JP4813711B2 - 弱毒ヒト−ウシキメラ−パラインフルエンザウイルス(piv)ワクチン - Google Patents
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Description
関連出願の引照
本出願は、米国仮特許出願60/143,134(Baillyにより1999年7月9日出願)の優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
3型ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV3)は、乳児および1歳未満の小児における重篤な下気道感染症の一般的原因である。この年齢群におけるウイルス性下気道疾患による入院の主因としては、呼吸系発疹ウイルス(RSV)を除けば、これは第1位である(Collins et al., B.N. Fields Virology, p. 1205-1243、第3版、vol. 1、Knipe, et al.編、Lippincott-Raven Publishers、フィラデルフィア、1996;Crowe et al., Vaccine, 13:415-421, 1995;Max et al., J. Infect. Dis., 176:1423-1427, 1997;すべてを本明細書に援用する)。このウイルスに感染すると、3歳未満の小児では死亡率がかなり高い。HPIV1およびHPIV2は喉頭気管気管支炎(喉頭炎)の主因物質であり、重篤な肺炎および細気管支炎の原因ともなりうる(Collins et al., 1996、前掲)。20年間にわたる長期研究で、HPIV1、HPIV2およびHPIV3はそれぞれ気道疾患による入院の6.0%、3.2%および11.5%に対する病原体であり、合わせて入院の18%に及ぶと確認され、このため有効なワクチンが求められている(Murphy et al., Virus Res., 11:1-15, 1988)。パラインフルエンザウイルスは、中耳炎を伴う小児におけるウイルス誘発性中耳滲出の症例にもかなりの割合で同定されている(Heikkinen et al., N. Engl. J. Med., 340:260-264, 1999;本明細書に援用する)。したがって、これらのHPIV感染症に伴う重篤な下気道疾患および中耳炎を阻止できる、これらのウイルスに対するワクチンの製造が求められている。HPIV1、HPIV2およびHPIV3は、有意の交差防御免疫を誘発しない別個の血清型である。PIVの主要防御抗原はヘマグルチニン(HN)および融合(F)糖タンパク質であり、これらはウイルスの付着、透過および放出を仲介する。再感染に対する防御は、主にウイルス中和抗体により仲介される。
【0003】
HPIVに対する有効なワクチン療法を開発するためにかなりの努力がなされているにもかかわらず、HPIV関連疾患を阻止する承認ワクチン製剤はまだ得られていない。現在最も有望な見通しは、弱毒生ワクチンウイルスである。これらは非ヒト霊長類において、受動的に伝達された抗体の存在下、すなわち母体からの獲得抗体をもつごく若い乳児にみられるものを模した実験状態下ですら、有効であることが示されたからである(Crowe, et al., 1995、前掲;およびDurbin et al., J. Infect. Dis., 179:1345-1351, 1999a;それぞれを本明細書に援用する)。2つの弱毒生PIV3ワクチン候補、すなわち野生型PIV3 JS株の温度感受性(ts)誘導体(PIV3cp45と表示)、およびウシPIV3(BPIV3)株について、臨床評価が行われている(Karron et al., Pediatr. Infect. Dis. J., 15:650-654, 1996;Karron et al., 1995a、前掲;Karronet al., 1995b、前掲;それぞれを本明細書に援用する)。BPIV3ワクチン候補は弱毒化され、遺伝的に安定で、ヒトの乳児および小児において免疫原性である。第2のPIV3ワクチン候補JS cp45はHPIV3のJS野生型(wt)株の低温適応変異体である(Karronet al., 1995b、前掲;およびBelshe et al., J. Med., Virol., 10:235-242, 1982a;それぞれを本明細書に援用する)。この低温継代(cp)弱毒生PIV3ワクチン候補は、温度感受性(ts)、低温適応性(ca)および弱毒(att)表現型を示し、インビボでのウイルス複製後も安定である。cp45ウイルスは実験動物においてヒトPIV3攻撃に対する防御性を示し、弱毒化されており、遺伝的に安定で、血清陰性のヒトの乳児および小児において免疫原性である(Belshe et al., 1982a、前掲;Belshe et al., Infect. Immun., 37:160-165, 1982b;Clements et al., J. Clin. Microbiol., 29:1175-1182, 1991;Crookshanks et al., J. Med., Virol., 13:243-249, 1984;Hall et al., Virus Res., 22:173-184, 1992;Karron et al., 1995b、前掲;それぞれを本明細書に援用する)。これらのPIV3候補ワクチンウイルスは生物由来であるので、広範な臨床用として必要と思われるそれらの弱毒化度を調節するための立証された方法がない。
【0004】
PIVワクチン候補の開発を促進するために、組換えDNA法により感染性マイナス鎖RNAウイルスをcDNAから回収することが最近可能になった(概説についてはConzelmann, J. Gen. Virol., 77:381-389, 1996;Palese et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93:11354-11358, 1996;それぞれを本明細書に援用する)。これに関して、必須ウイルスタンパク質の存在下でcDNAコードされたアンチゲノムRNAに由来する組換えウイルスのレスキューが、呼吸系発疹ウイルス(RSV)、狂犬病ウイルス(RaV)、サルウイルス5(SV5)、牛疫ウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、水疱性口炎ウイルス(VSV)、麻疹ウイルス(MeV)、ムンプスウイルス(MuV)およびセンダイウイルス(SeV)について報告された(たとえば下記を参照:
【0005】
【化1】
【0006】
WO97/06270;Collins et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 92:11563-11567, 1995;米国特許出願08/892,403:1997年7月15日出願(WO98/02530に対応;優先権:米国仮特許出願60/047,634:1997年5月23日出願;60/046,141:1997年5月9日出願;および60/021,773:1996年7月15日出願);米国特許出願09/291,894:1999年4月13日出願;米国仮特許出願60/129,006:1999年4月13日出願;米国仮特許出願60/143,097:Buchholzらにより1999年7月9日出願;
【0007】
【化2】
【0008】
それぞれの全体を本明細書に援用する。
本発明に関してより具体的には、wt表現型をもつHPIVをcDNAから製造する方法が、感染性組換えHPIV3 JS株の回収のために最近開発された(たとえば下記を参照:Durbin et al., Virology, 235:323-332, 1997a;米国特許出願09/083,793:1998年5月22日出願;米国仮特許出願60/047,575:1997年5月23日出願(WO98/53078に対応);および米国仮特許出願60/059,385:1997年9月19日出願;それぞれを本明細書に援用する)。さらに、これらの開示内容からウイルスcDNAクローンを遺伝子操作して、生物学的変異体の表現型変更の遺伝学的原理、たとえばHPIV3 cp45ウイルスにおけるいずれの変異がそのts、caおよびatt表現型を特定するか、またBPIV3のいずれの遺伝子またはゲノムセグメントがその弱毒表現型を特定するかを判定することができる。さらに、これらおよび関連の開示内容から、広範な異なる変異をもつ新規PIVワクチン候補を構築し、それらの弱毒レベル、免疫原性および表現型の安定性を評価できる(たとえば下記も参照:米国仮特許出願60/143,134:Baillyらにより1999年7月9日出願;および米国特許出願09/350,821:Durbinらにより1999年7月9日出願;それぞれを本明細書に援用する)。
【0009】
こうして、現在では感染性の野生型組換えPIV3である(r)PIV3、および多数のts誘導体がcDNAから回収され、復帰遺伝子系を用いて特定の弱毒変異をもつ感染性ウイルスを作製し、既存のワクチンウイルスの弱毒化の遺伝学的原理を研究するために用いられている。たとえばcp45のL遺伝子中に見いだされた3つのアミノ酸置換を単独で、または組み合わせると、tsおよび弱毒表現型が特定されることが認められた。PIV3 cp45の他の領域には、さらに他のtsおよび弱毒変異がある。さらに、PIV3 cDNAレスキュー系を用い、L中に上記3つの弱毒変異を含むPIV3全長cDNAにおいてPIV3 HNおよびFオープンリーディングフレーム(ORF)をPIV1のものと交換することにより、キメラPIV1ワクチン候補が作製された。このcDNAから誘導された組換えキメラウイルスは、rPIV3-1.cp45Lと表示される(Skiadopoulos et al., J. Virol., 72:1762-1768, 1998;Tao et al., J. Virol., 72:2955-2961, 1998;Tao et al., Vaccine., 17:1100-1108, 1999;本明細書に援用する)。rPIV3-1.cp45Lをハムスターにおいて弱毒化し、PIV1による攻撃に対する高度の抵抗性を誘導した。rPIV3-1.cp45と表示される組換えキメラウイルスが作製され、これは15のcp45変異のうち12を含み、すなわちHNおよびFに起きる変異を除いたものであり、ハムスターの上下気道において高度に弱毒化されていた(Skiadopoulos et al., Vaccine., 18:503-510, 1999a)。
【0010】
抗原的にHPIV3に関連をもつBPIVは、HPIV1、HPIV2およびHPIV3に対する弱毒生ウイルスワクチンの開発のための代替法を提供する。ヒトに用いられた最初のワクチンであるウシ由来と思われる生ワクシニアウイルスは、天然痘のためにほぼ200年前にジェンナーにより開発された。その後2世紀の間、ワクシニアウイルスはこの疾患の抑制に有効であり、最終的には天然痘撲滅に重要な役割を果たした。ワクチン開発のためのこの”ジェンナー”法においては、抗原的に関連のある動物ウイルスをヒトのワクチンとして用いる。天然宿主に良く適応する動物ウイルスは、ヒトにおいては効率的に複製されず、したがって弱毒化することがしばしばある。現在でも、この形の宿主域制限についての遺伝学的原理に関しては理解が不十分である。ウイルスがその哺乳動物宿主またはトリ宿主において進化すると、関連のヒトウイルスにおける対応配列のものと有意に異なるヌクレオチド(nt)配列およびアミノ酸配列が生じる。多数の配列差からなるこの多様な配列が、宿主域弱毒表現型を特定する。多数の配列差に基づく弱毒表現型をもつことは、ヒトでの複製後の動物ウイルスの弱毒表現型の安定性に寄与するにちがいないので、ワクチンウイルスに望ましい特性である。
【0011】
最近特許権を取得した4価ロタウイルスはジェンナー法によるワクチン開発の一例であり、この場合、非ヒトロタウイルス株であるアカゲザルロタウイルス(RRV)がヒトにおいて弱毒化され、抗原的に関連性の高いヒト血清型3に対して防御性を示すことが見いだされた(Kapikian et al., Adv. Exp. Med. Biol., 327:59-69, 1992)。4つの主要なヒトロタウイルス血清型それぞれに対する抵抗性を誘導する多価ワクチンが求められているので、組織培養における遺伝子リアソートメント(reassortment)のための通常の遺伝学的手法を用いて3つのリアソータントウイルスを構築することによりジェンナー法が改変された。それぞれの単一遺伝子リアソータントウイルスは、10のRRV遺伝子と、血清型1、2または4の主要中和抗原(VP7)をコードする単一ヒトロタウイルス遺伝と子を含有していた。その目的は、このサルウイルスの弱毒化特性とヒトロタウイルス血清型1、2または4の中和特性を含む単一遺伝子置換RRVリアソータントを作製することであった。ヒトにおけるサルRRVの宿主域制限に基づく4価ワクチンは、乳児および小児においてヒトロタウイルス感染症に対し高度の有効性を備えていた(Perez-Schael et al., N. Engl. J. Med., 337:1181-1187, 1997)。しかしこのワクチンウイルスは移行抗体を欠如する比較的後期の血清陰性乳児では反応原性(reactogenicity)が弱く、したがってRRVワクチンに代わるべく、ウシロタウイルスのUK株に基づく第2世代のジェンナー式ワクチンが開発されつつある(Clements-Mann et al., Vaccine., 17:2715-2725, 1999)。
【0012】
ジェンナー法は、非ヒト霊長類において弱毒性かつ免疫原性である、1型パラインフルエンザウイルスおよびA型肝炎ウイルスに対するワクチンの開発にも利用されている(Emerson et al., J. Infect. Dis., 173:592-597, 1996;Hurwitz et al., Vaccine., 15:533-540, 1997)。ジェンナー法はA型インフルエンザウイルスの弱毒生ワクチンの開発に用いられたが、ヒトに使用するための一貫した弱毒ワクチンを製造することができなかった(Steinhoff et al., J. Infect. Dis., 163:1023-1028, 1991)。他の例として、ヒトA型インフルエンザウイルス由来の表面糖タンパク質ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼをコードする2つの遺伝子セグメント、ならびにトリA型インフルエンザウイルスに由来する残り6つの遺伝子セグメントを含むリアソータントウイルスが、ヒトにおいて弱毒化された(Clements et al., J. Clin. Microbiol., 27:219-222, 1989;Murphy et al., J. Infect. Dis., 152:225-229, 1985;およびSnyder et al., J. Clin. Microbiol., 23:852-857, 1986)。これは、トリウイルスの6セグメントのうち1以上がこのトリ-ヒトA型インフルエンザウイルスをヒトに対して弱毒化したことを示す。この弱毒化の遺伝子決定因子が、弱毒トリA型インフルエンザウイルス由来の単一遺伝子セグメントおよび残りのヒト株由来の遺伝子をもつリアソータントウイルスを用いてマッピングされた。非構造性(NS)遺伝子、ポリメラーゼ(PB1、PB2)遺伝子およびM遺伝子がヒトにおけるトリA型インフルエンザウイルスの弱毒表現型に関与していることが示された(Clements et al., J. Clin. Microbiol., 30:655-662, 1992)。
【0013】
他の研究で、チンパンジーにおける複製に対するウシ呼吸系発疹ウイルス(BRSV)の厳しい宿主域制限は、BRSV FおよびG糖タンパク質をそれらのHRSVカウンターパートで交換することにより、わずかに軽減されたにすぎない。これは、FおよびGがこの宿主域制限に関与してはいるが、他の1以上のウシRSV遺伝子も関与していることを示した(Buchholz et al., J. Virol., 74:1187-1199, 2000)。これは、霊長類における哺乳動物またはトリウイルスの宿主域制限表現型に、1以上の遺伝子が予測できない形で関与している可能性を示す。
【0014】
