JP4828696B2 - 熱電モジュール用基板およびそれを用いた熱電モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギと電気エネルギとを相互に変換する熱電モジュールに関する技術であり、冷却・昇温特性の向上および高出力化を図り、かつ、耐熱サイクル特性を向上させた熱電モジュール用基板およびそれを用いた熱電モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱電モジュールは、p型熱電素子とn型熱電素子とが電気的に直列となるように接合された熱電素子の性質を利用したものであり、熱エネルギを電気エネルギに変換し、または、電気エネルギを熱エネルギに変換する機能を有する独立した部品である。
【0003】
詳述すると、熱電素子は、p型熱電素子とn型熱電素子との接合部間に温度差を与えると電位差が発生するというゼーベック効果と、p型熱電素子とn型熱電素子との接合部間に電流を流すと、その電流の向きに応じて吸熱または発熱するペルチェ効果とを有し、このような効果を利用して、電気エネルギと熱エネルギとを相互に変換する。このため熱電モジュールは、例えば、廃熱を利用して発電を行う熱電発電用装置,半導体プロセスにおける恒温装置,エレクトロデバイスを冷却する熱電冷却装置などの各種装置に搭載され、実用化が進められている。
【0004】
上記熱電モジュールは、絶縁基板を土台として、この絶縁基板の少なくとも一方の面に電極板(金属板)を接合しており、さらに、この電極板に熱電素子を接続した構成を有する。
【0005】
上述したように、熱電素子は、p型熱電素子とn型熱電素子とを各1個ずつ直列に接続したものを構成し、これを最小単位とするものである。そして、最小単位とする熱電素子の搭載数に応じて、熱電モジュールの冷却・昇温特性または電圧特性が決定される。従って、熱電モジュールの冷却・昇温特性の向上または高出力化を図るために、絶縁基板上に複数個の熱電素子を搭載する必要があり、これに伴い、当然、熱電素子を搭載する絶縁基板の基板面積を大面積化することが必須であった。
【0006】
従来、このような絶縁基板として、比較的優れた熱伝導率および機械的強度を確保できるセラミック焼結体が適用されており、例えば、アルミナ(Al2O3)焼結体,窒化アルミニウム(AlN)焼結体,ベアリリア(BeO)焼結体,コージェライト(2MgO・Al2O3・SiO2)焼結体などのセラミック焼結体が適用されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したセラミック基板では、十分な素体強度を得られないことから、セラミック基板面積を大面積化することが困難であり、この結果、熱電モジュールの搭載数が制限され、近年要求される熱電モジュールの冷却・昇温特性の向上および高出力化を図ることが困難であった。実際、熱電素子を搭載するセラミック基板面のサイズは5cm角が上限となっており、搭載できる熱電素子数は限られていた。
【0008】
このように従来のセラミックス焼結体は、強度特性を満足するものではないことから、1mmを超える厚肉のセラミック基板として基板強度を高め、セラミック基板の基板面積を大面積化する試みがなされている。しかし、厚肉のセラミックス基板を適用して熱電モジュールを構成すると、熱電モジュール自体が大型化してしまうという問題を有していた。
【0009】
また、熱電モジュールは、多数の熱電素子を基板上に設けることから通常の半導体素子よりも熱サイクル条件が厳しい条件下により使用される。このため、セラミック基板の基板面積を大面積化し、このセラミック基板上に複数個の金属板を接合すると、セラミック基板と金属板との熱膨張差に起因してクラックが発生してしまう。この熱電モジュールに冷却・昇温の熱サイクルを繰り返すことにより、最終的には金属板が剥離してしまい、その結果、熱電モジュールの信頼性が低下してしまうという問題を有していた。
【0010】
特に、セラミック基板上に金属板を複数個配置する際、隣接する金属板の距離を1mm以下に近づけて配置すると、金属板とセラミック基板との熱膨張差の影響が顕著となり、耐熱サイクル特性が低下してしまうという問題を有していた。
