必要があり、カフェイン耐性能の低い微生物は、その働きが阻害されるという問題もある。
またシュードモナス属細菌においては、Pseudomonas putidaのカフェイン資化能力を利用して脱メチル化物のテオブロミンへ変換させる方法(たとえば、特許文献21参照)がある。
しかし、この方法では、微生物変換作用であるため、培養中に微生物細胞外へ多量のテオブロミンが放出される。テオブロミンはカフェインより興奮作用等々の生理作用は弱いが、構造が変化するのみでいわゆるプリンアルカロイドの除去はできない。
また、その他微生物を用いた実用的なカフェインの分解方法としては、コーヒー抽出残滓、茶抽出残滓等のカフェイン含有物を早期に土壌代替物、土壌改良資材、有機質肥料等の有機質資材へ変換させる方法(たとえば、特許文献22参照)がある。しかしながら、上記方法においてはカフェインの分解能力が低く、含有させるカフェインの濃度は、0.2重量%を超えることは不可能であり、工業的規模で行うには問題点があった。
一方、カフェインは、近年の環境汚染により多くの河川、湖沼や海洋で検出されるようになってきている。ある港内の海水中では140〜1600ng/L、また、ある河川水では370ng/Lのカフェインが含まれていた事例があり、水質汚染の指標になり得ると報告されている(たとえば、非特許文献2参照)。
また、カフェインが含まれる水域で生育した水生生物、たとえばニジマスの場合、カフェイン曝露がニジマス肝細胞における酸化的代謝に影響し、酸化損傷を招く可能性があることを報告している。すなわちカフェインは水生生物の毒性応答を引き起こす可能性を持ち、自然環境におけるカフェインの影響が危惧されている(たとえば、非特許文献3参照)。
上述におけるカフェインの主要な発生源としては、河川に流れ込む下水処理施設と考えられている(たとえば、非特許文献4、5参照)。家庭排水が下水処理される際、非効率な浄化槽システムで浄化される地域ではカフェインが処理し切れないケースが生じ、処理できなかったカフェインが河川に流入し、分解されないまま海洋に達する。
このような問題に対し、上述のような含塩素溶媒を使用する場合の安全上および残留性の問題を生じることなく、根本的に汚染物質を発生させない「グリーンケミストリー」的な化学プロセスとして廃水や下水等の水処理を行うことが求められつつある。
特公昭59−50265号公報 特公平1−22872号公報 特許第2904968号公報 特許第3039706号公報 特開平8−23939号公報 特開平8−92057号公報 特開平8−26967号公報 特開2002−87977号公報 特開平5−944号公報 特開平5−17364号公報 特開平6−65085号公報 特開平6−9391号公報 特開平10−175858号公報 特開2002−326932号公報 特公平2−22755号公報 特公平2−12474号公報 特開昭48−4692号公報 特開平1−289448号公報 特公平1−45345号公報 特願平5−344744号公報 特開平5−95781号公報 特開2001−46057号公報 (Hakil, M., et al, Degradation and product analysis of caffeine and ralated dimethylxanthines by filamentous fungi. Enzyme and Microbial Technology、22(5)335-359、1998)。 Siegner, R., et al, Caffeine in Boston Harbor seawater. Mar Pollut Bull, 44 (5) 383-387 (2002)。 Gagne, F., et al, Occurrence of pharmaceutical products in a municipal effluent and toxicity to rainbow trout (Oncorhynchus mykiss) hepatocytes. Ecotoxicol Environ Saf, 64 (3) 329-336 (2006)。 Ferreira, P., et al, Anthropic pollution in aquatic environment: Development of a caffeine indicator. Int J Environ Health Res, 15 (4) 303-311 (2005)。 Buerge, J., et al, Caffeine, an Anthropogenic Marker for Wastewater Contamination of Surface Waters. Environ Sci Technol, 37 (4) 691-700 (2003)。
