(実施の形態1)
以下、実施の形態1のシンセサイザについて説明する。図1は、本発明の実施の形態1のシンセサイザを搭載した受信装置のブロック図である。
図1において、シンセサイザ1は、シリコンからなるMEMS振動子14と、このMEMS振動子14を電気的に駆動するためのドライバアンプ15とを有する基準発振器2を備える。さらに、シンセサイザ1は、基準発振器2から出力された基準発振信号を基に局部発振信号を生成しこれを周波数変換器18に入力するシンセサイザ部16を備える。このシンセサイザ部16は、例えば、基準発振信号を分周する第1の分周器3と、この第1の分周器3からの出力信号と第2の分周器6からの出力信号とを比較する比較器4と、この比較器4から出力された比較結果を示す信号に基づいて、発振信号を周波数変換器18に入力する発振器5とを備える。尚、発振器5としては、例えば、電圧制御発振器VCO(Voltage Controlled Oscilator)などが用いられ、直流電圧に対応して、周波数が変化する発振器である。更にシンセサイザ部16は、発振器5の他の出力側に接続されて制御部7からの制御に基づいて分周数を変化させて分周後の信号を比較器4に入力する第2の分周器6とを備える。尚、シンセサイザ部16は、例えば、比較器4と発振器5との間に接続されて比較器4の出力を電流成分に変換するチャージポンプ10や、そのチャージポンプ10の出力のうち、直流近傍の成分のみ取り出すループフィルタ9等を備えていても良い。このループフィルタ9は、コンデンサによる比較器4からの電流(電荷)の充電部分と、低周波を通過させる低域通過フィルタを備える。
更に、シンセサイザ1は、温度を検出する温度センサー8の出力信号に基づいて第2の分周器6へ適当な整数分周数Mや分数分周数Nの制御信号を送り、第2の分周器6の分周数を変化させる制御部7を備える。また、メモリー17には、温度に応じた分周数などが記憶され、制御部7は、このメモリー17から読み出した分周数で第2の分周器6を制御する。勿論、制御部7は、チャネル切替要求信号に基づいても、第2の分周器6の分周数を変化させている。
第2の分周器6は、分周数Mが入力される整数部分と、分周数Nが入力される分数部分により構成される。第2の分周器6は、これらの分周数を切り替えることにより、発振器5からの出力周波数を変化させる。なお、分数分周はアキュムレータ11にある加算値を加えていくことにより達成され、アキュムレータ11がオーバーフローを起こした場合に1を出力し、その1が足し算器12で整数分周数Mに加算され、可変分周器13の分周数がM+1となる。この分周数M、及び、M+1を交互に切り替えることにより、分数分周数の制御を実現している。なお、ここで説明した分周器は、分数分周器と呼ばれる分周器であり、細かな周波数制御が可能であるが、変化させる周波数範囲や分周数などに従って、整数分周器など他の分周器を用いても良い。また、分数分周器としても、ここで説明した以外のものを用いても良い。要は、発振器5の周波数を切り替えられるような構成回路であればどのような構成でも良い。なお、ここでは、基準発振器の周波数変動量を検知する手段として、温度センサー8を用いているが、これに限るものではなく、基準発振器の周波数変動量を、直接、或いは、間接的に検知できれば良く、結果として、シンセサイザ1の出力周波数が所定の値になるようにすれば良い。
次に、本実施の形態で用いた受信装置の一例を図2に示す。本実施の形態で用いた受信装置19は、国内のデジタルテレビ放送の受信システムに、本実施の形態のシンセサイザ1を搭載したものである。なお、シンセサイザ1は、RF−IC20に内蔵されている。図2において、アンテナ23で受信されたテレビ信号は、妨害波を除去する第1の周波数フィルタ24を通過する。例えば、携帯電話に搭載されたテレビ受信装置なら、携帯電話自身が発する信号が、テレビ受信装置に対して、最も強力な妨害波となり、これを除去するための周波数フィルタが配置される。次に、第1の周波数フィルタ24からの出力信号は、信号を増幅するための低雑音アンプ25を通過し、更に、妨害波を除去するための第2の周波数フィルタ26を通過する。第2の周波数フィルタ26では、第1の周波数フィルタ24で完全に除去できなかった妨害波や、強度が、比較的、弱いような別の妨害波を除去する。次に、第2の周波数フィルタ26からの出力信号は、アンバランス信号をバランス信号に変換するバラン27を通過し、RF−IC20のフロントエンド部29に入力される。フロントエンド部29では、更に、低雑音アンプで増幅されたり、そのまま、周波数変換器(周波数ミキサー)18に入力され、シンセサイザ1の出力である局部発振信号と合成され、中間周波数(IF:Intermidiate Frequency)に変換される。尚、振動子14を駆動するドライバ回路部や、負荷容量は図示していない。中間周波数IFに変換された信号は、BB−IC(Base Band IC)21、つまり、復調ICへ入力される。復調側では、デインターリーブや、誤り訂正符号のデコードなどの信号処理を行い、データ復調される。ここで、デインターリーブとは、バースト誤りを軽減するため、変調時に、データの並び替えを行うインターリーブを解除することである。また、日本国内向けのISDB−Tや、海外のDVB−Hなどのシステムでは、誤り訂正符号として、ビタビ符号と、リードソロモン符号が採用されている。復調部に入ってきた信号は、まず、ビタビ符号のデコードが行われる。この後、リードソロモン符号のデコードが行われるが、その際、エラーのほとんどない、いわゆる、エラーフリーの状態(例えば、BER=1×10^−11以下、なお「^」は、べき乗を表す記号とし、10が底で、−11が指数を表す)を得るためには、ビタビ符号のデコード後のBERがある値以下の状態(例えば、BER=2×10^−4以下)となっていることが必要となる。なお、BER(Bit Error Rate)はビット誤り率を意味し、周波数変換器18からの出力信号、つまり、受信信号の品質を知る上での尺度となる。ここで示した「エラーフリー」の受信品質の状態の例、BER=1×10^−11以下という値は、最も厳しいテレビのデジタル変調規格(64QAM)において、1日受信を続けた状態で、ビット誤りの発生が数個以下という状態を実現する閾値である。また、「画像認識エラー無し」という受信品質の状態も定義でき、これは、テレビ視聴を実際に行う上で、画像劣化が目視確認できないレベルである。実用的には、このレベルがより現実的であり、この場合も、ビタビ符号のデコード後のBERがある値以下の状態(例えば、BER=3×10^−3)となっている必要がある。また、初期のデータの「同期」が取れるか否かで、受信信号の品質を定義することも出来る。ここで言う初期のデータの「同期」は、インターリーブされた符号を元の配列に戻すデインターリーブや、誤り訂正符号のデコードを行う前に取るべき同期を指す。なお、これらの受信信号の品質のより具体的な例に関しては、後述の説明に記載する。
