JP4828896B2 - 変異型hergチャネル発現細胞およびその用途 - Google Patents

変異型hergチャネル発現細胞およびその用途 Download PDF

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Description

本発明は、新規な変異HERG (human ether-a-go-go related gene) チャネル発現細胞およびその用途に関する。より詳細には、タンデムダイマー型の変異HERG遺伝子を導入した動物細胞、並びにそれを用いたHERGチャネル阻害薬の結合様式予測および阻害回避のための構造修飾位置の提示方法に関する。
QT延長症候群は心室頻脈や心室細動を引き起こし、さらには失神発作や突然死をきたす循環器疾患で、心電図上に見られるQT間隔の延長で特徴付けられるため、このように命名されている。QT間隔延長は心活動電位の再分極遅延により主に惹起され、その原因として遺伝性のものが知られていたが(例:先天性QT延長症候群、Brugada症候群等)、近年、薬物によってもQT延長が誘発されることが明らかとなってきた。そのため、米国食品医薬局(FDA)では、開発化合物の前臨床段階でQT延長作用の有無を確認することを推奨しており、国際的な医薬品承認審査資料のハーモナイゼーションのため組織された日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)において制定された「安全性薬理試験ガイドライン」(非特許文献1)にも、心血管系作用の評価として「再分極と伝達異常に対する手法を含むin vivo、in vitroあるいはex vivoの評価も考慮すべきである」と記載されている。このような動向の中、臨床・前臨床段階においてQT延長作用が妨げとなって開発断念を余儀なくされたり、スケジュール遅延に至るケースが多発している。従って、開発の初期段階でQT延長作用を持たない薬物をデザインすることが強く求められている。
QT延長の責任分子として最も重要な役割を担っているものとして、心筋細胞の遅延整流カリウムチャネルの速い成分(IKr)を形成するサブユニット分子であるhuman ether-a-go-go-related gene(HERG)蛋白質があり、薬物とこの分子との相互作用によるHERGチャネル阻害(K+の流出阻害)が直接的に心臓に副作用をもたらすことが明らかになっている。そのため、現在の創薬研究では、対象とする化合物のHERGチャネルに対する影響の有無を高感度に検出することが必須となっている。
薬物によるHERGチャネル阻害の試験方法としては、HERG発現細胞における、K+に類似のルビジウムイオン(Rb+)の流出を測定するルビジウム法、パッチクランプ法によりHERG電流を測定するパッチクランプ試験等がある。しかしながら、現行のHERGチャネル阻害スクリーニングは、薬物のHERGチャネル阻害作用の有無と阻害強度を明らかにはするが、阻害回避のために薬物にどのような修飾を施すべきかという指針を与えない。開発薬物がHERGチャネル阻害作用を回避するためには、HERGチャネルと当該化合物の相互作用を立体的に明らかにし、チャネル内における薬物の結合部位と結合様式を詳細に決定する必要がある。しかし、HERGチャネルは膜蛋白質であることから、結晶化は困難で、これまでにX線結晶構造解析に関する報告はなされていない。最近類縁カリウムイオンチャネルの結晶構造がようやく明らかにされたが、HERGチャネルにおける薬物標的部位はチャネル内孔であることが示唆されているに過ぎない(非特許文献2、3)。
最近、蛋白質を構成する特定のアミノ酸を他のアミノ酸に置換する部位特異的変異誘発法を使うことにより、薬物の結合に寄与するHERGチャネルの孔表面構成アミノ酸残基が推定できることが報告されている。例えば、強力なHERGチャネル阻害作用を有するMK-499、シサプリドTMおよびテルフェナジンTMの3化合物は、HERGチャネル内のアミノ酸Tyr652およびPhe656と相互作用を持つことが示唆されている(非特許文献4)。しかしながら、HERGチャネルはホモ4量体であり、この方法では機能体としてのHERGチャネルに4つの変異が導入されるため、相互作用に関わるアミノ酸残基は示唆できるが、相互作用を三次元的に考察することは困難である(特許文献1)。
国際公開第03/100082号パンフレット The Nonclinical Evaluation of the Potential for Delayed Ventricular Repolarization (QT Interval Prolongation) By Human Pharmaceuticals (ICH S7B), 12 May 2005. Lees-Miller JP et al. (2000) Mol Pharmacol. 57(2):367-74. Mitcheson JS et al. (2000) J Gen Physiol. 115(3):229-39. Mitcheson JS et al.(2000) Proc Natl Acad Sci U S A. 97(22):12329-33.
従って、本発明の目的は、HERGチャネルとその阻害薬との相互作用を立体的に明らかにし、チャネル内における該薬物の結合部位と結合様式を決定する方法を提供することであり、さらに、予測される結合様式に基づいて、該薬物によるHERGチャネルの阻害を回避するための、該薬物の構造修飾位置を提示する方法を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、イオンチャネルの電気生理学的解析に用いられている、複数のサブユニットを連結してタンデム化する方法と、従来の部位特異的変異誘発法とを組み合わせる方法[例えば、Kwon RJ et al. (2002) Biochem Biophys Res Commun. 298(4):478-85参照]を利用することを着想した。即ち、HERG蛋白質の2つのサブユニットをタンデムに繋いだダイマーの、各サブユニットの一方または両方に1アミノ酸変異を導入してこれを動物細胞で発現させることにより、変異が2または4アミノ酸導入された4量体を該細胞の膜上で形成させることに成功し、これらを用いてHERG阻害薬によるHERG阻害効果を試験することにより、各阻害薬のチャネルへの結合に関与するアミノ酸の種類および位置関係等を明らかにした。さらに、既知のカリウムイオンチャネルの結晶構造を鋳型として、別途構築したHERGチャネルの立体構造モデルを用いて、ドッキング法により阻害薬の結合様式を複数発生させ、その中から上記阻害試験結果を満たす結合様式を目視により選択、推定結合様式から阻害回避のための構造修飾推奨位置を予測することに成功した。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 心筋細胞の遅延整流カリウムイオンチャネルのαサブユニットのタンデムダイマー型蛋白質であって、該タンデムダイマーを構成する2つのサブユニットの一方または両方が、該チャネルを阻害する化合物との結合に関与し得るアミノ酸に変異が導入されたものである蛋白質またはその塩;
[2] 野生型サブユニットが、配列番号2で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含むものである上記[1]記載の蛋白質またはその塩;
[3] 配列番号2で示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号652で示されるチロシンおよび/またはアミノ酸番号656で示されるフェニルアラニンが他のアミノ酸で置換された、上記[2]記載の蛋白質またはその塩;
[4] サブユニットのC末とN末とで連結されたタンデムダイマー型のチャネルを発現する上記[1]記載の蛋白質またはその塩;
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載の蛋白質をコードする核酸;
[6] 上記[5]記載の核酸で形質転換された動物細胞;
[7] 哺乳動物細胞またはカエル卵母細胞である上記[6]記載の細胞;
[8] 上記[6]記載の細胞を試験化合物と接触させ、該細胞におけるカリウムイオンチャネルの阻害を試験することを特徴とする、心筋細胞の遅延整流カリウムイオンチャネルを阻害する化合物のスクリーニング方法;
[9] QT間隔延長作用を有する化合物のスクリーニングのためである上記[8]記載の方法;
[10] 上記[6]記載の細胞を心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルを阻害する化合物と接触させ、該細胞におけるカリウムイオンチャネルの阻害を試験することを特徴とする、野生型の心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルへの該化合物の結合様式の予測方法;
[11] 結合様式の予測が、結合に関与するアミノ酸側鎖の種類および/または位置関係の同定を含む上記[10]記載の方法;
[12] 結合様式の予測が、結合に関与するアミノ酸側鎖の空間配置および/または結合への貢献を含む上記[10]記載の方法;
[13] 野生型の心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルの立体構造モデル、および上記[10]記載の方法を用いることを特徴とする、野生型の心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルを阻害する化合物の該チャネルへの結合様式の予測方法;および
[14] 上記[13]記載の方法により予測される結合様式に基づいて、化合物による野生型の心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルの阻害を回避するための、該化合物の構造修飾位置を予測する方法;
などを提供する。
本発明によれば、薬物のHERGチャネル阻害における詳細な結合位置情報を提供することができ、また、精度の高い構造情報に基づいた薬物の構造修飾により、HERG阻害回避に貢献することができる。
本発明のタンデムダイマー型変異蛋白質は、哺乳動物の心筋細胞の遅延整流カリウムイオンチャネル(IK)の速い成分(IKr;本明細書において「心筋細胞の遅延整流カリウムイオンチャネル」という場合、特にことわらない限り「IKr」を意味するものとする)のαサブユニット2つを連結してタンデム化したものであって、該2つのサブユニットの一方または両方に変異が導入されたものである。ここで変異に係るアミノ酸は、野生型の該チャネルを阻害する化合物との結合に関与し得るアミノ酸である(他方、該化合物との結合に関与せず、且つ該チャネルの活性にも影響を及ぼさないアミノ酸にのみ変異が導入されたサブユニットは、本明細書においては、野生型サブユニットと同等のものとして取り扱う)。
「心筋細胞の遅延整流カリウムイオンチャネルのαサブユニット」[即ち、野生型サブユニット(尚、ここで「野生型」とは本発明の「変異」蛋白質に対して変異が導入される前の状態であることを意味し、必ずしも野生種に由来するものに限定されない)]とは、ヒト心筋細胞のIKrの孔を形成するαサブユニット分子と同一もしくは実質的に同一の蛋白質をいう。αサブユニットは1159アミノ酸(GenBank accession No. NP_000229;配列番号2)からなる6回膜貫通型の電位依存型K+チャネル構成蛋白質で、短い2種のスプライスバリアント(GenBank accession Nos. NP_742053, NP_742054;それぞれ配列番号4および6)が知られている。αサブユニットと「実質的に同一の蛋白質」とは、配列番号2、4または6(好ましくは配列番号2)に示されるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、且つ配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質と同質の活性(IKr活性)を有する蛋白質をいう。ここで「同質の活性」とは、活性が質的に(例えば、生理学的に、または薬理学的に)同一であることをいい、量的には同等(例えば、0.5〜2倍)であることが好ましいが、異なっていてもよい。また、アミノ酸配列の相同性の条件を満たす限り、分子量などの他の量的要素が異なってもよい。IKr活性は、自体公知の方法、例えば、後述のパッチクランプ法またはルビジウム法により測定することができる。
