JP4818994B2 - 色調変化の改善されたミゾリビン錠剤 - Google Patents
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Description
市販されている錠剤は、白色の素錠であり、この素錠は、PTP・アルミピローを施された包装形態において、長期間の保存安定性が確認されており、特別な変化は確認されていない。
しかし、本発明者らは、近年多くの病院施設で、省力化や服薬のコンプライアンスの向上などを目的として、自動錠剤分包機等を利用した、錠剤・カプセル剤のOne Unit Dose (1回服用量処方)への分包が実施される可能性を考慮したときに、従来のミゾリビン錠剤において、何か問題となることがないかについて、抜本的な検討を行った。
その結果、本発明者らは、このような無包装状態の保存で錠剤が変色し得るとの検討結果を新たに得た。すなわち、従来のミゾリビン錠剤は、温度25℃、湿度50%付近の相対湿度の環境条件下に設置された自動錠剤分包機内に無包装状態で4週間保存したとき、錠剤が変色するという知見を得た。
本発明者らは、かかる問題を解決するために、自動錠剤分包機内および窒素酸化物雰囲気中での保存試験を行い、無包装状態で変色を防止するミゾリビン含有錠剤を得るべく鋭意検討を行った。その結果、従来の素錠を薬学的に許容されるフィルムコーティング基剤で被覆することで変色を防止することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、有効成分としてミゾリビンを含有する芯体と、該芯体を被覆する薬学的に許容されるフィルムコーティング基剤とから構成され、崩壊時間が30分以内である無包装状態で色調変化の改善されたミゾリビン錠剤である。
また、本発明は、有効成分としてミゾリビンを含有する芯体に、薬学的に許容されるフィルムコーティング基剤を被覆して崩壊時間を30分以内とすることよりなる無包装状態でのミゾリビン錠剤の色調変化改善方法である。
本発明に用いられるミゾリビン[化学名:4−カルバモイル−1−β−D−リボフラノシル−イミダゾリウム−5−オレイト]は、腎移植における拒否反応の抑制などの免疫抑制作用、ループス腎炎、慢性関節リウマチなどの優れた治療薬で、その製造法は、前述のとおり公知である。ミゾリビンとしては、一水和物であってもよいが、特に、無水物であることが好ましい。無水物としては、特公平6−15556号公報にて報告されているとおり、A型無水物とB型無水物が知られているが、いずれであってもよく、特に好ましくは、B型無水物が例示される。また、上記文献の他、「日本薬局方外医薬品規格1997」復刻版にも、ミゾリビンの無水物が記載されている。
芯体の形状は特に限定されないが、例えば、円柱や多角柱又は球状が例示される。円柱等の底面においては、曲率面を有することが好ましい。また、円柱等の厚さは、その底面の直径又は一辺より小さい場合が好ましい。
この芯体の大きさは、服用の利便性などを考慮すると、例えば、底面の最大径や厚さ又は錠剤の立体としての最大長が約5〜11mmであることが好ましい。また、一般的には錠剤の底面の最大径として約5〜10mm、厚さ約1.5〜4.5mm、重量約50〜400mgが例示され、好ましくは最大径約6〜8.5mm、厚さ約2〜4mm、重量約100〜250mgが挙げられる。
用いる溶媒やスプレー量により異なるが、送風温度60〜90℃の範囲で素錠に薬学的に許容されるフィルムコーティング基剤を被覆することが好ましい。
ミゾリビンを含有する芯体を被覆するに際して、単なる薬学的に許容される担体を用いて被覆した場合には、必ずしも本発明の効果が確認されなかった。
まず、比較例2で例示したように、ミゾリビン錠剤(素錠)に蔗糖、アラビアゴム、ゼラチン、沈降炭酸カルシウムを溶解、分散した被覆懸濁水溶液で被覆錠剤を製造し、変色の有無を確認したところ、芯体の変色が認められた。この結果より、被覆方法又は被覆材料として糖衣は好ましくないことが判明した。
また、本発明のミゾリビン錠剤は、服用後の生体内での溶解、吸収を考慮した時、第13改正日本薬局方・一般試験法の溶出試験法(第2法)で試験液に水を用い、パドルの回転数、50回転で試験をした時には、45分後の溶出率が80%以上が好ましく、さらに好ましくは30分後の溶出率が80%以上が例示される。