以上の処理で、受信からデータ復調までの処理が完了する。なお、本実施の形態では、BB−IC21を主たる構成回路とする復調部を、受信装置19に内包して説明したが、これに限るものではなく、復調部を含まない部分を受信装置19としても良い。実際に、家庭用のテレビ受信装置や、携帯電話用のテレビ受信装置でも、復調部を含まない部分を受信装置としている場合もある。
図3に、画像評価に用いた電子機器を示す。ここで画像などを表示するディスプレイ、つまり、表示部は図示していない。図2で説明した受信装置19の出力側に、更に、MPEGデコーダ28が接続されている。復調部で、リードソロモン符号のデコードまで終了したデータはMPEG−TS信号として、MPEGデコーダ28へ入力される。MPEGデコーダ28では、画像信号を再生して、画像として表示する。
次に、本実施の形態のシンセサイザの動作、及び、その動作を実現するための構成に関して、図1、及び、図4を用いて説明する。図4は、周波数調整単位Δfcontを切替えた場合の発振器5の瞬間的な出力スペクトルを示している。なお、Δfcontは、絶対値を示しており、実際には、プラス側に調整する場合はプラスの符号が、マイナス側に調整する場合は、マイナスの符号がつく。以下、すべて、プラス側の表示で説明を行うが、後述する所定値Fに関しても、同様とする。従って、所定値Fが60Hzの場合は、所定値Fの絶対値が60Hzということである。また、本実施の形態では、発振器5の出力が直接、局部発振信号となっている。縦軸は、出力強度で、対数表示となっている。横軸は、周波数である。図4で、中心部分のAで示しているピークが本来の局部発振信号のピークで、その他のサブピーク、例えば、Bの部分は、スプリアスと呼ばれる、本来、不要な電力である。このスプリアス部分が多いと、周波数変換器18により、局部発振出力を受信信号と乗算した後の出力信号の品質が劣化し、結果として、受信性能を劣化させる原因となる。更に、詳細に説明する。このスプリアスなどのノイズ成分と、本来の所望信号(図4では、局部発振信号)の単位周波数あたりの電力比を位相雑音と呼ぶ。この位相雑音性能が悪いと、周波数変換器18である周波数ミキサーからの出力信号において、希望信号(キャリア)と、ノイズ成分の比であるC/N(Carrier Noise Ratio)も悪化してしまい、更には、受信側、つまり、図1でのIF出力を受ける復調部などの後段部でのエラーも増えてしまう。例えば、デジタル通信であれば、受信信号のエラーの比率であるBER(Bit Error Rate)を悪化させる結果となる。テレビの場合、このようなBERの悪化は、受信映像に乱れを生じさせる。また、最悪の場合は、受信できないという事態に陥ることもある。このような、C/NやBERなどは、受信信号の品質を知る上での尺度となる。
図5に、OFDMを用いたテレビシステムの場合の受信信号の周波数スペクトルを示す。OFDMはマルチキャリア方式であり、情報ののった複数のキャリアから構成されている。図では、5本のみ示しているが、実際は、1000本以上のキャリアの集合から信号が構成されることが多い。図5(a)において、キャリアA2に着目すると、シンセサイザの位相ノイズの良い状態では、図のようなスペクトルの広がりであり、隣接キャリアA1、A3への影響は少ない。しかしながら、局部発振信号の位相雑音が悪くなると、図5(b)に示すように、キャリアA2の位相雑音が、隣接キャリアA1、A3へ影響してしまう。このことが、受信信号のC/N劣化を引き起こすことになる。局部発振信号の位相雑音が大きい、つまり、図4のような状態であるということは、周波数変換器18によって、受信信号と乗算される受信信号にも影響し、結果として、図5のような状況を引き起こすと言うことになる。なお、図5において、位相雑音を便宜上わかりやすく示すために、実際の信号、及び、スプリアスの先頭値部分を線でつないだ図を示している。
このように、シンセサイザや発振器の位相雑音性能は、受信装置や電子機器のシステム全体に大きな影響を与える。図4に示したように、切替えの瞬間的な位相雑音の劣化であっても、信号の品質を落とし、一時的な受信劣化、受信不能状態を引き起こし、画像の途切れや乱れを生じさせてしまう。
図6に、周波数調整単位Δfcontを変化させた場合の、VCOの瞬間的な出力スペクトルを示す。縦軸は、出力強度で、対数表示となっている。横軸は、周波数である。また、図6(a)〜(d)は順に、周波数調整単位Δfcont=Δfa、Δfb、Δfc、Δfdであり、Δfa<Δfb<Δfc<Δfdの関係がある。周波数調整単位Δfcontが、大きくなるにしたがって、スプリアスレベルが増大し、位相雑音が増加している。この結果は、周波数の調整量と、位相雑音レベルに相関があることを示している。