アミノ酸配列について、「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換は蛋白質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science, 247: 1306-1310 (1990)を参照)。
本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている(Altschulら, Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Needlemanら, J. Mol. Biol., 48: 444-453 (1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller, CABIOS, 4: 11-17 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれている]、Pearsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらも同様に好ましく用いられ得る。
より好ましくは、配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、各配列番号に示されるアミノ酸配列とそれぞれ約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。
かかる相同性を有する蛋白質としては、例えば、1)配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜50個程度、より好ましくは1〜30個程度、さらに好ましくは1〜10個程度、特に好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、2)配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは1〜50個程度、より好ましくは1〜30個程度、さらに好ましくは1〜10個程度、特に好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、3)配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは1〜50個程度、より好ましくは1〜30個程度、さらに好ましくは1〜10個程度、特に好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、4)配列番号2、4または6に示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは1〜50個程度、より好ましくは1〜30個程度、さらに好ましくは1〜10個程度、特に好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または5)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質などが含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は特に限定されないが、野生型サブユニットとしての性質を保持するためには、チャネルを阻害する化合物との結合に関与し得るアミノ酸に挿入、欠失または置換がないことが必要である。
より具体的には、HERG蛋白質と実質的に同一の蛋白質としては、HERGのアレル変異体や、該遺伝子の非ヒト哺乳動物(例:サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、マウス、ラット等)におけるオルソログ(ortholog)(例えば、GenBank accession No. NP_038597として登録されているマウスオルソログ(アミノ酸レベルでHERGと95.7%の同一性))などが該当する。
本発明のタンデムダイマー型変異蛋白質は、それを構成する2つの繋がったサブユニットの一方または両方において、野生型の該チャネルを阻害する化合物との結合に関与し得るアミノ酸に変異が導入されていることを特徴とする。「野生型の該チャネルを阻害する化合物との結合に関与し得るアミノ酸」としては、例えば、孔へリックスまたはS6へリックス上のアミノ酸残基、より具体的には、HERG蛋白質の場合、配列番号2(または4)に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号623で示されるスレオニン、アミノ酸番号624で示されるセリン、アミノ酸番号625で示されるバリン、アミノ酸番号648で示されるグリシン、アミノ酸番号652で示されるチロシン、アミノ酸番号656で示されるフェニルアラニン(配列番号6に示されるアミノ酸配列においては、それぞれアミノ酸番号283、284、285、308、312および316で示されるアミノ酸残基に相当する)等が挙げられるが、これらに限定されない。野生型チャネルを阻害する化合物との結合に関与し得る他のアミノ酸は、野生型サブユニットをコードする遺伝子に周知慣用の部位特異的変異誘発法を用いて点変異を導入して、適当な動物細胞で発現させ、チャネルを阻害する任意の化合物の存在下にチャネル阻害を測定して、阻害活性が消失/低下した変異部位のアミノ酸を選択することにより、同定することができる。好ましくは、変異が導入されるアミノ酸は、配列番号2(または4)に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号652で示されるチロシンおよび/またはアミノ酸番号656で示されるフェニルアラニンである。
変異の態様は特に限定されず、置換、欠失、挿入もしくは修飾のいずれであってもよいが、好ましくは置換もしくは欠失である。上記の野生型チャネルを阻害する化合物との結合に関与し得るアミノ酸が他のアミノ酸で置換される場合、該化合物との結合に寄与しない側鎖を有するものであれば特に限定されないが、例えばアラニンのような非荷電、非極性の小さな側鎖を有するアミノ酸で置換されることが望ましい。
変異はタンデムダイマーを構成する2つのサブユニットの一方のみに導入しても、あるいは両方に導入することもできる。また、1つのサブユニットに複数の変異を導入することもできる。1つのサブユニットに導入される変異の数としては0〜3、タンデムダイマー全体としては1〜5程度が例示されるが、特に制限されない。好ましくは、1つのサブユニットに0〜2、タンデムダイマー全体として1〜4程度の変異が導入される。
タンデムダイマーの配向は、それを発現する細胞において機能的な4量体を形成し得る限り特に制限されないが、サブユニットのC末とN末とで連結されたものが、製造の容易さ等の面から特に好ましい。2つのサブユニットは直接的に連結してもよいし、あるいは適当な長さのリンカーペプチドを介して連結することもできる。リンカーペプチドの長さとしては、1−30好ましくは2−10アミノ酸程度が挙げられる。リンカーのアミノ酸配列は、2つのサブユニットが機能的な4量体を形成するための配置をとることを妨げるような局所的構造をとるものでなければ特に制限はない。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質の塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質またはその塩は、該蛋白質をコードする核酸を含有する形質転換体を培養し、該蛋白質またはその塩を産生させることによって製造することができる。本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードする核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよいが、一本鎖の場合は、センス鎖(即ち、コード鎖)である。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。好ましくは、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードする核酸は、それを含有する形質転換体が哺乳動物細胞等の場合には二本鎖DNAであり、カエル(特にアフリカツメガエル)卵母細胞等の場合には一本鎖RNAである。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするcDNA(またはゲノムDNA)は、上記野生型もしくは変異型サブユニットをコードするcDNA(またはゲノムDNA)を、哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、サル、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターなど)のあらゆる細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織(例、褐色脂肪組織、白色脂肪組織)、骨格筋など]、好ましくは心筋細胞、プルキンエ線維、乳頭筋、心筋片、灌流心筋、全心臓などより調製した全RNAもしくはmRNA画分(またはゲノムDNA画分)を鋳型として用い、Reverse Transcriptase-Polymerase Chain Reaction(RT-PCR)法(またはPCR法)によって直接増幅することにより調製した後、変異型および変異型サブユニット、あるいは変異型および野生型サブユニットを、通常の遺伝子工学的手法を用いて直接もしくは適当なリンカーを介して連結することによって製造することができる。変異型サブユニットは、所望の変異が導入されるようにプライマーを設計して(RT-)PCRを行うことにより調製することができる。あるいは、野生型サブユニットをコードするcDNA(またはゲノムDNA)は、上記した細胞・組織より調製したmRNAから逆転写反応により得られるcDNA(または上記した細胞・組織より調製したゲノムDNA)の断片を適当なベクター中に挿入して調製されるcDNAライブラリー(またはゲノムDNAライブラリー)から、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、それぞれクローニングすることもできる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
野生型サブユニットをコードするDNAとしては、例えば、配列番号1、3または5に示される塩基配列を含有するDNA、または配列番号1、3または5に示される塩基配列と相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、HERG蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAなどが挙げられる。ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同義である。
配列番号1、3または5に示される塩基配列と相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1、3または5に示される塩基配列と相補的な配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
本明細書における塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
