JP4825013B2 - 懸濁水フィルタ用平膜ろ材の製造方法 - Google Patents
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Description
(特許文献1)には、「原水が導入される傾斜型スクリーン装置と、この傾斜型スクリーン装置による粗取り水が導入される回転ドラム型固液分離装置とを備え、回転ドラム型固液分離装置は、内側に傾斜型スクリーン装置の処理水が導入される回転胴を有し、この回転胴には、織物または編物からなる基材の表面にその基材を直接起毛して得た太さ0.1〜10μmの極細繊維の立毛からなるろ層を形成してなるろ布がそのろ層が回転胴の内側になるように装着されている固液分離装置」が記載されている。
(特許文献2)には、「水域から汚染物質を含む原水を取水する取水装置と、取水装置で取水された原水をろ過して、ろ過水とろ過物とに固液分離する回転ドラム式連続ろ過装置と、回転ドラム式連続ろ過装置で得られたろ過物を凝集して、凝集フロック化する凝集反応装置と、凝集反応装置で凝集フロック化されたろ過物をケーク化して取り出すろ布走行式脱水装置とを備えた水域浄化装置」が記載されている。
(特許文献3)には、「スラリー状またはスラッジ状の被脱水処理物を濾過可能な単一の濾布ベルトが無端状に巻回されて順次移送される形式の濾布ベルト式脱水装置であって、濾布ベルトの上面側に供給される被脱水処理物に対し濾布ベルトの下面側から吸引負圧を作用させて被脱水処理物を初期脱水する負圧脱水部と、初期脱水された被脱水処理物を濾布ベルトと共に一対のプレスロール間で加圧して脱水し、かつ、脱水された処理物を一方のプレスロールに転着させて濾布ベルトから剥離させる加圧脱水転着部と、一方のプレスロールに転着した処理物を掻き落して回収する処理物回収部と、処理物が剥離された濾布ベルトを洗浄する洗浄部と、洗浄された濾布ベルトを一対のスクイズロール間で絞る絞り部とを備えていることを特徴とする濾布ベルト式脱水装置」が記載されている。
(1)(特許文献1)に記載の固液分離装置のろ布は、織物または編物からなる基材の表面にその基材を直接起毛して得た極細繊維の立毛によりろ層を形成しているので、ろ層の摩耗が発生し易く耐久性に欠けるという課題を有していた。また、目詰まりが発生し易く洗浄が困難でメンテナンス性、長寿命性に欠けるという課題を有していた。
(2)(特許文献2)に記載の回転ドラム式連続ろ過装置では、織物または編物からなる基材の表面に、太さ0.1〜20μm程度の繊維の立毛が略一定方向に横たわったろ過材を用いているので、耐久性、メンテナンス性、長寿命性に欠けるという(特許文献1)と同様の課題を有していた。
(3)(特許文献3)に記載の濾布ベルト式脱水装置では、濾布ベルトが、その上面を構成する外面層と、その下面を構成する内面層と、これらの間の中間層とを有する3層構造のフェルト材から成り、外面層は被脱水処理物を濾過する極細繊維層で構成され、中間層は水分の透過を促進する中細繊維層で構成され、内面層は水切れを促進する基布層で構成されており、外面側が密で内面側が粗に形成されているが、単に繊維径の異なる繊維で形成された繊維層を積層した3層構造のフェルト材であるため、十分なろ過効率を得ることができず、表面に付着した懸濁物質の除去が困難で、洗浄水に浸漬させて洗浄を行ったり、加圧による脱水を行ったりする必要があり、長時間連続して使用することができず、メンテナンス性、実用性に欠けるという課題を有していた。
(4)(特許文献1)乃至(特許文献3)は、いずれも織物や編物或いは不織布のろ布を用いており、繊維同士の隙間の調整だけで空隙を形成するものであるが、繊維の断面形状が基本的に円形であるため繊維同士の接触面積が大きく、空隙率が低くなり易い傾向があり、また、空隙の形状が不揃いになるため均一な多孔質を得ることが困難で、ろ過性能にばらつきが生じ易いという課題を有していた。
また、ろ布表面の凹凸が大きく、付着した懸濁物質が剥がれ難いため、メンテナンス性、長寿命性に欠けるという課題を有していた。
(5)ろ布表面のろ層(外面層)の多孔質部を微細な空孔で形成する場合、通水性を確保するためには、その厚みが薄くならざるをえず、刷毛等による物理的な洗浄に弱く、破れ易くなって耐久性に欠けるという課題を有していた。また、耐久性を確保するために厚みを厚くすると、微細な空孔が厚さ方向に連なるため、懸濁物質が途中で詰まり易く、短時間でろ過性能が低下し、実用性、信頼性に欠けるという課題を有していた。
