JP4828223B2 - 熱可塑性樹脂成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂成形体に関する。詳しくは、本発明は、耐衝撃性の改善された熱可塑性樹脂成形体に関する。
熱可塑性樹脂は、加熱により軟化して各種成形方法により容易に成形できるため、従来より各種成形体の原料として広く用いられている。しかしながら、特にポリオレフィン系樹脂製のフィルムなどの成形体においては、より耐衝撃性に優れたものが望まれていた。
熱可塑性樹脂性の成形体の耐衝撃性を改善する技術としては、軟質の樹脂を用いる方法、エラストマー成分を混合した樹脂組成物を用いる方法、グラフト共重合により樹脂特性を改善した樹脂を用いる方法などが知られている。
またたとえば結晶性ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改良するためには、非晶質または結晶性のエチレン・プロピレンランダムコポリマー、ポリイソブチレン、ポリブタジエンなどのゴム状物質を配合する方法が知られている。しかしながら、熱可塑性樹脂にゴム状物質を添加して耐衝撃性改善の効果を充分に得るには、多量のゴム状物質を配合する必要があり、本来の熱可塑性樹脂から得られる成形体が有する透明性、表面特性、剛性などの物性を維持できないという問題があった。
このような問題を解決するものとして、特許文献1には、エチレン/プロピレンランダムコポリマーと、低密度のエチレン/α−オレフィンランダムコポリマーとを含むエラストマー組成物を、ポリオレフィンの耐衝撃性改良剤として用いる技術が開示されている。しかしながらこの方法においても、具体例ではポリプロピレン70重量部に対してエラストマー組成物20重量部を配合して耐衝撃性の改善を行っており、さらに少量の添加剤により、基材である熱可塑性樹脂の特性を損なわずに耐衝撃性を改善する技術の出現が望まれていた。
本発明者は、このような状況に鑑みて鋭意研究した結果、特定のポリオレフィンワックスを配合した熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体が、耐衝撃性にすぐれ、しかも熱可塑性樹脂自体の有する透明性などの性状を維持していることを見出して本発明を完成するに至った。
ところで本出願人は、熱可塑性樹脂とポリオレフィンワックスとを併用した、成形加工に優れた熱可塑性樹脂組成物をすでに提案している(特許文献2、特許文献3参照)。しかしながら、これらの技術は熱可塑性樹脂の成形加工性を向上させて、押出生産性を向上させるものであって、耐衝撃性に優れた樹脂成形体を製造するための手段を何ら教示するものではなかった。
特開平11−60847号公報 特開2004−59867号公報 特開2005−281449号公報
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、透明性などの熱可塑性樹脂の本来の特性を損なわずに、耐衝撃性を向上させた熱可塑性樹脂成形体を提供することを課題としている。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂(A)と、下記(i)〜(iv)を満たすポリオレフィンワックス(B)とを含有する樹脂組成物を成形してなることを特徴としている;
(i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(M
n)が400以上であり、
(ii)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が65〜130℃の範囲にあり、
(iii)密度勾配管法で測定した密度(D(kg/m3))が850〜980kg/m3
範囲にあり、
(iv)前記数平均分子量(Mn)と、前記密度(D(kg/m3))とが、
D≦−0.067×Mn+1000
を満たす。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、樹脂組成物中のポリオレフィンワックス(B)の含有量が、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲にあることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、ポリオレフィンワックス(B)の分子量分布(Mw/Mn)が、1.0〜4.0の範囲にあることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、ポリオレフィンワックス(B)が、メタロセン系触媒を用いて製造されたワックスであることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、ポリオレフィンワックス(B)が、ポリエチレン系ワックスであることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂(A)が、ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、またはポリプロピレンであることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、押出成形体であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、フィルムまたはシート状であることが好ましい。
本発明によれば、熱可塑性樹脂が本来有する透明性、表面特性、剛性などの物性を維持し、かつ、優れた耐衝撃性を有する熱可塑性樹脂成形体を提供することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂(A)と、ポリオレフィンワックス(B)とを含有する。
熱可塑性樹脂(A)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(A)としては、直鎖線状低密度ポリエチレンなどの低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体およびこれらのエステル化物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のオレフィン−ビニル化合物共重合体;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。また、これらのグラフト共重合体やブロ
ック共重合体、ランダム共重合体も使用可能である。さらに、これらの樹脂2種以上をブレンドして使用してもよい。
本発明では、これらの熱可塑性樹脂(A)のうち、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、またはポリプロピレンがより好ましく、プロピレン含量が80モル%以上のエチレン・プロピレン共重合体またはプロピレン単独重合体がさらに好ましく用いられる。ここで、ポリオレフィン樹脂としては、α−オレフィンの単独重合体あるいは共重合体、α−オレフィンとその他の共重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂(A)が高密度ポリエチレンである場合には、高密度ポリエチレンのMI(190℃)としては0.02〜20g/10分の範囲が好ましく、0.02〜1g/10分の範囲がより好ましい。高密度ポリエチレンのMIが上記範囲にある場合には、風合い、剛性、耐薬品性などに優れ、しかも耐衝撃性に優れた成形体を得ることができる。
また、熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレンである場合には、ポリプロピレンのMI(230℃)としては0.2〜60g/10分の範囲が好ましく、0.2〜30g/10分の範囲がより好ましい。ポリプロピレンのMIが上記範囲にある場合には、耐熱性、剛性などに優れた成形体を得ることができる。
ポリオレフィンワックス(B)
本発明で用いられるポリオレフィンワックスは、
(i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(M
n)が400以上であり、
(ii)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が65〜130℃の範囲にあり、

(iii)密度勾配管法で測定した密度(D(kg/m3))が850〜980kg/m3
範囲にあり、
(iv)前記数平均分子量(Mn)と、前記密度(D(kg/m3))とが、
D≦−0.067×Mn+1000
を満たす。
熱可塑性樹脂の添加物として使用されるポリオレフィンワックス(B)としては、通常、数平均分子量(Mn)が400〜5000の範囲のものが用いられているが、本発明で用いられるポリオレフィンワックス(B)としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)は400以上であり、通常、400〜2240の範囲であり、好ましくは400〜1640の範囲である。ポリオレフィンワックス(B)の数平均分子量(Mn)が上記範囲にあると、熱可塑性樹脂(A)に対するポリオレフィンワックス(B)の分散が良好となり得られる成形体の透明性や表面特性が維持される。さらに、ポリオレフィンワックス(B)の密度勾配管法で測定した密度(D(kg/m3))は850〜980kg/m3の範囲であることが好ましく、865〜965kg/m3の範囲であることがより好ましく、880〜950kg/m3の範囲であることが特に好ましい。ポリオレフィンワックス(B)の密度(D)が上記範囲にあると、熱可塑性樹脂(A)に対するポリオレフィンワックス(B)の相容が良好となりブリードアウトを生じにくい。また、ポリオレフィンワックス(B)の示差走査熱量計(DSC)で測定した融点は、通常65〜130℃、好ましくは70〜130℃、より好ましくは75〜130℃の範囲にあることが好ましい。融点が上記範囲にあると、押出成形時のホッパー内におけるブロッキングが抑制される。