そこで、本発明の目的は、従来困難であった高濃度のカフェイン存在下でもカフェイン分解能を有し、カフェインの脱メチル化物を菌体外に生産しないシュードモナス(Pseudomonas)属微生物を提供することである。
また、本発明の目的は、ポリフェノール類を含有する植物の抽出液から、混在している主要物質であるカフェインを上記微生物の働きによって除去し、簡便な工程でカフェインを分解し、飲食品、保健・医薬品、化粧品等に広く使用できるカフェインの除去方法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、上記微生物を用いてカフェインを除去したポリフェノール含有食品の簡便な製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、上記微生物を用いてカフェインを含有する排水や下水などの水の処理方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の微生物は、
カフェイン分解能を有し、カフェインの脱メチル化物を菌体外に生産しないシュードモナス(Pseudomonas)属微生物であることを特徴とする。
また、本発明のカフェインの除去方法は、
上記微生物を、ポリフェノール類とカフェインを含有する植物の水性溶媒抽出液に接触処理する工程を含むことを特徴とする。
本発明は、自然界の土壌より、カフェインを唯一の炭素源としても資化できうる微生物を発見し、上記微生物が非常に高濃度のカフェインをも資化できること、および本微生物がカフェインの代謝物、たとえば脱メチル化物などを培地中に出さず、カフェインを直接生体内に取り込んで分解代謝することを見出したものである。
また、本発明のカフェインの除去方法は、実施例の結果に示すように、上記微生物を、ポリフェノール類とカフェインを含有する植物の水性溶媒抽出液に接触処理させることにより、水性溶媒抽出液中のカフェインを選択的に非常に効率よく除去でき、しかもポリフェノールも高濃度で残留させることを見出したものである。
より詳細には、上記微生物は従来困難であった高濃度のカフェイン存在下でも選択的にカフェインが分解可能であるが、たとえば、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、1.5重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、3.0重量%以上、4.0重量%以上、5.0重量%以上のカフェイン存在下でもカフェイン分解能を発揮しうるものである。
なお、本発明におけるカフェイン分解能とは、長くとも接触処理後72時間程度で、微生物を接触処理した水性溶媒抽出液中のカフェインの90重量%(好ましくは95重量%、より好ましくは99重量%)を分解することができる性質をいう。
また、上記微生物を用いることにより、上記脱メチル化物であるテオブロミンまたはテオフィリンを細胞外に蓄積することなくカフェインを分解できるものである。
さらに、本発明においては、本微生物を培養し、カフェインを除去する工程にあたって、培地にグルコースを添加することにより、上記微生物はカフェインを分解しつつポリフェノールを処理前の含有量のまま残存させる性質があることを見出した。
また、本発明においては、上記植物が、ツバキ科、アカネ科、モチノキ科、アオギリ科、ムクロジ科植物であることが好ましい。
また、本発明のポリフェノール含有食品の製造方法は、上述の微生物を、ポリフェノール類とカフェインを含有する植物の水性溶媒抽出液に接触処理する工程を含むことを特徴とするものである。上記製造方法をもちいることにより、ポリフェノール類とカフェインを含有する植物の水性溶媒抽出液からカフェインを除去し、カフェインを除去したポリフェノール含有食品を簡便に得ることができる。
上述のカフェインの除去方法またはポリフェノール含有食品の製造方法により得られた、カフェインが選択的に除去されたポリフェノール類は、もはやカフェインをほとんど含有していないために、上述したカフェインのもつデメリットを懸念することなく、ポリフェノール類本来の作用、たとえばコレステロール上昇抑制作用、生体内抗酸化作用などの生理活性機能を有する健康増進食品、健康維持食品、健康回復食品などとして有利に利用できる。
また、上記微生物ならびにカフェインの分解方法(除去方法)は、カフェインを含有する廃水や下水等の水処理に適宜用いることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の微生物は、
カフェイン分解能を有し、カフェインの脱メチル化物を菌体外に生産しないシュードモナス(Pseudomonas)属微生物であることを特徴とする。