【0011】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、冷却・昇温特性の向上および高出力化を図り、かつ、耐熱サイクル特性を向上させた高い信頼性を有する熱電モジュール用基板およびそれを用いた熱電モジュールを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を解決すべく種々研究した結果、セラミック基板を素体曲げ強度の高い窒化けい素焼結体から形成することにより、窒化けい素基板面のサイズを5cm角以上と大型化することができ、窒化けい素基板上に複数個の金属板を接合して、搭載する熱電素子の数を増加させることにより、熱電モジュールの冷却・昇温特性の向上および高出力化を図れることを見い出した。また、窒化けい素焼結体は、従来のセラミック焼結体に比べて熱膨張係数が低い材料であることから、熱電モジュールに冷却・昇温の熱サイクルを繰り返した際においても、金属板とセラミック基板との熱膨張差に起因する耐熱サイクル特性の低下を防止でき、耐熱サイクル特性を格段に向上させることができることを見い出し、本発明の完成に至ったものである。
【0013】
本発明の熱電モジュール用基板は、窒化けい素基板の少なくとも一方の面に30個以上のp型熱電素子とn型熱電素子を搭載するための金属板を接合した熱電モジュール用基板であって、前記窒化けい素基板は、熱伝導率が65W/m・K以上、3点曲げ強度が600MPa以上、板厚が0.2〜1.0mmであり、前記金属板の前記窒化けい素基板との接合面の表面積が25mm 2 以下であり、前記金属板と金属板との間隔が1mm以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明のように、窒化けい素基板の少なくとも一方の面に30個以上の金属板を接合することにより、搭載できる熱電素子数を増加させ、これにより、熱電モジュールの冷却・昇温特性の向上および高出力化を図ることができる。
【0015】
また、上記熱電モジュールにおいて、金属板と金属板との間隔が1mm以下であることが望ましい。このように金属板と金属板との間隔を1mm以下として配置した場合であっても、本発明においては、優れた放熱特性を有する窒化けい素焼結体を基板として適用しているため、熱膨張差に起因する窒化けい素基板と金属板との剥離を防止し、その結果、熱電モジュールの耐熱サイクル特性の低下を防止することができる。なお、金属板と金属板との間隔が0.3mm未満となると耐熱サイクル特性が低下することから、望ましくは0.3mm以上1mm以下の範囲とすると良い。
【0016】
また、上記熱電モジュールにおいて、金属板の面積(例えば、金属板が長方形の場合は、縦×横の積)が25mm2以下であることが望ましい。このように金属板の面積を25mm2以下とすることにより、窒化けい素基板と金属板との接合面積を低減することにより、窒化けい素基板と金属板との剥離を防止して、耐熱サイクル特性を向上させた熱電モジュールとすることができる。
【0017】
また、上記の熱電モジュールにおいて、窒化けい素基板の金属板と接合する面の表面積を1600mm2以上とすることが望ましい(例えば、窒化けい素基板が長方形の場合は、縦×横の積で求める)。このように窒化けい素基板を大型化することにより、窒化けい素基板上に接合する金属板を増加させ、これにより熱電素子の搭載数を増やし、その結果、熱電モジュールの冷却・昇温特性の向上および高出力化を図ることができる。
【0018】
上記熱電モジュールにおいて、窒化けい素基板の板厚が0.2〜1.0mmであることが望ましい。この理由は、板厚が1.0mmを超えると熱抵抗値が高くなり放熱性が低下し、その結果、耐熱サイクル特性が低下しまうためであり、一方、板厚が0.2mm未満であると、窒化けい素基板が薄肉となりすぎることから耐久性が低下して機械的強度を得られないためであり、いずれも熱電モジュールの信頼性が低下するためである。
【0019】