また、従来の平膜フィルタの表層のコーティングは、基材の表面に微多孔質のフィルムを貼ったものであるため、非常に弱く外的な洗浄で破損が発生し易く、一部が破損すると全体が使用できなくなる構造で、信頼性、長寿命性に欠けるという課題を有していた。
請求項1に記載の懸濁水フィルタ用平膜ろ材の製造方法は、多孔質層の内部に多孔質空間の核となる核空間と、前記核空間よりも微細な平均空孔径が0.5μm〜8μmの連続微空間が混在し、複数の前記核空間同士の間を連結するように多数の前記連続微空間が形成され、前記多孔質層の表面と裏面が連通したスクラム構造を有し、前記多孔質層が、不織布と、前記不織布の繊維層に含浸された多孔質性樹脂と、で一体化されて形成された懸濁水フィルタ用平膜ろ材の製造方法であって、前記多孔質層の形成工程が、溶媒に溶解する溶解材を混合した発泡性樹脂を前記不織布の繊維層の表層部に含浸させる樹脂含浸工程と、前記発泡性樹脂を発泡させる樹脂発泡工程と、前記繊維層を前記溶媒に浸漬して前記溶解材を溶解させる溶解工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)多孔質層が、核空間の周囲に核空間同士を連結するように連続微空間(連続気泡)が形成されたスクラム構造を有することにより、多孔質層全体を厚く形成しても、懸濁水中の微細な粒子を捕捉する連続微空間の領域を薄く形成することができるので、多孔質層の目詰まりが発生し難く、ろ過性能の信頼性に優れると共に耐久性に優れる。
(2)多孔質層がスクラム構造を有することにより、連続使用中に多孔質層の表層側が破損しても、内側に形成されている連続微空間によって継続的なろ過を行うことが可能で長寿命性に優れ、濃度の濃い懸濁水にも対応することができ信頼性、汎用性に優れる。
(3)多孔質層が、不織布と不織布の繊維層に含浸された多孔質性樹脂とで一体化されて形成されているのでスクラム構造の耐久性に優れ、逆洗或いはブラシやスクレーパ等による物理的な掻き取り等によって表面の懸濁物質を剥離することができ、長期間に渡って継続運転が可能でろ過性能の安定性に優れる。
(4)樹脂含浸工程により、発泡剤を混合した樹脂を不織布の繊維層の表層部に含浸させた後、樹脂発泡工程により、樹脂を発泡させるだけで、不織布の繊維層と発泡した多孔質性の樹脂が一体化された耐久性に優れるスクラム構造を備えた多孔質層を形成することができ、量産性に優れる。
(5)多孔質層の形成工程が、不織布の繊維層の表層部に発泡剤を混合した樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、樹脂を発泡させる樹脂発泡工程と、を有するので、既存の不織布にも簡便にスクラム構造を備えた多孔質層を形成することができ、生産性に優れる。
(6)樹脂含浸工程により繊維層の表層部に含浸させる発泡性樹脂に、溶媒に溶解する溶解剤が混合されているので、樹脂発泡工程によって発泡性樹脂を発泡させた後に、溶解工程によって繊維層を溶媒に浸漬するだけで溶解剤を溶解させることができ、発泡により生じた空孔(独立核空間、独立気泡)の周囲の樹脂層に微細空孔(連続微空間、連続微細気泡)を形成して連通させることができ、スクラム構造を備えた多孔質層を形成することができる。
多孔質層を形成する不織布の材質としては、平均繊維径が3μm〜25μmのポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール(ビニロン)系などの合成繊維が好適に用いられる。特に、耐水性、耐薬品性、耐候性の面からはポリエステルやポリプロピレンが好ましい。平均繊維径が3μmより細くなるにつれ、取扱いが困難となり、不織布の量産性、耐久性に欠ける傾向があり、25μmより太くなるにつれ、空孔(核空間)が大きくなって空隙率が増加し、ろ過性能が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
多孔質性樹脂は、発泡性樹脂等を不織布の繊維層に含浸、固化させ、引張りやニードリングでセルを破壊した後、発泡させることにより形成することができる。また、溶解液で溶解剤を溶解させる方法や、熱或いは溶媒により収縮材を収縮させる方法も用いることができる。さらに、発泡剤(NaCl,NaHCO 3 等)を混入した溶融発泡樹脂を不織布に積層し、次いで、引張ってセルを破壊して発泡させる方法、粒径の異なる発泡剤を混入したキャスティングシロップに不織布を含浸、固化させ、引張り若しくはニードリングした後、溶解液(水等)に浸漬して発泡させる方法などがある。