本実施の形態では、この結果を鑑み、分周数を変化させる際、一度に、変化させる周波数の量、つまり周波数調整単位Δfcontを、出力信号の品質劣化が少ない、つまり、受信特性の劣化が実用上、問題が少ないレベルに抑えることを特徴としている。ここで言う、出力信号の品質とは、周波数変換器18以降、つまり、シンセサイザ1の出力と、受信信号が合成された後の信号の品質を指している。これは、本発明は、シンセサイザの位相雑音の劣化が受信信号へ与える影響に着目しているためである。また、出力信号の品質を判断するパラメータを設定し(C/N、BER等)、想定する受信品質(エラーフリー、画像認識エラー無し等)に合わせて、品質限界閾値(BER=2×10^−4等)を設定し、その品質限界閾値よりも良好になるように、Δfcontを所定値F以内にし、受信特性の劣化を想定した受信品質が得られるレベルまで、抑えている。出力信号の品質となるパラメータの設定は、数値化できる尺度がより好ましく、例えば、前述のような、C/Nや、BER等が用いられる。C/Nのモニターは、周波数変換器18の直後に接続されていても良いが、その後の回路ブロックの中のどの部分に接続されていても、同様の効果は得られる。C/Nのモニターが周波数変換器18の直後に接続された場合、図7で示す制御ライン32が付加される。また、その他の回路ブロックでC/Nのモニターを行う場合に関しては、例えば、デジタル復調する前のコンスタレーションの状態において、そのずれ(EVM:Error Vector Magnitude)から、C/Nを算出する等の方法などが挙げられる。本実施の形態では、これを用いており、この場合、図7で示す制御ライン33が付加される(BB−IC内の詳細回路ブロック表示なし)。また、C/Nは、デジタル変調方式などを規定することで、受信感度と結び付けられ、前記の出力信号の品質となるパラメータを受信感度とすることも可能である。また、BERは、ビタビ符号のデコード後のBERや、リードソロモン符号のデコード後のBER等がある。誤り率には、BER以外に、フレーム誤り率やパケット誤り率などもあり、そちらを出力信号の品質となるパラメータとして、用いても良い。以上説明した場合でも、同様に、図7で示す制御ライン33が付加されることになる。BB−IC内部に演算回路などの回路が具備されているため、出力信号の品質となるパラメータ(例えば、C/N、BER)の使用時の値の算出が容易に行え、判定制御ライン33を付加する構成の方がより好ましい。
図8に、周波数調整単位Δfcontを変えていった場合のBERの変化、つまり、受信状態の変化を示す。縦軸がビタビ符号のデコード後のBERで、本発明では、この値を、出力信号の品質を評価するパラメータ、つまり、品質限界閾値を決定するパラメータとして、利用している。横軸が周波数調整単位Δfcontである。また、図8は、劣悪な受信環境を想定した受信装置の最小感度点付近における測定値を示す。つまり、図8は、最終の誤り訂正デコードが終了した段階(前記の例では、リードソロモン符号のデコード後)で、エラーフリーの状態で受信するのに、最低限必要な受信信号電力付近での測定値を示す。図8に示すように、温度制御を行わない周波数調整単位Δfcontが0の場合に、ビタビ符号のデコード後のBER=1×10^−4となるように、設定している。本来、エラーフリーを実現するBERは2×10^−4である。初期のBERを1×10^−4としたのは、基準発振器として、水晶発振器を用いた場合でも、種々のばらつき、変動などによって、1×10^−4程度の劣化が見込まれ、この値を初期値と設定することで、最終的に、劣化が起こっても、エラーフリーの状態が実現できるためである。
まず第1に、最終の誤り訂正デコード終了後(上記のリードソロモン符号のデコード後)に、エラーフリーとなるように、品質限界閾値を設定した場合に関して、説明する。図8で、破線で示しているBER=2×10^−4のラインが、品質限界閾値である。ここでは、品質限界閾値を誤り率限界閾値として定義している。このラインと交差する周波数fa1が、周波数調整単位Δfcontの限界となる所定値Fである。つまり、Δfcont≦F=fa1とすることで、信号品質を損なわず、エラーフリーの受信品質が保てるということである。なお、デジタル変調方式にもよるが、概して、前記の1×10^−4の劣化は、最小入力感度でいう0.1dB程度にあたり、別の品質限界閾値として、例えば、最小入力感度が、初期から0.1dB劣化する値としても、ほぼ同等の効果が得られる。また、C/Nでも同様のことが言え、初期から、0.1dB劣化した値を品質限界閾値としても良い。ここで言う初期値の決定は、Δfcont=0の時の値を用いれば良い。以上説明した品質限界閾値を用いる構成とすることで、ほぼ完全に、信号品質への影響ない状態が実現できる。これは、前記のように、この条件が、最も厳しいデジタル変調方式の場合でも、ほとんどビット誤りが起こらない状態を実現できるためである。なお、このことは、テレビシステムだけでなく、携帯電話の通話システム、データ通信システム等のデジタル変調を用いた他のシステムに関しても言え、同様の構成により、同等の効果が得られる。
第2に、テレビ視聴を実際に行う上で、画像劣化が目視確認できないレベルで、品質限界閾値を設定した場合に関して説明する。これは、前記の「画像認識エラー無し」の受信品質の状態である。実用的には、このレベルがより現実的で、好ましい品質限界閾値となる。図8中のBER=3×10^−3の破線が、品質限界閾値であり、前記同様、誤り率限界閾値として定義している。このラインと交差する周波数Δfb1が、周波数調整単位Δfcontの限界となる所定値Fである。つまり、Δfcont≦F=fb1とすることで、テレビ視聴上の信号品質を損なわず、画像認識エラー無し受信品質が保てるということである。なお、概して、BERの1×10^−4から、3×10^−4の劣化は、最小入力感度でいう1〜1.2dB程度にあたり、別の品質限界閾値として、例えば、最小入力感度が、初期から1dB劣化する値としても、ほぼ同等の効果が得られる。また、C/Nでも同様のことが言え、初期から、1dB劣化する値を品質限界閾値としても良い。なお、この状態は、概して、パケットエラーフリーの状態と一致し、これを品質限界閾値としても、同様の効果が得られる。なお、このことは、テレビシステムだけでなく、携帯電話の通話システム等のビット誤りがある程度許容されるデジタル変調システムに関して言え、それぞれのシステムにおいて、許容される出力信号の品質から、品質限界値を規定して、Δfcontの限界となる所定値Fを設定してやれば、同様の構成により、同等の効果が得られる。なお、携帯電話の通話システム等では、ほぼ同等の品質限界閾値を用いて、ほぼ同等の効果が得られる。これは、人間の目と、耳の認識力と、誤り率の関係が大きくは異ならないためである。また、データ通信などの、誤りの許容が厳しいシステムにおいても、誤ったデータを再度送信してもらう再送要求機能などを併用してやることにより、この品質限界閾値を用いることも可能となる。
