以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の原理は、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーの膜またはバルク成形体を形成してミクロ相分離させた後、1つのポリマー相を選択的に除去し、これによりナノメーターオーダーのパターンを有する多孔質膜または多孔質構造体を形成することにある。得られた多孔質膜は下地をエッチングしてパターンを転写するためのマスクとして用いることができる。また、多孔質構造体はそのまま各種の用途に用いることもできるし、他の多孔質構造体を形成するための鋳型として用いることもできる。本発明において、ミクロ相分離構造から1つのポリマー相を選択的に除去するには、2つのポリマー相の間での、ドライエッチング速度の差、エネルギー線に対する分解性の差、または熱分解性の差を利用する。いずれの方法でも、リソグラフィー技術を用いる必要がないので、スループットが高く、コストを低減することができる。
まず、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーについて説明する。ブロックコポリマーとは、複数のホモポリマー鎖がブロックとして結合した直鎖コポリマーをいう。ブロックコポリマーの代表例は、繰り返し単位Aを有するAポリマー鎖と繰り返し単位Bを有するBポリマー鎖とが末端どうしで結合した、−(AA・・AA)−(BB・・BB)−という構造を持つA−B型ジブロックコポリマーである。3種以上のポリマー鎖が結合したブロックコポリマーを用いてもよい。トリブロックコポリマーの場合、A−B−A型、B−A−B型、A−B−C型のいずれでもよい。1種または複数種のポリマー鎖が中心から放射状に延びたスター型のブロックコポリマーを用いてもよい。ブロックが4つ以上の(A−B)n型または(A−B−A)n型などのブロックコポリマーを用いてもよい。グラフトコポリマーは、あるポリマーの主鎖に、他のポリマー鎖が側鎖としてぶら下がった構造を有する。グラフトコポリマーでは、側鎖に数種類のポリマーをぶら下げることができる。また、A−B型、A−B−A型、B−A−B型などのブロックコポリマーにCポリマー鎖がぶら下がったようなブロックコポリマーとグラフトコポリマーの組み合わせでもよい。
ブロックコポリマーは、グラフトコポリマーと比較して、分子量分布の狭いポリマーを得やすく、組成比も制御しやすいので好ましい。なお、以下においてはブロックコポリマーについて説明することが多いが、ブロックコポリマーに関する記載はそのままグラフトコポリマーにも適用できる。
ブロックコポリマーやグラフトコポリマーは種々の重合法で合成できる。最も好ましい方法はリビング重合法である。リビングアニオン重合法またはリビングカチオン重合法では、1種のモノマーをアニオンまたはカチオンを生成する重合開始剤により重合を開始させ、他のモノマーを逐次的に添加することによりブロックコポリマーを合成することができる。モノマーとしては、例えばビニル化合物やブタジエンなどの二重結合を有するモノマー、エチレンオキシドなどの環状エーテルモノマー、または環状オリゴシロキサンモノマーなどが用いられる。リビングラジカル重合法を用いることもできる。リビング重合法では、分子量やコポリマー比を精密に制御することができ、分子量分布の狭いブロックコポリマーを合成することができる。リビング重合法を用いる際には、溶媒を金属ナトリウムなどの乾燥剤で十分乾燥し、凍結乾燥や不活性ガスなどのバブリングなどの方法により酸素の混入を防止することが好ましい。重合反応は、不活性ガス気流下において、好ましくは2気圧以上の加圧条件下で行うことが好ましい。加圧条件は、反応容器外からの水分や酸素などの混入を効果的に防止することができ、かつ反応プロセスを比較的低コストで実施できるので好ましい。
ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーは、テレケリックポリマーなどのマクロマー同士の反応、またはマクロマーの分子端を重合開始点として他種のモノマーを重合させることにより合成することもできる。また、リアクティブプロセッシング法を用い、ミクロ相分離構造を形成する過程でこれらの反応を進行させ、in situでブロックまたはグラフトコポリマーを合成することもできる。例えば、反応性の末端基または側鎖基が導入されたAポリマーとBモノマーとを混合し、ミクロ相分離構造を形成する過程で、加熱、光照射または触媒添加などの方法によってモノマーを重合させることにより、in situでポリマーAとポリマーBからなるブロックまたはグラフトコポリマーを合成することができる。また、それぞれ相補的な結合性基を末端または側鎖に有する複数種のテレケリックポリマーを混合することによっても、in situでブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを生成することができる。
ポリマー鎖どうしを接続する化学的な結合は、結合強度の面から共有結合が好ましく、特に炭素−炭素結合または炭素−ケイ素結合であることがより好ましい。
以上のようなブロックコポリマーやグラフトコポリマーの合成方法は一般的なラジカル重合法に比べて装置やスキルが必要なため、主に研究室レベルで用いられており、コスト面から工業的な応用はごく限られている。しかし、電子産業のように付加価値の高い製品を製造する分野では、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーを用いても十分な費用対効果が得られると考えられる。
ブロックコポリマーやグラフトコポリマーは、ランダムコポリマーと異なり、Aポリマー鎖が凝集したA相とBポリマー鎖が凝集したB相とが空間的に分離した構造(ミクロ相分離構造)を形成し得る。一般のポリマーブレンドで得られる相分離(マクロ相分離)では2種のポリマー鎖が完全に分離できるため最終的に完全に2相に別れる。また、マクロ相分離では揺らぎの発生のスケールが1μm程度のため、単位セルの大きさは1μm以上である。これに対して、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーで得られるミクロ相分離構造における単位セルの大きさは、分子鎖の大きさより大きくならず、数nm〜数十nmのオーダーである。また、ミクロ相分離構造は、微細な単位セルが非常に規則的に配列した形態を示す。
ミクロ相分離構造の種々の形態について説明する。図1(A)および(B)は、ポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)ブロックコポリマーの原子間力顕微鏡(AFM)写真であり、平面的に見たミクロ相分離構造を示す。(A)はドット構造もしくは海島構造、(B)はミミズ構造(worm-like structure)と呼ばれる。図2(A)〜(D)は立体的に見たミクロ相分離構造の模式図である。(A)は海島構造と呼ばれ、一方の相中に他方の相が球状に分布している。(B)はシリンダー構造と呼ばれ、一方の相中に他方の相が棒状に規則正しく並んでいる。(C)はバイコンティニュアス構造と呼ばれる。(D)はラメラ構造と呼ばれ、A相とB相とが交互に規則正しく積層されている。
ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーのミクロ相分離構造は以下のような方法により作製できる。例えば、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを適当な溶媒に溶解して塗布溶液を調製し、この塗布溶液を基板上に塗布し乾燥して膜を形成する。この膜をポリマーのガラス転移温度以上の温度でアニールすることによって、良好な相分離構造を形成することができる。コポリマーを溶融状態にし、ガラス転移温度以上相転移温度以下の温度でアニールしてミクロ相分離させた後、室温でミクロ相分離構造を固定してもよい。コポリマーの溶液をゆっくりとキャストさせることでミクロ相分離構造を形成することもできる。コポリマーを溶融し、ホットプレス法、射出成形法、トランスファー成形法などの方法によって、所望の形状に成形した後、アニールしてミクロ相分離構造を形成することもできる。
フローリー−ハギンス(Flory-Haggins)の理論によれば、AポリマーおよびBポリマーが相分離するには混合の自由エネルギーΔGが正にならなければならない。AポリマーとBポリマーとが相溶しにくく、2つのポリマー鎖の斥力が強いと相分離を起こしやすい。また、ブロックコポリマーの重合度が大きいほどミクロ相分離を起こしやすので、分子量には下限値がある。ただし、相分離構造を形成する各相のポリマーは、必ずしも相互に非相溶である必要はない。これらのポリマーの前駆体ポリマーが相互に非相溶であれば、ミクロ相分離構造を形成することができる。前駆体ポリマーを用いて相分離構造を形成した後に、加熱、光照射、触媒添加などにより反応させて目的のポリマーに変換することができる。この際、反応条件を適切に選択すれば、前駆体ポリマーによって形成された相分離構造が破壊されることはない。
AポリマーおよびBポリマーの組成比が50:50のときに最も相分離が起こりやすい。これは、最も形成しやすいミクロ相分離構造がラメラ構造であることを意味する。逆に、一方のポリマーの組成を非常に高くして、他方のポリマーからなる小さい島を含む海島構造を形成することは困難な場合がある。したがって、所望のミクロ相分離構造を得るためには、ブロックコポリマーの分子量が重要な要因となる。
しかし、ブロックコポリマーの分子量を厳密に制御して重合することは非常に困難である。そこで、合成されたブロックコポリマーの分子量を測定し、所望の組成比となるように一方のホモポリマーをブレンドして組成比を調整してもよい。ホモポリマーの添加量は、ブロックコポリマー100重量部に対して、100重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは10重量部以下に設定する。ホモポリマーの添加量が多すぎると、ミクロ相分離構造を乱すおそれがある。
また、ブロックコポリマーを構成する2種のポリマーの溶解度に差が大きすぎると、A−BブロックコポリマーとAホモポリマーの相分離が起こりうる。この相分離を極力避けるためには、Aホモポリマーの分子量を下げることが好ましい。これは、分子量の小さいAホモポリマーをブレンドすると、フローリー−ハギンスの式におけるエントロピー項の負の値が大きくなり、A−BブロックコポリマーとAホモポリマーとが混合しやすくなるためである。また、Aホモポリマーの分子量はブロックコポリマー中のAブロックの分子量より小さい方が熱力学的には安定である。熱力学的安定性を考えると、Aホモポリマーの分子量は、A−Bブロックコポリマーを構成するAポリマーの分子量の2/3より小さいことがより好ましい。一方、Aホモポリマーの分子量が1000を下回るとA−BブロックコポリマーのBポリマーにも溶解するおそれがあるため好ましくない。また、ガラス転移温度を考慮するとAホモポリマーの分子量は、3000以上であることがより好ましい。
本発明のパターン形成材料からなる薄膜を形成する際には、均一溶液を塗布することが好ましい。均一溶液を用いれば、製膜時の履歴が残ることを防ぐことができる。溶液中に比較的大きな粒子径のミセルなどが生成して塗布液が不均一であると、不規則な相分離構造が混入して規則的なパターン形成が困難であったり、規則的なパターンを形成するのに時間がかかるため好ましくない。
ブロックコポリマーを溶解する溶媒は、ブロックコポリマーを構成する2種のポリマーに対して良溶媒であることが望ましい。ポリマー鎖どうしの斥力は2種のポリマー鎖の溶解度パラメーターの差の2乗に比例する。そこで、2種のポリマーに対する良溶媒を用いれば、2種のポリマー鎖の溶解度パラメーターの差が小さくなり、系の自由エネルギーが小さくなって相分離に有利になる。
ブロックコポリマーの薄膜を作製する場合には、均一溶液を調製できるように、150℃以上の高沸点を有する溶媒を用いることが好ましい。ブロックコポリマーのバルク成形体を作製する場合には、沸点の低いTHFやトルエン塩化メチレンなどを用いることが好ましい。
以下、本発明において用いられるパターン形成材料の例を説明する。まず、ドライエッチング速度の差が大きい2種以上のポリマー鎖を含むブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーからなるパターン形成材料について説明する。本発明のパターン形成材料は、それぞれのモノマー単位のN/(Nc−No)の値(ここで、Nはモノマー単位の総原子数、Ncはモノマー単位の炭素原子数、Noはモノマー単位の酸素原子数)の比が1.4以上である2つのポリマー鎖を有するブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを含有する。2つのポリマー鎖についてN/(Nc−No)の値の比が1.4以上であるという要件は、ミクロ相分離構造を形成する各ポリマー鎖のエッチング選択比が大きいことを意味する。すなわち、上記の要件を満たすパターン形成材料をミクロ相分離させた後にドライエッチングすると、1つのポリマー相が選択的にエッチングされ、他のポリマー相が残る。
以下、N/(Nc−No)というパラメーターについて、より詳細に説明する。Nはポリマーのセグメント(モノマー単位に相当)当たりの原子の総数、Ncは炭素原子数、Noは酸素原子数である。このパラメーターは、ポリマーのドライエッチング耐性を示す指標であり、この値が大きいほどドライエッチングによるエッチング速度が大きくなる(ドライエッチング耐性が低下する)。つまり、エッチング速度Vetchと上記パラメーターとの間には、
Vetch∝N/(Nc−No)
という関係がある。この傾向は、Ar、O2、CF4、H2などの各種エッチングガスの種類にほとんど依存しない(J. Electrochem. Soc., 130, 143(1983))。エッチングガスとしては、上記の文献に記載されているAr、O2、CF4、H2のほかにも、C2F6、CHF3、CH2F2、CF3Br、N2、NF3、Cl2、CCl4、HBr、SF6などを用いることができる。なお、このパラメーターと、シリコン、ガラス、金属などの無機物のエッチングとは無関係である。
下記化学式を参照して具体的なパラメーター値を計算する。ポリスチレン(PS)のモノマー単位はC
8H
8であるから16/(8−0)=2である。ポリイソプレン(PI)のモノマー単位はC
5H
8であるから13/(5−0)=2.6である。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のモノマー単位はC
5O
2H
8であるから15/(5−2)=5である。したがって、PS−PMMAのブロックコポリマーでは、PSのエッチング耐性が高く、PMMAのみがエッチングされやすいことが予想できる。例えば、CF
4を30sccmの流量で流し、圧力を0.01torrに設定し、進行波150W、反射波30W、の条件でリアクティブイオンエッチング(RIE)を行うと、PMMAはPSに対して4±0.3倍程度のエッチング速度を示すことが確認されている。
図3に、各種ポリマーのN/(Nc−No)値とドライエッチング速度との関係を示す。図3で使用している略号はそれぞれ以下のポリマーを示す。SEL−N=(Somer工業社、商品名)、PMMA=ポリメタクリル酸メチル、COP=グリシジルメタクリレート−エチルアクリレートコポリマー、CP−3=メタクリレート−t−ブチルメタクリレートコポリマー、PB=ポリベンジルメタクリレート、FBM=ポリヘキサフルオロブチルメタクリレート、FPM=ポリフルオロプロピルメタクリレート、PMIPK=ポリメチルイソプロペニルケトン、PS=ポリスチレン、CMS=クロロメチル化ポリスチレン、PαMS=ポリα−メチルスチレン、PVN=ポリビニルナフタレン、PVB=ポリビニルビフェニル、CPB=環化ポリブタジエンである。この図に示されるように、Vetch∝N/(Nc−No)という関係が成り立つことがわかる。
一般に芳香環を含み二重結合が多いポリマーは相対的に炭素の比率が高くなるため、上記のパラメーターの値が小さくなる。上記のパラメーターからわかるように、ポリマー中の炭素が多い(上記パラメーター値が小さい)ほどドライエッチング耐性は向上し、酸素が多い(上記パラメーター値が大きい)ほどドライエッチング耐性は低下する。このことは、定性的には以下のように説明できる。炭素はラジカルに対する反応性が小さく、化学的に安定である。したがって、炭素が多いポリマーは各種ラジカルと反応しにくく、エッチング耐性が向上する。これに対し、酸素はラジカルに対する反応性が高いため、ポリマー中の酸素が多いとエッチング速度が速くエッチング耐性が低い。さらにポリマー中に酸素が含まれると酸素ラジカルが発生しやすい。このため、例えばCF4などのフッ素系のエッチングガスを用いると、酸素ラジカルの作用によりFラジカルが増殖し、エッチングに関与するラジカルが増加するためエッチング速度が増加する。アクリル系ポリマーは酸素含有率が高く、二重結合が少ないため、上記パラメーターの値が大きくなり、エッチングされやすくなる。
したがって、ドライエッチング速度の差が大きい典型的なブロックコポリマーは、芳香環含有ポリマー鎖とアクリル系ポリマー鎖とを含有するものである。芳香環含有ポリマー鎖の例には、ビニルナフタレン、スチレンおよびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種のモノマーを重合することにより合成されたポリマー鎖が含まれる。アクリル系ポリマー鎖の例には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種のモノマーを重合することにより合成されたポリマー鎖が含まれる。
上述したように、パターン形成材料を構成するAポリマー鎖およびBポリマー鎖のN/(Nc−No)パラメーターの比が1.4以上であれば、エッチングにより明確なパターンが形成される。この比が1.5以上、さらに2以上であれば、2種のポリマー鎖でエッチング速度に大きな差が生じるため、加工時の安定性が向上する。また、実際にドライエッチングする際に、2種のポリマー鎖のエッチング選択比は1.3以上、さらに2以上、さらに3以上であることが好ましい。パターン形成材料を構成するAポリマー鎖およびBポリマー鎖のN/(Nc−No)パラメーターの比が1.4以上であれば、特に金属元素をドーピングしたり、金属元素が導入されたポリマー鎖を用いることなく、良好なパターンを形成することができる。金属元素を用いずともパターニング可能なので、金属不純物が問題となる各種電子デバイスの作製に非常に有用である。
エッチングガスとして例えばO2などを用いた場合にエッチング選択比を向上させるためには、エッチング耐性の高いポリマー鎖として含ケイ素ポリマー鎖を用い、エッチング耐性の低いポリマー鎖としてハロゲン含有ポリマー鎖を用いることが特に好ましい。含ケイ素ポリマー鎖としては、ポリ(p−トリメチルシリルスチレン)などの含ケイ素芳香族ポリマー鎖が好ましい。ハロゲン含有ポリマー鎖としては、ポリ(クロロエチルメタクリレート)などのハロゲン含有アクリル系ポリマー鎖が好ましい。
ドライエッチング速度の差が大きい2種以上のポリマー鎖を含むブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーからなる他のパターン形成材料について説明する。本発明のパターン形成材料は、ポリシラン鎖と炭素系有機ポリマー鎖とを有するブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを含有する。
ポリシラン鎖を有するブロックコポリマーは、例えば S. Demoustier-Champagne ら (Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.31, 2009-2014(1993)) が開示しているポリスチレン系マクロマーとジクロロシランとの共重合法や、櫻井ら(例えば1999年日本化学会第76春季年会 講演予稿集I講演番号4B513)が開示しているマスクトジシレンを用いたポリシランとメタクリル酸エステル類などとのリビング重合法などによって合成することができる。ポリシランはケイ素系ポリマーであり、一般的な炭素系ポリマーよりもドライエッチングされやすい。
本発明のパターン形成材料に用いられるポリシラン鎖は、少なくとも一部に下記化学式に示されるいずれかの繰り返し単位を含有していればよい。
ここで、R1、R2、R3、R4は、それぞれ炭素数1−20の置換または無置換のアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示す。
ポリシランは、ホモポリマーでもランダムコポリマーでもよく、2種以上のポリシランが酸素原子、窒素原子、脂肪族基、芳香族基を介して互いに結合した構造を有するブロックコポリマーでもよい。ポリシランの例には、ポリ(メチルフェニルシラン)、ポリ(ジフェニルシラン)、ポリ(メチルクロロメチルフェニルシラン)、ポリ(ジヘキシルシラン)、ポリ(プロピルメチルシラン)、ポリ(ジブチルシラン)、ポリ(メチルシラン)、ポリ(フェニルシラン)、ならびにこれらのランダムおよびブロックコポリマーが含まれる。炭素系ポリマーの例には、上述した芳香環含有ポリマーが含まれる。
次に、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを構成する2種以上のポリマー鎖のエネルギー線による分解性の差を利用するパターン形成材料について説明する。本発明のパターン形成材料は、主鎖がエネルギー線の照射により切断されるポリマー鎖とエネルギー線に対して難分解性のポリマー鎖とを有するブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを含有する。エネルギー線を照射することによって主鎖が切断されたポリマー鎖は、溶媒洗浄などのウェットエッチングまたは加熱処理による揮発により除去することができる。このため、ドライエッチング工程を経ずにミクロ相分離構造を保持した微細パターンや構造を形成できる。電子材料によっては、ドライエッチングプロセスが使えないものや、使えてもコストの面からウェットエッチングの方が好ましいことがある。したがって、ドライエッチング工程を用いないことは大きな利点になる。
ブロックコポリマーは2つ以上のポリマーが化学結合で結合しているため、一方のポリマー鎖が現像液に対して高い溶解性を示す場合でも一般的には現像が困難である。しかし、例えばポリスチレン(PS)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)とのブロックコポリマーに電子線を照射すると、PMMAの主鎖が切断され、PMMA相のみが現像液に溶解するようになる。現像液は分解したポリマー鎖を選択的に溶出して除去できるものであれば、特に限定されず、水系溶媒でも有機溶媒でもよい。PMMAの場合は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、乳酸エチル、アセトンなどが用いられる。ポリマーの溶解性を調整するために、現像液にイソプロピルアルコール(IPA)などの他の溶媒を混合してもよいし、界面活性剤などを添加してもよい。現像の際に超音波処理などを併用してもよい。また、分解後のポリマー鎖は低分子量化しており、加熱により揮発するので、容易に除去することもできる。
ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを構成するポリマーの少なくとも1種は、電子線、X線、γ線、重粒子線などのエネルギー線の照射によりポリマー鎖の主鎖が分解する。電子線、X線、γ線はポリマー成形体内部まで透過する上、照射設備が比較的低コストなためプロセスコストを低減できるため好ましい。特に電子線、X線が好ましく、さらに照射によるポリマー鎖の分解効率が高い電子線が最も好ましい。電子線源としては例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラーフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、または、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
エネルギー線によって分解するポリマー鎖としては、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリメチルイソプロペニルケトン等、α位にメチル基が結合しているものが挙げられる。また、α位がハロゲンで置換されたポリマー鎖はさらに主鎖分解性が高い。また、ポリトリフルオロメチルメタクリレート、ポリトリフルオロメチル−α−アクリレート、ポリトリフルオロエチルメタクリレート、ポリトリフルオロエチル−α−アクリレート、ポリトリクロロエチル−α−アクリレートなど、メタクリレートのエステルがフッ化炭素またはハロゲン化炭素で置換されたポリマーは、エネルギー線に対する感度がさらに高いため望ましい。エネルギー線がX線である場合、ポリマー中に金属元素が含まれていると分解効率が向上するため好ましい。
ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを構成する他の少なくとも1種のポリマー鎖の主鎖は、エネルギー線に対して難分解性である。エネルギー線の照射により架橋するポリマーはさらに望ましい。エネルギー線に対して難分解性のポリマー鎖としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメチルアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメチルビニルケトンなどポリマー鎖のα位が水素であるものが望ましい。またエネルギー線によって架橋する1,2−ポリブタジエンなどの二重結合を有するポリマー鎖でもよい。さらにはポリノルボルネン、ポリシクロヘキサンなどの誘導体でもよい。
エネルギー線の中でも特に電子線は、薄膜のみならずバルク成形体を露光する場合にも非常に有効である。電子線は有機物に対する透過性がよいため、例えば2相の内の1相が電子線によって主鎖が分解するメタクリレート系ポリマーである場合、バルク内部のポリマーも分解する。したがって、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーで3次元相分離構造を形成した後、電子線を照射して現像すると、3次元構造を保持したままナノメーターオーダーの規則正しい空孔を容易に形成することができる。このような規則正しい空孔が形成された構造体は、比表面積が非常に大きいので、ポリマーバッテリーまたはキャパシタのセパレーター、および中空糸などに利用できる。
ポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)のブレンドポリマーに紫外線を照射すると、PMMAの側鎖メチル基が脱離してカルボン酸になり極性が変化するため、片方の相のみを極性の違いにより除去することは可能である。しかし、光源としてArFエキシマレーザー(193nm)を用いて1J/cm2の露光量で露光した場合でも、約1%の側鎖メチル基が脱離するにすぎない。エネルギーの低いKrFエキシマレーザー(248nm)では約3.4J/cm2の露光量で露光する必要がある。さらに、水銀の輝線であるi線(365nm)またはg線(436nm)では、側鎖メチル基はほとんど脱離することはない。一般の半導体レジストにおいては、ArFまたはKrFエキシマレーザーを用いた場合に露光量を10mJ/cm2程度にすれば十分である。このことを考慮すると、上記の紫外線の露光量は非常に大きく、装置に著しく負担をかける。
2種以上のポリマー鎖が化学的に結合しているコポリマーのうち一方のポリマー相のみを除去するにはその主鎖を切断することが好ましい。しかし、上記のように紫外線でポリマー主鎖を分解するには大きなエネルギーが必要であり、難分解性のポリマー鎖にもダメージを与えやすい。このため、紫外線を照射してコポリマーの一方の相のみを除去することは非常に困難である。また、紫外線はポリマーに対する透過性が悪いため、バルク成形体を多孔質化する目的には不適当である。特に芳香環などの紫外線を吸収する構造を含むブロックコポリマーは透過性が悪い。さらに、紫外線によって高感度に分解するポリマー鎖は一般にリビング重合などが難しく、分子量分布や分子量の制御が困難である。
これに対して、上述したように電子線、X線またはγ線は成形体への透過性が高く、分解反応の選択性が高く、かつ分解効率が高く、低コストであるため非常に優れている。特に簡便にかつ低コストで照射可能な電子線が最も好ましい。
電子線の照射量は特に制限されないが、100Gy〜10MGy、さらに1kGy〜1MGy、特に10kGy〜200kGyに設定することが好ましい。照射量が少ないと分解性ポリマー鎖が十分に分解しない。照射量が多すぎると分解性ポリマー鎖の分解生成物が三次元架橋して硬化するおそれがあるうえに、難分解性のポリマー鎖も分解するおそれがある。
電子線の加速電圧はポリマー成形体の厚さによって異なるが、10nm〜数十μm程度のフィルムでは20kV〜2MV程度、100μm以上のフィルムやバルク成形体では500kV〜10MV程度が好ましい。ポリマー成形体中に金属成形体などが含まれており、電子線が遮蔽される場合には、さらに加速電圧を高くしてもよい。加速電圧の異なる複数の電子線を照射してもよい。また電子線の照射中に加速電圧を変化させてもよい。
次に、熱分解性ポリマー鎖を含むブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーからなるパターン形成材料について説明する。このようなブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーとしては、熱分解性ポリマー鎖と耐熱性ポリマー鎖とから合成されたものを用いることが好ましい。熱分解性ポリマー鎖と耐熱性ポリマー鎖との熱分解温度の差は、10℃以上、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。ここで、熱分解温度とは、1気圧、不活性ガス気流下で30分間加熱したときに重量が半減する温度を表す。
熱分解性ポリマー鎖は、加熱によって主鎖が切断されるものが好ましい。一方、耐熱性ポリマー鎖は、ガラス転移温度が熱分解性ポリマーの熱分解温度以上であるか、熱分解性ポリマー鎖の熱分解温度以下で架橋反応または分子内環化反応を起こして三次元架橋構造またはラダー構造などの耐熱性構造に転化するポリマーからなることが好ましい。
熱分解性ポリマー鎖の例には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル、ポリα−メチルスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどのアクリル樹脂、およびポリフタルアルデヒドなどが含まれる。ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、α−メチルスチレン、アクリル樹脂などは、リビング重合によって分子量分布の狭いポリマー鎖が得られるため特に好ましい。
耐熱性ポリマー鎖のうち炭素系ポリマー鎖の例には、ポリアクリロニトリル、α−ハロゲン化アクリロニトリルなどのポリアクリロニトリル誘導体、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアニリン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシクロヘキサジエン誘導体、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが含まれる。これらのポリマー鎖はミクロ相分離した後、空気中で加熱して不融化することが好ましい。ポリ塩化ビニリデンも適切な方法により不融化できるので、耐熱性ポリマー鎖として用いることができる。不融化を促進するためにラジカル発生剤や架橋剤などを添加してもよい。
これらの耐熱性ポリマー鎖のうちでは、アニオン重合、ラジカル重合などによって比較的分子量分布の狭いブロックコポリマーを形成することが可能なポリアクリロニトリルおよびポリシクロヘキサジエン誘導体が好ましい。
ポリアクリロニトリル鎖を有するブロックコポリマーは、例えば T. Suzuki ら (Polymer Journal, Vol. 14, No. 6, 431-438(1982)) の方法により合成することができる。この方法では、末端ヒドロキシル基をアニオン化したポリエチレンオキシドなどのポリエーテルを反応開始剤として、アクリロニトリルを重合することによりブロックコポリマーを合成する。ポリアクリロニトリル鎖を有するグラフトコポリマーは、末端にメタクリル酸エステル構造やスチレン構造などを有するポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドなどのマクロマーと、アクリロニトリルとのラジカル共重合によって合成することができる。ポリアクリロニトリル鎖を200℃以上好ましくは400℃以上の温度で熱処理すると、ピリジン型のラダー状導電性ポリマーを生成させることができる。
ポリシクロヘキサジエン誘導体鎖を有するブロックコポリマーは、シクロヘキサジエン誘導体モノマーと熱分解性ポリマー鎖を形成する他のモノマーとを用い、リビング重合により合成することができる。さらに、ポリシクロヘキサジエン誘導体は、加熱によりポリパラフェニレンに転化される。シクロヘキサジエン誘導体モノマーおよびポリシクロヘキサジエン誘導体を下記化学式に示す。
ここで、R1,R2はそれぞれ独立に炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルコキシル基を示す。R1,R2の例には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フェニル基、メトキシメチル基、メトキシル基などが含まれる。
ポリシクロヘキサジエン誘導体として、下記化学式で示されるような環状炭酸エステル構造を有するものも好適である。
上記の化学式に示されるように、1,4位で連鎖したポリシクロヘキサジエン誘導体鎖は隣接するポリマー鎖間で架橋が起こりやすいため最も好ましい。ただし、1,2位で連鎖した構造、または1,2位で連鎖した部分と1,4位で連鎖した部分とが混在する構造を有するポリシクロヘキサジエン誘導体鎖も用いることができる。ポリシクロヘキサジエン誘導体ポリマー鎖からなる耐熱性ポリマーと、ポリエチレンオキシド鎖およびポリプロピレンオキシド鎖から選択される熱分解性ポリマー鎖との組み合わせが好ましい。