これらの連続微空間の形成方法は、単独で用いてもよいし、複数組合せて用いてもよい。複数の組合せで多孔質層を形成することにより、容易に寸法や形状の異なる空孔を形成して空隙率を変化させることができるので、ろ過性能の調整を行うことができ、生産性、実用性に優れる。特に、多孔質性樹脂の中に発泡剤を混合して発泡させる方法と、多孔質性樹脂の中に溶解剤若しくは収縮材を混合して溶解若しくは収縮させる方法を組合せた場合、発泡剤の発泡により形成される大きな空孔(核空間)と連通するように、樹脂膜に多数の微細な空孔(連続微空間)が形成されたスクラム構造とすることができる。また、無機或いは有機質の微粉末をバインダーで混練し、吹き付けや塗布等により、不織布の表層の繊維層と一体化させ、微粉末同士が網目状に接合された連続微空間を形成してもよい。
溶解剤としては、アミロース、グルコース、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、ナフタリン等が好適に用いられる。
熱により収縮する収縮材としては、延伸したポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等が好適に用いられる。また、水に漬けることにより収縮する収縮材としてビニロンが好適に用いられる。
これらの連続微空間の形成方法は、単独で用いてもよいし、複数組合せて用いてもよい。複数の組合せで多孔質層を形成することにより、容易に寸法や形状の異なる空孔を形成して空隙率を変化させることができるので、ろ過性能の調整を行うことができ、生産性、実用性に優れる。特に、多孔質性樹脂の中に発泡剤を混合して発泡させる方法と、多孔質性樹脂の中に溶解剤若しくは収縮材を混合して溶解若しくは収縮させる方法を組合せた場合、発泡剤の発泡により形成される大きな空孔(独立核空間)と連通するように、樹脂膜に多数の微細な空孔(連続微空間)が形成されたスクラム構造とすることができる。
尚、スクラム構造を有する多孔質層は単独で用いてもよいし、不織布等と積層して用いてもよい。
また、懸濁水フィルタ用平膜ろ材の膜表面(多孔質層)を物理的に洗浄できるので、濃度の濃い懸濁水にも対応することができ汎用性に優れる。さらに、ブラシ洗浄やスクレーパ洗浄などの剥離洗浄により、膜表面に付着した懸濁物質を凝集した状態で剥離させてろ過槽などの底部に沈降させることができるので、懸濁水の濃度が濃くなることを防止でき、安定したろ過流量を得ることができる。
ろ過時に圧力装置を必要としないので省エネルギー性に優れ、ろ過装置全体を小型化、軽量化することができ、量産性、取り扱い性を向上させることができる。
懸濁水フィルタ用平膜ろ材の目付は500g/m2〜1000g/m2が好ましい。目付が500g/m2より小さくなるにつれ、長期間の使用により繰り返し加わる水圧に耐えることが困難となり、耐久性が低下し易くなる傾向があり、1000g/m2より大きくなるにつれ、量産性が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
懸濁水フィルタ用平膜ろ材の見かけ密度は0.35g/cm3〜0.55g/cm3が好ましい。見かけ密度が0.35g/cm3より小さくなるにつれ、懸濁水と接触するろ過面積が不十分となり、ろ過効率が低下し易くなる傾向があり、0.55g/cm3より大きくなるにつれ、通水量が不十分となり、大量の懸濁水をろ過することが困難になる傾向があり、いずれも好ましくない。
懸濁水フィルタ用平膜ろ材は、98kPaの圧力差を与えたときの空気通過量が1(cm3/s)/cm2〜10(cm3/s)/cm2であることが好ましい。空気通過量が1(cm3/s)/cm2より小さくなるにつれ、通水量が不十分となり、大量の懸濁水をろ過することが困難になる傾向があり、10(cm3/s)/cm2より大きくなるにつれ、懸濁水と接触する繊維量が不十分となり、ろ過効率が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
ろ過時に上流側となる多孔質層側から下流側の下部繊維層側に向かって空隙率が高くなるように空隙率を変化させることにより、微細な懸濁物質であっても確実に多孔質層の表面で捕捉して、ろ過することができると共に、ろ過された懸濁水のろ過水を下部繊維層側から速やかに排出することができ、ろ過効率に優れる。
中間繊維層と下部繊維層との間に形成された支持層を有することにより、全体を補強して縦横の変形を防止することができ耐久性に優れる。
下部繊維層により全体の厚みと強度を調整することができ、スクレーパやブラシ等により洗浄を行う際に、そのクッション性で衝撃を吸収することができ、多孔質層の破損が発生し難くなると共に、ろ過水を自由に移動、排出させることができ、通水性を向上させることができる。