野生型サブユニットをコードするDNAの塩基配列が、配列番号1、3または5に示される塩基配列と完全一致しない場合、配列が相違する位置等は特に限定されないが、該DNAにコードされる蛋白質が野生型サブユニットとしての性質を保持するためには、チャネルを阻害する化合物との結合に関与し得るアミノ酸に挿入、欠失または置換等の変異が導入される塩基の変異を有しないことが必要である。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ストリンジェントな条件に従って行うことができる。
ストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム塩濃度が約19〜約40mM、好ましくは約19〜約20mMで、温度が約50〜約70℃、好ましくは約60〜約65℃の条件等が挙げられる。特に、ナトリウム塩濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が好ましい。
野生型サブユニットをコードするDNAは、好ましくは配列番号1、3または5に示される塩基配列で示されるヒトHERG蛋白質をコードする塩基配列を含有するDNA(GenBank accession Nos. NM_000238, NM_172056, NM_172057)、あるいは他の哺乳動物におけるそのオルソログ(例えば、GenBank accession No. NM_013569として登録されているマウスオルソログ等)である。
DNAの塩基配列は、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って変換することができる。
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
変異型サブユニットをコードするDNAの調製は、周知慣用の種々の変異導入手段を用いて行うことができるが、例えば、以下の方法が好ましく用いられ得る。
即ち、野生型チャネルを阻害する化合物との結合に関与し得るアミノ酸をコードするコドン(例えば、HERG蛋白質の場合、配列番号1(または3)に示される塩基配列中塩基番号1867〜1869で示されるACC、塩基番号1873〜1875で示されるGTG、塩基番号1942〜1944で示されるGGC、塩基番号1954〜1956で示されるTAT、塩基番号1966〜1968で示されるTTC等)を含む、該配列の部分オリゴヌクレオチドにおいて、当該コドン配列を他のアミノ酸、即ち、野生型チャネルを阻害する化合物との結合に寄与しないアミノ酸(例えば、アラニン)をコードするコドン(例えばアラニンの場合、GCN(但し、Nは任意の塩基))に置換した塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成し、これを一方のプライマーとし、野生型サブユニットをコードするDNAを鋳型としてPCRを行うことにより、野生型チャネルを阻害する化合物との結合に関与し得るアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするDNA断片を得ることができる。この断片を適当な制限酵素とDNAリガーゼを用いて、野生型サブユニットをコードするDNAの対応する部分と組換えることにより、変異型サブユニットをコードするDNAを得ることができる。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするDNAは、上記のようにして得られる野生型サブユニットをコードするDNAと変異型サブユニットをコードするDNA、あるいは同一もしくは異なるアミノ酸に変異が導入された2つの変異型サブユニットをコードするDNAを、適当な制限酵素やDNAリガーゼを用いて、直接もしくは適当なリンカーを介して連結することにより製造することができる。野生型サブユニットをコードするDNAと変異型サブユニットをコードするDNAとを連結する場合、あるいは異なるアミノ酸に変異が導入された2つの変異型サブユニットを連結する場合、どちらのサブユニットを5’側に配置するかは任意に選択することができるが、5’側に置かれるDNAが終止コドンを含んでいる場合には、終止コドンを欠失させた3’末端部分配列を含むオリゴヌクレオチドを一方のプライマーとしたPCRを行うなどして、予め終止コドンを除去しておく必要がある。リンカーを介して連結する場合、用いられるリンカーDNAに特に制限はなく、例えば、任意の制限酵素認識配列を含む公知のDNAリンカーもしくはDNAアダプターなどが好ましく使用できる。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターは、例えば、上記のようにして作製された本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするDNAを、適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13);枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194);酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15);昆虫細胞発現プラスミド(例:pFast−Bac);動物細胞発現プラスミド(例:pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);λファージなどのバクテリオファージ;バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクター(例:BmNPV、AcNPV);レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどの動物ウイルスベクターなどが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
例えば、宿主が動物細胞である場合、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。
宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。
宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。
宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点(以下、SV40 oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと略称する場合がある、メソトレキセート(MTX)耐性)、アンピシリン耐性遺伝子(以下、ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、neoと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によって目的遺伝子を選択することもできる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列をコードする塩基配列(シグナルコドン)を、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするDNAの5’末端側に付加してもよい。例えば、宿主がエシェリヒア属菌である場合、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが;宿主がバチルス属菌である場合、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが;宿主が酵母である場合、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列などが;宿主が動物細胞である場合、インスリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ用いられる。
上記した本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターで宿主を形質転換し、得られる形質転換体を培養することによって、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,エシェリヒア・コリJM103〔ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,エシェリヒア・コリJA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),120巻,517(1978)〕,エシェリヒア・コリHB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,エシェリヒア・コリC600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,バチルス・サブチルス207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞、Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合、昆虫細胞としては、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞〔以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977)〕などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サルCOS−7細胞、サルVero細胞、チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr)細胞と略記)、マウスL細胞,マウスAtT−20細胞、マウスミエローマ細胞,ラットGH3細胞、ヒトFL細胞などが用いられる。
形質転換は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。 エシェリヒア属菌は、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
バチルス属菌は、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
酵母は、例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
昆虫細胞および昆虫は、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6巻,47−55(1988)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って形質転換することができる。
形質転換体の培養は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