また、このような熱電モジュールにおいて、窒化けい素基板の熱伝導率が65W/m・K以上であることが望ましい。この理由は、窒化けい素基板の熱伝導率が、65W/m・K未満であると、窒化けい素基板の熱抵抗が増加してしまい、耐熱サイクル特性が低下してしまうからである。さらに、窒化けい素基板の熱伝導率を85W/mK以上とすることが望ましい。このような高熱伝導性を具備する窒化けい素焼結体としては、例えば、窒化けい素焼結体中の粒界相を全粒界相に対して20%以上結晶化したものが挙げられる。粒界相を結晶化するためには、焼結後の炉冷速度を100℃/h以下と除冷することが効果的である。また、同様にAl,Li,Na,K,Fe,Mn,Bの不純物陽イオンを合計で0.2質量%以下に制御することも熱伝導率の向上に有効である。なお、本発明の熱電モジュール用基板は窒化けい素焼結体を使用することが特徴であるから、このような窒化けい素焼結体に限定されるものではない。
【0020】
また、上記熱電モジュールにおいて、窒化けい素基板の3点曲げ強度が600MPa以上であることが望ましい。このように窒化けい素基板の3点曲げ強度を600MPa以上として機械的強度を高めることにより高い信頼性を有する熱電モジュールとすることができる。
【0021】
上記熱電モジュールにおいて、金属板は、銅またはアルミニウムから選ばれた少なくとも1種の材料を主成分とすることが望ましい。
【0022】
さらに、上記熱電モジュールにおいて、金属板の表面にNiメッキが施されていることが望ましい。
【0023】
また、上記熱電モジュールにおいて、Ti,Zr,Hf,AlおよびNbから選ばれた少なくとも1種の活性金属を含むろう材層を介して、前記窒化けい素基板上に金属板を接合していることが望ましい。このように活性金属を含むろう材層を介して、窒化けい素基板上に金属板を接合することにより両者を強固に接合することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱電モジュールについて、図1,図2および表1〜表3を用いて説明する。
【0025】
第1実施形態(表1,図1,図2)
実施例1〜実施例2,参考例1〜参考例2
本実施形態では、Si3N4基板上に金属板を接合し、この金属板に熱電素子を接続した熱電モジュールを作製し、この熱電モジュールの出力および冷却・昇温特性を試験して性能評価を行った。
【0026】
まず、酸素を1.3質量%、不純物陽イオン元素としてAl,Li,Na,K,Fe,Mn,Bを合計で、0.10質量%含有し、α相型Si3N497%を含む平均粒径0.40μmのSi3N4原料粉末に対して、焼結助剤として平均粒径0.7μmのY2O3粉末5質量%、平均粒径0.5μmのMgO粉末1.5質量%を添加し、エチルアルコール中で72時間湿式混合した後、乾燥して原料粉末混合体を調整した。
【0027】
次に、この原料粉末混合体に有機バインダを所定量添加して均一に混合した後、120MPaの成形圧力でプレス成形して成形体とした。
【0028】
この成形体を500℃の空気気流中において2時間脱脂した後、脱脂体を窒素ガス雰囲気中、7.5気圧下、1800℃において8時間保持し、緻密化焼結を実施した後、焼結炉に付設した加熱装置への通電量を制御して焼結炉内温度が1500℃に降下するまでの間に冷却速度を100℃/h以下として除冷し、粒界相の結晶化率20%以上のSi3N4焼結体(熱伝導率88W/m・K、3点曲げ強度700MPa)から形成される縦55mm,横55mm,厚さ0.635mmのSi3N4基板とした。
【0029】
このSi3N4基板上に質量比でAg:Cu:In:Ti=61.9:24.1:10:4の活性金属ろう材ペーストをスクリーン印刷し、乾燥後のペースト上に、縦3mm,横5mm,厚さ0.3mmとしたCu板を、各Cu板の間隔を0.6mmとして、縦に7枚、横に6枚ずつ配置し、Si3N4基板上に合計して42個配置した。その後、1×10−4Torr以下の真空中において、800℃、10分間接合して熱電モジュール用Si3N4基板とした。
【0030】
さらに、この熱電モジュール用Si3N4基板のCu板にp型熱電素子とn型熱電素子とを各1個ずつ接続した熱電素子を接続して熱電モジュールを形成した。この熱電モジュールを実施例とした。この熱電モジュールを上面から見た図を図1とし、図1に示すA−A´線の断面図を図2に示す。なお、図2のようにSi3N4基板の片面のみにCu板を介して熱電素子を設けたものを実施例1、図3のようにSi3N4基板の両面に対称にCu板を介して熱電素子を設けたものを実施例2とする。
【0031】
図1から図3までに示すように、Si3N4基板1上にCu板2を接合しており、さらに、このCu板2に熱電素子3を接続している。
【0032】