本発明に用いるカフェインとポリフェノール類が混在する植物の原料としては、ツバキ科植物、アカネ科植物、モチノキ科植物、アオギリ科植物、ムクロジ科植物などの他、上記化合物類を含有している植物自身もしくはその粉砕物の抽出物、その精製物または部分精製物などをあげることができる。これら植物の部位は果実、種子(胚乳部)、葉、樹木、樹皮などいずれも適宜用いることができる。
上記ポリフェノールとは、ほとんどの植物に含まれている色素や渋み・苦みの成分のことで、その種類は8000種を超えるといわれている。ポリフェノールには単純フェノール酸(C6−C1)から、ブラボノイド(C6−C3−C6)やタンニンまで、フェノールの重合度により様々なポリフェノールがあげられる。
たとえば、コーヒー豆のポリフェノールとしては、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、カフェ−酸、フェルラ酸など、ベンゼン環(フェニル、C6)に炭素3個のプロパン(C3)が結合した基本骨格をもつフェニルプロパノイドと呼ばれる化合物群が含まれる。また、たとえば、茶やカカオに含まれるポリフェノールとしては、フラボノイドに属するカテキン類があげられる。カテキン類には数種類あり、主要なものとして(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレートがあげられる。
上記クロロゲン酸としては、たとえば、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸、4−フェルロイルキナ酸、5−フェルロイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、4,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4,5−トリカフェオイルキナ酸などがあげられる。
上記植物体からのカフェインを含有するポリフェノール類の抽出手段としては、上記植物体を水または有機溶媒などで抽出することで、ポリフェノール類の濃度を高める方法が好適である。なお、本発明における水性溶媒抽出液とは、水、水に可溶しやすい有機溶媒、およびこれらの混合溶媒などにより抽出された液をいう。
使用する有機溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、またはそれらの含水物などをあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
これらの有機溶媒を用いて抽出物を得るには、公知の方法に従えばよく、たとえば前記した植物の葉、樹木、樹皮を適当に破砕した後、それらの粉砕物、また上記植物の樹液を前記した有機溶媒で公知の方法を用いて処理する。具体的には、原料の1〜100倍(質量比)、好ましくは3〜20倍(質量比)の有機溶媒で、温度0℃以上、好ましくは10℃からその有機溶媒の沸点以下の温度条件下で、1分〜8週間、好ましくは10分〜1週間抽出処理をする。抽出操作はバッチ式またはカラムによる連続式等の従来公知の抽出方法をそのまま採用することができる。
本発明に必要なカフェイン、ポリフェノール類が共に含有される植物の抽出液は、上述した方法によって得られる抽出液そのものでもよいし、また、たとえば、減圧濃縮などの適宜な濃縮手段を採用して濃縮した濃縮物とすることもでき、さらには、凍結乾燥、スプレードライなどの方法であらかじめ粉末状にしておいたものを上記水性溶媒に溶かしたものも使用することができる。
本発明に使用する微生物の菌株としては、具体例としては、土壌より分離したシュードモナス(Pseudomonas sp. KUCC−0001、受領番号NITE AP−259)株であり、カフェインに耐性を持ち、カフェインを微生物菌体内で代謝する能力を有する微生物である。本発明にはこれらの親株、もしくは変異株が適宜使用できる。
また、本発明のカフェインの除去方法は、
上記微生物を、ポリフェノール類とカフェインを含有する植物の水性溶媒抽出液に接触処理する工程(接触処理工程)を含むことを特徴とする。
本発明で見出された微生物を用いてカフェインを除去方法(分解方法)としては、従来行われている公知の方法を適宜組み合わせて応用することができる。
上記微生物を、ポリフェノール類とカフェインを含有する植物の水性溶媒抽出液に接触処理する工程(接触処理工程)としては、より具体的には、たとえば、ポリフェノール類を含有する植物体の水性溶媒抽出液に微生物を加え、撹拌または曝気等を行ないカフェインと微生物と接触させる方法、適当な担体に上記微生物を固定化させて、これをポリフェノールを含有する植物体の水性溶媒抽出液に接触させ処理する方法、あるいは、活性炭を濾材とし表面に上記微生物を担持させることにより高い菌濃度を維持しながらカフェインを吸着、分解する方法などを適宜採用することができる。
