JP4823413B2 - 自発光装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不透明電極(陰極)、透明電極(陽極)及びそれらの間に発光性有機材料(以下、有機EL材料という)を挟んだEL素子を基板上に形成した自発光装置に関する。具体的には、EL素子からの光の取り出し効率の向上に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機EL材料を素子として用いたEL表示装置の開発が進んでいる。これは、電圧の印加によって両面の電極から有機薄膜中に注入される電子と正孔の再結合による発光を利用する電流駆動型の自発光素子であり、発光は、面状発光として取り出される。しかし、屈折率の大きい固体薄膜中で発生した光を発光素子の外部に面状発光として取り出す際の光の取り出し効率は極めて低く、通常20%以下である。
図2に示すように、屈折率(n)の大きいa層202(n=n1)中の光源Aから屈折率の小さいb層201と203(n=n2)に出射された光のうち、ある出射角θ0(ただし、θ0=sin-1(n2/n1))より大きな角度(θ1及びθ2)で入射する光は、全反射され屈折率の大きいa層中を導波する。このようにして導波する光を導波光というが、この導波光の一部の成分は吸収されて消失し、残りはa層202中を伝搬して端面に逃げてしまうため、出射された光は、その一部しか面状発光として取り出すことができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、発光素子、特にEL素子において、光の取り出し効率を向上させることを課題とする。そして、発光効率の高い自発光装置を提供することを課題とする。
【0004】
【発明を解決するための手段】
本発明の自発光装置、図1に示すようにEL素子に含まれるEL層102及び透明電極103の膜厚を導波光が生じない膜厚とし、かつ前記透明電極とカバー材105との間(104で示される領域)に不活性ガスを挟む構造とする。なお、104で示される領域を本明細書中ではガス空間という。
【0005】
本明細書中において、EL素子とは、不透明な電極からなる陰極、透明な電極でなる陽極及びそれらに挟まれたEL層を含む構造でなる素子をいう。本発明では、陰極は不透明電極(遮光性電極)であり、陽極は透明電極である。なお、本明細書中では、キャリアの注入、輸送または再結合が行われる層をEL層という。
【0006】
又、導波光が生じない膜厚とは、EL素子において生じた光の波長をλ、屈折率をnとした時、d≦λ/(4n)で導かれる膜厚(d)をいう。例えばEL素子において生じた光の波長が560nmで、屈折率がnxであるとき、d≦(140/nx)であり、この膜厚(d)より薄い膜中には導波光は存在し得ない。
なお、EL層を形成する膜及び透明電極の屈折率が両者ともnxである場合には総膜厚を(140/nx)以下にすれば良い。
【0007】
次に透明電極とカバー材の間に不活性ガスを挟む構造に関して説明する。一般的に光がガス空間、固体層及びガス空間の順に進むとき、光を効率よく取り出せることが知られている。従って、EL素子において生じた光が透明電極を透過した後、ガス空間、固体層、ガス空間の順に通過するような構造とすることにより光の取り出し効率を向上させることが可能である。
本発明では透明電極とカバー材との間に不活性ガスを挟む構造とし、上述の構造を形成することで効率よく光を取り出すことができる。
【0008】
また、図1に示した構造のEL素子とする場合、発光層のみからなるEL層102と透明電極103との間、又は発光層のみからなるEL層102と不透明電極との間にバッファー層を設けることが望ましい。なお、バッファー層とは、キャリア(電子または正孔)の注入や輸送を促進する層を指している。即ち、電子注入層、正孔注入層、電子輸送層もしくは正孔輸送層はバッファー層として用いることができ、本明細書中では、バッファー層を設けた場合には、バッファー層もEL層に含まれる。
【0009】
バッファー層を設けることで、発光層と電極との間の界面状態が向上し、発光層において生じた光の取り出し効率が改善される。本発明の図1の構造のEL素子においてバッファー層を設けた場合、さらに発光効率は向上する。また、バッファー層を発光層と透明電極との間に挟むことで、発光層上に透明電極を形成する際に発光層へダメージを与えるといった問題も解決することができる。
【0010】
以上のように、本発明ではEL素子に含まれるEL層102を形成する各層の膜厚及び透明電極の膜厚を導波光が生じない膜厚とし、かつ透明電極とカバー材105との間に不活性ガスを挟む構造とすることで光の取り出し効率を大幅に高めることが可能である。
さらに、EL素子中の発光層と該発光層を挟む電極との間にバッファー層を設けて発光層とバッファー層からEL層が形成される構造とすることで、さらなる取り出し効率の向上を図ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に於いて、図1に示すようにEL素子に含まれるEL層102及び透明電極103の膜厚を導波光が発生しない膜厚とし、かつ透明電極103とカバー材105の間にガス空間104を挟む構造とする。具体的にはEL層102の膜厚を30nmとし、透明電極103の膜厚を100nmとする。
EL層102には、ポリマー系有機EL材料または、モノマー系有機EL材料を用いる。ポリマー系有機EL材料はポリマーの状態で溶媒に溶かして塗布することもできるし、モノマーの状態で溶媒に溶かして塗布した後に重合することもできる。
【0012】
なお、ガス空間104とは、不活性ガス(代表的には、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトン)を充填した空間をいい、カバー材105とは透明の部材を指し、具体的には、ガラス、石英、プラスチックなどを用いることができる。
【0013】