第3に、テレビ視聴を実際に行う上で、画像劣化を許容し、画像確認できる程度で、視聴を行うことができるレベルで、品質限界閾値を設定した場合に関して説明する。この品質限界閾値は、同期の確立が出来るかどうかで判断される。ここでいう同期は、データの同期であり、この後、デインターリーブ、誤り訂正符号のデコードが行われる。従って、この同期が確立するか否かが、その後の復調へ大きな影響を与え、つまりは、受信品質を決定する上でも大きな影響を与える閾値となる。Δfc1は、この同期確立の限界となる所定値Fであり、Δfcont≦F=fc1とすることで、同期確立は達成され、その後の、デインターリーブ、及び、誤り訂正符号のデコードによって、誤り率の改善がなされ、ある程度の信号品質を有する信号が得られ、前記のようなレベルでの受信状態が得られる。天気予報、ニュースなどの情報を得るためだけのテレビ視聴、スポーツなどの経過を知りたいような目的のテレビ視聴の場合、この品質限界閾値でも、十分な効果が得られる。なお、このことは、テレビシステムだけでなく、携帯電話の通話システム等のデジタル変調を用いた他のシステムに関しても言え、同様の構成により、同等の効果が得られる。本品質限界閾値の設定のポイントは、低レベルの受信品質状態でも、受信するメリットが得られる際に用いるということで、温度変動の激しい劣悪な通話環境などで、連絡のみでも行いたい、要件のみでも伝えたいといった場合に非常に効果的である。これは、人間の耳、脳自体に誤り訂正能力があり、誤った、或いは、聞こえない箇所が合っても、補正して理解することが可能であるためである。
次に、具体的な数値に関して、説明する。例えば、国内のISDB−Tのワンセグ放送のmode3において、本実施の形態を適用すると、限界となる所定値Fは、fa1=60Hz、fb1=130Hz、fc1=160Hzとなる。つまり、最小感度点付近では、Δfcontを160Hz以下に抑えれば、テレビ視聴が可能となる。なお、mode3では、マルチキャリアのキャリア間隔は約1kHzであり、ワンセグ放送の中で、位相雑音の影響を最も受けやすいmodeである。従って、前記の品質限界閾値、限界となる所定値Fを適用することにより、他のmodeでも同等以上の効果が得られることになる。なお、海外、例えば、欧州での規格であるDVB−TやDVB−Hでも、同様のOFDM方式が採用されている。いずれの場合も、最小のキャリア間隔は1kHzであり、前記のように同等以上の効果が得られる。
以上、3つの限界閾値の条件下での周波数調整単位Δfcontの所定値Fに関して、説明を行ったが、このようなことは、特に、周波数温度特性の悪い基準発振器を用いる際に、大きな効果を発揮する。周波数温度特性が悪いと、温度に対する周波数変動が大きく起こり、分周数による周波数の調整も大きく行う必要が生じる。何も意図せずに、調整を行ってしまうと、前記の課題により、出力信号の品質を大幅に劣化させてしまうことになる。本実施の形態のように、出力信号の品質を規定するパラメータを決め、その品質限界閾値を決め、更に、周波数調整単位Δfcontの所定値Fを決定することで、前記の課題は回避できる。その際に、特に、最終的に必要な受信品質を考慮して、どの所定値Fを選ぶかを決めれば、最適な受信が達成できる。
以上は、最小感度点付近の受信状態が非常に悪い場合に関しての考察であるが、受信状態が良い場合には、更に、Δfcontを大きくしても良い。図9にその様子を示す。図9には、3種類の受信環境下でのΔfcontとBERの関係を示している。受信環境の劣悪の度合いは、受信環境1、受信環境2、受信環境3の順に低くなる(受信環境が良くなる)。受信環境は電波の受信状態が良好か否かで決まることが多く、良い場合は、受信信号強度が高く、ノイズとの比が大きく取れる、つまり、C/Nの高い受信波を受信できることになる。従って、Δfcontを大きくして、位相雑音が劣化した場合でも、初期の受信信号のC/Nが高いため、許容されるΔfcontが上がることになる。つまり、エラーフリーの状態が得られる品質限界閾値に関しては、fa1<fa2<fa3の関係が成り立ち、画像視聴上、ノイズが目視出来ないレベルの状態が得られる品質限界閾値に関しては、fb1<fb2<fb3の関係が成り立ち、画像確認が出来るレベルの状態が得られる品質限界閾値に関しては、fc1<fc2<fc3の関係が成り立つ。以上のことより、限界となるΔfcontの所定値Fは、受信状態によって変化する、つまり、周波数変換器からの出力信号の希望波の強度、もしくは、信号品質に基づいて、決定する構成とすることで、より大きなΔfcontとすることができ、大きな基準周波数変動にも耐えうるシンセサイザ、とこれを用いた受信装置、及び電子機器を提供することが可能となる。
なお、BERは計測するには、ある一定期間を要するため、より瞬時に判断したい場合は、C/Nをモニターする方がより好ましい。また、受信した信号のC/Nがある程度高い状態では、BERは、エラーフリーの状態しか示さないため、C/Nをモニターする方がより好ましい。
BERをモニターする場合には、例えば、Δfcontを上昇させながら、BERの変化を計測し、誤り率限界閾値付近以下になるように、Δfcontを設定する。つまり、周波数調整単位Δfcontを変化させながら、それに伴って、変化する信号品質に基づいて、信号品質限界閾値を超えないようなΔfcontの所定値Fを決定し、その決定された所定値F以内で、周波数調整を行う。
以上説明した本実施の形態の構成では、BB−ICより出力された制御ライン33を用いて制御を行っていた。BER自体の演算がBB−IC内で行われているためである。BERの値がMPEGデコーダ28へ送られる場合は、MPEGデコーダ28から制御ラインを持ってくる構成でも良い。希望信号の品質を決定するパラメータを何にするかで、どこの回路ブロックから制御ラインを持ってくるかを選択すれば良い。
なお、本実施の形態では、基準発振器2を構成する振動子14として、シリコン振動子などのMEMS振動子を用いている。その理由に関して、説明する前に、周波数温度特性に関して、説明を行う。