本発明は、野生型または変異型親ウイルスをHPIVに対するワクチンとして使用するために弱毒化する新たな基礎を提供する。この場合、弱毒化は完全に、または一部が宿主域効果に基づき、一方、キメラウイルスの少なくとも1つ、またはそれ以上の主要中和および防御抗原決定因子は、ワクチンが目標とするウイルスと同種である。BPIV3のHNおよびFタンパク質はそれぞれ、アミノ酸配列では約80%がそれらに対応するHPIV3タンパク質に関連し(Suzu et al., Nucleic Acids Res., 15:2945-2958, 1987;本明細書に援用する)、抗原分析では約25%が関連する(Coelingh et al., J. Virol., 64:3833-3843, 1990;Coelingh et al., J. Virol., 60:90-96, 1986;van Wyke Coelingh et al., J. Infect. Dis., 157:655-662, 1988;それぞれを本明細書に援用する)。以前の研究で、2つのBPIV3株、カンサス(Ka)株および船積熱(SF)始原型株が、アカゲザルの上下気道に対して弱毒化され、これらのうちの1つ、Ka株はチンパンジーにおいて弱毒化されることが示された(van Wyke Coelingh et al., 1988、前掲;本明細書に援用する)。非ヒト霊長類をKaウイルスで免疫化すると、HPIV3反応性の抗体が誘導され、サルの上下気道におけるヒトウイルスの複製に対する抵抗性が誘導された(同著)。ヒトにおけるKa株のその後の評価で、このウイルスは血清陰性乳児に対して十分に弱毒化され、完全感受性の乳児および小児において複製後も弱毒表現型を保持することが示された(Karron et al., 1996、前掲;Karron et al., 1995a、前掲;それぞれを本明細書に援用する)。したがってその主な利点は、完全感受性の乳児および小児に対して十分に弱毒化され、かつその弱毒表現型がヒトにおける複製後も安定であることであった。
【0015】
しかし、105.0組織培養感染量50(TCID50)のBPIV3 Ka株を接種した血清陰性被接種者に誘導されたHPIV3反応性の血球凝集反応阻止性血清抗体レベルは1:10.5であり、弱毒生HPIV3ワクチンを接種した同様な被接種者より3倍低かった(Karron et al., 1995a、前掲;およびKarron et al., 1995b、前掲;それぞれを本明細書に援用する)。BPIV3により誘導されたヒトウイルス抗体レベルが低いのは、大部分がHPIV3とBPIV3の抗原の相異を反映している(Karron et al., 1996、前掲;およびKarron et al., 1995a、前掲;それぞれを本明細書に援用する)。HPIVに対するKaワクチン候補の有効性をヒトにおいて判定する試験は行われていないが、HPIV3反応性抗体のこのレベル低下は防御効果レベルの低下に反映されると思われる。
【0016】
BPIV3はアカゲザル、チンパンジーおよびヒトの気道における複製を制限する宿主域遺伝子をもつことは明らかであるが、どのウシタンパク質またはウシ非コード配列がこの複製宿主域制限に関与しているかはまだ分かっていない。いずれのBPIV3タンパク質または非コード配列も、宿主域表現型に関与している可能性がある。どの遺伝子またはゲノムセグメントが弱毒表現型を与えるかを予め判定することはできない。これは、BPIV3のコード配列および非コード配列をそれらのHPIV3カウンターパートで系統的に置換し、回収したHPIV3/BPIV3キメラウイルスを血清陰性アカゲザルまたはヒトにおいて評価することによって初めて達成できる。
【0017】
PIV血清型1、2および3に対する有効なワクチン製剤の開発に役立つ多くの進歩が得られたにもかかわらず、PIVに起因する健康上重大な問題、特にHPIV感染による乳児および小児の疾患を軽減するための安全かつ有効なワクチンの製造に用いる他の手段および方法を求める明らかな要望が、当技術分野に依然としてある。これに関して残された攻略法には、多様な臨床状況に使用するための適切に弱毒化された免疫原性の、遺伝的に安定なワクチン候補を作製する他の手段が必要である。これらの目標を達成するためには、弱毒変異を同定して組換えワクチン株に組み込むための既存の方法を拡張しなければならない。さらに、動物用新規ワクチン候補を設計することが、ヒトPIVに対するワクチンを設計するための方法および組成物も提供すると認識される。意外にも、本発明はこれらの要望を満たし、以下に記載する利点をさらに備えている。
【0018】
発明の概要
本発明は、ヒトおよび他の哺乳動物において感染性かつ弱毒性であるヒト-ウシキメラ-パラインフルエンザ(PIV)を提供する。関連態様において本発明は、種々の組成物としてPIV感染に対し感受性の宿主においてPIVに対する目的免疫応答を生じるのに有用な弱毒ヒト-ウシキメラPIVを設計および作製するための新規方法を提供する。本発明のこれらの態様には、異なるPIVウイルスの1以上のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントと結合し、またはそれらを組み込んだ、部分または完全ヒトまたはウシPIV”バックグラウンド”ゲノムまたはアンチゲノムを含有するキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムを含む、新規な単離ポリヌクレオチド分子、およびそれらの分子を含むベクターが含まれる。本発明によれば、PIV感染症の予防および治療のための方法、ならびにヒト-ウシキメラPIVを含む組成物も提供される。
【0019】
本発明は、たとえばHPIVとBPIV3のキメラに基づく弱毒生PIVワクチン候補を開発するための方法に関する。キメラは、cDNAベースのウイルス回収系を用いて作製される。cDNAから作製した組換えウイルスは、生物由来のウイルスと同様に、独立して複製し、増殖する。本発明のキメラヒト-ウシPIVは、感染性キメラウイルスまたはサブウイルス粒子を産生するために、ヒトとウシ両方のPIVに由来するヌクレオチドを含むように組換え工学的に作製される。この方法で候補ワクチンウイルスを組換え工学的に作製して、PIV感染に対して感受性の哺乳動物宿主(ヒトおよびヒト以外の霊長類を含む)においてPIVに対する免疫応答を誘発する。本発明によるキメラヒト-ウシPIVは、特定のPIV、たとえばHPIV3に対する免疫応答、または多重PIV、たとえばHPIV1とHPIV3に対する多価応答を誘発するように工学的に作製できる。本明細書の教示に従って、非PIV病原体、たとえば呼吸系発疹ウイルス(RSV)または麻疹ウイルスの抗原のためのベクターとして作用する他のキメラウイルスを設計できる。
【0020】
本発明のキメラヒト-ウシPIVの一例は、ヒトおよびウシ両方のポリヌクレオチド配列を含むキメラPIVゲノムまたはアンチゲノム、ならびに主要ヌクレオキャプシドタンパク質(N)、ヌクレオキャプシドリンタンパク質(P)、およびラージポリメラーゼタンパク質(L)を含有する。追加PIVタンパク質を種々の割合で含有させて、完全ウイルス粒子、または過剰タンパク質(supernumerary protein)、抗原決定因子その他の追加成分を含むウイルス粒子にまで及ぶ一連の感染性サブウイルス粒子を提供することができる。
【0021】
本発明のキメラヒト-ウシPIVは、異なるPIVの1以上のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントと結合してヒト-ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムを形成した、ヒトまたはウシPIV株またはサブグループウイルスに由来するか、あるいはそれらに従って構成された、部分または完全”バックグラウンド”PIVゲノムまたはアンチゲノムを含有する。本発明の好ましい態様においてキメラPIVは、ウシPIV由来の1以上のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントと結合した、部分または完全ヒトPIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムを含む。
【0022】
部分または完全バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムは一般にレシピエント主鎖またはベクターとして作用し、これにカウンターパートであるヒトまたはウシPIVのヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントが取り込まれる。カウンターパートであるヒトまたはウシPIV由来のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントは”ドナー”遺伝子またはポリヌクレオチドであり、これはバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムと結合して、あるいはそれらにおいて置換して、関与PIVの一方または両方と比較して新規な表現型特性を示すヒト-ウシキメラPIVが得られる。たとえば、選択したレシピエントPIV鎖におけるヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントの付加または置換により、修飾されていないレシピエントおよび/またはドナーの対応する表現型と比較して、弱毒性の増大もしくは低下、増殖性の変更、免疫原性の改変、または目的とする他の表現型変更を生じることができる。
【0023】
本発明のヒト-ウシキメラPIV中におけるヘテロロガス置換配列または付加配列として用いる遺伝子およびゲノムセグメントには、PIV N、P、C、D、V、M、F、SH(適切な場合)、HNおよび/またはLタンパク質またはその部分をコードする遺伝子またはゲノムセグメントが含まれる。さらに、非PIVタンパク質、たとえばムンプスおよびSV5ウイルス中にみられるSHタンパク質をコードする遺伝子またはゲノムセグメントが本発明のヒト-ウシキメラPIVに含まれてもよい。調節領域、たとえば遺伝子外3'リーダー領域または5'トレイラー領域、ならびに遺伝子開始領域、遺伝子終止領域、遺伝子間領域、または3'もしくは5'側非翻訳領域も、ヘテロロガス置換配列または付加配列として有用である。
【0024】
本発明の好ましいヒト-ウシキメラPIVワクチン候補は、1以上のBPIV3遺伝子またはゲノムセグメントの置換または付加により弱毒化されたバックグラウンド中に、HPIV3の1以上の主要抗原決定因子を保有する。PIVの主要防御抗原はそれらのHNおよびF糖タンパク質であるが、他のタンパク質も防御免疫応答に寄与する可能性がある。特定の態様において、バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムはHPIVゲノムまたはアンチゲノム、たとえばHPIV3、HPIV2またはHPIV1バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムであり、これに1以上のBPIV遺伝子またはゲノムセグメント、好ましくはBPIV3由来のものがこれに付加または置換挿入される。以下に示す態様例においては、BPIV3のN遺伝子のORFがHPIVのものを置換している。あるいはバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムはBPIVゲノムまたはアンチゲノムであって、これがHPIV3、HPIV2またはHPIV1の糖タンパク質、糖タンパク質ドメインまたは他の抗原決定因子をコードする1以上の遺伝子またはゲノムセグメントと結合していてもよい。
【0025】
本発明方法によれば、任意のBPIV遺伝子またはゲノムセグメントを単独で、または1以上の他のBPIV遺伝子と組み合わせて、HPIV配列と結合させ、ヒト-ウシキメラPIVワクチン候補を得ることができる。特定のHPIV血清型、たとえばHPIV3の異なる株を含めた任意のHPIVが、弱毒BPIV遺伝子の妥当な受容体であろう。一般にヒトPIVに対するワクチンとして使用するヒト-ウシキメラPIVに挿入するために選択されるHPIV3遺伝子またはゲノムセグメントは、1以上のHPIV防御抗原、たとえばHNまたはF糖タンパク質を含有する。
【0026】
本発明の態様例において、1以上のウシ遺伝子またはゲノムセグメントを保有するヒト-ウシキメラPIVは、たとえばヒトPIV感染症の哺乳動物モデル(たとえば非ヒト霊長類)の気道において、高度の宿主域制限を示す。一例においては、部分または完全ヒトPIV(たとえばHPIV3)バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムに対する1以上のウシ遺伝子またはゲノムセグメントの付加または置換により、ヒトPIVが弱毒化される。一例においては、HPIV3 N遺伝子をBPIV3 N遺伝子で置換すると、新規なヒト-ウシキメラPIVワクチン候補が得られる。
【0027】
好ましくは、本発明のヒト-ウシキメラPIVワクチン候補が示す宿主域制限度は、各BPIV親、すなわち”ドナー”株が示す宿主域制限度に匹敵する。好ましくは、制限は真の宿主域表現型をもつべきである。すなわちそれは当該宿主に特異的でなければならず、かつ適切な細胞系におけるインビトロでの複製およびワクチン製造を制限してはならない。さらに、1以上のウシ遺伝子またはゲノムセグメントを保有するヒト-ウシキメラPIVは、PIV感染に対して感染性の宿主において高度の抵抗性を誘発する。したがって本発明はPIVに対する生ウイルスワクチンを弱毒化するための新規な基礎を提供し、その1つはたとえばHPIV3とBPIV3の間でヘテロロガスPIV由来の1以上の遺伝子またはゲノムセグメントを導入することによる宿主域効果に基づく。
【0028】
本発明の関連態様において、ヒト-ウシキメラPIVは、HPIV HNおよび/またはF糖タンパク質をコードする1以上のヘテロロガス遺伝子を含む。あるいはこのキメラPIVは、HPIV HNおよび/またはF糖タンパク質のエクトドメイン(あるいは細胞質ドメインおよび/または貫膜ドメイン)、または免疫原エピトープをコードする1以上のゲノムセグメントを含むことができる。これらの免疫原タンパク質、ドメインおよびエピトープは免疫化宿主において新規な免疫応答を生じるので、ヒト-ウシキメラPIV中に特に有用である。特にHNおよびFタンパク質、ならびにその中の免疫原ドメインおよびエピトープは、主要防御抗原を提供する。
【0029】
本発明の特定の態様において、ウシバックグラウンド(すなわちレシピエント)ゲノムまたはアンチゲノムに対する、ヒトPIVサブグループまたは株(1以上の特異的ヒトPIVサブグループまたは株が含まれる)に由来する1以上の免疫原遺伝子またはゲノムセグメントの付加または置換により、ヒトドナーウイルスに向けられた免疫応答を発生しうる組換えキメラウイルスまたはサブウイルス粒子が得られ、一方、ウシ主鎖はキメラがワクチン開発に有用な候補となる弱毒表現型を与える。一例においては、1以上のヒトPIV糖タンパク質遺伝子(たとえばHNおよび/またはF)を部分または完全ウシゲノムまたはアンチゲノムにおいて付加または置換すると、感受性宿主において抗ヒトPIV免疫応答を誘発する弱毒感染性ヒト-ウシキメラが得られる。
【0030】
別態様においては、ヒト-ウシキメラPIVはさらに、多重ヒトPIV株、たとえばそれぞれ異なるHPIV(たとえばHPIV1またはHPIV2)に由来する2つのHNもしくはFタンパク質またはその免疫原部分に由来する免疫原タンパク質、タンパク質ドメインまたはエピトープをコードする遺伝子またはゲノムセグメントを含む。あるいは、余分な糖タンパク質または決定因子をコードするポリヌクレオチドをゲノムまたはアンチゲノムに付加することなく、置換により1つの糖タンパク質または免疫原決定因子を第1のHPIVから供給し、第2の糖タンパク質または免疫原決定因子を第2のHPIVから供給してもよい。HPIV糖タンパク質および抗原決定因子の置換または付加は、組換えウイルスまたはサブウイルス粒子においてキメラ糖タンパク質をコードするゲノムまたはアンチゲノムであって、たとえば第1のHPIVの免疫原エピトープ、抗原領域または完全エクトドメインがヘテロロガスHPIVの細胞質ドメインに融合したものを含むものを構築することによっても達成できる。たとえば、HPIV1またはHPIV2のHNまたはF糖タンパク質由来の糖タンパク質エクトドメインをコードするヘテロロガスゲノムセグメントと、対応するHPIV3 HNまたはF糖タンパク質の細胞質/エンドドメインをコードするゲノムセグメントを、バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中で結合させることができる。