ここで、中間繊維層、下部繊維層を形成する不織布としては、前述の多孔質層を形成する不織布と同様のものが好適に用いられる。
支持層は、織布、ネット、その他の多孔膜等の補強材を中間繊維層と下部繊維層の間に配設することにより形成することができる。補強材としてモノフィラメントやマルチフィラメントの織物基布が好適に用いられるが、スパン織物を用いてもよい。また、補強材の材質としては、前述の不織布の材質と同様のものが好適に用いられる。ネットの場合は、ステンレス線とポリエステル等を複合させたものを縦横に網目状に配置してもよい。
ここで、繊維の断面形状を凸部や凹部で異形化する方法としては、所望の凸部や凹部を備えた断面形状を有する金型から繊維を延伸させる方法が好適に用いられる。これにより、凸部や凹部で異形化された断面形状が連続的に形成された繊維を得ることができ、繊維の長手方向と平行に凸条や凹条を形成することができる。また、延伸の際に繊維を捻ることにより、凸条や凹条を螺旋状に形成することができる。尚、繊維を液中で延伸させることにより、異形化された断面形状を確実に維持することができ生産性に優れる。
繊維の断面形状は、長手方向に一様である必要はなく、繊維の外周に規則的或いは不規則的に独立した1以上の凸部及び/又は凹部を形成してもよい。
ここで、繊維を三次元に交絡させる方法としては、ニードルパンチやウォータージェットニードル等が好適に用いられる。
尚、樹脂は不織布に塗布又は吹付けすることにより、繊維に含浸させることがき、不織布の繊維層と樹脂が一体化されたスクラム構造を備えた多孔質層を形成することができる。
この構成により、以下の作用を有する。
(1)樹脂含浸工程により繊維層の表層部に含浸させる発泡性樹脂に、溶媒に溶解する溶解剤が混合されているので、樹脂発泡工程によって発泡性樹脂を発泡させた後に、溶解工程によって繊維層を溶媒に浸漬するだけで溶解剤を溶解させることができ、発泡により生じた空孔(独立核空間、独立気泡)の周囲の樹脂層に微細空孔(連続微空間、連続微細気泡)を形成して連通させることができ、スクラム構造を備えた多孔質層を形成することができる。
ここで、発泡性樹脂は前述と同様の樹脂に発泡剤を混合したものである。溶解剤は、前述と同様に樹脂には溶解せず水やお湯、硫酸、塩酸等の特定の溶媒に溶解するものであればよい。
この構成により、請求項1の(1)乃至(5)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)樹脂含浸工程により繊維層の表層部に含浸させる発泡性樹脂に、熱或いは溶媒により収縮する収縮材が混合されているので、樹脂発泡工程によって発泡性樹脂を発泡させた後に、収縮工程によって繊維層を加熱或いは溶媒に浸漬するだけで収縮材を収縮させることができ、発泡により生じた空孔(独立核空間)の周囲の樹脂層に微細空孔(連続微空間)を形成して連通させることができ、スクラム構造を備えた多孔質層を形成することができる。
ここで、発泡性樹脂は前述と同様の樹脂に発泡剤を混合したものである。収縮材は、前述と同様に加熱或いは溶媒に浸漬することにより収縮するものであればよい。
熱により収縮する収縮材としては、延伸したポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等が好適に用いられる。また、水に漬けることにより収縮する収縮材としてビニロンが好適に用いられる。
(1)多孔質層が、複数の独立核空間とそれらを連結する連続微空間で形成されたスクラム構造を有するので、懸濁水中の微細な粒子を捕捉する連続微空間の領域を薄く形成することができ、多孔質層の目詰まりが発生し難く、ろ過性能の信頼性に優れ、多孔質層全体を厚く形成することができる耐久性に優れた懸濁水フィルタ用平膜ろ材を提供することができる。
(2)スクラム構造を有する多孔質層は、連続使用中に表層側が破損しても、内側に形成されている連続微空間によって継続的なろ過を行うことが可能で長寿命性に優れ、濃度の濃い懸濁水にも対応することができる信頼性、汎用性に優れた懸濁水フィルタ用平膜ろ材を提供することができる。
(3)スクラム構造を有する多孔質層の表面部で懸濁水中の粒子を確実に捕捉して、内部への侵入を阻止できるろ過性能に優れた懸濁水フィルタ用平膜ろ材を提供することができる。
(4)不織布の繊維層に多孔質性樹脂が一体化して形成された多孔質層はスクラム構造の耐久性に優れるので、逆洗或いはブラシやスクレーパ等による物理的な掻き取り等によって表面の懸濁物質を簡便かつ確実に剥離することができ、長期間に渡って継続運転が可能なろ過性能の安定性に優れた懸濁水フィルタ用平膜ろ材を提供することができる。