一般に、基準温度をT0、現在の温度をT、基準温度での共振周波数をf、温度がT0からTに変化した際の共振周波数変化量をδTとすると、T0からTまで温度が変化した際の周波数の変動率δf/fは、(数1)で表される。
ここで、α、β、γをそれぞれ1次、2次、3次の周波数温度係数と呼ぶ。これらの温度係数が小さい振動子が、周波数温度特性が良い振動子ということになる。以下に、シリコン振動子などのMEMS振動子を用いるからこそ、本発明の効果を顕著に奏することについて説明する。
まず第1に、MEMS振動子の周波数温度特性が、水晶振動子に比べ、悪いということが挙げられる。例えば、水晶振動子は、その周波数温度係数が、1次が0で、2次、3次の温度係数も小さい振動子である。一般に、温度係数は、1次、2次、3次となるに従って小さくなり、かつ、使用温度範囲における周波数温度特性に占める影響も小さくなるため、1次の温度係数が0であるということは、その振動子の周波数温度特性が非常に良好であると言う事を示している。水晶の各温度係数は、水晶インゴット(水晶の引き上げ後の固まり)から、水晶板を切り出す際のカット角度によって変わる。その良好な周波数温度特性から、最も広く使用されている水晶振動子に、ATカット水晶振動子がある。これは、例えば、使用温度範囲(−30〜85℃)において、周波数の変動率が、±20〜±100ppm程度となる。この周波数の変動率の幅は、カット角度の微小な違いによって生じる。
MEMS振動子の一つであるシリコン振動子は、水晶とは違い、周波数温度特性が良くない。1次の温度係数が大きく、−30ppm/℃である。使用する温度範囲において、この1次の温度係数が支配的であるため、以下では、2次、3次の温度係数を無視して、周波数の変動率を考える。シリコン振動子の周波数の変動率は、使用する全温度範囲で考えると、±1725ppmと水晶振動子よりも10倍以上大きな値となってしまう。本実施の形態で使用しているシンセサイザ1では、温度変化などによって、基準発振器がずれた場合に、その周波数をシンセサイザ1の第2の分周器6の分周数を変えることにより、シンセサイザ1の出力としては、ほぼ一定値にする、或いは、後段において、影響の少ないレベルの出力値にすると言うものである。ここで、基準発振器2の温度に対する周波数変動が大きいと、周波数の補正幅を大きく取らなければならず、前記の周波数調整単位Δfcontを所定値Fにしなければ、シンセサイザ1の出力の位相雑音性能を劣化させることになる。詳細は後述するが、簡単に、日本国内のISDB−Tのワンセグ放送のmode3での例を説明する。シリコン振動子では、1℃/secの温度変化が起こった場合、30ppmの周波数変動が起こり、500MHzの局部発振信号周波数を想定すると、15kHzの周波数変動が発生する。周波数制御間隔が仮に、100msecと設定されていると、周波数調整単位Δfcontは1.5kHzとなり、受信が出来ない状況を引き起こすことになる。これが、水晶であれば、1ppm/℃の変動で済み、周波数調整単位Δfcontは50Hzとなり、エラーフリーのレベルを実現することができる。このように、温度特性が悪い振動子を搭載した基準発振器を用いるほど、本発明の効果を顕著に奏することになる。
また、周波数温度特性が悪いと、変動が大きいため、周波数をダイナミックに変化させる必要がある。その反面、高い周波数精度を要求されることから、周波数を細かく変化させる必要もある。両者を共に実現させる必要があるため、選択できる周波数補正方法にも限りが出てきて、どうしても本実施の形態で説明したようなデジタル的な変化を伴うものになってしまう。これは、前述のような位相雑音性能への影響を引き起こす。つまり、デジタル的な周波数変化に起因した位相の不連続を引き起こすような周波数温度補償方法を用いた構成では、本発明で開示した課題が発生する。従って、携帯電話やテレビシステムなどの位相雑音性能の要求されるシステムにおいて、従来例で示したような構成において、基準発振器をMEMS発振器とすると、その使用が困難であった。
第2に、MEMS振動子を使ったMEMS発振器の位相雑音性能が、水晶発振器に比べ、悪いということが挙げられる。水晶振動子を用いた水晶発振器は、位相雑音性能においても優れているため、周波数補償による位相雑音の劣化が起こった場合でも、シンセサイザ全体としての必要性能を保てる可能性がある。一方、MEMS発振器の場合、その構造、材料、使用する振動モードなどにもよるが、水晶発振器ほどの位相雑音性能を有しない場合が多く、本実施の形態で開示した課題が問題視されることが多いためである。また、たとえ位相雑音性能が良かったとしても、周波数を変化させる量が大きいので、目的の周波数にたどり着くまでに、時間を要する。一方、周波数変化を早く制御しようとすると、周波数のオーバーシュート(位相の不連続が大きくなる)があり、結果として、シンセサイザ全体としての位相雑音性能を悪化させてしまうことになる。
なお、MEMS振動子としては、例えば、シリコンなどの半導体をベースにしたものや、AlN、ZnO、PZTと言った薄膜圧電材料をベースとしたFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)と呼ばれるものや、SiO2などのその他の薄膜材料をベースとしたものが挙げられる。また、弾性表面波を用いたSAW(Surface Acoustic Wave)振動子や、異なる物質の境界を伝播する境界波などを用いた振動子もMEMS振動子の一例である。これらの振動子のうちで、ATカット水晶振動子と同程度の周波数温度特性を持つものは、ほとんどなく、また、そのほとんどが、1次の温度係数を有する(無視できない)ものである。例えば、AlNを用いたFBARでは、厚み縦振動(印加電界と同一方向に振動)を用いた振動子で、−25ppm/℃、ZnOでは、−60ppm/℃程度となる。また、SAWを用いた振動子でも、基材に36°yカットのタンタル酸リチウムを用いたものでは、周波数温度特性が−35ppm/℃程度、基材に64°yカットのニオブ酸リチウムを用いたものでは、−72ppm/℃程度となる。これらのMEMS振動子は、水晶振動子より小型にできるものが多い。また、MEMS振動子は半導体ICと一体化することができるものが多い。