本発明で用いられるポリオレフィンワックス(B)の密度(D)と数平均分子量(Mn)の関係は、下記式(I)を、好ましくは下記式(Ia)を満たす。
D≦−0.067×Mn+1000…(I)
D≦−0.067×Mn+960 …(Ia)
前記密度(D)と前記数平均分子量(Mn)が、上記関係にあると、熱可塑性樹脂(A)に対するポリオレフィンワックス(B)の分散が良好となり、かつポリオレフィンワックス(B)が熱可塑性樹脂(A)中でゴム弾性体として作用するため、透明性を維持しながら、優れた耐衝撃性を付与することができる。
本発明で用いられるポリオレフィンワックス(B)は、特に限定されるものではないが比較的分子量分布が狭いことが好ましく、具体的には、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜4.0の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは1.0〜3.5、特に好ましくは1.0〜3.0の範囲にあるのが望ましい。このようなポリオレフィンワックスを用いた場合には、得られる熱可塑性樹脂成形体がブリードアウトを生じにくい。
本発明で用いられるポリオレフィンワックス(B)は、α−オレフィンの単独重合体または共重合体からなるオレフィンオリゴマーであり、チーグラー系触媒やメタロセン系触媒を用いて製造することができる。このうち、エチレン単独共重合体やエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体などのポリエチレンワックスが好ましく、特にメタロセン系触媒を用いて調製したポリエチレンワックス(以下、「メタロセン系ポリエチレンワックス」と略称する)が好ましい。
上記エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体におけるα−オレフィンの炭素数は3〜10が好ましく、炭素原子数3のプロピレン、炭素原子数4の1−ブテン、炭素原子数5の1−ペンテン、炭素原子数6の1−ヘキセンおよび4−メチル−1−ペンテン、炭素原子数8の1−オクテンなどより好ましく、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンが特に好ましい。
このようなポリオレフィンワックス(B)は、常温で固体であり、65〜130℃で低粘度の液体となる。
上記ポリオレフィンワックスは、たとえば
(a)周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、
(b)(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b−2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および(b−3)有機アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と
からなるオレフィン重合用触媒を用いて製造することが好ましい。特に、Mw/Mnの小さいポリオレフィンワックスを製造する場合には、メタロセン系触媒が有効である。
(a)周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物:
メタロセン系触媒を形成するメタロセン化合物は、周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物であり、具体的な例としては下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
1Lx …(1)
ここで、M1は周期表第4族から選ばれる遷移金属、xは遷移金属M1の原子価、Lは配位子である。M1で示される遷移金属の例としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム
などがある。Lは遷移金属M1に配位する配位子であって、そのうち少なくとも1個の配
位子Lはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であって、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は置換基を有していてもよい。シクロペンタジエニル骨格を有する配位子Lとしては、例えばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチ
ルシクロペンタジエニル基、n−またはi−プロピルシクロペンタジエニル基、n−、i−、sec−またはt−ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルベンジルシクロペンタジエニル基等のアルキルまたはシクロアルキル置換シクロペンタジエニル基;さらにインデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子の水素は、ハロゲン原子またはトリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
上記のメタロセン化合物が、配位子Lとしてシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2個以上有する場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子同士が、エチレン、プロピレン等のアルキレン基;イソプロピリデン、ジフェニルメチレン等の置換アルキレン基;シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子(シクロペンタジエニル骨格を有しない配位子)Lとしては、炭素原子数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルフォン酸含有基(−SO31)、ハロゲン原子または水素原子(ここで、R1はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基、ハロゲン原子で
置換されたアリール基またはアルキル基で置換されたアリール基である。)などが挙げられる。
(メタロセン化合物の例−1)
上記式(1)で表されるメタロセン化合物が、例えば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記式(2)で表される。
2 k3 l4 m5 n1 …(2)
ここで、M1は周期表第4族から選ばれる遷移金属、R2はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)、R3、R4及びR5はそれぞれ独立にシクロペンタジエニル骨格を有
するかまたは有しない基(配位子)である。kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。
1がジルコニウムであり、かつシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくと
も2個含むメタロセン化合物の例を次に挙げる。ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどである。
上記の化合物の中で、1,3−位置換シクロペンタジエニル基を1,2−位置換シクロペンタジエニル基に置き換えた化合物も用いることができる。
またメタロセン化合物の別の例としては、上記式(2)において、R2、R3、R4及び
5の少なくとも2個、例えばR2及びR3がシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位
子)であり、この少なくとも2個の基がアルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基または置換シリレン基などを介して結合されているブリッジタイプのメタロセン化合物を使用することもできる。このときR4及びR5は、それぞれ独立に、前述したシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子Lと同様である。
このようなブリッジタイプのメタロセン化合物としては、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニル
シリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
(メタロセン化合物の例−2)
また、メタロセン化合物の別の例としては、特開平4−268307号公報に記載された、下記式(3)のメタロセン化合物が挙げられる。
Figure 0004828223
ここで、M1は周期表第4族遷移金属であり、具体的にはチタニウム、ジルコニウム、
ハフニウムが挙げられる。
11及びR12は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数1〜10のアルコキシ基;炭素原子数6〜10のアリール基;炭素原子数6〜10のアリーロキシ基;炭素原子数2〜10のアルケニル基;炭素原子数7〜40のアリールアルキル基;炭素原子数7〜40のアルキルアリール基;炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基;またはハロゲン原子であり、R11及びR12は、塩素原子であることが好ましい。
13及びR14は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数6〜10のアリール基;−N(R202、−SR20、−OSi(R203、−Si(R203または−P(R20
2基である。ここで、R20はハロゲン原子、好ましくは塩素原子;炭素原子数1〜10
