以下において本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰返さないものとする。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態による車両の制御装置によって制御されるハイブリッド車両500の全体構成を説明する概略ブロック図である。
図1を参照して、ハイブリッド車両500は、エンジン10の他に、バッテリ510、電力変換部(PCU:Power Control Unit)520、電動機530、動力分割機構550、発電機(ジェネレータ)560、減速機570、駆動輪580a,580bおよび、ハイブリッド車両500の全体動作を制御するハイブリッドECU(Electric Control Unit)590を備える。なお、図1には、前輪のみが駆動輪であるハイブリッド自動車を示
したが、さらに後輪駆動用の電動機を設けて、4WDハイブリッド自動車を構成することも可能である。
バッテリ510は、充電可能な二次電池(たとえばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池)から構成される。電力変換部520は、バッテリ510から供給された直流電圧を、電動機530駆動用の交流電圧に変換するインバータ(図示せず)を含む。このインバータは、双方向の電力変換が可能なように構成され、電動機530の回生制動動作による発電電力(交流電圧)およびジェネレータ560による発電電力(交流電圧)を、バッテリ510充電用の直流電圧に変換する機能を併せ持つものとする。
さらに、電力変換部520は、直流電圧のレベル変換を行なう昇降圧コンバータ(図示せず)をさらに含んでもよい。このような昇降圧コンバータを配置することにより、バッテリ510の供給電圧よりも高電圧を振幅とする交流電圧によって電動機530を駆動することができるので、モータ駆動効率を向上することができる。
エンジン(内燃機関)10としては、後程詳細に説明する図2に示したエンジンシステムが適用される。
動力分割機構550は、エンジンによって生じた駆動力を、減速機570を介して駆動輪580a,580bへ伝達する経路と、ジェネレータ560へ伝達する経路とに分割可
能である。ジェネレータ560は、動力分割機構550を介して伝達されたエンジン10からの駆動力によって回転されて発電する。ジェネレータ560による発電電力は、電力変換部520によって、バッテリ510の充電電力、あるいは電動機530の駆動電力として用いられる。
電動機530は、電力変換部520から供給された交流電圧によって回転駆動されて、その駆動力は、減速機570を介して駆動輪580a,580bへ伝達されて、車両駆動力となる。すなわち、電動機530は、本発明における、「他の駆動力源」に対応する。また、電動機530が駆動輪580a,580bの減速に伴って回転される回生制動動作時には、電動機530は発電機として作用する。
ハイブリッド車両500では、発進時ならびに低速走行時あるいは緩やかな坂を下るときとの軽負荷時には、エンジン効率の領域を避けるために、エンジン10の駆動力を用いることなく、電動機530による駆動力で走行する。したがって、この場合には、暖機やバッテリ充電のためにエンジン運転が必要な場合を除いて、エンジン10の運転が停止される。なお、暖機やバッテリ充電が必要な場合には、エンジン10はアイドル運転される。
一方、通常走行時には、エンジン10が始動され、エンジン10から出力された駆動力は、動力分割機構550によって駆動輪580a,580bの駆動力と、ジェネレータ560での発電用駆動力とに分割される。ジェネレータ560による発電電力は、電動機530の駆動に用いられる。したがって、通常走行時には、エンジン10による駆動力を電動機530による駆動力でアシストして、駆動輪580a,580bが駆動される。ハイブリッドECU590は、動力分割機構550による動力分割比率を、全体の効率が最大となるように制御する。さらに、全開加速時には、バッテリ510から供給される電力が電動機530の駆動にさらに用いられて、駆動輪580a,580bの駆動力がさらに増加する。
減速および制動時には、電動機530は、駆動輪580a,580bによって回転駆動されて発電する。電動機530の回生発電によって回収された電力は、電力変換部520によって直流電圧に変換されてバッテリ510の充電に用いられる。さらに、車両停止時には、エンジン10は自動的に停止される。
このように、ハイブリッド車両500は、エンジン10によって発生された駆動力と電気エネルギを源として電動機530によって発生された駆動力との組合せによって、すなわち車両状況に応じてエンジン10および電動機530の動作を制御することにより燃費を向上させた車両運転を行なう。すなわち、ハイブリッドECU590は、電動機530およびエンジン10の出力分担を運転状況に応じて制御する。
図2は、図1に示したエンジン10の構成を説明する概略ブロック図である。図1に示されたエンジン10は、本発明の実施の形態に係る内燃機関制御装置であるエンジンECUにより制御される。なお、図2には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンを示すが、本発明はこのようなエンジンに限定されるものではない。