例えば、宿主がエシェリヒア属菌またはバチルス属菌である形質転換体を培養する場合、培養に使用される培地としては液体培地が好ましい。また、培地は、形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物などを含有することが好ましい。ここで、炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖などが;窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質が;無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがそれぞれ挙げられる。また、培地には、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは、好ましくは約5〜約8である。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。必要により、プロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を培地に添加してもよい。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、通常約15〜約43℃で、約3〜約24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、通常約30〜約40℃で、約6〜約24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が酵母である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K.L.ら,プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G.A.ら,プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕などが挙げられる。培地のpHは、好ましくは約5〜約8である。培養は、通常約20℃〜約35℃で、約24〜約72時間行なわれる。必要に応じて、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えばGrace's Insect Medium〔Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195巻,788(1962)〕に非働化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6.2〜約6.4である。培養は、通常約27℃で、約3〜約5日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、約5〜約20%の胎児ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association),199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6〜約8である。培養は、通常約30℃〜約40℃で、約15〜約60時間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
以上のようにして、形質転換体の細胞内または細胞外に本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を製造せしめることができる。
前記形質転換体を培養して得られる培養物から本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を自体公知の方法に従って分離精製することができる。
例えば、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を培養菌体あるいは細胞の細胞質から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性蛋白質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。該緩衝液は、尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤を含んでいてもよい。一方、膜画分から本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を抽出する場合は、上記と同様に菌体あるいは細胞を破壊した後、低速遠心で細胞デブリスを沈澱除去し、上清を高速遠心して細胞膜含有画分を沈澱させる(必要に応じて密度勾配遠心などにより細胞膜画分を精製する)などの方法が用いられる。また、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質が菌体(細胞)外に分泌される場合には、培養物から遠心分離またはろ過等により培養上清を分取するなどの方法が用いられる。
このようにして得られた可溶性画分、膜画分あるいは培養上清中に含まれる本発明のタンデムダイマー変異蛋白質の単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
かくして得られる蛋白質が遊離体である場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって、該遊離体を塩に変換することができ、蛋白質が塩として得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、該塩を遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、形質転換体が産生する本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。該蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
さらに、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質は、上記の本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするDNAに対応するRNAを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞蛋白質翻訳系を用いてインビトロ合成することができる。あるいは、さらにRNAポリメラーゼを含む無細胞転写/翻訳系を用いて、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするDNAを鋳型としても合成することができる。無細胞蛋白質転写/翻訳系は市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には大腸菌抽出液はPratt J.M.ら, “Transcription and Tranlation”, Hames B.D.およびHigginsS.J.編, IRL Press, Oxford 179-209 (1984)に記載の方法等に準じて調製することもできる。市販の細胞ライセートとしては、大腸菌由来のものはE.coliS30 extract system(Promega社製)やRTS 500 Rapid Tranlsation System (Roche社製)等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来のものはRabbitReticulocyteLysate System (Promega社製)等、さらにコムギ胚芽由来のものはPROTEIOSTM (TOYOBO社製)等が挙げられる。このうちコムギ胚芽ライセートを用いたものが好適である。コムギ胚芽ライセートの作製法としては、例えばJohnstonF.B.ら, Nature, 179, 160-161 (1957)あるいはErickson A.H.ら, Meth. Enzymol., 96, 38-50(1996)等に記載の方法を用いることができる。
蛋白質合成のためのシステムまたは装置としては、バッチ法(Pratt,J.M.ら (1984)前述)や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞蛋白質合成システム(SpirinA.S.ら, Science, 242, 1162-1164 (1988))、透析法(木川ら、第21回日本分子生物学会、WID6)、あるいは重層法(PROTEIOSTMWheatgerm cell-free protein synthesis core kit取扱説明書:TOYOBO社製)等が挙げられる。さらには、合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法(特開2000-333673)等を用いることができる。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするmRNAは、上記した本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするcDNAまたはゲノムDNAを、上述のように適当な宿主細胞に導入して発現させ、常法により単離精製することもできるが、好ましくは、該cDNAを鋳型として、公知のインビトロ転写系を用いて製造することができる。即ち、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするcDNAをpCMVTnTTM-VectorやpTnTTM-Vector(Promega社)などのインビトロ転写用ベクターのプロモーター(SP6、T7、T3プロモーター等)の下流に連結し、該プロモーターに適合したRNAポリメラーゼ(SP6、T7、T3 RNAポリメラーゼ等)および基質モノヌクレオチド(ATP、GTP、CTP、UTP)存在下でインキュベートすることにより、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするcRNAを製造することができる。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質2分子を膜上で会合させることにより、機能的な心筋細胞の遅延整流カリウムイオンチャネルを構成させることができる。本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を膜上で会合させる手段としては、人工の脂質二重膜やリポソームに、上記のようにして得られる本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を埋め込む方法が挙げられる。人工脂質二重膜を構成する脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、コレステロール(Ch)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)等が挙げられ、これらの1種または2種以上を適当な比率で混合したものが好ましく使用される。
例えば、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を埋め込んだ人工脂質二重膜(プロテオリポソーム)は、以下の方法により調製することができる。即ち、まず、PC:PS:Ch=12:12:1の混合脂質クロロホルム溶液を適当量ガラスチューブに分取し、窒素ガス蒸気でクロロホルムを蒸発させて脂質をフィルム状に乾燥させた後、適当な緩衝液を加えて懸濁、次いで超音波処理により均一に分散させ、コール酸ナトリウム等の界面活性剤を含む緩衝液をさらに加えて脂質を完全に懸濁する。ここに、精製した本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を適量添加し、氷中で時々攪拌しながら20〜30分間程度インキュベートした後、適当な緩衝液に対して透析する。約100,000×gで30〜60分間遠心して沈渣を回収することにより、所望のプロテオリポソームを得ることができる。
本発明のより好ましい態様においては、上記した本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターを、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞やカエル卵母細胞などに導入し、該細胞の細胞膜上に本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を発現させることにより該蛋白質を膜上で会合させる。