本発明における無包装状態のミゾリビン錠剤の色調変化について、本発明に適合するか否かを評価するために、以下の評価方法が用いられる。また場合によっては、適宜、窒素酸化物の量を測定し、例えば、窒素酸化物として約20ppbの雰囲気下となし、4週間保存した前後の色調変化を評価することもできる。
飽和亜硝酸ナトリウム水溶液20μlと硫酸100μlを、シリコン栓をした10ml共栓試験管内で室温で反応させて窒素酸化物を発生させる。発生させた窒素酸化物をシリンジで5ml採取し、あらかじめミゾリビン錠剤を入れシリコン栓をした100ml三角フラスコに静かに注入し、1時間放置する。この方法においては、通常は、窒素酸化物として約25ppmの雰囲気となる。
色差は、色差計(CLR-7100F ;島津製作所)を用い、前述した保存条件で保存した試験前後の試料のL(明度)及びa、b(色相彩度)の差により、下記式1で色差(ΔE)を求める。錠剤表面の色調変化の判定に関しては、表1の色差NBS単位を参考にし、変化していない基準をΔEが3以下とした。なお、色調変化の判定における錠剤表面とは、芯体表面を指し、被覆ミゾリビン錠剤においては、被覆担体を除去した芯体表面に適用される。
(参考例)
特公平6−15556号公報の比較例1と同様に製造した精製ミゾリビン一水和物結晶5.0gを、無水エタノール50mlに懸濁し、攪拌しながら沸騰水浴中で60分間還流させた。その後、氷水中で60分間冷却し、析出した結晶を40℃、一晩真空乾燥してミゾリビン無水物結晶4.61g(水分量0.11%)を得た。
参考例と同様に製造したミゾリビン無水物350g、無水乳糖(DMV製、商品名、無水乳糖)882g、結晶セルロース(旭化成工業製、商品名、アビセルPH101)140g、カルメロースカルシウム(五徳薬品製、商品名、ECG−505)70g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学製、商品名、ステアリン酸マグネシウム)14gをV型混合機で混合し、乾式造粒機(フロイント産業製、ローラーコンパクターTF−MINI)を用い、乾式造粒した後、整粒機で破砕した。この造粒粉体にステアリン酸マグネシウム14gを加え混合し、直径8.5mmの円形杵で打錠してミゾリビンを50mg含有する1錠210mgの錠剤(素錠)を得た(厚さ約3mm)。得られた錠剤の平均崩壊時間は、5分であった。なお、崩壊時間は、第13改正日本薬局方、一般試験法で試験液に水を用いて実施し、試料6個の平均の崩壊時間を平均崩壊時間とした。
飽和亜硝酸ナトリウム水溶液20μlと硫酸100μlとを、シリコン栓をした10ml共栓試験管内で室温で反応させて窒素酸化物を発生させた。発生させた窒素酸化物をシリンジで5ml採取し、あらかじめ比較例1及び実施例1〜4のミゾリビン錠剤を入れたシリコン栓をした100ml三角フラスコに静かに注入し、1時間放置し、変色試験を行った。変色試験実施前後の色差(ΔE)は、色差計(CLR-7100F ;島津製作所)を用い、試料のL(明度)及びa、b(色相彩度)の差により求めた。
この結果を表2に示す。
窒素酸化物濃度を測定するザルツマン法の操作方法は、以下に示すとおりである。捕集した窒素酸化物を水で脱離させ、その水溶液1mlと水4mlを混合し、スルファニルアミド溶液0.5mlを加えて混合後、室温に15分間放置する。次に、ナフチルエチレンジアミン溶液0.5mlを加えて混合後、室温に30分放置した後、水を対照に550nmにおける吸光度を測定する。
比較例1及び実施例1〜4で得られたミゾリビン錠剤を温度30℃、湿度75%相対湿度の恒温恒湿器に4週間保存した。保存前後の色差(ΔE)は、色差計(CLR-7100F ;島津製作所)を用い、試料のL(明度)及びa、b(色相彩度)の差により求めた。
この結果を表3に示す。
比較例1及び実施例1の錠剤を温度25℃、湿度50%相対湿度の恒温恒湿器に4週間保存した。保存前後の色差(ΔE)は、色差計(CLR-7100F ;島津製作所)を用い、試料のL(明度)及びa、b(色相彩度)の差により求めた。
この結果を表4に示す。
比較例1及び実施例1の錠剤を温度25℃、湿度50%付近の相対湿度の環境条件下に置かれた自動錠剤分包機内に装置が稼働している状態で4週間保存した。保存前後の色差(ΔE)は、色差計(CLR-7100F ;島津製作所)を用い、試料のL(明度)及びa、b(色相彩度)の差により求めた。
この結果を表5に示す。
また、この時の自動錠剤分包機の内部及び外部の2箇所ずつにパッシブガスチューブを設置し、窒素酸化物を24時間捕集し、窒素酸化物濃度をザルツマン法で測定した。