図2に示すように、エンジン(内燃機関)10は、4つの気筒112を備え、各気筒112はそれぞれ対応するインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続され、吸気ダクト40内にはエアフローメータ42が配置されるとともに、電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置されている。このスロットルバルブ70は、アクセルペダル100とは独立してエンジンECU300の出力信号に基づいてそ
の開度が制御される。一方、各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90に連結されている。
各気筒112に対しては、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタ110と、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタ120とがそれぞれ設けられている。これらインジェクタ110、120はエンジンECU300の出力信号に基づいてそれぞれ制御される。
なお、本実施の形態においては、2つのインジェクタが別個に設けられた内燃機関について説明するが、本発明はこのような内燃機関に限定されない。たとえば、筒内噴射機能と吸気通路噴射機能とを併せ持つような1個のインジェクタを有する内燃機関であってもよい。
各吸気通路噴射用インジェクタ120は、共通の低圧側の燃料分配管160に接続されており、燃料分配管160、低圧燃料通路190および燃圧レギュレータ170を介して、電動モータ駆動式の低圧燃料ポンプ180に接続されている。さらに、低圧燃料ポンプ180は燃料フィルタ195を介して燃料タンク200に接続されている。燃圧レギュレータ170は低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の燃圧が予め定められた設定燃圧よりも高くなると、低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の一部を燃料タンク200に戻すように構成されている。したがって吸気通路噴射用インジェクタ120に供給されている燃圧および高圧燃料ポンプ150に供給されている燃圧が上記設定燃圧よりも高くなるのを阻止している。
各筒内噴射用インジェクタ110は共通の燃料分配管130に接続されている。この高圧側の燃料分配管130は、機関駆動式の高圧燃料ポンプを含んで構成される高圧燃料ポンプユニット150に接続されている。
図14は、図2に示した高圧燃料ポンプユニット150の構成例を示す図である。
図14を参照して、高圧燃料ポンプユニット150は、機関駆動式の高圧燃料ポンプ155を含む。
高圧燃料ポンプ155は、シリンダヘッド(図示せず)に取付けられ、エンジン10の吸気弁(図示せず)用あるいは排気弁(図示せず)用のカムシャフト204に設けられたポンプ用カム202の回転駆動により、ポンプシリンダ210内のプランジャ220を往復駆動させている。高圧燃料ポンプ155は、さらに、ポンプシリンダ210およびプランジャ220によって区画形成された高圧ポンプ室230と、低圧燃料通路190と連結されたギャラリ245と、電磁スピル弁250とを含む。電磁スピル弁250は、ギャラリ245と高圧ポンプ室230との間の連通遮断を制御する開閉弁である。
高圧燃料ポンプ155の吐出側は、高圧燃料通路260を介して、筒内噴射用インジェクタ110へ燃料を分配する燃料分配管130と連結されている。なお、高圧燃料通路260には、燃料分配管130から高圧燃料ポンプ155側へ燃料が逆流することを規制するチェック弁(逆止弁)240が設けられている。また、高圧燃料ポンプ155の吸入側は、低圧燃料通路190と連結されている。
図15を参照して、ポンプ用カム202の回転に伴ってプランジャ220のリフト量が減少する吸入行程では、プランジャ220の往復駆動により高圧ポンプ室230の容積が拡大する。吸入行程では、電磁スピル弁250は開状態に維持される。
再び図14を参照して、電磁スピル弁250の開弁期間には、ギャラリ245と高圧ポンプ室230とは連通しているので、吸入行程では高圧ポンプ室230内に低圧燃料通路190からギャラリ245を介して燃料が吸入される。
再び図15を参照して、ポンプ用カム202の回転に伴ってプランジャ220のリフト量が増大する吐出行程では、プランジャ220の往復駆動により高圧ポンプ室230の容積が縮小する。吐出行程では、電磁スピル弁250の開閉は、エンジンECU300によって制御される。
再び図14を参照して、吐出行程中における電磁スピル弁250の開弁期間には、ギャラリ245と高圧ポンプ室230とは連通しているので、高圧ポンプ室230内に吸入された燃料は、ギャラリ245を介して低圧燃料通路190側へ溢流する。すなわち、燃料は高圧燃料通路260を介して燃料分配管130へ圧送されることなく、ギャラリ245を介して低圧燃料通路190側へ吐き戻される。
一方、電磁スピル弁250の閉弁期間には、ギャラリ245と高圧ポンプ室230とは連通していない。このため、吐出行程で加圧された燃料は、ギャラリ245へ逆流することなく、高圧燃料通路260を介して燃料分配管130側へ圧送される。