また、上述した実施例と同様に、縦55mm,横55mm,厚さ0.635mmのSi3N4基板を作製し、このSi3N4基板上に質量比でAg:Cu:In:Ti=61.9:24.1:10:4の活性金属ろう材ペーストをスクリーン印刷し、乾燥後のペースト上に、縦3mm,横5mm,厚さ0.3mmとしたCu板を、各Cu板の間隔を2mmとして、縦に4枚、横に5枚ずつ配置し、Si3N4基板上に合計して20個配置した。その後、1×10−4Torr以下の真空中において、800℃、10分間接合して熱電モジュール用Si3N4基板とした。そして、上述した実施例と同様に発電素子を接続して、発電モジュールを形成した。なお、片面のみにCu板を介して熱電素子を設けたものを参考例1、両面にCu板を介して熱電素子を設けたものを参考例2とした。
【0033】
上記実施例および参考例の熱電モジュールについて、発電素子の出力および冷却・昇温特性を調べたところ、熱電素子を多く搭載した実施例1および実施例2の方が、参考例1および参考例2より優れた特性を示した。
【0034】
次に、実施例1〜実施例2、参考例1〜参考例2の熱電素子モジュール用基板に対し、耐熱サイクル特性評価(TCT試験)を行った。耐熱サイクル試験は、−40℃×30min→R.T.(室温)×10min→125℃×30min→R.T.(室温)×10minを1サイクルとするTCT試験を実施し、200サイクル後におけるクラックの有無を健全指数ηとして評価したものである。健全指数ηは、100%は「TCT試験後においてクラックの発生なし」、0%は「TCT試験後において全面的にクラックが発生した」ことを示すものである。健全指数ηの測定は、TCT試験後の熱電モジュール用基板のCu板および活性金属ろう材層をエッチングにより除去し、各Si3N4基板について蛍光探傷試験(PT)を実施してクラックの有無を測定した。また、健全指数ηは、次のような数式にしたがって算出した。
【0035】
【数1】
健全指数η=(1−Σd/D)×100(%)
ここで、Dは、熱電モジュール用基板の接合部の長手方向において、クラックの発生し得るCu板縁部の経路の全長であり、Σdは上記経路上に発生した各クラックの長さ(d1、d2、d3、…dn)の総和を示す。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、本実施形態にかかる熱電モジュール用基板は、Cu板の数が一つの面に30個以上接合した場合であっても、両面に設けた場合であってもクラックの発生は確認されなかった。これは参考例1および参考例2のようにCu板の数が少なく、Cu板の間隔を空けたものと同等の特性を示すものであり、熱電モジュール用基板として窒化けい素焼結体を使用することにより、間隔を詰めて金属板を多数接続することが可能であることを示すものである。
【0038】
従って、本実施形態によれば、Si3N4焼結体から形成した大型化したSi3N4基板を作製し、このSi3N4基板上に30個以上の金属板を接合して、熱電素子の搭載数を増やすことにより、熱電モジュールの高出力化および優れた冷却・昇温特性を得られる。
【0039】
第2実施形態(表2,表3)
本実施形態においては、熱電素子を搭載するための熱電モジュール用セラミック基板を各種作製し、この熱電モジュール用セラミック基板の3点曲げ強度特性および耐熱サイクル特性を評価した。
【0040】
実施例3〜実施例8(表2)
まず、第1実施形態に示す製造方法により、以下に示す表2の基板表面サイズ,板厚,熱伝導率を有するSi3N4焼結体から形成されるSi3N4基板を作製した。これを実施例3〜実施例8とした。なお、実施例3〜実施例8のいずれもSi3N4基板の片面のみに金属板を接合したものである。
【0041】
次に、実施例3〜実施例8に示すSi3N4基板上に活性金属接合法によりCu板を接合して熱電モジュール用Si3N4基板とした。なお、活性金属接合法の製造方法は、第1実施形態に示す製造方法と同様とした。
【0042】
具体的には、縦3mm,横5mm,厚さ0.3mmとしたCu板を縦に6枚、横に5枚ずつ配置し、Si3N4基板上に合計して30個配置したものを実施例3とした。また、縦3mm,横5mm,厚さ0.3mmとしたCu板を、各Cu板の間隔を0.6mmとして、縦に10枚、横に10枚ずつ配置し、Si3N4基板上に合計して100個配置したものを実施例4,実施例5とした。