この結果を表6に示す。
実験例3、4及び表6から考えて、約20ppbの窒素酸化物の雰囲気下4週間保存においても、本発明のミゾリビン錠剤は色調変化が認められない。
比較例1と同様の方法で調製したミゾリビン錠剤(素錠)に、蔗糖850g、ゼラチン5g、アラビアゴム20g、沈降炭酸カルシウム1000gを精製水450gに加温分散、溶解した液を、糖衣パン(菊水製作所製、NO160−S)を用いて180mg被覆を施し被覆錠剤を得た。
上記被覆錠剤を調製後、温度25℃、湿度50%の条件により4週間保存したところ、被覆錠剤の芯体表面の色調は、被覆前後において、大きな色調変化が認められ、被覆方法として糖衣は好ましくないことが判明した。この結果を表7に示す。
比較例1及び実施例2で得られた錠剤を第13改正日本薬局方・一般試験法の溶出試験法(第2法)で試験液に水を用い、パドルの回転数:50回転で溶出試験を実施した(溶出率は6個の平均値)。
この結果、比較例1の錠剤の溶出率は、15分後62%、30分後93%、45分後98%を示し、実施例2の錠剤の溶出率は、15分後66%、30分後94%、45分後98%であった。
比較例1及び実施例2の錠剤は、同様の溶出プロファイルを示し、30分後には約90%(少なくとも80%以上)の溶出率を示す、速やかに溶解する錠剤であった。
本発明によれば、無包装状態で色調変化が著しく改善されたミゾリビン錠剤を提供することができる。
Claims (6)
- 有効成分としてミゾリビン[化学名:4−カルバモイル−1−β−D−リボフラノシル−イミダゾリウム−5−オレイト]無水物を含有する芯体と、該芯体を被覆し、窒素酸化物によるミゾリビンの変色を防止するための薬学的に許容されるフィルムコーティング基剤(ただし、該フィルムコーティング基剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースであるか、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースとエチルセルロース若しくはエチルセルロース分散液との混合物である)とから構成され、崩壊時間が30分以内であることを特徴とする、無包装状態で20ppbの窒素酸化物の雰囲気下に4週間放置した後における放置前との芯体表面の色調変化として、色差計の測定における色差ΔEが3以内となるミゾリビン錠剤。
- 錠剤を無包装状態で25ppmの窒素酸化物の雰囲気下に1時間放置した後における放置前との芯体表面の色調変化として、色差計の測定における色差ΔEが3以内である請求項1に記載の錠剤。
- 有効成分としてミゾリビンを含有する芯体においてその最大長が5〜11mm、芯体の重量に対して被覆する薬学的に許容されるフィルムコーティング基剤の合計重量が1〜20%で、且つ被覆された錠剤の45分後の溶出率が80%以上である請求項1又は2に記載の錠剤。
- ミゾリビン無水物を含有する芯体を、窒素酸化物によるミゾリビンの変色を防止するための薬学的に許容されるフィルムコーティング基剤(ただし、該フィルムコーティング基剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースであるか、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースとエチルセルロース若しくはエチルセルロース分散液との混合物である)で被覆して崩壊時間が30分以内のミゾリビン錠剤とすることを特徴とするミゾリビン錠剤の製造方法であって、該錠剤を無包装状態で20ppbの窒素酸化物の雰囲気下に4週間放置した後における放置前との芯体表面の色調変化として、色差計の測定における色差ΔEが3以内となるミゾリビン錠剤の製造方法。
- ミゾリビン錠剤が、無包装状態で25ppmの窒素酸化物の雰囲気下に1時間放置した後における放置前との芯体表面の色調変化として、色差計の測定における色差ΔEが3以下となる請求項4に記載のミゾリビン錠剤の製造方法。
- ミゾリビン無水物を含有する芯体において、その最大長が5〜11mm、芯体の重量に対して被覆する薬学的に許容されるフィルムコーティング基剤の合計重量が1〜20%で、且つ被覆された錠剤の45分後の溶出率が80%以上とする請求項4又は5に記載のミゾリビン錠剤の製造方法。
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