、好ましくは1〜3のアルキル基;または炭素原子数6〜10、好ましくは6〜8のアリール基である。R13及びR14は、特に水素原子であることが好ましい。
15及びR16は、水素原子が含まれないことを除き、R13及びR14と同じであって、互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは同じである。R15及びR16は、好ましくはハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、トリフルオロメチル等が挙げられ、特にメチルが好ましい。
上記式(3)において、R17は次の群から選ばれる。
Figure 0004828223
=BR21、=AlR21、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=N
21、=CO、=PR21、=P(O)R21など。
2はケイ素、ゲルマニウムまたは錫、好ましくはケイ素またはゲルマニウムである。
ここで、R21、R22及びR23は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子;ハロゲン原子;炭素原子数1〜10のアルキル基;炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基;炭素原子数6〜10のアリール基;炭素原子数6〜10のフルオロアリール基;炭素原子数1〜10のアルコキシ基;炭素原子数2〜10のアルケニル基;炭素原子数7〜40のアリールアルキル基;炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基;または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基である。「R21とR22」または「R21とR23」とは、それぞれそれらが結合する原子と一緒になって環を形成してもよい。また、R17は、=CR2122、=SiR2122、=GeR2122、−O−、−S−、=SO、=PR21または=P(O)R21であることが好ましい。R18及びR19は互いに同一でも異なっていてもよく、R21と同じものが挙げられる。m及びnは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ0、1または2、好ましくは0または1であり、m+nは0、1または2、好ましくは0または1である。
上記式(3)で表されるメタロセン化合物の例としては、次の化合物が挙げられる。rac−エチレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライド、rac−ジメチルシリレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライドなど。これらのメタロセン化合物は、例えば、特開平4−268307号公報に記載の方法で製造することができる。
(メタロセン化合物の例−3)
また、メタロセン化合物として、下記式(4)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
Figure 0004828223
式(4)中、M3は、周期表第4族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタニウム、ジ
ルコニウム、ハフニウムなどである。R24及びR25は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基を示す。R24は炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチルまたはプロピルの炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。R25は水素原子または炭化水素基が好ましく、特に水素原子、またはメチル、エチルもしくはプロピルの炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。R26、R27、R28及びR29は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示す。これらの中では水素原子、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であることが好ましい。R26とR27、R27とR28、R28とR29のうち少なくとも1組は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、単環の芳香族環を形成していてもよい。また芳香族環を形成する基以外に、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基が2個以上ある場合には、これらが互いに結合して環状になっていてもよい。なおR29が芳香族基以外の置換基である場合、水素原子であることが好ましい。X1
及びX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1
〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素原子含有基またはイオウ原子含有基を示す。Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR30
、−P(R30)−、−P(O)(R30)−、−BR30−または−AlR30−(ただし、R30は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。
式(4)において、R26とR27、R27とR28、R28とR29のうち少なくとも1組が互いに結合して形成する単環の芳香族環を含み、かつM3に配位する配位子としては、次式で
表されるものなどが挙げられる。
Figure 0004828223
式中、Yは式(4)に示したものと同じである。
(メタロセン化合物の例−4)
また、メタロセン化合物として、下記式(5)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
Figure 0004828223
式(5)中、M3、R24、R25、R26、R27、R28及びR29は、上記式(4)と同じで
ある。R26、R27、R28及びR29のうち、R26を含む2個の基がアルキル基であることが好ましく、R26とR28、またはR28とR29がアルキル基であることが好ましい。このアルキル基は、2級または3級アルキル基であることが好ましい。またこのアルキル基は、ハロゲン原子、ケイ素含有基で置換されていてもよく、ハロゲン原子、ケイ素含有基としては、R24、R25で例示した置換基が挙げられる。R26、R27、R28及びR29のうち、アルキル基以外の基は、水素原子であることが好ましい。またR26、R27、R28及びR29は、これらから選ばれる2種の基が互いに結合して芳香族環以外の単環あるいは多環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、上記R24及びR25と同様のものが挙げられる。X1、X2及びYとしては、上記と同様のものが挙げられる。
上記式(5)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。rac−ジメチルシリレン−ビス(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,6−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなどである。
これらの化合物において、ジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置換えた遷移金属化合物を用いることもできる。遷移金属化合物は、通常ラセミ体として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
(メタロセン化合物の例−5)
また、メタロセン化合物として、下記式(6)で表されるメタロセン化合物を使用することもできる。
Figure 0004828223
式(6)中、M3、R24、X1、X2及びYは、上記式(4)と同じである。R24は炭化
水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピルまたはブチルの炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましい。R25は、炭素原子数6〜16のアリール基を示す。R25はフェニル、ナフチルであることが好ましい。アリール基は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい。X1及びX2としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
上記式(6)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。rac−ジメチルシリレン−ビス(4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(α−ナフチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(β−ナフチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリ
レン−ビス(2−メチル−4−(1−アントリル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなど。またこれら化合物において、ジルコニウム金属をチタニウム金属またはハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