耐熱性ポリマー鎖として、側鎖または主鎖中に加熱によって架橋して耐熱性の分子構造を形成する部位を有するポリマー鎖も用いることができる。例えば、側鎖または主鎖にペリレン骨格を有するものを好適に用いることができる。また、側鎖または主鎖にPOSS(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane:ポリシロキサンT
8立方体)などのシロキサンクラスターを有するポリマー鎖を用いてもよい。例えば、下記化学式に示されるようなメタクリレートT
8立方体から合成されるポリマー鎖が好ましい。
ここで、RはHまたは置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す。Rの具体例は、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、フェニル基などである。
耐熱性ポリマー鎖として共役ジエンモノマーを重合したポリブタジエンまたはポリイソプレンを用い、側鎖または主鎖を相互に三次元架橋させてもよい。このような架橋性ポリマーとしては、1,2−ポリブタジエンが最も好適に用いられる。ポリブタジエン鎖を含むコポリマーは、1,2−ポリブタジエンユニットのほかに1,4−ポリブタジエンユニットを若干含んでいてもよい。しかし、1,4−のポリブタジエンユニットは架橋性に劣るため、ポリブタジエン鎖中のモノマーユニットの10%以下、さらに5%以下であることが好ましい。
架橋性ポリマー鎖としてポリブタジエン鎖またはポリイソプレン鎖を有し、熱分解性ポリマー鎖としてポリエチレンオキシド鎖またはポリプロピレンオキシド鎖を有するブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが好ましい。
これらの架橋性ポリマー鎖は、ラジカル発生剤または架橋剤を添加することによって相互に三次元架橋する。ポリブタジエンなどの架橋性ポリマー鎖は疎水性、ポリエチレンオキシド鎖は親水性である。このため、比較的疎水性の高いラジカル発生剤や架橋剤は、架橋性ポリマー鎖の相に対して親和性が高いため好ましい。
ラジカル発生剤は代表的には有機過酸化物である。有機過酸化物の例は、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド、メチルアセトアセテートパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシドなどのケトンパーオキシド;1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどのパーオキシケタール;p−メンタンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、t−ヘキシルハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシンなどのジアルキルパーオキシド;イソブチリルパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキシド、スクシニックアシッドパーオキシド、m−トルオイルアンドベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド;ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート;α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオドデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシメレイクアシッド、t−ブチルパーオキシ 3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ イソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキシル モノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレートなどのパーオキシエステル;t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキシド、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどを含む。2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの多官能ラジカル発生剤は架橋剤としても作用するため好ましい。また、アゾビスイソブチロニトリルなどの過酸化物以外のラジカル発生剤を用いてもよい。
ラジカル発生剤の添加量は、架橋性ポリマー鎖に対して0.1〜20重量%、さらに1〜5重量%であることが好ましい。ラジカル発生剤が少なすぎると架橋密度が小さくなり、多すぎると架橋体が多孔質になったりミクロ相分離構造が乱れる。
架橋性ポリマー鎖を含むコポリマーにラジカル発生剤を添加する場合、ミクロ相分離構造の形成が十分に進行した後に、架橋反応が始まることが好ましい。ミクロ相分離構造の形成は、コポリマーの各ポリマー鎖のガラス転移温度以上で進行する。このため、ポリマー鎖のガラス転移温度がラジカル発生剤のラジカル発生温度よりも十分低いことが好ましい。
この観点から、1,2−ポリブタジエン鎖とポリエチレンオキシド鎖またはポリプロピレンオキシド鎖とのブロックコポリマーに、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンまたは3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを1,2−ポリブタジエン鎖に対して1〜5重量%添加した組成物が好ましい。1,2−ポリブタジエンのガラス転移温度は約20℃、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのガラス転移温度は0℃以下である。2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンおよび3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを毎分4℃で昇温した場合、それぞれのラジカル発生剤の熱分解温度は139℃および125℃である。
上記の組成物を室温から50℃程度で加熱してミクロ相分離構造を形成し、ラジカル発生剤の熱分解温度まで徐々に加熱し、架橋性ポリマー鎖を架橋して硬化させることができる。ただし、温度を高くしすぎると、十分な架橋が行われる前に秩序−無秩序転移温度に達し、均一な融液が生じるおそれがある。この場合、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンは、紫外線照射によってもラジカルを発生するので低温で架橋させることができ、好都合である。
ポリブタジエン鎖と、ポリメチルメタクリレートなどのα−メチルアクリル系ポリマー鎖とからなるブロックコポリマーを用いてもよい。例えば、1,2−ポリブタジエン鎖とポリメチルメタクリレート鎖とのブロックコポリマーに、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンまたは3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを、1,2−ポリブタジエン鎖に対して1〜5重量%添加した組成物である。ポリメチルメタクリレートは105℃と比較的高いガラス転移温度を有するが、電子線を照射すると分解するため比較的低温のアニールでも揮発しやすくなる。すなわち、ポリメチルメタクリレートでは、電子線照射による熱分解促進効果が得られる。
また、ポリブタジエン鎖とポリメチルメタクリレート鎖のブロックコポリマー溶液から溶媒をゆっくり蒸発させて厚膜を形成すると、アニールなしに良好なミクロ相分離構造を形成することができる。この場合、ラジカル発生剤の熱分解温度よりも十分に低い温度で溶媒を蒸発させれば、架橋性ポリマー鎖の架橋の進行によりミクロ相分離構造の形成が阻害されることがない。この方法は、厚い多孔質膜を作製して、この空孔内に金属等を充填してナノ構造体を製造する場合に特に好適に用いることができる。ポリα−メチルスチレンを用いてもポリメチルメタクリレートと同様な効果が得られる。
ポリメタクリレートやポリα−メチルスチレンは置換基によってもガラス転移温度を調整することができる。例えばポリn−プロピルメタクリレートおよびポリn−ブチルメタクリレートのガラス転移温度は、それぞれ35℃および25℃である。このため、これらのポリマー鎖を含むコポリマーは低温でのアニールが可能であり、良好なミクロ相分離構造を形成できる。4位がブチル化されたポリα−メチルスチレンも低いガラス転移温度を示す。炭素数が6個より多いアルキル基で置換されたポリメタクリレートはさらに低いガラス転移温度を示すが、電子線を照射すると架橋反応を起こしやすくなる。ポリn−プロピルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリs−ブチルメタクリレートは、低いガラス転移温度と電子線照射による熱分解促進効果を併せ持つため好ましい。2−エチルヘキシル基のような分岐アルキル基で置換されたポリメタクリレートは、置換基の炭素数が多いけれども電子線照射による熱分解促進効果が得られるが、モノマーが高価である。入手のしやすさも考慮すると、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリs−ブチルメタクリレートが最も好ましい。
低いガラス転移温度と電子線照射による熱分解促進効果を併せ持つポリマー鎖として、ポリイソブチレンやポリプロピレンなどを用いることもできる。
熱分解促進効果を得るために電子線を照射する場合、1,2−ポリブタジエン鎖は電子線によっても架橋するため、ラジカル発生剤の量を減少してもよく、全く添加しなくてもよい。ラジカル発生剤を添加しない場合には、必ずしもガラス転移温度の低いコポリマーを用いる必要はないが、架橋密度が低下する傾向がある。したがって、この場合には架橋剤を加えることが好ましい。
架橋剤の例には、ビスマレイミド、多官能アクリレート、多官能メタクリレート、多官能ビニル化合物、およびSi−H結合を有するケイ素化合物などが含まれる。特に、ビスマレイミドは耐熱性の点で優れている。ビスマレイミドの例には、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、2,2’−ビス[4−(パラアミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(パラアミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどが含まれる。架橋剤の添加量は、架橋性ポリマー鎖に対して0.1〜100重量%、さらに1〜20重量%であることが好ましい。架橋剤が少なすぎると架橋密度が小さく、多すぎるとミクロ相分離構造が乱れやすくなる。
1,2−ポリブタジエンの架橋体は、耐熱性、絶縁性などの電気的特性、耐湿性、機械的特性に優れている。このため、1,2−ポリブタジエン鎖とポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖またはポリメチルメタクリレート鎖からなるコポリマーとラジカル発生剤を含む組成物は、パターン形成用膜、または多孔質構造体を作製するのに適している。架橋ポリブタジエンからなる多孔質材料は、各種フィルターなどに用いることができ、非常に有用である。
耐熱性ポリマー鎖の前駆体としてポリシラン鎖を用いてもよい。ポリシランの化学式、具体例、合成方法は既述したとおりである。ポリシラン鎖は空気中または酸素含有雰囲気中で紫外線を照射することによって光酸化される。この結果、側鎖の脱離などによって反応性または架橋性のラジカル端が生成したり、主鎖の開裂や酸素の挿入によるシロキサン結合の生成などが起こる。光酸化後に焼成するとシロキサン結合を主体とした架橋反応が起こり、SiO2類似の構造へと変換される。また、ポリシラン鎖およびポリカルボシラン鎖は、無酸素または低酸素雰囲気下で紫外線を照射し、焼成すると、シリコンカーバイト(SiC)へ変換される。形成されたSiO2またはSiCは高い耐熱性を示す。
好ましいポリシラン鎖の例は芳香族置換基とアルキル基を有するものである。このようなポリシランは下記化学式に示す繰り返し単位を有する。
ここで、R1は炭素数6〜20の置換または無置換の芳香族置換基を表し、フェニル基が最も好ましい。R2は炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基を表し、メチル基が最も好ましい。ポリ(メチルフェニルシラン)は、紫外線照射によりフェニル基が脱離して架橋反応を起こしやすいため、特に好ましい。
ポリシラン鎖とポリエチレンオキシド鎖またはポリプロピレンオキシド鎖からなるブロックコポリマーを用いることが好ましい。このようなブロックコポリマーを基板上にスピンコートして膜を形成し、相分離構造を形成した後に、紫外線で露光し、必要に応じて加熱して架橋反応を進行させる。さらに加熱し、熱分解性ポリマー鎖を熱分解して除去する。この結果、相分離構造が転写されたSiO2類似物またはSiCのパターンが形成される。このパターンをマスクとして下地のエッチング加工やめっきなどを良好に行うことができる。
ポリシラン鎖を含有するコポリマーには、必要に応じて、増感剤、ラジカル発生剤、酸発生剤などの添加剤、例えばフラーレンや3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどを加えてもよい。
耐熱性ポリマー鎖の前駆体としてポリシロキサン鎖を用いてもよい。ポリシロキサン鎖は、環状オリゴシロキサンのリビング重合により分子量分布を小さくすることができる。側鎖にアルコキシル基を有するポリシロキサン鎖は、酸触媒の存在下で加熱すると、アルコキシル基の脱離を伴ってシロキサン結合を生成して三次元架橋して耐熱性や機械的強度が向上する。
側鎖にヒドロキシル基またはアルコキシル基を有するポリシラン鎖およびポリシロキサン鎖は、焼成することによってSiO
2やSiO
2類似物質に変換される。このようなポリシランおよびポリシロキサンは、例えば下記化学式に示されるような繰り返し単位を有する。
ここで、R1,R2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す。具体例は、ポリ(ジ−i−プロポキシシラン)、ポリ(ジ−t−ブトキシシラン)などのポリシラン、ポリ(ジ−i−プロポキシシロキサン)、ポリ(ジ−t−ブトキシシロキサン)などのポリシロキサンなどである。
これらのポリシラン鎖またはポリシロキサン鎖とポリエチレンオキシド鎖またはポリプロピレンオキシド鎖のような熱分解性ポリマー鎖からなるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを焼成すると、ミクロ相分離構造が転写されたSiO2類似物質からなる多孔質構造体を形成できる。こうした多孔質膜はマスクとして良好に機能する。また、多孔質構造体の空孔に金属などの無機物質を充填することによって磁気記録媒体や電極材料など様々な機能部材に適用することができる。
耐熱性ポリマー鎖としてポリアミド酸を用いてもよい。ポリアミド酸と末端アミノ基ポリマーとを混合すると、カルボキシル基とアミノ基とが塩を形成し、ポリアミド酸主鎖に末端アミノ基ポリマーがぶら下がったグラフトコポリマーが形成される。ポリアミド酸としてはカプトン前駆体などを用いることができる。末端アミノ基ポリマーとしては、一方の末端基としてアミノプロポキシル基またはジメチルアミノプロポキシル基、他方の末端基としてメトキシル基またはジフェニルメトキシル基を有するポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタクリレートなどを用いることができる。特に、ポリアミド酸と末端アミノ基ポリプロピレンオキシドからなるコポリマーは良好に相分離するため好ましい。この場合、ポリアミド酸および末端アミノ基ポリマーのそれぞれの分子量を変化させることによって、ミクロ相分離構造のドメインの大きさを制御できる。また、ポリアミド酸と末端アミノ基ポリマーとの混合比を変えることによってミクロ相分離の形態も容易に変化させることができる。
以上で述べた耐熱性ポリマー鎖と熱分解性ポリマー鎖との好適な組み合わせの例には、ポリアクリロニトリル鎖+ポリエチレンオキシド鎖、ポリアクリロニトリル鎖+ポリプロピレンオキシド鎖、ポリメチルフェニルシラン鎖+ポリスチレン鎖、ポリメチルフェニルシラン鎖+ポリα−メチルスチレン鎖、ポリメチルフェニルシラン鎖+ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルフェニルシラン鎖+ポリエチレンオキシド鎖、ポリメチルフェニルシラン鎖+ポリプロピレンオキシド鎖などが含まれる。
親水性ポリマー鎖と疎水性ポリマー鎖からなるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーの一方のポリマー相に耐熱性物質を偏在させてもよい。耐熱性物質としては、無機耐熱性物質もしくはその前駆体または熱硬化性樹脂が用いられる。この場合、コポリマーを構成する全てのポリマー鎖が熱分解性であってもよい。例えば、ポリエチレンオキシド鎖とポリプロピレンオキシド鎖からなるブロックコポリマーは両方のポリマー鎖が熱分解性であるが、ポリエチレンオキシドは親水性、ポリプロピレンオキシドは疎水性である。無機耐熱性物質または熱硬化性樹脂は、ブロックコポリマーに混合したとき、親水性であるポリエチレンオキシド相に偏在しやすい。この混合物をミクロ相分離させた後、加熱してブロックコポリマーを熱分解して揮発させると、ミクロ相分離構造が転写された無機耐熱性物質または熱硬化性樹脂の多孔質パターンが形成される。この多孔質パターンをマスクとして用いた場合、良好なエッチング選択比が得られる。また、多孔質構造体の空孔に金属などを充填して磁気記録媒体や電極などに用いると良好な耐久性が得られる。
無機耐熱性物質またはその前駆体の例には、金属酸化物ゲル、金属アルコキシドポリマー、金属酸化物前駆体、金属窒化物前駆体、金属酸化物、金属微粒子、金属塩、金属錯体が含まれる。金属の例には、シリコン、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、バナジウムなどが含まれる。金属酸化物ゲルは、金属アルコキシドを加水分解することにより得ることができる。金属アルコキシドの例には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソプロポキシアルミニウム、テトライソプロポキシチタンなどのアルコキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシアルミニウムなどのアルキルアルコキシシランが含まれる。金属アルコキシドポリマーの例には、ポリジエトキシシロキサンなどが含まれる。金属酸化物前駆体または金属窒化物前駆体の例には、ポリシルセスキオキサン、ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)などのTレジン、ポリシラザンなどが含まれる。
ただし、金属酸化物ゲルは貯蔵安定性に劣る。また、金属酸化物ゲルの架橋度が高すぎると、コポリマーのミクロ相分離構造の形成が阻害される。このため、コポリマーに低分子の金属アルコキシドまたは有機金属塩などの金属酸化物ゲル前駆体を混合した溶液を基板上に塗布して膜を形成し、ミクロ相分離構造を形成した後に、酸などの触媒を作用させて金属酸化物ゲルへ転化させることが好ましい。
また、ポリシルセスキオキサン、Tレジンまたはポリシラザンを用いることが好ましい。特にTレジンは、触媒によって架橋硬化速度を制御できるので、ミクロ相分離構造の形成を阻害することがない。ミクロ相分離構造が形成された後に、触媒によってTレジンを相互に三次元架橋して硬化することができる。Tレジンの例を下記化学式に示す。
ここで、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アルコキシル基、シリロキシル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基を示す。Tレジンの具体的としては、R1〜R8が水素原子、メチル基、ヘキシル基、ビニル基またはジメチルシリロキシル基であるもの、またはR1〜R7がシクロペンチル基、R8が水素原子、ヒドロキシル基、アリル基、3−クロロプロピル基または4−ビニルフェニル基であるものが挙げられる。
ポリシルセスキオキサンの例には、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリメチル−ヒドロシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリフェニル−メチルシルセスキオキサン、ポリフェニル−ポリプロピルシルセスキオキサン、ポリフェニル−ビニルシルセスキオキサン、ポリシクロヘキシルシルセスキオキサン、ポリシクロペンチルシルセスキオキサン、ポリシクロヘキシルシルセスキオキサンT8立方体、ポリ(2−クロロエチル)シルセスキオキサンなどが含まれる。
ポリ(2−ブロモエチル)シルセスキオキサンは、低温でも架橋反応が進行するが、UV露光によって架橋させることもできる。このため、ポリシロキサン系のガラス転移温度が低いコポリマーを用い、ミクロ相分離構造を形成した後にUV露光して硬化させることができる。ポリヒドロシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリt−ブトキシシルセスキオキサンなども上記と同様に用いることができる。
シルセスキオキサンをコポリマーに混合してミクロ相分離構造を形成した後に、硬化触媒を作用させて架橋硬化させることもできる。硬化触媒としてはジブチルスズジアセテート、酢酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などが用いられる。硬化触媒はシルセスキオキサンに対して0.1〜0.5重量%の範囲で添加することが好ましい。シルセスキオキサンをコポリマーと混合してミクロ相分離構造を形成した後に塩酸ガスまたは塩酸溶液により架橋硬化してもよい。
熱硬化性樹脂の例には、ポリアミド酸、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリサルファイド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、フルフリルアルコール樹脂などのフラン樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、トルエンスルホン酸アミド樹脂、イソシアネート樹脂、アルキド樹脂、フルフラール樹脂、ポリウレタン、レゾルシノール樹脂、ポリカルボジイミド、ポリパラフェニレンビニレン前駆体ポリマーなどが含まれる。熱硬化性樹脂は保存安定性が良好なうえに、マスクとして使用した後にアッシングなどによって容易に除去できるため好ましい。特に、ポリアミド酸、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、フルフリルアルコール樹脂などのフラン樹脂、メラミン樹脂などが好ましく、ポリアミド酸が最も好ましい。
ブロックコポリマーを構成する親水性ポリマー鎖の例には、ポリエチレンオキシド、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびこれらのカルボン酸塩、四級塩化したポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリ(ヒドロキシスチレン)などが含まれる。特に、ポリエチレンオキシド、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸が好ましい。
ブロックコポリマーを構成する疎水性ポリマー鎖の例には、ポリプロピレンオキシド、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリシロキサン、フッ素含有ポリマーなどが含まれる。これらのポリマー鎖は、耐熱性物質が硬化する前に相分離構造を形成できるようにガラス転移温度が低く、かつ熱分解性であることが好ましい。特に、低温で熱分解可能なポリプロピレンオキシド、ポリα−メチルスチレン、ポリメタクリル酸エステルや、ガラス転移温度の低いポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサンなどが好ましく、ポリプロピレンオキシド、ポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
耐熱性物質とともに用いられるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを構成するポリマー鎖の組み合わせの好適な例には、ポリエチレンオキシド鎖+ポリプロピレンオキシド鎖、ポリエチレンオキシド鎖+ポリメチルメタクリレート鎖、ポリエチレンオキシド鎖+ポリα−メチルスチレン鎖、ポリエチレンオキシド鎖+ポリスチレン鎖、ポリエチレンオキシド鎖+ポリビニルピリジン鎖、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)鎖+ポリプロピレンオキシド鎖、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)鎖+ポリα−メチルスチレン鎖、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)鎖+ポリスチレン鎖、ポリアクリル酸鎖+ポリプロピレンオキシド鎖、ポリアクリル酸鎖+ポリメチルメタクリレート鎖、ポリメタクリル酸鎖+ポリメチルメタクリレート鎖、ポリアクリル酸鎖+ポリフェニルメチルシロキサン鎖、ポリエチレンオキシド鎖+ポリジメチルシロキサン鎖、ポリエチレンオキシド鎖+ポリフェニルメチルシロキサン鎖、ポリエチレンオキシド鎖+ポリビニルメチルシロキサン鎖などが含まれる。これらのうちでも、ポリエチレンオキシド鎖+ポリプロピレンオキシド鎖、ポリエチレンオキシド鎖+ポリジメチルシロキサン鎖が好ましく、ポリエチレンオキシド鎖+ポリジメチルシロキサン鎖が最も好ましい。例えば、ポリエチレンオキシド鎖+ポリジメチルシロキサン鎖のブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーに、ポリアミド酸などの熱硬化性樹脂を混合したものは、パターン形成用組成物として良好に用いることができる。
耐熱性物質とブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーとの混合比は特に限定されない。耐熱性物質は、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマー100重量部に対して、1〜500重量部が好ましく、5〜100重量部がより好ましく、10〜50重量部がさらに好ましい。耐熱性物質の配合量が少ないとマスクとしての機能を十分に果たせない。耐熱性物質の配合量が多すぎると相分離構造が乱れて良好なパターンを形成できなくなる。
コポリマーと耐熱性物質またはその前駆体との混合溶液を調製する際に用いられる溶媒は、コポリマーおよび耐熱性物質またはその前駆体の両方に対する良溶媒であることが好ましい。特に、コポリマーを構成するいずれのポリマー鎖に対しても良溶媒を用いることが好ましい。特定のポリマー鎖に対して極端に溶解性が悪い溶媒を用いると、溶液中でミセルが形成されやすい。この場合、パターニングのマスクや磁気記録媒体などの磁性膜の鋳型膜など、薄膜状のミクロ相分離構造体を形成する際に、溶液中で生じたミセル構造の履歴が残存して良好なミクロ相分離構造パターンを得るのが困難になる。
上述したようにブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーから所望のミクロ相分離構造を形成するには、2種のポリマー鎖の組成比を調整することが好ましい。A−Bジブロックコポリマーの場合、概略的には以下のように、AポリマーとBポリマーの組成比に応じて相分離形態が変化する。少数相の組成比が非常に低い場合、少数相が凝集して球状ドメインを形成し、海島構造になる。2相の組成比が7:3程度になると、少数相が柱状のドメインを形成し、シリンダー構造になる。2相の組成比が1:1付近では、両相がそれぞれシート状のドメインを形成し、これらが交互に積層したラメラ構造となる。
ここで、A−Bジブロックコポリマーでは、表面エネルギーの大きい、つまり溶解度パラメーターの値が大きいポリマー相の側に相図が片寄る。これは、2種のポリマー鎖の組み合わせに応じて、ラメラ、シリンダー、海島構造などのドメイン構造を形成する組成がやや片寄ることを意味する。具体的には、ブロックコポリマーを構成する2種のポリマーの溶解度パラメーターがおおよそ1cal0.5/cm1.5異なると、最適組成は上記の組成比よりも約5%溶解度パラメーターの大きいポリマーの方に移動する。また、ブロックコポリマーが基板と接触したときには、基板との表面エネルギーの差が小さいポリマーが基板側に偏析する。たとえば、PS−PMMA系のブロックコポリマーでは、PMMAが基板側に析出しやすい。逆に、PS−PB(ポリブタジエン)系ブロックコポリマーでは、PSが基板側に析出しやすい。
ブロックコポリマーから海島構造の薄膜を形成しようとするとき、2種のポリマー鎖の組成比は、海島構造とミミズ構造の転移点付近に設定することが望ましい。この場合、ポリマーと基板との間に相互作用が働くため、ブロックコポリマーの最適組成比は一概には決定できないが、ある程度予測はできる。すなわち、少数相が基板との表面エネルギーの差が小さい相である場合には基板表面に偏析しやすくなるため、少数相の組成をより大きくすることが必要である。例えば、PS−PMMA系ではPMMAが基板表面に析出しやすいため、PMMAが少数相であるコポリマーのPMMA組成は、PSが少数相であるコポリマーのPS組成より大きくする必要がある。また、ブロックコポリマーを構成する2種のポリマーの表面張力の違いによっても、球やシリンダーの大きさの分布が異なる。この理由からも、Aポリマーが少数相であるブロックコポリマーと、Bポリマーが少数相であるブロックコポリマーとでは、相分離構造を形成するための最適組成比が異なる。例えば、基板に対して親和性があるAポリマーが基板上にドットを形成する最適組成がA:B=20:80であるとすると、Bポリマーが基板上にドットを形成する最適組成はA:B=85:15になることがある。これは、ポリマーが基板面に吸着しやすいほど、バルクでは余分な体積のポリマーが必要になるためである。
ブロックコポリマーを構成する2つのポリマー相の体積分率は以下のように設定することが好ましい。例えば海島構造を形成する場合には、一方の相の体積分率を5〜40%、好ましくは10〜35%、さらに好ましくは15〜30%の範囲に設定する。体積分率の下限値は島の密度により規定され、上限値は海島構造を維持できる範囲により規定される。上限値を超えると、海島構造でなくシリンダーなどの別の構造になる。なお、数10nm程度の厚さの薄膜中に海島構造を形成する場合は界面の影響が大きく出るため、上記の最適値は2〜5%ほど小さくなる。2相の体積分率を調整するには、ブロックコポリマーの共重合比を制御してもよいし、ポリマー鎖の分子容を制御してもよい。ポリマー鎖の分子容を制御するには様々な手法が考えられる。たとえば、ポリビニルピリジン鎖を四級塩化する際に、アルキル基またはカウンターアニオンの分子容を制御してもよい。また、特定の相に親和性のよい物質を混合して相の体積分率を調節してもよい。この際、混合する物質としては、ブロックコポリマーを構成するポリマー鎖のホモポリマーなどが用いられる。
ブロックコポリマーから良好な三次元バイコンティニュアス構造を形成するためには、Aポリマー鎖とBポリマー鎖、Aポリマー鎖とBポリマー鎖の前駆体、Aポリマー鎖の前駆体とBポリマー鎖、またはAポリマー鎖の前駆体とBポリマー鎖の前駆体が互いに非相溶であることが必要である。前駆体を用いた場合には、相分離構造を形成した後、コポリマーのガラス転移温度以下の温度条件で前駆体を化学反応させて所望のポリマー鎖に変換する。この場合、各ブロックの分子量は3000以上であることが好ましい。2つの互いに非相溶なポリマー鎖を有するブロックコポリマーの溶液には、組成比を調整するために、必要に応じて少量のホモポリマーを添加してもよい。
ブロックコポリマーの溶液には、各種の添加剤を混合してもよい。添加剤としては、互いに相分離するポリマー鎖の一方と特異的に親和性が高いものを用いることが好ましい。この場合、相分離構造が形成される過程で、添加剤を親和性の良好なポリマー相に容易に偏在させることができる。この結果、添加剤を含有する相のエッチング耐性を向上させることができる。特に、耐熱性相に添加剤を偏在させることによって、より良好なパターニングが可能になる。
添加剤としては、例えばCr、V、Nb、Ti、Al、Mo、Li、Lu、Rh、Pb、Pt、Au、Ruなどの金属塩や有機金属化合物が挙げられる。これらを還元することにより生じる金属元素は、磁気記録媒体の磁性膜の成長核や、電気化学セルの電極材料として利用できる。このような添加剤としては、リチウム2,4−ペンタンジオネート、リチウムテトラメチルヘプタンジオネート、ルテニウム2,4−ペンタンジオネート、マグネシウム2,4−ペンタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート、マグネシウムトリフルオロペンタンジオネート、マンガン(II)2,4−ペンタンジオネート、モリブデン(V)エトキシド、モリブデン(VI)オキシドビス(2,4−ぺンタンジオネート)、ネオジウム6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート、ネオジウムヘキサフルオロペンタンジオネート、ネオジウム(III)2,4−ペンタンジオネート、ニッケル(II)2,4−ペンタンジオネート、ニオブ(V)n−ブトキシド、ニオブ(V)n−エトキシド、パラジウムヘキサフルオロペンタンジオネート、パラジウム2,4−ペンタンジオネート、白金ヘキサフルオロペンタンジオネート、白金2,4−ペンタンジオネート、ロジウムトリフルオロペンタンジオネート、ルテニウム(III)2,4−ペンタンジオネート、テトラブチルアンモニウム・ヘキサクロロプラチネート(IV)、テトラブロモ金(III)セチルピリジニウム塩などが挙げられる。