従って、本発明はまた、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードする核酸で形質転換された動物細胞を提供する。本明細書において「形質転換された」とは、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を安定に発現するだけでなく、一過的に発現する場合をも包含する意味で用いられる。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするDNAを担持するための発現ベクターとしては、動物細胞発現プラスミド(例:pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);λファージなどのバクテリオファージ;レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどの動物ウイルスベクターなどが用いられる。プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、SV40複製起点(以下、SV40 oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を安定に発現する細胞を得る場合には、発現ベクターは選択マーカーをさらに含むことが望ましい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと略称する場合がある、メソトレキセート(MTX)耐性)、アンピシリン耐性遺伝子(以下、amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によって目的遺伝子を選択することもできる。
宿主としては、脊椎動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、例えば、HEK293細胞、HeLa細胞、ヒトFL細胞、サルCOS-7細胞、サルVero細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損CHO細胞(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記)、マウスL細胞,マウスAtT-20細胞、マウスミエローマ細胞,ラットGH3細胞などが用いられる。
形質転換は、リン酸カルシウム共沈殿法、PEG法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法などにより行うことができる。例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263-267 (1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456 (1973)、日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.), 第119巻 (第6号), 345-351 (2002) などに記載の方法を用いることができる。
また、別の好ましい宿主として、アフリカツメガエルの卵母細胞が挙げられる。該細胞は比較的大型で扱いやすいだけでなく、mRNAから蛋白質への翻訳に必要な細胞因子が豊富に蓄積されているので、上述のようにインビトロ転写系で合成した本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードするcRNAを導入することにより、該蛋白質を該細胞の細胞膜上で発現させることができる。卵母細胞へのcRNAの導入は、マイクロインジェクション法を用いて行うことが出来る。これらの方法の具体的な態様については、例えば、日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.), 第119巻 (第6号), 345-351 (2002) 等に記載されている。
上記のようにして得られる、本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードする核酸で形質転換された動物細胞を、試験化合物と接触させ、該細胞におけるカリウムイオンチャネルの阻害を試験することにより、心筋細胞の遅延整流カリウムイオンチャネル(IKr)を阻害する化合物(以下、単に「阻害薬」という場合がある)をスクリーニングすることができる。周知のように、IKrを阻害する化合物は、心電図のQT間隔延長作用を有する危険性が高いので、該スクリーニング方法はまた、試験化合物のQT間隔延長作用の有無および/または程度を調べるのに有用である。
特に、本スクリーニング方法は、試験化合物の野生型チャネル阻害試験と併用することにより、野生型チャネルを阻害する化合物の該チャネルとの結合に関与するアミノ酸の種類および/または位置関係を特定し、それに応じて種々の阻害薬をグループ化し得るという利点を有する。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質をコードする核酸で形質転換された動物細胞(以下、「本発明の細胞」と略記する場合がある)におけるカリウムイオン(K+)チャネルの阻害は、従来HERGチャネル阻害のインビトロ評価系として用いられている任意の手法を用いて評価することができる。例えば、パッチクランプ試験においては、HERG電流を検出することにより、一方、ルビジウム法による試験においては、標識されたルビジウムイオン(Rb+)の移動を検出することにより、評価することができる。細胞と試験化合物との接触は、通常のパッチクランプ試験において細胞外液として用いられる各種緩衝液[例えば、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。また、該緩衝液中には各種の無機もしくは有機化合物(例えば、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、グルコース、デキストロースなど)を所望により添加することもできる]中で行うことができる。試験化合物の添加濃度は特に制限されないが、例えば、予想される最大治療血漿中濃度またはそれを超えるような範囲で適宜選択することができる。
パッチクランプ法によるHERG電流(K+電流)阻害試験の具体的な態様については、後記実施例において詳述する。また、当該方法の詳細は、Exp. Opin. Pharmacother., 第1巻 (第5号), 947-973 (2000)、日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.), 第119巻 (第6号), 345-351 (2002) にも記載されている。一方、ルビジウム法の具体的な態様については、例えば、Analytical Biochemistry 272, 149-155(1999)等に詳細に記載されている。
本発明はまた、本発明の細胞を、野生型のIKrを阻害する既知の化合物と接触させ、該細胞におけるK+チャネルの阻害を試験することによる、野生型チャネルへの該化合物の結合様式の予測方法を提供する。ここで「結合様式の予測」とは、結合に関与するアミノ酸側鎖の種類および/または位置関係の同定を含み、より好ましくは、結合に関与するアミノ酸側鎖の空間配置および/または結合への貢献の同定を含む意味で用いられる。用いるタンデムダイマー変異蛋白質の種類を増やすことによって、結合様式に関するより多くの情報を取得することができる。後記実施例を例にとれば、(1)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる野生型HERG(WT)と、配列番号2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号652で示されるチロシンがアラニンに置換された変異型HERG(Y652A)とを連結したタンデムダイマー(TDY652A)、(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる野生型HERG(WT)と、配列番号2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号656で示されるフェニルアラニンがアラニンに置換された変異型HERG(F656A)とを連結したタンデムダイマー(TDF656A)、(3)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる野生型HERG(WT)と、配列番号2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号652で示されるチロシンおよびアミノ酸番号656で示されるフェニルアラニンがそれぞれアラニンに置換された変異型HERG(Y652A・F656A)とを連結したタンデムダイマー(DMCC)、並びに(4)Y652AとF656Aとを連結したタンデムダイマー(DMNC)の4種のタンデムダイマーをコードする核酸を作製して、動物細胞に導入・発現させた。さらに、Y652AおよびF656Aのモノマー変異HERG(MNY652AおよびMNF656A)を動物細胞に導入・発現させた。また、コントロールとして野生型HERG(MNWT)および野生型HERG同士を連結したタンデムダイマー(TDWT)を発現させた動物細胞を作製して、各細胞についてHERG阻害薬(例:シサプリド)によるHERG電流阻害を測定した。
まず、従来公知のモノマー変異HERG(MNY652AおよびMNF656A)では、いずれも野生型HERG(MNWT)に比べてHERG電流阻害が減弱しているので(表2参照)、アミノ酸番号652で示されるチロシン(Y652)とアミノ酸番号656で示されるフェニルアラニン(F656)の両方がシサプリドとの結合に関与することが分かるが、その位置関係は特定できない。
モノマーおよびタンデムダイマー野生型HERG(MNWTおよびTDWT)は、電気刺激に対する応答やシサプリドによる電流阻害において同様の挙動を示した(図7参照)。従って、タンデムダイマー2分子で構成されるHERGチャネルは、モノマー4分子で構成されるHERGチャネルのgatingや薬物結合に関する基本的性質を維持していると考えられる。
表2に示される各種変異HERGのシサプリドによるHERG電流阻害の程度の相違を総合すると、図8に例示されるような隣り合うサブユニットの一方のY652およびF656、並びに他方のY652がシサプリドとの結合に関与する結合様式が抽出される。さらに、阻害の減弱の程度に基づいて結合に関与する各アミノ酸の結合への貢献についての情報を得ることもできる。これらの詳細については、後記実施例において説明する。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を用いて、IKrを阻害する化合物の該チャネルへの結合様式を予測する方法として、該蛋白質をコードする核酸で形質転換された動物細胞を用いる代わりに、上述のように本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を脂質二重膜またはリポソーム中に埋め込んで人工膜上にIKrを再構成させたものを用いることもできる。この場合でも、K+チャネルの阻害は、上記と同様にパッチクランプ法などを用いて評価することが出来る。
4量体チャネルへの化合物の結合様式を、タンデムダイマー変異蛋白質を用いて解析する上記の手法は、他のオリゴマー蛋白質の解析にも有用である。例えば、ヘキサマー蛋白質への化合物の結合様式を解析するために、タンデムダイマー変異蛋白質3分子もしくはタンデムトリマー2分子を会合させる方法、オクタマー蛋白質の結合様式を解析する目的で、タンデムダイマー4分子もしくはタンデムテトラマー2分子を会合させる方法等が挙げられるが、それらに限定されない。
本発明はまた、野生型の心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルの立体構造モデルと、上記の本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を用いた野生型チャネルへの阻害薬の結合に関与するアミノ酸の種類および/または位置関係の同定、並びに/あるいは該アミノ酸の空間配置および/または結合への貢献の同定方法とを組み合わせて用いることを特徴とする、野生型チャネル阻害薬の該チャネルへの結合様式の予測方法を提供する。
