JP4815585B2 - 蛍光光源 - Google Patents
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Description
従来より一般的な蛍光ランプは、ガラス管の両端に熱電子放射物質を塗布した電極を取付け、管内の空気を除いた後、封入ガスとして、わずかなアルゴンと水銀を封入し、ガラス管内壁に蛍光体を塗った構造である。電極を熱して熱電子が放射しやすい状態にし、両端の電極に電圧を加えると、電極から飛び出した熱電子が封入ガスの水銀原子に衝突して紫外線を発する。この紫外線が、管壁に塗られた蛍光体を刺激して可視光線を出すことになる(非特許文献1)。液晶等のバックライトには主に水銀入りの冷陰極放電蛍光ランプが用いられているが、基本原理は前記した一般照明用の蛍光ランプと同様である。
従来のランプが水銀の蒸気圧に影響されるため、周囲湿度や点灯開始時の輝度立上がりに時間がかかるのに対し、希ガス放電を用いると、湿度変化に強く、輝度応答速度が早いという利点があり、ほぼ実用化できるレベルになってきている。しかし、発光効率については、水銀使用ランプに対し70%程度であって、まだ水銀入りの放電灯には及ばないのが現状である。
封入ガスのアルゴンに対する窒素の混合割合が、0.1%であり、封入ガスの全圧が、9.31kPaであることを特徴とする。
本発明は、蛍光光源における封入ガスのガス組成に特徴がある。したがって、蛍光光源の構造は問わない。
換言すれば、電極から飛び出した熱電子が管内の封入ガス分子に衝突して紫外線を発し、それによって蛍光体を刺激して可視光線を出すことを原理とする蛍光光源であれば、本発明は、どのような構造の蛍光光源にも適用できるものである。
したがって構造が、イ)2つある電極の片側が放電管の外部にあり、もう一方は放電管の内部にあるタイプ、ロ)両側が内部にあるタイプ、ハ)両側が外部にあるタイプ、ニ)内部電極のペアに外部に補助電極があるタイプなど、種々の蛍光ランプに適用できる。また、陰極の冷熱タイプの別も問わない。熱陰極は電子放出をしやすくするために電極に予熱電流を流して電極を加熱して熱電子を放出させるタイプであり、冷陰極はこの予熱を行わないタイプであるが、このいずれのタイプにも本発明を適用できる。
本発明は既述のごとく、封入ガスの組成が重要であり、アルゴンに窒素を添加した混合ガスを用い、水銀は全く用いないことが特徴である。このように、水銀を用いないにも拘らず、発光効率がよく、放電が安定するのは次の理由からである。
1)発光効率の向上
窒素分子(N2)のプラズマは、図1(A)に示すように蛍光体を刺激しやすい近紫外域(300nm〜400nm)に多数のバンドスペクトルを放射することが分かっている。この窒素をアルゴンに添加すると、アルゴンから窒素へのエネルギー転移によって近紫外スペクトルを効率良く放射させることができる。本発明はこの原理を利用したものである。
さらに詳細に説明する。窒素とアルゴンのエネルギー準位は、図1(B)に示すとおりである。窒素の近紫外スペクトルを放射する準位はC3Πuであるが、これは寿命の長いアルゴンの準安定準位(11.5,11.7eV)とエネルギーレベルが近いので、アルゴンの準安定準位から窒素のC3Πuへのエネルギー転移ができ、効率よくC3Πu準位の窒素分子を生成できる。このように生成された窒素分子が蛍光体を刺激する近紫外線を放射するので、可視光線を出すことができる。
2)放電の安定化
アルゴン雰囲気中での準安定原子(分子)の拡散係数は、アルゴンは45cm2・s-1・Torrであり、窒素は157cm2・s-1・Torrである。窒素の準安定分子の方が拡散係数が大きいことから、窒素を添加することでガス分子の管軸から管壁に向かう拡散が活発になり、放電の管軸付近への集中を妨げる作用が働くので放電は安定化する。
実際に使用する光源では、放電が不安定な状態では使用できないため、窒素添加により放電が安定するメリットは大きいと言える。
本発明において、アルゴンに対する窒素の混合割合は、0.1〜5%が好ましい範囲である。
後述する実験によると、5%を超えると輝度が低下してくるので、上限は5%が好ましい。また、0.1%未満では初期輝度は高いが、窒素の枯渇(おそらく蛍光体への吸着)により寿命が短くなるので、下限は0.1%が好ましい。従って、好ましい範囲は0.1%以上5%以下である。
ペニング電離現象を利用している水銀−アルゴン蛍光ランプの動作条件では、水銀は0.001%以下であるが、十分明るく光っている。しかし、水銀−アルゴン蛍光ランプでは、水銀は液体状態で封入されているので、気体水銀が減少しても、液体水銀が気化してこれを捕える。そのため水銀の枯渇の心配はほとんどない。