添加物として、一方のポリマー相に対して特異的に親和性を高めた、表面処理された数nm〜50nm以下の金属微粒子を用いてもよい。特開平10−251548号公報には、金属微粒子をポリマーで被覆する方法が開示されている。特開平11−60891号公報には、金属微粒子をブロックコポリマーで被覆する方法が開示されている。例えば、Aホモポリマーで被覆された金属微粒子は、A−BブロックコポリマーのAポリマー鎖に偏析し、Bホモポリマーで被覆された金属微粒子はA−BブロックコポリマーのBポリマー鎖に偏析する。この場合、金属微粒子は、A−Bブロックコポリマーを構成する各ポリマー相のうち高い親和性を示すポリマー相のほぼ中央部に偏析する。また、A−Bブロックコポリマーで被覆された金属微粒子は、Aポリマー鎖とBポリマー鎖との界面に偏析する。このような方法を用いると、同じ金属元素を随意に任意のポリマー相に偏析させることができる。
添加剤を、単に混合するのではなく、ブロックコポリマーの側鎖または主鎖に化学的に結合させてもよい。この場合、特定のポリマーのみを機能性分子構造で修飾することによって、添加剤を特定の相に容易に偏在させることができる。特定のポリマーの主鎖または側鎖に、特定の添加剤と結合しやすい構造を導入して、相分離構造を形成する前または後に添加剤の蒸気または溶液に接触させることによって添加剤をポリマー鎖に導入してもよい。たとえば、ポリマー鎖中にキレート構造を導入すれば、金属イオンを選択的にかつ高濃度にドーピングすることができる。キレート構造は主鎖中に導入してもよいし、ポリアクリル酸エステルのエステル部位などに置換基として導入してもよい。ポリマー中にピリジニウム塩構造などイオン性基を有するイオン交換樹脂構造を導入すれば、対イオン交換によって金属イオンなどを良好にドーピングできる。
パターン形成材料に可塑剤を添加すると、短時間のアニールでミクロ相分離構造を形成できるため好ましい。可塑剤の添加量は特に限定されないが、ブロックまたはグラフトコポリマーに対して、1〜70重量%、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。添加量が少なすぎるとミクロ相分離構造形成の加速効果が十分に得られず、多すぎるとミクロ相分離構造の規則性が乱される。
可塑剤の例には、芳香族エステルや脂肪酸エステルなどが含まれる。具体例は、フタル酸エステル系可塑剤、例えばジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレートなど;トリメリット酸系可塑剤、例えばオクチルトリメリテートなど;ピロメリット酸系可塑剤、例えばオクチルピロメリテートなど;アジピン酸系可塑剤、例えばアジピン酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジメトキシエチル、アジピン酸ジブチルジグリコール、アジピン酸ジアルキレングリコールなどである。
可塑剤として重合性低分子化合物を添加してもよい。例えばポリイミド鎖およびその前駆体であるポリアミド酸鎖のように比較的ガラス転移温度が高いポリマー鎖を有するブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーに、ビスマレイミドなどの重合性低分子化合物を添加する。重合性低分子化合物は、加熱時にポリマー鎖の流動性を高めて相分離構造の形成を促進させる可塑剤の作用を有する。しかも、重合性低分子化合物は最終的には重合、硬化してミクロ相分離構造を固定するので、多孔質構造を強化することができる。
ビスマレイミドの例には、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、2、2’−ビス[4−(パラアミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2、2’−ビス[4−(パラアミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどが含まれる。ビスマレイミドの添加量は、1〜70重量%、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。ビスマレイミドの重合体によってミクロ相分離構造を強化しようとする場合には、ミクロ相分離構造が多少乱れるおそれはあるが、添加量を比較的多くすることが好ましい。具体的には、可塑化すべきポリアミド酸鎖などのポリマー鎖に対してビスマレイミドを10〜50重量%の範囲で添加することが好ましい。
コポリマーに架橋剤を添加したり、架橋性基を導入することによって、ミクロ相分離構造を形成した後にコポリマーを相互に三次元的に架橋してもよい。このような架橋によって、ミクロ相分離構造の熱的または機械的な強度をさらに向上させることができ、安定性を高めることができる。耐熱性を考慮すると、本来的には各ポリマー相は非相溶であることが好ましい。しかし、非相溶でない相から構成される相分離構造であっても、相を形成するポリマー鎖を相互に架橋することにより耐熱性を改善できる。
ブロックコポリマーからミクロ相分離構造を形成する際には、ガラス転移温度以上(熱分解温度以下)でアニールするのが一般的である。しかし、酸素含有雰囲気下でアニールすると、ポリマーが酸化反応によって変性および劣化して良好なミクロ相分離構造を形成できなかったり、処理時間が長くなったり、所望のエッチング選択性が得られなくなるおそれがある。このようなコポリマーの劣化を防止するには、無酸素条件下、好ましくは光劣化の起こりにくい暗所でアニールすることが好ましい。しかし、無酸素条件下でのアニールは厳重な雰囲気制御を必要とするため、製造コストの増大を招きやすい。そこで、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーに、酸化防止剤または光劣化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤または光劣化防止剤は特に限定はされないが、酸化反応または光劣化反応によって生じるラジカル種などをトラップするラジカルトラップ剤などが良好に用いられる。
具体的には、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンなどのフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、スルフィド誘導体などの硫黄系酸化防止剤、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−4)セバケートなどのピペリジン系化合物に代表されるHALS(Hindered Amine Light Stabilizer)、銅やニッケルなどの金属錯体系光劣化防止剤などが用いられる。
酸化防止剤または光劣化防止剤の配合量は特に限定されないが、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜1重量%、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%に設定される。配合量が少なすぎると酸化防止効果または光劣化防止効果が十分でない。配合量が多すぎるとコポリマーの相分離構造を撹乱するおそれがある。
これらの酸化防止剤または光劣化防止剤は、一方では熱分解性ポリマー鎖の円滑な熱分解を阻害するおそれがある。そこで、熱分解性ポリマー鎖の熱分解温度以上では揮発するか分解するものを用いることが好ましい。また、耐熱性ポリマー鎖を空気中で加熱により不融化して耐熱性を向上させる場合には、酸化防止剤などが存在しないことが好ましい。この場合、ミクロ相分離を形成する温度では揮発せず、不融化の温度では揮発するか分解するものが好ましい。したがって、低分子量で揮発しやすい3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンなどを用いることが好ましい。
以下、本発明のパターン形成方法についてより詳細に説明する。
本発明のパターン形成方法は、基板上に、パターン形成材料からなる膜を形成する工程と、前記膜中にミクロ相分離構造を形成する工程と、前記膜中に形成されたミクロ相分離構造から1つのポリマー相を選択的に除去する工程と、残存した他のポリマー相をマスクとして前記基板をエッチングして前記基板にミクロ相分離構造のパターンを転写する工程とを有する。
この方法は、微粒子分散型の磁気記録媒体や、フィールド・エミッション・ディスプレーの製造に適用できる。これらの用途においては、パターン中の要素の位置がそれほど正確でなくてもよいため、この方法は非常に有効である。
まず、基板上にパターン形成材料の膜をスピンコーティング法、ディップコーティング法などによって形成する。必要に応じてパターン形成材料のガラス転移温度以上の温度でアニールして、膜中にミクロ相分離構造を形成する。膜の厚さは、形成しようとするミクロ相分離構造のドメインの大きさと同程度かやや厚く設定する。ドメインの大きさとは、海島構造では島の直径、シリンダー構造ではシリンダーの直径である。具体的には、膜の厚さはドメインの大きさの0.5〜2.5倍、さらに0.8〜1.5倍に設定することが好ましい。
パターン形成材料として、それぞれのモノマー単位のN/(Nc−No)の値(ここで、Nはモノマー単位の総原子数、Ncはモノマー単位の炭素原子数、Noはモノマー単位の酸素原子数)の比が1.4以上である2つのポリマー鎖を有するブロックコポリマー、またはポリシラン鎖と炭素系有機ポリマー鎖とを有するブロックコポリマーを用いた場合、膜をドライエッチングしてミクロ相分離構造から1つのポリマー相を選択的に除去する。たとえば、芳香環含有ポリマー鎖とアクリル系ポリマー鎖を有するブロックコポリマーでは、アクリル系ポリマー相が選択的にドライエッチングされる。また、ポリシラン鎖と炭素系有機ポリマー鎖とを有するブロックコポリマーでは、ポリシラン相が選択的にドライエッチングされる。
パターン形成材料として、主鎖がエネルギー線の照射により切断されるポリマー鎖とエネルギー線に対して難分解性のポリマー鎖とを有するブロックコポリマーを用いた場合、膜に電子線を照射してミクロ相分離構造を構成する1つのポリマー相の主鎖を切断した後、加熱により揮発させるか、ウェットエッチングすることによりそのポリマー相を選択的に除去する。例えば、ミクロ相分離したPS−PMMAに電子線を照射した後、現像液で現像すると、PMMA相が選択的に除去される。
パターン形成材料として、熱分解性ポリマー鎖と耐熱性ポリマー鎖(前駆体から転化されたものを含む)を有するブロックコポリマーを用いた場合、膜を熱分解温度以上に加熱することにより、ミクロ相分離構造を構成する熱分解性ポリマー相を揮発させ、そのポリマー相を選択的に除去する。
これらの方法により、膜を多孔質化することができる。得られた多孔質膜をマスクとして、基板をドライエッチングまたはウェットエッチングして、基板にミクロ相分離構造に対応するパターンを転写する。
エネルギー線を用いる方法では、ドライエッチングプロセスを用いることなく、ウェットエッチングによりマスクを形成できるという利点がある。
熱分解法を用いれば、加熱処理だけによって、マスクを形成することができる。また、マスクの孔の位置で基板表面が露出しているため非常にエッチングされやすくなり、マスクに覆われた基板表面とのコントラストが大きく取ることができる。基板のエッチングには、ドライエッチングだけでなくウェットエッチングを用いることができるので、加工できる基板材料の選択幅が大きい。ウェットエッチングを用いれば、プロセスコストを低減することもできる。
従来の、ミクロ相分離した膜をオゾン分解によって多孔質化してマスクを形成する方法では、オゾン分解に時間がかかる。本発明の方法は従来の方法と比較して短時間で行うことができる。特に、熱分解法では加熱処理を行えばよいためであり、極めて短時間で良好な多孔質パターンを形成することができる。
上述したパターン形成方法を磁気記録媒体の製造に適用する例を説明する。この方法は、以下の工程を含んでいる。(a)非磁性基板上にエッチング耐性が異なる2種のポリマーからなるブロックコポリマーを塗布する。(b)ブロックコポリマーをミクロ相分離させて海島構造を形成する。(c)ドライエッチング耐性のないポリマー相をドライエッチングし、さらに残存した耐ドライエッチングポリマー相をマスクとして非磁性基板をドライエッチングする。(d)非磁性基板のエッチング領域に磁性層を堆積する。(e)残存したポリマーおよびその上の磁性層をリフトオフする。以下、各工程についてより詳細に説明する。
(a)エッチング耐性が異なる2種のポリマーからなるブロックコポリマーは、例えば耐ドライエッチング性のPSとドライエッチング耐性のないポリマーであるPMMAを8:2または2:8程度の割合で含有し、PMMAの分子量Mwが5万以下、分子量分散が1.1以下のものが用いられる。ブロックコポリマーを、例えばセロソルブ系溶媒に溶解した溶液を、基板上にスピンコート等によって塗布する。
(b)アニールにより、ブロックコポリマーをミクロ相分離させて海島構造を形成する。海島構造の一例としては、PSの海に平均直径10nm程度のPMMAの島が規則的に分散した構造が挙げられる。このブロックコポリマーでは、CF4を用いた反応性イオンエッチング(RIE)によるエッチング選択比がPS:PMMA=1:4以上となり、島のエッチングレートが大きい。
(c)CF4を用いたRIEによって、海島構造のブロックコポリマーのうちエッチングレートが大きいPMMAの島または海のみがエッチング除去され、PSの海または島が残存する。引き続き、残存したPS相をマスクとして非磁性基板をエッチングして、島または海の部分に対応した孔を形成する。なお、非磁性基板をエッチングせずに、(d)の工程を行ってもよい。
(d)磁性材料をスパッタリングして、非磁性基板のエッチング領域および残存するPS相上に磁性層を堆積する。なお、下地層を堆積した後に磁性層を堆積してもよい。
(e)有機溶剤を用いて残存したPS相およびその上の磁性層をリフトオフする。さらに、最終的に残留している有機物をアッシングなどで取り除く。
以上の(a)〜(e)の工程により、ブロックコポリマー層の海島構造のパターンに従って、非磁性基板中または非磁性基板上に磁性層を形成することができる。この方法は、電子線描画でマスクを作製する方法に比べて、マスク形成プロセスが不要なので安価であることは明らかである。また、同時に複数枚の媒体をアニールできるので、高いスループットを維持できる。
本発明の別のパターン形成方法を磁気記録媒体の製造に適用する例を図4(A)〜(C)を参照して説明する。この方法では、パターン形成材料としてブロックコポリマーと金属微粒子を包み込んだポリマーとを用い、リフトオフ工程なしに基板の特定の位置に金属微粒子を配置することができる。
まず、A−Bブロックポリマーと金属微粒子を包み込んだAホモポリマーとの混合物の溶液を調製し、基板1上に塗布して膜を形成する。A−Bブロックポリマーとしては、例えばアクリル系ポリマー鎖と芳香族系ポリマー鎖とを有するものが用いられる。また、金属微粒子を被覆するポリマーは、Aポリマーと近い分子構造を有し、Bポリマーと非相溶であれば、Aポリマー以外のものでも同様に用いることができる。膜をガラス転移温度以上の温度でアニールすることによって、Bポリマー相3の海の中にAポリマー相4の島が存在するミクロ相分離構造を形成する。この過程において、Aホモポリマーで被覆された金属微粒子は、ミクロ相分離構造を構成するAポリマー相4に偏析し、金属微粒子5はAポリマー相4の中心部に位置する。このように、パターン形成材料の膜をアニールするだけで、ミクロ相分離された島状のポリマー相の中心部に金属微粒子が配置された構造が形成できる(図4(A))。なお、Aホモポリマーの代わりにA−Bブロックコポリマーで被覆された金属微粒子を用いた場合、Aポリマー相とBポリマー相との界面に金属微粒子が偏析する。
次に、RIEにより、ミクロ相分離構造を構成するAポリマー相4(この場合、アクリル系ポリマー相)のみを選択的にエッチングする。このとき、金属微粒子5はエッチングされずに、形成された孔6の中に残る(図4(B))。
さらに、残存したBポリマー相3をマスクとしてエッチングを続けると、基板1にも孔7が形成され、基板1の孔7の底に金属微粒子5が残る。その後、酸素プラズマにより残存したBポリマー相3をアッシングする(図4(C))。基板1の孔7の底に存在する金属微粒子5を種として磁性体を堆積すれば、磁気記録媒体を形成することができる。
上記の方法では、リフトオフ工程なしに、基板の特定位置に金属微粒子を配置することができる。この方法において、残留した金属微粒子上に導体または半導体を堆積すれば、フィールド・エミッション・ディスプレーのエミッターを形成する場合にも適用できる。
なお、用途に応じて、使用するパターン形成材料を適宜選択することが好ましい。フィールドエミッションアレイのゲート電極をエッチングしてエミッター電極が形成される空孔を形成するためには以下のようなパターン形成材料を用いることが好ましい。このパターン形成材料は、例えば芳香環含有ポリマー鎖とアクリル系ポリマー鎖とを有するブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであって、分子量が5万以上、分子量分布(Mw/Mn)が1.15以下、芳香環含有ポリマー鎖とアクリル系ポリマー鎖との分子量の比が75:25〜90:10のものである。
微粒子分散構造の磁気記録媒体を製造するためには以下のようなパターン形成材料を用いることが好ましい。このパターン形成材料は、例えば芳香環含有ポリマー鎖とアクリル系ポリマー鎖とを含有するブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであって、アクリル系ポリマー鎖の分子量が10万以下、分子量分布(Mw/Mn)が1.20以下であり、芳香環含有ポリマー鎖とアクリル系ポリマー鎖との分子量の比が75:25〜90:10のものである。
いずれのパターン形成材料でも、ドライエッチングまたはエネルギー線の照射により少数相(この場合、アクリル系ポリマー相)が除去される。ミクロ相分離構造中のパターンの大きさは、除去される少数相のポリマーの分子量で一義的に決定される。このため、少数相のポリマーの分子量を10万以下とすることが望ましい。この条件を満たしていれば、ポリマーの種類にかかわらず、直径100〜200nmのドットパターンを得ることができる。40nm程度のドットパターンを得ようとする場合には、少数相の分子量を3万程度にすることが好ましい。15nm程度のドットパターンを得ようとする場合には、少数相の分子量を10000程度にすることが好ましい。しかし、少数相の分子量が3000より小さくなると、ミクロ相分離に必要なセグメント間の斥力が充分に得られなくなり、明確なパターン形成を妨げるおそれがある。
パターン形成膜の相分離構造を電場によって配向させることもできる。アニールによりパターン形成膜中に相分離構造を形成する際に1〜10V/μm程度の電界を印加すると、相分離構造が配向する。例えばシリンダー構造の場合、シリンダー相が電気力線に沿って配向する。パターン形成膜に対して基板に平行に電圧を印加すると、シリンダー相は基板に平行に配向する。配向したパターン形成膜をマスクとして基板をエッチングすれば、基板に線状のパターンを形成できる。また、パターン形成膜の上下に平行平板電極を設置して電圧を印加すれば、シリンダー相は膜厚方向に配向する。このパターン形成膜を熱処理して多孔質化すれば、深さ方向にアスペクト比の高い多孔質膜を形成できる。この多孔質膜をマスクとして基板をエッチングすれば、基板に非常にアスペクト比の高い穴を開けることができる。
本発明によれば、パターントラスファー技術を利用し、パターン形成材料のミクロ相分離構造のパターンをパターントランスファー膜に転写し、さらに基板に転写することにより、アスペクト比の高い孔を有する基板を得ることもできる。
パターントランスファーは、基板上にパターントランスファー膜およびパターン形成膜を順次積層して実施される。なお、基板とパターントランスファー膜との間に下層パターントランスファー膜を設けてもよい。パターン形成膜、パターントランスファー膜、および下層パターントランスファー膜の材料を以下に説明する。
1.パターン形成膜
パターン形成膜としては、ドライエッチング速度比が1.3以上である2つのポリマー鎖を有するブロックコポリマー、主鎖がエネルギー線の照射により切断されるポリマー鎖とエネルギー線に対して難分解性のポリマー鎖とを有するブロックコポリマー、または熱分解性ポリマー鎖と耐熱性ポリマー鎖(前駆体から転化されたものを含む)を有するブロックコポリマーが用いられる。このようなブロックコポリマーをスピンコーティング、ディップコーティングなどによって製膜してパターン形成膜を形成する。この際、例えば電場配向によってシリンダー相を配向させたパターン形成膜を形成してもよい。
2.パターントランスファー膜
パターントランスファー膜は、パターン形成膜の下に設けられ、パターン形成膜に形成されたパターンが転写される層である。パターン形成膜を構成するコポリマーのうち1つのポリマー相が選択的に除去された後、引き続きパターントランスファー膜がエッチングされる。パターン形成膜中の1つのポリマー相を選択的に除去するには、上記のパターン形成材料に応じて、ドライエッチング、電子線照射とウェットエッチング、または熱分解を用いる。
パターントランスファー膜は、パターン形成膜を構成するコポリマーのうちエッチング耐性の高い相がエッチングされる前にエッチングが完了するように、厚みおよびエッチング速度が設定される。具体的には、パターントランスファー膜は、パターン形成膜を構成するブロックコポリマーのポリマー鎖のうちドライエッチング速度が遅いポリマー鎖と比較して、ドライエッチング速度比が0.1以上であることが好ましく、1以上がより好ましく、2以上であることがさらに好ましい。パターントランスファー膜としては、Au、Al、Crなどの金属、ポリシラン、N/(Nc−No)の値が3より大きくエッチングされやすいポリマーなどが用いられる。
パターントランスファー膜として用いられるポリシランは、下式に示される繰り返し単位を含有していれば特に限定されない。
ここで、R1、R2はそれぞれ炭素数1−20の置換または無置換のアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示す。
ポリシランの例には、ポリ(メチルフェニルシラン)、ポリ(ジフェニルシラン)、ポリ(メチルクロロメチルフェニルシラン)などが含まれる。また、ポリシランは、ホモポリマーでもコポリマーでもよく、2種以上のポリシランが酸素原子、窒素原子、脂肪族基、芳香族基を介して互いに結合した構造を有するものでもよい。ポリシランと炭素系ポリマーとを共重合させた有機ケイ素ポリマーを用いてもよい。ポリシランの分子量は特に限定されないが、Mw=2000〜1000000、さらにMw=3000〜100000の範囲が好ましい。分子量が小さすぎると、ポリシラン膜の塗布性やエッチング耐性が悪化する。また、分子量が小さすぎると、パターン形成膜を塗布する際にポリシラン膜が溶解して、両者がミキシングを起こすおそれがある。一方、分子量が高すぎると、ポリシランの塗布溶媒への溶解性が低下する。
なお、ポリシランは酸化されやすく、エッチング特性が変化しやすいため、上述した酸化防止剤または光劣化防止剤を添加することが好ましい。これらの添加剤の添加量は特に限定されないが、0.01〜10wt%、さらに0.05〜2wt%であることが好ましい。添加量が少なすぎると添加効果が得られず、添加量が多すぎるとポリシランのエッチング特性が悪化するおそれがある。
3.下層パターントランスファー膜
下層パターントランスファー膜を設けることにより(必ずしも設ける必要はないが)アスペクト比のより高いパターンを形成することができるうえに、加工できる基板材料の選択範囲を広くすることができる。下層パターントランスファー膜は、ミクロ相分離構造が転写されたパターントランスファー膜をマスクにエッチングされるので、パターントランスファー膜に対する下層パターントランスファー膜のエッチング選択比は2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上が望ましい。大きなエッチング選択比が得られるように、有機ポリマーからなるパターン形成膜に対して、パターントランスファー膜として金属や金属酸化物などからなる無機薄膜を用い、下層パターントランスファー膜として有機ポリマー膜を用いることが好ましい。この場合、パターントランスファー膜をマスクにして下層パターントランスファー膜をO2ガスでエッチングをすると、非常に深い孔を形成することができる。これらの膜をマスクとして基板をエッチングすることにより、基板に高アスペクト比の深い孔を設けることができる。深さ方向に高いアスペクト比を得るためには、下層パターントランスファー膜を異方性ドライエッチングによりエッチングすることが好ましい。なお、パターントランスファー膜と下層パターントランスファー膜とのエッチング選択比が十分大きければ、パターントランスファー膜は薄くてもよいため、パターントランスファー膜はウェットエッチングなどの等方性エッチングによりエッチングしてもよい。
下層パターントランスファー膜を用いる場合には、パターントランスファー膜としてAl,Au,Ag,Ptなどの金属、またはシリカ、酸化チタン、酸化タングステンなどの金属酸化物を用いることが好ましい。特に、製膜性がよく、ウェットエッチングおよびドライエッチングの両方のエッチングが可能なAlが好ましい。下層パターントランスファー膜に用いる有機ポリマーは特に限定されないが、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレンなどのポリスチレン誘導体、ポリビニルナフタレンおよびその誘導体、ノボラック樹脂など、CF4などフロン系のガスに対してドライエッチング耐性の高いポリマーが好ましい。下層パターントランスファー膜はブロックコポリマーである必要はないし、分子量が揃っている必要もないため、ラジカル重合法など工業的に大量生産可能な比較的安価な有機ポリマーを用いることができる。
基板上に下層および上層パターントランスファー膜ならびにパターン形成膜を形成し、エッチングを3回行ってパターンを形成する方法を詳細に説明する。
まず、基板上に下層パターントランスファー膜として上記のようなポリマーをスピンコート法やディップ法などで成膜する。下層パターントランスファー膜の厚みは転写しようとする孔などの深さと同等以上とすることが望ましい。下層パターントランスファー膜上に、真空蒸着法やメッキ法などにより上層パターントランスファー膜として金属またはSiOなどの無機物の膜を成膜する。上層パターントランスファー膜の厚さは、その上に成膜されるパターン形成膜の膜厚より薄いことが望ましい。上層パターントランスファー膜上に、上述したいずれかのパターン形成膜を成膜する。パターン形成膜の厚さは、形成すべき構造の大きさとほぼ同等であることが望ましい。例えば直径10nm程度の島を含む海島構造を得ようとする場合には、厚みを10nm程度にすることが好ましい。
上層パターントランスファー膜のドライエッチング速度は、多孔質化されたパターン形成膜のそれより大きいことが好ましい。具体的には、上層パターントランスファー膜はパターン形成膜の少なくとも1.3倍程度、さらに2倍以上の速度でエッチングされることが好ましい。ただし、上層パターントランスファー膜の下に下層パターントランスファー膜としてポリマー膜を設けている場合には、上述したエッチング選択比を満たしていなくてもよい。すなわち、上層パターントランスファー膜のエッチング後に、酸素プラズマにより下層パターントランスファー膜がエッチングされる。この際、上層パターントランスファー膜が酸素プラズマに高い耐性があれば、下層パターントランスファー膜は酸素プラズマにより容易にエッチングされる。この場合には、上層パターントランスファー膜のドライエッチング速度がパターン形成膜と比較して0.1程度でも問題がない。
以上のように各々の膜を形成した後、必要に応じてアニールしてパターン形成膜中にミクロ相分離構造を形成する。フッ素系ガスを用いたRIE、電子線照射とウェットエッチング、または熱分解を行うことにより、膜中に形成されたミクロ相分離構造のうち1つのポリマー相を選択的に除去して他のポリマー相を残す。上層パターントランスファー膜(たとえば金属)をエッチングして、この膜にミクロ相分離構造(例えば海島構造)を転写する。次に、残存した上層パターントランスファー膜をマスクとして酸素プラズマを用いてRIEを行い、下層パターントランスファー膜(たとえばポリマー)をエッチングする。酸素RIEを行うと、金属からなる上層パターントランスファー膜はエッチングされず、有機ポリマーからなる下層パターントランスファー膜のみがエッチングされるため、非常にアスペクト比の高い構造を形成することができる。これと同時に、有機コポリマーからなるパターン形成膜がアッシングされる。残存した下層パターントランスファー膜をマスクとして、再びフッ素系ガスでRIEを行い、基板をエッチングする。この結果、基板にナノメーターオーダーで、かつ非常にアスペクト比の高い孔を形成することができる。上記の工程において、RIEの代わりにウェットエッチングを用いてもよいが、パターン転写の際にパターン形状が崩れやすくなる。
本発明のパターン形成材料を用いて各種の多孔質構造体を製造する方法について説明する。
本発明の多孔質構造体の製造方法は、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを含有するパターン形成材料からなる成形体を形成する工程と、前記成形体中にミクロ相分離構造を形成する工程と、前記成形体中のミクロ相分離構造から1つのポリマー相を選択的に除去して多孔質構造体を形成する工程とを有する。
ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーのバルク成形体中に形成されるミクロ相分離構造は、シリンダー構造、ラメラ構造、バイコンティニュアス構造などの連続相構造であること好ましく、特にバイコンティニュアス構造が好ましい。バイコンティニュアス構造にはOBDD構造、ジロイド(Gyroid)構造、T−サーフェス構造、ラメラカテノイド構造などの形態がある。
パターン形成材料として、それぞれのモノマー単位のN/(Nc−No)の値(ここで、Nはモノマー単位の総原子数、Ncはモノマー単位の炭素原子数、Noはモノマー単位の酸素原子数)の比が1.4以上である2つのポリマー鎖を有するブロックコポリマー、またはポリシラン鎖と炭素系有機ポリマー鎖とを有するブロックコポリマーを用いた場合、膜をドライエッチングしてミクロ相分離構造から1つのポリマー相を選択的に除去する。
パターン形成材料として、主鎖がエネルギー線の照射により切断されるポリマー鎖とエネルギー線に対して難分解性のポリマー鎖とを有するブロックコポリマーを用いた場合、膜に電子線を照射してミクロ相分離構造を構成する1つのポリマー相の主鎖を切断した後、ウェットエッチングすることによりそのポリマー相を選択的に除去する。
パターン形成材料として、熱分解性ポリマー鎖と耐熱性ポリマー鎖(前駆体から転化されたものを含む)を有するブロックコポリマーを用いた場合、膜を熱分解温度以上に加熱することにより、ミクロ相分離構造を構成する熱分解性ポリマー相を揮発させ、そのポリマー相を選択的に除去する。
これらの方法のうちでは、エネルギー線照射およびウェットエッチングを行う方法または熱分解法が、工程が簡便であり、コストが低く、かつ比較的厚い多孔質構造体を製造できる点で好ましい。
たとえば、多孔質構造体を構成する難分解性のポリマー鎖と、エネルギー線照射およびエッチングにより除去されるポリマー鎖とを有するブロックコポリマーを用いる。照射するエネルギー線としては、成形体への透過性が高いことから、電子線(β線)、X線、γ線が好ましい。特に、電子線は分解反応の選択性が高く、分解効率が高く、低コストで照射可能なため最も好ましい。
多孔質構造体を構成する難分解性のポリマー鎖の例には、ポリスチレン;ポリヒドロスチレンなどのポリスチレン誘導体;ノボラック樹脂;ポリイミド;アクリロニトリルホモポリマーおよびアクリロニトリルと他のビニルポリマーとのコポリマーなどのアクリロニトリル系樹脂;ポリアクリル酸、ポリメチルアクリレート、ポリトリフルオロエチル−α−クロロアクリレートなどのポリアクリル酸エステル;フッ化ビニリデンホモポリマーやフッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンとのコポリマーなどのフッ化ビニリデン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ポリエーテルケトンやポリエーテルエーテルケトンなどの芳香族ケトン樹脂;ポリスルホン;ポリエーテルスルホンが含まれる。特に、耐久性の点で、アクリロニトリル系樹脂およびフッ化ビニリデン系樹脂が好ましい。
エネルギー線の照射により主鎖が切断されて除去されるポリマー鎖の例には、ポリプロピレンやポリイソブチレンなどのポリオレフィン;ポリα−メチルスチレン;ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリトリクロロエチルメタクリレートなどのポリメタクリル酸エステル;ポリメタクリルアミド;ポリブテン−1−スルフォン、ポリスチレンスルフォン、ポリ2−ブチレンスルフォンなどのポリオレフェンスルフォン;ポリメチルイソプロペニルケトンなどが挙げられる。特に、ポリメタクリル酸エステルにフッ素を導入したポリヘキサフルオロブチルメタクリレートやポリテトラフルオロプロピルメタクリレート;ポリメタクリル酸エステルのα位のメチル基を塩素で置換したポリトリフルオロエチル−α−クロロアクリレートなどが好ましい。
電子線を照射する方法を用いる場合には、多孔質構造体を構成するポリマー鎖として、電子線照射によって架橋反応が進行する1,2−ポリブタジエンなどの二重結合を有するポリマーや、ポリノルボルネンまたはポリシクロヘキサンの誘導体、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンとのコポリマーなどのフッ化ビニリデン系樹脂を用いることが特に好ましい。
熱分解性ポリマー鎖と耐熱性ポリマー鎖を有するブロックコポリマーとしては、既述した種々のブロックコポリマーを用いることができる。また、ポリマーからなる多孔質構造体を形成した後、これを焼成してカーボン化し、多孔質カーボン構造体を製造することもできる。