【0031】
別態様において、ヒト-ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムは、代替の、余分な、もしくはキメラ糖タンパク質またはその抗原決定因子を組換えウイルスまたはサブウイルス粒子においてコードして、ヒトおよびウシ両方の糖タンパク質、糖タンパク質ドメインまたは免疫原エピトープをもつウイルス組換え体を形成することができる。たとえば、ヒトPIV HNまたはF糖タンパク質由来の糖タンパク質エクトドメインをコードするヘテロロガスゲノムセグメントと、対応するウシHNまたはF糖タンパク質の細胞質/エンドドメインをコードするゲノムセグメントを、バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中で結合させることができる。あるいはヒトPIV HNまたはF糖タンパク質由来の糖タンパク質またはその部分を、他のPIV株または血清型に由来するHNもしくはF糖タンパク質またはその部分をコードするゲノムセグメントと結合させることができる。
【0032】
したがって本発明によれば、ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントで、部分バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中のカウンターパート遺伝子またはゲノムセグメントを置換することにより、ヒト-ウシキメラPIVを構築することができる。あるいは、ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントを、完全(または他の遺伝子またはゲノムセグメントを欠失した場合は、部分)PIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムと組み合わせる過剰遺伝子またはゲノムセグメントとして付加することができる。たとえば、2つのヒトPIV HNまたはF遺伝子またはゲノムセグメント(HPIV2とHPIV3に由来するもの各1つ)を含むことができる。
【0033】
ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントを、部分または完全PIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中の遺伝子間位置の近くに付加することがしばしばある。あるいは、遺伝子またはゲノムセグメントをゲノムの他の非コード領域、たとえば部分または完全PIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中の5'もしくは3'側非コード領域内、または非コードヌクレオチドがある他の位置に配置することもできる。1態様において、非コード調節領域が効率的な複製、転写および翻訳に必要なシス作用シグナルを含み、したがってヘテロロガス遺伝子もしくはゲノムセグメントまたは本明細書に開示する他の変異の導入によりこれらの機能を修飾するためのターゲット部位となる。
【0034】
本発明のより詳細な態様においては、シス作用調節領域に弱毒変異を導入して、たとえば(1)組織特異的弱毒(Gromeier et al., J. Virol., 73:958-964, 1999;Zimmermann et al., J. Virol., 71:4145-4149, 1997)、(2)インターフェロンに対する感受性の増大(Zimmermann et al., 1997;前掲)、(3)温度感受性(Whitehead et al., 1998a;前掲)、(4)複製レベルの全般的制限(Men et al., J. Virol., 70:3930-3937, 1996;Muster et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88:5177-5181, 1991)、および/または(5)宿主特異的な複製制限(Cahour et al., Virology, 207:68-76, 1995)を得ることができる。これらの弱毒変異は、本発明の弱毒ヒト-ウシキメラPIVを作製するための種々の方法で、たとえば点変異、関連ウイルス間での配列交換、またはヌクレオチド欠失により達成できる。
【0035】
本明細書に提示するさらに他の方法では、ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントを、部分または完全PIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中のカウンターパート遺伝子もしくはゲノムセグメントの野生型遺伝子オーダー位置に対応する位置において、付加または置換することができる。他の態様においては、ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントを、バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中の野生型遺伝子オーダー位置と対比して、よりプロモーターに近い位置もしくはプロモーターから遠い位置において、付加または置換して、ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントの発現をそれぞれ増大または低下させる。
【0036】
本発明の一般的態様においては、ウシ遺伝子またはゲノムセグメントをヒトPIVバックグラウンドにおいて付加または置換して、弱毒ヒト-ウシキメラPIVを形成することができる。あるいは、本発明のキメラは、1以上のヒト遺伝子またはゲノムセグメントをウシPIVバックグラウンドにおいて付加または置換して、弱毒PIVワクチン候補を形成したものであってもよい。これに関して、キメラPIVゲノムまたはアンチゲノムは、ヒトPIV由来のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントと結合した部分または完全ウシPIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムから形成される。好ましい態様においては、1以上のウシPIV遺伝子またはゲノムセグメントで、ヒトPIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中のカウンターパート遺伝子またはゲノムセグメントを置換する。別態様においては、1以上のヒトPIV糖タンパク質遺伝子(たとえばHNおよび/またはF)、または細胞質ドメイン、貫膜ドメイン、エクトドメインもしくは免疫原エピトープをコードするヒトPIV糖タンパク質遺伝子のゲノムセグメントで、ウシPIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中のカウンターパート遺伝子またはゲノムセグメントを置換する。たとえば、ヒトPIV糖タンパク質遺伝子HNおよびFの両方で、ウシPIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中のカウンターパートHNおよびF糖タンパク質遺伝子を置換する。
【0037】
同様に、本発明のキメラヒト-ウシPIVは、異なる病原体[1より多いPIV株またはグループ(たとえばヒトPIV3とヒトPIV1の両方)、呼吸系発疹ウイルス(RSV)、麻疹ウイルス、その他の病原体を含める]に由来する抗原決定因子を取り込むための”ベクター”として容易に設計できる(たとえば米国仮特許出願60/170,195:Murphyらにより1999年12月10日出願、参照;本明細書に援用する)。
【0038】
本発明のより詳細な態様においては、ヒト-ウシキメラPIVは、ヒトPIV由来の1以上のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントと結合した部分または完全BPIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムから構成される。これらの態様においては、1以上のHPIV糖タンパク質遺伝子HNおよびF、あるいはHNおよび/またはF遺伝子の細胞質ドメイン、貫膜ドメイン、エクトドメインまたは免疫原エピトープをコードする1以上のゲノムセグメントを、BPIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムに付加し、あるいはBPIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中の1以上のカウンターパート遺伝子またはゲノムセグメントと置換して、キメラ構築体を得ることができる。たとえば後記の組換えキメラウイルスrBPIV3-FHHNHのように、HPIV糖タンパク質遺伝子HNおよびFの両方で、BPIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中のカウンターパートHNおよびF糖タンパク質遺伝子を置換することがしばしばある。これはヒトPIVの抗原決定因子とウシPIVの宿主域制限要素を結合させたものであるので、望ましい構築体である。
【0039】
本発明のヒト-ウシキメラPIVにおいて提供される宿主域表現型効果と合わせて、キメラウイルスの弱毒性を増大または低下させる追加変異を導入することにより弱毒表現型を調節することがしばしば望ましい。したがって本発明の他の態様においては、生成するウイルスまたはサブウイルス粒子における弱毒表現型を特定する1以上の弱毒変異の導入によりキメラゲノムまたはアンチゲノムがさらに修飾された弱毒ヒト-ウシキメラPIVが作製される。これらには、RNA調節配列またはコードされるタンパク質における変異が含まれる。これらの弱毒変異をde novoで形成し、合理的な設計変異誘発方式に従って弱毒効果を調べることができる。あるいは、既存の生物由来変異PIVにおいて弱毒変異を確認した後、本発明のヒト-ウシキメラPIVに挿入することもできる。
【0040】
本発明のキメラウシ-ヒトPIV中に弱毒および他の目的表現型を特定する変異を導入することは、ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメント、たとえばそのLタンパク質またはその部分をコードする遺伝子を、ウシまたはヒトPIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムに伝達することにより達成できる。あるいは、選択したバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中にその変異が存在し、導入したヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントは変異をもたないか、または1以上の異なる変異をもつこともできる。一般にヒトまたはウシバックグラウンド、すなわち”レシピエント”ゲノムまたはアンチゲノムを、ヘテロロガスウイルス(たとえばヘテロロガスウシもしくはヒトPIV、または非PIVマイナス鎖RNAウイルス)における変異部位に対応する1以上の部位で修飾して、ドナーウイルス中に同定されるものと同じ変異または保存的に関連する変異を含有またはコードさせる(たとえば保存的アミノ酸置換)(たとえばPCT/US00/09695:2000年4月12日出願;およびその優先権:米国仮特許出願60/129,006:1999年4月13日出願;本明細書に援用する)。一例においては、ウシバックグラウンド、すなわち”レシピエント”ゲノムまたはアンチゲノムを、HPIV3 JScp45における変異部位(後記に列記)に対応する1以上の部位で修飾して、cp45”ドナー”中に同定されるものと同じ変異、または保存的に関連する変異を含有またはコードさせる。
【0041】
弱毒変異を同定して本発明のウシ-ヒトキメラPIVに挿入するのに好ましい変異PIV株には、低温継代(cp)、低温適応性(ca)、宿主域制限(hr)、縮小プラーク(sp)および/または温度感受性(ts)変異体、たとえばJS HPIV3 cp45変異株が含まれる。一例においては、1以上の弱毒変異がポリメラーゼLタンパク質において、たとえばJS野生型HPIV3のTyr942、Leu992、またはThr1558に対応する位置において起きる。あるいはNタンパク質においてたとえばJSの残基Val96またはSer389に対応する位置のアミノ酸置換をコードする弱毒変異を選択し、ヒト-ウシキメラPIVに挿入することができる。その代替または追加の変異は、Cタンパク質においてたとえばJSのIle96に対応する位置、およびMタンパク質においてたとえばPro199に対応する位置(たとえばPro199からThrへの変異)におけるアミノ酸置換をコードするものであってもよい。本発明のヒト-ウシキメラPIVの弱毒性を調節するための追加変異はさらに、Fタンパク質においてたとえばJSのIle420またはAla450に対応する位置、およびHNタンパク質においてたとえばJSの残基Val384に対応する位置にみられる。
【0042】
本発明のヒト-ウシキメラPIVに取り込ませるための生物由来PIV変異体からの弱毒変異は、PIVゲノムまたはアンチゲノムの非コード部分、たとえば3'リーダー配列における変異をも含む。これに関する変異の例は、組換えウイルスの3'リーダーおいてJS cp45のヌクレオチド23、24、28もしくは45に対応する位置に工学的に作製できる。さらに他の変異例は、N遺伝子開始配列において、たとえばN遺伝子開始配列中の1以上のヌクレオチド、たとえばJS cp45のヌクレオチド62に対応する位置のヌクレオチドを交換することにより工学的に作製できる。
【0043】
JS cp45その他の生物由来PIV変異体から多くの弱毒変異”メニュー”が得られ、その各変異を、ヒトおよびウシ遺伝子またはゲノムセグメントのキメラであるゲノムまたはアンチゲノムを保有する組換えPIV中において、弱毒レベル調節のための他の任意の変異と組み合わせることができる。たとえば、本発明の組換えPIVにおける変異には、1以上、好ましくは2以上のJS cp45変異が含まれる。ワクチンとして使用するために選択する本発明の目的ヒト-ウシキメラPIVは、広範な臨床用として十分なレベルの弱毒化を達成するために、しばしば少なくとも2つ、時には3つ以上の弱毒変異をもつ。好ましくは、組換えヒト-ウシキメラPIVは変異を特定するコドンにおける多重ヌクレオチド置換によって安定化された1以上の弱毒変異を含む。
【0044】
本発明の目的ヒト-ウシキメラPIVに適合または伝達しうる追加変異を非PIV非セグメント化マイナス鎖RNAウイルスにおいて同定し、本発明のPIV変異体に挿入することができる。これは、ヘテロロガスマイナス鎖RNAウイルスにおいて同定した変異を、レシピエントPIVゲノムまたはアンチゲノム中の対応する相同部位にマッピングし、そしてレシピエントにおける既存の配列を変異遺伝子型に変異させる(同一または保存変異により)ことによって、容易に達成される;PCT/US00/09695:2000年4月12日出願;およびその優先権:米国仮特許出願60/129,006:1999年4月13日出願;本明細書に援用する。
【0045】
組換えヒト-ウシキメラPIVのほか、本発明はそれぞれHPIVおよびBPIV配列を含み、かつ所望により、本明細書に示す1以上の追加の表現型特異的変異を含む関連cDNAクローン、ベクターおよび粒子を提供する。これらを、選択された組合わせで、本明細書に記載の方法に従ってたとえば組換えcDNAゲノムまたはアンチゲノムである単離ポリヌクレオチドに導入して、発現に際し適切に弱毒化された感染性ウイルスまたはサブウイルス粒子を生成させる。この方法をルーティンな表現型評価法と組合わせると、弱毒性、温度感受性、免疫原性改変、低温適応性、縮小プラークサイズ、宿主域制限、遺伝子安定性などの目的特性をもつヒト-ウシキメラPIVが得られる。特に、弱毒化され、なおかつ接種哺乳動物宿主において防御免疫応答を誘発するのに十分なほど免疫原性であるワクチン候補が選択される。