(メタロセン化合物の例−6)
また、メタロセン化合物として、下記式(7)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
LaM43 2 …(7)
ここで、M4は周期表第4族またはランタニド系列の金属である。Laは非局在化π結
合基の誘導体であり、金属M4活性サイトに拘束幾何形状を付与している基である。X3は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数20以下の炭化水素基、20以下のケイ素を含有するシリル基または20以下のゲルマニウムを含有するゲルミル基である。
この化合物の中では、次式(8)で示される化合物が好ましい。
Figure 0004828223
式(8)中、M4は、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムである。X3は上記式(7)で説明したものと同様である。CpはM4にπ結合しており、かつ置換基Zを有する置
換シクロペンタジエニル基である。Zは酸素、イオウ、ホウ素または周期表第4族の元素(例えばケイ素、ゲルマニウムまたは錫)である。Yは窒素、リン、酸素またはイオウを含む配位子であり、ZとYとで縮合環を形成していてもよい。このような式(8)で表されるメタロセン化合物の具体的な例を次に示す。(ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン)チタンジクロリド、((t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル)チタンジクロリドなど。またこのメタロセン化合物において、チタンをジルコニウムまたはハフニウムに置き換えた化合物を挙げることもできる。
(メタロセン化合物の例−7)
また、メタロセン化合物として、下記式(9)で表されるメタロセン化合物を使用することもできる。
Figure 0004828223
式(9)中、M3は周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的には、チタニウム、ジ
ルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。R31は互いに同一でも異なっていてもよく、そのうち少なくとも1個が炭素原子数11〜20のアリール基、炭素原子数12〜40のアリールアルキル基、炭素原子数13〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数12〜40のアルキルアリール基またはケイ素含有基であるか、またはR31で示される基のうち隣接する少なくとも2個の基が、それらの結合する炭素原子とともに、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成している。この場合、R31により形成される環は、R31が結合する炭素原子を含んで全体として炭素原子数が4〜20である。アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルアリール基及び芳香族環、脂肪族環を形成しているR31以外のR31は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基またはケイ素含有基である。R32は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。また、R32で示される基のうち隣接する少なくとも2個の基が、それらの結合する炭素原子とともに、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成していてもよい。この場合、R32により形成される環は、R32が結合する炭素原子を含んで全体として炭素原子数が4〜20であり、芳香族環、脂肪族環を形成しているR32以外のR32は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基またはケイ素含有基である。なお、R32で示される2個の基が、単数または複数の芳香族環または脂肪族環を形成して構成される基にはフルオレニル基が次式のような構造になる態様も含まれる。
Figure 0004828223
32は、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、特に水素原子またはメチル、エチル、プロピルの炭素原子数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。このような置換基としてR32を有するフルオレニル基としては、2,7−ジアルキル−フルオレニル基が好適な例として挙げられ、この場合の2,7−ジアルキルのアルキル基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基が挙げられる。また、R31とR32は、互いに同一でも異なっていてもよい。R33及びR34は互いに同一でも異なっていてもよく、上記と同様の水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基
、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。これらのうち、R33及びR34は、少なくとも一方が炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましい。X1及びX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基もしくは窒素含有基、またはX1とX2とから形成された共役ジエン残基である。X1とX2とから形成された共役ジエン残基としては、1,3−ブタジエン、2,4−ヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエン、1,4−ジフェニルブタジエンの残基が好ましく、これらの残基はさらに炭素原子数1〜10の炭化水素基で置換されていてもよい。X1及びX2としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基またはイオウ含有基であることが好ましい。Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2
、−NR35−、−P(R35)−、−P(O)(R35)−、−BR35−または−AlR35−(ただし、R35は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。これらの2価の基のうちでも、−Y−の最短連結部が1個または2個の原子で構成されているものが好ましい。また、R35は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。Yは、炭素原子数1〜5の2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基または2価のゲルマニウム含有基であることが好ましく、2価のケイ素含有基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレンまたはアリールシリレンであることが特に好ましい。
(メタロセン化合物の例−8)
また、メタロセン化合物として、下記式(10)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
Figure 0004828223
式(10)中、M3は周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的にはチタニウム、ジ
ルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。R36は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。なお、上記アルキル基及びアルケニル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。R36はこれらのうち、アルキル基、アリール基または水素原子であることが好ましく、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルの炭素原子数1〜3の炭化水素基、フェニル、α−ナフチル、β−
ナフチルなどのアリール基または水素原子であることが好ましい。R37は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。なお、上記アルキル基、アリール基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルアリール基は、ハロゲンが置換していてもよい。R37はこれらのうち、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、特に水素原子またはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、tert−ブチルの炭素原子数1〜4の炭化水素基であることが好ましい。また、上記R36とR37は、互いに同一でも異なっていてもよい。R38及びR39は、いずれか一方が炭素原子数1〜5のアルキル基であり、他方は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。これらのうち、R38及びR39は、いずれか一方がメチル、エチル、プロピルなどの炭素原子数1〜3のアルキル基であり、他方は水素原子であることが好ましい。X1及びX2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基もしくは窒素含有基、またはX1とX2とから形成された共役ジエン残基である。これらのうち、ハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR40−、−P(R40