一方、本発明が用いた窒素−アルゴンの場合もベニング様励起現象を利用しているので、水銀と同程度の分圧比で効率よく窒素が発光すると予測できるが、窒素を液体ないしは固体封入することはできず、ガスでしか封入できないため、窒素の封入圧力をある程度高くする必要がある。しかしながら、それを高くしすぎると、今度は、窒素自身の電離も増えてしまい、エネルギーの有効利用ができなくなる。そのため、初期輝度とランプ寿命のバランスにより、封入圧力を適切に選ぶ必要がある。この観点から、上限と下限は、5%と0.1%が良いと考えられる。
窒素の添加量は、それが少なくても、第2ポジティブバンドの発光が強く出ていることから、アルゴンの準安定準位からの窒素のC3Πu へのエネルギー転移が起こっている。したがって、使用開始直後の輝度のみの観点からは、混合割合0.1%でも、輝度が高く最良と考えられるのであるが、点灯時間の経過による窒素の枯渇を避けられないので、ある程度初期封入圧力を高めにしなければならず、この点を考慮すると、1%が最も良いということになる。
実験装置および方法は、下記のとおりである。
(実験要領)
本実験では図2に示す片側外部電極ランプを用いた。このランプ1は、片側は通常の冷陰極ランプと同様の内部電極を封入し、外側にワイヤー状の電極をらせん状に巻いたものであり、片側の電極がガラス(誘導体)を介した放電となるバリア放電ランプである。ランプ外周には、透光性絶縁体である熱収縮チューブを被せている。ランプ長は、200mm、直径は外径φ3.0mm、内径φ2.6mm、電極間ピッチは5mmである。外部電極はニッケル(Ni)製で、直径φ0.1mmである。蛍光体は青、緑、赤の各3種の発光色のものを混合して内部に塗布した(日亜化学製、BaMgAl10O17:Eu(NP−107),LaPO4:Ce,Tb(NP−220),(Y、Gd)BO3:Eu(NP−360)。
点灯回路は、電源2と、バラスト抵抗3(10kΩ)、ランプ1、電流値測定用抵抗4(100Ω)を直列に接続し、電源電圧は30kHzの矩形波(Duty比50%)とした。管電圧波形、管電流波形をそれぞれプローブにてオシロスコープに取り込み、瞬時管電力波形はこれらを掛け合わせたものとしている。以下で述べる管電力とは、この瞬時管電力を積分し時間平均したものである。輝度は、トプコン製SR−2、分光分布はOcean Optics製USB2000で測定した。
比較例1として、アルゴンのみを用いたもの、比較例2として、窒素のみ用いたものも同一条件で実験した。
なお、表1、以下の混合比の表示および図において、Arはアルゴンを示し、N2は窒素を示している。
(放電の様子)
図3は点灯状態を示す写真であり、(A)図はAr:N2=99.9:0.1(実施例1)、(B)図はAr:N2=99:1(実施例2)、(C)図は95:5(実施例3)、(D)図はアルゴン100%(比較例1)、(E)図は窒素100%(比較例2)の、それぞれの蛍光ランプの放電の様子を示している。全圧は、いずれも9.31kPaである。ここでは、放電の様子を観察するため、ガラス管内壁に蛍光体を塗布していない。さらに撮影条件を、シャッター速度1/5秒、絞り16に統一している。
実施例1では、ガラス管内に陽光柱が見られる(図3(A)参照)。
実施例2では、N2による400nm付近の可視光が混じって、やや白っぽい赤色に見える。陽光柱は、ガラス管内いっぱいに広がっていることがわかる(図3(B)参照)。
実施例3では、再び陽光柱が収縮し始めるが、また充分な明るさを有している(図3(C)参照)。
以上のことから窒素をアルゴンに微量添加することで、放電が広がり安定することが分かる。
上記に対し、比較例1は明らかに陽光柱が収縮して細くなっており(図3(D)参照)、比較例2では充分な放電が得られなかった(図3(E)参照)。よって、窒素がなくアルゴンのみの場合、アルゴンがなく窒素のみの場合のいずれの場合も蛍光ランプとして利用できないことがわかる。
(実施例1[N2:0.1%]の特性)
図4(A)にランプ電力と輝度の関係を示す。封入ガス圧が930Paと4.7kPaでは輝度が低いが、9.31kPaではランプ電力に比例して輝度が高くなり、最高で4000cd/m2位である。この状態での光源効率は6.8 lm/W(ルーメン/ワット)である。光源効率は、(2Π2rlB)/Wで算出している。但し、r:半径、l:長さ、B:輝度、W:入力。
なお、図4(B)は、蛍光体を塗布していない部分の分光分布を示したものである。