ここで使用される上記微生物を保持させる物質としては、上記微生物のカフェイン分解活性を阻害しなければ特に制限は無く種々の公知のものを適宜使用することが出来る。
上記物質としては、たとえば、固定化材として、セルロース、キトサン、セライト、シリカゲル、ポリウレタン、綿などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、セラミック、木炭、貝殻、ガラス、シリコン、ゼオライト、層状化合物などの多孔性材料、包括固定化材として、アルギン酸、カラギーナン、寒天、アガロース、コラーゲン、また生分解性プラスチックとして、ポリ乳酸、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)関連の共重合物、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート・アジペート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、デンプン、デンプン脂肪酸エステルなど、さらに木炭、ゼオライト、珪藻土焼成粒、バーミキュライト、ベントナイト、パーライト、桂鉱石、石灰石、等があげられ、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。
上記微生物は直接添加することもできるし、あらかじめ前培養した後添加することもでき、さらに、微生物前培養物からメンブランフィルターなどによってろ過分離した菌体を添加することもできる。この前培養を例示すれば、前記したPseudomonas sp. KUCC−0001を、たとえば、pH5〜8.5の無機培地、Nutrient broth等の複合培地に接種し、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃にて、12時間〜72時間好気的条件下に行う方法をあげることができる。
本発明法には上記の培養法によって得られた培養物そのもの、もしくは菌体、凍結乾燥菌体、菌体の固定化処理物のいずれも使用可能である。上記培養物などとカフェインを水性媒体中で接触作用せしめることによりカフェインが微生物により消費、代謝される。反応液中でのカフェインの濃度は、上記微生物が生育し得る温度における飽和濃度まで調製することが可能であり、さらに、反応させる温度でのカフェインの溶解度を越えて、懸濁状態で存在していてもよい。たとえば、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、1.5重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、3.0重量%以上、4.0重量%以上、5.0重量%以上のカフェイン存在下でもカフェイン分解能を発揮しうるものである。培養物などとカフェインの接触は回分方式でもよく、またカラムを使用した連続方式も可能である。
上記微生物による接触処理条件は、あらかじめ培養しておいた前培養液を用いることが好ましく、その使用量には特別の制限はないが、上記水性溶媒抽出液100重量部あたり、通常、0.1重量部〜10重量部程度を用いることが例示でき、0.5重量部〜8重量部程度であることが好ましく、1重量部〜5重量部程度であることがより好ましい例としてあげられる。また、接触処理条件についても特に制限はなく、一般に、20℃〜35℃の温度範囲で、12時間〜72時間、静置または攪拌する方法があげられる。
また、微生物を接触処理する際に、微生物の栄養源として、たとえば、窒素源としては、硝酸塩、アンモニウム塩等の化合物やペプトン、酵母エキス、モルトエキス、アミノ酸などの天然物があげられる。窒素源として1種または2種以上を単独でまたは組み合わせて用いることができる。無機塩としては、たとえば、リン酸塩、マグネシウム塩、カリウム塩等があげられる。無機塩として1種または2種以上を単独でまたは組み合わせて用いることができる。接触処理後、分離濾過した後、適宜な殺菌条件を採用して殺菌し、菌体残骸を遠心分離、ろ過により除去することにより、カフェインが除去された植物の溶媒抽出物を得ることができる。
さらに、上記カフェインの分解方法(除去方法)に関して、カフェインの分解に伴ってポリフェノールも最終的に25〜50重量%程度分解してしまう場合もあったが、あらかじめ培地にグルコースを添加しておくことにより、上記微生物はカフェインとグルコースを代謝しつつポリフェノールをより高い含有量で残存させる性質があることを見出した。