心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルは膜蛋白質であり結晶化が困難なため、未だX線結晶構造解析に成功していない。このような場合、野生型の心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルの立体構造モデルを得る方法としては、構造既知の類縁蛋白質(例えば、類縁のカリウムチャネル蛋白質等)の結晶構造を鋳型に用い、それを利用して蛋白質の全原子モデルを作るホモロジーモデリングが挙げられる。ホモロジーモデリングでは、(1)構造未知の蛋白質のアミノ酸配列(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列)をクエリーとして、構造データベース(例えば、RCSB Protein Data Bank(URL: http://www.rcsb.org/pdb/))から類似の配列を検索し、(2)得られた構造既知の蛋白質(例えば、類縁カリウムイオンチャネルを構成するKvAPおよびMthK (PDBID: KvAP:1ORQ, MthK:1LNQ))に対し、公知のソフトウェア(例えば、ClustalW1.6 (Thompson, JD et al. (1994) Nucleic Acids Research, 22:4673-4680)等)を用いてアラインメントを確定し、(3)アラインメントした鋳型の配列から対応する部分の構造を選び出して予測構造を構築する。ホモロジーモデリングには、フラグメントに基づく方法と制約条件に基づく方法とがあり、前者は構造既知の蛋白質から得られるフラグメントを集めてモデリングするもので、フラグメントの平均構造を利用し、構造が保存されていない部分では、ループモデリングなどの他の手法を用いる。後者は、構造上の特徴を制約条件で表し、これを満たすようにモデリングするというものである。
フラグメントに基づく方法の基本的な手順を概説すると、上記アラインメントの確定に続き、主鎖のモデリング[構造的に保存された領域(SCR)は、アラインメントされた配列群の、類似度に応じた重みつき平均構造を採用し、構造的に可変領域(SVR)は、ループモデリング等を用いてその部分の構造を決定する]、側鎖のモデリング[適当なロータマー構造を決定する]、全体構造の構築、エネルギー極小化計算・分子動力学法による構造の精密化、となる。ループモデリングは、データベースを探索して、ループの両端の構造とループを形成する残基数でパターンマッチングを行うKnowledge-basedモデリングと、ループの両端を制約条件として第一原理的に構造を予測するab initioモデリングとに大別できる。
側鎖のモデリングでは、側鎖のとる二面角の傾向を考慮してその位置に適したロータマー構造を選択する必要がある。最近では、主鎖に依存したより詳細なロータマーの傾向を考慮する方法がとられるようになっており、例えば、DunbrackらのSCWRL2.9 (Bower, MJ et al. (1997) J. Mol. Biol. 267:1268-1282.) では、主鎖依存ロータマーライブラリを用いている。
一方、制約条件に基づく方法を採用しているシステムの代表例としては、Rockfeller大学のSaliらによるMODELLERがある。
ホモロジーモデリング以外の蛋白質立体構造予測手段としては、構造データベースから多数の鋳型を選び出し、ターゲットの配列がどの鋳型に属するかを決定する、フォールド認識(遠縁の蛋白質をもとにモデリングするという意味で、リモートホモロジーモデリングという場合もある)、既知の構造を鋳型として用いずに予測構造を構築するab initio法(例えば、蛋白質分子のポテンシャルエネルギーを計算し、その最小化を行って第一原理的に予測構造を求める方法、計算量削減のために粗視化してモデリングを行う格子モデルなど)等が挙げられる。また、ab initio法の別のアプローチとして、構造データベースの内容をもとに経験的なポテンシャルエネルギーを定義し、その最小化を行う方法がある。
上記のいずれかの方法により得られる、野生型の心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルの立体構造モデルを用い、公知のドッキング法により該チャネルを阻害する化合物の結合様式を複数発生させることができる。ドッキングに使用されるソフトウェアは特に制限されず、公知のいかなるものも用いることができるが、例えば、Gold2.1.2TM (Jones G et al.(1995) J. Mol. Biol. 245, 43-53) 等が好ましく用いられる。
複数選び出された結合様式の中から、上記の本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を用いたチャネル阻害試験の結果と適合する、阻害薬のチャネルへの結合様式を選択することにより、該阻害薬の該チャネルへの結合様式を精度よく予測することができる。当該選択は、適当な支援ソフトウェア (例えば、InsightIITM(Accelrys Inc., San Diego, California, U.S.A.)等)を用いて目視により行うことができる。
本発明は、さらに、上記の方法により予測される結合様式に基づいて、阻害薬による野生型チャネルの阻害を回避するための、該阻害薬の構造修飾位置を予測する方法を提供する。例えば、図9に示すように、シサプリドは同一サブユニット内のY652(Y1)とF656(F1)およびそれと隣り合うサブユニット内のY652(Y2)に結合すると考えられ、ドッキングによる阻害様式予測から、A環がY2、B環がY1、C環がF1との相互作用部位になっていることが予測される。この場合は、阻害回避のために骨格を変換せざるを得ないと考えられる。阻害回避の1例としてモサプリドが考えられるが、モサプリドには実際にHERG阻害作用がない。他の阻害薬においては、ある置換基がチャネルとの結合に関与している場合があるので、当該部位の構造修飾を行うことにより化合物の骨格を変更することなく阻害を回避できる可能性がある。
本明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Sec :セレノシステイン(selenocysteine)
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
[配列番号1]
HERG mRNAのスプライスバリアント1(1159アミノ酸をコードする)に対応するcDNAのコード領域(CDS)の塩基配列を示す。
[配列番号2]
HERG mRNAのスプライスバリアント1にコードされる1159アミノ酸からなるポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
[配列番号3]
HERG mRNAのスプライスバリアント2(888アミノ酸をコードする)に対応するcDNAのコード領域(CDS)の塩基配列を示す。
[配列番号4]
HERG mRNAのスプライスバリアント2にコードされる888アミノ酸からなるポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
[配列番号5]
HERG mRNAのスプライスバリアント3(819アミノ酸をコードする)に対応するcDNAのコード領域(CDS)の塩基配列を示す。
[配列番号6]
HERG mRNAのスプライスバリアント3にコードされる819アミノ酸からなるポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
以下に実施例等を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1 HERG 変異体構築
HERG−薬剤結合様式を解析するため、薬剤の結合に関与していると報告された652位のチロシンと656位のフェニルアラニンをアラニンに置換したモノマーHERGおよびダイマーHERG変異体を作製した。作製したHERGモノマー変異体は野生型HERGのY652とF656のいずれかをアラニンに置換したMNY652AおよびMNF656Aの2種類で、HERGダイマー変異体はダイマーのC末側に位置するHERGのY652とF656のいずれかをアラニンに置換したダイマーTDY652AおよびTDF656Aの2種類である。また、さらに詳しい結合様式を解析するため、HERGタンデムダイマー二重変異体を作製した。作製したHERGタンデムダイマー二重変異体は、C末側に位置するHERGのY652とF656の両方をアラニンに置換したダイマーDMCCおよびN末側のY652とC末側のF656をいずれもアラニンに置換したダイマーDMNCの2種類である。
HERGは4量体を形成して機能しているため、モノマーHERG変異体とダイマーHERG変異体では変異の数、位置に違いが生じる。今回作製したモノマーHERG変異体およびダイマーHERG変異体が4量体を形成した場合の変異の数および位置を図1に示す。
1-1. 材料
各種プライマーの合成はGIBCO(Grand Island, NY)に、塩基配列の決定はサワディーテクノロジー(Tokyo, Japan)にそれぞれ依頼した。使用した制限酵素および DNA Ligation Kit Ver.2 はタカラバイオ(株)(Shiga, Japan)の製品を用いた。PCR用の酵素として、PLATINUM Taq DNA Polymerase High Fidelity (GIBCO) および PCRx Enhancer System (GIBCO)を用いた。哺乳類細胞発現用ベクターとしてpcDNA3.1(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、クローニングベクターとしてpKF3(タカラバイオ(株))を用いた。
1-2. モノマーHERG変異体MNY652AおよびMNF656Aの作製
HERGは全長が3592bpと長いため、Segment 1(1-1317 bp)、Segment 2 (640-1956 bp)、Segment 3 (1894-3042 bp) および Segment 4(2919-3592 bp) の4つの断片にわけてクローニングした。それぞれのSegmentのPCR産物をTOPO TA cloning Kit (Invitrogen) を用いてpCR2.1-TOPOにサブクローニングし、さらに適切な制限酵素サイトを用いてpKF3に組み込んで、pKF3/seg(2+3+4)5-2を構築した。Y652AおよびF656Aの変異導入は、pKF3/seg(2+3+4)5-2をテンプレートとして、Y652またはF656をアラニンにするようにデザインしたプライマー(配列番号7および8)を用いてPCRを行った(リバースプライマーとして配列番号9のオリゴヌクレオチドを用いた)。PCR反応は、Fidelity (GIBCO) および PCRx Enhancer System (GIBCO) を用いて、95℃, 2 分の変性後、95℃, 30 秒〜55℃, 30 秒〜68℃, 1 分を35 サイクル行った。変異の入ったPCR産物をBglIIとAatIIで切断し、得られた断片をpKF3/seg(2+3+4)5-2のBglII-AatIIサイトと組換え、pKF3/seg(2+3+4)5-2 Y652AおよびpKF3/seg(2+3+4)5-2 F656Aを構築した。次に、構築したpKF3/seg(2+3+4)5-2 Y652AおよびpKF3/seg(2+3+4)5-2 F656AをBstPIとEcoRIで切断して得られた各断片を、哺乳類細胞発現用ベクターpcDNA3.1にHERG全長をコードするDNAをクローニングしたpcDNA3.1/HERGのBstPI−EcoRIサイトと組換え、pcDNA3.1/HERG Y652AおよびpcDNA3.1/HERG F656Aを作製した(図2)。シークエンスにより変異が導入されていることを確認した。