(5)樹脂含浸工程により繊維層の表層部に含浸させた発泡性樹脂を樹脂発泡工程によって発泡させた後に、溶解工程によって繊維層を溶媒に浸漬するだけで発泡性樹脂に混合された溶解剤を溶解させることができ、発泡により生じた独立核空間の周囲の樹脂層に連続微空間を形成して、ろ過性能及び耐久性に優れたスクラム構造を有する多孔質層を得ることができる量産性、信頼性に優れた懸濁水フィルタ用平膜ろ材の製造方法を提供することができる。
(1)樹脂含浸工程により繊維層の表層部に含浸させた発泡性樹脂を樹脂発泡工程によって発泡させた後に、収縮工程によって繊維層を加熱或いは溶媒に浸漬するだけで発泡性樹脂に混合された収縮材を収縮させることができ、発泡により生じた独立核空間の周囲の樹脂層に連続微空間を形成して、ろ過性能及び耐久性に優れたスクラム構造を有する多孔質層を得ることができる量産性、信頼性に優れた懸濁水フィルタ用平膜ろ材の製造方法を提供することができる。
本発明の参考例1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材及びその製造方法について、以下図面を参照しながら説明する。
図1は参考例1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材を示す要部断面模式図である。
図1中、1は本発明の参考例1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材、2は不織布の繊維の断面形状を異形化することにより形成されたスクラム構造を有する懸濁水フィルタ用平膜ろ材1の多孔質層、3は多孔質層2の下流側に不織布で形成された多孔質層2よりも空隙率の高い懸濁水フィルタ用平膜ろ材1の中間繊維層、4は織布、ネット、その他の多孔膜等の補強材で中間繊維層3の下流側に形成された懸濁水フィルタ用平膜ろ材1の支持層、5は支持層4の下流側に不織布で形成された中間繊維層4よりも空隙率の高い下部繊維層である。
支持層4は、織布、ネット、その他の多孔膜等の補強材を中間繊維層3と下部繊維層5の間に配設することにより形成した。補強材としては、モノフィラメントやマルチフィラメントの織物基布が好適に用いられるが、スパン織物を用いてもよい。尚、補強材の材質としては、前述の不織布の材質と同様のものが好適に用いられる。また、ネットの場合は、ステンレス線とポリエステル等を複合させたものを縦横に網目状に配置してもよい。
懸濁水フィルタ用平膜ろ材1は、98kPaの圧力差を与えたときの空気通過量が1(cm3/s)/cm2〜10(cm3/s)/cm2となるように形成した。空気通過量が1(cm3/s)/cm2より小さくなるにつれ、通水量が不十分となり、大量の懸濁水をろ過することが困難になる傾向があり、10(cm3/s)/cm2より大きくなるにつれ、懸濁水と接触する繊維量が不十分となり、ろ過効率が低下し易くなる傾向があることがわかったためである。
凝集剤等を使用することなく、河川や湖沼等に含まれているミネラル分を残存させたまま、懸濁物質のみを取り除いて浄化処理を行うことができ、清水として河川等に放流することができるので環境保護性に優れる。また、懸濁水中の懸濁物質が懸濁水フィルタ用平膜ろ材1の多孔質層2の表面に付着しても、ろ過効率が低下することがなく、優れたろ過性能を維持することができ、実用性、信頼性に優れる。
図2は参考例1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材の多孔質層を形成する繊維を示す模式斜視図である。
図2(a)は、多孔質層2を形成する繊維10の円周上に複数の凸部11が形成された例であり、図2(b)は、多孔質層2を形成する繊維10aの外周に凸部11aが螺旋状の凸条に形成された例であり、図2(c)は、多孔質層2を形成する繊維10bの外周表面に略球状の複数の凸部11bが形成された例である。
これらの凸部11,11a,11bは、表面に凸部11,11a,11bに対応する凹凸が形成された圧延ローラの間に繊維10,10a,10bを通すことにより形成することができる。
懸濁水フィルタ用平膜ろ材1の多孔質層2の形成工程において、1以上の凸部11,11a,11bで異形化された断面形状を有する繊維10,10a,10bをニードルパンチやウォータージェットニードル等の方法によって、三次元に交絡させて多孔質層2を形成することにより、独立核空間を連通する略均一な連続微空間を形成することができ、多孔質層1の連続微空間(微細空孔)の平均空孔径を前述の0.5μm〜8μm、好ましくは1μm〜4μmに形成することができる。