−、−P(O)(R40)−、−BR40−または−AlR40−(ただし、R40は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示す。これらのうちYは、炭素原子数1〜5の2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基または2価のゲルマニウム含有基であることが好ましく、2価のケイ素含有基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレンまたはアリールシリレンであることが特に好ましい。
(メタロセン化合物の例−9)
また、メタロセン化合物として、下記式(11)で表されるメタロセン化合物を用いることもできる。
Figure 0004828223
式(11)において、Yは炭素、ケイ素、ゲルマニウムおよびスズ原子から選ばれ、MはTi、ZrまたはHfであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10
、R11およびR12は、水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R5からR12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成しても
よく、R13およびR14は炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R13およびR14が互いに結合して環を形成してもよい。Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。)
以下、本発明に用いられるメタロセン化合物の化学構造上の特徴であるシクロペンタジエニル基、フルオレニル基、架橋部、およびその他特徴について順次説明した後に、これらの特徴を併せ持つ好ましいメタロセン化合物を説明する。
(シクロペンタジエニル基)
シクロペンタジエニル基は置換されていてもいなくてもよい。置換または非置換のシクロペンタジエニル基とは、上記式(11)におけるシクロペンタジエニル基部分が保有するR1、R2、R3およびR4が全て水素原子であるか、またはR1、R2、R3およびR4のうちのいずれか1つ以上が炭化水素基(f1)、好ましくは総炭素数が1から20の炭化水素基(f1’)、またはケイ素含有基(f2)、好ましくは総炭素数が1から20のケイ素含有基(f2’)で置換されたシクロペンタジエニル基であることを意味する。R1
2、R3およびR4のうちの2つ以上が置換されている場合は、それらの置換基は相互に
同一でも異なっていてもよい。また、総炭素数が1から20の炭化水素基とは、炭素および水素のみから構成されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基である。この中には、隣接する任意の2つの水素原子が同時に置換されて脂環族あるいは芳香族環を形成しているものも含む。
総炭素数1から20の炭化水素基(f1’)としては、炭素および水素のみから構成されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基以外に、これらの炭素に直結した水素原子の一部がハロゲン原子、酸素含有基、窒素含有基、ケイ素含有基で置換されたヘテロ原子含有炭化水素基や、隣接する任意の二つの水素原子が脂環族を形成しているものも含む。このような炭化水素基(f1’)としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル(allyl)基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、t−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基およびこれらの核アルキル置換体;ベンジル基、クミル基などのアリール基の置換した飽和炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基N−メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などのヘテロ原子含有炭化水素基を挙げることができる。
ケイ素含有基(f2)とは、例えば、シクロペンタジエニル基の環炭素がケイ素原子と直接共有結合している基であり、具体的にはアルキルシリル基やアリールシリル基である。総炭素数が1から20のケイ素含有基(f2’)としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を例示することができる。
(フルオレニル基)
フルオレニル基は置換されていてもいなくてもよい。置換または非置換のフルオレニル基とは、上記式(11)におけるフルオレニル基部分が保有するR5、R6、R7、R8、R
9、R10、R11およびR12が全て水素原子であるか、またはR5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12のうちのいずれか1つ以上が炭化水素基(f1)、好ましくは総炭素数が1から20の炭化水素基(f1’)、またはケイ素含有基(f2)、好ましくは総炭素数が1から20のケイ素含有基(f2’)で置換されたフルオレニル基であることを意味する。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12の内の二つ以上が置換されて
いる場合は、それらの置換基は相互に同一でも異なっていてもよい。また、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、隣接する基が互いに結合して環を形成していて
もよい。触媒製造上の容易性からR6とR11、およびR7とR10が相互に同一であるものが好適に使用される。
好ましい炭化水素基(f1)としては、前記総炭素数が1から20の炭化水素基(f1’)であり、好ましいケイ素含有基(f2)の例は、前記総炭素数が1から20のケイ素含有基(f2’)である。
(共有結合架橋)
シクロペンタジエニル基とフルオレニル基を結ぶ結合の主鎖部は、炭素、ケイ素、ゲルマニウムおよびスズ原子を1つ含有する2価の共有結合架橋である。高温溶液重合する場合の重要な点は、共有結合架橋部の架橋原子Yが、相互に同一でも異なっていてもよいR13とR14を有することである。好ましい炭化水素基(f1)としては、前記総炭素数が1から20の炭化水素基(f1’)であり、好ましいケイ素含有基(f2)の例は、前記総炭素数が1から20のケイ素含有基(f2’)である。
(メタロセン化合物のその他の特徴)
前記式(11)において、Qはハロゲン、炭素数が1〜10の炭化水素基、または炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組み合わせで選ばれる。ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1−メチル−1−シクロヘキシル等が挙げられる。炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエンの具体例としては、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタ
ジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエ
ン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs
−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ビス
(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン等が挙げられる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基、メシレート、トシレート等のスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、またはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。jは1〜4の整数であり、jが2以上の時は、Qは互いに同一でも異なっていてもよい。
(メタロセン化合物の例−10)
また、メタロセン化合物として、下記式(12)で表されるメタロセン化合物を用いる
こともできる。
Figure 0004828223
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく
、R1からR14までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、MはTi、
ZrまたはHfであり、Yは第14族原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子、および孤立電子対で配位可能な中性配位子からなる群から同一または異なる組合せで選ばれ、nは2〜4の整数、jは1〜4の整数である。
上記式(12)において、炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアルキルアリール基であり、1つ以上の環構造を含んでいてもよい。その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1−メチル−1−シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ベンジル、2−フェニルエチル、1−テトラヒドロナフチル、1−メチル−1−テトラヒドロナフチル、フェニル、ナフチル、トリル等が挙げられる。