製造された多孔質構造体は、種々の用途に適用することができる。具体的な用途としては、電気化学セルのセパレーター、中空糸フィルターなどのフィルター、極細繊維や多孔質繊維などがある。
本発明の他の多孔質構造体の製造方法では、上述したような方法によりブロックコポリマーを含有するパターン形成材料の成形体から多孔質構造体を形成し、多孔質構造体の空孔に無機物質を充填する。この方法はブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーのミクロ相分離構造を転写した空孔を鋳型として、無機物質の構造体を製造する方法である。
たとえば熱分解性ポリマー鎖と耐熱性ポリマー鎖を有するブロックコポリマーを含有するパターン形成材料を用い、キャスト法またはメルト法により成形体を形成する。次に、必要に応じてアニールを施すことにより、成形体中にミクロ相分離構造を形成する。その後、熱分解性ポリマー相の熱分解温度以上に加熱することによって熱分解性ポリマー相を選択的に除去して、ミクロ相分離構造の形態を保持した多孔質構造体を形成する。この多孔質構造体の空孔に、めっきまたはCVDにより、金属、金属酸化物などの無機化合物、ダイヤモンドなどのカーボン材料などを充填する。その後、必要に応じて耐熱性ポリマー相をO2アッシングなどによって除去し、無機物質の構造体を形成する。さらに、形成された無機物質の構造体を鋳型として転写工程を繰り返し、他の有機物質または無機物質の構造体を形成してもよい。特に耐熱性ポリマー相からなる多孔質構造体は、熱変形など起こしにくい上、O2アッシングなどの方法によって容易に除去できるため優れている。
この方法では、多孔質構造体の空孔にめっきまたはCVDにより無機物質を充填する。このため、多孔質構造体の表面に開口部が存在し、多孔質構造体中に連続気孔が存在することが好ましい。このような空孔を形成し得るミクロ相分離構造としては、シリンダー構造、バイコンティニュアス構造、またはラメラ構造が好ましい。特に、シリンダー構造およびバイコンティニュアス構造は、多孔質成形体中で空孔の形状を保持しやすいため優れている。バイコンティニュアス構造のうちOBDD構造およびジロイド(Gyroid)構造は金属を容易に順店できるため特に好ましい。
多孔質構造体がミクロ相分離構造のドメインの大きさと同程度の膜厚を有する薄膜である場合には海島構造を形成してもよい。海島構造の多孔質構造体を鋳型として用いれば、無機物質のドット状パターンを形成することができる。例えば金属などの導電性基板上に海島構造を示す多孔質膜を形成する。このとき、空孔の底部で導電性基板が露出する。基板が露出しない場合には、酸素プラズマで多孔質膜を軽くエッチングすることにより基板を露出させる。導電性基板に通電して電解めっきを行うと、ドット状の金属パターンを形成できる。
また、親水性のガラス基板上に海島構造を示す多孔質膜を形成し、空孔の底部でガラス表面を露出させる。その後、触媒を加えて無電解めっきを行い、空孔底部から金属を析出させることにより、ドット状の金属パターンを形成できる。
多孔質構造体に金属、無機化合物、カーボンを充填するには、めっきなどの液相工程やCVDなどの気相工程が用いられる。
金属を充填する際には通常、電解めっきまたは無電解めっきが用いられる。電解めっきは、多孔質構造体に電極を取り付けて行われる。例えば、電極上にパターン形成膜を形成して多孔質化する。この電極をめっき浴に浸漬し、電極に通電することにより、多孔質成形体中に金属を析出させる。この際、多孔質構造体の空孔内部にめっき液が浸透しやすいように、プラズマ処理などして空孔の内表面を親水化処理することが好ましい。
多孔質構造体に金属または無機化合物の前駆体たとえば有機金属化合物を充填した後、焼成して多孔質構造を揮発させるとともに前駆体を金属や無機化合物に変換してもよい。金属の前駆体としては、有機金属塩、シルセスキオキサンなどが用いられる。これらの前駆体の充填方法としては、電着法、スピンコーティング法、蒸着法、スパッタリング法、含浸法などが用いられる。
多孔質構造体を製造する場合にも、平面的なパターン形成方法に関連して説明したのと同様に、パターン形成材料からなる成形体の相分離構造を電場によって配向させてもよい。例えば、基板上にパターン形成材料の薄膜を形成し、基板に平行に電圧を印加すると、シリンダー相は基板に平行に配向する。その後、例えばシリンダー相をドライエッチングまたは熱分解により除去すると、基板表面が露出する。露出した基板表面にめっきやCVDによって金属を堆積することにより、線状の金属パターンを形成することができ、例えば微小金属配線として用いることができる。
例えば、窒化珪素などの絶縁体ウェーハ上に2つの電極を5μm程度離して形成する。ウェーハ上にPS−PMMAジブロックコポリマーのPGMEA溶液をスピンコートして、厚さ10nm〜1μm程度の薄膜を形成する。2つの電極間に10Vの電圧を印加しながら、230℃で40時間アニールを行う。この間に、ジブロックコポリマーがミクロ相分離をおこし、電極に対して垂直に配向したシリンダー構造が形成される。ジブロックコポリマーのPMMA相をリアクティブイオンエッチングまたはエネルギー線照射により除去する。この結果、電極と垂直にナノメーターオーダーのパターンが形成される。このパターンを鋳型にして、電解メッキまたはスパッタによって金属を埋め込むと極細の金属配線を形成できる。
パターン形成膜の上下に平行平板電極を設置して電圧を印加すれば、シリンダー相が膜厚方向に配向する。このシリンダー相を除去すれば、アスペクト比が高い細長い空孔が膜厚方向に配向した多孔質膜を形成できる。片方の電極を除去した後にめっき液に浸漬し、残りの電極に通電して電解めっきを行うことにより、直径10〜100nm程度の金属の細線が電極に垂直に配向した剣山状のパターンまたは構造体を形成することができる。めっき核となるパラジウムなどを付着させた基板上に、上記と同様の操作により多孔質膜を形成し、無電解めっきによって空孔内に金属を充填してもよい。この際、多孔質膜を溶媒で適度に膨潤させると、多孔質膜の空孔径を縮小させることができる。縮小した空孔を有する多孔質膜を鋳型とすれば、直径が数nm程度の非常に微細な金属細線が電極に垂直に配向した剣山状のパターンまたは構造体を形成できる。同様の方法によって金属酸化物や各種セラミックスの細線なども形成することができる。この構造はフィールド・エミッション・ディスプレー(FED)のエミッターとして良好に用いることができる。エミッターの用途では、金属細線は金、クロム、イリジウムなどで形成することが好ましく、とくに耐熱性などの点からイリジウムが望ましい。FEDのエミッターを形成する場合、多孔質膜の膜厚は形成する金属配線の長さより厚いことが好ましく、金属配線の平均長さの1.5倍以上、さらに2倍以上が好ましい。これは、空孔内だけでなく、多孔質膜表面にも金属が析出すると、剣山構造のエミッターを形成することが困難になるためである。エミッターのアスペクト比(金属細線の長さ/直径)は、良好な電界放射特性を得るためには10以上、さらに50以上であることが好ましい。例えば、直径3nm、アスペクト比10のエミッターを形成しようとする場合、多孔質膜の膜厚は45nm以上であることが好ましい。
FEDのエミッターの用途では、多孔質膜が残存しているとガス発生の原因となるので、O2アッシングなどにより多孔質膜を除去することが好ましい。ただし、多孔質膜を構成するポリマー鎖がポリシルセスキオキサンのようにガス発生の少ない無機物質に変換される場合には、剣山構造を保持できるので、多孔質膜を残すことが好ましい。
上記のようにして作製した金属細線をいったん電極から取り外し、これを別に用意した電極上に接着してエミッターとして用いてもよい。この場合、エミッターを接着工程だけで形成できるので製造工程が簡略化される。ただし、金属細線は多くの場合配向しないので、電界放射効率は低下する。
ブロックコポリマーとして電子線照射により主鎖が切断されるポリマー鎖と難分解性のポリマー鎖とを有するものを用いる場合、上述した種々のポリマー鎖の組み合わせを適用できる。しかし、配向特性とエッチングコントラストの観点から、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリトリフルオロエチル−α−クロロアクリレート、ポリトリクロロエチルメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸エステルから選択される分解性のポリマー鎖と、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルナフタレンおよびその誘導体から選択される難分解性のポリマー鎖とを有するジブロックコポリマーが好ましい。
高度に配向したシリンダー構造を形成するには、難分解性ポリマーと分解性ポリマーの分子量比を75:25〜67:34と34:67〜25:75の範囲にすることが望ましい。67:34〜34:67ではシリンダーどうしが融合する可能性がある。75:25もしくは25:75より組成が偏ると連続したシリンダー構造を得ることが困難になる。
パターンの間隔は、ブロックコポリマーの分子量に依存し、10nm程度から1μm程度までの範囲で設定することができる。10nm程度のサイズのパターンを得る場合には分子量が10000程度、100nm程度のサイズのパターンを得る場合には分子量が10万程度のブロックコポリマーを用いる。分子量が3000を下回るとミクロ相分離が生じ難くなり、100万を超えると相分離構造の規則性が損なわれるおそれがある。
本発明の多孔質構造体をリチウム二次電池やエレクトロクロミック素子などの電気化学セルに適用する場合について説明する。図5に電気化学セルの概念図を示す。この電気化学セルは、それぞれ集電体を備えた正極71と負極72との間に、電解質が含浸されたセパレーター73を設けた構造を有する。
本発明の電気化学セルでは、たとえばセパレーター73として、ミクロ相分離構造を有するブロックコポリマーのうち1つのポリマー相を選択的に除去することにより形成された多孔質構造体からなるものを用いる。セパレーターは、例えばエネルギー線照射によって分解するポリマー鎖と難分解性のポリマー鎖を有するブロックコポリマーを含有するパターン形成材料を用い、以下のようにして製造することができる。まず、パターン形成材料のシートを形成し、ミクロ相分離させる。このシートにエネルギー線を照射して1つのポリマー相の主鎖を分解する。次に、ロール・ツー・ロール工程によって、セパレーターシートを負極と正極との間に挟んでホットプレスなどにより圧着する。圧着した電極とセパレーターシートの積層体を溶媒で洗浄して、主鎖が分解したポリマー相を除去してセパレーターシートを多孔質化する。この際、減圧するか加熱することによって主鎖が分解したポリマー相を揮発させて除去してもよい。この積層体を十分に乾燥した後、支持電解質などを含有する電解質溶液の液漕に浸漬して、電解質溶液を含浸させる。得られた積層体に引き出し用のリード線などを取り付け、アルミニウムのラミネートフィルムなどで封止して電気化学セルを製造する。
電子線の加速電圧を十分に高くすれば、セパレーターシートは金属メッシュからなる集電体や電極活物質を透過した電子線で照射される。このため、電極とセパレーターを圧着した後に電子線を照射してセパレーターのポリマー主鎖を分解することもできる。この方法は、圧着によって相分離構造が破壊される可能性が少なくなるため好ましい。
2つの電極とセパレーターとを圧着させたときに、電極間の間隔を保持するため、パターン形成材料に金属酸化物粒子(シリカ粒子など)からなるスペーサーを混合することが好ましい。金属酸化物粒子の粒径は、電極間の間隔の20〜90%程度であることが好ましい。
洗浄液および電解質溶液をセパレーターまで浸透しやすくするためには、図6に示すように、正極71および負極72が粒子の凝集体のように入り組んだ構造または多孔質構造を有することが好ましい。この場合、多孔質構造体からなるセパレーター73は、これらの電極の空孔に貫入した状態になる。入り組んだ構造の電極は、電極活物質をパターン形成材料からなるバインダーと混合して集電体に塗布することにより作製することができる。このような電極を用いれば、電解質溶液との接触抵抗の増大を防止するとともに液もれを防止できる。
セパレーターを構成する多孔質構造体は、回転半径10〜500nmの単位セルが周期的に配列した回転半径50μm以下のドメインが凝集した構造を有することが好ましい。このようなセパレーターは、空孔径がnmオーダであるため電解質溶液の保持性がよく液もれしにくいうえに、構造的なトラップ(行き止まりの空孔など)が少ないためイオン伝導性にも優れている。特に、バイコンティニュアス構造が転写された連続空孔を有する多孔質構造体が好ましい。バイコンティニュアス構造のうちでも、イオンがトラップされにくいためイオン伝導率が高く、膜強度にも優れていることから、OBDD構造、ジロイド構造が特に好ましい。空孔径は特に限定されないが、5〜200nm、さらに10〜100nmが好ましい。空孔径が小さすぎるとイオン伝導が阻害される。逆に、空孔径が大きすぎると電解質溶液の保持能が低下する。
セパレーターに含浸される電解質溶液は、無機塩または有機塩を水または極性溶媒に溶解したものでもよいし、常温型溶融塩でもよい。リチウムイオン二次電池の場合、電解質溶液としては、リチウム塩を極性溶媒または常温型溶融塩に溶解したものが用いられる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4,LiClO4,LiSCN、Li2B10Cl10,LiCF3CO2、リチウムトリフレートなどが用いられる。極性溶媒としてはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどカーボネート系溶媒;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒;スルホラン、3−メチルスルホランなどのスルホラン系溶媒;1、2−ジメトキシエタン、メチルジグライムなどのエーテル系溶媒などが用いられる。常温型溶融塩としては、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムトリフレートなどのイミダゾリウム塩やN−ブチルピリジニウムトリフレートなどのピリジニウム塩が用いられる。
負極としては、負極活物質(黒鉛、ハードカーボンなど)と、導電性グラファイトと、バインダーポリマー(好ましくはパターン形成材料)との混合物を銅メッシュに塗布したものを用いる。正極としては、正極活物質(コバルト酸リチウムなど)と、導電性グラファイトと、バインダーポリマー(好ましくはパターン形成材料)との混合物をアルミニウムメッシュに塗布したものを用いる。
本発明の電気化学セルでは、電極がミクロ相分離構造を有するブロックコポリマーのうち1つのポリマー相を選択的に除去することにより形成された多孔質構造体からなっていてもよい。
このような多孔質電極は、例えば熱分解性ポリマー鎖と耐熱性ポリマー鎖を有するブロックコポリマーからなる成形体中にミクロ相分離構造を形成し、熱分解性ポリマー相を熱分解して揮発させることによって空孔を形成して多孔質化することにより形成することができる。成形体を多孔質化する方法としては熱分解のほかに、電子線を照射して特定のポリマー相を分解除去する方法、ドライエッチングによって特定のポリマー相を除去する方法などを用いることができる。
特に、耐熱性ポリマー相にカーボン前駆体ポリマーを用い、多孔質化した耐熱性ポリマー相を焼成することにより多孔質カーボン電極を形成することが好ましい。カーボン前駆体ポリマーの例には、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリイミド誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリシクロヘキサジエン誘導体などが挙げられる。
カーボン前駆体ポリマーと熱分解性ポリマーを有するブロックコポリマーの成形体をアニールしてミクロ相分離構造を形成する。熱分解性ポリマー相を加熱分解して除去し、残存したカーボン前駆体ポリマーからなる多孔質構造体を形成する。この多孔質構造体を焼成すると、ミクロ相分離構造が転写された多孔質カーボン電極を得ることができる。ミクロ相分離構造がシリンダー構造、ラメラ構造、バイコンティニュアス構造の場合には、連続気孔を含む多孔質カーボン電極が得られる。このような多孔質カーボン電極は、リチウムイオン二次電池のカーボン負極、燃料電池用電極、電気二重層キャパシタ用電極などに好適に用いられる。特に、バイコンティニュアス構造を保持した多孔質カーボン電極は、界面面積や形態保持性の点で優れている。バイコンティニュアス構造のうちでも、OBDD構造またはジロイド(Gyroid)構造が好ましい。
熱分解性ポリマー鎖とカーボン前駆体に対して親和性の高いポリマー鎖を有するブロックコポリマーとカーボン前駆体との混合物を用いて、ミクロ相分離構造が転写された多孔質構造体を形成してもよい。この多孔質構造体に電子線などのエネルギー線を照射して、カーボン前駆体ポリマー鎖を架橋させることが好ましい。この場合、多孔質構造体を焼成した際に、ミクロ相分離構造が崩壊しにくくなる。また、空気中で加熱処理することによって酸化的に架橋してもよい。
多孔質構造体体の焼成温度はリチウムイオン二次電池用の負極の場合には500〜1500℃、燃料電池用電極や電気二重層キャパシタ用電極の場合には800〜3000℃である。多孔質電極の導電性を向上させるためには、2000〜3000℃で焼成してグラファイト化を進めることが好ましい。
多孔質カーボン電極は、カーボン前駆体ポリマー鎖と、焼成によってSiO類似物質を形成するポリマー鎖からなるブロックコポリマーから作製することもできる。SiO類似物質を形成するポリマー鎖としては、側鎖にSi−H基やアルコキシル基を有するポリシラン類、ポリジアルコキシシロキサンなどの側鎖にアルコキシル基を有するポリシロキサンなどのポリシロキサン類、シルセスキオキサン類、側鎖または主鎖にPOSS(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane:ポリシロキサンT8立方体)などのシロキサンクラスターなどを有するポリマー鎖が挙げられる。
このような多孔質カーボン形成材料を焼成すると、ミクロ相分離構造が保持されたカーボン相とSiO類似物質相とのナノコンポジットが形成される。このナノコンポジットを酸やアルカリ処理などして、SiO相を選択的に分解除去することによってカーボン電極として用いられる多孔質カーボンを得ることができる。この形成方法では、焼成中の熱変形によってナノ空孔がつぶれるのを防止することができる。
こうして形成された規則的なナノ空孔を有するカーボン電極は、電解質溶液の浸透性が良く、液回りが良好なためリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、燃料電池などの電気化学セルのカーボン電極として良好に用いることができる。また、空孔の孔径が均一で微細なため、電極の厚さを薄くしても大きな孔など局所的な欠陥構造が生じることがない。このため、燃料電池などの薄型化に有利である。
OBDD構造またはジロイド(Gyroid)構造などのバイコンティニュアス構造を有する多孔質カーボン電極を作製するには、ブロックコポリマー中の1つのポリマー相の体積分率を20〜80%、好ましくは45〜75%、より好ましくは55〜75%、さらに好ましくは60〜70%の範囲にする。特に、OBDD構造の場合には、1つのポリマー相の体積分率を62〜67%に設定することが好ましい。OTDD構造はOBDD構造の界面に第3の連続相が形成されたものである。OTDD構造は、3種のポリマー鎖からなるトリブロックコポリマーから形成される。OTDD構造を形成する場合、第3の相の体積分率は40〜70%、好ましくは45〜55%に設定する。同時に、A相の体積分率/B相の体積分率を、0.7〜1.3、好ましくは0.9〜1.1、より好ましくは1にする。
ミクロ相分離構造を有するブロックコポリマーから作製された多孔質カーボン電極は、従来の微粒子を焼結して作製された多孔質構造とは異なる三次元網目構造を有する。ミクロ相分離構造から作製された三次元網目構造は、構成するミクロドメインの断面の回転半径の2√3倍と4倍のいずれにも相関距離を持つ。相関距離は、例えばX線小角散乱測定、中性子散乱測定、光散乱測定などによって測定できる。三次元構造体の断面の回転半径の2倍の位置に、ミクロドメイン間の1次の散乱ピークが現れる。従来の微粒子焼結体が示す三次元網目構造の場合には断面の回転半径の2倍に対して√2と√3の位置に粒子間の高次の散乱ピークが現れる。これに対して、本発明の三次元網目構造の場合には√3と2の位置に高次の散乱ピークが現れる。
ミクロ相分離構造から作製される三次元網目構造は、従来の微粒子焼結体が示す三次元網目構造と比較して、規則的で構造欠陥が少ない。こうした規則的な三次元網目構造を示す多孔質電極を二次電池やキャパシタとして用いた場合、優れた充放電特性や繰り返し特性が得られる。また、燃料電池に用いた場合にも、良好な出力特性を得ることができる。なお、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーの分子量を変えることによって多孔質成形体の空孔径を自由に制御でき、目的に応じた多孔質電極を作製することが可能となる。
多孔質構造体をポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロールなどのホール伝導性または電子伝導性のポリマーで構成すれば、エレクトロクロミック素子などの電気化学素子の電極として用いることができる。これらはリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、燃料電池などの電極としても用いることができる。
本発明の多孔質カーボン電極を直接メタノール型の燃料電池する例について説明する。直接メタノール型の燃料電池においては、メタノール浸透層、メタノール気化層、触媒層からなる三層構造のカーボン電極が用いられ、しかも各層のカーボン電極で最適な空孔径が異なる。従来のカーボンクロスやカーボン粒子塗布膜では、各層で空孔径が精密に制御された多層構造のカーボン電極を形成することは困難であった。これに対して、熱分解性ポリマーとカーボン前駆体ポリマーを有するブロックコポリマーから形成される多孔質カーボン電極では、既述したようにポリマーの分子量を調節することによって空孔径を精密に制御することができる。したがって、それぞれ空孔径の異なる多層構造のカーボン電極も容易に形成することができる。また、このようなカーボン電極中の空孔は非常に均質で大きな孔などの欠陥が生じにくいため薄膜化することができ、ひいてはセル全体を薄型化することができる。
図7に直接メタノール型燃料電池の概念図を示す。図7に示すように、アノード(燃料ガス)側はそれぞれ多孔質のアノード触媒電極11、燃料気化層12および燃料浸透層13からなる多層構造となっており、カソード(液体燃料)側はそれぞれ多孔質のカソード触媒電極14および保水ガスチャンネル15が積層され、アノード触媒電極11とカソード触媒電極14との間にプロトン伝導体からなる電解質膜16が挟まれている。
最も外側の燃料浸透層11および保水ガスチャンネル15の空孔径は0.1μm〜10μmに設定することが好ましい。空孔径が小さすぎると浸透性、透過性が劣り、大きすぎると薄膜化できない。燃料気化層12の空孔径は50nm〜200nm、アノード触媒電極11およびカソード触媒電極14の空孔径は10〜100nmに設定することが好ましい。いずれも、空孔径が大きすぎると液体状態の燃料が染み込みやすくなり、小さすぎると燃料ガスの透過性が損なわれる。いずれの層でも空孔率は60%以上、さらに70%以上であることが好ましい。燃料気化層12、アノード触媒電極11およびカソード触媒電極14の膜厚は、1〜10μmに設定することが好ましい。膜厚が薄すぎると燃料ガスなどのクロスオーバーが大きくなり効率が低下する。膜厚が厚すぎるとセル内の物質移動が阻害され、大きな出力電流密度が得られない。電解質膜16には通常のスルホン酸基を有する含フッ素ポリマー、ポリベンズイミダゾール、金属酸化物などが用いられる。
アノード触媒電極にはPt微粒子など、カソード触媒電極にはRu微粒子などの貴金属微粒子を担持させる。このような微粒子担持多孔質電極は以下のようにして作製することができる。たとえば、ブロックコポリマーに貴金属の塩、錯体などを混合し、ミクロ相分離構造を形成した後、多孔質化する際にホルマリンなどの還元剤を作用させたり、水素または不活性ガス雰囲気下などで焼成することにより、貴金属微粒子を生成させる。
また、金属微粒子を包み込んだA−Bブロックコポリマーと、A−Bブロックコポリマーとの混合物からなる膜を形成して、ミクロ相分離構造させた後に、多孔質化してもよい。この方法では、ミクロ相分離構造を形成したときに、ポリマーで被覆された金属微粒子をミクロ相分離構造を形成するAポリマー相とBポリマー相の界面に偏析させることができる。この構造体を多孔質化すると、貴金属微粒子を残存したポリマー相の表面に偏在させることができる。こうした触媒電極は比表面積が大きく、触媒の密度が高く一定のため、高い触媒能を発揮することができる。
本発明において、多孔質カーボン構造体は以下に示す方法によっても製造することができる。この方法は、熱硬化性樹脂の前駆体、界面活性剤、水および油を混合してマイクロエマルションを調製する工程と、マイクロエマルション中に分散したコロイド粒子中の熱硬化性樹脂の前駆体を硬化させる工程と、コロイド粒子から界面活性剤、水および油を除去して熱硬化性樹脂硬化物の多孔質構造体を形成する工程と、多孔質構造体をカーボン化して多孔質カーボン構造体を形成する工程を有する。この方法では、界面活性剤によって形成される相分離構造を鋳型として、規則的に配列された空孔を含む多孔質カーボン構造体を形成する。
熱硬化性樹脂の前駆体(カーボン前駆体)としては、フェノール誘導体、レゾルシノール誘導体、フルフリルアルコールなどが用いられる。必要に応じて三塩化チタンやホウ酸などの架橋剤を添加してもよい。油としては、イソオクタン、ヘキサン、石油エーテルなどの疎水性溶媒が用いられる。
界面活性剤の例には、ポリプロピレンオキシドとポリエチレンオキシドとのブロックコポリマーのような親水性ポリマー鎖と疎水性ポリマー鎖とからなるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマー;ポリオキシエチレンラウリルエーテルのような末端に長鎖アルキル基を導入したポリエチレンオキシド;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの長鎖アルキル鎖末端にスルホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩などを導入したアニオン性界面活性剤;セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイドのような長鎖アンモニウム塩、長鎖ピリジニウム塩、長鎖イミダゾリウム塩などのカチオン性界面活性剤;フッ素系界面活性剤などが含まれる。
マイクロエマルション中に分散したコロイド粒子中では、熱硬化性樹脂の前駆体と界面活性剤との相分離構造が形成される。この相分離構造は数十nm〜数十μmと比較的大きなサイズを有し、ドット状、ラメラ状、シリンダー状もしくは三次元網目状の構造またはこれらの複合構造を形成することができる。したがって、コロイド粒子中の熱硬化性樹脂の前駆体を硬化させ、コロイド粒子から界面活性剤、水および油を除去して熱硬化性樹脂硬化物の多孔質構造体を形成し、多孔質構造体をカーボン化すると、比較的大きな空孔を有する多孔質カーボン構造体を製造することができる。
また、界面活性剤を用いて形成される比較的大きな相分離構造と、上述したサブナノメーター程度のミクロ相分離構造とを組み合わせれば、サブナノメーターから数十μmまでの範囲で階層的に構造が制御された多孔質カーボン構造体を形成することができる。典型的には数十μmの球状粒子に数μmの空孔が形成され、さらに数十nm以下の空孔を有する多孔質カーボン構造体が得られる。このような多孔質カーボン構造体をリチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタに適用した場合、サブナノメーターのナノ空孔はリチウムの吸蔵サイトやイオンの吸着サイトとして機能し、それ以上のサイズの空孔は電解質溶液を良好に浸透させる機能を有する。したがって、充放電の繰り返し特性や出力電流密度などを向上させることができる。
上記の方法において、界面活性剤としてカーボン前駆体を用いるとともに金属酸化物ゲルを添加してマイクロエマルションを調製し、溶媒を除去することによって界面活性剤と金属酸化物ゲルの複合体を形成し、この複合体を焼成してカーボンと金属酸化物ゲルとからなる複合体を形成することもできる。この方法は、金属酸化物ゲルによってカーボンのナノ空孔が良好に保持されるという利点がある。必要に応じて、酸またはアルカリによって金属酸化物ゲルを除去してもよい。
上記の方法において、界面活性剤として長鎖アルキル基からなる疎水基を有する低分子界面活性剤を用いると、サブナノメーター〜数nm程度の孔径の揃ったシリンダー状のナノ空孔がハニカム状に配列された、多孔質カーボン構造体を製造することができる。空孔の平均孔径は0.1〜10nm、さらに0.3〜5nmであることが好ましい。低分子界面活性剤の例には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの長鎖アルキル鎖の末端にスルホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩などを導入したアニオン性界面活性剤;セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイドなどの長鎖アンモニウム塩、長鎖ピリジニウム塩、長鎖イミダゾリウム塩などのカチオン性界面活性剤などが含まれる。ハニカム状多孔質カーボンをリチウムイオン二次電池のカーボン負極として用いた場合、ナノ空孔に効率的にリチウムが吸蔵されるために高容量化を実現できる。ハニカム状多孔質カーボンを電気二重層キャパシタのカーボン電極として用いる場合、ナノ空孔径を電解質のイオン半径と同程度に形成することによって容量を増大できる。ハニカム状多孔質カーボンは水素などのガスの吸蔵能も高い。
上記の方法において、界面活性剤として長鎖アルキル基を2つ以上有するものを用いると、繊維状または針状のカーボン構造体を作製できる。このようなカーボン構造体は、ガス吸蔵材料、または導電性付与もしくは強化用のフィラーなどとして用いることができる。針状カーボンはFEDのエミッターに好適に用いることができる。
上記の方法において、カーボン前駆体としてペリレン誘導体を用いると、針状カーボンまたはハニカム状多孔質カーボンを作製できる。ペリレン誘導体の例には、末端にイオン性基もしくはヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基を有する長鎖アルキル基、またはオリゴエチレンオキシド基などのポリエーテル基を導入した9、10−二置換ペリレンイミドなどが含まれる。ペリレン誘導体を用いると、ペリレン骨格が形成するカラムと長鎖アルキル基やポリエーテル基などの置換基のカラムとが交互に配置された構造が形成される。この構造体を焼成すると、置換基のカラムが選択的に揮発し、針状カーボンまたはハニカム状多孔質カーボンが得られる。この方法では、シリカゾルなどの金属酸化物ゾルを共存させてもよい。液相中において界面活性剤の存在下でカーボン前駆体のナノ構造を形成する場合、超臨界乾燥を行うと乾燥中にナノ構造が破壊されないため好ましい。
本発明の多孔質構造体をシート状または中空糸状の精密フィルターに適用する場合について説明する。このようなフィルターは、例えば以下のようにして製造することができる。まず、エネルギー線照射によって分解するポリマー鎖を有するブロックコポリマーからなるパターン形成材料を用い、キャスト法または口金などを利用した溶融押出法によってシートまたは中空糸を作製する。エネルギー線照射によって分解するホモポリマーからなるチューブの表面に、パターン形成材料をディップコーティングしてもよい。その後、必要に応じてアニールすることにより膜中に相分離構造を形成する。この相分離構造は、シリンダー構造、バイコンティニュアス構造などの連続相構造を有するものが好ましく、特に膜強度に優れたバイコンティニュアス構造が好ましい。バイコンティニュアス構造にはOBDD構造、ジロイド構造、T−サーフェス構造、ラメラカテノイド構造などがある。流動抵抗の小さなOBDD構造、ジロイド構造が特に好ましい。このように相分離構造を形成したシートまたは中空糸に電子線を照射して相分離構造の1つのポリマー相を分解する。その後、シートまたは中空糸をエッチングして、シート状または中空糸状のフィルターを製造する。
本発明のパターン形成材料から形成されたフィルターを構成する多孔質構造体は、回転半径10〜500nmの単位セルからなる周期的な多孔質構造を有する回転半径50μm以下のドメインが凝集した構造を有することが好ましい。周期的な多孔質構造のなかでもバイコンティニュアス相分離構造の少なくとも1相が除去された連続空孔を有するものが好ましく、OBDD構造またはジロイド構造の少なくとも1相が除去された多孔質構造体が特に好ましい。空孔径は特に限定されないが、5〜200nm、さらに10〜50nmであることが好ましい。空孔径が小さすぎると流動抵抗が大きくなり、フィルターとして実用的に使用できない。空孔径が大きすぎると空孔径分布のばらつきも大きくなり、やはりフィルターとして実用的に使用できない。
本発明に係るフィルターは非対称構造を有することがより好ましい。具体的には、比較的膜厚が厚く空孔径の大きな多孔質膜上に、本発明のパターン形成材料を用いて膜厚が薄いフィルター層を形成した非対称膜とするのがよい。このような非対称構造では、機械的強度の向上と、流動抵抗の軽減を両立させることができる。膜厚が厚くて空孔径の大きな多孔質膜は、以下のようにして形成することができる。例えば本発明のパターン形成材料を構成する各ポリマー鎖とそれぞれ同じ構造を有するホモポリマーの混合物を用いて、シートまたは中空糸を作製し、少なくとも1種のホモポリマーを除去することにより多孔質膜を作製する。ホモポリマーを除去するには、単なる溶媒抽出;RIEによる選択エッチング;電子線などのエネルギー線照射とそれに引き続く溶媒抽出や熱分解揮発などの方法を用いることができる。その後、この多孔質膜の表面に、ディップコーティングにより本発明に係るパターン形成材料を形成する。その後、上述したのと同様な方法を用いて、非対称構造を有するシート状または中空糸状のフィルターを製造する。