【0046】
本発明のさらに他の態様においては、たとえば生物由来の弱毒変異ウイルスから移入した追加変異を含むかまたは含まないヒト-ウシキメラPIVが、目的とする表現型、構造または機能の変更をもたらす追加ヌクレオチド修飾をもつように構築される。一般に、選択されるヌクレオチド修飾は、表現型の変更、たとえば増殖特性、弱毒性、温度感受性、低温適応性、プラークサイズ、宿主域制限または免疫原性の変更を特定する。これに関して構造変更には、操作および同定を容易にするためにPIVコードcDNAにおいて制限部位を導入または切除することが含まれる。
【0047】
好ましい態様において、ヒト-ウシキメラPIVのゲノムまたはアンチゲノムにおけるヌクレオチド変更には、遺伝子の部分欠失もしくは完全欠失またはその発現の低下もしくは排除(ノックアウト)によるウイルス遺伝子修飾が含まれる。これらの修飾をヒトまたはウシのバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムに導入するか、あるいはそれらにおいて付加または置換されるヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントに取り込ませることによりキメラゲノムまたはアンチゲノムに導入することができる。これに関する変異のためのターゲット遺伝子には任意のPIV遺伝子が含まれ、これにはヌクレオキャプシドタンパク質N、リンタンパク質P、ラージポリメラーゼサブユニットL、マトリックスタンパク質M、ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼタンパク質HN、低分子疎水性SHタンパク質(適切な場合には)、融合タンパク質F、ならびにC、DおよびVオープンリーディングフレーム(ORF)生成物が含まれる。組換えウイルスが生存性および感染性を維持する限り、これらの各タンパク質を全体的または部分的に、単独で、または他の目的修飾と組合わせて、選択的に欠失、置換または再配列し、新規な欠失またはノックアウト変異体を得ることができる。たとえばC、Dおよび/またはV遺伝子を全体的または部分的に欠失させ、あるいはその発現を低下もしくは排除することができる(たとえば停止コドンの導入により、RNA編集部位の変異により、開始コドンによって特定されるアミノ酸を改変する変異により、またはターゲットORFにおけるフレームシフト変異により)。1態様では、編集部位において、編集を阻害し、そのmRNAがRNA編集により生成するタンパク質の発現を排除する変異を起させることができる(Kato et al., EMBO J., 16:578-587, 1997a、およびSchneider et al., Virology, 227:314-322, 1997;それぞれを本明細書に援用する)。あるいは、1以上のC、Dおよび/またはV ORFを全体的または部分的に欠失させて、得られる組換えクローンの表現型を改変し、増殖性、弱毒性、免疫原性その他の目的表現型特性を改善することができる(米国特許出願09/350,821:1999年7月9日出願、参照;本明細書に援用する)。
【0048】
本発明のヒト-ウシキメラPIVにおける他のヌクレオチド修飾には、組換えゲノムまたはアンチゲノム中の選択した遺伝子に対するシス作用調節配列の欠失、挿入、付加または再配列が含まれる。本明細書に記載する他のこのような修飾に関しては、これらの修飾をヒトまたはウシのバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムに導入するか、あるいはそれらにおいて付加または置換されるヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントに取り込ませることによりキメラゲノムまたはアンチゲノムに導入することができる。一例においては、1つのPIV遺伝子のシス作用調節配列をヘテロロガス調節配列に対応するように変化させる。これは異なるPIV中の同一遺伝子のカウンターパートシス作用調節配列、または異なるPIV遺伝子のシス作用調節配列であってもよい。たとえば遺伝子終止シグナルを同一PIV株の異なる遺伝子の遺伝子終止シグナルに変換または置換することにより修飾できる。他の態様においてヌクレオチド修飾は、たとえば選択した形のタンパク質に対するオータナティブ翻訳開始部位を切除するための、組換えゲノムまたはアンチゲノムにおける翻訳開始部位の挿入、欠失、置換または再配列を含むことができる。
【0049】
さらに、他の多様な遺伝子変化を単独で、または生物由来の変異PIVから移入した1以上の弱毒変異と共に、ヒト-ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムに導入することができる。たとえば非PIV源に由来する遺伝子またはゲノムセグメントを全体的または部分的に挿入できる。あるいは、遺伝子の順序を変更し、またはPIVゲノムプロモーターをそれのアンチゲノムカウンターパートと交換することができる。操作を容易にするために、組換えゲノムまたはアンチゲノムにおいて異なる修飾または追加の修飾、たとえば種々の非コード領域または他の領域へのユニーク制限部位の挿入を行うことができる。外来配列の挿入容量を高めるために、非翻訳遺伝子配列を除去することができる。
【0050】
さらに他の態様においては、非PIV配列、たとえばサイトカイン、Tヘルパーエピトープ、制限部位マーカー、または目的宿主において防御免疫応答を誘発することができる微生物病原体(たとえばウイルス、細菌、寄生虫または真菌)のタンパク質もしくは免疫原エピトープをコードするように、ヒト-ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムを含むポリヌクレオチド分子またはベクターを修飾することができる。そのような1態様においては、呼吸系発疹ウイルス(RSV)由来の遺伝子またはゲノムセグメント、たとえばRSVの抗原タンパク質(たとえばFまたはGタンパク質)、免疫原ドメインまたはエピトープをコードする遺伝子を含むヒト-ウシキメラPIVを構築する。
【0051】
本発明の関連態様においては、単離した感染性ヒト-ウシキメラPIVを産生するための組成物(たとえば、PIVコードcDNAを含む単離ポリヌクレオチドおよびベクター)および方法が提供される。本発明のこれらの態様には、ヒト-ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムを含む新規な単離ポリヌクレオチド分子およびベクターが含まれる。N、PおよびLタンパク質をコードする1以上の単離ポリヌクレオチド分子を含む、同一または異なる発現ベクターも提供される。これらのタンパク質をゲノムまたはアンチゲノムcDNAから直接発現させることもできる。好ましくは細胞または無細胞溶解物中でベクターを発現または同時発現させ、これにより感染性ヒト-ウシキメラPIVウイルス粒子またはサブウイルス粒子を産生させる。
【0052】
ヒト-ウシキメラPIVを産生させるための前記方法および組成物により、感染性ウイルスもしくはサブウイルス粒子またはその誘導体が得られる。組換えによる感染性ウイルスは基準PIVウイルスに匹敵し、同様に感染性である。それを新鮮な細胞に直接感染させることができる。感染性サブウイルス粒子は一般に、適切な条件下で感染を開始することができるウイルス粒子副成分である。たとえば、ゲノムまたはアンチゲノムRNA、ならびにN、PおよびLタンパク質を含有するヌクレオキャプシドは、細胞の細胞質に導入されると感染を開始させることができるサブウイルス粒子の一例である。本発明において提供されるサブウイルス粒子には、感染性に必須でない1以上のタンパク質、タンパク質セグメント、または他のウイルス成分を欠如するウイルス粒子が含まれる。
【0053】
本発明の他の態様においては、前記のヒト-ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムを含む単離ポリヌクレオチド分子を含む発現ベクター、ならびにPIVのN、PおよびLタンパク質をコードする1以上の単離ポリヌクレオチド分子を含む発現ベクター(同一または異なるベクター)を含有する無細胞溶解物が提供される。これらの1以上のタンパク質をゲノムまたはアンチゲノムcDNAから発現させることもできる。発現すると、ゲノムまたはアンチゲノムとN、PおよびLは結合して、感染性ヒト-ウシキメラPIVウイルスまたはサブウイルス粒子を形成する。
【0054】
本発明のヒト-ウシキメラPIVは、PIV感染に対して感受性の宿主においてPIVに対し目的とする免疫応答を生じるための種々の組成物中に使用される。ヒト-ウシキメラPIV組換え体は感染哺乳動物において防御免疫応答を誘発することができ、かつ免疫化宿主に許容できない重篤な症状の呼吸系疾患を引き起さないほど十分に弱毒化されている。さらに、ヒト-ウシキメラPIV組換え体は、ワクチン製造を可能にするのに十分なインビトロ効率で複製しなければならない。弱毒ウイルスまたはサブウイルス粒子は、細胞培養上清中、培養物から単離した状態、または部分もしくは完全精製状態で存在することができる。所望によりウイルスを凍結乾燥し、貯蔵または宿主への送達のために多様な他の成分と組合わせることができる。
【0055】
本発明はさらに、生理学的に許容できるキャリヤーおよび/またはアジュバント、ならびに単離した弱毒ヒト-ウシキメラPIVウイルスまたはサブウイルス粒子を含む、新規ワクチンを提供する。好ましい態様においてワクチンは、適切なバランスの弱毒性と免疫原性を達成するために、前記のように少なくとも1つ、好ましくは2以上の追加の変異または他のヌクレオチド修飾を含むヒト-ウシキメラPIVから構成される。ワクチンは弱毒ウイルス103〜107PFUの用量で配合できる。ワクチンは、単一PIV株に対して、または複数のPIV株または群に対して免疫応答を誘発する、弱毒ヒト-ウシキメラPIVを含むことができる。これに関して、ヒト-ウシキメラPIVをワクチン配合物中で他のPIVワクチン株または他のウイルスワクチン用ウイルス(たとえばRSV)と組み合わせることができる。
【0056】
関連態様において、本発明は対象哺乳動物において免疫系を刺激してPIVに対する免疫応答を誘発する方法を提供する。本方法は、生理学的に許容できるキャリヤーおよび/またはアジュバント中における免疫学的に十分な量のヒト-ウシキメラPIVの配合物を投与することを含む。1態様において免疫原組成物は、弱毒変異または前記の目的表現型を特定する他のヌクレオチド修飾を少なくとも1つ、好ましくは2以上もつヒト-ウシキメラPIVを含むワクチンである。ワクチンは弱毒ウイルス103〜107PFUの用量で配合できる。ワクチンは、単一PIV株に対して、または複数のPIV(たとえばHPIV1およびHPIV3)に対して、または1以上のPIVと非PIV病原体(たとえばRSV)に対して免疫応答を誘発する、弱毒ヒト-ウシキメラPIVを含むことができる。これに関して、ヒト-ウシキメラPIVは、単一特異性免疫応答、または複数のPIVに対する、もしくは1以上のPIVと非PIV病原体(たとえばRSV)に対する多重特異性免疫応答を誘発することができる。あるいは、異なる免疫原特性をもつヒト-ウシキメラPIVをワクチン混合物中で組み合わせるか、または別個に同調処置プロトコルで投与して、1つのPIVに対する、複数のPIVに対する、または1以上のPIVと非PIV病原体(たとえばRSV)に対する、より有効な防御を誘発することができる。好ましくは、免疫原組成物を上気道に、たとえばスプレー、液滴またはエーロゾルにより投与する。
【0057】
具体的態様の記載
本発明は、ヒトおよびウシPIVゲノムまたはアンチゲノムのキメラとしてクローン化してヒト-ウシキメラPIVにした、組換えパラインフルエンザウイルス(PIV)を提供する。ヒト-ウシPIVキメラ構築により、哺乳動物、特にヒトにおいて感染性であり、臨床用または動物用の免疫原組成物を調製するのに有用な、ウイルス粒子またはサブウイルス粒子が得られる。本発明においては、弱毒ヒト-ウシキメラPIVを設計および製造するための新規方法および組成物、ならびにPIV感染症の予防および治療に用いる方法および組成物も提供される。
【0058】
本発明のキメラヒト-ウシPIVは、ヒトおよびウシ両方のPIV株に由来するヌクレオチド配列を含み、感染性キメラウイルスまたはサブウイルス粒子を産生するように工学的に組換え処理されている。この方法で候補ワクチンウイルスは、PIV感染に対して感受性の宿主哺乳動物(ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む)においてPIVに対する免疫応答を誘発するように工学的に組換え処理される。本発明によるヒト-ウシキメラPIVは、特定のPIV(たとえばHPIV3)に対する免疫応答、または複数のPIV(たとえばHPIV1とHPIV3)に対する多重特異性応答を誘発することができる。
【0059】
本発明のヒト-ウシキメラPIVの一例は、ヒトおよびウシ両方のポリヌクレオチド配列を含むキメラPIVゲノムまたはアンチゲノム、ならびに主要ヌクレオキャプシドタンパク質(N)、ヌクレオキャプシドリンタンパク質(P)およびラージポリメラーゼタンパク質(L)を含有する。追加のPIVタンパク質を種々の組合わせで含有させて、完全ウイルス粒子、または過剰タンパク質、抗原決定因子もしくは他の追加成分を含有するウイルス粒子にまで及ぶ、広範な感染性サブウイルス粒子を得ることができる。
【0060】
本発明のキメラヒト-ウシPIVは、異なるPIV株または血清型のウイルスの1以上のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントと結合してヒト-ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムを形成した、ヒトまたはウシPIV株または血清型ウイルスに由来するか、またはそれらに従って構成した部分または完全”バックグラウンド”PIVゲノムまたはアンチゲノムを含む。本発明のある態様において、キメラPIVはウシPIVに由来する1以上のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントと結合した、部分または完全ヒトPIV(HPIV)バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムを含む。本発明の他の態様において、キメラPIVはヒトPIVに由来する1以上のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントと結合した、部分または完全ウシPIV(BPIV)バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムを含む。
【0061】
部分または完全バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムは、一般にカウンターパートであるヒトまたはウシPIVのヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントを取り込むレシピエント主鎖またはベクターとして作用する。カウンターパートであるヒトまたはウシPIV由来のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントは”ドナー”遺伝子またはポリヌクレオチドであり、これはバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムと結合して、あるいはその中で置換して、関与PIVの一方または両方と比較して新規な表現型特性を示すヒト-ウシキメラPIVを生成する。たとえば選択したレシピエントPIV鎖におけるヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントの付加または置換により、修飾されていないレシピエントおよび/またはドナーの対応する表現型と比較して、弱毒性の増大もしくは低下、増殖性の変更、免疫原性の改変、または他の目的とする表現型変更が生じる可能性がある。本発明のヒト-ウシキメラPIV中におけるヘテロロガス挿入配列または付加配列として用いるために選択できる遺伝子およびゲノムセグメントには、PIV N、P、C、D、V、M、SH(適切な場合)、F、HNおよび/またはLタンパク質またはその部分をコードする遺伝子またはゲノムセグメントが含まれる。調節領域、たとえば遺伝子外リーダー領域もしくはトレイラー領域、または遺伝子間領域も、ヘテロロガス挿入配列または付加配列として有用である。