特に、シリコン振動子は、半導体の多くがシリコン基板上に形成されることから、IC形成と一括して、作り込めるなどの多くのメリットを有する。また、AlN、ZnOなども半導体基板上に作り込めるため、一体化の効果は大きい。なお、SAWや境界波を用いた振動子や、FBARを用いる場合、小型化を行うには、より高周波の共振周波数となるように振動子を構成した方がより好ましく、その場合、PLL(Phase Locked Loop)を構成しない構成が良い場合もある。その構成例は、SAW振動子で構成された基準発振器の後に、第2の分周器を持ってきて、その第2の分周器を調整し、周波数を調整するような構成である。別の構成例は、SAW振動子で構成された基準発振器の負荷容量として、スイッチ機能を有するコンデンサを複数用いて、スイッチを切り替えることにより、負荷容量を離散的に切り替えて、周波数調整を行うような構成例である。以上の構成例でも、デジタル的な周波数の変化を伴うために、本発明の効果を顕著に奏することになる。
以上説明したシリコン振動子などのMEMS技術を用いたMEMS振動子は、小型、低コスト化に大きなメリットがある。しかしながら、周波数温度特性が悪く、温度補償制御を行っても、例えば、前記のような課題があるため、周波数精度や位相雑音性能が求められるテレビや携帯電話といったシステムには用いることが困難であった。また、その他の電子機器用のタイミングクロックなどの用途においても、前記の要求が厳しいものには、使用することが困難であった。なお、位相雑音性能を時間軸で評価した場合、この位相雑音はジッタに相当する。タイミングクロックの分野では、位相雑音性能を評価する変わりに、このジッタ性能を評価し、この性能について高いレベルが求められる場合、使用することが困難であった。なお、このジッタの評価は、ジッタ時間を直接測定したり、アイパターンと言われるデジタル信号の重ね合わせ波形により評価したりする。以上の理由により、MEMS振動子、特に、シリコン振動子の利用は、前記の大きなメリットがあるにも関わらず、ごく一部での利用に限られていた。
本実施の形態の構成とすることで、以上のような場合でも、受信品質を悪化させずに、MEMS振動子を用いたシンセサイザと、これを用いた受信装置、及び電子機器を実現することができる。以下、その実施の形態に関して、より具体的、定量的に、使用環境を想定して、説明する。
まず、第1に、室内での環境下においての温度の変化は、0.1℃/sec程度が想定される。この場合、周波数の変動は、3ppm/sec程度となる。500MHzのローカル周波数を想定すると、1500Hz/secの変動に相当する。ここで、ワンセグ放送のmode3での受信を例に考えてみる。画像に目視確認できるノイズがほとんどない実用上の許容レベルを想定すると、Δfcont≦130Hzを満たす必要がある。図10に、f0であった周波数が、ある瞬間f1にΔfshiftだけ変動した場合に、周波数調整を行った際の周波数の推移状況を示す。図10(a)は従来の回路構成で周波数調整した場合で、図10(b)は本実施の形態の回路構成で周波数調整した場合を示している。図10(a)では、制御部は調整開始と同時に、一気にf0まで戻している。図10(b)では、制御部は12回に分けてf0まで戻している。ここで、Δfshiftを前記の1500Hzであると仮定すると、図10(a)では、周波数調整単位Δfcont=1500Hzであるために、フレーム同期はずれが発生し、画像がほとんど出力されない状況となる。一方、図10(b)では、周波数調整量を12回に分割しているため、周波数調整単位Δfcont=125Hzで、テレビ視聴は可能な状態となる。なお、水晶振動子はシリコン振動子よりも、温度特性が一桁以上良いため、もし水晶振動子を用いた場合は、0.1℃/sec程度の温度変動では、周波数の変動が実用上の許容レベル130Hz以下となる。従って、本実施の形態は、シリコン振動子などの周波数温度特性の悪い振動子を用いたときにこそ、顕著な効果を得られることになる。なお、この例では、1秒間に、12回周波数調整を行うため、1回当たりの周波数調整を83msec以下で行えば良い。
第2に、携帯電話用のテレビ、ノートPC、モバイルテレビなど、モバイル用途の電子機器を想定する。室内から室外へ入ってくる、或いは、自動車内にて、テレビを視聴している際に、車外に出たり、ドアを開けるなどした場合、携帯電話の周囲は1〜2℃/sec等の大きな温度変化が予想される。この場合は、周波数の変動は、30〜60ppm/sec程度となる。500MHzのローカル周波数を想定すると、15000〜30000Hz/secの変動に相当する。同様に、ワンセグ放送のmode3での受信を想定すると、1秒間で、116〜232回に分けて周波数を調整する必要があり、1回当たりの調整を8.6〜4.3msec程度で行えばよい。
このように、急激な温度変化により急激に周波数がずれた場合でも、許容できるΔfcontを考慮して、一度に、所定の周波数に戻さずに、複数回に分割して、所定の周波数に近づける方が良い。これは、調整時間の制約、例えば、最小の調整時間が10msecなどの制約があり、周波数を近づけるのに時間がかかったとしても、Δfcontを考慮して、複数回に分割して周波数を戻す方が、より受信性能へ与える悪影響は少ない場合もある。また、前記のような周囲環境による温度変化の程度は、電子機器の有する熱容量によっても変わり、特に、携帯電話などの小型の電子機器は熱容量が小さく、環境温度に対して、より敏感に温度が変化するので、本実施の形態を用いることで、顕著な効果が得られる。また、室内用の電子機器でも、電源投入直後や、室内の冷暖房機器を投入した直後など、このような温度変化が発生する状況は想定できる。