また、培地へ添加するグルコースの濃度を上げるに伴い、上記微生物はポリフェノールをより残存させるが、グルコースを添加しすぎると逆に上記微生物はカフェインを代謝しなくなる。したがって、カフェインを完全に代謝できる濃度でグルコースを添加することになる。グルコース添加条件は、培地組成、培養条件等々によって条件は異なってくるが、培地に対して0.01〜0.5%(w/v)が好ましく、0.05〜0.4%(w/v)がより好ましく、0.1〜0.3%(w/v)がさらに好ましい。
また、上記微生物ならびにカフェインの分解方法(除去方法)は、カフェインを含有する廃水や下水等の水処理に適宜用いることができる。かかる微生物ならびに分解方法を用いることにより、含塩素溶媒を使用する場合の安全上および残留性の問題を生じることなく、根本的に汚染物質を発生させない「グリーンケミストリー」的な化学プロセスとして廃水や下水等の水処理を行うことが可能となる。
また、本発明のポリフェノール含有食品の製造方法は、上述の微生物を、ポリフェノール類とカフェインを含有する植物の水性溶媒抽出液に接触処理する工程を含むことを特徴とするものである。上記製造方法をもちいることにより、ポリフェノール類とカフェインを含有する植物の水性溶媒抽出液からカフェインを除去し、カフェインを除去したポリフェノール含有食品を簡便に得ることができる。
上述のカフェインの除去方法またはポリフェノール含有食品の製造方法により得られた、カフェインが選択的に除去されたポリフェノール類は、もはやカフェインをほとんど含有していないために、上述したカフェインのもつデメリットを懸念することなく、ポリフェノール類本来の作用、たとえばコレステロール上昇抑制作用、生体内抗酸化作用などの生理活性機能を有する健康増進食品、健康維持食品、健康回復食品などとして有利に利用できる。
なかでも、本発明は、コーヒー、緑茶、ウーロン茶、紅茶、ココア、野菜ジュース、アルコール飲料、炭酸水類、フルーツ飲料類などの飲料、再構成を要する形態のものを含む、食品抽出物、植物抽出物、肉抽出物、薬味類、甘味料類、栄養補給食品類、ゼラチン類、薬剤および非薬剤ガム類、菓子類、サプリメント類、エマルジョン類、シロップ類、缶詰、瓶詰、ペースト、調味料、健康食品などのポリフェノール含有食品の製造に好適なものである。
[カフェイン分解菌のスクリーニング]
本発明においては、上記微生物(カフェイン分解菌)のスクリーニングを次のような手順によって行った。
1)カフェイン分解微生物の分離源として土壌、河川水、その他を採取した。
2)クリーンベンチ内で分離源が液体の場合は1mLをそのまま試験管(φ18×180mm)に入った培地(I)(5mL)に懸濁し、分離源が土壌の場合は0.75%生理食塩水に懸濁後に200μLを取って表1に示す培地(I)に接種しシリコ栓をして30℃、120rpm/minで3日間振とう培養した。なお、培地組成中のMgSO・7HO、CaCl・2HO、表2に示すMineral mix、表3に示すVitamin mixはオートクレーブ滅菌後に無菌的に加えて調製を行った。また、カフェイン分解条件検討時に用いた培地条件(表4、表5)についても併せて示す。
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3)白濁するまで振とう培養し、培養液が白濁したサンプルを順次、表1に示す培地(I)に1mLずつ無菌的に植え換えた。
4)3)の操作を3回繰り返し行い、最終的に白濁したサンプルを表1に示す培地(I)の平板に無菌的に100μL接種し、スプレッダーで広げて30℃恒温室で2〜3日静置培養した。
5)生育したコロニーを肉眼で見ながら色で分け、これらを滅菌済みの爪楊枝で1つ取り、再び試験管(φ18×180mm)に入った培地(I)(5mL)に懸濁し、シリコ栓をして30℃、120rpm/minで3日間振とう培養した。
6)5)の作業を繰り返し行い、表1に示す培地(I)の平板に無菌的に100μL接種し、スプレッダーで広げて30℃恒温室で2〜3日静置培養し、最終的に単一のコロニーを得た。
本菌株の形態的性質と生理学的性質を基にした同定結果を表6に示す。上記微生物は形態的、生理学的特徴からPseudomonas属の細菌であることが分かった。また、グルコースから酸、ガスともに生成しないこと、アラビノースを資化しないこと、硝酸塩を還元しないことから、既知のカフェイン代謝微生物であるPseudomonas putidaとは別種であることが分かった。
Figure 0004830082
上記形態学、生理学的形質に加えて、本発明微生物のゲノムDNAを抽出し、16SrRNAの部分塩基配列(500塩基)を解析した(表7)。
Figure 0004830082