さらに、発光層のみからなるEL層と透明電極における界面状態を向上させるために、図3のように発光層303と透明電極306および発光層303と不透明電極301の間にバッファー層(302、304)を挟む構造として、発光層303とバッファー層(302、304)からなるEL層305を形成する。
【0014】
【実施例】
【実施例1】
図4に本発明のアクティブマトリクス型の自発光装置についての断面構造を示す。図4に於いて401は基板、402はTFTである。なお、TFT402としては公知のTFTを用いることができる。
又、403は、アルミニウム(Al)を主成分とする電極であり、EL層404にはポリパラフェニレンビニレン(PPV)を用いる。
405はITOでなる透明電極であり、406で示されるガス空間には、アルゴンを充填させる。又、カバー材407としてはガラスを用い、スペーサー408を用いてガス空間406が確保される。
【0015】
【実施例2】
図5に本発明のパッシブマトリクス型の自発光装置についての断面構造を示す。図5に於いて501は基板、502はEL層である。EL層にはPPVを用いる。503は、ストライプ状に配列された複数の不透明電極(陰極)であり、複数の不透明電極503と直交するようにストライプ状に複数の透明電極(陽極)504が設けられた構造をとる。
【0016】
また、EL層502は、複数の不透明電極503と複数の透明電極504との間に挟まれている。
このとき、透明電極504の上にはガラスでなるカバー材506がスペーサー507を挟んで設けられている。こうしてカバー材506と透明電極504との間にガス空間505が形成される。本実施例ではガス空間505を窒素で充填する。なお、本実施例の構成は、実施例1の構成と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【0017】
【実施例3】
図3に示すようにEL層305は、発光層303とバッファー層である電子注入層302及び正孔注入層304からなり、これらのEL層305には、ポリマー系材料を用いる。例えば、発光層303には、ポリパラフェニレンビニレン、バッファー層(正孔注入層)304には、銅フタロシアニン又は、PEDOT、バッファー層(電子注入層)302には、フッ化リチウム又は、リチウムを用いることができる。
【0018】
なお、EL層305を形成する際、処理雰囲気は、極力水分の少ない乾燥雰囲気とし不活性ガス中で行うことが望ましい。ここで、不活性ガスとは、窒素やアルゴンなどである。EL層は水分や酸素の存在によって容易に劣化してしまうため、形成する際は、極力このような要因を排除しておく必要がある。又、これらのEL層305は、全ての画素に共通で設ければ良いのでスピン塗布法、印刷法を用いて形成すると良い。
【0019】
又、バッファー層である電子注入層302は、陰極301から発光層303に電子を注入する役割を持ち、正孔注入層304は、透明電極(陽極)306から発光層303に正孔を注入する役割を持つ。更に、正孔注入層304を設けることは、電極作製時の発光層303へのダメージ防止が期待できる。
なお、本実施例の構成は、実施例1または実施例2のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【0020】
【実施例4】
EL素子の作製に於いて、発光層にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)を用い、陰極にマグネシウムと銀(MgAg)を用いたとき、前記発光層と前記陰極の間に挟むバッファー層として、Alq3とアセチルアセトナトリチウム錯体を共蒸着させたものを用いることができる。
なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例3のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【0021】
【実施例5】
陰極と陽極の間に発光層として有機EL材料を挟む構造の自発光装置は、明るさに優れるとともに低消費電力であることから液晶表示装置などのバックライトとしての使用が可能である。陰極と陽極及び発光層に関して、陰極と陽極が直接接触しない範囲でそれぞれを基板の全面に作製することができる。
又、前記有機EL材料には、PPV、PVK(ポリビニルカルバゾール)などを用いると良い。本発明はパーソナルコンピューター(PC)のモニターや携帯電話の表示部などに用いられる液晶ディスプレイのバックライトに用いる事が可能である。
なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例4のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自発光装置の構成を示す図。
【図2】導波光の発生の様子を示す図。
【図3】本発明の自発光装置の構成を示す図。
【図4】本発明の自発光装置の構成を示す図。
【図5】本発明の自発光装置の構成を示す図。

Claims (2)

  1. 陽極となる透明電極と陰極となる不透明電極との間に挟まれたEL層と、カバー材と、前記透明電極と前記カバー材との間に挟まれたスペーサーと、を有し、
    前記EL層は、発光層とバッファー層とを有し、
    前記不透明電極は、アルミニウムを主成分とする電極であり、
    前記発光層と前記透明電極との間、又は前記発光層と前記不透明電極との間には、前記バッファー層が形成されており、
    前記透明電極と前記カバー材と前記スペーサーとの間の空間には、不活性ガスが含まれており、
    前記EL層から発生した光は、前記空間と前記カバー材とを通して射出され、
    前記EL層の各層の膜厚(d)と、前記発生した光の波長(λ)と、前記EL層の屈折率(n)とは、d≦λ/(4n)なる関係式が成立することを特徴とする自発光装置。
  2. 請求項1において、
    前記不透明電極は、基板に形成された半導体素子に電気的に接続されていることを特徴とする自発光装置。
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