また、ホモポリマーの混合物からなるチューブの表面に、ディップコーティングによりパターン形成材料を形成した後、エネルギー線照射およびエッチングにより、比較的膜厚が厚く0.5〜5μm程度の空孔径の大きな多孔質膜と膜厚が薄いフィルター層を同時に形成して非対称構造としてもよく、透過速度を向上させる上で非常に有効である。
本発明のフィルターは、ろ過膜、透析膜、気体分離膜、逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜、血液浄化膜として好適に使用できる。なお、これらの用途に対しては、多くの場合フィルターモジュールの形態で用いられる。
本発明の多孔質構造体を太さ10〜100nmのナノメーターオーダーの極細繊維やナノメーターオーダーの空孔を有する多孔質繊維に適用する場合について説明する。このような極細繊維や多孔質繊維は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、エネルギー線照射によって分解するポリマー鎖を有するブロックコポリマーからなるパターン形成材料を用い、口金などを利用した溶融押出法によって10〜100μm径の前駆体繊維を作製する。前駆体繊維を織って織物にしてもよい。その後、必要に応じてアニールすることにより繊維中に相分離構造を形成する。この相分離構造は、海島構造、シリンダー構造、ラメラ構造、バイコンティニュアス構造などの連続相構造を有するものが好ましい。このように相分離構造を形成した前駆体繊維または織物にエネルギー線、特に電子線、γ線またはX線を照射して相分離構造の1相を分解した後にエッチングして、極細繊維や多孔質繊維を製造する。
パターン形成材料の相分離構造と、作製される極細繊維や多孔質繊維との関係は以下のようになる。海島構造では繊維内に独立空孔を有する多孔質繊維が形成される。シリンダー構造では直径10〜200nm程度のナノメーターオーダーの太さの極細繊維が形成できる。ラメラ構造では厚さ10〜200nm程度の薄片状の極細繊維が形成される。バイコンティニュアス構造では10〜200nm程度の大きさの単位セルが周期的に配列した多孔質繊維が形成される。
このような極細繊維や多孔質繊維には、既述した可塑剤、酸化防止剤、光劣化防止剤、着色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、導電剤、潤滑剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤などを含有させてもよい。
本発明の極細繊維、多孔質繊維またはこれらの繊維から作製した織物は、表面積が大きいため、各種フィルター、細菌などの担持媒体、脱臭材、吸着材、払拭材、撥水材などに用いることができる。また、本発明の繊維から作製した織物は、従来の織物にない風合いや肌触りを持つ。
本発明では、大容量のキャパシタを作製することもできる。この方法は、金属微粒子を包み込んだポリマーとブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーとの混合物からなる膜を形成する工程と、前記膜をミクロ相分離させてラメラ構造を形成し、ポリマーで被覆された金属微粒子をラメラ構造の各ポリマー層の中心部に偏析させる工程と、前記金属微粒子を凝集させ、ラメラ構造の各ポリマー層の中心部に金属層を形成する工程とを有する。
この方法を図8(A)〜(C)を参照して説明する。この図において、21はA−Bブロックコポリマー、22はAまたはBホモポリマー、23は金属微粒子を示す。まず、A−Bブロックコポリマーと、金属微粒子を包み込んだAポリマーと、金属微粒子を包み込んだBポリマーと混合する。ブロックポリマーは、ラメラ構造が得られるように、組成比が70:30〜30:70、より好ましくは55:45〜45:55の範囲のものを用いる。この材料を溶媒に溶解し、ゆっくりとキャストする。溶媒はTHF、アセトン、トルエンなど沸点の低い溶媒が好ましい。キャストした膜の表面を平坦化し、膜厚が0.1〜1mm程度になるようにローラーで延伸する。これを第1の膜とする。
また、Aホモポリマーと金属微粒子を包み込んだAポリマーとの混合物を溶媒に溶解し、キャスト膜を作製する。これを第2の膜とする。同様に、Bホモポリマーと金属微粒子を包み込んだBポリマーとの混合物を溶媒に溶解し、キャスト膜を作製する。これを第3の膜とする。
第2の膜、第1の膜、および第3の膜を順で重ね、オーブン中でアニールする。ミクロ相分離によりラメラ構造が形成され、Aポリマーで被覆された金属微粒子はA相に、Bポリマーで被覆された金属微粒子はB相にそれぞれ偏析し、金属微粒子はラメラ構造の各ポリマー層の中心部に位置する。次に、温度を上げて、金属微粒子を覆っているポリマーの主鎖が解け、金属微粒子が凝集して連続した金属層が形成される。実際には、このアニールの間に、2つの金属微粒子の移動と凝集が同時に起こっていると考えられる。作製された膜の両面に金属薄膜をスパッタして電極とし、膜の任意の大きさに切断する。
この方法では、間隔が均一な層状構造を容易に形成できる。ブロックポリマーの相分離を用いているため、アニールのみより多数の層が交互に積層したラメラ構造を自己組織的に作製できる。このとき、相分離構造によってできた層の中心に金属を配置することができる。また、層状構造のため、金属層が短絡することがない。この方法では、キャパシタの対向する電極間の距離を非常に短くでき、しかも等間隔に保持できる。このため、小さな体積の中に大きな電荷を蓄積することができる、従来のキャパシタに比べて非常に高い性能を示す。
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。
[合成例]
リビングアニオン重合法によりポリスチレン(PS)−ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のジブロックコポリマー(1)を合成した。それぞれスチレンモノマーおよびメタクリル酸メチルモノマーに、モルキュラーシーブスと活性アルミナを投入して2日間放置し、水分と禁止剤を取り除いた。これらのモノマーを減圧蒸留した後、雰囲気をアルゴン置換した。反応溶媒としては脱水THF(和光純薬製)を用意し、脱水剤として金属ナトリウムを入れて2日間還流を行った。重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(関東化学製)を用いた。
重合装置として加圧反応器(耐圧ガラス社製)を用いた。反応中は4気圧のアルゴン加圧雰囲気とし、反応系の内部に外気が入らないように細心の注意を払った。反応器にアルゴンを流しながら、脱水THFと重合開始剤を投入した。次に、反応系をドライアイス・エタノールで−78℃に冷却した。この反応系にスチレンモノマーを少量加えた。反応溶液が橙色を呈するのを確認した後、30分間反応を継続した。反応溶液を少量抜き出してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定し、測定された分子量に基づいて所望の分子量を有するポリスチレンのブロックを得るのに必要なスチレンモノマーの追加量を計算した。この計算に基づいてスチレンモノマーを追加して30分間反応させた。反応溶液を少量抜き出し、GPCにより所望の分子量が得られたことを確認した。次いで、少量の1,1’−ジフェニルエチレンを添加した後、所望の分子量を有するポリメタクリル酸メチルのブロックを得るのに必要な量のメタクリル酸メチルモノマーを滴下して30分間反応させた。反応溶液を少量抜き出し、GPCにより所望の分子量が得られたことを確認した。メタノールを少量滴下して反応を停止させた後、反応器を開放した。反応液をメタノール中に滴下して再沈し、ろ過した後、乾燥してジブロックコポリマー(1)を得た。
ジブロックコポリマー(1)を構成する各ブロックの分子量は、ポリスチレンが65000、ポリメタクリル酸メチルが13200であった。また、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
以下の実施例では、ジブロックコポリマー(1)以外のPS−PMMAのジブロックコポリマーを使用する場合があるが、これらのジブロックコポリマーはスチレンモノマーおよびメタクリル酸メチルモノマーの使用量を変えた以外は上記合成例と全く同様にリビングアニオン重合法により合成されている。
[参照例1]
2重量%のジブロックコポリマー(1)をプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、この溶液をろ過した後、3インチ径のSiO基板上に2500rpmでスピンコートした。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において210℃で10分、続いて135℃で10時間アニールを行った。210℃はアクリルの分解が始まる直前の温度であり、短時間のアニールで膜が平坦化されてスピンコート後の履歴を消し去ることができる。また、135℃程度の温度でアニールするとジブロックコポリマーのミクロ相分離が効率よく進行してミクロ相分離膜が形成される。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチング(RIE)を行った。このエッチング条件では、ミクロ相分離膜を構成するPSとPMMAとのエッチング速度が1:4以上になり、PMMAが選択的にエッチングされ、さらに残存したPSのパターンをマスクとして露出した下地がエッチングされる。その後、この試料に対して、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、有機物(PSからなるマスク)を除去した。
この結果、3インチ径のSiO基板の全面に、直径12nm、深さ15nmの孔が1平方μmあたり約700個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。この基板は、ハードディスク用の基板などに用いることができる。
また、ジブロックコポリマー(1)に対して可塑剤として10重量%のジオクチルフタレートを添加し、熱処理条件を210℃で10分、続いて135℃で1時間とした以外は上記と同様にしてミクロ相分離膜を形成し、上記と同一の条件でRIEを行った。この結果、基板に上記と同様な孔のパターンを形成できた。このようにジブロックコポリマーに可塑剤を添加することによって熱処理時間を大幅に短縮することができた。
[参照例2]
参照例1と同様の方法で、ガラス基板上にミクロ相分離膜を形成した。このミクロ相分離膜に50kVの加速電圧、100μC/cm2の照射量で電子線を一括全面照射し、PMMAの主鎖を切断した。このミクロ相分離膜を電子線レジスト用の現像液(MIBKとIPAの3:7混合溶液)で60秒間現像した後、IPAでリンスして、電子線により主鎖が切断されたPMMAを除去した。次に、残存したPSを主成分とするパターンをマスクとして、基板をフッ酸で1分間エッチングした。その後、アセトン中で超音波洗浄を行い、残存したマスクを除去した。
この結果、ガラス基板の全面に、直径15nm、深さ12nmの孔が1平方μmあたり約700個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。このように、この方法を用いると全ての工程を湿式で実施することができる。この基板も、参照例1の場合と同様に、ハードディスク用の基板などに用いることができる。
電子線を照射する代わりに照射量1J/cm2で波長0.154nmのX線を照射したほかは同様にしてパターン形成を行ったところ、やはりガラス基板の全面に直径15nm、深さ12nmの孔を1平方μmあたり約700個程度の密度でほぼ等間隔に形成することができた。
[参照例3]
ジブロックコポリマー(2)(ポリスチレン:Mw=10600、ポリメタクリル酸メチル:Mw=35800、Mw/Mn=1.07)を用い、参照例1と同様の方法で、3インチ径の基板上に形成した磁性膜上にミクロ相分離膜を形成した。このミクロ相分離膜に電子線を照射してPMMAの主鎖を切断した。このミクロ相分離膜を電子線レジスト用の現像液で現像し、電子線により主鎖が切断されたPMMAを除去した。次に、残存したPSを主成分とするパターンをマスクとして、磁性膜を塩酸で1分間エッチングした。その後、アセトン中で超音波洗浄を行い、残存したマスクを除去した。
この結果、基板の全面に直径15nm、高さ12nmの突起状の磁性膜が1平方μmあたり約650個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。この方法を用いると、磁性膜を湿式法で直接加工して島状に残すことができる。
[参照例4]
石英基板上に、下層パターントランスファー膜として厚さ500nmのポリスチレン膜をスピンコートし、その上に上層パターントランスファー膜として厚さ10nmのアルミニウム膜を蒸着した。このアルミニウム膜上に、ジブロックコポリマー(3)(ポリスチレン:Mw=144600、ポリメタクリル酸メチル:Mw=70700、Mw/Mn=1.07)を80nmの厚さにスピンコートした。次いで、参照例1と同様にアニールを行い、ミクロ相分離膜を形成した。
この試料に対して、CF4、0.01Torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、ミクロ相分離膜のPMMAを選択的にエッチングし、さらに残存したPSのパターンをマスクとしてアルミニウム膜をエッチングした。その後、この試料に対して、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、残存したPSからなるマスク、およびアルミニウム膜がエッチングされた部分で露出しているポリスチレン膜を除去した。この試料に対して、再びCF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、上層のアルミニウム膜、および露出している石英基板をエッチングした。この試料に対して、再びO2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、残存したポリスチレン膜をエッチングした。
この結果、石英基板の全面に、直径110nm、深さ1200nmという非常にアスペクト比の高い孔が1平方μmあたり35個の密度で形成された。
[
参照例5]
シリコンウェーハ上に膜厚500nmのSiO
2膜を形成した。SiO
2膜上に下記化学式で示されるポリシラン(Mw=12000、x=0.4)のトルエン溶液を塗布し、ベークして膜厚100nmのポリシランからなるパターントランスファー膜を形成した。
このパターントランスファー膜上に、ジブロックコポリマー(4)(ポリスチレン:Mw=12000、ポリメタクリル酸メチル:Mw=28000)を塗布し、90℃で2分間ベークして厚さ40nmのミクロ相分離膜を形成した。
この試料に対して、CF4、0.01Torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、ミクロ相分離膜のPMMAを選択的にエッチングした。次に、残存したPSのパターンをマスクとして、HBr流量50sccm、真空度80mTorr、励起電力200Wの条件でポリシラン膜をエッチングしてパターンを転写した。残存したポリシラン膜の上部にはPSからなるマスクが残っており、十分なエッチング速度比を持つことがわかった。次に、ポリシラン膜パターンをマスクとして、C4F8流量50sccm、CO流量10sccm、Ar流量100sccm、O2流量3sccm、真空度10mTorr、励起電力200Wの条件でSiO2膜をエッチングしてパターンを転写した。残存したSiO2膜上にはポリシラン膜が残っており、十分なエッチング耐性を持つことがわかった。残ったポリシラン膜は有機アルカリ水溶液または希フッ酸溶液で簡単に剥離することができた。
[参照例6]
フィールド・エミッション・ディスプレー(FED)の基板となる10インチ径のガラス基板上に金電極を蒸着し、その上に下層パターントランスファー膜としてSiO膜を全面に塗布し、さらにその上に上層パターントランスファー膜としてアルミニウム膜を20nmの厚さに蒸着した。次に、ジブロックコポリマー(5)(ポリスチレン:Mw=127700、ポリメタクリル酸メチル:Mw=1103000、Mw/Mn=1.30)と、ポリスチレンホモポリマー(Mw=45000、Mw/Mn=1.07)とを、重量比21:79でブレンドし、固形分が5重量%となるようにエチルセロソルブアセテート(ECA)に溶解した後、ろ過した。この溶液をアルミニウム膜上にスピンコートして110℃で乾燥させ、膜厚970nmのポリマー膜を形成した。参照例1と同様に、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で10分、続いて135℃で10時間アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成した。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、ミクロ相分離膜のPMMAを選択的にエッチングし、さらに残存したPSのパターンをマスクとして下地のアルミニウム膜をエッチングしてパターンを転写した。PSのパターンおよびアルミニウム膜のパターンをマスクとして、露出したSiO膜をフッ酸によりエッチングしてパターンを転写した。アルミニウム膜のパターンはPSのパターンで保護されているため損傷は受けない。その後、O2アッシャーでアッシングを行い、残存したPSのパターンを除去した。
この結果、基板上に直径約840nmの孔を300μm×100μmの画素あたり、約23000個形成することができた。孔の大きさの分布は±10%以内とそろっていた。これは、ジブロックコポリマーの分子量がそろっていることによる効果である。また、マスクとして用いたポリマー膜中ではスチレンホモポリマーの海の中にジブロックコポリマーが存在しているため、形成された孔の配置はランダムになっていた。このため、ディスプレーの用途では、電極の規則的な配置に起因する干渉縞の発生を防止するのに有利である。
本実施例の方法で形成した構造は、フィールド・エミッション・ディスプレー(FED)だけでなく、ポーラス・ゲート・トランジスタ・ディスプレーなどのゲート電極に適用することもできる。
また、ジブロックコポリマーとポリスチレンホモポリマーとの混合物に対して可塑剤として10重量%のジオクチルフタレートを添加して、熱処理条件を210℃で10分、続いて135℃で1時間とした以外は上記と同様にしてミクロ相分離膜を形成し、上記と同一の条件でRIEを行った。この結果、基板上に上記と同様な孔のパターンを形成できた。このように可塑剤を添加することによって熱処理時間を大幅に短縮することができた。
[参照例7]
10重量%のジブロックコポリマー(6)(ポリスチレンMw=135000、PMMA:Mw=61000、Mw/Mn=1.10)をTHFに溶解した溶液をテフロン(登録商標)シャーレに満たし、デシケーター内で14日間かけてゆっくり乾燥させ、フィルムを形成した。このフィルムの厚さは0.2mmであった。このフィルムをさらに3日間真空乾燥させた。このフィルムから超薄膜を切り出し、透過型電子顕微鏡で観察した。その結果、PS相およびPMMA相がそれぞれ連続した3次元のバイコンティニュアス構造が形成されていることが確認された。
このフィルムに加速電圧2MV、10kGyの照射量で電子線を照射し、IPAを添加してPSの溶解性を低下させた電子線レジスト用の現像液で現像した後、真空乾燥させた。このフィルムから超薄膜を切り出し、再び透過型電子顕微鏡で観察した。その結果、PMMA相が除去され、PS相がスポンジ状に連続した構造が観察された。この構造は、最初に観察された3次元のバイコンティニュアス構造とほぼ同等であることが確認された。
このフィルムは、ナノメーターオーダーの規則正しい連続空孔を介して3次元的に連続したPS相により構成されている。このような構造は、ポリマーバッテリーやキャパシタのセパレーターなどに適用することができる。
[参照例8]
1重量%のジブロックコポリマー(1)を塩化メチレンに溶解してろ過した後、ポリマー重量の1重量%のテトラブチルアンモニウム・ヘキサクロロプラチネート(IV)を加えた。この溶液を3インチ径のSiO基板上にキャストして厚さ20nmの膜を形成した。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、150℃で3時間アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成した。このとき、PMMA中にテトラブチルアンモニウム・ヘキサクロロプラチネート(IV)が偏析する。このミクロ相分離膜をホルムアルデヒド還元液でリンスした後、再び200℃で1時間アニールして、テトラブチルアンモニウム・ヘキサクロロプラチネート(IV)を白金に還元した。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、PMMAを選択的にエッチングし、さらに残存したPSのパターンをマスクとして下地のSiO基板をエッチングした。その後、O2、0.01torr、進行波150W、反射液30Wの条件でアッシングを行い、残存したPSマスクを除去した。
この結果、3インチ径のSiO基板の全面に、直径15nm、深さ10nmの孔が1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成され、さらに孔の底部に白金粒子が沈着していた。この基板を用いれば、孔の底部に沈着した白金を核にしてたとえば磁性体を成長させることができるので、ハードディスク用の基板に適用できる。
[参照例9]
1重量%のジブロックコポリマー(1)をDMFに溶解してろ過した後、ポリマー重量の1重量%のテトラブチルアンモニウム・ヘキサクロロプラチネート(IV)を溶解したDMF溶液を加えて均一化した。この溶液に、水素化ホウ酸ナトリウムのDMF溶液を加えて、テトラブチルアンモニウム・ヘキサクロロプラチネート(IV)を還元し、平均粒径4nmの白金微粒子を析出させた。この溶液を3インチ径のSiO基板上にスピンコートして厚さ25nmの膜を形成した。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、200℃で3時間アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成した。このとき、PMMA中に白金微粒子が偏析する。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、PMMAを選択的にエッチングし、さらに残存したPSのパターンをマスクとして下地のSiO基板をエッチングした。その後、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、残存したPSマスクを除去した。
この結果、3インチ径のSiO基板の全面に、直径17nm、深さ10nmの孔が1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成され、さらに孔の底部に白金粒子が沈着していた。この基板を用いれば、孔の底部に沈着した白金を核にしてたとえば磁性体を成長させることができるので、ハードディスク用の基板に適用できる。
[参照例10]
1重量%のジブロックコポリマー(1)を塩化メチレンに溶解してろ過した後、ポリマー重量の1重量%のテトラブロモ金(III)セチルピリジニウム塩を加えた。この溶液を3インチ径のSiO基板上にキャストして厚さ20nmの膜を形成した。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、100℃から200℃まで3時間かけ昇温してアニールを行い、ミクロ相分離膜を形成した。このアニールにより、テトラブロモ金(III)セルチピリジニウム塩が還元されて金微粒子が析出する。このとき、PMMA中に金微粒子が偏析する。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、PMMAを選択的にエッチングし、さらに残存したPSのパターンをマスクとして下地のSiO基板をエッチングした。その後、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、残存したPSマスクを除去した。
この結果、3インチ径のSiO基板の全面に、直径15nm、深さ10nmの孔が1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成され、さらに孔の底部に金粒子が沈着していた。同様な方法により白金微粒子の生成も可能であった。この基板を用いれば、孔の底部に沈着した白金など核にしてたとえば磁性体を成長させることができるので、ハードディスク用の基板に適用できる。
[参照例11]
2種のテレケリックポリマーとして化学式(11a)で示されるカルボキシル基終端ポリスチレン(Mw=83000、Mw/Mn=1.08)と化学式(11b)で示されるアミノ基終端ポリメチルメタクリレート(Mw=19600、Mw/Mn=1.03)とを等モルずつ混合し、合計で2重量%となるようにPGMEAに溶解した。この溶液中で、ポリスチレンとPMMAとを反応させてジブロックコポリマーを生成させた。この溶液をろ過した後、3インチ径のSiO基板上に2500rpmでスピンコートした。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で10分、続いて135℃で10時間アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成した。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、ミクロ相分離膜のPMMAを選択的にエッチングし、さらに残存したPSのパターンをマスクとして下地のSiO基板をエッチングした。その後、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、残存したPSマスクを除去した。
この結果、3インチ径のSiO基板の全面に、直径25nm、深さ16nmの孔が1平方μmあたり約1000個程度の密度でほぼ等間隔に形成された。
[参照例12]
化学式(12a)で示されるジメチルクロロシリル基終端ポリスチレン(Mw=85000、Mw/Mn=1.04)と化学式(12b)で示される水酸基終端ポリジメチルシロキサン(Mw=16800、Mw/Mn=1.10)とを等モルずつ混合し、さらに少量のトリエチルアミンを添加し、合計で2重量%となるようにPGMEAに溶解した。この溶液中において、トリエチルアミンの存在下でポリスチレンとポリジメチルシロキサンとを反応させてジブロックコポリマーを生成させた。この溶液をろ過した後、3インチ径のSiO基板上に2500rpmでスピンコートした。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で10分、続いて135℃で10時間アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成した。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行った。このエッチング条件では、PSとポリジメチルシロキサンのエッチング速度が1:4以上になる。この結果、ミクロ相分離膜のポリジメチルシロキサンが選択的にエッチングされ、さらに残存したPSのパターンをマスクとして下地のSiO基板がエッチングされる。その後、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、残存したPSマスクを除去した。
この結果、3インチ径のSiO基板の全面に、直径25nm、深さ17nmの孔が1平方μmあたり約1000個程度の密度でほぼ等間隔に形成された。
[参照例13]
S.Demoustier-Champagneら(Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.31, 2009-2014(1993))の方法によりポリフェニルメチルシラン−ポリスチレンのジブロックコポリマー(ポリフェニルメチルシラン:Mw=12000、ポリスチレン:Mw=48000、Mw/Mn=2.1)を合成した。
1.5重量%のジブロックコポリマーをトルエンに溶解しろ過した後、3インチ径のSiO基板上に2500rpmでスピンコートした。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で10分、続いて135℃で10時間アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成した。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行った。このエッチング条件では、PSとポリシランのエッチング速度が1:4以上になる。この結果、ミクロ相分離膜のポリシランが選択的にエッチングされ、さらに残存したPSのパターンをマスクとして下地のSiO基板がエッチングされる。その後、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、残存したPSマスクを除去した。
この結果、3インチ径のSiO基板の全面に、直径12nm、深さ10nmの孔が1平方μmあたり約2400個程度の密度でほぼ等間隔に形成された。
[参照例14]
モノマーとして化学式(14a)で示されるマスクトジシレン、および化学式(14b)で示されるフェニルメタクリレートを用い、リビングアニオン重合法により化学式(14c)で示されるジブロックコポリマーを合成した。具体的には、THF中において、開始剤としてsec−ブチルリチウムを用い、反応温度を−78℃に設定し、モノマーを順次添加することにより合成した。このジブロックコポリマーは、重量平均分子量Mw=70500、Mw/Mn=1.2、ポリシランブロックの分子量=14500、ポリフェニルメタクリレートブロックの分子量=56000であった。
1.5重量%のジブロックコポリマーをトルエンに溶解しろ過した後、3インチ径のSiO基板上に2500rpmでスピンコートした。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で10分、続いて135℃で10時間アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成した。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行った。このエッチング条件では、ミクロ相分離膜のポリシランが選択的にエッチングされ、さらに残存したポリフェニルメタクリレートのパターンをマスクとして下地のSiO基板がエッチングされる。その後、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、残存したポリフェニルメタクリレートを除去した。
この結果、3インチ径のSiO基板の全面に、直径14nm、深さ10nmの孔が1平方μmあたり約2400個程度の密度でほぼ等間隔に形成された。
[参照例15]
化学式(15a)で示されるスチレン末端ポリエチレンオキシドマクロマー(Mw=14100、Mw/Mn=1.04)およびスチレンをTHFに溶解した溶液にラジカル開始剤としてAIBNを加え、アルゴン雰囲気下、60℃で60時間加熱してラジカル重合させ、グラフトコポリマーを合成した。このグラフトコポリマーは、重量平均分子量Mw=101000、Mw/Mn=2.1、スチレン鎖の分子量=16400、ポリエチレンオキシドマクロマーユニットの分子量=84600であった。
2重量%のグラフトポリマーを乳酸エチルに溶解し、ろ過した後、3インチ径のSiO基板上に2500rpmでスピンコートした。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で10分、続いて135℃で10時間アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成した。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行った。このエッチング条件では、ミクロ相分離膜のポリエチレンオキシドが選択的にエッチングされ、さらに残存したPSのパターンをマスクとして下地のSiO基板がエッチングされる。その後、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、残存したPSマスクを除去した。
この結果、基板上に直径18nm、高さ10nmの突起を無数に形成することができた。
[参照例16]
以下のようにして電気化学セルの電解質セパレーターを作製した。
まず、ジブロックコポリマーを合成した。金属ナトリウムの存在下で蒸留した無水THF中において、α−スチリルリチウムを開始剤として、イソプレン、メチルメタクリレートを順次添加して、ポリイソプレン鎖とポリメチルメタクリレート鎖からなるジブロックコポリマーを合成した。このジブロックコポリマーは、重量平均分子量Mw=81000、Mw/Mn=1.3、ポリイソプレンユニットの重量分率=67%であった。
このジブロックコポリマーの溶液を調製し、キャスティングによりフィルムを得た。このフィルムを窒素気流下、130℃で5時間アニールして、ミクロ相分離構造を形成した。TEMで観察したところ、開孔径が約40nmのジロイド構造が形成されていた。
ジロイド構造を有するフィルムに加速電圧2MV、10kGyの照射量で電子線を照射し、ポリメチルメタクリレート相の主鎖を切断するとともに、ポリイソプレン相を架橋(ゲル化)させた。このフィルムをMIBK−イソプロピルアルコール(体積比3:7)混合溶媒中で洗浄し、ポリメチルメタクリレート相を除去した。TEMで観察したところ、フィルムはジロイド構造を保持し、連続空孔を有する多孔質であることがわかった。
この多孔質フィルムに濃度1MのLiClO4(無水物)/プロピレンカーボネート溶液を含浸させた後、直径0.5cmに打ち抜き、厚さ約50μmの電解質含浸多孔質フィルムを得た。この電解質含浸多孔質フィルムの両面を白金電極で挟んでセルを構成し、インピーダンスゲインフェイズアナライザー1260(Schlumberger Instruments社)を用い、室温において周波数30MHz〜0.05Hzで交流インピーダンスを測定した。そして、イオン伝導率を、σ=(1/R)(d/s)から求めた。ここで、Rは測定された交流インピーダンスから求められるフィルムの電気抵抗、sは面積(cm2)、dは厚さ(cm)である。この多孔質フィルムは、25℃で4.2mScm-1と良好なイオン伝導率を示した。この多孔質フィルムは電解質溶液を良好に保持し、液ダレが生じることはなかった。
