JP4814421B2 - 摩耗検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械のバイト先端に取り付けられたチップ(刃物)の摩耗を検出する摩耗検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、特開2000−135605号公報に開示されているように、工作機械におけるバイトの先端に、摩耗によって抵抗値が変化するチップを取り付けて、その抵抗値を測定することによって摩耗を検出する技術が知られている。このバイトは、作業工程上の都合や、先端に取り付けられているチップの摩耗に応じて、交換が必要となるものである。このため、工作機械において、バイトの交換作業を効率よく行うために、先端にチップを備えた複数のバイトを回転可能な刃物台に取り付けて、この刃物台を回転させる手法が採られている。このような工作機械においては、バイトを交換する度にチップの抵抗値を測定する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術では、バイトと、チップの抵抗値を検出する手段(以下、「検出手段」という。)とがコネクタを介してケーブル(有線)で接続されていた。このため、オペレータは、チップの摩耗、すなわちチップの抵抗値を測定する際には、工作機械の動作を停止させ、コネクタを差し替えなければならず、操作が煩雑であった。また、バイトが使用される環境下には、油、ゴミ、切りくずなどが存在するため、これらの異物がコネクタ間に入り込むおそれがあった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、バイトと、チップの抵抗値を検出する検出手段とをコネクタを介さない非接触方式で接続し、工作機械の信頼性、およびバイト交換の作業性を向上させる摩耗検出装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の摩耗検出装置の発明は、回転軸を中心に回転可能な刃物台に、先端にチップを有するバイトが複数設けられた工作機械において、摩耗量に応じて電気抵抗値が変化するチップの摩耗量を検出する摩耗検出装置であって、複数のチップと電気的にそれぞれ接続され互いに異なる透磁率を有する複数の第1コイルと、複数のチップのうち使用状態のチップと電気的に接続された第1コイルと磁気的に結合する1つの第2コイルと、第2コイルが第1コイルに磁束を印加するように第2コイルに電流を供給する駆動手段と、第2コイルのインピーダンス変化を検出することにより前記チップの摩耗量を検出する検出手段と、を備え、第1コイルは、チップが内蔵する複数の抵抗と並列に接続され、検出手段は、第2コイルのインダクタンス変化をさらに検出することによって、複数のチップの種別をも検出することを特徴とする。
【0006】
このように、チップと電気的に接続された第1コイルと、第2コイルとが磁気的に結合され、第2コイルが第1コイルに対して磁束を印加したときの第2コイルのインピーダンス変化を検出することによって、チップの電気抵抗値の変化を検出するので、コネクタ接続のような電気的な接触が解消される。これにより、コネクタ等の差し替え作業が必要ではなくなると共に、コネクタ間に異物が入り込む問題も解消されるため、作業性および信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の摩耗検出装置において、検出されたインピーダンス変化に応じて所定の制御信号を出力する制御手段を更に備える構成を採る。
【0008】
これにより、制御手段から出力された制御信号によって工作機械を作動又は停止させることが可能となるので、工作機械の精度を保持すると共に、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態に係る摩耗検出装置の概略を示す図である。図1中、バイト1の右側先端部には、切削工具としてのチップ(刃物)2が設けられている。このチップ2には、例えば、特開2000−135605号公報に開示されているように、摩耗量に応じて電気抵抗値が変化するチップを用いることができる。チップ2は、ケーブル3を介して第1コイルとしての受信コイル4に電気的に接続されている。受信コイル4は、線材をコイル状に固定したものであり、例えば、ファライトコアに線材を巻き付けることによって形成することができる。この受信コイル4は、チップ2が内蔵する抵抗と並列に接続され、閉回路を構成する。
【0010】
第2コイルとしての送信コイル5は、受信コイル4と同様な構成を有し、受信コイル4と磁気的に接続する。この送信コイル5は、駆動手段としての基板6に接続されている。基板6は、送信コイル5が受信コイル4に磁束を印可するように送信コイル5に電流を供給する。検出手段7は、チップ2の抵抗値が変化することに伴って送信コイル5のインピーダンス変化を検出する。また、検出手段7は、検出したインピーダンス変化に基づき、制御信号を出力する。この制御信号は、ケーブル8を介して工作機械を制御する工作機械制御手段9に入力される。
【0011】
図2は、上記実施の形態に係る摩耗検出装置の回路構成を示す図である。図2に示すように、チップ2は、R1〜R3の内部抵抗と、受信コイル4とが並列に接続された回路を備えている。ここでは、内部抵抗は、例えば、R1〜R3としているが、これらに限定されるわけではない。この状態におけるチップ2の内部抵抗は、R1×R2×R3/(R1×R2+R2×R3+R3×R1)となっている。