16SrRNAの部分塩基配列によるMicroSeqデータベース検索の結果、検索された上位20位までがシュードモナス(Pseudomonas)に帰属される菌であることがわかった。またデータ−ベースによる系統樹(図1)から、本発明微生物が、Pseudomonas flavescensに近縁な菌株であることを支持したが、データベースに完全に一致する菌種は見当たらなかった。
以上の点から、上記微生物はPseudomonas属の微生物ではあるものの、既記載のPseudomonas属のいずれかの種に分類することが適当ではないと考えられる。これらのことから、本発明者は、本微生物を新規微生物と認定し、Pseudomonas sp. KUCC−0001 と命名した。上記微生物は独立行政法人・製品評価技術基盤機構・特許微生物寄託センターに2006年8月30日に寄託されており、その菌の受領番号はNITE AP−259である。
[本微生物の最適カフェイン分解条件の検討]
次に、上記微生物を、カフェインを炭素源としたときの、カフェインの分解条件を検討した。
A)Pseudomonas sp.KUCC−0001のカフェイン分解能力の検討
1)試験管(φ18×180mm)に入った表1に示す培地(I)(5ml)に冷蔵保存していたコロニーを寒天培地から滅菌済みの爪楊枝で1つ取り、無菌的に接種し、30℃、200rpm/minで24時間振とう培養を行い、これを前培養液とした。
2)500ml容バッフルマイヤーフラスコに対し表4に示す培地(II)100mlを調製した。滅菌済みのこの培地に前培養液の菌体1mL(OD660:0.8)を無菌的に接種した。カフェイン濃度は0.1%(w/v)〜1.0%(w/v)とした。接種直後の培地(II)を0時間とし、以下経時的にサンプリングし、分光光度計(V−550日本分光株会社)660nmの吸光度を測定すると共に、0.22μmのフィルター(GL Sciences GLクロマトディスク、水系、末滅菌、0.2μm、4A)で濾過した後、カフェインの分析を行った。
カフェインの測定方法は、「日本栄養食品協会 加工食品の栄養成分分析方法」(財団法人日本栄養食品協会、1986年発行)第105〜107頁に記載の方法に準拠して、サンプルを適宜水に溶解しHPLC分析に供した。
HPLC操作条件は表8のとおりである。標準サンプルはカフェイン、テオブロミン、テオフィリン(ナカライテスク)を用い、それぞれのリテンションタイムはカフェイン(12.1min)、テオブロミン(4.9min)、テオフィリン(6.6min)であった。
Figure 0004830082
図2に実験結果を示す。カフェイン濃度3.0%(30000ppm)までの範囲では、本菌株は良好に生育し、そのいずれの範囲内でも、生育定常期においてカフェインを完全に代謝していることがわかった。また、カフェインの水への溶解度は常温では21.7g/L(2.17%)であり、これ以上培地のカフェイン濃度を上昇させるとカフェインが溶解せず懸濁液となるが、本菌株はカフェインを3%添加した培地でも良好にカフェインを資化、分解し生育することが確認された。
また図3に示すように、上記微生物はいずれの試験区においても、培養30時間後にはカフェイン(R.T.=12.1min)を99.8%資化していたが、培養期間中を通して、カフェインの代謝物、たとえば脱メチル化物であるテオブロミン(R.T.=4.9min)、テオフィリン(R.T.=6.6min)を培地中に放出することはなかった。
B)Pseudomonas sp.KUCC−0001のカフェイン分解に及ぼすpHの影響
1)試験管(φ18×180mm)に入った表1に示す培地(I)(5ml)に冷蔵保存していたコロニーを寒天培地から滅菌済みの爪楊枝で1つ取り、無菌的に接種し、30℃、200rpm/minで24時間振とう培養を行い、これを前培養液とした。
2)500ml容バッフルマイヤーフラスコに対し、5NのNaOHでpH4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5および11.0に調整した表4に示す培地(III)100mLを調製した。滅菌済のこの培地に前培養液の菌体1mL(OD660:0.8)を無菌的に接種した。接種直後の培地(III)を0時間とし、以下30℃で培養しながら経時的にサンプリングし、分光光度計(V−550日本分光株会社)660nmの吸光度を測定した。
図4に実験結果を示す。本微生物はpH5.0からpH10.0まで生育が可能であるが、より好ましいpH条件としては、pH6.0からpH9.5の範囲であることがわかった。
C)Pseudomonas sp.KUCC−0001のカフェイン分解に及ぼす温度の影響