図3(a)は繊維10cの外周に5個の凸部11cが形成された例であり、図3(b)は繊維10dの外周に4個の凸部11dが形成された例であり、図3(c)は繊維10eの外周に3個の凸部11eが形成された例であり、図3(d)は繊維10fの外周に4個の凹部11fが形成された例であり、図3(e)は繊維10gの外周に3個の凹部11gが形成された例であり、図3(f)は繊維10hの外周に2個の凹部11hが形成された例である。
図3では、2個〜5個の凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hにより、断面形状を異形化したものを示したが、凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hの数は2個〜8個、形成することができる。凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hの数が2個より少なくなるにつれ、異形化の効果が不十分となり、通水性が低下し易くなってろ過効率が低下する傾向があり、凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hの数が8個より多くなるにつれ、断面形状を維持するのが困難となり生産性が低下し易くなると共に、空隙率が高くなってろ過性能が低下し易くなる傾向があることがわかったためである。
尚、図2及び図3で示した各々の繊維10乃至10hは、それぞれ単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
(1)スクラム構造を有する上流側の多孔質層2の目を細かくすることにより、表面部で懸濁水中の粒子を確実に捕捉して、内部への侵入を阻止でき、ろ過性能に優れる。
(2)ろ過時に上流側となる多孔質層2側から下流側の下部繊維層5側に向かって空隙率が高くなるように各層の空隙率を調整することにより、微細な懸濁物質であっても確実に多孔質層2の表面で捕捉して、ろ過することができると共に、ろ過された懸濁水のろ過水を下部繊維層5側から速やかに排出することができ、ろ過効率に優れる。
(3)上流側の多孔質層2の目を細かくし、下流側の下部繊維層5の目を粗くすることにより、逆洗や物理的な剥離により多孔質層2の表面に付着した懸濁物質を容易に取り除くことができ、目詰まりが発生し難く、長期間継続して使用することが可能でメンテナンス性、実用性に優れる。
(4)中間繊維層3と下部繊維層5との間に形成された支持層4を有することにより、全体を補強して縦横の変形を防止することができ耐久性に優れる。
(5)下部繊維層5により懸濁水フィルタ用平膜ろ材1の全体の厚みと強度を調整することができ、スクレーパやブラシ等により洗浄を行う際に、そのクッション性で衝撃を吸収することができ、多孔質層2の破損が発生し難くなると共に、ろ過水を自由に移動、排出させることができ、通水性を向上させることができる。
(6)多孔質層2を形成する繊維10乃至10hが、1以上の凸部11乃至11eや凹部11f乃至11hで異形化された断面形状を有することにより、多孔質層2内に略均一な連続微空間を形成することができ、ろ過性能の均一性に優れる。
(7)多孔質層2が、略均一な連続微空間が多重に形成されたスクラム構造を有するので、多孔質層2の表面で繊維10乃至10hが断裂する等しても、更にその内側の繊維10乃至10hで形成された連続微空間によって継続的にろ過を行うことができ、ろ過性能の信頼性、長寿命性に優れる。
(1)1以上の凸部11乃至11eや凹部11f乃至11hで異形化された断面形状を有する繊維10乃至10hを三次元に交絡させて多孔質層2を形成することにより、連続微空間を有するスクラム構造を簡便に形成することができ量産性に優れる。
本発明の実施の形態1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材及びその製造方法について、以下図面を参照しながら説明する。
図4(a)は実施の形態1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材の多孔質層を示す要部断面模式図であり、図4(b)は実施の形態1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材の多孔質層の形成工程を示す要部断面模式図である。
図4(a)中、2aは実施の形態1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材のスクラム構造を有する多孔質層、15は多孔質層2aを形成する不織布の繊維層(図示せず)に含浸され不織布と一体化された多孔質性樹脂、15aは多孔質層2aの多孔質空間の核となる独立核空間、15bは複数の独立核空間15aの間を連通させる連続微空間である。