より少ない窒素が比較的強い窒素第2ポジティブバンド放射を生じさせていることが分る。しかし、窒素の量を増やし過ぎると、窒素放射強度が低下する。
図5(A)にランプ電力と輝度の関係を示す。封入ガス圧が4.67kPaの場合、2W以上では、輝度が低下している。これは、陽光柱が収縮状態になって発光効率が低下したことが要因である。全圧が低いほど発光効率が高いのに対し、最高輝度は全圧が高いほど高くなっている。達成された輝度は、3.75W、全圧9.3kPaにて4500cd/m2である。この状態で、達成された光源効率は7.1
lm/W(ルーメン/ワット)である。
分光分布を図5(B)に示す。4.67kPaにおいては、N2の発光スペクトルが見られないが、9.31kPaや13.3kPaにおいては、350nm〜400nm付近にかけて、わずかだがN2の発光が見られる。
図6(A)に電力と輝度の関係を示す。封入ガス圧が9.31kPaのランプの最高輝度が1500cd/m2であり、4.67kPa封入ランプよりも高いが、実施例2で得られたような高い輝度は得られなかった。発光効率も低下している。
分光分布を図6(B)に示す。4.67kPa封入ランプにおいては、実施例2と同じようにN2の発光が見られないが、9.31kPa封入ランプにおいては、350nm〜400nm付近にかけて、N2の発光がはっきりと見られる。その代わり、700nm付近以上のArの発光は極端に抑えられていることが分かる。さらに450nm付近をピークとした青色蛍光体の発光が緑、赤に比べて相対的に強くなっていることが分かる。青色蛍光体は、350nm〜400nmに励起感度を持つので、N2の発光によって励起されるが、緑色蛍光体と赤色蛍光体は350nm以上に励起感度を持たないため、主にArの真空紫外放射により励起されていると考えられる。
Ar100%(比較例1)の場合、陽光柱は管軸に向かって収縮して細くなり、濃い赤に見える。
図7(A)にランプ電力に対する輝度の関係を示す。ランプ電流を流しすぎると、発熱によりランプが破損してしまうため、10mA程度を最大としている。発光効率(ここでは、輝度をランプ電力で割ったもの)は、13.3kPaよりも、9.31kPaの方がよい。図7(B)に分光分布を示す。ガス圧によって大きな差は認められなかったので、ここでは9.31kPaの場合のみを示す。蛍光体の発光に加え、およそ700nm以上の波長域にArの強い発光が見られる。
比較例2は、低い入力電力では放電が内部電極近傍の短い範囲でしか存在しなかった。電力を上昇させるとこの放電範囲は若干広がるが電極の温度が上昇し、ランプが破損し、光学的・電気的特性を評価するに至らなかった。
N2の発光の変化を調べるために、ランプ作成直後からの分光分布の経時変化を測定した。
結果を図8に示す。上段から(E)図は比較例1(Ar100%)(全圧9.31kPa)、(A)図は実施例2(全圧4.67kPa)、(B)図は実施例2(全圧9.31kPa)、(C)図は実施例2(全圧13.3kPa)、(D)図は実施例3(全圧9.31kPa)である。N2の発光については357nmのピーク強度を観察し、蛍光体の発光については、青色蛍光体は445nm、緑色蛍光体は544nm、赤色蛍光体は592nmのピーク強度を、Arについては、772nmのピーク強度を観察した。
実施例2の場合、(A)図に示すように4.67kPaにおいては、点灯120分後にN2の発光がほとんどなくなっているその原因としては、点灯中にN2分子が枯渇すると考えられる。枯渇する原因としては、ランプ内部の材料と化合し窒化物を生成するか、ガラス管内壁や蛍光体層に吸着されてしまうのであろう。これに対し、(B)図や(C)図に示すように、全圧が高くなるにつれて、N2の発光の減少速度が遅くなった。また、(D)図に示すように、実施例3では、若干の増加が見られる。Arの発光強度については、4.67kPaでは点灯開始直後に増加し、約10分後から徐々に低下したのに対し、9.31kPaおよび13.3kPaでは点灯直後から単調に増加した。N2を添加した場合、蛍光体の発光強度は、N2よりもArの発光強度の時間変化に近い傾向を示した。
要するに、ガス圧を9.31kPaや13.3kPaまで高くすることで、N2の発光強度の低下はかなり抑えることができる。
2 電源
3 バラスト抵抗
4 電流値測定用抵抗
Claims (1)
- 封入ガスが、アルゴンに窒素を添加した混合ガスであり、
封入ガスのアルゴンに対する窒素の混合割合が、0.1%であり、
封入ガスの全圧が、9.31kPaである
ことを特徴とする蛍光光源。
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