エンジンECU300は、燃圧センサ400にて検知された燃料圧力と、ECUにより制御される燃料噴射量とを参照して、電磁スピル弁250の開閉タイミングを制御する。これにより、エンジンECU300は、高圧燃料ポンプユニット150から高圧デリバリパイプ130へ加圧圧送される燃料量を調節し、高圧デリバリパイプ130内の燃料圧力を必要な圧力に調整することができる。このように構成された燃料昇圧系(高圧燃料ポンプユニット150)により、各筒内噴射用インジェクタ110からの噴射燃料圧力が確保される。
高圧燃料ポンプ155では、主に、加圧時の電磁スピル弁250の閉動作による衝突音が、運転者に検知され得る作動音となる。すなわち、プランジャ220が往復駆動されても、電磁スピル弁250が常時開弁されているときには、昇圧動作は停止されて上記作動音は発生しない。
上記燃料昇圧系(高圧燃料ポンプユニット150)の動作停止時には、電磁スピル弁250が開弁状態に維持されて、低圧燃料ポンプ180からの吐出燃料圧力により各筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が行なわれる。すなわち、低圧燃料ポンプ180は本発明における「第1の燃料ポンプ」に対応し、高圧燃料ポンプ155は本発明における「第2の燃料ポンプ」に対応する。
なお、高圧燃料ポンプユニット150としては、電磁スピル弁250を有することなく吸入燃料を全量昇圧して吐出する全量吐出型の高圧ポンプを用いることも可能である(たとえば、特開平7−293381号公報に開示の燃料供給装置を参照)。なお、このようなタイプの高圧ポンプにおいても、昇圧動作時には、回転駆動時のガタ等による振動に起因して作動音が発生する可能性がある。このような構成では、この昇圧ポンプをバイパスして低圧燃料通路190および高圧燃料通路260を連結するバイパス弁を配置して、燃料昇圧系(高圧ポンプ)の動作停止時にはこのバイパス弁の開弁により、低圧燃料ポンプ180からの吐出燃料により各筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射を行なう構成とすることができる。
再び図2を参照して、エンジンECU300は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス310を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)320、RA
M(Random Access Memory)330、CPU(Central Processing Unit)340、入力
ポート350および出力ポート360を備えている。
エアフローメータ42は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、このエアフローメータ42の出力電圧はA/D変換器370を介して入力ポート350に入力される。エンジン10には機関冷却水温に比例した出力電圧を発生する水温センサ380が取付けられ、この水温センサ380の出力電圧は、A/D変換器390を介して入力ポート350に入力される。
燃料分配管130には燃料分配管130内の燃圧に比例した出力電圧を発生する燃圧センサ400が取付けられ、この燃圧センサ400の出力電圧は、A/D変換器410を介して入力ポート350に入力される。三元触媒コンバータ90上流のエキゾーストマニホールド80には、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生する空燃比センサ420が取付けられ、この空燃比センサ420の出力電圧は、A/D変換器430を介して入力ポート350に入力される。
本実施の形態に係るエンジンシステムにおける空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ420としては、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
アクセルペダル100は、アクセルペダル100の踏込み量に比例した出力電圧を発生するアクセル開度センサ440に接続され、アクセル開度センサ440の出力電圧は、A/D変換器450を介して入力ポート350に入力される。また、入力ポート350には、機関回転数を表わす出力パルスを発生する回転数センサ460が接続されている。エンジンECU300のROM320には、上述のアクセル開度センサ440および回転数センサ460により得られる機関負荷率および機関回転数に基づき、運転状態に対応させて設定されている燃料噴射量の値や機関冷却水温に基づく補正値などが予めマップ化されて記憶されている。
エンジンECU300は、所定プログラムの実行により各センサからの信号に基づいて、エンジンシステムの全体動作を制御するための各種制御信号を生成する。これらの制御信号は、出力ポート360および駆動回路470を介して、エンジンシステムを構成する機器・回路群へ送出される。
本発明の実施の形態に係るエンジン10では、各気筒112に筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の両方が設けられているため、上記のように算出された必要な全燃料噴射量について、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の間での燃料噴射分担制御を行なう必要がある。