第3に、温度変化がより急激な場合、例えば、寒冷地で、自動車内や室内から外に出た場合、或いは、逆の場合、また、電子機器の電源投入直後など環境下を想定する。この場合、調整時間間隔を極端に小さくして、調整回数を増加する必要があるが、システム上の制約により、それが困難になる場合がある。つまり、可能な周波数の最小調整時間内での周波数変動量(或いは、変化させるべき周波数)が、周波数調整単位Δfcontの所定値Fよりも大きい場合である。この時の周波数変動の条件を許容範囲外と定義する。例えば、周波数調整単位Δfcontが160Hzであり、システム上、可能な最小調整時間が50msecである場合に、49msecで、200Hzの周波数変動を生じた場合である。この条件下では、ある期間の受信を犠牲にして、周波数調整を行う。つまり、ある一定期間、画像に混入するノイズや、画像の乱れを許容したり、或いは、極端な場合、受信自体を行わなくする。図11にその場合の周波数の推移状況を示す。ある瞬間、基準発振器2が温度により変動した結果、シンセサイザの出力周波数がf0からf1まで大きく変化する。次の調整のタイミングで、制御部はf1からf2まで周波数を一気に調整する。この期間は、テレビ受信や復調が不能となるが、その後、また、所定のΔfcontに基づいて、制御部は周波数を戻していく。制御部が周波数をf1からf2へ戻す間の時間は、テレビ視聴ができないが、その他の大部分の時間は、視聴可能となる。通常、この期間は、1sec以下、例えば、前記の例では、8.6msecと非常に小さいため、頻繁にこのような温度変化が起こる場合を除けば、実用上問題ないレベルでの視聴が可能となる。
なお、3番目に説明したこの例では、一定期間周波数調整単位Δfcontを所定値Fより大きくする必要があり、その一定期間に限れば、本発明の特徴である「Δfcontを所定値F以内にする」ことによる効果が得られない。しかしながら、受信時の大部分は、本発明の特徴を用いている。この制御方法は、少ない一定期間のみを犠牲にして、本発明の特徴を最大限に活用する実施の形態である。
なお、制御部がf1からf2へ周波数を戻す間の時間が、同期の取れる信号品質で規定されるΔfcontであれば、より好ましい。例えば、前記の例では、Δfcont≦160Hzであれば、より好ましい。この場合、画像受信が不能となる時間帯は存在しないためである。
また、このように制御部がf1からf2へ大きく周波数を調整するタイミングは、データ受信上の問題のない期間、或いは、問題の小さい期間であれば、より好ましい。例えば、ISDB−Tのシステムでは、受信信号中にガードインターバル信号が入っている。この信号は、元来、マルチパス対策で設けられていて、遅延波を考慮して、マルチパスによるシンボル間干渉を避けるために挿入されている。このガードインターバル信号は、例えば、有効シンボル期間の信号の一部のコピーの場合が多い。即ち、ガードインターバル信号はデータ自体ではなく、この信号の受信期間(以下、ガードインターバル期間という)中に制御部がシンセサイザ部の周波数調整単位を所定値Fより大きくしても受信品質に大きく影響はしない。なお、このガードインターバル期間の検出は、BB−ICで行われており、符号の相関出力を検出して、その検出信号を用いて、ガードインターバル期間を知ることが可能である。そうして検知されたガードインターバル期間に、制御部が周波数調整を行えば良い。また、海外のモバイルテレビ用のシステムであるDVB−Hでは、タイムスライシングと言う技術が用いられている。これは、省電力化を狙って、時分割信号を受信するシステムである。つまり、希望信号を受信している期間と、していない期間が存在し、希望信号を受信していない期間を狙って、制御部はシンセサイザ部の周波数調整単位を所定値Fより大きくする制御を行えば良い。この制御は、携帯電話の時分割システム、例えば、TDMA(Time Division Multiple Access)や、送受信の時間切替えTDD(Time Division Duplex)などにも適用できる。なお、以上は、急激な温度変化が起こる環境下を想定した説明であったが、システム上の制約で、調整間隔を小さくできない場合も、以上説明した実施の形態により、同様の効果がある。また、この制御手段は、前記のように、熱容量の小さい小型の電子機器に対して、よりいっそうの効果を奏する。また、電源投入直後の温度変化を想定する場合は、電源を入れた瞬間からテレビを視聴することが少ない初期の時間に、制御部がシンセサイザ部の周波数調整単位を所定値Fより大きくする制御を行い、周波数を大きくシフトさせてしまえば良い。初期の期間としては、例えば、数十msec〜数百msecが好ましい。また、チャンネル切替を行った際も、温度による周波数変動ではないが、初期の周波数が合っていないということが想定され、その場合も本発明の制御を行うことにより、同様の効果を得ることができる。
以上、シンセサイザが基準発振器を備える構成に関して、説明を行ったが、シンセサイザの外部から基準発振信号を供給してもらっても良い。本実施の形態のシンセサイザは、位相雑音の劣化のない周波数補正機能を有するため、シンセサイザの外部から信号をもらう場合でも、特に、精度の高い信号供給の必要がない。この場合、シンセサイザは内部に基準発振器を持たないため、小型化、低コスト化に有利となる。
また、本実施の形態では、振動子としては、MEMS振動子に関して説明を行ったが、これに限るものではない。本実施の形態の特徴の一つは、周波数温度特性に左右されずに、振動子を選択できるということである。その他の圧電単結晶を用いた振動子やセラミック振動子などを用いてもよい。
なお、以上説明した実施の形態では、発振器5の出力をシンセサイザ1の出力としたが、発振器5の後に、分周器を入れて、シンセサイザ1の出力としても良い。これにより、発振器5の発振周波数を高くすることができ、発振器5のサイズを小さくすることが可能となる。
なお、図1において、発振器5の周波数がほぼ一定値となるように、第2の分周器6の制御を行ったが、それに限るものではなく、システム全体で、受信性能がでるように調整を加えれば良い。例えば、周波数変換器18の後段に、更に、第2周波数変換器を設けて、その前後の回路ブロックに周波数調整機構を設けて、第2の周波数変換器の出力が一定の周波数になるように調整を行っても良い。
(実施の形態2)