【0062】
ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントを、部分または完全PIVバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中のカウンターパート遺伝子もしくはゲノムセグメントの野生型遺伝子オーダー位置に対応する位置において付加または置換し、これによりカウンターパート遺伝子もしくはゲノムセグメントを置換または移動(たとえばよりプロモーターから遠い位置へ)させることができる。さらに他の態様においては、ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントを、バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中の野生型遺伝子オーダー位置と対比して、よりプロモーターに近い位置もしくはプロモーターから遠い位置において付加または置換し、これによりヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントの発現をそれぞれ増大または低下させる。
【0063】
ヘテロロガス免疫原タンパク質、ドメインおよびエピトープを導入してヒト-ウシキメラPIVを作製することは、免疫化宿主において新規な免疫応答を生じるのに特に有用である。あるドナーPIV由来の免疫原遺伝子またはゲノムセグメントを、異なるPIVのレシピエントゲノムまたはアンチゲノム中において付加または置換することにより、そのドナーサブグループもしくは株に対して、レシピエントサブグループもしくは株に対して、またはドナーとレシピエントの両方のサブグループもしくは株に対して向けられた免疫応答を生じることができる。この目的を達成するために、キメラタンパク質、たとえばあるPIVに特異的な細胞質テイルおよび/または貫膜ドメインが異なるPIVのエクトドメインに融合してたとえばヒト-ウシ融合タンパク質を生じたもの、あるいは2つの異なるヒトPIVに由来するドメインを含む融合タンパク質を発現する、ヒト-ウシキメラPIVを構築することもできる。好ましい態様において、ヒト-ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムは、ヒトおよびウシ両方の糖タンパク質ドメインまたは免疫原エピトープをもつ組換えウイルスまたはサブウイルスにおいて、キメラ糖タンパク質をコードする。たとえばヒトPIV HNまたはF糖タンパク質由来の糖タンパク質エクトドメインをコードするヘテロロガスゲノムセグメントを、対応するウシHNまたはF糖タンパク質の細胞質ドメインおよび貫膜ドメインをコードするポリヌクレオチド配列(すなわちゲノムセグメント)と結合させて、ヒト-ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムを形成することができる。
【0064】
他の態様においては、ワクチン配合に有用なヒト-ウシキメラPIVを、循環ウイルスにおける抗原ドリフトに適応するように簡便に修飾することができる。一般にこの修飾は、HNおよび/またはFタンパク質における修飾であろう。これは1以上の点変異の導入を伴う場合がある;全HNまたはF遺伝子を伴う場合もあり、あるいはあるPIV株または群に由来するその遺伝子の特定の免疫原領域をコードするゲノムセグメントを、異なるPIV株もしくは群のレシピエントクローン中の対応する領域の置換により、またはその遺伝子の1以上のコピーを付加することにより、キメラPIVゲノムまたはアンチゲノムcDNAに取り込ませて、これにより多重抗原形を提示する。次いで、この修飾PIVクローンから産生された子孫ウイルスを、出現するPIV株に対する予防接種プロトコルに使用できる。
【0065】
ヒトPIVコード配列または非コード配列(たとえばプロモーター、遺伝子終止配列、遺伝子開始配列、遺伝子間要素、または他のシス作用要素)をヘテロロガスカウンターパートで交換すると、多様な弱毒その他の可能な表現型効果をもつキメラPIVが得られる。特に、ウシまたはネズミの遺伝子がヒト細胞中ではたとえば下記の理由で効率的に機能しない場合にヒトPIVバックグラウンドに移入したウシまたはネズミPIV(MPIV)タンパク質、タンパク質ドメイン、遺伝子またはゲノムセグメントの置換により、宿主域その他の目的効果が得られる:ヘテロロガス配列またはタンパク質と、生物学的相互作用性ヒトPIV配列またはタンパク質(すなわち、ウイルス転写、翻訳、アッセンブリーなどに関して通常は置換配列またはタンパク質と協調する配列またはタンパク質)との不適合、あるいはより一般的には宿主域制限において、許容宿主と許容度の低い宿主との間で異なる細胞タンパク質または他の観点での細胞環境との不適合。一例においては、ウシおよびヒトPIVの構造および機能についての既知の観点に基づいて、ヒトPIVへの導入のためにウシPIV配列を選択する。
【0066】
HPIV3は、Mononegavirales目、Paramyxoviridae科、Respirovirus属のメンバーである(Collins et al., 1996、前掲)。HPIV3はHPIVのうちで最も良く解明されており、始原型HPIVである。そのゲノムは、長さ15462ヌクレオチド(nt)の一本鎖マイナスセンスRNAである(Galinski et al., Virology, 165:499-510, 1988;およびStokes et al., Virus Res., 25:91-103, 1992;それぞれを本明細書に援用する)。少なくとも8つのタンパク質がPIV3ゲノムによりコードされる:ヌクレオキャプシドタンパク質N、リンタンパク質P、機能は未知のCおよびDタンパク質、マトリックスタンパク質M、融合タンパク質F、ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ糖タンパク質HN、ならびにラージポリメラーゼタンパク質L(Collins et al., 1996、前掲)。P遺伝子中のV ORFを含有するタンパク質も産生されることがある(Durbin et al., Virology, 126:319-333, 1999)。
【0067】
M、HNおよびFタンパク質はエンベロープ付随性であり、後2つは表面糖タンパク質であって、各PIVの場合と同様に主要中和および防御抗原である(Collins et al., 1996、前掲)。PIV類の相当するPIV HNまたはFタンパク質間の有意の配列差が、防御免疫の型特異性の基礎であると考えられる(Collins et al., 1996、前掲;Cook et al., Amer. Jour. Hyg., 77:150-159, 1963;Ray et al., J. Infect. Dis., 162:746-749, 1990;それぞれを本明細書に援用する)。
【0068】
HPIV3遺伝子はそれぞれ単一タンパク質をコードする単一mRNAとして転写されるが、4つのORF、すなわちP、C、DおよびVを含むP mRNAは例外である(Galinski et al., Virology, 186:543-550, 1992;およびSpriggs et al., J. Gen. Virol., 67:2705-2719, 1986;それぞれを本明細書に援用する)。Pタンパク質とCタンパク質はmRNA中の別個のオーバーラップORFから翻訳される。パラミクソウイルス科のすべてがPタンパク質をコードするが、Respirovirus属およびMorbillivirus属のメンバーのみがCタンパク質をコードする。各ウイルスはC ORFから発現するタンパク質の数、ならびにインビボおよびインビトロでのウイルス複製におけるそれの重要性が異なる。センダイウイルス(SeV)は、独立して開始される4つのタンパク質C'、C、Y1およびY2をC ORFから発現し、それらの翻訳開始部位はこの順序でmRNA中にある(Curran et al., Enzyme, 44:244-249, 1990;Lamb et al., The Paramyxoviruses, D. Kingsbury編、pp. 181-214, Plenum Press, ニューヨーク、1991;本明細書に援用する)。これに対しHPIV3および麻疹ウイルス(MeV)は1つのCタンパク質のみを発現する(Bellini et al., J. Virol., 53:908-919, 1985;Sanchez et al., Virology, 147:177-86, 1985;およびSpriggs et al., 1986、前掲;それぞれを本明細書に援用する)。
【0069】
PIV3 Dタンパク質はP ORFとD ORFの融合タンパク質であり、P遺伝子から共転写時RNA編集プロセスにより発現し、その際2つのノンテンプレーテッド(nontemplated)G残基がP mRNAのRNA編集部位に付加される(Galinski et al., 1992、前掲;およびPelet et al., EMBO J., 10:443-448, 1991;それぞれを本明細書に援用する)。Dタンパク質を発現する他の唯一のパラミクソウイルスBPIV3は、このタンパク質と2つ目のタンパク質であるVタンパク質の発現にRNA編集を使う。
【0070】
Respirovirus、RubulavirusおよびMorbillivirus属のほぼすべてのメンバーがVタンパク質を発現する。発現しないことが明らかなのはHPIV1であり、これは無傷のV ORFを欠如する(Matsuoka et al., J. Virol., 65:3406-3401, 1991;本明細書に援用する)。V ORFはシステインに富む高度に保存されたドメインをもつことが特色である(Cattaneo et al., Cell, 56:759-764, 1989;Park et al., J. Virol., 66:7033-7039, 1992;Thomas et al., Cell, 54:891-902, 1988;およびVidal et al., J. Virol., 64:239-246, 1990;それぞれを本明細書に援用する)。V ORFは現在までに配列決定された各HPIV3ウイルスに保持されており、これはこのORFがこのウイルスにおいて発現し、機能をもつことを示唆する(Galinski et al., Virology, 155:46-60, 1986;Spriggs et al., 1986、前掲;およびStokes et al., 1992、前掲;本明細書に援用する)。
【0071】
BPIV3 Vタンパク質は、ノンテンプレーテッドG残基がRNA編集部位に付加された場合に発現する(Pelet et al., 1991、前掲;本明細書に援用する)。しかしHPIV3の場合、編集部位とV ORFの間に2つの翻訳停止コドンがあり、HPIV3がこのORFを発現しない他の例であるか、あるいは他の何らかの機序で発現するかは明らかでない。1つの可能性は、P遺伝子の下流の第2部位でHPIV3編集が同様に起きるということであるが、細胞培養ではこれは起きないように思われた(Galinski et al., 1992、前掲)。あるいは、リボソームがリボソームフレームシフトによりV ORFに到達する可能性もある。これはMVのP遺伝子座についての状況に匹敵する。MVはC、PおよびVタンパク質を発現するが、新規Rタンパク質をも発現し、これはP ORFからV ORFへのフレームシフトにより合成される(Liston et al., J. Virol., 69:6742-6750, 1995;本明細書に援用する)。遺伝学的証拠からHPIV3のV ORFは機能していることが示唆される(Durbin et al., 1999、前掲)。
【0072】
HPIV3がそのVタンパク質を発現する手段は明らかではないが、そのV ORFが極度に保存されていることは、それが実際に発現していることを示唆する。Vタンパク質の機能は十分には確定していないけれども、インビトロでは効率的に複製するがインビボでは複製低下を示すV-マイナスMVおよびSeV組換え体が回収された(Delenda et al., Virology, 228:55-62, 1997;Delenda et al., Virology, 242:327-337, 1998;Kato et al., 1997a、前掲;Kato et al., J. Virol., 71:7266-7272, 1997b;Valsamakis et al., J. Virol., 72:7754-7761, 1998;それぞれを本明細書に援用する)。
【0073】
PIVのウイルスゲノムは、ウイルスの複製および転写に必要なプロモーターの全体または一部をもつ遺伝子外リーダー領域およびトレイラー領域、ならびに非コード領域および遺伝子間領域をも含む。PIV遺伝子地図は、3'リーダー-N-P/C/D/V-M-F-HN-L-5'トレイラーと表される。あるウイルス、たとえばサルウイルス5およびムンプスウイルスには、FとHNの間に未知の機能をもつ低分子疎水性(SH)タンパク質をコードする遺伝子がある。転写は3'末端で開始し、遺伝子境界にみられる短い保存モチーフにより案内される逐次停止-開始機序により進行する。各遺伝子の上流末端は遺伝子開始(GS)シグナルを含み、これはその各mRNAの開始を指令する。各遺伝子の下流末端は遺伝子終止(GE)モチーフを含み、これはポリアデニル化および終止を指令する。ヒトPIV3のJS株(GenBank寄託番号Z11575;本明細書に援用する)およびワシントン(Washington)株について(Galinski M.S., The Paramyxovirusas, Kingsbury, D.W.編、pp. 537-568、Plenum Press, ニューヨーク、1991;本明細書に援用する)、ならびにウシPIV3 910N株(GenBank寄託番号D80487;本明細書に援用する)について配列例が記載されている。
【0074】
本明細書中で用いる”PIV遺伝子”は、一般にmRNAをコードするPIVゲノムの部分を表し、一般に上流末端において遺伝子開始(GS)シグナルで始まり、下流末端において遺伝子終止(GE)シグナルで終わる。特にタンパク質(たとえばC)がユニークmRNAからではなく付加ORFから発現する場合、PIV遺伝子という用語には、”転写オープンリーディングフレーム”またはORFと記載されるものが含まれる。本発明のヒト-ウシキメラPIVを構築するためには、1以上のPIV遺伝子またはゲノムセグメントが全体的または部分的に欠失、挿入または置換されてもよい。これは、部分的または完全な欠失、挿入または置換には、1以上のPIV遺伝子またはゲノムセグメントのいずれかのオープンリーディングフレームおよび/またはシス作用調節配列も含みうることを意味する。”ゲノムセグメント”は、PIVゲノム由来の任意長さの連続ヌクレオチドを意味し、これはORF、遺伝子もしくは遺伝子外領域の部分、またはその組合わせであってもよい。
【0075】
本発明は、HPIVとBPIV3のキメラに基づく弱毒生PIVワクチン候補の開発方法に関する。キメラはcDNAベースのウイルス回収システムにより構築される。cDNAから作製した組換えウイルスは、生物由来のウイルスと同様に独立して複製し、増殖する。本発明の好ましいヒト-ウシキメラPIVワクチン候補は、1以上のBPIV遺伝子またはゲノムセグメントの置換または付加により弱毒化したバックグラウンド中に、1以上のヒトPIV(たとえばHPIV1、HPIV2および/またはHPIV3)の1以上の主要抗原決定因子をもつ。PIVの主要防御抗原はそれらのHNおよびF糖タンパク質であるが、他のタンパク質が防御免疫応答に寄与する可能性もある。
【0076】