上記式(12)において、ケイ素含有炭化水素基としては、好ましくはケイ素数1〜4、炭素数3〜20のアルキルまたはアリールシリル基であり、その具体例としては、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。
本発明において、上記式(12)のR1からR14は水素、炭化水素基、ケイ素含有炭化
水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましい炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。
上記式(12)のシクロペンタジエニル環上のR1からR14までの隣接した置換基は、
互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(12)のMは、周期律表第4族元素、すなわちジルコニウム、チタンまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
Yは第14族原子であり、好ましくは炭素原子または珪素原子である。nは2〜4の整数であり、好ましくは2または3、特に好ましくは2である。
Qはハロゲン、炭化水素基、炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子からなる群から同一または異なる組み合わせで選ばれる。Qが炭化水素基であるとき、より好ましくは炭素数が1〜10の炭化水素基である。
ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1−メチル−1−シクロヘキシル等が挙げられる。炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエンの具体例としては、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3
−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベ
ンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジ
エン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−または
s−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−ト
ランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン等が挙げられる
。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基、メシレート、トシレート等のスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、またはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1、2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。jが2以上の整数である場合は、複数のQは同一でも異なっていてもよい。
式(12)において、Yは2〜4の複数個存在するが、複数のYは相互に同一であっても異なっていてもよい。Yに結合する複数のR13及び複数のR14は、それぞれ相互に同一であっても異なっていてもよい。例えば同一のYに結合する複数のR13が相互に異なっていてもよいし、異なるYに結合する複数のR13が相互に同一であってもよい。また、R13もしくはR14同士が環を形成していてもよい。
式(12)で表される第4族遷移金属化合物の好ましい例として、下記式(13)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0004828223
式(13)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12
水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R13、R14、R15、R16は水素原子または炭化水素基であり、nは1〜3の整数であり、n=1のときは前記R1からR16は同時に水素原子ではなく、それぞれ同一でも異なっ
ていてもよい。R5からR12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく
、R13とR15は互いに結合して環を形成してもよく、また、R13とR15は互いに結合して環を形成すると同時にR14とR16は互いに結合して環を形成してもよく、Y1およびY2は第14族原子であり相互に同一でも異なっていてもよく、MはTi、ZrまたはHfであり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。
このようなメタロセン化合物の例−9、10のような化合物は特開2004−175707号公報WO2001/027124、WO2004/029062、WO2004/083265等に挙げられている。
以上に説明したメタロセン化合物は、単独であるいは2種以上組み合せて用いられる。またメタロセン化合物は、炭化水素またはハロゲン化炭化水素などに希釈して用いてもよい。
(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物:
本発明では、従来公知のアルミノキサンを、有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)として、そのまま使用できる。このような公知のアルミノオキサンとしては、具体的には下記式(14)または下記式(15)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004828223
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。)
これらの化合物のうち、特にRがメチル基であるメチルアルミノキサンでnが3以上、好ましくは10以上のものが好ましい。これらアルミノキサン類に若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
また、高温溶液重合を行なう場合には、特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物を適用することもできる。また、特開平2−167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2−24701号公報、特開平3−103407号公報に記載されている2種類以上のアルキル基を有するアルミノキサンなども好適に利用できる。なお、有機アルミニウムオキシ化合物における「ベンゼン不溶性」とは、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であることをいう。
また、本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)としては、下記(16)の構造を有する修飾メチルアルミノキサン等も挙げられる。
Figure 0004828223
(ここで、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、m,nは2以上の整数を示す。)
この修飾メチルアルミノキサンはトリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製される。このような修飾メチルアルミノキサンは一般にMMAOと呼ばれている。このようなMMAOは米国特許第4960878号明細書および米国特許第5041584号明細書で挙げられている方法で調製することができる。
また、東ソー・ファインケム社等からもトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとを用いて調製した、Rがイソブチル基である修飾メチルアルミノキサンがMMAOやTMAOといった名称で商業生産されている。
このようなMMAOは各種溶媒への溶解性および保存安定性を改良したアルミノキサンであり、具体的には上記式(14)、(15)のようなベンゼンに対して不溶性または難溶性のものとは違い、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解する。
さらに、本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)としては、下記式(17)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
Figure 0004828223
(式中、Rcは炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。)
(b−2)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物:
メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(b−2)(以下、「イオン性化合物」と略称する場合がある。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、米国特許第5321106号明細書などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
本発明において、好ましく採用されるイオン性化合物は下記一般式(18)で表される
化合物である。
Figure 0004828223
式中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニ
ウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。Rf〜Riは、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基である。
前記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n−プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
上記のうち、Re+としては、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
カルベニウム塩として具体的には、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4−メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。
アンモニウム塩としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩などを挙げることができる。
トリアルキル置換アンモニウム塩としては、たとえばトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアン
モニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどが挙げられる。
N,N−ジアルキルアニリニウム塩としては、たとえばN,N−ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、 N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、 N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、 N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
ジアルキルアンモニウム塩としては、たとえばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
さらに、本出願人によって開示(特開2004−51676号公報)されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
上記のようなイオン性化合物(b−2)は、2種以上混合して用いることができる。
(b−3)有機アルミニウム化合物:
オレフィン重合触媒を形成する(b−3)有機アルミニウム化合物としては、例えば、下記式(19)で表される有機アルミニウム化合物、下記式(20)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物などを挙げることができる。
a mAl(ORbnpq …(19)
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
2AlRa 4 …(20)
(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)
上記式(19)で表される化合物の具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチ
ルアルミニウムなどのトリn−アルキルアルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;一般式(i−C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)などで表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;一般式Ra 2.5Al(ORb0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
上記式(20)で表される化合物の具体例として、LiAl(C254、LiAl(
7154などを例示することができる。また、上記一般式(20)で表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
入手容易性の点から、(b−3)有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好適に用いられる。
(重合)
本発明で用いられるポリオレフィンワックス(B)は、上記メタロセン系触媒の存在下に、エチレンまたはα−オレフィンを通常液相で単独重合するか、またはエチレンおよびα−オレフィンを共重合させることにより好ましく得られる。重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
(q1)触媒成分(a)を単独で重合器に添加する方法。
(q2)触媒成分(a)および成分(b)を任意の順序で重合器に添加する方法。
上記(q2)の方法においては、各触媒成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、α−オレフィンを溶媒として用いてもよい。なお、ここで用いる各モノマーは、前述した通りである。
重合方法は、ポリオレフィンワックスがヘキサン等の溶媒中に粒子として存在する状態で重合する懸濁重合、溶媒を用いないで重合する気相重合、そして140℃以上の重合温度で、ポリオレフィンワックスが溶剤と共存または単独で溶融した状態で重合する溶液重合が可能であり、その中でも溶液重合が経済性と品質の両面で好ましい。
重合反応は、バッチ法あるいは連続法いずれの方法で行ってもよい。重合をバッチ法で実施するに際しては、前記の触媒成分は次に説明する濃度条件で用いられる。
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、触媒成分(a)は、反応容積1リットル当り、通常10-9〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルになるような量で用いられる。
触媒成分(b−1)は、触媒成分(b−1)と、触媒成分(a)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(b−1)/M]が通常0.01〜5,000、好ましくは0.05〜2,000となるような量で用いられる。成分(b−2)は、成分(b−2)中のイオン性化合物と、成分(A)中の全遷移金属(M)とのモル比[(b−2)/M]が、通常0.5〜5,000、好ましくは1〜2,000となるような量で用いられる。成分(b−3)は、成分(b−3)と、成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−3)/M]が、通常1〜10000、好ましくは1〜5000となるような量で用いられる。
重合反応は、温度が、通常−20〜+200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜180℃で、圧力が、通常0を超えて7.8MPa(80kgf/cm2
、ゲージ圧)以下、好ましくは0を超えて4.9MPa(50kgf/cm2、ゲージ圧
)以下の条件下で行われる。
上記メタロセン触媒の存在下に、エチレンおよび/またはα−オレフィンを供給してこれらを重合させる。このとき、水素などの分子量調節剤を添加することもできる。このようにして重合させると、生成した重合体は通常これを含む重合液として得られるので、常法により処理するとポリオレフィンワックスが得られる。
上記メタロセン触媒としては、特に(メタロセン化合物の例−6)で示したメタロセン化合物を含む触媒が好ましい。
樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上述した熱可塑性樹脂(A)と、ポリオレフィンワックス(B)と、必要に応じてその他の添加成分を含有する樹脂組成物を成形してなる。
樹脂組成物を構成する各成分は、成形機に供給する前にあらかじめ混合(予備混合)してもよく、また、たとえば成形機に供給された熱可塑性樹脂にサイドフィードとしてポリオレフィンワックスを供給するなど、成形機に逐次導入して混合してもよい。これらのいずれの場合にも、成形時には樹脂組成物が形成される。予備混合を行う場合、その方法は特に限定されず、溶融混合でもドライブレンドでもよい。また、必要に応じて添加することのできる成分としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、クレー、カーボンブラックなどの充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、金属石鹸、可塑剤、発泡剤、充填剤、老化防止剤、難燃剤、抗菌・防カビ剤など、用途に応じた各種添加剤を挙げることができる。
本発明に係る樹脂組成物は、好ましくは、樹脂組成物中のポリオレフィンワックス(B)の含有量が、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部の範囲にあるのが望ましい。樹脂組成物がこのような組成である場合には、得られる熱可塑性樹脂成形体が、熱可塑
性樹脂(A)が本来有する透明性などの性状を好適に維持することができるため好ましい。
熱可塑性樹脂成形体
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上述した樹脂組成物を成形して得られる。成形方法としては、熱可塑性樹脂を成形する押出成形法、射出成形法、溶液流延法等といった公知の方法をいずれも採用することができるが、特に押出成形法が好ましい。また、本発明の熱可塑性成形体の形状としては、通常シート、フィルム、パイプ、チューブ、窓枠・住宅部材等の異形品、ラミネート等であるが、好ましくはシート、フィルム、パイプ、チューブ、特に好ましくはシート、フィルム状が望ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、優れた耐衝撃性を有し、しかも熱可塑性樹脂が本来有する透明性、表面特性、剛性などの物性を維持する。耐衝撃性の程度は熱可塑性樹脂(A)成分の性状によるが、いずれの(A)成分を用いた場合にも、ポリオレフィンワックス(B)成分を含有しない場合と比較して大幅に向上した耐衝撃性を示す。