1)試験管(φ18×180mm)に入った表1に示す培地(I)(5ml)に冷蔵保存していたコロニーを寒天培地から滅菌済みの爪楊枝で1つ取り、無菌的に接種し、30℃、200rpm/minで24時間振とう培養を行い、これを前培養液とした。
2)500ml容バッフルマイヤーフラスコに対し、5NのNaOHで7.5に調整した表5に示す培地(III)100mLを調製した。滅菌済のこの培地に前培養液の菌体1mL(OD660:0.8)を無菌的に接種した。培養温度は10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、および45℃とし、接種直後の培地(III)を0時間とし、以下経時的にサンプリングし、分光光度計(V−550日本分光株会社)660nmの吸光度を測定した。
図5に実験結果を示す。上記微生物は20℃から35℃までの範囲で良好に生育が可能で、良好にカフェインを分解することがわかった。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾、変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
〔参考例〕
(生豆からカフェイン、クロロゲン酸含有抽出物の調製)
コーヒー生豆(Indonesia WIB)8040gを粉砕せずそのまま、85%(w/v)エタノール水溶液10Lに72時間浸漬した。抽出液を回収し再び80%(w/v)エタノール水溶液10Lに浸漬し24時間後、抽出液を回収した。抽出液は両方を合わせて1300mlまで減圧濃縮を行い、その後凍結乾燥を行った。凍結乾燥により341.6gの固形分が得られた。
この固形分に対して、カフェイン、クロロゲン酸類、全糖量の分析を行った。カフェインは、「日本栄養食品協会 加工食品の栄養成分分析方法」(財団法人日本栄養食品協会、1986年発行)第105〜107頁に記載の方法に準拠して、生豆のエタノール抽出物を適宜水に溶解しHPLC分析に供した。
HPLC操作条件は表8のとおりである。
クロロゲン酸類の分析方法は表9に示すようなKyらの方法(Ky, C. L.; Noirot, M.; Hamon, S. Comparison of five purification methods for chlorogenic acids in green coffee beans (Coffea sp.).J. Agric. Food Chem., 45、786-790(1997))を参考にして行った。
Figure 0004830082
全糖量の測定方法は、フェノール−硫酸法によって行った。
上記方法に基づいて作成したコーヒー生豆抽出物(乾燥物)に含まれるカフェイン、クロロゲン酸、ショ糖含有量を表10に示す。
Figure 0004830082
〔実施例1〕
試験管(φ18×180mm)に入った表1に示す培地(I)(5ml)に冷蔵保存していたコロニーを寒天培地から滅菌済みの爪楊枝で1つ取り、無菌的に接種し、30℃、200rpm/minで24時間振とう培養を行い、これを前培養液とした。
表4で示される培地(II)のカフェインの変わりに、参考例1で得られたコーヒー生豆抽出物(乾燥物)を0.7%(w/v)になるよう置き換え調製し、試験管(φ18×180mm)に5mlずつ分注した。これを121℃、15minオートクレーブで滅菌後、植菌直前に無菌的にMgSO・7HO、CaCl・2HO、Metal mix、Vitamin mixを添加し調製した。この培地に前培養液100μL(OD660:0.8)を無菌的に接種し30℃で培養した。接種直後の培地(II)を0時間とし、以下経時的にサンプリングし、分光光度計(V−550日本分光株会社)660nmの吸光度を測定するとともに、0.22μmのフィルター(GL Sciences GLクロマトディスク、水系、末滅菌、0.2μm、4A)で濾過した後、カフェイン、クロロゲン酸類の分析を行った。
図6に実験結果を示す。菌の増殖とともにカフェイン量が減少し、培養20時間では、培地中のカフェイン含量は0になった。またクロロゲン酸も培養と共に減少する傾向にあるが、カフェインが無くなった時点ではまだ76%残存していた。またカフェインの脱メチル化物(テオブロミン、テオフィリン)も存在しなかった。
〔実施例2〕
試験管(φ18×180mm)に入った表1に示す培地(I)(5ml)に冷蔵保存していたコロニーを寒天培地から滅菌済みの爪楊枝で1つ取り、無菌的に接種し、30℃、200rpm/minで24時間振とう培養を行い、これを前培養液とした。