以下では、両インジェクタ間での燃料噴射分担比率を、全燃料噴射量に対する筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射量の比率である、DI比率rで示すこととする。すなわち、「DI比率r=100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からのみ燃料噴射が行なわれることを意味し、「DI比率r=0%」とは、吸気通路噴射用インジェクタ120からのみ燃料噴射が行なわれることを意味する。「DI比率r≠0%」、「DI比率r≠100%」および「0%<DI比率r<100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とで燃料噴射が分担して行なわれることを意味する。なお、筒内噴射用インジェクタ110は、気化潜熱効果による耐ノッキング性能の向上により、出力性能の上昇に寄与できる。また、吸気通路噴射用インジェクタ120
は、混合気の均質性向上効果による回転(トルク)変動抑制により、出力性能の上昇に寄与できる。
本発明の実施の形態に従う内燃機関制御装置であるエンジンECU300は、車両全体での発生音が小さい運転状態時に対応するために、以下のような燃料噴射制御を行なう。
図3は、エンジンECU300による本発明の実施の形態1に従う燃料噴射制御の第1の例を説明するフローチャートである。
図3を参照して、エンジンECU300は、ハイブリッドECU590からエンジン運転要求が有る場合(ステップS100におけるYES判定時)には、ステップS120により、車両500が低速走行中であるかどうかを判定する。
ステップS120における判定は、ハイブリッド車両500の車速が所定値よりも低いかどうかによって判定される。この所定値は、車両全体での発生音が小さい運転状態時に対応するように定められ、たとえば、運転者によるアクセル操作等がなく、電動機530の出力のみによって車両が走行しているようなアイドル運転時に対応するように定められる。
車両が低速走行中でない場合(ステップS120のNO判定時)には、エンジンECU300は、ステップS150により、状況に応じた通常運転時のDI比率設定を行なう。ステップS150では、予め設定されたマップ等に従って、その時点でのエンジン条件(エンジン温度、エンジン回転数、エンジン負荷率等)に応じてDI比率rが0〜100%の範囲で設定される。
これに対して、低速走行中のエンジン運転時には(ステップS120のYES判定時)、エンジンECU300は、ステップS130により、DI比率r=0%に設定してエンジンを運転する。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110による筒内燃料噴射を行なうことなく、吸気通路噴射用インジェクタ120によるポート噴射のみによってエンジン10が運転される。
これにより、車両全体での発生音が小さい低速走行中には、図2に示した燃料昇圧系(高圧燃料ポンプユニット150)を動作させることなく、エンジン10を運転できる。この結果、エンジン10の作動音を抑制して、運転者に不快感や違和感を与えることを防止できる。
図4には、本発明の実施の形態1に従う燃料噴射制御の第2の例を説明するフローチャートが示される。
図4に示したフローチャートでは、図3に示したフローチャートに加えて、ステップS140およびステップS145が実行される。
ステップS140およびステップS145は、低速走行中(ステップS120のYES判定時)に実行される。エンジンECU300は、ステップS140では、筒内噴射用インジェクタ110の温度が上昇しているかどうかを判定する。たとえば、筒内噴射用インジェクタのインジェクタ温度Tinjと判定温度Tjdとの比較によりステップS140の判定が実行される。判定温度Tjdは、筒内噴射用インジェクタ110の温度上昇に対応したデポジット堆積の危険性を考慮して定められる。
筒内噴射用インジェクタ110の温度は、インジェクタが連結されたエンジン全体から
の伝熱および筒内(燃焼室内)温度からの伝熱によって変化する。ここで、エンジン全体からの伝熱については、機関冷却水温および外気温から推定することが可能である。また、筒内温度については、燃焼室内での燃焼状況、すなわちエンジンの運転条件(回転数および負荷率)ならびに空燃比(A/F)から推定することができる。
したがって、エンジンECU300は、センサによって検出されたエンジン冷却水温および外気温ならびに、エンジン回転数、エンジン負荷率および設定空燃比等を変数とする所定関数に従って、その時点でのインジェクタ温度の推定値を算出できる。このような所定関数の変数あるいは定数の選択および調整は、一般的には実験結果に基づいて行なわれる。あるいは、構成上可能であれば、筒内噴射用インジェクタ110に直接温度センサを配置する構成としてもよい。このようにして、推定あるいは測定されたインジェクタ温度Tinjを用いて、ステップS140の判定が実行される。
インジェクタ温度Tinjが判定温度以下である場合(ステップS140でのNO判定時)には、エンジンECU300は、筒内噴射用インジェクタ110の過高温に伴うデポジット堆積の危険性が小さいので、図3と同様のステップS130を実行する。これにより、図3のフローチャートと同様の燃料噴射制御が行なわれて、低速走行中において、エンジン10の作動音を抑制するために、吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射(DI比率r=0%)によりエンジン10が運転される。