したがって本発明は、PIVに対するワクチンとして使用するために野生型または変異型の親ウイルスを弱毒化する新規な基礎を提供する。その1つは、HPIVとBPIVの間で1以上の遺伝子またはゲノムセグメントを導入することによる宿主域効果に基づく。BPIVとHPIVの間には多数のヌクレオチドおよびアミノ酸配列差があり、これらが宿主域の差に反映される。たとえばHPIVとBPIVの間で各タンパク質についてのアミノ酸同一性%は下記のとおりである:N(86%)、P(65%)、M(93%)、F(83%)、HN(77%)およびL(91%)。宿主域差の例は、アカゲザルにおけるHPIV3の許容増殖性が、同動物における2つの異なるBPIV株の制限複製と比較して高いことである(van Wyke Coelingh et al., 1988、前掲)。HPIVとBPIVの宿主域差の原理については調べるべきことが残されてはいるが、それらは1より多い遺伝子および複数のアミノ酸の差異を伴うと思われる。複数の遺伝子およびおそらくシス作用調節配列が関与し、それぞれが複数のアミノ酸差を伴うことは、復帰によって容易に変化し得ないきわめて広範な弱毒化の基礎となる。これは、1個または数個の点変異により弱毒化される他の弱毒生HPIV3ウイルスについての状況と対照的である。この場合、各変異のいずれかの復帰によって有意の毒性(virulence)再獲得が起きる可能性があり、あるいは単一残基のみが弱毒化を特定する場合は完全な毒性再獲得が起きる。
【0077】
以下に記載する本発明の態様例においては、バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムはHPIV3ゲノムまたはアンチゲノムであり、ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントはBPIV3のKaまたはSF株に由来するN ORFである(アミノ酸配列において99%の関連)。HPIV3バックグラウンドアンチゲノムのN ORFをカウンターパートBPIV3 N ORFで置換することにより、新規な組換えヒト-ウシキメラPIV cDNAクローンが得られる。HPIV3のHPIV3 N ORFをBPIV3 KaまたはSFのもので置換すると、HPIV3 Nのものと約70アミノ酸差(用いる株による)をもつタンパク質が得られる。Nは比較的保存されているタンパク質の1つであり、他のタンパク質、たとえばPを単独で、または組合わせて置換すると、より多数のアミノ酸差が生じるであろう。それぞれが複数のアミノ酸またはヌクレオチドの差異をもたらす複数の遺伝子およびゲノムセグメントの関与は、復帰に対する安定性の高い弱毒化の基礎を提供する。
【0078】
この弱毒化様式は、1以上の点変異により弱毒化する現在のHPIVワクチン候補と著しく対照的である。この場合は各変異の復帰により有意または完全な毒性再獲得を生じる可能性がある。さらに、HPIV中の幾つかの既知の弱毒化点変異により、一般に温度感受性表現型が得られる。温度感受性を伴う弱毒化の問題の1つは、そのウイルスは下気道での複製が過度に制限され、一方、上気道では低い弱毒化状態にあることである。これは、気道内に温度勾配があり、下気道では温度が高く(制限度が高い)、上気道では低い(制限度が低い)ためである。弱毒ウイルスは上気道で複製できるためうっ血、鼻炎、発熱および中耳炎などの合併症が起き、一方、下気道での過度の弱毒化により免疫原性が低下する可能性がある。このように、温度感受性変異のみにより達成された弱毒化は理想的でない可能性がある。これに対し、本発明のヒト-ウシキメラPIVにある宿主域変異は、大部分の場合、温度感受性をもたらさない。したがって本発明により提供される新規なPIV弱毒化法は、他の既知PIVワクチン候補と比較して遺伝的に安定であり、上気道での残留毒性を伴う可能性が少ない。
【0079】
意外にも、N ORF置換を伴うKaおよびSF両方のHPIV3/BPIV3キメラ組換え体が生存可能であった。KaまたはF株BPIVのNタンパク質は、HPIVのJS株とそれぞれ515アミノ酸中70の差をもつ。したがって、このレベルのアミノ酸配列の相異をもつウシNタンパク質がHPIV3 RNAと、または機能性レプリカーゼ/トランスクリプターゼを構成する他のHPIV3タンパク質と効率的に相互作用しうることは、予想外であった。同様に予想外の知見は、KaおよびSFキメラウイルスが細胞培養においてHPIV3またはBPIV3親と同様に効率的に複製したことである。これは、キメラ組換え体がインビトロでの複製を制限する遺伝子不適合を示さなかったことを表す。インビトロでのこの効率的複製という特性は、これによりこの生物体を効率的に作製できるので重要である。
【0080】
同様に意外なのは、以下の研究に基づけば、1つのウシ遺伝子のみをもつKaおよびSF HPIV3/BPIV3キメラ組換え体(cKaおよびcSFと呼ぶ)が、アカゲザル気道における宿主域制限度においてそれらのBPIV3親とほぼ均等であるという所見である。特に、cKaおよびcSFウイルスはアカゲザル気道における宿主域制限度においてHPIV3の複製と比較してそれぞれ約60倍または30倍の複製低下を示した。この所見に基づけば、他のBPIV3遺伝子も本発明のヒト-ウシキメラPIVにおいて目的レベルの宿主域制限をもたらす可能性がある。したがって本発明方法によれば、ワクチン用として選択したヒト-ウシキメラPIVにおいて適切な組合わせで最適レベルの宿主域制限および免疫原性をもたらす一連の弱毒化決定因子が、HPIVおよびBPIV両方のヘテロロガス遺伝子およびゲノムセグメント中に容易に同定される。好ましいワクチンの組合わせにおいては、ヒトにおけるPIV複製のために受け入れられている動物モデル(たとえばハムスターまたはアカゲザル)の下および/または上気道での複製により表される弱毒性を、対応する野生型または変異型の親PIV株の増殖と比較して、全体として少なくとも約2倍、より多くの場合約5倍、10倍または20倍、好ましくは50〜100倍、最高1000倍、またはそれ以上(たとえば感染後3〜8日目に測定)低下させることができる。
【0081】
本発明のヒト-ウシキメラPIVによりもたらされる予想外の性質および利点を確認すると、cKaおよびcSFが両方とも、アカゲザル気道におけるHPIV3攻撃に対して、ヒトPIVの感染および防御に関するこのモデルにおいてこれらのウイルスが示す著しい複製制限度にもかかわらず、高度の防御を誘導した。特に、いずれかのキメラウイルスを予め感染させておくと、上下両方の気道においてrJS攻撃ウイルスの複製に対する高度の抵抗性が誘導された。サルにcKaを感染させると、非接種対照サルと比較して、上気道において約300倍、下気道において約1000倍の野生型HPIV3(rJS)の複製低下により示されるように、高度の防御が誘発された。cSFを感染させたサルは、非接種対照サルと比較して、上気道において約2000倍、下気道において約1000倍の複製低下を示した。cKaまたはcSFが誘発する防御のレベルは、ウシまたはヒトPIV親を予め感染させたサルにみられたものに匹敵した。このように、本発明のヒト-ウシキメラPIV感染によりサルの上および下気道において高度の防御が得られ、両キメラウイルスとも有望なワクチン候補である。他の好ましいワクチン組換え体においては、有用なワクチン候補を得るために、ヒト-ウシキメラPIVの弱毒レベルに対する免疫原活性のバランスをとる。これは一般に、下および/または上気道における攻撃ウイルス(たとえばrJS)の複製が全体として約50〜100倍、100〜500倍、好ましくは約500〜2000倍、最高3000倍またはそれ以上、低下することにより表される。このように、本発明の組換えワクチンウイルスは免疫原性を保持しつつ、同時に複製および増殖の低下を示す。この意外な組合わせの表現型特色は、ワクチン開発にきわめて望ましい。
【0082】
2つの独立したBPIV3株に由来するN遺伝子がアカゲザルに対する弱毒表現型をもたらすという所見は、これが他のBPIV株のN遺伝子の共有する特性であることを示唆する。したがって本発明方法においては、任意のBPIV遺伝子またはゲノムセグメントを単独で、または1以上の他のBPIV遺伝子またはゲノムセグメントと組み合わせて、HPIV配列と結合させ、ワクチンとして使用するのに適した弱毒HPIV3/BPIV3キメラ組換え体を作製することができる。好ましい態様においては、HPIV1、HPIV2およびHPIV3ならびにその変異株を含めたすべてのHPIVが、BPIV遺伝子および/またはゲノムセグメントの弱毒化に有用なレシピエントである。一般に、HPIV3/BPIV3キメラウイルスに含有させるために選択するHPIV遺伝子は、1以上の防御抗原、たとえばHNまたはF糖タンパク質を含む。
【0083】
本発明の他のヒト-ウシキメラPIVは、HPIV1またはHPIV2の防御抗原決定因子を含む。これは、たとえばHPIV1またはHPIV2のHNおよび/またはF遺伝子を余分な遺伝子として弱毒HPIV3/BPIV3キメラ組換え体において発現させることにより達成できる。あるいは、HPIV1またはHPIV2のHNおよび/またはF遺伝子がPIV3中のそれらのカウンターパートと置換したHPIV3/HPIV1またはHPIV3/HPIV2抗原性キメラウイルス(Skiadopoulos et al., 1999a、前掲;Tao et al., 1999、前掲;および米国特許出願09/083,793:1998年5月22日出願;それぞれを本明細書に援用する)を、1以上のヘテロロガス弱毒ウシ遺伝子またはゲノムセグメント(たとえばKaまたはSFのN遺伝子またはゲノムセグメント)に対するレシピエントまたはバックグラウンドウイルスとして使用できる。そのような抗原性キメラウイルスはウシN遺伝子で弱毒化されるが、HPIV1またはHPIV2ウイルスに対する免疫を誘導する。これに関して、PIV3 cDNAレスキュー系を用い、L中に3つの弱毒変異を含むPIV3全長cDNA中のPIV3 HNおよびFオープンリーディングフレーム(ORF)をPIV1のものと交換することにより、キメラPIV1ワクチン候補を作製した。このcDNAから誘導された組換えキメラウイルスをrPIV3-1.cp45Lと表示する(Skiadopoulos et al., 1998、前掲;Tao et al., 1998、前掲;Tao et al., 1999、前掲)。rPIV3-1.cp45Lは、ハムスターにおいて弱毒化され、PIV1攻撃に対して高度の抵抗性を誘導した。15のcp45変異中12を含み(すなわちHNおよびFにおける変異を除く)、ハムスターの上および下気道で高度に弱毒化されるrPIV3-1cp45と表示される組換えキメラウイルスも作製された(Skiadopoulos et al., 1999a、前掲)。
【0084】
さらに他のHPIV/BPIVキメラ組換え体は、任意の組合わせの2以上のBPIV遺伝子またはゲノムセグメント(選択した遺伝子以外のすべてのBPIVゲノムに及び、それらを含む)、またはヒトHPIV1、HPIV2もしくはHPIV3ウイルスに由来するHNまたはFゲノムセグメントから選択される抗原決定因子を含む。本発明のさらに他の態様は、他の動物のPIV(たとえばネズミPIV1、イヌSV5 PIV2ウイルス、または他のトリもしくは哺乳動物PIV)に由来する弱毒遺伝子をHPIV主鎖と組み合わせて含むか、あるいはヒトHPIV1、HPIV2および/またはHPIV3に由来するキメラHPIV主鎖を含む、ヒト-ウシキメラPIVに関する。
【0085】
本発明の他の詳細な態様においては、ヒト-ウシキメラPIVをヘテロロガス病原体(他のPIVおよび非PIVウイルスならびに非ウイルス病原体を含む)の防御抗原として使用する。これらの態様において、ウシ-ヒトキメラゲノムまたはアンチゲノムは、1以上のヘテロロガス病原体の1以上の抗原決定因子をコードする1以上のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントと結合した、部分または完全PIV”ベクターゲノムまたはアンチゲノム”を含む(たとえば米国仮特許出願60/170,195:Murphyらにより1999年12月10日出願、参照;本明細書に援用する)。これに関してヘテロロガス病原体はヘテロロガスPIVであってよく、ヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントは、1以上のPIV N、P、C、D、V、M、F、SH(適切な場合)、HNおよび/またはLタンパク質、ならびにタンパク質ドメイン、フラグメント、および免疫原領域またはエピトープをコードするように選択できる。こうして構築したPIVベクターワクチンは多重特異的免疫応答を誘発することができ、他のワクチン製剤と同時に、または協調投与プロトコルで投与できる。
【0086】
本発明の態様例において、ヒト-ウシキメラPIVは部分または完全HPIVゲノムまたはアンチゲノムであるベクターゲノムまたはアンチゲノムを含むことができ、これを1以上のヘテロロガスPIV(HPIV1、HPIV2またはHPIV3から選択されるヘテロロガスHPIVが含まれる)の抗原決定因子をコードする1以上のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントと結合させるか、あるいはそれらを含むように修飾する。より詳細な態様において、ベクターゲノムまたはアンチゲノムはHPIV3ゲノムまたはアンチゲノムであり、抗原決定因子をコードするヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントは1以上のヘテロロガスHPIVのものである。一般にキメラゲノムまたはアンチゲノムは、弱毒化を特定するBPIVの1以上の遺伝子またはゲノムセグメントを含む。
【0087】
本発明の態様例において、ヒト-ウシキメラPIVは、1以上のHNおよび/またはF糖タンパク質、または抗原性ドメイン、フラグメントもしくはエピトープをコードする1以上のHPIV1またはHPIV2遺伝子またはゲノムセグメントを、部分または完全HPIV3ベクターゲノムまたはアンチゲノム中に含む。より詳細な態様においては、HNおよびF糖タンパク質をコードする両HPIV1遺伝子がカウンターパートHPIV3 HNおよびF遺伝子を置換して、キメラHPIV3-1ベクターゲノムまたはアンチゲノムを形成する。そのような組換え構築体を用いて、ワクチンウイルスを直接に作製するか、あるいはさらに1以上の抗原決定因子をコードする1以上の遺伝子または遺伝子セグメントの付加または取込みにより修飾することができる。ワクチンウイルス作製のためのそのような構築体は一般に、弱毒化を特定するBPIVの1以上のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメント、たとえば弱毒BPIVタンパク質(たとえばN)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。本発明のあるヒト-ウシキメラPIVは、HPIV2に特異的なワクチンを製造するためのベクターとして使用できる。これは、たとえばHPIV2 HN遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む転写ユニットが、キメラHPIV3-1ベクターゲノムまたはアンチゲノムに付加され、または取り込まれ、この構築体がBPIV遺伝子またはゲノムセグメントの取込みにより弱毒化されたものである。
【0088】
関連する本発明の態様において、ベクターゲノムまたはアンチゲノムは部分または完全BPIVゲノムまたはアンチゲノムであり、抗原決定因子をコードするヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントは1以上のHPIVである。一般に決定因子はHPIV1、HPIV2またはHPIV3のHNおよびF糖タンパク質から選択されるが、これらおよび他の抗原性タンパク質の抗原性ドメイン、フラグメントおよびエピトープも有用である。特定の態様においては、HPIV2の1以上の抗原決定因子をコードする1以上の遺伝子または遺伝子セグメントを、部分または完全BPIVベクターゲノムまたはアンチゲノム中において付加または置換する。あるいは、複数のHPIVの抗原決定因子をコードする複数のヘテロロガス遺伝子またはゲノムセグメントを、部分または完全BPIVベクターゲノムまたはアンチゲノムに付加し、または取り込ませることができる。
【0089】