1-3. 野生型タンデムダイマーTDWTの作製
野生型タンデムダイマーHERG(TDWT)は、N末側のHERGにおいて終止コドンをなくした後、制限酵素EcoRI認識切断配列(GAATTC)の6bpを介してC末側のHERGの開始コドンとを繋ぐことにより構築した。まず、pKF3/seg(2+3+4)5-2をテンプレートとして終止コドンをなくすように設計したプライマー(配列番号10)を用いてPCRを行った(フォーワードプライマーとして配列番号11のオリゴヌクレオチドを用いた)。PCR反応は、Fidelity (GIBCO) および PCRx Enhancer System (GIBCO) を用いて95℃, 2 分の変性後、95℃, 30 秒〜55℃, 30 秒〜68℃, 1 分を35 サイクル行った。得られたPCR産物をNaeIとEcoRIで切断し、得られた断片をpKF3/seg(2+3+4)5-2のNaeI−EcoRIサイトと組換え、pKF3/seg(2+3+4)5-2・stop codon ×を構築した。さらにpKF3/seg(2+3+4)5-2・stop codon ×をNaeIとEcoRIで切断した断片をpcDNA3.1/HERGのBstPI−EcoRIサイトと組換え、pcDNA3.1/HERG・stop codon×を作成した(図3)。次に、pcDNA3.1/HERGをテンプレートとして、開始コドンの上流にあるNheIサイトがEcoRIに換わるように設計したプライマー(配列番号12)を用いてPCRを行った(リバースプライマーとして配列番号13のオリゴヌクレオチドを用いた)。得られたPCR産物をEcoRIとBstPIで切断し、得られた断片をpKF3のEcRI−BstPIサイトと組換え、pKF3/EcoRI−BstPIを構築した。さらにpcDNA3.1/HERGをEcoRIとNotIで切断した断片をpKF3/EcoRI−BstPIのEcoRI−NotIサイトと組換え、pKF3/HERGを構築した。最終段階としてpKF3/HERGをEcoRIで切断し、得られた断片をpcDNA3.1/HERG・stop codon ×のEcoRIサイトに導入し、pcDNA3.1/dimer HERGを作成した(図3)。シークエンスにより変異が導入されていることを確認した。
1-4. タンデムダイマーHERG変異体TDY652AおよびTDF656Aの作製
次に、タンデムダイマーHERG変異体(TDY652AおよびTDF656A)の構築を行った。まず、上記1-2.で構築したpcDNA3.1/HERG Y652AおよびpcDNA3.1/HERG F656AをそれぞれBstPIとNotIで切断し、得られた断片をpKF3/HERGのBstPI−NotIサイトと組換え、pKF3/HERG Y652AおよびpKF3/HERG F656Aを構築した。次に、pKF3/HERG Y652AおよびpKF3/HERG F656AをEcoRIで切断し、得られた断片をそれぞれpcDNA3.1/HERG・stop codon ×のEcoRIサイトに導入し、pcDNA3.1/tandem dimer HERG Y652AおよびpcDNA3.1/tandem dimer HERG F656Aを構築した(図4)。
1-5. タンデムダイマーHERG二重変異体DMNCおよびDMCCの作製
さらに詳しい結合様式を解析するため、HERGタンデムダイマー二重変異体を作製した。ダイマーHERGのC末側サブユニットのY652とN末側サブユニットのF656を同時にアラニンに置換したダイマーHERG二重変異体(DMNC)の作成手順は次の通りである。pcDNA3.1/HERG Y652AをSfiIで切断し、得られた断片をpcDNA3.1/HERG stop codon ×のSfiI−SfiIサイトと組換え、pcDNA3.1/HERG Y652A stop codon ×を構築した。次に、pKF3/HERG F656AをEcoRIで切断し、得られた断片をpcDNA3.1/HERG Y652A stop codon ×のEcoRIサイトに導入し、pcDNA3.1/dimmer HERG N末Y652A・C末F656Aを構築した(図5A)。ダイマーHERGのC末側サブユニットのY652とF656を同時にアラニンに置換したダイマーHERG二重変異体DMCCの構築は次の手順で行った。Y652A・F656Aの二重変異導入はpKF3/seg(2+3+4)5-2をテンプレートとしてPCRを用いて行った(フォーワードプライマーとして配列番号14のオリゴヌクレオチド、リバースプライマーとして配列番号9のオリゴヌクレオチドを用いた)。PCR反応は、Fidelity (GIBCO) および PCRx Enhancer System (GIBCO) を用いて95℃, 2 分の変性後、95℃, 30 秒〜55℃, 30 秒〜68℃, 1 分を35 サイクル行った。変異の入ったPCR産物をBglIIとAatIIで切断し、得られた断片をpKF3/seg(2+3+4)5-2のBglII−AatIIサイトと組換え、pKF3/seg(2+3+4)5-2-C末Y652A・F656Aを構築した。次にpKF3/seg(2+3+4)5-2-C末Y652A・F656AをSfiIで切断し、得られた断片をpKF3/HERGのSfiI−SfiIサイトと組換え、pKF3/HERG-C末Y652A・F656Aを構築した。さらにpKF3/HERG-C末Y652A・F656AをEcoRIで切断し、得られた断片をpcDNA3.1/HERG stop codon ×のEcoRIサイトに導入し、pcDNA3.1/dimmer HERG C末Y652A・F656Aを構築した(図5B)。
実施例2 HERG 安定発現細胞株の樹立
IKr チャネルの機構あるいは薬剤によるIKrチャネルの阻害機構の解明を目的として、実施例1で作製した各種HERG変異体をHEK293細胞の膜上に発現させ、HERG安定発現株の樹立を試みた。
2-1. 材料と方法
2-1-1)材料
MEM非必須アミノ酸溶液、ピルビン酸ナトリウム溶液、ジェネティシン(G418硫酸塩)溶液、MEM培地、LipofectAMINE 2000 Reagent、OPTI-MEM I Reduced-Serum Mediumは、GIBCOの製品を用いた。牛胎児血清(FBS;Trau Scientific Ltd., Melbourne, Australia)は、56℃, 30分間非働化処理したものを使用した。その他の試薬は和光純薬の製品を用いた。
2-1-2)細胞
ヒト腎臓由来細胞株HEK293(ATCC# CRL-1573)および野生型モノマーHERG発現細胞としてHERG.T.HEK(Wisconsin ALUMNI Research Fondation)を用いた。HEK293は、10% FBS、1 mM MEM非必須アミノ酸、1 mM ピルビン酸ナトリウム、2mM L-グルタミンを含むMEM培地を用いて、37℃, 5% CO2存在下で維持・継代した。HERG.T.HEKは、10% FBS、1 mM MEM非必須アミノ酸、1 mM ピルビン酸ナトリウム、2mM L-グルタミン、500 μg/ml ジェネティシンを含むMEM培地を用いて、37℃, 5% CO2存在下で維持・継代した。
2-1-3)トランスフェクション
12 well培養プレート(Falcon, Franklin Lakes, NJ)に、HEK293(4x105cells)を培養用培地を用いて播種した。一日培養後、LipofectAMINE 2000 Reagentを用いて、HERG変異体を挿入したpcDNA3.1(+)各2 μgをトランスフェクトした。LipofectAMINE 2000 ReagentおよびDNAの希釈には、OPTI-MEM I Reduced-Serum Mediumを用いた。一日培養後、細胞をプレートから剥がして回収し、100 mm培養用ディッシュ(Falcon)に播き直した。さらに一日培養した後、選択培地に交換した。ネオマイシン耐性株の選択には、500 μg/ml ジェネティシンを含む選択培地を用いた。選択培地を週に2回交換しながら1-2週間培養した。96well plate (Nalgen Nunc International, Rochester, NY) に、0.5 cells/well となるように播種し、薬剤耐性株をクローニングした。
2-1-4)パッチクランプによるHERG 電流の測定
80〜90% コンフルエントの細胞をトリプシン処理により回収し、IVF dish(Corning, NY, USA)に播いた。2〜3時間後、細胞外液(137mM NaCl、4mM KCl、1mM MgCl2、1.8mM CaCl2、10mM HEPES、11mM dextrose:pH7.4 )で潅流しながら、電極内液(7mM NaCl、130mM KCl、1mM MgCl2、5mM HEPES、5mM EGTA、5mM ATP-Na:pH7.2)を満たしたガラス電極(抵抗値1〜2 MΩ)を細胞に接着させ、パッチクランプアンプ(AXOPATCH 200B、Axopatch-instruments, Foster City, CA)を用いてwhole-cell configurationの形成並びに電位固定プロトコールによる刺激を行った(holding potential -75mV、一次電圧10mV:0.5sec、二次電圧-40mV:0.5sec、刺激頻度0.067Hz)。F656A変異体についてはholding potential -80mV、一次電圧0mV:5sec、二次電圧-120mV:0.25sec、刺激頻度0.067Hzで刺激を行った。予備刺激を与え、電流波形が安定した時点でHERG電流値(peak tail current)を計測した。1クローンについて最低3細胞について測定を行った。
2-2.HEK293を親株とするHERG 安定発現株の樹立
ネオマイシン耐性を示す株についてパッチクランプ法により、HERG電流の確認を行った。表1に示した500 pA以上のHERG電流が確認されたクローンをHERG発現株として保存した。F656A変異体については-500 pA以下のクローンを選択した。
Figure 0004828896
実施例3 HERG変異体発現系(アフリカツメガエル卵母細胞)の作製
実施例1で構築した各cDNAを、1.5 U/μgのHind III(TAKARA) を用いた制限酵素反応 (37℃, over night) によりリニアライズし、これらをテンプレートとしてin vitro転写キット (mMessage mMachine ULTRA, Ambion) を用いてインジェクション用のmRNAを得た。mRNAは、DPEC処理水 (nakalai tesque) に終濃度25〜400 ng/μLになるように溶解し、これらの46nLを、濾胞細胞除去処理 [コラゲナーゼType I (SIGMA) 1.5 mg/mLを含む、Ca-free Barth’s solution (88 mM NaCl, 1 mM KCl, 2.4 mM NaHCO3, 0.82 mM MgSO4, 5 mM HEPES, pH7.6) で、18℃, 1.5時間処理] を行ったアフリカツメガエル卵母細胞 (stages V〜VI) に、マイクロインジェクター (Nanoject, Drummond) を用いて注入した。mRNA注入を行った卵母細胞は、50 μg/mLのゲンタマイシン (GIBCO) を含むBarth’s solution [88 mM NaCl, 1 mM KCl, 2.4 mM NaHCO3, 0.82 mM MgSO4, 0.3mM Ca(NO3)2, 0.41mM CaCl2, 5 mM HEPES, pH7.6] に入れ、電気生理学的実験に用いるまで、18℃に維持したインキュベーター (Incubate Box M-250, TAITEC) で培養した。
3-1. 電気生理学的実験