また、上記のジブロックコポリマー溶液にジブロックコポリマーに対して3wt%のシリカ微粒子(トクシールP、徳山曹達(株)製)を分散させた以外は上記と同様な方法で電解質溶液含浸多孔質フィルムを作製した。この多孔質フィルムは、25℃で4.5mScm-1と良好なイオン伝導率を示した。
これらの結果から、本実施例の電解質溶液含浸多孔質フィルムは、リチウムイオン二次電池、およびエレクトロクロミックセルやグレッツェルセルのような色素増感型光電変換セルなどの電気化学セルの電解質セパレーターとして優れた特性を有することがわかった。
[参照例17]
参照例16で用いたのと同一のポリイソプレン鎖とポリメチルメタクリレート鎖とからなるジブロックコポリマーを用い、以下のように押し出し成形により電気化学セルの電解質セパレーターを作製した。
ジブロックコポリマーに少量(ポリマーに対し約1重量%)の加硫をおこないジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、押し出し成形用の原液とした。この原液の粘度は40℃で2400mPa・sであった。この原液をスリット幅60μmの長方形の口金を有するシートダイより40%DMF水溶液中に吐出して、ジブロックコポリマーのシートを作製した。このシートを窒素気流下、130℃で5時間アニールし相分離構造を得た。この後、150℃で5時間アニールし、ポリイソプレン鎖を架橋した。加速電圧2MV、10kGyの照射量で電子線を照射した。このシートをMIBK−イソプロピルアルコール(体積比3:7)混合溶媒中で洗浄して、多孔質シートを得た。
この多孔質シートに濃度1MのLiClO4(無水物)/プロピレンカーボネート溶液を含浸させた後、直径0.5cmに打ち抜き、厚さ約50μmの電解質溶液含浸多孔質シートを得た。参照例16と同様に、この電解質溶液含浸多孔質シートのイオン伝導度を測定したところ、4.6mScm-1と良好なイオン伝導率を示した。
[参照例18]
参照例16で用いたのと同一のポリイソプレン鎖とポリメチルメタクリレート鎖とからなるジブロックコポリマーを用い、以下のように溶融押し出し成形により電気化学セルの電解質セパレーターを作製した。
ジブロックコポリマーに2wt%のフェノール系酸化防止剤(スミライザーBP−76、住友化学工業(株)製)を添加した混合物を180℃で混練してペレットを調製した。このペレットを押出機に供給して190℃で溶融し、長方形の口金を有するシートダイより吐出して、ジブロックコポリマーのシートを作製した。このシートを窒素気流下において、130℃で5時間アニールした後、加速電圧2MV、10kGyの照射量で電子線を照射した。このシートをMIBK−イソプロピルアルコール(体積比3:7)混合溶媒中で洗浄して多孔質シートを得た。
この多孔質シートに濃度1MのLiClO4(無水物)/プロピレンカーボネート溶液を含浸させた後、直径0.5cmに打ち抜き、厚さ約50μmの電解質溶液含浸多孔質シートを得た。参照例16と同様に、この電解質溶液含浸多孔質シートのイオン伝導度を測定したところ、4.1mScm-1と良好なイオン伝導率を示した。
[参照例19]
以下のようにして中空糸フィルターを作製した。
ポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)のジブロックコポリマー(7)(Mw=75000、ポリスチレンユニット重量分率=68%、Mw/Mn=1.03)のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液を調製した。この溶液をポリメチルメタクリレートの中空糸にディップコーティングした。この中空糸を70℃で風乾した後、窒素気流下において、135℃で10時間アニールした。その後、中空糸に加速電圧2MV、10kGyの照射量で電子線を照射した。この中空糸をMIBK−イソプロピルアルコール(体積比3:7)混合溶媒中で洗浄して多孔質中空糸を得た。得られた多孔質中空糸は、内径500μm、外径600μmであり、その壁面は孔径35nmのOBDD型の相分離構造が転写された多孔質となっていた。
[参照例20]
以下のようにして中空糸フィルターを作製した。
ポリスチレン(Mw=51000、Mw/Mn=1.03)とポリメチルメタクリレート(Mw=72000、Mw/Mn=1.06)のブレンドポリマー(重量比6:4)のPGMEA溶液を調製した。この溶液をポリメチルメタクリレートの中空糸にディップコーティングした。この中空糸を70℃で風乾した後、窒素気流下において、135℃で1時間アニールして、膜厚45μmの被覆膜を形成した。また、参照例19で用いたのと同一のPS−PMMAのジブロックコポリマー(7)のPGMEA溶液を調製した。この溶液を上記中空糸にディップコーティングした。この中空糸を70℃で風乾して、膜厚5μmの被覆膜を形成した。この中空糸を窒素気流下において、135℃で10時間アニールした。その後、中空糸に加速電圧2MV、10kGyの照射量で電子線を照射した。この中空糸をMIBK−イソプロピルアルコール(体積比3:7)混合溶媒中で洗浄して多孔質中空糸を得た。得られた多孔質中空糸は、内径500μm、外径600μmであり、その壁面は孔径35nmのOBDD型の相分離構造が転写された多孔質の外層と、孔径約0.5〜1μmの連続気孔を有する多孔質の内層から形成された非対称膜構造となっていた。
[参照例21]
ポリスチレン(PS)−ポリターシャリーブチルアクリレート(PtBA)のジブロックコポリマーを調製した。2wt%のジブロックコポリマーをPGMEAに溶解した。この溶液に、ジブロックコポリマーに対して1.5wt%となるように光酸発生剤としてナフチルイミジル・トリフルオロメタンスルホネートを添加した。この溶液をガラス基板上にスピンコートし、ホットプレート上において110℃で3分間乾燥させて100nm厚の膜を形成した。
このガラス基板をステッパーに設置し、ジブロックコポリマー膜をi線(365nm)で露光した。露光部ではナフチルイミジル・トリフルオロメタンスルホネートから酸が発生し、この酸を触媒にしてPtBAのターシャリーブチル基が分解され、ポリアクリル酸に変化した。このガラス基板をオーブンに入れ、160℃で1時間アニールして、膜中にミクロ相分離構造を形成した。
次に、CF4ガスによるRIEを行った。露光部では、ポリアクリル酸のミクロドメインは容易にエッチングされ、さらにその下のガラス基板もエッチングされたが、PSはエッチングされずに残った。未露光部では、PS、PtBAともエッチングされずに残った。この結果、露光部にのみ直径約90nmの孔のパターンが形成されていた。
[参照例22]
ポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)のジブロックコポリマーを調製した。2wt%のジブロックコポリマーをPGMEAに溶解した。この溶液をガラス基板上にスピンコートし、ホットプレート上において110℃で3分間乾燥させて、100nm厚の膜を形成した。このガラス基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で10分、引き続き135℃で10時間アニールを行い、膜中にミクロ相分離構造を形成した。
このガラス基板を電子線照射装置(EX−8D:東芝製)に設置し、ジブロックコポリマー膜を電子線で露光し、PMMAの主鎖を切断した。この膜を電子線レジスト用の現像液(MIBKとIPAの3:7混合溶液)で現像した。露光部では、主鎖が切断されたPMMAが除去されたが、PSはエッチングされずに残った。未露光部では、PS、PMMAともエッチングされずに残った。次に、残存したポリマーのパターンをマスクとして、露出したガラス基板をフッ酸で1分間エッチングした。その後、アセトン中で超音波洗浄して、残存しているポリマーのパターンを除去した。この結果、露光部にのみ直径約90nmの孔のパターンが形成されていた。
[参照例23]
ジブロックコポリマー(1)の溶液に、ジブロックコポリマーに対して0.1重量%のフェノール系酸化防止剤(スミライザーBP−101、住友化学工業(株)製)を添加した以外は参照例1と同様に窒素雰囲気中においてアニールして、3インチSiO基板上にミクロ相分離膜を形成した。
アニール後のミクロ相分離膜について赤外吸収スペクトルを測定したところ、このミクロ相分離膜ではアニールに伴う酸化などの化学変性が抑制されていることがわかった。
その後、参照例1と同様に、ミクロ相分離膜をマスクとしてSiO基板をエッチングした。その結果、SiO基板の全面に直径12nmで、深さ18nmの孔を、1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成することができた。形成された孔は参照例1と比較して深く、孔間の距離のばらつきが半減した。
以上のように酸化防止剤を添加することによってアニールに伴うジブロックコポリマーの酸化変性を抑制し、パターン形成能およびエッチング特性を向上させることができた。
また、空気中でアニールを行った場合でも、上記と同様に、SiO基板の全面に直径12nmで、深さ18nmの孔を、1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成することができた。一方、酸化防止剤を添加していないジブロックコポリマー溶液を用い空気中でアニールしてミクロ相分離膜を形成した場合には、基板上に形成された孔の深さは10nmと浅く、孔間の間隔も比較的ばらついていた。以上のように酸化防止剤を添加することによって、空気中でも窒素気流下と同等の良好なパターニング形成を行うことができた。
また、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤の代わりに、リン系酸化防止剤であるスミライザーP−16、アデカスタブPEP−24G、硫黄系酸化防止剤であるスミライザーTPM、スミライザーTP−D(いずれも住友化学工業(株)製)、HALS系酸化防止剤であるサノールLS−770(三共(株)製)をそれぞれ用い、上記と同様にパターン形成を行った。いずれの酸化防止剤を用いた場合でも、アニール時の雰囲気が窒素であるか空気であるかにかかわらず、参照例1と比較して孔の深さが20%程度増大し、孔の間隔のばらつきも抑制された。
[
参照例24]
ジブロックコポリマー(1)の溶液に、ジブロックコポリマーに対して0.1重量%の下記化学式で示されるエステル型酸化防止剤を添加し、空気中でアニールを行った以外は
参照例2と同様にして、3インチSiO基板上にミクロ相分離膜を形成し、パターン形成を行った。その結果、
参照例2と同様な良好なパターンを形成することができた。
また、酸化防止剤として、エステル型酸化防止剤の代わりに、フェノール系酸化防止剤であるスミライザーGA−80、スミライザーBP−101、スミライザーBP−76(いずれも住友化学工業(株)製)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、リン系酸化防止剤であるスミライザーP−16、アデカスタブPEP−24G、硫黄系酸化防止剤のスミライザーTPM、スミライザーTP−D(いずれも住友化学工業(株)製)、およびHALS系のサノールLS−770(三共(株)製)をそれぞれ用い、上記と同様にパターン形成を行った。いずれの酸化防止剤を用いた場合でも、参照例2と同様な良好なパターンを形成することができた。
なお、酸化防止剤を添加せずに空気中でアニールを行うと、形成されたパターンの孔の大きさおよび間隔のばらつきが増大した。以上の結果から、空気中でアニールする場合には、ジブロックコポリマーの酸化防止剤を添加することが有効であることがわかった。
[参照例25]
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤であるスミライザーGA−80、スミライザーBP−101、スミライザーBP−76(いずれも住友化学工業(株)製)、BHT、上記のエステル型酸化防止剤、リン系酸化防止剤であるスミライザーP−16、アデカスタブPEP−24G、硫黄系酸化防止剤であるスミライザーTPM、スミライザーTP−D(いずれも住友化学工業(株)製)、およびHALS系酸化防止剤であるサノールLS−770(三共(株)製)を用意した。
パターントランスファー膜を形成するポリシランに対して0.1重量%の酸化防止剤を添加し、ミクロ相分離を形成するためのアニールを空気中で行った以外は、参照例5と同様にしてパターントランスファー工程およびSiO2膜のパターニングを行った。その結果、いずれの酸化防止剤を用いた場合にも、SiO2膜に形成される孔の深さを参照例5と比較して約30%増大させることができた。
[参照例26]
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤であるスミライザーGA−80、スミライザーBP−101、スミライザーBP−76(いずれも住友化学工業(株)製)、BHT、上記のエステル型酸化防止剤、リン系酸化防止剤であるスミライザーP−16、アデカスタブPEP−24G、硫黄系酸化防止剤であるスミライザーTPM、スミライザーTP−D(いずれも住友化学工業(株)製)、およびHALS系酸化防止剤であるサノールLS−770(三共(株)製)を用意した。
ジブロックコポリマーに対して0.1重量%の酸化防止剤を添加し、ミクロ相分離を形成するためのアニールを空気中で行った以外は、参照例13と同様にしてパターン形成を行った。その結果、いずれの酸化防止剤を用いた場合にも、SiO基板に形成される孔の深さを参照例13と比較して約20%増大させることができた。
なお、酸化防止剤を添加せずに空気中でアニールを行うと、形成された孔の大きさおよび間隔のばらつきが増大したうえに、孔の深さが約20%減少した。以上の結果から、空気中でアニールする場合には、ジブロックコポリマーの酸化防止剤を添加することが有効であることがわかった。
[参照例27]
図9に示すフィールド・エミッション・ディスプレー(FED)素子を製造する例について説明する。ガラス等の絶縁基板101上にニオブ(Nb),モリブデン(Mo)またはアルミニウム(Al)等の金属薄膜からなるカソード導体102を形成する。フォトリソグラフィーにより、このカソード導体102の一部をエッチングして、一辺が40〜100μm程度の矩形の中抜き部を形成する。このカソード導体102を覆うように、スパッタ法またはCVD法により厚さ0.5〜2.0μm程度の抵抗層103を形成する。この抵抗層103の材料としてはIn2O3,Fe2O3,ZnO,NiCr合金または不純物をドープしたシリコンなどが用いられる。抵抗層103の抵抗率は、約1×101〜1×106Ωcmとすることが好ましい。
この抵抗層103をアンモニア等のアルカリ溶液によるウェットエッチングまたはフッ素系ガスによる反応性イオンエッチング(RIE)によりパターニングして、複数の端子部103Aを形成する。次に、スパッタ法またはCVD法により、カソード導体102および抵抗層103を覆うように膜厚約1.0μmの二酸化シリコンからなる絶縁層104を形成する。さらに、スパッタ法により、絶縁層104の上に膜厚約0.4μmのNb、Mo等からなるゲート導体105を成膜する。
次に、レジスト(東京応化製OFPR800、100cp)をパターニングして、ゲート配線とエミッター配線の交差部を保護する。つづいて、参照例6の方法に従い、ゲート導体105上にジブロックコポリマー(5)およびポリスチレンホモポリマーの溶液をスピンコートして乾燥した後、アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成する。このミクロ相分離膜に対して、CF4ガスを用いてRIEを行い、ミクロ相分離膜のPMMAを選択的にエッチングし、さらに残存したPSのパターンをマスクとしてゲート導体105をエッチングしてパターンを転写する。その後、O2アッシャーでアッシングを行い、残存した有機物を除去する。こうして、ゲート導体105に直径約840nmの多数の開口部106を形成する。バッファード弗酸(BHF)等を用いたウェットエッチングまたはCHF3等のガスを用いたRIEにより、開口部106の絶縁層104を抵抗層103が露出するまで除去する。
次いで、電子ビーム(EB)蒸着法を用いてアルミニウムを斜め蒸着することにより剥離層を形成する。EB蒸着法により、剥離層の上にモリブデンを垂直方向に正蒸着し、開口部106内にモリブデンをコーン状に堆積し、エミッター107を形成する。その後、燐酸等の剥離液により剥離層を除去し、図9に示すようなFED素子を製造する。
[参照例28]
図10に示すFED素子を製造する例について説明する。対角14インチ、厚さ5mmのパイレックス(登録商標)ガラス基板201を清浄化し、その表面をプラズマ処理によって荒らした。このガラス基板201の長辺方向に平行に、幅350μmのエミッター配線202を450μmピッチで作製した。この際、基板201のエミッター配線202の方向に平行な両辺から2インチずつの領域をそれぞれ配線取り出し用のマージンとし、この領域にはエミッター配線202が形成されないようにパターニングを行った。具体的には、PVA膜を塗布し、マスクを通して紫外線により露光(光重合)し現像して、エミッター配線202間の領域にPVA膜を残すようにパターニングした。このときのパターニング精度は15μmであった。無電解めっきによって50nmのNi膜を成長させた後、PVA膜およびその上のNi膜をリフトオフした。残ったNi膜を電極として、電解めっきによって1μmのAu膜を成長させた。
LPD法により絶縁層としてSiO2膜203を1μm成長させた。このSiO2膜203には多くのパーティクル欠陥が含まれていたが、その密度は1平方cmあたり1000個程度であり、実用上問題のないレベルであった。Au上に形成された膜はやや黒ずんでいたが、耐圧は1μmあたり100V取れており、実用上問題のないレベルであった。このSiO2膜203はAu−Ni配線の段差部をコンフォーマルに覆っており、Auの露出部は存在しなかった。無電解めっきによりSiO2膜203上に30nmのPd膜を成長させた後、電解めっきによって200nmのIr膜を成長させて、ゲート膜を形成させた。次に、ゲート膜を基板の短辺方向にパターニングし、幅110μmのゲート配線204を150μmピッチで形成した。この際、基板201のゲート配線204の方向に平行な両辺から2インチずつの領域をそれぞれ配線取り出し用のマージンとし、この領域にはゲート配線204が形成されないようにパターニングを行った。具体的には、上記と同様にPVA膜を塗布し、マスクを通して紫外線により露光(光重合)し現像して、ゲート配線204上にPVA膜を残すようにパターニングし、残りの露出している領域をエッチング除去した。このときのパターニング精度は同様に15μmであった。
次に、ゲート配線204およびSiO2膜203の一部をエミッター配線202が露出するまで除去してほぼ円形の開口部205を設けるためのパターニングを行った。ゲート配線204のパターニングと開口部205のパターニングを別々行う理由は2つある。1つは、開口部205の径が1μm程度であるため、光学的に1μm程度の解像度を持つパターニング方法を用いる必要があるためである。もう1つは、開口部205は必ずしも整然と配列されている必要はなく、ほぼ一様な開孔径を有する開口部205が各画素内におよそ等しい数だけ存在していればよいためである。
具体的には以下のようにして開口部205のパターニングを行った。ジブロックコポリマー(ポリスチレン:Mw=150700、ポリアクリル酸t−ブチル:Mw=1033000、Mw/Mn=1.30)と、ポリスチレンホモポリマー(Mw=45000、Mw/Mn=1.07)とを、重量比21:79でブレンドし、固形分が5重量%となるようにシクロヘキサノンに溶解し、固形分に対して1%のナフチルイミドトリフレートを光酸発生剤として添加した後、ろ過した。この溶液をゲート配線204上にスピンコートして110℃で乾燥させ、膜厚970nmのポリマー膜を形成した。ゲート配線204とエミッター配線202の交差部を除いて、開口部205を形成する領域のみg線によって露光し、光酸発生剤から酸を発生させた。試料をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、150℃で1時間アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成するとともに、露光部分のポリt−ブチルアクリレートを酸により分解してポリアクリル酸にした。なお、アニール時にリフローが起った結果、ゲート配線204上ではポリマー膜の膜厚は1μmになっていた。基板全体をアルカリ溶液に3分間浸漬してポリアクリル酸の「島」の部分を除去し、純水でリンスし、ゲート配線204を露出させた。RIEにより、ゲート配線204をエッチングし、さらにその下のSiO2膜203をエッチングして、エミッター配線202を露出させた。
次に、電気泳動法により開口部205内に抵抗層206を着膜した。この作業は、エミッター配線を100ラインずつ分割して行った。抵抗層206の材料として、粒径100nmのポリイミド微粒子(ピーアイ技術研究所製)と粒径10nmのフラーレンを含む炭素微粒子とを1000:1の重量比で混合したものを用いた。この混合物0.4wt%を分散溶媒(エクソンケミカル製、アイソパーL)に分散した。また、金属塩としてナフテン酸ジルコニウム(大日本インキ化学工業製)をポリイミド・炭素微粒子混合物に対して10wt%添加した。基板201を分散液中に浸漬し、基板201から100μmの間隔を隔てて対向電極を配置し、エミッター配線202を接地し、超音波を印加しながら対向電極に+100Vを印加した。電圧印加直後、数mAの電流が流れ始めたが、電流は指数関数的に減衰し、2分後には観測されなくなった。この時点で、分散溶媒中に分散していた抵抗材料は全て基板201上に着膜していた。続いて、対向基板を接地し、ゲート配線204に+50Vを印加して、ゲート配線204上に付着した微粒子を溶媒中に泳動させて除去した。さらに、窒素雰囲気中において300℃でアニールを行うことにより、エミッター配線202に抵抗層206を固着させた。
次に、上記と同様に、電気泳動法により微粒子エミッター層207を着膜した。微粒子エミッター層207の材料として、粒径100nmの立方晶窒化硼素微粒子(昭和電工製、製品名SBN−B)を用意した。このBN微粒子を希フッ酸処理した後、450℃で水素プラズマ処理した。このBN微粒子0.2wt%を抵抗層の着膜に用いたのと同一の溶媒に分散させた。また、ナフテン酸ジルコニウムをBN微粒子に対して10wt%添加した。上記と同様な方法でBN微粒子を着幕した後、ゲート配線204上に付着した微粒子を除去した。さらに、水素雰囲気中、350℃でアニールを行うことにより、抵抗層206に微粒子エミッター層207を固着させた。
得られた電子放出素子アレイに対して、高さ4mmのスペーサー208を介して、ITOからなるアノード電極層212および蛍光層213が形成されたフェースプレート211を取り付けて、真空チャンバー内に設置した。ターボ分子ポンプによって真空チャンバー内を10-6Torrに減圧した。アノード電位を3500Vに設定した。非選択のエミッター配線202およびゲート配線204をいずれも0Vとした。選択されたエミッター配線202およびゲート配線204をそれぞれ−15V、+15Vにバイアスした。この結果、電子放出が起こり、蛍光層213上に輝点が確認された。ディスプレーの表示領域全体にわたって複数の画素を選択し、同一の条件で輝度を測定した。その結果、輝度のばらつきは3%以内に収まっていた。
[参照例29]
まず、ブロックコポリマーから作製した多孔質フィルムをリチウムイオン二次電池のセパレーターとして用いるために予備的な試験を行った。
ポリフッ化ビニリデン鎖とポリメチルメタクリレート鎖からなるジブロックコポリマー(重量平均分子量Mw=79000、Mw/Mn=2.2、ポリフッ化ビニリデン重量分率=66%)を溶媒に溶解し、ジブロックコポリマーに対して3wt%のシリカ(トクシールP、徳山曹達(株)製)を添加した。この溶液をキャスティングして、ジブロックコポリマーのキャストフィルムを得た。このキャストフィルムを窒素気流下、130℃で5時間加熱処理し、キャストフィルム中に相分離構造を形成した。TEM観察より開孔径約40nmのバイコンティニュアス構造が形成されていた。このキャストフィルムに加速電圧2MV、10kGyの照射量で電子線を照射し、ポリメチルメタクリレート相を分解すると同時に、ポリフッ化ビニリデン相を架橋させてゲル化した。このフィルムを酢酸エチル中で洗浄し、ポリメチルメタクリレート相を除去した。TEM観察により、このフィルムはバイコンティニュアス構造を保持した連続空孔を有する多孔質フィルムとなっていることがわかった。
LiPF6無水物をプロピレンカーボネート−ジメチルカーボネート混合溶媒(1:1)に溶解して1Mの電解質溶液を調製した。上記で得られた厚さ約50μmの多孔質フィルムに電解質溶液を含浸させた後、直径0.5cmの円形に打ち抜いた。この電解質溶液含浸多孔質フィルムの両面を白金電極で挟んでセルを構成し、インピーダンスゲインフェイズアナライザー(Schlumberger Instruments社、1260)により、室温にて周波数30MHz〜0.05Hzで交流インピーダンスを測定した。その結果、25℃で4mScm-1と良好なイオン伝導率を示した。また、電解質溶液は多孔質フィルムに良好に保持され、液ダレが生じることはなかった。
次に、以下のようにしてリチウムイオン二次電池を作製した。
正極活物質としてLiCoO2を用いた。LiCoO2をアルゴン雰囲気下、300℃で3時間加熱して乾燥した。その後、LiCoO2、導電性カーボンブラック、および上記ジブロックコポリマーを重量比85:10:5で混合し、この混合物に少量のDMFを加えて混練した。この混練物を、厚さ20μm、4cm×4.5cmのアルミニウムメッシュ上に均一に塗布し乾燥し、厚さ約50μmの正極を作製した。得られた正極の単位面積当たりのLiCoO2重量は17mg/cm2であった。正極活物質容量は150mAh/gであった。
負極活物質としてフルフリルアルコール樹脂を1100℃で焼成したハードカーボン(難黒鉛化炭素)を用いた。ハードカーボンをアルゴン雰囲気下、600℃で3時間加熱して乾燥した。ハードカーボン、導電性カーボンブラック、および上記ジブロックコポリマーを重量比85:10:5で混合し、この混合物に少量のDMFを加えて混練した。この混練物を、厚さ20μm、4cm×4.5cmの銅メッシュ上に均一に塗布して乾燥し、厚さ約50μmの負極を作製した。得られた負極の単位面積当たりのハードカーボン重量は7mg/cm2であった。負極活物質容量は300mAh/gであった。
前記ジブロックコポリマーを溶媒に溶解し、ジブロックコポリマーに対して3wt%のシリカ(トクシールP、徳山曹達(株)製)を添加した。この溶液をキャストしてジブロックコポリマーのキャストフィルムを得た。正極、負極、およびキャストフィルムを、それぞれ窒素気流下、130℃で5時間加熱処理した後、加速電圧2MV、10kGyの照射量で電子線を照射した。正極、キャストフィルム、負極の順に積層した後、ホットプレスして圧着し、積層体を作製した。この積層体を酢酸エチル中で洗浄して、ジブロックコポリマーのメチルメタクリレート相を除去した。この積層体を70℃で20時間真空加熱して乾燥し、セル構造体を作製した。LiPF6無水物をプロピレンカーボネート−ジメチルカーボネート混合溶媒(1:1)に溶解して1Mの電解質溶液を調製した。セル構造体を電解質溶液に浸漬して、セル構造体に電解質溶液を含浸させた。このセル構造体を防水、気密性のアルミラミネートフィルムで包み、アルゴン気流下で封止した。負極および正極にそれぞれ外部電極端子を設け、リチウムイオン二次電池を作製した。
得られたリチウムイオン二次電池を50μA/cm2で定電流充電し、電池電圧が4.2Vに達した後、定電圧充電した。充電時間は負極活物質容量300mAg/gに対して、30%過剰容量が充電される時間とした。充電終了後、30分の休止時間をおいてから、電池電圧が2.5Vになるまで50μA/cm2で定電流放電した。放電終了後、30分の休止時間をおいた。この操作を1サイクルとして、充放電操作を繰り返し、サイクル毎の負極(ハードカーボン)活物質1gあたりの電池容量(負極換算容量mAh/g)と充放電効率(充電容量に対する放電容量の割合)(%)を調べた。
充放電サイクル試験を500サイクルまで行ったが、充放電曲線に大きな変化は見られず、80%以上の容量を保持し、充放電サイクルに優れていることがわかった。また、内部短絡などもまったく起こらなかった。また正極、負極およびキャストフィルムを積層してホットプレスして、積層体とした後に電子線を照射した他は同様にして作製したリチウムイオン二次電池も同様な優れた特性を示した。
[参照例30]
ポリフッ化ビニリデン鎖とポリメチルメタクリレート鎖とからなるジブロックコポリマー(重量平均分子量Mw=79000、Mw/Mn=2.2、ポリフッ化ビニリデン重量分率=66%)の溶液を調製した。この溶液をポリメチルメタクリレートのファイバーにディップコーティングした後、70℃で風乾し、さらに窒素気流下、135℃で10時間加熱して乾燥して、ポリメチルメタクリレートファイバーの表面に膜を形成した。このファイバーの表面に加速電圧2MV、10kGyの照射量で電子線を照射して、PMMA相を分解すると同時に、ポリフッ化ビニリデン相を架橋させてゲル化した。このファイバーを酢酸エチル中で洗浄してPMMAを除去して中空糸を得た。得られた中空糸は内径500μm、外径530μmであり、その壁面は孔径40nmのジロイド型の相分離構造を保持した多孔質構造を有していた。
得られた中空糸を100本用いて有効長25cmのフィルターモジュールを作製し、平均粒子径100nmのシリカゾル溶液をろ過した。ろ液中にシリカゾルはまったく観測されなかった。
[参照例31]
押出機を用いてポリアクリル酸鎖とポリメチルメタクリレート鎖からなるジブロックコポリマー(重量平均分子量Mw=82000、Mw/Mn=1.3、ポリアクリル酸重量分率=26%)のペレットを調製した。このペレットを一軸押出機に供給して押出成形し、直径50μmの繊維を作製した。この繊維を用いて平織物の布地を作製した後、窒素気流下、135℃で10時間加熱処理した。その後、この布地に加速電圧2MV、10kGyの照射量で電子線を照射してPMMA相を分解した。この布地をMIBK−イソプロピルアルコール混合溶媒(体積比3:7)中で洗浄し、PMMA相を除去した。得られた布地をSEMにより観察したところ、ポリアクリル酸からなる直径約26nmの極細繊維の繊維束の集合体であることがわかった。このことから、上記のアニール後の繊維はシリンダー構造を形成していたと考えられる。
[参照例32]
ポリアクリル酸鎖とポリメチルメタクリレート鎖からなるジブロックコポリマー(重量平均分子量Mw=104000、Mw/Mn=1.3、ポリアクリル酸重量分率=55%)を用いた以外は、参照例31と同様にして布地を作製した。得られた布地をSEMにより観察したところ、ポリアクリル酸からなる厚さ67nmの薄片状繊維の繊維束の集合体であることがわかった。このことから、アニール後の繊維はラメラ構造を形成していたと考えられる。
[参照例33]
ポリアクリル酸鎖とポリメチルメタクリレート鎖からなるジブロックコポリマー(重量平均分子量Mw=42000、Mw/Mn=1.3、ポリアクリル酸重量分率=65%)を用いた以外は、参照例31と同様にして布地を作製した。得られた布地をTEM観察したところ、ポリアクリル酸からなる平均孔径16nmの連続気孔からなる多孔質繊維であることがわかった。このことから、アニール後の繊維はバイコンティニュアス構造を形成していたと考えられる。
[参照例34]
2重量%のジブロックコポリマー(分子量:ポリスチレン=65000、ポリメタクリル酸メチル=13200、Mw/Mn=1.04)をプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、この溶液をろ過した後、3インチ径のSiO基板上に2500rpmでスピンコートした。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で10分、続いて135℃で10時間アニールを行った。この結果、直径17nmの島を持つ海島構造のミクロ相分離膜が形成された。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチング(RIE)を行った。このエッチング条件ではPMMAが選択的にエッチングされ、さらに残存したPSのパターンをマスクとして露出した下地がエッチングされる。エッチング後の試料に通常のスパッタリング法によって15nmのCoPtCr薄膜を堆積した。CoPtCr薄膜を堆積した試料をセロソルブ系溶媒中に浸して超音波洗浄を行い、残存したポリスチレンおよびその上のCoCrPt膜をリフトオフした。リフトオフ後の試料の表面を走査電子顕微鏡で観察した。その結果、約17nm径のCoPtCr磁性粒子が、ガラス基板母材中に存在する構造が観察された。
この試料を高密度磁気記録媒体として用いるために、10nmのCをスパッタ法により保護膜として堆積し、テープバニッシュを行って異常突起を取り除き、湿潤によって潤滑剤を塗布した。この試料の磁気特性を測定したところ、保磁力2kOeの垂直磁気異方性を有していることがわかった。
また、参照例2の方法に従いジブロックコポリマーのパターニングを行った以外は、上記と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。この結果、上記と同等の特性を有する磁気記録媒体が得られた。
さらに、参照例4の方法に従いパターントランスファー法を用いてジブロックコポリマーのパターニングを行った以外は、上記と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。この方法によって形成された孔の深さは30nmと深かったため、上記の磁気記録媒体よりも保磁力の高い磁気記録媒体が得られた。
[参照例35]