尚、図示しない中間繊維層3、支持層4、下部繊維層5は参考例1と同様なので説明を省略するが、予め、多孔質層2aの基材となる不織布の繊維層(図示せず)と、中間繊維層3、支持層4、下部繊維層5を積層しておく。
図4(b)中、16は多孔質性樹脂15を形成するポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系、架橋ポリエチレン、架橋ポリプレン、ABS樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポロアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の発泡性樹脂に混合され、水やお湯、硫酸、塩酸等の溶媒に溶解するアミロース、グルコース、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、ナフタリン等の溶解剤である。
まず、樹脂含浸工程において、前述の樹脂に発泡剤を混合した発泡性樹脂に、樹脂には溶解せず前述の溶媒に溶解する溶解剤16を混合し、基材となる不織布の繊維層に塗布又は吹付けすることにより、繊維に含浸させる。
最後に、多孔質性樹脂15と一体化された繊維層を、溶解工程において、前述の溶媒に浸漬し、該空間15a,15b間及び多孔質層2aの外側や内側と該空間15a,15b間の樹脂膜を破壊して、溶解剤16を溶解させ、図4(a)で示した独立核空間15aよりも微細な連続微空間15bを形成する。発泡剤の発泡により形成された独立核空間15aと連通するように、周囲の樹脂膜に多数の連続微空間15bが形成されたスクラム構造とすることができる。これにより、連続使用中に多孔質層2aの表層側が破損しても、内側に形成されている連続微空間15bによって継続的なろ過を行うことが可能で長寿命性に優れ、濃度の濃い懸濁水にも対応することができ信頼性、汎用性に優れる。
発泡剤を混合する樹脂は、一液タイプでも二液混合タイプでもよい。また、基材となる不織布の溶融転移点を超えない温度帯で発泡を生じるものであればよい。尚、常温で発泡するものは取扱いが容易で量産性に優れる。発泡剤は有機系でも無機系でもよいが、ろ材として好適な連続泡が形成されるように配合をコントロールすることが好ましい。また、樹脂発泡工程において、発泡性樹脂を発泡させる際の温度と同じか低い温度で溶解する溶解剤16を選択することにより、連続微空間15bを独立核空間15aと確実に連通させて形成することができる。
図5(a)は実施の形態1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材の多孔質層の変形例を示す要部断面模式図であり、図5(b)は実施の形態1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材の多孔質層の変形例の形成工程を示す要部断面模式図である。
図5(a)において、懸濁水フィルタ用平膜ろ材の多孔質層の変形例が実施の形態1と異なるのは、多孔質層2bの連続微空間15cの形状が略円柱状に形成されている点であり、機能としては実施の形態1における懸濁水フィルタ用平膜ろ材の多孔質層2aと同様である。
また、図5(b)において、懸濁水フィルタ用平膜ろ材の多孔質層の変形例の形成工程が実施の形態1と異なるのは、樹脂含浸工程において、基材となる不織布の繊維層に含浸させる発泡性樹脂に、溶解剤16の代わりに、熱により収縮する収縮材16aを混合した点と、溶解工程の代わりに、多孔質性樹脂15と一体化された繊維層を加熱して収縮材16aを収縮させる収縮工程を有する点である。
収縮材16aとしては、延伸したポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等が好適に用いられる。収縮材16aの収縮量は加熱温度を選択することにより、適宜、調整することができる。樹脂発泡工程において、発泡性樹脂を発泡させる際の温度と同じか低い温度で収縮する収縮材16aを選択することにより、連続微空間15cを独立核空間15aと確実に連通させて形成することができる。尚、図5(a)では省略したが、実際には連続微空間15cの内部に収縮後の収縮材16aが残存する。
尚、溶媒で溶解する溶解剤16や熱で収縮する収縮材16aの代わりに、溶媒により収縮するビニロン等を収縮材として用い、樹脂発泡工程の後に、繊維層を溶媒に浸漬して収縮材を収縮させる収縮工程を行って連続微空間を形成することもできる。