このような本発明の熱可塑性樹脂成形体は、包装用フィルム、農業用フィルム、食品用ケース、化粧品用チューブ、飲料用ボトル、レジ袋等の用途に好適に用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例においてワックスの物性は次のようにして測定した。
(分子量)
ワックスの分子量および分子量分布の測定は、GPCを用いて求めたものである。測定は、市販の単分散標準ポリスチレンを標準とし、以下の条件で行った。
装置 : ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
溶剤 : o-ジクロルベンゼン
カラム: TSKgelカラム(東ソー社製)×4
流速 : 1.0 ml/分
試料 : 0.3%o-ジクロルベンゼン溶液
温度 : 140℃
分子量換算 : PE換算/汎用較正法
(融点)
融点は、示差走査型熱量測定法(DSC)に従い、DSC−20(セイコー電子工業社製)によって測定した。試料約10mgを−20℃から200℃まで10℃/分で昇温し、得られたカーブの吸熱ピークを融点として求めた。この昇温測定の前に、一旦、樹脂を200℃程度まで昇温し、5分間保持した後、即座に常温(25℃)まで降温する操作を行い、樹脂の熱履歴を統一することが望ましい。
(密度)
JIS K6760に従って測定した。
[比較例1]
下記条件でポリプロピレン(商品名:プライムポリプロTMF113G、MFR3g/1
0min(230℃)、(株)プライムポリマー製)を押出成形し、キャストフィルムを
作製した。押出成形条件と各種物性の評価条件を以下に示す。また、評価結果を表1に示
す。
[押出成形条件]
押出成形機:φ20mm単軸押出機(田中鉄工所製)
ダイ設定温度:210℃
チルロール温度:50℃
引取速度:2m/min
フィルム厚:100μm
[物性評価]
(透明性)
得られたフィルムの透明性を目視にて評価した。
○:成形体の透明性が維持されたもの。
×:成形体が白化し、本来の透明性が損なわれたもの。
(表面特性)
得られたフィルムの表面特性を目視にて評価した。
○:成形体表面の光沢感が維持されたもの。
×:成形体表面の光沢感が損なわれたもの。
(引張降伏応力)
JIS K6781に準拠して、引張降伏応力を測定した。
(引張破断応力)
JIS K6781に準拠して、引張破断応力を測定した。
(耐衝撃性)
ASTM D1709に準拠して、23℃におけるダートインパクトを測定した。
[比較例2]
ポリプロピレン(プライムポリプロF113G)100重量部に、エラストマー組成物(商品名:タフマーTMXM7080、三井化学(株)製)をドライブレンドにて3重量部配合し、実施例1と同様にしてキャストフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
ポリプロピレン(プライムポリプロF113G)100重量部に、エラストマー組成物(商品名:タフマーTMXM7080、三井化学(株)製)をドライブレンドにて20重量部配合し、実施例1と同様にしてキャストフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
[比較例4]
ポリプロピレン(プライムポリプロF113G)100重量部に、メタロセン系ポリエチレンワックス(商品名:エクセレックスTM40800、Mn2400、融点128℃、密度980kg/m、Mw/Mn2.9、三井化学(株)製)をドライブレンドにて3重量部配合し、実施例1と同様にしてキャストフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
[実施例1]
ポリプロピレン(プライムポリプロTMF113G)100重量部に、メタロセン系ポリエチレンワックス(商品名:エクセレックスTM15970P、Mn800、融点89℃、密度899kg/m3、Mw/Mn1.8、三井化学(株)製)をドライブレンドにて1
重量部配合し、実施例1と同様にしてキャストフィルムを作製した。評価結果を表1に示す
[実施例2]
ポリプロピレン(プライムポリプロTMF113G)100重量部に、メタロセン系ポリエチレンワックス(商品名:エクセレックスTM15970P、Mn800、融点89℃、密度899kg/m3、Mw/Mn1.8、三井化学(株)製)をドライブレンドにて3
重量部配合し、実施例1と同様にしてキャストフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
ポリプロピレン(プライムポリプロTMF113G)100重量部に、メタロセン系ポリエチレンワックス(商品名:エクセレックスTM15970P、Mn800、融点89℃、密度899kg/m3、Mw/Mn1.8、三井化学(株)製)をドライブレンドにて5
重量部配合し、実施例1と同様にしてキャストフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
(メタロセン系ポリエチレンワックスの合成)
メタロセン触媒を用いて、次のようにしてメタロセン系ポリエチレンワックスAを合成した。
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン950mlおよびプロピレン50mlを装入し、水素を0.15MPa(ゲージ圧)導入した。
次いで、系内の温度を150℃に昇温した後、トリイソブチルアルミニウム 0.3ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 0.04ミリモル、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエ
ニル)シランチタンジクロライド(シグマアルドリッチ社製)0.002ミリモルをエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を2.9Mpa(ゲージ圧)に保ち、150℃で20分間重合を行った。
少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンおよびプロピレンをパージした。得られたポリマー溶液を、100℃減圧下で一晩乾燥した。その結果、Mn1100、融点102℃、密度923kg/m3、Mw/Mn2.7で
あるメタロセン系ワックスを24.3g得た。
上記の合成作業を必要量採取できるまで繰り返し、合成したメタロセン系ワックスを溶融混合した後、冷却しメタロセン系ポリエチレンワックスAとした。
ポリプロピレン(プライムポリプロTMF113G)100重量部に、上記メタロセン系ポリエチレンワックスAをドライブレンドにて3重量部配合し、実施例1と同様にしてキ
ャストフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
Figure 0004828223
上記表1からもあきらかな様に、本発明によれば、メタロセン系ポリエチレンワックスを
添加することにより、熱可塑性樹脂が本来有する透明性などの物性を維持し、かつ、優れた耐衝撃性を有することが分かる。また、エラストマー組成物を添加しても、熱可塑性樹脂が本来有する透明性などの物性と優れた耐衝撃性を両立できないことが分かる。

Claims (7)

  1. ポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂(A)と、
    下記(i)〜(iv)を満たすポリオレフィンワックス(B)とを含有する樹脂組成物を成形してなることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体;
    (i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(M
    n)が400以上であり、
    (ii)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が65〜130℃の範囲にあり、
    (iii)密度勾配管法で測定した密度(D(kg/m3))が850〜980kg/m3
    範囲にあり、
    (iv)前記数平均分子量(Mn)と、前記密度(D(kg/m3))とが、
    D≦−0.067×Mn+1000
    を満たす。
  2. 樹脂組成物中のポリオレフィンワックス(B)の含有量が、ポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体。
  3. ポリオレフィンワックス(B)の分子量分布(Mw/Mn)が、1.0〜4.0の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂成形体。
  4. ポリオレフィンワックス(B)が、メタロセン系触媒を用いて製造されたワックスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
  5. ポリオレフィンワックス(B)が、ポリエチレン系ワックスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
  6. 押出成形体であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
  7. フィルムまたはシート状であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
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