【0012】
検出手段7は、受信コイル4と対向する位置に送信コイル5を備えており、送信コイル5は基板6としての発振回路20に接続されている。この発振回路20では、送信コイル5の両端にコンデンサ21(C1)とコンデンサ22(C2)とが直接に接続されており、更に、送信コイル5のコンデンサ21(C1)側の端部には比較器23の非反転入力接点が接続されている。比較器23は所定電圧(Vcc)の電源で作動し、反転入力接点はアース接点に接続され、比較器23の出力接点は、帰還抵抗24(Rf)を介してコンデンサ21(C1)、22(C2)の共通接続接点に接続されている。なお、図中送信コイル5の両端の可変抵抗25(R)は、チップ2の抵抗値変化による受信コイル4からなる抵抗回路のインピーダンスを等価的に示している。
【0013】
この発振回路20は、所定の発振条件を設定すると、所定の周波数で発振動作を継続し、送信コイル5には、図3に示すように、その周波数の交流信号(Sx)が供給される。送信コイル5は、その周波数に対応した一定の磁束密度の磁力線を受信コイル4に放射する。この磁力線による磁界内では、チップ2の抵抗値の変化に基づいて受信コイル4のインピーダンスが変化し、このインピーダンス変化が送信コイル5の発振を変化させる。すなわち、チップ2の抵抗値が、摩耗することにより、時刻がt1、t2、t3、t4と変化すると、図3に示すように、発振回路20から出力される交流信号(Sx)も時間的に変化する。
【0014】
増幅検出回路26は、発振回路20による交流信号(Sx)から、その振幅(電圧値)を検出し、図4に示す増幅信号(Ev)を出力する。この増幅信号(Ev)は、図3に示す交流信号(Sx)の時間変化に対応して変化する。すなわち、時刻がt1、t2、t3、t4と変化すると、図4に示すように、増幅信号(Ev)もV0からV1、V1からV2、V2からV3と変化する。判定手段27は、増幅検出回路26による増幅信号(Ev)からチップ2の摩耗状態を判断し、その状態について工作機械制御手段9に所定の信号を出力する。
【0015】
図5は、本実施の形態に係る摩耗検出装置を備えた工作機械の概要を示す図である。刃物台50は、回転軸51を中心に回転することが可能である。刃物台50には、先端にチップ2を備えたバイト1が複数設けられている。チップ2は、ケーブル3によって受信コイル4に電気的に接続されている。現在、チップ2aが使用状態となっており、チップ2aと接続されている受信コイル4aは、検出手段7と磁気的に接続している。検出手段7は、ケーブル8を介して工作機械制御手段9に接続されている。チップ2aは、回転軸52を中心に高速回転する被切削部品53を切削している。なお、刃物台50に取り付けられたバイト1の数と、受信コイル4の数とは一対一に対応している。一方、複数のバイト1に対して検出手段7は一つで対応可能である。
【0016】
次に、以上のように構成された本実施の形態に係る摩耗検出装置の動作について説明する。図5に示すように、チップ2aが被切削部品53を切削しているとする。また、チップ2aに接続されている受信コイル4に対して検出手段7が送信コイルから磁界を放射しているとする。この送信コイルには、図3に示すように、その周波数の交流信号(Sx)が供給され、その周波数に対応した一定の磁束密度の磁力線を受信コイル4に放射する。
【0017】
チップ2aは、使用するにつれて摩耗し、摩耗量に応じて抵抗値が変化する。すなわち、図2に示すように、チップ2a内部において、並列に接続された複数の抵抗からなる抵抗回路の全抵抗値は、R1×R2×R3/(R1×R2+R2×R3+R3×R1)である。ここで、摩耗によって抵抗R1の接続が切断されたとする。R1には電流は流れないため、R1の抵抗値は無限大になったと考えることができる。この場合、全抵抗値は、R2×R3/(R2+R3)となる。
【0018】
このように、チップ2aの抵抗値が変化すると、チップ2の抵抗値の変化に基づいて受信コイル4のインピーダンスが変化し、このインピーダンス変化が送信コイル5の発振を変化させる。すなわち、チップ2の抵抗値が、摩耗することにより、時刻がt1、t2、t3、t4と変化すると、図3に示すように、発振回路20から出力される交流信号(Sx)も時間的に変化する。
【0019】
検出手段7においては、増幅検出回路26が、交流信号(Sx)から、その振幅(電圧値)を検出し、図4に示す増幅信号(Ev)を出力する。すなわち、時刻がt1、t2、t3、t4と変化すると、図4に示すように、増幅信号(Ev)もV0からV1、V1からV2、V2からV3と変化する。判定手段27は、増幅検出回路26による増幅信号(Ev)からチップ2の摩耗状態を判断する。すなわち、図4において、時刻t1において、増幅信号(Ev)がV0からV1変化したときは、チップ2aが所定量だけ摩耗したと判断する。さらに、時刻変化に応じて増幅信号(Ev)が変化し、所定の増幅信号(Ev)に到達したときは、チップ2aの使用を中止するように、動作を停止する旨の信号を出力する。この信号は、ケーブル8を介して工作機械制御手段9に入力され、工作機械制御手段9によって工作機械の動作が停止する。工作機械が停止すると、オペレータによる手動で、または自動で刃物台50が図5中矢印の方向(右回り)に回転し、新しいバイト1およびチップ2がセットされる。