これに対して、インジェクタ温度Tinjが判定温度Tjdを超えている場合(ステップS140におけるYES判定時)には、エンジンECU300は、ステップS130に代えてステップS145を実行して、全燃料噴射量の少なくとも一部が筒内噴射用インジェクタ110から噴射されるように、DI比率r>0%に設定する。この結果、筒内噴射用インジェクタ110では、噴射燃料の気化潜熱によって温度上昇が抑制される。これに伴い、デポジット堆積による詰り発生を防止できる。
エンジンECU300は、図4に示したフロ−チャートに従う燃料噴射制御を所定周期ごとに実行するので、ステップS145の実行によりインジェクタ温度が低下した場合(ステップS140のNO判定時)には、再びステップS130が実行されて、ポート噴射(DI比率r=0%)によりエンジン10が運転される。
このように、図4のフローチャートに従う燃料噴射制御によれば、インジェクタ詰り発生につながるような筒内噴射用インジェクタ110の温度上昇を監視した上で、エンジン10をポート噴射により運転して作動音を抑制できる。
なお、上述のように、低速走行中でのエンジン運転は、運転者のアクセル操作に応答して積極的にエンジン出力を得るためのものではないこと考慮すると、ステップS145での設定に従った筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射については、作動音を抑制するために、図2,3に示した燃料昇圧系(高圧燃料ポンプユニット150)の動作を停止させたままで実行してもよい。この場合には、各筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射は、低圧燃料ポンプ180からの吐出燃料圧力(フィード圧)によりが行なわれるが、車両駆動力としてのエンジン出力は求められていないため、運転性の悪化を招くことはない。また、上記フィード圧により燃料噴射を行なっても、燃料の気化潜熱によるインジェクタ冷却効果は得ることができる。
図5には、本発明の実施の形態1に従う燃料噴射制御の第3の例を説明するフローチャートが示される。
図5に示したフローチャートでは、図4に示したフローチャートと比較して、ステップ
S140のYES判定時にステップS145に代えてステップS145♯が実行される。
エンジンECU300は、ステップS145♯では、各インジェクタ110,120から燃料噴射停止によりエンジン10の燃焼を停止させて、筒内噴射用インジェクタ110の温度上昇を防止する。
なお、上述したように、低速走行中でのエンジン運転は、運転者のアクセル操作に応答して積極的にエンジン出力を得るためのものではないため、エンジン10の燃焼を停止させても運転性の悪化を招くことはない。
エンジンECU300は、図4に示したフロ−チャートに従う燃料噴射制御を所定周期ごとに実行するので、ステップS145♯の実行によりインジェクタ温度が低下した場合(ステップS140のNO判定時)には、再びステップS130が実行されて、ポート噴射(DI比率r=0%)によりエンジン10が運転される。
図5のフローチャートに従う燃料噴射制御によっても、インジェクタ詰り発生につながるような筒内噴射用インジェクタ110の温度上昇を監視した上で、エンジン10をポート噴射により運転して作動音を抑制できる。
なお、図3〜図5のフローチャートと本発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS100が本発明の「車速判定手段」に対応し、ステップS130は本発明の「第1の燃料噴射制御手段」に対応し、ステップS145は本発明の「第2の燃料噴射制御手段」に対応する。さらに、ステップS140が本発明の「温度判定手段」に対応し、ステップS145♯は本発明の「燃焼停止手段」に対応する。
(実施の形態2)
上述のように、図1に示したハイブリッドECU590によるエンジン運転要求は、車両駆動力としてのエンジン出力要求がある場合以外にも発生される。
図6は、ハイブリッドECU590によるエンジン運転要求制御を説明するフローチャートである。図6では、暖機運転を除くエンジン運転要求の発生フローが示される。
図6を参照して、ハイブリッドECU590は、運転者のアクセル操作による車両駆動力に対応したエンジン出力要求Pgと、バッテリ充電のためのエンジン出力要求Pbとを算出し、両者の和である(Pg+Pb)>0のときに、エンジン運転要求を発生する。なお、このエンジン出力要求Pgは、上述の運転状況に応じたエンジン10と電動機530との間の出力分担制御に従って設定される。
ハイブリッドECU590は、ステップS200では、車両駆動力としてのエンジン出力要求Pg>0であるかどうかを判定する。Pg>0である場合(ステップS200のYES判定時)には、ハイブリッドECU590は、ステップS210により、エンジン10の通常運転を指示する。ステップS200での判定は、エンジン出力要求Pgを零近傍の所定判定値と比較することによって行なわれる。
ハイブリッドECU590は、車両駆動力としてのエンジン出力要求がない場合、すなわちPg=0(ステップS200におけるNO判定時)の場合には、ステップS220により、バッテリ充電要求があるかどうかをさらに判定する(ステップS220)。
ハイブリッドECU590は、ステップS220では、バッテリ充電のためのエンジン出力要求Pb>0であるかどうかを判定する。ステップS220での判定は、エンジン出
力要求Pbを零近傍の所定判定値と比較することによって行なわれる。