また、これらの多孔質層2a,2bの形成方法や参考例1で説明した不織布の繊維の断面形状を異形化して多孔質層2を形成する方法を組合せてもよい。
多孔質層2a,2bは、中間繊維層3の上に積層した繊維層に形成する代わりに、中間繊維層3の表層側に直接、形成してもよい。この場合、多孔質層2a,2bと中間繊維層3を一体化することができ、耐久性を向上させることができる。
(1)多孔質層2a,2bが、独立核空間15aの周囲に独立核空間15a同士を連結するように連続微空間15b、15cが形成されたスクラム構造を有することにより、多孔質層2a,2b全体を厚く形成しても、懸濁水中の微細な粒子を捕捉する連続微空間15b,15cの領域を薄く形成することができるので、多孔質層2a,2bの目詰まりが発生し難く、ろ過性能の信頼性に優れると共に耐久性に優れる。
(2)多孔質層2a,2bが、不織布と不織布の繊維層に含浸された多孔質性樹脂15とで一体化されて形成されているので耐久性に優れ、逆洗或いはブラシやスクレーパ等による物理的な掻き取り等によって表面の懸濁物質を剥離することができ、長期間に渡って継続運転が可能でろ過性能の安定性に優れる。
(3)多孔質層2a,2bが、独立核空間15aと連通するように、周囲の樹脂膜に多数の連続微空間15b,15cが形成されたスクラム構造を有するため、多孔質層2a,2bの表面で連続微空間15b,15cが破壊されても、更にその内側に連続して形成された連続微空間15b,15cによって継続的にろ過を行うことができ、ろ過性能の信頼性、長寿命性に優れる。
(1)樹脂含浸工程により繊維層の表層部に含浸させる発泡性樹脂に、溶媒に溶解する溶解剤16が混合されている場合、樹脂発泡工程によって発泡性樹脂を発泡させた後に、溶解工程によって繊維層を溶媒に浸漬するだけで溶解剤16を溶解させることができ、発泡により生じた独立核空間15a周囲の樹脂層に連続微空間15bを形成して連通させることができ、スクラム構造を有する多孔質層2aを形成することができる。
(2)樹脂含浸工程により繊維層の表層部に含浸させる発泡性樹脂に、熱により収縮する収縮材16aが混合されている場合、樹脂発泡工程によって発泡性樹脂を発泡させた後に、収縮工程によって繊維層を加熱するだけで収縮材16aを収縮させることができ、発泡により生じた独立核空間15aの周囲の樹脂層に連続微空間15cを形成して連通させることができ、スクラム構造を備えた多孔質層2bを形成することができる。
2,2a,2b 多孔質層
3 中間繊維層
4 支持層
5 下部繊維層
10,10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h 繊維
11,11a,11b,11c,11d,11e 凸部
11f,11g,11h 凹部
15 多孔質性樹脂
15a 独立核空間
15b,15c 連続微空間
16 溶解剤
16a 収縮材
Claims (2)
- 多孔質層の内部に多孔質空間の核となる核空間と、前記核空間よりも微細な平均空孔径が0.5μm〜8μmの連続微空間が混在し、複数の前記核空間同士の間を連結するように多数の前記連続微空間が形成され、前記多孔質層の表面と裏面が連通したスクラム構造を有し、前記多孔質層が、不織布と、前記不織布の繊維層に含浸された多孔質性樹脂と、で一体化されて形成された懸濁水フィルタ用平膜ろ材の製造方法であって、前記多孔質層の形成工程が、溶媒に溶解する溶解材を混合した発泡性樹脂を前記不織布の繊維層の表層部に含浸させる樹脂含浸工程と、前記発泡性樹脂を発泡させる樹脂発泡工程と、前記繊維層を前記溶媒に浸漬して前記溶解材を溶解させる溶解工程と、を有することを特徴とする懸濁水フィルタ用平膜ろ材の製造方法。
- 多孔質層の内部に多孔質空間の核となる核空間と、前記核空間よりも微細な平均空孔径が0.5μm〜8μmの連続微空間が混在し、複数の前記核空間同士の間を連結するように多数の前記連続微空間が形成され、前記多孔質層の表面と裏面が連通したスクラム構造を有し、前記多孔質層が、不織布と、前記不織布の繊維層に含浸された多孔質性樹脂と、で一体化されて形成された懸濁水フィルタ用平膜ろ材の製造方法であって、前記多孔質層の形成工程が、熱或いは溶媒により収縮する収縮材を混合した発泡性樹脂を前記不織布の繊維層の表層部に含浸させる樹脂含浸工程と、前記発泡性樹脂を発泡させる樹脂発泡工程と、前記繊維層を加熱或いは前記溶媒に浸漬して前記収縮材を収縮させる収縮工程と、を有することを特徴とする懸濁水フィルタ用平膜ろ材の製造方法。
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