【0043】
また、実施例6から実施例8までは、直接接合法を用いて、以下に示すように熱電モジュール用Si3N4基板を作製した。
【0044】
実施例6では、表2に示す基板表面のサイズ,板厚,熱伝導率のSi3N4基板を用い、このSi3N4基板上に厚さ1〜3μmの酸化珪素(SiO2)膜を形成した。その後、縦3mm,横5mm,厚さ0.3mmとしたCu板を縦に6枚、横に5枚ずつ配置し、Si3N4基板上に合計して30個配置した。そして、1070〜1075℃、10〜20分間の加熱により接合を行い、熱電モジュール用Si3N4基板を形成した。なお、Cu板をAl板としたものを実施例7とした。
【0045】
また、実施例8では、表2に示す基板表面のサイズ,板厚,熱伝導率のSi3N4基板上に縦3mm,横5mm,厚さ0.3mmとしたCu板を縦に10枚、横に10枚ずつ配置し、Si3N4基板上に合計して100個配置し、実施例4と同様に熱伝モジュール用Si3N4基板を形成した。
【0046】
【表2】
【0047】
比較例1〜比較例10
本比較例では、セラミック基板として熱伝導率が20W/m・KであるAl2O3焼結体を適用したもの(比較例1)、熱伝導率が170W/m・KであるAlN焼結体を適用したもの(比較例2〜比較例4)、Si3N4基板の基板面積を変えたもの(比較例5,比較例6)、Si3N4基板の基板厚を変えたもの(比較例7,比較例8)、熱伝導率が60W/m・KであるSi3N4焼結体を適用したもの(比較例9)、Si3N4焼結体を用いて金属板をCoとしたもの(比較例10)とし、それぞれ熱電モジュール用Si3N4基板を形成した。
【0048】
上記実施例3〜実施例8および比較例1〜比較例10の熱電モジュール用Si3N4基板を用いて、3点曲げ強度および耐熱サイクル特性の評価試験を行った。
【0049】
3点曲げ強度は、JIS−R−1601に準ずる3点曲げ強度により測定した。また、耐熱サイクル特性は実施例1と同様の方法により測定した。その結果を表2に示す。
【0050】
表2に示すように、実施例3〜実施例8に示す熱電モジュール用窒化けい素基板は、3点曲げ強度がいずれも600MPa以上と高く、健全指数ηが100%となっており、強度特性および耐熱サイクル特性の両特性とも良好であった。一方、比較例1〜比較例4,比較例7〜比較例10は、3点曲げ強度または耐熱サイクル特性のいずれかの特性が低下していた。また、比較例5および比較例6では、3点曲げ強度および耐熱サイクル特性が優れていたが、基板面積が小さいことから金属板を接合できる数が少なく、その結果、熱電モジュールの高出力化または冷却特性の向上を図ることができなかった。なお、実施例3〜実施例8に示すSi3N4基板は、熱伝導率が65W/m・K以上と高く、3点曲げ強度を600MPa以上と高くできることから、Si3N4基板の板厚を薄肉形成することにより、熱電モジュールのコンパクト化を図ることができる。さらに、Si3N4基板を薄肉とすることにより、熱抵抗を低減し、その結果、熱電モジュールの高出力化および冷却・昇温特性の向上を図ることができる。
【0051】
実施例9〜実施例17
本実施例では、上述した実施例3,実施例5,実施例6と同様の製造方法を用いて、実施例9〜実施例17の熱電モジュール用Si3N4基板を作製した。
【0052】
実施例9〜実施例17は、表3に示すように、個々のCu板の基板への接合面の表面積を25mm2以下の範囲で種々変えたものであり、Si3N4基板の表面にCu板を30個以上接合し、Si3N4基板表面にCu板を接合する際に、Cu板とCu板との間隔を1mm以下としたものである。
【0053】
【表3】
【0054】
比較例11〜比較例15
本比較例では、実施例3,実施例5,実施例6と同様の製造方法を用いて、比較例11〜比較例15の熱電モジュール用Si3N4基板を作製した。
【0055】
比較例11から比較例13までは、Cu板の基板表面積を25mm2以上としたものであり、比較例14および比較例15は、Cu板とCu板との間隔を0.2mmとしてCu板をSi3N4基板上に接合して熱電モジュール用Si3N4基板を形成した。
【0056】
上記実施例9〜実施例117および比較例11〜比較例15の熱電モジュール用Si3N4基板を用いて、耐熱サイクル特性を評価した。なお、試験条件は、上述した耐熱サイクル特性の評価試験の条件と同様とした。その結果を表3に示す。