【0020】
このように、検出手段7から出力された制御信号によって工作機械を作動又は停止させることが可能となるので、工作機械の精度を保持すると共に、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0021】
なお、上記の実施の形態では、チップ2の抵抗値変化による受信コイル4からなる回路のインピーダンス変化を検出したが、インダクタンスの変化を検出する形態を採ることも可能である。すなわち、インダクタンス変化は、受信コイル4が同一である場合は、インピーダンスが変化しても理論的には変化しない。しかし、複数のバイト1に対してチップ2内部の抵抗値が異なることに対応させて、異なる透磁率を持つ受信コイル4を用いると、インダクタンスも変化する。このとき、受信コイル4のインダクタンスが変化すると、交流信号(Sx)の周波数も変化する。これにより、インピーダンス変化を検出することによって、チップ2の摩耗量を検出することに加え、インダクタンス変化を検出することによって、チップの種別をも検出することが可能となる。
【0022】
具体的な構成は、図2において、増幅検出回路26に入力される交流信号(Sx)を周波数検出回路28に入力する。この周波数検出回路28は、発振回路20からの交流信号(Sx)から、その周波数を検出し、検出信号(Ef)を判定手段27に出力する。判定手段27は、周波数検出回路28による検出信号(Ef)から受信コイル4のインダクタンス変化を判断し、そのチップが設けられたバイト種別等を示す信号を出力する。
【0023】
以上のように、本実施の形態に係る摩耗検出装置によれば、チップ2と電気的に接続された受信コイル4と、送信コイル5とが磁気的に結合され、送信コイル5が受信コイル4に対して磁束を印加したときの送信コイルのインピーダンス変化を検出することによって、チップ2の電気抵抗値の変化を検出するので、コネクタ接続のような電気的な接触が解消される。これにより、コネクタ等の差し替え作業が必要ではなくなると共に、コネクタ間に油等の異物が入り込む問題も解消されるため、作業性および信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る摩耗検出装置は、摩耗量に応じて電気抵抗値が変化するチップの摩耗量を検出する摩耗検出装置であって、チップと電気的に接続された第1コイルと、第1コイルと磁気的に結合する第2コイルと、第2コイルが第1コイルに磁束を印加するように第2コイルに電流を供給する駆動手段と、第2コイルのインピーダンス変化を検出する検出手段とを備える構成を採る。
【0025】
このように、チップと電気的に接続された第1コイルと、第2コイルとが磁気的に結合され、第2コイルが第1コイルに対して磁束を印加したときの第2コイルのインピーダンス変化を検出することによって、チップの電気抵抗値の変化を検出するので、コネクタ接続のような電気的な接触が解消される。これにより、コネクタ等の差し替え作業が必要ではなくなると共に、コネクタ間に異物が入り込む問題も解消されるため、作業性および信頼性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る摩耗検出装置の概略を示す図である。
【図2】上記実施の形態に係る摩耗検出装置の回路構成を示す図である。
【図3】発振回路から出力される交流信号(Sx)の時間変化を表す図である。
【図4】増幅検出回路から出力される増幅信号(Ev)の時間変化を表す図である。
【図5】本実施の形態に係る摩耗検出装置を備えた工作機械の概要を示す図である。
【符号の説明】
1…バイト、2…チップ、3…ケーブル、4…受信コイル、5…送信コイル、6…基板、7…検出手段、8…ケーブル、9…工作機械制御手段、20…発振回路、21…コンデンサ(C1)、22…コンデンサ(C2)、23…比較器、24…帰還抵抗(Rf)、25…可変抵抗(R)、26…増幅検出回路、27…判定手段、28…周波数検出回路、50…刃物台、53…被切削部品。
Claims (2)
- 回転軸を中心に回転可能な刃物台に、先端にチップを有するバイトが複数設けられた工作機械において、摩耗量に応じて電気抵抗値が変化する前記チップの摩耗量を検出する摩耗検出装置であって、
複数の前記チップと電気的にそれぞれ接続され互いに異なる透磁率を有する複数の第1コイルと、
複数の前記チップのうち使用状態のチップと電気的に接続された前記第1コイルと磁気的に結合する1つの第2コイルと、
前記第2コイルが前記第1コイルに磁束を印加するように前記第2コイルに電流を供給する駆動手段と、
前記第2コイルのインピーダンス変化を検出することにより前記チップの摩耗量を検出する検出手段と、を備え、
前記第1コイルは、前記チップが内蔵する複数の抵抗と並列に接続され、
前記検出手段は、前記第2コイルのインダクタンス変化をさらに検出することによって、複数の前記チップの種別をも検出することを特徴とする摩耗検出装置。 - 前記検出されたインピーダンス変化に応じて所定の制御信号を出力する制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の摩耗検出装置。
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