本発明のさらに他の態様においては、一連の非PIV病原体に対するベクターとしてのヒト-ウシキメラPIVが提供される(たとえば米国仮特許出願60/170,195:Murphyらにより1999年12月10日出願、参照;本明細書に援用する)。本発明のこれらの態様に使用するためのベクターゲノムまたはアンチゲノムは、部分または完全BPIVまたはHPIVゲノムまたはアンチゲノムであり、ヘテロロガス病原体は麻疹ウイルス、サブグループAおよびサブグループB呼吸系発疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス、1型および2型ヒト免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、狂犬病ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、フィロウイルス、ブニヤウイルス、フラビウイルス、アルファウイルスおよびインフルエンザウイルスから選択できる。
【0090】
たとえば、本発明のヒト-ウシキメラPIVの構築のためのHPIVまたはBPIVベクターゲノムまたはアンチゲノムは、麻疹ウイルスHAおよびFタンパク質、またはその抗原性ドメイン、フラグメントおよびエピトープから選択されるヘテロロガス抗原決定因子を取り込むことができる。一例においては、麻疹ウイルスHA遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む転写ユニットを、BPIVまたはHPIV3ベクターゲノムまたはアンチゲノムに付加し、または取り込ませる。
【0091】
あるいは本発明のウシ-ヒトキメラPIVは、呼吸系発疹ウイルス(RSV)Fおよび/またはG糖タンパク質、またはその抗原性ドメインもしくはエピトープをコードする1以上の遺伝子またはゲノムフラグメントの取込みにより、RSV由来のヘテロロガス抗原決定因子取込みのためのベクターとして使用できる。これに関して、RSV cDNAのクローニングその他の記載は下記に示されている:米国仮特許出願60/007,083:1995年9月27日出願;米国特許出願08/720,132:1996年9月27日出願;米国仮特許出願60/021,773:1996年7月15日出願;米国仮特許出願60/046,141:1997年5月9日出願;米国仮特許出願60/047,634:1997年5月23日出願;米国特許出願08/892,403:1997年7月15日出願(WO98/02530に対応);米国特許出願09/291,894:1999年4月13日出願;米国仮特許出願60/129,006:1999年4月13日出願;Collins et al., 1995、前掲;Bukreyev et al., J. Virol., 70:6634-6641, 1996;Juhasz et al., 1997、前掲;Durbin et al., 1997a、前掲;He et al., 1997、前掲;Baron et al., 1997、前掲;Whitehead et al., 1998a、前掲;Whitehead et al., 1998b、前掲;Jin et al., 1998、前掲;およびWhitehead et al., 1999、前掲;ならびにBukreyev et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 96:2367-2372, 1999;それぞれを本明細書に援用する。
【0092】
本発明のこの態様によれば、ヘテロロガスPIVまたは非PIV病原体に由来する少なくとも1つの抗原決定因子を含むヒト-ウシキメラPIVが提供される。たとえばHPIV3の1以上の各遺伝子またはゲノムセグメントをヒトRSV由来のカウンターパート遺伝子またはゲノムセグメントで置換するか、あるいはRSV遺伝子またはゲノムセグメントを過剰遺伝子として挿入または付加できる。あるいは選択したヘテロロガスゲノムセグメント(たとえばRSV糖タンパク質の細胞質テイル、貫膜ドメインまたはエクトドメインをコードするもの)でHPIV3中の同一遺伝子またはHPIV3中の異なる遺伝子のカウンターパートゲノムセグメントを置換するか、あるいはこれをHPIV3ゲノムまたはアンチゲノムの非コード配列中に付加して、キメラPIV-RSV糖タンパク質を得る。1態様においては、ヒトRSVのF遺伝子に由来するゲノムセグメントでカウンターパートHPIVゲノムセグメントを置換して、キメラタンパク質(たとえばPIVの細胞質テイルおよび/または貫膜ドメインがRSVのエクトドメインに融合したもの)をコードする構築体にすると、新規な弱毒ウイルス、および/またはPIVとRSVの両方に対して免疫原性である多価ワクチンが得られる。
【0093】
前記のように、本発明のヒト-ウシキメラPIVにおいて、キメラウイルスの弱毒性を増大または低下させ、あるいは他の形で表現型を変化させる追加変異を導入することにより、弱毒表現型を調節することが望ましい場合がしばしばある。cDNAから組換えPIVを作製するための、また本発明の補足態様として本明細書に示す全範囲の変異およびヌクレオチド修飾体を作製および試験するための材料および方法の詳細な説明は、たとえば下記に示される:Durbin et al., 1997a、前掲;米国特許出願09/083,793:1998年5月22日出願;米国仮特許出願60/047,575:1997年5月23日出願(WO98/53078に対応);および米国仮特許出願60/059,385:1997年9月19日出願;それぞれを本明細書に援用する。特に、これらの文献にはPIVを変異、単離および解明して弱毒変異株(たとえば温度感受性(ts)、低温継代(cp)、低温適応性(ca)、縮小プラーク(sp)および宿主域制限(hr)変異株)を得るための、また弱毒表現型を特定する遺伝子変化を確認するための方法および手順が記載されている。これらの方法に関して、前記文献には生物由来および組換え作製による弱毒ヒトPIVの複製、免疫原性、遺伝子の安定性および防御効率を、受け入れられているモデル系(ネズミおよび非ヒト霊長類モデル系を含む)において判定するための方法が詳述されている。さらにこれらの文献には、PIV感染症の予防および治療のための一価および二価ワクチンを含めた免疫原組成物を開発および試験するための一般法が記載されている。PIVゲノムまたはアンチゲノムをコードするcDNAを構築し、必須PIVタンパク質と同時発現させることにより、感染性組換えPIVを作製する方法も前記文献に記載されている。これには、下記の感染症PIVウイルスクローンの作製のために利用できるプラスミド例の記載が含まれる:p3/7(131)(ATCC97990);p3/7(131)2G(ATCC97889);およびp218(131)(ATCC97991);それぞれブダペスト条約の規定の下でAmerican Type Culture Collection(ATCC)(10801 University Boulevard, Manassas, Verginia 20110-2209, U.S.A.)に寄託され、前記寄託番号を得た。
【0094】
前記に引用した文献には、生物由来PIV変異体、たとえば低温継代(cp)、低温適応性(ca)、宿主域制限(hr)、縮小プラーク(sp)および/または温度感受性(ts)変異体(たとえばJS HPIV3 cp45変異株)に同定された表現型特異的変異を含むように修飾された感染性組換えPIVの構築および評価方法が示されている。補助マーカー表現型のない他の変異を減衰させることができる。これらの変異体に同定される変異を容易にヒト-ウシキメラPIVに移入することができる。一例においては、1以上の弱毒変異がポリメラーゼLタンパク質において、たとえばJS cp45のTyr942、Leu992、またはThr1558に対応する位置において起きる。好ましくは、これらの変異を本発明のヒト-ウシキメラPIV中に、生物変異体に同定された同一または保存アミノ酸置換により取り込ませる。たとえば、PIV組換え体はTyr942がHisにより置換され、Leu992がPheにより置換され、および/またはThr1558がIleにより置換された変異を取り込むことができる。これらの置換アミノ酸に対する保存的な置換も、目的とする変異表現型の達成に有用である。
【0095】
生物由来PIV変異体から移入した他の変異例には、Nタンパク質における1以上の変異が含まれ、これにはJS cp45の残基Val96またはSer389に対応する位置における特異的変異が含まれる。より詳細な態様においては、これらの変異はVal96からAlaへ、もしくはSer389からAlaへ、またはこれらに対する保存的な置換として表される。本発明の組換えPIVにおいては、Cタンパク質におけるアミノ酸置換、たとえばJS cp45のIle96に対応する位置の変異、好ましくはIle96からThrへの同一または保存的置換も有用である。生物由来PIV変異体から移入した他の変異例には、M遺伝子における1つの変異、たとえばJS cp45のPro199における変異が含まれ、あるいはさらにFタンパク質における変異、たとえばJS cp45から移入した、残基Ile420またはAla450に対応する位置の変異、好ましくはIle420からValもしくはAla450からThrへのアミノ酸置換またはそれに対する保存的な置換が含まれる。本発明に含まれる他のヒト-ウシキメラPIVは、HNタンパク質における1以上のアミノ酸置換により移入され、これはたとえば後記において、JSの残基Val384に対応する位置における変異、好ましくはVal384からAlaへの置換により表される変異を移入する組換えPIVにより例示される。
【0096】
本発明のこの態様におけるさらに他の例には、PIVゲノムまたはアンチゲノムの非コード部分、たとえば3'リーダー配列に1以上の変異を取り込んだヒト-ウシキメラPIVが含まれる。これに関する変異の例は、組換えウイルスの3'リーダーおいてJS cp45のヌクレオチド23、24、28もしくは45に対応する位置に工学的に作製できる。さらに他の変異例は、N遺伝子開始配列において、たとえばN遺伝子開始配列中の1以上のヌクレオチド、たとえばJS cp45のヌクレオチド62に対応する位置のヌクレオチドを交換することにより工学的に作製できる。より詳細な態様において、ヒト-ウシキメラPIVはヌクレオチド23においてTがCに、ヌクレオチド24においてCがTに、ヌクレオチド28においてGがTに、および/またはヌクレオチド45においてTがAに交換される。遺伝子外配列におけるさらに他の変異は、たとえばN遺伝子開始配列中のJSのヌクレオチド62に対応する位置におけるAからTへの交換である。
【0097】
本発明のヒト-ウシキメラPIVにおいて工学的に作製できるこれらの変異例は、rcp45、rcp45 L、rcp45 F、rcp45 M、rcp45 HN、rcp45 C、rcp45 F、rcp45 3'N、3'NL、およびrcp45 3'NCMFHNと表示される組換えPIVクローンにより表されるように、組換えPIVにおいて工学的に作製および回収に成功した(Durbin et al., 1997a、前掲;Skiadopoulos et al., J. Virol., 73:1374-381, 1999b;米国特許出願09/083,793:1998年5月22日出願;米国仮特許出願60/047,575:1997年5月23日出願(WO98/53078に対応);および米国仮特許出願60/059,385:1997年9月19日出願;それぞれを本明細書に援用する)。さらに前記文献には、たとえば部分HPIV3バックグラウンドゲノムまたはアンチゲノム中へ置換したHPIV1のHNおよびF遺伝子をもち、これがさらにHPIV3 JS cp45中に同定される1以上の弱毒変異をもつように修飾されたキメラPIVの構築が記載されている。そのようなキメラ組換え体の1つには、cp45のL遺伝子中に同定されるすべての弱毒変異が取り込まれている。それ以来、ヘテロロガス(HPIV)HNおよびF遺伝子以外のcp45変異すべてをHPIV3-1組換え体に取り込ませて弱毒キメラワクチン候補を作製しうることが示された。
【0098】
JS cp45その他の生物由来PIV変異体から多数の弱毒変異の”メニュー”が得られ、そのそれぞれを、C、Dおよび/またはVの欠失またはノックアウト変異をもつ組換えPIV中において、弱毒、免疫原性および遺伝子安定性のレベルの調節のための他の任意の変異と組み合わせることができる。これに関して、本発明の多くの組換えPIVが1以上、好ましくは2以上の生物由来PIV変異体からの変異、たとえばJS cp45中に同定される1つの変異または組み合わせ変異を含む。本発明の好ましいPIV組換え体は、JS cp45その他の生物由来変異体PIV株にある複数(最高ではすべての)の変異をもつ。好ましくは、これらの変異は各変異を特定するコドン中の多重ヌクレオチド置換により、ヒト-ウシキメラPIVにおける復帰に対して安定化される。
【0099】
本発明のヒト-ウシキメラPIVに取り込ませることができる他の変異は、ヘテロロガスPIV中またはより関連性の低い非セグメント化マイナス鎖RNAウイルス中に同定される変異、たとえば弱毒変異である。特に、あるマイナス鎖RNAウイルスに同定される弱毒その他の目的変異を、ヒト-ウシキメラPIVのゲノムまたはアンチゲノム中の対応する位置に”伝達”すること、たとえば変異誘発により導入することができる。すなわち、あるヘテロロガスマイナス鎖RNAウイルス中の目的変異を、PIVレシピエント(たとえばそれぞれウシまたはヒトPIV)に”伝達”する。これは、ヘテロロガスウイルス中の変異をマッピングし、こうして配列アラインメントによりレシピエントRSV中の対応する部位を同定し、PIV中の天然配列を変異表現型に変異させる(同一または保存的変異により)ことによる;PCT/US00/09695:2000年4月12日出願;およびその優先権:米国仮特許出願60/129,006:1999年4月13日出願;本明細書に援用する。この開示内容が教示するように、対象変異部位においてヘテロロガス変異ウイルス中に同定される変化に保存的に対応する改変をコードするように、レシピエントゲノムまたはアンチゲノムを修飾することが好ましい。たとえばあるアミノ酸置換が変異ウイルスにおいて対応する野生型配列と比較して変異部位を示す場合、組換えウイルス中の対応する残基において類似の置換を工学的に行う。好ましくは、この置換は変異ウイルスタンパク質中にある置換残基と同一または保存的アミノ酸による。しかし、変異部位の天然アミノ酸残基を変異タンパク質中の置換残基に対して非保存的に変化させることもできる(たとえば野生型残基の機能に妨害または損傷を与える他の任意のアミノ酸の使用による)。
【0100】
変異例を同定して本発明のヒト-ウシキメラPIVに伝達することができるマイナス鎖RNAウイルスには、特に他のPIV(たとえばHPIV1、HPIV2、HPIV3、HPIV4A、HPIV4BおよびBPIV3)、RSV、センダイウイルス(SeV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、サルウイルス5(SV5)、麻疹ウイルス(MeV)、牛疫ウイルス、イヌジステンパーウイルス(CDV)、狂犬病ウイルス(RaV)および水疱性口炎ウイルス(VSV)が含まれる。
【0101】
本発明に使用するための多様な変異例が前記文献に開示されている。これには、RSV Lタンパク質の521位におけるフェニルアラニンのアミノ酸置換が含まれるが、これに限定されない。これは、HPIV3 Lタンパク質の456位におけるフェニルアラニン置換に対応し、したがってこれ(または保存的に関連するアミノ酸)に伝達できる。欠失または挿入を表す変異の場合、これらを対応する欠失または挿入として、組換えウイルスのバックグラウンドゲノムもしくはアンチゲノム中、またはそれに取り込まれたヘテロロガス遺伝子もしくはゲノムセグメント中へ導入できる。ただし、欠失または挿入されるタンパク質の個々のサイズおよびアミノ酸配列は異なる可能性がある。
【0102】
本発明に含まれるさらに他のヒト-ウシキメラPIVワクチン候補は、センダイウイルス(SeV)中に同定される弱毒変異に類似の変異をコードするようにキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムを修飾することにより得られる。一例において、弱毒変異はSeVのCタンパク質の170位におけるフェニルアラニンのアミノ酸置換を含む。ヘテロロガスSeV変異体の弱毒変異を表す変化に保存的に対応する保存残基の改変をコードするように、PIVゲノムまたはアンチゲノムを修飾する。1態様においては、変異は組換えHPIV3タンパク質内に取り込まれ、HPIV3の164位におけるフェニルアラニンのアミノ酸置換を含む。