まず、ポリスチレン(分子量:6300)−PMMA(分子量:13000)、Mw/Mn=1.04のブロックコポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶かして溶液を作製した。この溶液を、スピンコートして約10nmの膜厚で2.5インチのガラス基板上に塗布した。塗布したガラス基板を恒温槽に入れ、150℃で24時間アニールし、さらに120℃で2時間アニールした後に室温に戻した。アニール後のガラス基板試料の表面を走査電子顕微鏡で観察した。その結果、平均間隔30nmで配列した平均直径17nmの球状の島と、それを取り囲む海とに相分離した構造になっていることが確認された。
CF4を用いた反応性イオンエッチング(RIE)処理を行った。その結果、ブロックコポリマーの島の部分のみがエッチングされていた。膜厚測定から、CF4を用いたRIEに対する海と島の間の選択比は、海:島=1:4であることがわかった。
エッチング後の試料に通常のスパッタリング法によって15nmのCoPtCr薄膜を堆積した。CoPtCr薄膜を堆積した試料をセロソルブ系溶媒中に浸して超音波洗浄を行い、残存したポリスチレンおよびその上のCoCrPt膜をリフトオフした。リフトオフ後の試料の表面を走査電子顕微鏡で観察した。その結果、約15nm径のCoPtCr磁性粒子が、ガラス基板母材中に存在する構造が確認された。
この試料を高密度磁気記録媒体として用いるために、10nmのCをスパッタ法により保護膜として堆積し、テープバニッシュを行って異常突起を取り除き、湿潤によって潤滑剤を塗布した。この試料の磁気特性を測定したところ、保磁力2kOeの垂直磁気異方性を有していることがわかった。
[参照例36]
シリコンウェーハ上に膜厚500nmのアルミニウム層を形成し、これを半導体用レジスト(OEBR−800)を用いてパターニングして、5μm離れた2つの電極を形成した。SiO膜を形成しCMP法で平坦化し電極部分を露出させた。この上にアルミニウムを20nm積層したのち、SiOを5nm積層した。再び、半導体用レジスト(OEBR−800)を用い電極になるようにパターニングし、RIEをわずかにかけて電極部分を露出させた。
ジブロックコポリマー(分子量:ポリスチレン=146700,ポリメチルメタクリレート=70700,Mw/Mn=1.11)をPGMEAに2重量%溶解した溶液を3000rpmでスピンコートして、ホットプレート上において120℃で厚さ45nmのジブロックコポリマー薄膜を作製した。
電極に10Vの電圧を印加しながら窒素雰囲気中において230℃で40時間アニールした。この間に、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのジブロックコポリマーがミクロ相分離をおこし、シリンダー相が電極に対して垂直に配向する。2時間かけて80℃まで冷却した後、室温まで自然冷却を行った。
次にCF4で0.01torr,30sccm,進行波150Wで180秒間リアクティブイオンエッチングをおこなった。この結果、ポリメチルメタクリレートが選択的にエッチングされ、さらに下のアルミニウムもエッチングされた。この結果、5μm間隔の電極間に約50nmの間隔をもつ、櫛形の電極が形成された。
[参照例37]
シリコンウェーハ上にアルミニウムを蒸着して、10nm厚の薄膜を形成した。ジブロックコポリマー(分子量:ポリスチレン=322400,ポリメチルメタクリレート=142000,Mw/Mn=1.11)をトルエンに10重量%溶解した溶液を3000rpmでスピンコートして、ホットプレート上において120℃で厚さ500nmのジブロックコポリマー薄膜を作製した。この薄膜を真空中において60℃で14日間乾燥させた。さらにジブロックコポリマー薄膜上にアルミニウムを蒸着して、10nm厚の薄膜を形成した。
この2層のアルミニウム間に1Vの電圧を印加しながら窒素雰囲気中において210℃で40時間アニールを行った。この間に、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートのジブロックコポリマーがミクロ相分離をおこし、シリンダー相が電極に対して垂直に配向する。2時間かけて80℃まで冷却した後、室温まで自然冷却を行った。
次にCF4で0.01torr,30sccm,進行波150Wで600秒間リアクティブイオンエッチングをおこなった。この結果、ポリメチルメタクリレートが選択的にエッチングされ、さらに下のアルミニウムを突き抜け、基板までエッチングされた。酸素でアッシングを行い、残存するポリマーを除去した。基板に最大で直径100nm、深さ約1μmのトレンチを開けることができた。
[参照例38]
パイレックス(登録商標)ガラス基板を清浄化し、その表面をプラズマ処理によって荒らした。このガラス基板上に金を蒸着して100nm厚の薄膜を形成した。ポリスチレン鎖とポリメチルメタクリレート鎖からなるジブロックコポリマー(重量平均分子量Mw=37000、Mw/Mn=1.3、ポリメチルメタクリレート鎖重量分率=26%)をトルエンに10重量%溶解した溶液をスピンコートしてホットプレート上において120℃で乾燥し、厚さ500nmのジブロックコポリマー薄膜を作製した。この薄膜を真空中において60℃で14日間乾燥させた。さらにジブロックコポリマー薄膜上にアルミニウムを蒸着して50nm厚の薄膜を形成した。
この金膜とアルミニウム膜間に1Vの電圧を印加しながら窒素雰囲気中において210℃で40時間アニールを行った。この間にポリスチレンとポリメチルメタクリレートのジブロックコポリマーがミクロ相分離をおこし、ポリメチルメタクリレートのシリンダー相が電極に対して垂直に配向する。2時間かけて80℃まで冷却した後、室温まで自然冷却を行った。
次に塩酸水溶液に浸漬して表面のアルミニウム蒸着膜を除去し、電子線を照射した。電子線照射後、キャストフィルムをMIBKとイソプロピルアルコールの体積比3:7で混合した混合溶媒中で洗浄して、ポリマー膜を多孔質化した。この多孔質ポリマー膜を電子顕微鏡観察したところ、直径約10nmの孔が基板に垂直に、金膜まで達して形成されていることが分かった。この多孔質膜を金めっき浴中で定電位電解して、貫通孔中に金を析出させた。電鋳後、酸素でアッシングして多孔質ポリマー層を除去したところ、金膜上に直径約8nmの金ファイバが剣山状に基板に垂直に配向して多数配列した構造が得られた。同様にイリジウムを電鋳したところ、金と同様な剣山構造が得られた。
次にこの剣山構造の電界放射能を調べた。直径8nmのイリジウムの剣山構造が形成された金膜をカソード電極、対向アノード電極としてユーロピウムをドープしたAl2O3赤色蛍光体を製膜したITO基板を用い、電極間間隔30μmのセルを作製し、真空中(1×10-6Torr)において300Vで駆動した。その結果、良好な電界放射が起こり赤色の発光が観察され、この剣山構造がコールドエミッションディスプレーのエミッターとして動作することが分かった。
さらにこの剣山構造のエミッターを用いてFEDパネルを作製した。このとき、参照例27と同様な方法を採用したが、EB蒸着によって絶縁層上にスピント型エミッターを形成する代わりに、上記のようにイリジウムの剣山構造を形成した。得られた電子放出素子アレイに対して、参照例28と同様に高さ4mmのスペーサーを介して、ITOからなるアノード電極層および蛍光層が形成されたフェースプレートを取り付けて、減圧用の排気孔を残して周囲をシールした。ターボ分子ポンプによって素子パネル内を10-6Torrに減圧してから排気孔を封じ切ってFEDパネルを作製した。このFEDパネルを駆動するためアノード電位を3500Vに設定し、非選択のエミッター配線およびゲート配線をいずれも0Vとし、選択したエミッター配線およびゲート配線をそれぞれ−15V、+15Vにバイアスした。この結果、電子放出が起こり、蛍光層上に輝点が確認された。ディスプレーの表示領域全体にわたって複数の画素を選択し、同一の条件で輝度を測定した。その結果、輝度のばらつきは3%以内に収まっていた。
[参照例39]
銅箔上に金を蒸着して100nm厚の薄膜を形成した。ポリスチレン鎖とポリメチルメタクリレート鎖からなるジブロックコポリマー(重量平均分子量Mw=370000、Mw/Mn=1.2、ポリメチルメタクリレート鎖重量分率=26%)をトルエンに10重量%溶解した溶液をキャストして風乾し、さらに真空中において60℃で8時間乾燥し、厚さ30μmのジブロックコポリマー膜を形成した。このキャスト膜上にアルミニウムを蒸着して50nm厚の薄膜を形成した。
この金膜とアルミニウム膜間に60Vの電圧を印加しながら窒素雰囲気中において210℃で40時間アニールを行った。この間にポリスチレンとポリメチルメタクリレートのジブロックコポリマーがミクロ相分離をおこし、ポリメチルメタクリレートのシリンダー相が電極に対して垂直に配向する。2時間かけて80℃まで冷却した後、室温まで自然冷却を行った。
次に塩酸水溶液に浸漬して表面のアルミニウム蒸着膜を除去し、電子線を照射した。電子線照射後、キャストフィルムをMIBKとイソプロピルアルコールの体積比3:7で混合した混合溶媒中で洗浄して、ポリマー膜を多孔質化した。この多孔質ポリマー膜を電子顕微鏡観察したところ、直径約120nmの孔が基板に垂直に金膜に達するまで形成されていることが分かった。この多孔質膜を窒素パージしたBi3+/HTeO2+浴中で白金メッシュを対極として定電位電解して、貫通孔中にテルル化ビスマスを析出させた。電鋳後、多孔質ポリマー層を除去したところ、金膜上にシリンダーの直径と同程度のテルル化ビスマスファイバが剣山状に基板に垂直に配向して多数配列した構造が得られた。このテルル化ビスマスファイバは高効率の熱電変換素子などに用いることができる。
[参照例40]
アルミニウム線にディップコーティング法により、ポリスチレン鎖とポリメチルメタクリレート鎖からなるジブロックコポリマー(重量平均分子量Mw=82000、Mw/Mn=1.3、ポリスチレン鎖重量分率=26%)溶液を塗布した。塗布後、70℃で風乾した。乾燥後、コーティング表面にアルミニウムを100nm蒸着した。蒸着後、アルミニウム線とアルミニウム蒸着膜間に30Vの電圧を印加しながら窒素雰囲気中において200℃で40時間アニールを行った。この間にポリスチレンとポリメチルメタクリレートのジブロックコポリマーがミクロ相分離をおこし、シリンダー相が電極に対して垂直に配向する。2時間かけて80℃まで冷却した後、室温まで自然冷却を行った。加熱処理後、塩酸水溶液に浸漬して表面のアルミニウム蒸着膜を除去した。表面のアルミニウム蒸着膜を除去後、電子線を150kGy照射した。電子線照射後、キャストフィルムをMIBKとイソプロピルアルコールの体積比3:7で混合した混合溶媒中で洗浄して、ポリマー膜を多孔質化した。これを塩酸水溶液に浸漬して芯のアルミニウム線を溶解除去して、中空糸フィルターを得た。得られた中空糸は、内径500μm、外径530μmであって、壁面は孔径約27nmのシリンダー型の相分離構造を転写した多孔質構造であった。シリンダー状の細孔は壁面に対して垂直方向に配向した貫通孔となっておりフィルターに適した形状であることが分かった。
得られた中空糸フィルターを用い、100本からなるミニモジュール(有効長25cm)を作製したところ、ろ過装置として良好に作動した。
[参照例41]
ポリアクリル酸鎖とポリメチルメタクリレート鎖からなるジブロックコポリマー(重量平均分子量Mw=82000、Mw/Mn=1.3、ポリアクリル酸重量分率=26%)を押し出し機でペレット化した後、Tダイより押し出して、厚さ約100μmのフィルムを作製した。このフィルムを、窒素気流下において、135℃で10時間加熱処理した。加熱処理後、電子線を150kGy照射した。電子線照射後、MIBKとイソプロピルアルコールの体積比3:7で混合した混合溶媒中で洗浄した。SEMおよびTEMより、直径26nmの極細繊維の繊維束が絡み合った不織布状平面素材が形成されていることが観察された。この平面素材は優れた柔軟性を示し、精密フィルターとしても良好に用いることができた。
[参照例42]
1,2−ポリブタジエンとポリメチルメタクリレートのジブロックコポリマー(Mw=281000、1,2−ポリブタジエン重量分率=32%、Mw/Mn=1.05)に2重量%の3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを混合したシクロヘキサノン溶液を調製した。この溶液を、アプリケーターを使用してガラス板に塗布して厚さ20μmのシートを作製した。このシートを窒素気流下において135℃で2時間加熱処理した。このシートに加速電圧2MV、200kGyの照射量で電子線を照射した。このシートを乳酸エチルで24時間洗浄後、メタノールで1時間洗浄して多孔質シートを得た。得られた多孔質シートは、三次元網目状に高度に分岐した直径約50nmのポリブタジエンのシリンダー相からなる、バイコンティニュアス相分離構造が転写された多孔質構造を有していた。
得られた多孔質シートにポリ(2−ブロモエチル)シルセスキオキサン溶液を含浸し、紫外線を照射し、80℃で加熱処理するプロセスを5回繰り返して、多孔質シートの空孔中にポリ(2−ブロモエチル)シルセスキオキサンを十分に充填した。多孔質シートを窒素気流下において150℃で1時間、450℃で1時間加熱処理した。その結果、多孔質シートの多孔質構造を鋳型として転写されたナノ構造を有するシリカ多孔質体が作製された。
アクリロニトリルに10重量%の3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを混合した混合液を調製した。この溶液をシリカ多孔質体に含浸した。シリカ多孔質体に紫外線を照射してアクリロニトリルを重合し硬化した。この構造体を空気中において210℃で24時間加熱した後、窒素気流下において210℃から毎分10℃の昇温速度で800℃まで加熱処理してカーボン化した。このシリカとカーボンの複合体をフッ酸処理してシリカを溶出させた。この結果、1,2−ポリブタジエン多孔質シートのモルフォロジーを反映した連続空孔を有する多孔質カーボンが作製できた。
[参照例43]
ジブロックコポリマーの合成
この例では、アニオン重合法によりポリシクロヘキサジエン誘導体ポリマー鎖(ポリ(シス−5,6−ビス(ピバロイルオキシ)−2−シクロヘキセン−1,4−イルエン))とポリエチレンオキシド(PEO)鎖とからなるジブロックコポリマーを合成した。
反応開始剤としてn−ブチルリチウムを用いた。エチレンオキシドは水素化カルシウムのカラムを通して乾燥した後、n−ブチルリチウムを少量加えてから蒸留したものを用いた。溶媒のテトラヒドロフラン(THF)は金属ナトリウムを乾燥剤としてアルゴン気流下、2回蒸留した。重合装置として耐圧ガラス社製の加圧反応器を用いた。反応中は4気圧のアルゴン雰囲気とし、外気が系の内部に入らないように細心の注意を払った。
反応容器内にシスー5,6−ビス(ピバロイロキシ)−1,3−シクロヘキサジエンを入れた後、THFを蒸留して反応容器内に直接導入した。反応容器内をアルゴン雰囲気とし、−80℃でn−ブチルリチウムのヘプタン溶液を加えて1週間攪拌した。続いて所定量のエチレンオキシドを導入してさらに攪拌した。少量の塩酸を含んだ2mLの2−プロパノールを加えて反応を停止させた後、反応容器を開放した。反応液を3倍に濃縮した後、十分な量の石油エーテル中に滴下してポリマーを再沈させた。ポリマーを濾別した後、室温で真空乾燥させてジブロックコポリマーを得た。
ポリ(シス−5,6−ビス(ピバロイルオキシ)−2−シクロヘキセン−1,4−イルエン)のユニットはMw=65000、ポリエチレンオキシドのユニットはMw=13200で、Mw/Mn=1.5であった。
パターン形成
得られたジブロックコポリマーにラジカル発生剤として3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを5重量%添加した混合物を、塩化メチレンに2重量%溶解して濾過した後、3インチ石英ガラス基板上に2500rpmでスピンコートしてパターン形成膜を形成した。基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を留去した。その後、基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、150℃で5時間、200℃で5時間、300℃で5時間、350℃で30分加熱処理した。加熱処理後の基板表面をAFMで観察したところ、パターン形成膜の全面に直径約12nmの孔が形成されていることがわかった。
この試料に対し、CF4ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、基板をエッチングした。その後、O2ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、パターン形成膜の残渣を除去した。この条件では、有機物のみを効率的にアッシングできる。この結果、石英ガラス基板の全面に直径12nm、深さ25nmの孔が1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。
この石英ガラス基板の全面にスパッタリングにより15nmのCoPtCr薄膜を堆積した。CoPtCr薄膜上にスパッタリングにより10nmのカーボンを保護膜として堆積した後、テープバニッシュを行なって異常突起を取り除き、潤滑剤を塗布して高密度磁気記録媒体を作製した。この媒体の垂直磁気異方性は2kOeであった。
[参照例44]
ジブロックコポリマーの合成
この例では、リビングアニオン重合法によりポリブチルメチルシラン鎖とポリエチレンオキシド鎖とからなるジブロックコポリマーを合成した。
モノマーとして下記化学式に示されるマスクトジシレンとエチレンオキシドとを用い、開始剤としてsec−ブチルリチウムを用い、THF中、反応温度−78℃でモノマーを順次添加してジブロックコポリマーを合成した。ジブロックコポリマーを構成する各ブロックの分子量は、ポリブチルメチルシランが65000、ポリエチレンオキシドが13200であった。また、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。
パターン形成
3インチシリコンウエハー上にポリアミド酸溶液(東レ社製セミコファインSP−341をN−メチル−2−ピロリドンで希釈したもの)をスピンコートした。その後、試料を窒素気流下において、150℃、250℃、350℃の順で1時間ずつ加熱して、厚さ30nmのポリイミドからなるパターントランスファー膜を形成した。
合成したジブロックコポリマーをTHFに2重量%溶解して濾過した後、ポリイミドからなるパターントランスファー膜上に2500rpmでスピンコートしてパターン形成膜を形成した。試料を110℃で90秒間加熱して溶媒を留去した。その後、試料をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、150℃で5時間加熱処理した。次に、空気中において、試料に低圧水銀ランプから紫外線を照射した。再び試料をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、150℃で1時間、200℃で5時間、300℃で5時間、350℃で30分加熱処理した。基板表面をAFMで観察したところ、パターン形成膜の全面に直径約13nmの孔が開口していることがわかった。
この試料に対し、O2ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行った。その結果、シリコンウエハー上のポリイミド膜(パターントランスファー膜)の全面に、直径13nm、深さ30nmの比較的アスペクト比の良好な孔を1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。このポリイミド多孔質膜をマスクとして、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、シリコンウエハーをエッチングした。続いてO2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、残存したポリイミド膜をエッチングした。この結果、シリコンウエハーの全面に直径14nm、深さ70nmのアスペクト比の高い孔を約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。
以上のように、ポリブチルメチルシラン鎖とポリエチレンオキシド鎖とからなるジブロックコポリマーから多孔質のマスクを形成でき、パターントランスファー膜であるポリイミド膜にアスペクト比の高いドットパターンを形成でき、さらに下地基板を良好に加工できることがわかった。
[参照例45]
ジブロックコポリマーの合成
この例では、リビングアニオン重合法によりポリエチレンオキシド(PEO)鎖とポリジメチルシロキサン(PDMSO)鎖とからなるジブロックコポリマー(PEO−b−PDMSO)を合成した。
反応開始剤としてポリエチレンオキシドマクロマーを用い、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを重合した。溶媒のテトラヒドロフラン(THF)は金属ナトリウムを乾燥剤としてアルゴン気流下、2回蒸留した。ポリエチレンオキシドは片末端にOH基を有し、他端がメトキシ基でキャップされており、使用直前にベンゼン溶液から凍結乾燥した。重合装置として耐圧ガラス社製の加圧反応器を用いた。反応中は4気圧のアルゴン雰囲気とし、外気が系の内部に入らないように細心の注意を払った。
アルゴンを流しながら、反応容器中にポリエチレンオキシドを脱水ベンゼンに溶解した溶液を入れて、真空下、5時間かけて凍結乾燥した。真空下でTHFを蒸留して反応容器内に直接導入した。反応容器内を再度アルゴン雰囲気として、0℃でn−ブチルリチウムを加え、30℃で1時間攪拌した後、25℃でヘキサメチルシクロトリシロキサンを加えながら攪拌して重合した。反応溶液を少量抜き出し、GPCで分子量を測定した。測定された分子量に基づいて、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを所望の分子量が得られるように計算して追加した。これらの一連の作業はアルゴン加圧下で行い、外気が混入しないように細心の注意を払った。GPCにより所望の分子量が得られたことを確認し、トリメチルクロロシランを加えて反応を停止させた後、反応容器を開放した。反応液を3倍に濃縮した後、十分な量の石油エーテル中に滴下してポリマーを再沈させた。ポリマーを濾別した後、室温で真空乾燥させてジブロックコポリマーを得た。
ポリエチレンオキシドブロックのMwは65000、ポリジメチルシロキサンブロックのMwは62000、Mw/Mn=1.20であった。
パターン形成
3インチシリコンウエハー上にポリアミド酸溶液(東レ社製セミコファインSP−341をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で希釈したもの)をスピンコートした。この試料を、窒素気流下において、150℃、250℃、350℃の順で1時間ずつ加熱して厚さ30nmのポリイミドからなるパターントランスファー膜を形成した。
合成したジブロックコポリマーと、1,3,5,7,9,11,13−ヘプタシクロペンチル−15−ビニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン(Vinyl−POSS)と、アゾビスイソブチロニトリルを重量比1:1:0.05で混合した混合物をTHFに2重量%溶解して濾過した。この溶液をポリイミドからなるパターントランスファー膜上に2500rpmでスピンコートしてパターン形成膜を形成した。試料を60℃で90秒間加熱して溶媒を留去した。試料を窒素雰囲気中において、80℃で5時間加熱処理した。その後、パターン形成膜を塩酸蒸気に暴露した。次に、試料を窒素雰囲気中において、200℃で1時間、250℃で1時間、300℃で1時間、350℃で30分加熱処理した。試料表面をAFMで観察したところ、パターン形成膜の全面に直径約15nmの孔が開口していることがわかった。
この試料に対し、O2ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行った。その結果、シリコンウエハー上のポリイミド膜(パターントランスファー膜)の全面に直径15nm、深さ30nmの比較的アスペクト比の良好な孔をほぼ等間隔に形成されていた。このポリイミド多孔質膜をマスクとして、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、シリコンウエハーをエッチングした。続いて再びO2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件で、残存したポリイミド膜をアッシングした。この結果、シリコンウエハーの全面に直径14nm、深さ70nmのアスペクト比の高い孔をほぼ等間隔に形成されていた。
[参照例46]
パターン形成
参照例45で合成したポリエチレンオキシドとポリジメチルシロキサンとのジブロックコポリマー、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとから合成したポリアミド酸を、重量比1:1で混合した混合物をNMPに2重量%溶解して濾過した。この溶液を3インチシリコンウェハー上に2500rpmでスピンコートしてパターン形成膜を形成した。試料を60℃で90秒間加熱して溶媒を留去した後、窒素雰囲気中において80℃で5時間加熱処理した。その後、パターン形成膜を塩酸蒸気に暴露した。次に、試料を窒素雰囲気中において200℃で1時間、250℃で1時間、300℃で1時間、350℃で30分加熱処理した。試料表面をAFMで観察した結果、パターン形成膜の全面に直径約15nmの孔が形成されていることがわかった。
この多孔質膜をマスクとして、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、シリコンウエハーをエッチングした。続いてO2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件で残存したポリマーをアッシングした。この結果、シリコンウエハーの全面に直径14nm、深さ5nmの孔がほぼ等間隔に形成されていた。
[参照例47]
ジブロックコポリマーの合成
この例では、リビングアニオン重合法によりポリエチレンオキシド(PEO)鎖とポリアクリロニトリル(PAN)鎖とからなるトリブロックコポリマー(PAN−PEO−PAN)を合成した。
反応開始剤として、ポリエチレンオキシドマクロマー(ポリエチレンオキシドのジソジウム塩)を用い、アクリロニトリルを重合した。溶媒のテトラヒドロフランおよびベンゼンは水素化リチウムアルミニウムを乾燥剤としてアルゴン気流下、2回蒸留して、その中にモレキュラーシーブズ4Aを投入した。モノマーのアクリロニトリルは飽和NaHSO3水溶液、1%NaOHを含有した飽和NaCl水溶液、飽和NaCl水溶液の順で洗浄した後、塩化カルシウムを乾燥剤として減圧蒸留し、さらにアルゴン気流下、水素化カルシウムを乾燥剤として減圧蒸留し、その中にモレキュラーシーブズ4Aを投入した。ナトリウムナフタレンはTHF中、ナフタレンに金属ナトリウムを反応させて調製した。クラウンエーテル(ジシクロヘキシル−18−クラウン−6)はベンゼン溶液から凍結乾燥した後、ベンゼンに溶解した。ポリエチレンオキシドは両末端にOH基を有し、使用直前にベンゼン溶液から凍結乾燥した。重合装置として耐圧ガラス社製の加圧反応器を用いた。反応中は4気圧のアルゴン雰囲気とし、外気が系の内部に入らないように細心の注意を払った。
アルゴンを流しながら、反応容器中にポリエチレンオキシドを脱水ベンゼンに溶解した溶液を入れて、真空下、5時間かけて凍結乾燥した。真空下、THFを蒸留して反応容器内に直接導入した。反応容器を再度アルゴン雰囲気として、0℃でナトリウムナフタレンを加え、さらに30℃でクラウンエーテルのベンゼン溶液を加えて攪拌した。1時間攪拌後、−78℃でアクリロニトリルを加えて攪拌して重合した。反応溶液を少量抜き出し、GPCで分子量を測定した。測定された分子量をもとに、アクリロニトリルを所望の分子量が得られるように計算して追加した。これらの一連の作業はアルゴン加圧下で行い、外気が混入しないように細心の注意を払った。GPCで所望の分子量が得られたことを確認し、少量の塩酸を含んだ2−プロパノールを2mL加えて反応を停止させた後、反応容器を開放した。反応液を3倍に濃縮した後、十分な量の石油エーテル中に滴下してポリマーを再沈させた。ポリマーを濾別した後、室温で真空乾燥させてトリブロックコポリマーを得た。
ポリアクリロニトリルはMw=65000、ポリエチレンオキシドはMw=13200で、Mw/Mn=1.40であった。
パターン形成
得られたPAN−PEO−PANトリブロックコポリマーの2重量%溶液を濾過した後、3インチ石英ガラス基板上に2500rpmでスピンコートしてパターン形成膜を形成した。試料を110℃で90秒間加熱して溶媒を留去した。その後、試料をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、200℃で10分、次に135℃で10時間加熱処理した。200℃での加熱処理により膜が平坦化され、スピンコート後の履歴を消すことができる。また、135℃での加熱処理によりミクロ相分離が効率よく進行する。次に、試料を空気中において200℃で24時間加熱処理した後、窒素雰囲気中において350℃で30分加熱処理した。加熱処理後の基板表面をAFMで観察したところ、パターン形成膜の全面に直径約12nmの孔が形成されていることがわかった。
この試料に対し、CF4ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、基板をエッチングした。その後、O2ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、パターン形成膜の残渣を除去した。
この結果、石英ガラス基板の全面に直径12nm、深さ20nmの孔が1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。この基板は、ハードディスクの基板などに用いることができる。
[参照例48]
参照例47で合成したPAN−PEO−PANトリブロックコポリマーに、可塑剤として10重量%のジオクチルフタレートを添加した。ブロックコポリマーのミクロ相分離を形成するための熱処理条件を、窒素気流下において200℃で10分、次に135℃で1時間、空気中200℃で24時間、窒素気流下350℃で30分に設定した。これらの条件以外は、参照例47と同様にして、ミクロ相分離膜を形成した。このミクロ相分離膜をマスクとしてエッチングを行った。その結果、基板に参照例47と同様な孔のパターンが形成された。以上のように、可塑剤を添加することによって熱処理時間を短縮することができた。
[参照例49]
参照例47で合成したPAN−PEO−PANトリブロックコポリマーの2重量%溶液を濾過した後、3インチ石英ガラス基板上に2500rpmでスピンコートしてパターン形成膜を形成した。試料を110℃で90秒間加熱して溶媒を留去した。試料をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、200℃で10分、135℃で10時間加熱処理した。試料を空気中において200℃で24時間加熱処理した後、窒素雰囲気中において350℃で30分加熱処理した。次に、基板をフッ酸で1分間エッチングした。その後、アセトン中で超音波洗浄を行い、残っているポリマーを除去した。
この結果、石英ガラス基板の全面に直径15nm、深さ12nmの孔が1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。このようにドライエッチングプロセスを用いることなく、ウェットエッチングのみで基板のパターニングが可能であった。この基板は、ハードディスクの基板などに用いることができる。
[参照例50]
ジブロックコポリマーの合成
一方の末端がメトキシ基、他方の末端がOH基のポリエチレンオキシドを用い、参照例47で示した方法と同様の方法で、ポリエチレンオキシド(PEO)鎖とポリアクリロニトリル(PAN)鎖とからなるジブロックコポリマー(PAN−b−PEO)を合成した。ポリアクリロニトリルブロックのMwは10600、ポリエチレンオキシドのMwは35800、Mw/Mn=1.37であった。
パターン形成
石英ガラス基板上にCoPtCr磁性膜を形成した。この磁性膜上に上記のジブロックコポリマーからなるパターン形成膜を形成し、ミクロ相分離させた。その後、実施例49と同様に、CoPtCr磁性膜をウェットエッチングした。その結果、石英ガラス基板の全面に直径15nm、高さ12nmの突起状の磁性膜構造が1平方μmあたり約1800個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。
[参照例51]
石英基板上にポリアミド酸溶液(東レ社製セミコファインSP−341をN−メチル−2−ピロリドンで希釈したもの)をスピンコートした。この基板を、窒素気流下、150℃、250℃、350℃の順で1時間ずつ加熱して厚さ500nmのポリイミドからなる下層パターントランスファー膜を形成した。その上にアルミニウムを15nm蒸着して上層パターントランスファー膜を形成した。その上に参照例47と同様の方法で合成されたPAN−PEO−PANトリブロックコポリマーを厚さ80nmにスピンコートしてパターン形成膜を形成した。ポリアクリロニトリルブロックのMwは144600、ポリエチレンオキシドブロックのMwは70700、Mw/Mn=1.41であった。次に、参照例47と全く同様の方法で、ミクロ相分離構造を有する多孔質のパターン形成膜を作製した。
この試料に対し、CF4ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、アルミニウムからなる上層パターントランスファー膜にパターン形成膜の相分離パターンを転写した。続いてO2ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、パターン形成膜の残渣を除去するとともに、上層パターントランスファー膜の開口部で露出しているポリイミドからなる下層パターントランスファー膜をエッチングした。さらにCF4ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、上層パターントランスファー膜を除去するとともに、下層パターントランスファー膜の開口部で露出している石英基板をエッチングした。再びO2ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、下層パターントランスファー膜を除去した。この結果、石英基板に直径110nm、深さ1200nmという非常にアスペクト比の高い孔が1平方μmあたり35個の密度で形成されていた。