車両駆動力としてのエンジン出力要求がなく、さらにバッテリ充電要求もない場合、すなわちPg=0かつPb=0である場合(ステップS220のNO判定時)には、ハイブリッドECU590は、エンジン10に停止を指示する(ステップS240)。
これに対して、車両駆動力としてのエンジン出力要求Pg=0であってもバッテリ充電要求がある場合(ステップS220のYES判定時)には、ハイブリッドECU590は、エンジン10にアイドル運転を指示する(ステップS230)。
なお、図示しない暖機運転時にもエンジン10はアイドル運転されるが、この際には、成層燃焼を行なうように筒内噴射用インジェクタ110が制御される。このような暖機運転時に成層燃焼させることで、触媒暖機を促進させて排気エミッションの向上を図ることができる。
実施の形態2では、図6に示したエンジン運転要求制御を反映して、燃料噴射制御が行なわれる。
図7には、本発明の実施の形態2に従う燃料噴射制御の第1の例を説明するフローチャートが示される。
図7に示されたフローチャートは、図3に示したフローチャートと比較して、ステップS120に代えてステップS120♯が実行される点が異なる。その他の制御構造は、図3と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
エンジンECU300は、ステップS120♯では、エンジン運転要求に伴う車両駆動力としてのエンジン出力要求Pgについて、Pg≒0であるかどうかを判定する。ステップS120♯での判定は、エンジン出力要求Pgを零近傍の所定判定値と比較することによって行なわれる。すなわち、ステップS120♯は、本発明の「運転要求判別手段」に対応する。
これにより、代表的には、ハイブリッドECU590からバッテリ充電要求によるアイドル運転(図6のステップS230)が指示されたときに、ステップS120♯はYES判定とされる。すなわち、ステップS120♯は、ステップS120と同様に、車両全体での発生音が小さい運転状態時に対応してYES判定とされる。
ステップS120♯の判定結果に従った、以降の処理は図3のフローチャートと同様であるので、車両全体での発生音が小さい、バッテリ充電要求によるアイドル運転中には、図2,3に示した燃料昇圧系(高圧燃料ポンプユニット150)を動作させることなく、ポート噴射によりエンジン10を運転する。この結果、エンジン10の作動音を抑制して、運転者に不快感や違和感を与えることを防止できる。
図8および図9には、図4および図5に示した燃料噴射制御に対応する、実施の形態2に従う燃料噴射制御の第2および第3の例を説明するフローチャートが示される。
図8および図9に示された燃料噴射制御では、図4および図5に示されたフローチャートにおいて、ステップS120に代えて、図7と同様のステップS120♯が実行される点が異なる。図8および図9に示された燃料噴射制御のその他の部分は、図4および図5に示されたフローチャートとそれぞれ同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
これにより、車両駆動力としてのエンジン出力要求Pgに基づいて、エンジン10のアイドル運転時(代表的には、バッテリ充電時のアイドル運転)を検出することによって、車両全体での発生音が小さい運転状態であることを検知する。そして、車両全体での発生音が小さい運転状態では、図4および図5と同様に、筒内噴射用インジェクタ110の温度上昇による詰り発生を招かないように監視しつつ、エンジン10を主にポート噴射により運転する。
このように、実施の形態2に従う燃料噴射制御によっても、実施の形態1に従う燃料噴射制御と同様に、車両全体での発生音が小さい運転状態時において、筒内噴射用インジェクタ110の温度上昇による詰り発生を招かないように配慮した上で、エンジン10をポート噴射によって運転することで作動音を抑制することができる。
次に、図2に示したエンジンにおける通常運転時(ステップS150)における好ましいDI比率の設定について説明しておく。
図10および図11は、図2に示したエンジンシステムにおけるDI比率の設定マップの第1の例を説明する図である。
図10および図11に示されるマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図10は、エンジン10の温間用マップであって、図11は、エンジン10の冷間用マップである。
図10および図11に示すように、これらのマップは、エンジン10の回転数を横軸にして、負荷率を縦軸にして、筒内噴射用インジェクタ110の分担比率がDI比率rとして百分率で示されている。
図10および図11に示すように、温間時のマップと冷間時のマップとに分けてエンジン10の回転数と負荷率とに定まる運転領域ごとに、DI比率rを規定した。エンジン10の温度が異なると、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が異なるように設定されたマップを用いて、エンジン10の温度を検知して、エンジン10の温度が予め定められた温度しきい値以上であると図10の温間時のマップを選択して、そうではないと図11に示す冷間時のマップを選択する。それぞれ選択されたマップに基づいて、エンジン10の回転数と負荷率とに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110および/または吸気通路噴射用インジェクタ120を制御する。