次に、本発明のシンセサイザを使用したテレビ受信装置の実施の形態に関して説明する。図3において、本発明のシンセサイザ1は温度センサー8を含めて同一のRF−IC20に一括に形成され、ベース基板19に実装されている。また、基準発振器の構成要素として振動子14を用い、ベース基板19の上に実装されている。基準発振器の構成要素として振動子14を用いることで、テレビ受信装置19の小型化を実現することができる。例えば、同等コストの水晶振動子では、2.5×2.0mmのサイズが、0.5×0.5mm〜0.3mm×0.3mmのサイズでMEMS振動子は構成できる。また、高さも半分以下となる。携帯電話に搭載するような小型のテレビ受信用モジュールでは、サイズが、9×9mm〜8×8mmと小型になっているため、このサイズ効果は非常に大きいものとなる。他の構成要素に関して説明すると、ベース基板19には、アンテナ23が受信した受信信号が入力される第1の周波数フィルタ24と、第1の周波数フィルタ24の出力信号が入力されるLNA(Low Noise Amplifier)25と、LNA25の出力信号が入力される第2の周波数フィルタ26と、第2の周波数フィルタ26の出力信号が入力されるバラン27が実装されている。そして、バラン27の出力信号はRF−IC20に入力される。
なお、本発明では、シンセサイザ部をRF−IC内に形成した事例に関して、説明を行ったが、BB−IC側へ形成しても良い。
図3のMEMS発振器をRF−IC20の中に形成した事例を図12に示す。図12では、振動子14をIC内へ取り込んでいる。このように、振動子14と温度センサー8が同一のICチップ(RF−IC20)内に内蔵されることにより、実際のMEMS振動子の温度をより正確に検知することが可能となり、MEMS発振器の発振周波数の調整精度を向上させることができる。例えば、急激な温度変化が起こった際でも、温度伝導の遅延がほぼ無い状態で温度検知が可能となり、それによる受信劣化を引き起こさなくなる。また、RF−IC20にMEMS振動子を内蔵しているため、MEMS自身のサイズ効果に加え、実装時の隣接部品間のスペースも不要となる。つまり、個別に実装する場合の部品間のスペース、例えば、MEMSの4辺各々、0.2mm程度のスペースが削減でき、より大きな小型化効果がある。また、図示していないが、RF−IC20内のフロントエンド回路ブロック29を最適化することにより、LNA25、第2の周波数フィルタ26、バラン27などを取り除いた構成も実現可能で、その場合、更なる小型化が可能となる。この場合も、フロントエンド回路ブロック29内に設けられるLNAのゲインを大きくするなどの工夫が必要となり、発熱が大きくなると考えられる。従って、MEMS振動子を温度センサーと同じIC内に取り込むことによる前記の効果が更に、期待できる。
次に、図13に、RF−IC20、及びBB−IC21を一つのICとした構成を示す。BB−IC21は、復調部30に集約されている。両方の機能を持つ受信IC31は、受信装置のほとんどの機能が一つのICに集約されており、大幅な小型化ができると共に、製造効率を向上させることが出来る。また、ベース基板19上の部品点数の減少につながるため、ベース基板19の層数を小さくすることができ、受信装置19の薄型化につながる。また、層数が減ることで、ベース基板19のコストも低くなり、また、部品点数の減少により、製造コストも低くなり、全体として、受信装置、電子機器のコストを低くできる。また、機能の集約と同時に、発熱の問題も起こり、前記の温度センサーとMEMS振動子を一つのIC内に形成した構成において本発明の構成にすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。また、モバイル用途の受信装置では、受信状態の良し悪しを見ながら、電力制御などを行う場合もあり、温度の変化がシステム上激しくなる場合もある。また、DVB−Hなどのシステムでは、前記のようにタイムスライシングを行っているため、常に、温度の変化が大きい状態が発生する。このような場合には、本発明の構成にすることにより、本発明の効果を更に顕著に得ることができる。
なお、以上はPLL(Phase Locked Loop)を用いた温度補償型シンセサイザに関して説明を行ったが、DLL(Delay Locked Loop)を用いても良い。また、ループを構成しないDDS(Direct Digital Synthesizer)などでも良い。DDSの例としては、予め、メモリーに記憶された信号情報をD/A(Digital/Analog)変換して、種々の周波数の信号を生成する方法などが挙げられる。また、基準発振器2の後に、直接分周器を接続し、周波数を調整するような構成にしても、同様の効果は得られる。その構成例は、基準発振器の後に、第2の分周器を配置し、その第2の分周器を調整し、周波数を調整するような構成である。また、基準発振器の負荷インピーダンスを調整するような構成でも良い。その構成例は、基準発振器の負荷容量として、スイッチ機能を有するコンデンサを複数用いて、そのスイッチを切り替えることにより、負荷容量を離散的に切り替えて、周波数調整を行うような構成例である。以上、種々の温度補償型シンセサイザに関して説明したが、要は、周波数がデジタル的に切り替わり、位相の不連続が発生し、位相雑音が悪化するような周波数調整機構を有するものであれば、本発明の効果を顕著に得ることができる。
なお、以上の実施の形態で説明した温度センサーとしては、一般的に用いられている半導体を流れる電流の温度特性を利用したような半導体ベースのものや、サーミスタなどが挙げられるが、これに限るものではない。例えば、温度特性の異なる振動子を2つ用意し、その周波数差から、間接的に温度をセンシングすることも可能である。或いは、別のクロックや周波数情報を有する信号との比較や乗算により、その差分を検知して、温度に起因する基準周波数のずれをセンシングしても良い。別のクロックとしては、希望波となる受信信号そのものや、GPS(Global Positioning System)用の信号、或いは、電子機器なら、他の回路ブロックから、供給してもらった信号などが挙げられる。例えば、周波数変換器18の出力側に付加された周波数後差検出部により、受信周波数と局部発振出力の周波数誤差を検出して、その検出結果に基づいて、局部発振出力の周波数を調整してもよい。以上説明したように、温度情報を直接、或いは間接に検知できる手段であれば良い。また、半導体ICへの一体化というメリットを考えると、温度センサーは、半導体ベースのものがより好ましい。