[
参照例52]
シリコンウエハー上に膜厚500nmのSiO
2膜を形成した。SiO
2膜上に下記化学式で示されるポリシランのトルエン溶液を塗布しベークして、膜厚100nmのポリシランのパターントランスファー膜を作製した。ポリシランパターントランスファー膜には酸化防止剤として0.5wt%の3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを添加した。
ポリシランからなるパターントランスファー膜上に参照例50と同様の方法で合成したポリアクリロニトリル(Mw=12000)−ポリエチレンオキシド(Mw=28000)ジブロックコポリマーを塗布し、90℃で2分間ベークして40nmのパターン形成膜を形成した。試料をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において200℃で10分、次に135℃で10時間、空気中において200℃で24時間、窒素雰囲気中において350℃で30分加熱処理した。
このパターン形成膜をマスクとして、HBrガス流量50sccm、真空度80mTorr、励起電力200Wの条件でポリシラン膜をエッチングした。その結果、ポリシラン膜にパターンを転写することができた。この上部にはパターン形成膜が残っており、パターン形成膜はマスクとして十分な耐性を持つことがわかった。次に、ポリシラン膜パターンをマスクとして、C4F8ガス流量50sccm、COガス流量10sccm、Arガス流量100sccm、O2ガス流量3sccm、真空度10mTorr、励起電力200Wの条件でSiO2膜をエッチングした。ポリシラン膜のエッチング耐性は十分であり、SiO2膜に良好にパターンを転写することができた。残ったポリシラン膜は有機アルカリ水溶液または希フッ酸溶液で簡単に剥離することができた。
なお、ポリシランパターントランスファー膜に3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを添加せずに上記と同様の操作を行ったところ、パターン形成膜とポリシランパターントランスファー膜とのエッチング選択比が30%低下した。
[参照例53]
10インチの石英ガラス基板上に膜厚50nmの金電極を蒸着し、この上に膜厚100nmのSiO2層を形成し、この上に膜厚50nmのアルミニウムを蒸着した。
ジブロックコポリマー(ポリアクリロニトリル:Mw=127700、ポリエチレンオキシド:Mw=1103000、Mw/Mn=1.30)とポリアクリロニトリル(Mw=45000、Mw/Mn=1.37)とを重量比21:79で混合した。この混合物をアセトニトリルに5重量%溶解し、濾過して溶液を調製した。この溶液を石英ガラス基板上にスピンコートし、110℃で乾燥して、膜厚970nmのパターン形成膜を形成した。
試料をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において200℃で10分、次に135℃で10時間、空気中において200℃で24時間、窒素雰囲気中において350℃で30分加熱処理して、パターン形成膜を多孔質化した。
この試料を、塩酸水溶液、続いてフッ酸でウェットエッチングして、アルミニウム層とSiO2層にパターン形成層の相分離パターンを転写した。その後、O2アッシャーでアッシングを行い、パターン形成層の残渣を取り除いた。
この結果、アルミニウム層およびSiO2層に直径840nmの孔が、300μm×100μmの単位面積あたり約23000個の密度で形成されていた。孔の直径の分布は±10%以内と非常に揃っていた。これは分子量の揃ったブロックコポリマーを用いたためであると考えられる。また、ホモポリマーの海の中にブロックコポリマーの島が存在するため、孔の位置はある程度ランダムに形成されていた。このため、この試料を三電極構造のフィールド・エミッション・ディスプレー(FED)の多孔質ゲート電極に用いれば、電極の規則性に起因する干渉縞が発生することはないと予想される。したがって、本実施例の方法はFEDの多孔質ゲート電極の製造に好適に適用することができる。
[参照例54]
参照例53のジブロックコポリマーとポリアクリロニトリルホモポリマーとの混合物に、可塑剤として10重量%のジオクチルフタレートを添加した。ミクロ相分離を形成するための熱処理条件を、窒素気流下において200℃で10分、次に135℃で1時間、空気中200℃で24時間、窒素気流下350℃で30分に設定した。これらの条件以外は、参照例53と同様にして、ミクロ相分離膜を形成した。このミクロ相分離膜をマスクとしてエッチングを行った。その結果、基板に参照例53と同様な孔のパターンが形成された。以上のように、可塑剤を添加することによって熱処理時間を短縮することができた。
[参照例55]
銅板の表面に金をスパッタリングした。金膜上に、ジブロックコポリマー(ポリメチルフェニルシランMw=135000,PMMA:Mw=61000,Mw/Mn=1.10)の10%PGMEA溶液を塗布して、デシケーター内で9日間かけて乾燥した。形成されたフィルムの厚さは0.2mmであった。このフィルムを3日間真空乾燥した。このフィルムから超薄膜を切り出し、透過型電子顕微鏡で観察した。その結果、ポリシラン相およびPMMA相のいずれも連続した、3次元のバイコンティニュアス構造となっていることが確認された。
この試料に電子線を150kGyの照射量で照射した後、空気中において150℃で2時間、200℃で12時間、さらにアルゴン気流下において500℃で1時間加熱処理した。透過型電子顕微鏡(TEM)観察したところ、PMMA相がなくなり、ポリシラン相がスポンジ状に連続した構造が観察された。この構造は元の3次元バイコンティニュアス構造とほぼ同等であり、ナノメーターオーダーで規則正しい連続空孔が形成されていた。
この多孔質膜が形成された銅板を作用極、他の銅板を対極、飽和カロメル電極を参照電極として電解銅めっきを行った。電解質溶液として飽和硫酸銅水溶液を用い、電解電圧を−0.1V vs SCEに設定した。その結果、多孔質膜の空孔中に銅が充填されたナノコンポジット膜を作製できた。
[参照例56]
ポリシラン−ポリエチレンオキシド系ジブロックコポリマーの合成
モノマーとしてマスクトジシレンおよびエチレンオキシドを用いた。開始剤としてsec−ブチルリチウムを用いた。THF中、反応温度−78℃でモノマーを順次添加してリビングアニオン重合法により、ポリブチルメチルシラン鎖とポリエチレンオキシド鎖とからなるジブロックコポリマーを合成した。ジブロックコポリマーのMwは70500、Mw/Mn=1.2、ポリシランユニットのMwは14500、ポリエチレンオキシドユニットのMwは56000であった。
石英基板上にポリアミド酸溶液(東レ社製セミコファインSP−341をN−メチル−2−ピロリドンで希釈したもの)をスピンコートした。この基板を窒素気流下において150℃、250℃、350℃の順で1時間ずつ加熱してポリイミド膜(パターントランスファー膜)を形成した。このポリイミド膜上に上記で合成したジブロックコポリマーの溶液を塗布してパターン形成膜を形成した。パターン形成膜に高圧水銀ランプから紫外線を照射してポリシラン鎖を光酸化した。この試料を、空気中において150℃で2時間、窒素雰囲気中において200℃で2時間、250℃で2時間、350℃で30分加熱処理して多孔質化した。この多孔質膜をマスクとして、O2ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行った。このとき光酸化されたポリシラン膜のエッチング耐性は十分であり、ポリイミド膜に良好にパターンを転写することができた。さらに、ポリイミド膜をマスクとして基板をエッチングした。その結果、基板の全面に直径14nm、深さ10nmの孔が1平方μmあたり約2400個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。
[参照例57]
参照例43で用いたのと同様のジブロックコポリマーを塩化メチレンに1重量%溶解して濾過した。この溶液に、ポリマー重量の1%のテトラブチルアンモニウム・ヘキサクロロプラチネート(IV)を添加した。この溶液をSiO基板上にキャストして厚さ20nmのパターン形成膜を製膜した。この試料を110℃で90秒間加熱して溶媒を留去した。その後、試料をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、150℃で5時間、200℃で5時間、300℃で5時間、350℃で30分加熱処理した。
この試料に対し、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、SiO基板をエッチングした。この結果、基板の全面に直径12nm、深さ25nmの孔が1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成されていた。さらに、この孔には白金粒子が沈着していた。この白金を核にして磁性膜を成長させることにより、ハードディスク用磁気記録媒体を作製できた。
[
参照例58]
グラフトコポリマーの合成
下記化学式に示されるスチレン末端ポリエチレンオキシドマクロマー(a)(Mw=14100、Mw/Mn=1.04)およびポリシルセスキオキサン誘導体モノマー(b)(ここで、Rはヘキシル基)のTHF混合溶液にラジカル開始剤としてAIBNを加え、アルゴン雰囲気下、60℃、60時間加熱して、ラジカル共重合によりグラフトコポリマーを合成した。グラフトコポリマーのMwは101000、Mw/Mn=2.1、ポリシルセスキオキサン誘導体ユニットのMwは16400、ポリエチレンオキシドマクロマーユニットのMwは84600であった。
このグラフトポリマーを乳酸エチルに2重量%溶解し、基板上に塗布して自然乾燥することによりパターン形成膜を形成した。この試料を110℃で90秒間加熱して溶媒を留去した。この試料を、200℃で1時間、350℃で5時間加熱処理して、パターン形成膜を多孔質化した。この試料に対し、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、基板をエッチングした。その結果、基板上に直径18nm、高さ10nmの突起が多数形成されていた。
[参照例59]
ブロックコポリマー(ポリアクリロニトリルMw=137000,ポリプロピレンオキシドMw=32000,Mw/Mn=1.45)の10%NMP溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ、アルゴン気流下、デシケーター内で9日間かけて乾燥した。形成されたフィルムの厚さは0.2mmであった。このフィルムを3日間真空乾燥した。このフィルムから超薄膜を切り出し、透過型電子顕微鏡で観察した。その結果、ポリアクリロニトリル相のマトリックス中にシリンダー状のポリプロピレンオキシド相が形成されたシリンダー構造となっていることが確認された。
この試料に電子線を20kGyの照射量で照射した。この試料を、空気中において150℃で2時間、200℃で12時間、さらにアルゴン気流下において500℃で1時間、1200℃で1時間加熱処理した。この試料をTEM観察したところ、空孔径約20nmのシリンダー構造を保持したハニカム状多孔質カーボンが形成されていることがわかった。この多孔質カーボンはカーボン電極として良好に用いることができる。
また、ポリアクリロニトリルMw=69000,ポリプロピレンオキシドMw=14000、Mw/Mn=1.42のポリアクリロニトリル−プロピレンオキシドジブロックコポリマーを用いた他は、上記と同様にして多孔質カーボンを作製した。この場合、多孔質カーボンの空孔径は約9nmであった。
[参照例60]
ジブロックコポリマー(ポリアクリロニトリルMw=137000,ポリプロピレンオキシドMw=62000,Mw/Mn=1.45)の10%NMP溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ、デシケーター内で9日間かけて乾燥した。形成されたフィルムの厚さは10μmであった。このフィルムを3日間真空乾燥した。このフィルムから超薄膜を切り出し、透過型電子顕微鏡で観察した。その結果、ポリアクリロニトリル相およびポリプロピレンオキシド相のいずれも連続した、3次元のバイコンティニュアス構造となっていることが確認された。
この試料に電子線を20kGyの照射量で照射した。この試料を空気中において150℃で2時間、200℃で12時間、さらにアルゴン気流下において500℃で1時間、1200℃で1時間加熱処理した。TEM観察により、バイコンティニュアス構造を保持した多孔質カーボンが形成されていることがわかった。この多孔質カーボンはカーボン電極として良好に用いることができる。
[参照例61]
ジブロックコポリマーA(ポリアクリロニトリルMw=68000,ポリプロピレンオキシドMw=32000,Mw/Mn=1.45)の10%溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ、デシケーター内で9日間かけて乾燥してフィルムを作製した。ジブロックコポリマーA溶液には塩化白金酸と塩化ルテニウムを添加した(Pt:Ru=1:1)。同様に、ジブロックコポリマーB(ポリアクリロニトリルMw=137000,ポリプロピレンオキシドMw=62000,Mw/Mn=1.45)の10%溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ、デシケーター内で9日間かけて乾燥したフィルムを作製した。作製されたフィルムの厚さはいずれも10μmであった。これらのフィルムを3日間真空乾燥した。これらのフィルムから超薄膜を切り出し、透過型電子顕微鏡で観察した。その結果、いずれのフィルムも、ポリアクリロニトリル相とポリプロピレンオキシド相が互いに絡み合ったミクロ相分離構造を有することが確認された。ジブロックコポリマーA膜をホルマリンで処理してPtおよびRu微粒子を生成させた。
アプリケーターを用い、ポリアミド酸溶液(東レ社製セミコファインSP−341をN−メチル−2−ピロリドンで希釈したもの)をシリコンウエハー上に塗布した後、溶媒が蒸発しないようにウエハーをすばやく多量の純水中に入れ、5時間浸漬した。フィルムを50℃で8時間真空乾燥した後、170℃で8時間さらに真空乾燥した。次に、フィルムを窒素雰囲気中において、200℃、250℃、300℃、350℃で1時間ずつ加熱処理して、平均空孔径約0.5μmの三次元多孔質ポリイミド膜を得た。
ジブロックコポリマーA膜、ジブロックコポリマーB膜、および多孔質ポリイミド膜を積層して圧着した。この積層膜を空気中において150℃で2時間、200℃で12時間、さらにアルゴン気流下において500℃で1時間、1200℃で1時間加熱処理した。試料の断面をTEM観察したところ、それぞれ空孔径が約20nm、40nm、0.1〜0.5μmの三層の多孔質カーボン積層膜が形成されていた。
一方、ジブロックコポリマーB(ポリアクリロニトリルMw=137000,ポリプロピレンオキシドMw=62000,Mw/Mn=1.45)に、ジブロックコポリマーBを凝集防止剤として生成させた平均粒径5nmのPt微粒子を含むコロイド溶液を混合し、膜厚10μmのキャスト膜を形成した。このジブロックコポリマーB膜のミクロ相分離構造の界面にはPt微粒子が偏析していた。この膜を空気中において150℃で2時間、200℃で12時間、さらにアルゴン気流下において500℃で1時間、1200℃で1時間加熱処理してPt分散多孔質カーボン膜を作製した。
メタノール燃料極となる三層の多孔質カーボン積層膜のうち空孔径20nmの多孔質層上に厚さ50μmのナフィオン117(デュポン社製)からなる電解質膜を製膜した後、空気極となるPt分散多孔質膜を積層することにより、厚さ0.1mmという薄型の直接メタノール型燃料電池セルを作製した。このセルにメタノールと空気とを供給して60℃で運転したところ、継続的な発電が確認された。
[参照例62]
界面活性剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(和光純薬工業社製)3.5g、グリセリン0.2g、熱硬化性樹脂の前駆体としてフルフリルアルコール3.4g、および塩酸1.1gを、水29gに溶解した。この水溶液にイソオクタン33gを添加して激しく攪拌した後、60℃で1ヶ月間反応させた。反応液をろ過して沈殿を濾別した後、沈殿を水洗し、真空乾燥して1.0gの黒色のカーボン前駆体粉末を得た。この粉末を空気中において200℃で2時間、つづいて窒素気流下において500℃で1時間焼成して0.4gのカーボン構造体を得た。
図11および図12に、カーボン構造体のSEM写真を示す。図に示されるように、カーボン構造体は全体が球状であり、かつ表面に円形の構造を有する複合的な構造を有していることがわかった。
上記の水溶液に三塩化チタンの20wt%塩酸溶液0.2gを添加した以外は、上記と同様にして反応および焼成を行った。この場合、0.8gのカーボン構造体が得られた。このように三塩化チタンを添加したことによって収量が向上した。
[参照例63]
ブロックコポリマーの合成
1,2−ポリブタジエン鎖とポリエチレンオキシド鎖からなるジブロックコポリマーをリビング重合法によって合成した。1,2−ポリブタジエン鎖はMw=65000、ポリエチレンオキシド鎖はMw=13200で、Mw/Mn=1.1であった。
パターン形成
得られたジブロックコポリマーに3重量%の3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを添加した混合物の2重量%溶液を濾過した。この溶液を3インチ石英ガラス基板上に2500rpmでスピンコートしてパターン形成膜を形成した。試料をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、135℃で2時間、170度で1時間加熱処理した。170℃の加熱処理によって1,2−ポリブタジエン鎖が三次元架橋する。さらに、試料を空気中において、170℃で30分間加熱処理した。加熱処理後の基板表面をAFMで観察したところ、パターン形成膜の全面に直径約13nmの孔が形成されていることがわかった。
この試料に対し、CF4ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行った。その後、O2ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行い、パターン形成膜の残渣を除去した。
この結果、石英ガラス基板の全面に直径13nm、深さ15nmの孔を1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に形成することができた。この基板の全面にスパッタリングにより15nmのCoPtCr薄膜を堆積した。CoPtCr薄膜上にスパッタリングにより10nmのカーボンを保護膜として堆積した後、テープバニッシュを行って異常突起を取り除き、潤滑剤を塗布して高密度磁気記録媒体を作製した。この媒体の垂直磁気異方性は1.8kOeであった。
[実施例1]
パターン形成
参照例63で用いたのと同じジブロックコポリマーに3重量%の3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを添加した混合物の2重量%溶液を濾過した。この溶液を3インチ石英ガラス基板上に2500rpmでスピンコートしてパターン形成膜を形成した。試料をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において135℃で2時間、170℃で1時間加熱処理した。170℃の加熱処理によってポリブタジエン鎖が三次元架橋する。さらに、試料を空気中において、170℃で30分間加熱処理した。加熱処理後の基板表面をAFMで観察したところ、パターン形成膜の全面に直径約13nmの孔が形成されていることがわかった。
この試料に対し、CF4ガス、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でリアクティブイオンエッチングを行った。エッチング後、さらにフッ酸処理した。この試料を塩化スズ(II)溶液(SnCl2 1.0g/Lに37%濃硫酸1.0mL/Lを加えたもの)に20秒浸漬した後、純水で洗浄した。続いてこの試料を塩化パラジウム溶液(PdCl2 0.1g/Lに37%濃塩酸0.1mL/Lを加えたもの)に20秒浸漬した後、純水で洗浄した。以上のように、基板を塩化スズ(II)溶液および塩化パラジウム溶液に浸漬する操作を数回繰り返した。
この結果、石英ガラス基板の全面に直径10nm程度のドット状のパラジウムが1平方μmあたり約2000個程度の密度でほぼ等間隔に並んだ構造が得られた。この基板の全面にスパッタリングにより15nmのCoPtCr薄膜を堆積した。CoPtCr薄膜上にスパッタリングにより10nmのカーボンを保護膜として堆積した後、テープバニッシュを行って異常突起を取り除き、潤滑剤を塗布して高密度磁気記録媒体を作製した。
上記のドット状のパラジウムは、マスクやドット状電極としても用いることが可能である。
[参照例65]
3,5−ジアミノベンゾエートで末端処理したポリエチレンオキシド(重量平均分子量Mw=20000)とパラフェニレンジアミンとピロメリット酸無水物とを反応させ、ポリエチレンオキシド鎖をグラフト鎖として有するポリアミド酸を合成した。ポリアミド酸部とポリエチレンオキシド部の重量比を1:2とした。合成したポリアミド酸30重量部にビス(4−マレイミドフェニル)メタン1重量部を加え、N−メチルピロリジノン溶液とした。この溶液を、アプリケーターを使用してガラス板に塗布して厚さ10μmのシートを作製した。このシートを窒素気流下において150℃、250℃、350℃で各1時間加熱処理して多孔質シートを得た。得られた多孔質シートは、三次元網目状に高度に分岐したポリイミドのシリンダー相からなる、バイコンティニュアス相分離構造が転写された多孔質構造を有していた。
得られたポリイミド多孔質シートにポリ(2−ブロモエチル)シルセスキオキサン溶液を含浸し、紫外線を照射し、80℃で加熱処理するプロセスを5回繰り返して、多孔質シートの空孔中にポリ(2−ブロモエチル)シルセスキオキサンを十分に充填した。多孔質シートを800Wで1torrの条件で酸素アッシングした。その結果、ポリイミド多孔質シートの多孔質構造を鋳型として転写されナノ構造を有するシリカ多孔質体が作製された。
アクリロニトリルに10重量%の3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを混合した混合液を調製した。この溶液をシリカ多孔質体に含浸した。シリカ多孔質体に紫外線を照射してアクリロニトリルを重合し硬化した。この構造体を空気中において210℃で24時間加熱した後、窒素気流下において210℃から毎分10℃の昇温速度で800℃まで加熱処理してカーボン化した。このシリカとカーボンの複合体をフッ酸処理してシリカを溶出させた。この結果、ポリイミド多孔質シートのモルフォロジーを反映した連続空孔を有する多孔質カーボンが作製された。
[参照例66]
分子量65000のPSと分子量13000のPMMAとのブロックコポリマーと、PMMAで被覆された白金微粒子を用意した。ブロックコポリマーに1重量%のPMMA被覆白金微粒子を添加した。得られた混合物をエチルセロソルブアセテートに溶解して10重量%の溶液を調製した。
この溶液を3インチ径のSiO基板上に2500rpmでスピンコートした。この基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。この基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で10分間、続いて135℃で10時間アニールした。原子間力顕微鏡の位相モードでSiO基板の表面を観察した結果、直径約17nmのPMMAの島がPSの海の中に形成されていることが確認された。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、PMMAを選択的にエッチングし、さらに残存したPSのパターンをマスクとして露出した下地をエッチングした。この試料に対して、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、PSからなるマスクを除去した。
SEMとAFMにより、3インチ径のSiO基板の全面に直径20nm程度の孔がほぼ等間隔に形成されていることが観察された。また、孔の中心に、白金微粒子が凝集しているのが観察された。
[参照例67]
分子量26000のポリスチレンと分子量5600のポリ(2−ビニルピリジン)とのブロックコポリマー、ポリ(2−ビニルピリジン)で被覆された白金微粒子、およびポリメチルアクリレートで被覆された白金微粒子を用意した。ブロックコポリマーに2種のポリマー被覆白金微粒子を1重量%ずつ添加した。得られた混合物をジグライムに溶解して10重量%の溶液を調製した。
この溶液を3インチ径のSiO基板上に2500rpmでスピンコートした。この基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。この基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で10分間、続いて135℃で10時間アニールした。
この試料に対して、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件で全面アッシングを行い、ブロックポリマーを除去した。この結果、白金微粒子のみが基板上に残った。
SEMとAFMにより、基板の全面に粒径4nm程度の白金微粒子が、平均25nm程度の三角格子を形成して分散していることが観察された。
100Wで1分間、基板表面を軽くスパッタエッチングした後、2Paの圧力下でCoPtをスパッタし、白金を種にして厚さ20nmの磁性層を成長させた。ヒステリシス曲線より磁性層の保磁力を求めた結果、13kOeであった。
比較のために、金属微粒子が分散しているガラス基板に同様に磁性層を成長させた。この磁性層の保磁力は5kOeであった。
[参照例68]
参照例67のポリ(2−ビニルピリジン)で被覆された白金微粒子の代わりに、分子量4800のPSと分子量4300のポリ(2−ビニルピリジン)とからなるブロックコポリマーで被覆された白金微粒子を用いた。参照例67で用いたブロックコポリマーにブロックコポリマー被覆白金微粒子を1重量%添加した。得られた混合物をエチルセロソルブアセテートに溶解して10重量%の溶液を調製した。
この溶液を3インチ径のSiO基板上に2500rpmでスピンコートした。この基板を110℃で90秒間加熱して溶媒を気化させた。この基板をオーブンに入れ、窒素雰囲気中において、210℃で4時間、続いて135℃で10時間アニールした。
原子間力顕微鏡の位相モードで観察したところ、直径17nm程度のポリ(2−ビニルピリジン)の島がPSの海の中に形成され、島と海との界面に金属微粒子が局在しているのが観察された。
この試料に対して、CF4、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でRIEを行い、ポリ(2−ビニルピリジン)を選択的にエッチングし、さらに残存したPSのパターンをマスクとして露出した下地をエッチングした。この試料に対して、O2、0.01torr、進行波150W、反射波30Wの条件でアッシングを行い、PSからなるマスクを除去した。
SEMとAFMにより3インチ径のSiO基板の全面に直径20nm程度の孔がほぼ等間隔に形成されていることが観察された。また、孔のエッジに白金微粒子が偏在しているのが観察された。
[参照例69]
図9に示すフィールド・エミッション・ディスプレー(FED)素子を製造する他の方法について説明する。参照例27と同様に、絶縁基板101上にカソード導体102を形成し、このカソード導体102の一部をエッチングする。カソード導体102を覆うように、抵抗層103を形成し、この抵抗層103をパターニングして複数の端子部103Aを形成する。カソード導体102および抵抗層103を覆うように絶縁層104を形成し、絶縁層104上にゲート導体105を成膜する。
次に、レジストをパターニングして、ゲート配線とエミッター配線の交差部を保護する。ゲート導体105上に、参照例66で用いたPS−PMMAジブロックコポリマーとPMMA被覆白金微粒子との混合物の溶液をスピンコートして乾燥した後、アニールを行い、ミクロ相分離膜を形成する。このミクロ相分離膜に対して、CF4ガスを用いてRIEを行い、ミクロ相分離膜のPMMAを選択的にエッチングし、さらに残存したPSのパターンをマスクとしてゲート導体105をエッチングしてパターンを転写する。その後、O2アッシャーでアッシングを行い、残存した有機物を除去する。こうして、ゲート導体105に直径約840nmの多数の開口部106を形成する。バッファード弗酸(BHF)等を用いたウェットエッチングまたはCHF3等のガスを用いたRIEにより、開口部106の絶縁層104を抵抗層103が露出するまで除去する。この結果、開口部106の底に白金微粒子が沈着していることが確認された。
次いで、電子ビーム(EB)蒸着法を用いてアルミニウムを斜め蒸着することにより剥離層を形成する。EB蒸着法により、剥離層の上にモリブデンを垂直方向に正蒸着し、開口部106内にモリブデンをコーン状に堆積し、エミッター107を形成する。その後、燐酸等の剥離液により剥離層を除去し、FED素子を製造する。
[参照例70]
分子量83000のポリ(2−ビニルピリジン)と分子量78000のポリ(メチルアクリレート)とのブロックコポリマー、ポリ(2−ビニルピリジン)で被覆された白金微粒子、およびポリメチルアクリレートで被覆された白金微粒子を用意した。ブロックコポリマーに対して2種のポリマー被覆白金微粒子を1重量%ずつ添加した。この混合物をTHFに溶解して10重量%の溶液を調製した。この溶液をテフロン(登録商標)シートシャーレに入れ、10日間溶媒を蒸発させた。さらに真空中において60℃で3日間乾燥して、0.2mm厚さの第1の膜を得た。
分子量143000のポリ(2−ビニルピリジン)、およびポリ(2−ビニルピリジン)で被覆された白金微粒子を用意した。ホモポリマーに対して1重量%のポリマー被覆白金微粒子を添加した。この混合物をTHFに溶解して10重量%の溶液を調製した。この溶液をテフロン(登録商標)シートシャーレに入れ、10日間溶媒を蒸発させた。さらに真空中において60℃で3日間乾燥して、0.05mm厚さの第2の膜を得た。
分子量160000のポリメチルアクリレート、およびポリメチルアクリレートで被覆された白金微粒子を用意した。ホモポリマーに対して1重量%のポリマー被覆白金微粒子を添加した。この混合物をTHFに溶解して10重量%の溶液を調製した。この溶液を(登録商標)シートシャーレに入れ、10日間溶媒を蒸発させた。さらに真空中において60℃で3日間乾燥して、0.05mm厚さの第3の膜を得た。
第2の膜、第1の膜および第3の膜を重ね、窒素雰囲気中において、160℃で40時間アニールした。TEMにより、第1の膜にラメラ構造が形成されているのが観察された。さらに240℃で10時間アニールした。再びTEMで観察したところ、ポリマーが焼成され、白金が連続体になっていた。この構造体の上下にアルミニウムを蒸着して電極を形成した。この構造体を1cm×1cmに切り取ってキャパシタを作製した。
[参照例71]
分子量35000のポリスチレンと分子量70000のポリエチレンオキシドとのブロックコポリマー、およびこのブロックコポリマーで被覆された白金微粒子を用意した。ブロックコポリマーに対して1重量%のポリマー被覆白金微粒子を添加した。この混合物をTHFに溶解して10重量%の溶液を調製した。この溶液をテフロン(登録商標)シートシャーレに入れ、10日間溶媒を蒸発させた。さらに真空中において60℃で3日間乾燥して、0.05mm厚さの膜を得た。この膜を窒素雰囲気中において、140℃で40時間アニールした。TEMにより、膜にシリンダー構造が形成されているのが観察された。さらに240℃で10時間アニールした。膜を再びTEMで観察したところ、図13に示すようにポリマー61中に多数の空孔62が形成され、空孔62に面する壁に多数の白金微粒子63が付着していた。この薄膜を、燃料電池のカソード触媒層として使用した。
分子量35000のポリスチレンと分子量70000のポリエチレンオキシドとブロックコポリマー、およびこのブロックコポリマーで被覆されたルテニウム微粒子を用意した。ブロックコポリマーに対して1重量%のポリマー被覆ルテニウム微粒子を添加した。この混合物をTHFに溶解して10重量%の溶液を調製した。この溶液をテフロン(登録商標)シートシャーレに入れ、10日間溶媒を蒸発させた。さらに真空中において60℃で3日間乾燥させ、0.05mm厚さの膜を得た。この膜を窒素雰囲気中において、140℃で40時間アニールした。この間に、膜にシリンダー構造が出現しているのが、TEM観察で確認された。240℃で10時間アニールした。膜を再びTEM観察したところ、図13に示すように多数の空孔が形成され、空孔の壁に多数のルテニウム微粒子が付着していた。この薄膜を、燃料電池のアノード触媒層として使用した。
図7に示す直接メタノール燃料電池を作製した。アノード触媒層11とカソード触媒層14との間にプロトン伝導体からなる電解質膜16を挟んだ。アノード触媒層11側に多孔質の燃料気化層12および燃料浸透層13を設けた。カソード触媒層14側に保水ガスチャンネル14を設けた。
比較のために、膜のマトリックスに白金触媒が埋め込まれたカソード触媒層と、膜のマトリックスにルテニウム触媒が埋め込まれたアノード触媒層を用い、図7に示す直接メタノール燃料電池を作製した。
本実施例の燃料電池は、比較例の燃料電池と比較して、発電効率が2倍以上に上昇した。
1…基板、3…Bポリマー相、4…Aポリマー相、5…金属微粒子、6、7…孔、11…アノード触媒電極、12…燃料気化層、13…燃料浸透層、14…カソード触媒電極、15…保水ガスチャンネル、16…電解質膜、21…A−Bブロックコポリマー、22…AまたはBホモポリマー、23…金属微粒子、61…ポリマー、62…空孔、63…白金微粒子、71…正極、72…負極、73…セパレーター、101…絶縁基板、102…カソード導体、103…抵抗層、104…絶縁層、105…ゲート導体、106…開口部、107…エミッター、201…ガラス基板、202…エミッター配線、203…SiO2膜、204…ゲート配線、205…開口部、206…抵抗層、207…微粒子エミッター層、208…スペーサー、211…フェースプレート、212…アノード電極層、213…蛍光層。