図10および図11に設定されるエンジン10の回転数と負荷率について説明する。図10のNE(1)は2500〜2700rpmに設定され、KL(1)は30〜50%、KL(2)は60〜90%に設定されている。また、図11のNE(3)は2900〜3100rpmに設定されている。すなわち、NE(1)<NE(3)である。その他、図10のNE(2)や、図11のKL(3)、KL(4)も適宜設定されている。
図10および図11を比較すると、図10に示す温間用マップのNE(1)よりも図11に示す冷間用マップのNE(3)の方が高い。これは、エンジン10の温度が低いほど、吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が高いエンジン回転数の領域まで拡大されるということを示す。すなわち、エンジン10が冷えている状態であるので、(たとえ、筒内噴射用インジェクタ110から燃料を噴射しなくても)筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しにくい。このため、吸気通路噴射用インジェクタ120を使って燃料を噴射する領域を拡大するように設定され、均質性を向上させることができる。
図10および図11を比較すると、エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいてはKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいてはKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。すなわち、高回転領域や高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射しても、エンジン10の回転数や負荷が高く吸気量が多いので筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすいためである。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
図10に示す温間マップでは、負荷率KL(1)以下では、筒内噴射用インジェクタ110のみが用いられる。これは、エンジン10の温度が高いときであって、予め定められた低負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。温間時においてはエンジン10が暖まった状態であるので、筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しやすい。しかしながら、筒内噴射用インジェクタ110を使って燃料を噴射することにより噴口温度を低下させることができるので、デポジットの堆積を回避することも考えられ、また、筒内噴射用インジェクタの最小燃料噴射量を確保して、筒内噴射用インジェクタ110を閉塞させないことも考えられる。このため、この領域では、筒内噴射用インジェクタ110を用いた燃料噴射を行なっている。
図10および図11を比較すると、図11の冷間用マップにのみ「DI比率r=0%」の領域が存在する。これは、エンジン10の温度が低いときであって、予め定められた低負荷領域(KL(3)以下)では吸気通路噴射用インジェクタ120のみが使用されるということを示す。これはエンジン10が冷えていてエンジン10の負荷が低く吸気量も低いため燃料が霧化しにくい。このような領域においては筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射では良好な燃焼が困難であるため、また、特に低負荷および低回転数の領域では筒内噴射用インジェクタ110を用いた高出力を必要としないため、筒内噴射用インジェクタ110を用いないで、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを用いる。
また、通常運転時以外の場合、エンジン10がアイドル時の触媒暖機時の場合(非通常運転状態であるとき)、成層燃焼を行なうように筒内噴射用インジェクタ110が制御される。このような触媒暖機運転中にのみ成層燃焼させることで、触媒暖機を促進させ、排気エミッションの向上を図る。
図12および図13には、図2に示したエンジンシステムにおけるDI比率の設定マップの第2の例が示される。
図12(温間時)および図13(冷間時)に示された設定マップは、図10および図11に示された設定マップと比較して、低回転数領域の高負荷領域におけるDI比率設定が異なる。
エンジン10では、低回転数領域の高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される混合気のミキシングが良好ではなく、燃焼室内の混合気が不均質で燃焼が不安定になる傾向を有する。このため、このような問題が発生しない高回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタの噴射比率を増大させるようにしている。また、このような問題が発生する高負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用
インジェクタ110の噴射比率を減少させるようにしている。これらのDI比率rの変化を図12および図13に十字の矢印で示す。