実験は、インジェクション後1〜6日の卵母細胞を用いて、Two-electrode voltage clamp法により行った。K+電流は室温下 (22〜23℃) でDagan CA1 amplifier (Dagan corporation) を用いて測定した。cut-off frequencyは1KHz、sampling frequencyは5KHzで記録した。電位刺激プロトコール及びデータ取得はA/Dコンバーター (Digidata 1200, Axon instruments) を介してソフトウェア (pCLMP9, Axon instruments) を用いて行った。ガラス電極は3 M KClを満たし、抵抗値0.5〜1 MΩのものを用いた。Bath solutionの組成は4 mM KCl, 96 mM N-methyl-D-glucamine Cl, 1.8mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 5 mM HEPESとし、pHは7.4に調整した。Bathはインフュージョンポンプ (TE-331, テルモ) を用いて1 mL/minの速度で実験中を通して潅流した。
3-2. データ処理
阻害定数(Ki)は、個々の細胞の薬物濃度と電流阻害の関係について、式Idrug/Icont = {Ki(1−b)/Ki+x}+b(但し、Idrugは当該濃度での電流値、Icontは薬物非添加時の電流値、Kiは阻害定数、xは薬物濃度、bは定数)へのfittingからKiを決定し、それらの平均±SDを求めた。さらに、阻害の減弱の程度について、次のようなグレードで順位付けを行なった。即ち、各変異体について、それぞれ対応する野生型(モノマーあるいはタンデムダイマー型)のKi値と比べ、+: 2〜4倍程度減弱、++: 同4〜8倍程度、+++: 同8〜16倍程度、++++: 16〜32倍程度、+++++: 32倍以上、−: <2倍とした。Kiの算出にはソフトウェア (Mathematica, Wolfram Research Inc.) を用いた。
3-3. 薬物
Cisapride (Accurate chemical) はDimethyl sulfoxide (和光純薬) に溶解して1及び10 mM溶液 (stock solution) を調製し、-20℃以下で凍結保存した。使用時は室温で溶解させ、細胞への曝露直前に所定量をbath solutionと混合し、所定の曝露濃度溶液を調製した。薬物曝露は潅流液ラインの切換えによって行った。
HERGチャネルの構造変化とチャネルシサプリドの高親和状態
図6に示す電位刺激プロトコール (Envelope command) を用いて、薬物の添加前及び各濃度において電流波形を取得し、阻害の時間経過観察並びに電流阻害率の算出を行った。なお、薬物添加時は、別プロトコール(holding potential: -80 mV; 一次刺激: +20 mV, 3455 msec; 二次刺激: -50 mV, 3000 msec; 刺激頻度: 0.05Hz)により、阻害が安定した後にEnvelope commandを実施した。図7のように、野生型において脱分極電流及びtail電流(ピーク値)は、共に脱分極時間の長さに依存して減少した。ほぼ阻害が定常と考えられる+20mVの脱分極刺激7秒後では、HERGチャネルの大部分は不活性化状態にあると考えられ、また、tail電流発生の背景には不活性化状態からの回復という構造変化過程があることから、シサプリドは不活性化状態構造もしくはそれに近い状態で高親和状態となると考えられた。
シサプリドの結合様式
脱分極時間7秒でのtail電流ピーク値をもとに野生型及び各変異体におけるシサプリドの阻害定数を算出し、各変異体における阻害の減弱程度を調べた(表2)。この結果からシサプリドの結合様式について次のことが考えられる。1)Y652あるいはF656を全て取り除いた変異体(MNY652A, MNF656A)では、いずれも野生型と比較して阻害が減弱した。従って、Y652及びF656の両方が結合に関与する。2)TDY652A(隣り合うサブユニットのY652が利用できない変異体)において、野生型と比較して阻害の減弱がみられた。従って、隣り合うサブユニットの2個のY652が結合に関与する。3)TDF656Aでは野生型と比較して阻害率の減弱はなかった。従って、F656は1つあるいは対面の2個が結合に関与する。これをふまえた、阻害程度の違いを結合残基の違いで説明可能な結合様式の例(隣り合うサブユニットの2個のY652及び1個のF656が関与する)を図8に示す。なお、図8中のTDY652Aについて、この変異体ではDMCCとDMNCの間の阻害率を示したが、それはDMCC及びDMNC両者の結合様式を取ることが可能なためと考えられる。
Figure 0004828896
各残基の結合への貢献度
前述の各変異体における阻害減弱の程度について、特定の変異体間における差に着目することにより、残基個々の結合への貢献度を把握できる。即ち、図8において、DMCC、DMNC及びMNF656Aは結合残基のいずれか一つが除去されている。DMCCとDMNCの比較では、DMNCの方がより減弱した。従ってDMNCで除去されたY652(Y1)の方が、DMCCで除去されているY652(Y2)よりも結合における貢献度のが大きい(Y1>Y2)。また、MNF656AはDMCCより減弱した。F656(F1)の除去がY1の除去よりも影響が大きいことから、貢献度はF1>Y1と考えられる。以上まとめると、F1、Y1及びY2の貢献度の順は、F1>Y1>Y2であることが示唆された。
実施例4
HERGチャネルの結晶構造は未知であるが、類縁カリウムチャネルの結晶構造が既知であるので、ホモロジーモデリングが可能である。HERGチャネルの状態変化を反映するために、チャネル内孔表面を形成するS6へリックスの配向が異なるKvAPおよびMthKの結晶構造を鋳型に用い、2種類の立体構造モデルを構築した。鋳型構造は4量体構造として、RCSB Protein Data Bank(URL: http://www.rcsb.org/pdb/)から入手(PDBID: KvAP:1ORQ, MthK:1LNQ)した。配列比較はClustalW1.6(Thompson, JD et al. (1994) Nucleic Acids Research, 22:4673-4680)を用いて行い、鋳型の立体構造に照らしてマニュアルで修正した。この結果を用い、SCWRL2.9(Bower, MJ et al. (1997) J. Mol. Biol. 267:1268-1282.)を使ってホモロジーモデリングを行った。
構築した2種類のHERG立体構造モデルを用い、ドッキング法によりシサプリドの結合様式を複数発生させた。ドッキングには、Gold2.1.2TM (Jones G et al.(1995) J. Mol. Biol. 245, 43-53)を使用した。これらより実施例3の実験結果を満たす薬物阻害様式を目視により選択した。目視作業にはInsightII TM(Accelrys Inc., San Diego, California, U.S.A)を使用した。その結果、図9に示す通り、HERGのY1、Y2およびF1(図9左)にはそれぞれシサプリドのB環、A環およびC環が相互作用することが示された(図9中)。この場合、化合物の骨格を変換せずに構造修飾によって阻害を回避することは困難と予測される。阻害回避例としては、例えば、モサプリド(図9右)が挙げられる。
本発明のタンデムダイマー変異蛋白質を用いれば、HERGチャネルの隣り合うサブユニットの一方にのみ変異を導入したり、隣り合うサブユニット同士で異なるアミノ酸に変異を導入したりすることができるので、薬物が結合するアミノ酸の種類だけでなく、それらのアミノ酸の位置関係や各アミノ酸の結合への貢献をも予測することが可能である。従って、本発明は、薬物によるHERGチャネルの阻害を回避するための、該薬物の構造修飾位置を予測するのにきわめて有用である。
本発明において作製された種々のモノマーおよびタンデムダイマーHERG変異体を模式的に示した図である。WTは野生型、Y652Aは652位のチロシンがアラニンで置換されていること、F656Aは656位のフェニルアラニンがアラニンで置換されていることを示す。 モノマーHERG変異体MNY652AおよびMNF656AをコードするDNAを含む動物細胞発現用ベクターの構築図である。 野生型タンデムダイマーHERGをコードするDNAを含む動物細胞用発現ベクターの構築図である。 タンデムダイマーHERG変異体TDY652AおよびTDF656AをコードするDNAを含む動物細胞発現用ベクターの構築図である。 N末側サブユニットのY652とC末側サブユニットのF656がアラニンで置換されたタンデムダイマーHERG二重変異体DMNCをコードするDNAを含む動物細胞発現用ベクター(A)およびC末側サブユニットのY652およびF656がアラニンで置換されたタンデムダイマーHERG二重変異体DMCCをコードするDNAを含む動物細胞発現用ベクター(B)の構築図である。 HERG変異体を発現するアフリカツメガエル卵母細胞における薬物によるHERG阻害を調べるためのHERG電流阻害試験に用いた電位プロトコールを示す図である。 モノマー(MNWT)およびタンデムダイマー野生型(TDWT)HERGを発現するアフリカツメガエル卵母細胞において、電位プロトコールで誘発されたHERG電流(Control)に及ぼすシサプリドの影響を示す図である。 各種HERG変異体に対する阻害定数(Ki値)に基づいて、シサプリドのHERGに対する結合様式を予測した模式図である。 シサプリドと相互作用するHERGチャネルのアミノ酸残基情報(左)、ドッキングによるシサプリドの阻害様式予測(中)および阻害回避の例としてのモサプリドの構造式(右)を示す図である。

Claims (3)

  1. 以下の工程を含む、野生型の心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルへの試験化合物の結合様式の予測方法:
    (1)カリウムイオンの存在下において、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む蛋白質のタンデムダイマー型蛋白質を発現する細胞および配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む蛋白質のタンデムダイマー型蛋白質であって、該タンデムダイマーを構成する2つの蛋白質の一方または両方が、配列番号2で示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号652で示されるチロシンおよび/またはアミノ酸番号656で示されるフェニルアラニンが他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含む蛋白質である、タンデムダイマー型蛋白質を発現する細胞を試験化合物と接触させる工程、
    (2)各細胞の膜における心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルを介したカリウムイオン輸送に起因する電流値を測定し、該測定値を用いてカリウムイオン輸送に係る該試験化合物の阻害活性に関する阻害定数を算出する工程、および
    (3)各細胞の阻害定数を比較して、試験化合物の配列番号2で示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号652で示されるチロシンおよび/またはアミノ酸番号656で示されるフェニルアラニンへの結合様式を予測する工程。
  2. 各細胞がいずれも哺乳動物細胞またはカエル卵母細胞である請求項1記載の予測方法。
  3. 野生型の心筋細胞遅延整流カリウムイオンチャネルの立体構造モデル、および請求項1記載の方法を用いることを特徴とする、試験化合物の該チャネルへの結合様式の予測方法。
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