表4で示される培地(II)のカフェインの変わりに、参考例1で得られたコーヒー生豆抽出物(乾燥物)を0.3%(w/v)に置き換え、さらにグルコースを0.1、0.2、0.5、1.0%(w/v)になるように添加調製し試験管(φ18×180mm)に5mlずつ分注した。これを121℃、15minオートクレーブで滅菌後、植菌直前に無菌的にMgSO・7HO、CaCl・2HO、Metal mix、Vitamin mixを添加し調製した。この培地に前培養液100μL(OD660:0.6)を無菌的に接種し30℃で培養した。接種直後の培地(II)を0時間とし、以下経時的にサンプリングし、分光光度計(V−550日本分光株会社)660nmの吸光度を測定するとともに、0.22μmのフィルター(GL Sciences GLクロマトディスク水系、末滅菌、0.2μm、4A)で濾過した後、カフェイン、クロロゲン酸類の分析を行った。
実験の結果、いずれの試験区も菌の増殖において、定常状態になるのに15時間を要した。培養15時間目の培養液中のカフェイン、クロロゲン酸含有量を図7に示す。培地中にグルコースを添加したほうが培地中のクロロゲン酸残存量は増えたが、グルコース0.5、1.0%添加区では、Pseudomonas sp. KUCC−0001株はカフェインを代謝できていなかった。0.2%添加区では、カフェインを完全に代謝しつつ、クロロゲン酸類をほぼ全量残存させていた。
本発明微生物の16SrDNAと相同性検索で得られた配列による分子系統樹。 本発明の微生物Pseudomonas sp. KUCC−0001のカフェイン資化性に関するグラフ。 実施例における培養前の培液上清と培養後の培液上清の比較に関するグラフ。 本発明の微生物のカフェイン資化におけるpHの影響を関するグラフ。 本発明の微生物のカフェイン資化における温度の影響に関するグラフ。 実施例における培地に0.7%(w/v)コーヒー生豆抽出物を添加したときの本発明の微生物の増殖とカフェイン分解、クロロゲン酸との関係を示すグラフ。 実施例における培地へのグルコース添加(0.1%〜1.0%)に伴うカフェイン分解量およびクロロゲン酸類の残存量に関するグラフ。

Claims (13)

  1. カフェイン分解能を有し、カフェインの脱メチル化物を菌体外に生産しないシュードモナス(Pseudomonas)属微生物であって、Pseudomonassp. KUCC−0001(受託番号NITEP−259)である微生物。
  2. グルコース存在下において、ポリフェノール類およびカフェイン含有物と接触処理した場合に、カフェイン分解能を有し、ポリフェノール類を処理前の含有量のまま残存させる請求項1に記載の微生物。
  3. ポリフェノール類およびカフェイン含有物から、カフェインを除去する方法であって、
    請求項1または2に記載の微生物を、グルコース存在下において、該ポリフェノール類およびカフェイン含有物と接触処理する工程を含むカフェインの除去方法。
  4. 前記ポリフェノール類およびカフェイン含有物が、ポリフェノール類とカフェインを含有する植物の水性溶媒による抽出物であり、前記接触処理する工程において、該抽出物とグルコースとが前記微生物と共に培養培地中に共存し、前記方法によって、前記ポリフェノール類が処理前の含有量のまま残存する、請求項に記載のカフェインの除去方法。
  5. 前記グルコースが、0.01〜0.5重量%存在する、請求項3または4に記載のカフェインの除去方法。
  6. 前記接触処理工程におけるカフェイン含有量が0.3重量%以上である請求項3〜5のいずれかに記載のカフェインの除去方法。
  7. 前記植物が、ツバキ科、アカネ科、モチノキ科、アオギリ科、ムクロジ科植物である請求項4〜6のいずれかに記載のカフェインの除去方法。
  8. ポリフェノール含有食品の製造方法であって、
    請求項1または2に記載の微生物を、グルコースの存在下において、ポリフェノール類とカフェインを含有する植物の水性溶媒による抽出物に接触処理する工程を含み、前記カフェインが分解され、前記ポリフェノール類が処理前の含有量のまま残存する、ポリフェノール含有食品の製造方法。
  9. 前記グルコースが0.01〜0.5重量%存在する、請求項に記載のポリフェノール含有食品の製造方法。
  10. 前記接触処理におけるカフェイン含有量が0.3重量%以上である請求項8または9に記載のポリフェノール含有食品の製造方法。
  11. 前記植物が、ツバキ科、アカネ科、モチノキ科、アオギリ科、ムクロジ科植物である請求項8〜10のいずれかに記載のポリフェノール含有食品の製造方法。
  12. 請求項1または2に記載の微生物を、カフェイン含有物に接触処理する工程を含むことを特徴とするカフェイン含有物の処理方法。
  13. 前記カフェイン含有物のカフェイン含有量が0.3重量%以上である請求項12に記載のカフェイン含有物の処理方法。
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