【0057】
表3に示すように、個々のCu板の基板への接合面の表面積を25mm2以下とした実施例9〜実施例17の熱電モジュール用Si3N4基板は、健全指数ηがいずれも100%を示しており、耐熱サイクル特性が良好であった。一方、個々のCu板の基板への接合面の表面積が25mm2を超えるCu板を用いた比較例11から比較例13までの熱電モジュール用Si3N4基板では、冷却・昇温の熱サイクル後にSi3N4基板とCu板との剥離が発生したために健全指数ηが低下しており、耐熱サイクル特性が低下した。また、Cu板とCu板との間隔を狭くした比較例14,比較例15の熱電モジュール用Si3N4基板は、Cu板とSi3N4基板との熱膨張差の影響が顕著となることから健全指数ηが低下しており、耐熱サイクル特性が低下していた。
【0058】
従って、本実施形態によれば、金属板の基板表面積を25mm2以下としてセラミック基板と金属板との剥離を防止して耐熱サイクル特性を向上させるとともに、金属板と金属板との間隔を規定して配置することにより、3点曲げ強度特性および耐熱サイクル特性の両特性の向上を図ることができる。これにより、高信頼性の熱電モジュールを得ることができる。
【0059】
また、素体曲げ強度の高い窒化けい素焼結体を適用することにより、Si3N4基板の板厚を0.32mm程度に薄肉とすることができるため、熱電モジュールのコンパクト化を図るとともに、基板厚さを薄肉とすることにより、セラミック基板の熱抵抗の低減により放熱性を向上させて、熱電モジュールの冷却・昇温特性の向上および高出力化を図ることができる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の熱電モジュール用基板によれば、Si3N4基板を大型化し、このSi3N4基板に接合する金属板を30個以上とし、搭載する発電素子数を増やすことにより、熱電モジュールの高出力化または冷却・昇温特性の向上を図るとともに、耐熱サイクル特性を向上させることにより、熱電モジュールの信頼性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を説明する図で、熱電モジュールを上方から見た上面図。
【図2】本発明の実施形態における、熱電モジュールの断面図。
【図3】本発明の実施形態における、熱電モジュールの断面図。
【符号の説明】
1 窒化けい素基板
2 金属板(Cu板)
3 熱電素子
Claims (6)
- 窒化けい素基板の少なくとも一方の面に30個以上のp型熱電素子とn型熱電素子を搭載するための金属板を接合した熱電モジュール用基板であって、
前記窒化けい素基板は、熱伝導率が65W/m・K以上、3点曲げ強度が600MPa以上、板厚が0.2〜1.0mmであり、
前記金属板の前記窒化けい素基板との接合面の表面積が25mm 2 以下であり、
前記金属板と金属板との間隔が1mm以下であることを特徴とする熱電モジュール用基板。 - 請求項1に記載の熱電モジュール用基板において、窒化けい素基板の金属板と接合する面の表面積が1600mm2以上であることを特徴とする熱電モジュール用基板。
- 請求項1または2に記載の熱電モジュール用基板において、金属板は、銅またはアルミニウムから選ばれた少なくとも1種の材料を主成分としたことを特徴とする熱電モジュール用基板。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の熱電モジュール用基板において、金属板の表面にNiメッキが施されていることを特徴とする熱電モジュール用基板。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の熱電モジュール用基板において、Ti,Zr,Hf,AlおよびNbから選ばれた少なくとも1種の活性金属を含むろう材層を介して、前記窒化けい素基板上に金属板を接合していることを特徴とする熱電モジュール用基板。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載の熱電モジュール用基板を用いたことを特徴とする熱電モジュール。
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