このようにすると、燃焼が不安定であることに起因するエンジンの出力トルクの変動を抑制することができる。なお、これらのことは、予め定められた低回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させることや、予め定められた低負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を増大させることと、略等価であることを確認的に記載する。また、このような領域(図12および図13で十字の矢印が記載された領域)以外の領域であって筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射している領域(高回転側、低負荷側)においては、筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすい。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
また、図12および図13に示した設定マップにおける、その他の領域のDI比率設定については、図10(温間時)および図11(冷間時)と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
なお、図10〜図13を用いて説明したこのエンジン10においては、均質燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程とすることにより、成層燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることにより実現できる。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることで、点火プラグ周りにリッチ混合気が偏在させることにより燃焼室全体としてはリーンな混合気に着火する成層燃焼を実現することができる。また、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程としても点火プラグ周りにリッチ混合気を偏在させることができれば、吸気行程噴射であっても成層燃焼を実現できる。
また、ここでいう成層燃焼には、成層燃焼と以下に示す弱成層燃焼の双方を含むものである。弱成層燃焼とは、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程で燃料噴射して燃焼室全体にリーンで均質な混合気を生成して、さらに筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程で燃料噴射して点火プラグ周りにリッチな混合気を生成して、燃焼状態の向上を図るものである。このような弱成層燃焼は触媒暖機時に好ましい。これは、以下の理由による。すなわち、触媒暖機時には高温の燃焼ガスを触媒に到達させるために点火時期を大幅に遅角させ、かつ良好な燃焼状態(アイドル状態)を維持する必要がある。また、ある程度の燃料量を供給する必要がある。これを成層燃焼で行なおうとしても燃料量が少ないという問題があり、これを均質燃焼で行なおうとしても良好な燃焼を維持するために遅角量が成層燃焼に比べて小さいという問題がある。このような観点から、上述した弱成層燃焼を触媒暖機時に用いることが好ましいが、成層燃焼および弱成層燃焼のいずれであっても構わない。
また、図10〜図13を用いて説明したエンジンにおいては、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、以下のような理由により、圧縮行程で行なうことが好ましい。ただし、上述したエンジン10は、基本的な大部分の領域には(触媒暖機時にのみに行なわれる、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程噴射させ、筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程噴射させる弱成層燃焼領域以外を基本的な領域という)、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、吸気行程である。しかしながら、以下に示す理由があるので、燃焼安定化を目的として一時的に筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程噴射とするようにしてもよい。
筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮行程中とすることで、筒内温度がより高い時期において、燃料噴射により混合気が冷却される。冷却効果が高まるので、対ノック性を改善することができる。さらに、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮行程中とすると、燃料噴射から点火時期までの時間が短いことから噴霧による気流の強化を実現でき、燃焼速度を上昇させることができる。これらの対ノック性の向上と燃焼速度の上昇とから、燃焼変動を回避して、燃焼安定性を向上させることができる。
さらに、エンジン10の温度によらず(すなわち、温間時および冷間時のいずれの場合であっても)、オフアイドル時(アイドルスイッチがオフの場合、アクセルペダルが踏まれている場合)には、図10または図12に示す温間用のDI比率マップを用いるようにしてもよい(すなわち、冷間および温間を問わず、低負荷領域において筒内噴射用インジェクタ110を用いる)。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。