【0103】
本発明のキメラヒト-ウシPIVの対応する部位において種々のターゲットタンパク質に、あるマイナス鎖RNAウイルスからの弱毒変異を導入することができる。Mononegavirales目全体をとおして5つのターゲットタンパク質が厳密に保存されており、特異的領域またはドメインに関して中ないし高度の配列同一性を示す。特に、この目のすべての既知メンバーが5つのタンパク質の相同コンステレーションを共有する:ヌクレオキャプシドタンパク質(N)、ヌクレオキャプシドリンタンパク質(P)、非グリコシル化マトリックス(M)タンパク質、少なくとも1つの表面糖タンパク質(HN、F、HまたはG)およびラージポリメラーゼタンパク質(L)。これらのタンパク質はすべて、ヘテロロガスネズミウイルスにおいて同定された弱毒変異部位に対応する部位において組換えウイルスの部分に保存されている1以上の残基を改変することにより、弱毒変異を取り込ませるのに有用なターゲットとなる。
【0104】
これに関して、ヘテロロガス変異を本発明のキメラヒト-ウシPIVに伝達する方法は、第1のマイナス鎖ウイルス中の弱毒変異を同定することに基づく。変異部位を表す対象アミノ酸位置における変異配列と野生型配列の対比により同定したこの変異は、キメラウイルス中(バックグラウンドゲノムもしくはアンチゲノム中、またはそれにおいて付加もしくは置換したヘテロロガス遺伝子もしくは遺伝子セグメント中)の組換え弱毒化のターゲットである相同タンパク質に対して配列比較するための指標となる。弱毒変異はこれまでに既知であるか、あるいは生物由来の変異ウイルスを作製および解明するために適用される変異誘発法および復帰遺伝学的方法により同定できる。あるいは目的とする弱毒変異をde novoで、たとえば部位特異的方法および通常のスクリーニング法により作製および解明することができる。
【0105】
マイナス鎖RNA中に同定されるそれぞれの弱毒変異は、1以上のヘテロロガスマイナス鎖ウイルス中の相同タンパク質に対する配列比較のための指標となる。これに関して、既存の配列アラインメントを分析するか、あるいは通常の配列アラインメント法を利用して、弱毒変異をもつタンパク質と弱毒化のためのターゲット組換えウイルスである異なるウイルスの相同タンパク質との間で分析のための配列比較を行い、対応するタンパク質領域およびアミノ酸位置を同定することができる。弱毒変異を表す1以上の残基がターゲットヒト-ウシキメラウイルスタンパク質中の対応するアミノ酸位置で保存されている”野生型”同一残基から変化したものである場合、ターゲットウイルスタンパク質中の保存残基のアミノ酸欠失、置換または挿入をコードするようにターゲットウイルスのゲノムまたはアンチゲノムを組換え修飾し、これにより組換えウイルスにおける類似の弱毒表現型をもたらすことができる。
【0106】
弱毒組換えマイナス鎖ウイルスを構築するためのこの合理的な設計方法においては、あるマイナス鎖RNAウイルスにおける弱毒変異を表すアミノ酸位置の野生型同一残基を、ターゲットであるヒト-ウシキメラウイルスタンパク質中の対応するアミノ酸位置において厳密に(または保存的置換により)保存することができる。たとえばターゲットウイルスタンパク質中の対応する残基は、ヘテロロガス変異ウイルスにおける弱毒変異により変化していることが認められた野生型残基と同一であってもよく、あるいはアミノ酸側鎖基の構造および機能に関して保存的に関連をもつものであってもよい。いずれの場合も、本発明方法に従ってアミノ酸欠失、置換または挿入をコードするようにターゲットウイルスのゲノムまたはアンチゲノムを組換え修飾して保存残基を改変することにより、組換えウイルスにおいて類似の弱毒化を達成できる。
【0107】
これに関して、ヘテロロガス変異ウイルスにおける弱毒変異を表す変化に保存的に対応する保存残基改変をコードするように、ゲノムまたはアンチゲノムを修飾することが好ましい。たとえば、あるアミノ酸置換が、対応する野生型配列と比較して変異ウイルス中の変異部位を表す場合、組換えウイルス中の対応する残基において工学的に置換処理する。好ましくは、この置換は変異ウイルスタンパク質中に存在する置換残基と同一または保存的である。しかし、変異部位の天然アミノ酸残基を、変異タンパク質中の置換残基に関して非保存的に改変してもよい(たとえば野生型残基の同一性および機能を撹乱または妨害する他のアミノ酸の使用による)。欠失または挿入により表される変異の場合、これらを対応する欠失または挿入として組換えウイルスに伝達することができ、ただし欠失または挿入タンパク質フラグメントの個々のサイズおよびアミノ酸配列は異なってもよい。
【0108】
本発明の別態様においては、こうしてヘテロロガス変異マイナス鎖ウイルスから伝達した変異が、目的とする弱毒表現型に追加または付随して、本発明のヒト-ウシキメラPIVの表現型の多様性をもたらすことができる。たとえば、ウイルスの組換えタンパク質に取り込ませる変異の例は、弱毒表現型に追加または付随して、温度感受性(ts)、低温適応性(ca)、縮小プラーク(sp)もしくは宿主域制限(hr)表現型、または増殖性もしくは免疫原性の変更をもたらすことができる。
【0109】
ヒト-ウシキメラPIVに取り込ませる生物由来PIVおよび他の非セグメント化マイナス鎖RNAウイルスの弱毒変異は自然に起きるものでもよく、あるいは周知の変異誘発法により野生型PIV株に導入されてたものでもよい。たとえば、化学的変異誘発法により不完全弱毒PIV株を作製することができ、この場合、前記に援用した各文献に記載されるように、化学的変異誘発物質を添加した細胞培養物中でウイルスを増殖させ、増殖制限変異を導入するために最適温度以下で継代させたウイルスを選択するか、あるいは細胞培養に際して縮小プラーク(sp)を形成する変異ウイルスを選択する。
【0110】
”生物由来PIV”とは、組換え手段で作製したものでないいかなるPIVをも意味する。生物由来PIVには、たとえばすべての天然PIVが含まれ、これにはたとえば野生型ゲノム配列をもつPIV、および参照野生型配列由来の対立遺伝子または変異ゲノム形態をもつPIV、たとえば弱毒表現型を特定する変異をもつPIVが含まれる。同様に生物由来PIVには、親PIVから特に人為的変異誘発および選択法により誘導したPIV変異体が含まれる。
【0111】
前記のように、十分に弱毒化した生物由来PIVの作製は幾つかの既知方法で達成できる。そのような方法の1つは、部分弱毒化ウイルスを細胞培養に際して漸次低下する温度で継代するものである。たとえば、最適温度以下での継代により部分弱毒変異体を作製する。こうしてcp変異体または他の部分弱毒PIV株を低温での継代培養において効率的に増殖するように適応させる。低温継代におけるこの変異PIV選択により、部分弱毒化した親と比較して誘導株における残留ウイルス毒性が実質的に低下する。
【0112】
あるいは、部分弱毒化した親ウイルスを化学的変異誘発処理して、たとえばts変異を導入するか、または既にtsであるウイルスの場合は弱毒誘発体のts表現型の弱毒性および/または安定性を高めるのに十分な追加ts変異を導入することにより、生物由来PIVに特異的変異を導入できる。ts変異をPIVに導入する手段には、一般に既知の方法で変異誘発物質、たとえば5-フルオロウラシルの存在下にウイルスを複製させることが含まれる。他の変異誘発性化学物質も使用できる。弱毒化はほぼすべてのPIV遺伝子におけるts変異により得られるが、この目的に特に適したものはポリメラーゼ(L)遺伝子であることが認められた。
【0113】
本発明に用いる弱毒PIV例における温度感受性のレベルは、許容温度におけるその複製を幾つかの制限温度における複製と比較することにより測定される。ウイルス複製が許容温度におけるその複製と比較して100倍以上低下する最低温度をシャットオフ温度と呼ぶ。実験動物およびヒトにおいて、PIVの複製と毒性の両方が変異体のシャットオフ温度と相関する。
【0114】
JS cp45 HPIV3変異体は、遺伝学的に比較的安定で、免疫原性が高く、かつ十分に弱毒化されていることが認められた。それらにみられる種々の変異を個々に、または組み合わせて含むこの生物由来および組換えウイルスのヌクレオチド分析により、各レベルの弱毒増大が特定のヌクレオチドおよびアミノ酸置換を伴うことが示された。前記の各文献には、サイレント偶発変異(silent incidental mutation)と、感染性PIVクローンのゲノムまたはアンチゲノムに変異を個々に、または種々の組合わせで導入することによる表現型差に関与する変異とを、ルーティンに識別する方法も示されている。この方法と、親ウイルスおよび誘導ウイルスの表現型特色の評価法とを組み合わせて、弱毒性、温度感受性、低温適応性、縮小プラークサイズ、宿主域制限などの目的特性に関与する変異を同定できる。
【0115】
こうして同定した変異を編集して”メニュー”にし、次いで目的に応じて単独で、または組み合わせて導入し、ヒト-ウシキメラPIVを目的に応じた適切なレベルの弱毒性、免疫原性、弱毒表現型からの復帰などに対する遺伝的抵抗性に調節できる。以上の記載に従って、cDNAから感染性PIVを作製できるので、ヒト-ウシキメラPIV中へ工学的な特異的変更を導入することができる。特に、感染性組換えPIVを、生物由来の弱毒PIV株における特異的変異、たとえばts、ca、attその他の表現型を特定する変異の同定に使用できる。こうして目的変異を同定し、組換えヒト-ウシキメラPIVワクチン株に導入する。cDNAからウイルスを作製できるので、これらの変異を個々に、または選択した種々の組合わせで全長cDNAクローンに取り込ませ、次いで導入した変異を含むレスキュー組換えウイルスの表現型を容易に判定することができる。
【0116】
本発明は、目的表現型に関連する特異的な生物由来変異(たとえばcpまたはts表現型)を同定し、感染性PIVクローンに取り込ませることにより、同定した変異の部位またはそれに近接した部位における他の部位特異的修飾体を提供する。生物由来PIV中に形成される大部分の弱毒変異は単一ヌクレオチド変化であるが、他の”部位特異的修飾”を組換え法により生物由来または組換えPIVに取り込ませることもできる。本明細書中で用いる部位特異的変異には、1〜3、最高で約5〜15個またはそれ以上の改変ヌクレオチド(たとえば野生型PIV、選択した変異PIV株、または変異誘発した組換え親PIVクローンに由来する改変ヌクレオチド)の挿入、置換、欠失または再配列が含まれる。そのような部位特異的変異を、選択した生物由来点変異の部位またはその領域内に取り込ませることができる。あるいはPIVクローン内に他の種々の関係で、たとえばシス作用調節配列、またはタンパク質の活性部位、結合部位、免疫原エピトープなどをコードするヌクレオチド配列の位置またはその付近に、これらの変異を導入できる。部位特異的PIV変異体は一般に目的とする弱毒表現型を保持し、さらに弱毒化に無関係な改変表現型特性、たとえば免疫原性の増強もしくは拡大および/または増殖性の改善を示すことができる。目的とする部位特異的変異体の他の例には、弱毒点変異を特定するコドン中に追加の安定化ヌクレオチド変異を含むように設計した組換えPIVが含まれる。可能ならば、親変異体または組換えPIVクローン中の弱毒アミノ酸変更を特定する2以上のヌクレオチド置換をコドンに導入し、これにより弱毒表現型からの復帰に対する遺伝的抵抗性をもつ生物由来または組換えPIVを得る。他の態様においては、たとえばシス作用調節要素の構築または既存のシス作用調節要素の切除のために、部位特異的ヌクレオチド置換、付加、欠失または再配列を、ターゲットヌクレオチド位置に対して上流または下流に、たとえば1〜3、5〜10、最高15ヌクレオチドまたはそれ以上5'側または3'側に導入する。
【0117】
単一および多重点変異ならびに部位特異的変異のほかに、本明細書に開示するヒト-ウシキメラPIVに対する変更には、1以上の遺伝子またはゲノムセグメントの欠失、挿入、置換または再配列が含まれる。特に有用なものは1以上の遺伝子またはゲノムセグメントの欠失であり、これらの欠失は本発明のヒト-ウシキメラPIVの特性を調節するための目的とする追加表現型効果を与えることが示された。たとえば米国特許出願09/350,821(Durbinらにより1999年7月9日出願)には、開始コドンのコーディング帰属を改変する変異または1以上の停止コドンを導入する変異を取り込ませるようにPIVゲノムまたはアンチゲノムを修飾することにより、1以上のHPIV遺伝子(たとえばC、Dおよび/またはV ORF)の発現を低下または排除するための方法および組成物が記載されている。あるいは、C、Dおよび/またはV ORFのうち1以上を全体的または部分的に欠失させて、対応するタンパク質を部分的もしくは全体的に非機能性にし、またはタンパク質発現全体を撹乱することができる。そのようなC、Dおよび/またはVあるいは他の非必須遺伝子の変異をもつ組換えPIVは、ワクチン開発にきわめて望ましい表現型特性を備えている。たとえばこれらの修飾は下記を含めた1以上の目的表現型変更を特定することができる(i)細胞培養における増殖特性の改変、(ii)哺乳動物の上および/または下気道における弱毒化、(iii)ウイルスプラークサイズの変更、(iv)細胞変性効果の変更、ならびに(v)免疫原性の変更。C ORF発現を欠如するそのような一例である”ノックアウト”変異体は、非ヒト霊長類モデルにおいて、その有益な弱毒表現型をもち、なおかつ野生型HPIV3攻撃に対する防御免疫応答を誘発することができた。
【0118】
したがって、より詳細な本発明の態様においては、ヒト-ウシキメラPIVのC、Dおよび/またはV ORFに、選択した遺伝子またはゲノムセグメントの発現を改変または排除する欠失またはノックアウトを取り込ませる。これはたとえば、選択したコード配列中にフレームシフト変異または終止コドンを導入し、翻訳開始部位を改変し、遺伝子の位置を変更し、またはその発現速度を改変するために上流開始コドンを導入し、表現型を改変するためにGSおよび/またはGE転写シグナルを変更し、あるいはRNA編集部位を修飾することにより達成できる(たとえば増殖性、転写に際しての温度制限など)。より詳細な本発明の態様においては、遺伝子またはそのセグメントを欠失させずに、たとえば複数の翻訳終止コドンを翻訳オープンリーディングフレーム(ORF)に導入し、開始コドンを改変し、または編集部位を修飾することにより、1以上の遺伝子(たとえばC、Dおよび/またはV ORF)の発現を翻訳または転写レベルで排除したヒト-ウシキメラPIVが提供される。これらの形のノックアウトウイルスは、組織培養において増殖速度低下およびプラークサイズ縮小を示す場合がしばしばある。したがってこれらの方法は、主要ウイルス防御抗原の1つではないウイルス遺伝子の発現を排除する、さらに他の新規タイプの弱毒変異体を提供する。あるいはこれに関して、前記に従って欠失変異誘発させてターゲットタンパク質の合成を再生しうる修復変異を効率的に除くことにより、遺伝子またはゲノムセグメントを欠失させずに形成したノックアウトウイルス表現型を作製することができる。C、Dおよび/またはV ORFの欠失およびノックアウト変異体を得るための他の幾つかの遺伝子ノックアウト体を、当技術分野で周知の他の設計および方法により作製することができる(Kretschmer et al., Virology, 216:309-316, 1996;Radecke et al., Virology, 217:418-421, 1996;ならびにKato et al., 1987a、前掲;およびSchneider et al., 1997、前掲;それぞれを本明細書に援用する)。
【0119】
変更の性質に応じて、ヒト-ウシキメラPIVにおけるこれらおよび他のヌクレオチド修飾により、ドナーまたはレシピエントゲノムまたはアンチゲノム中の少数の塩基(たとえば15〜30塩基、最高35〜50塩基、またはそれ以上)、大ブロックのヌクレオチド(たとえば50〜100、100〜300、300〜500、500〜1000塩基)、またはほぼ完全な遺伝子もしくは完全な遺伝子(たとえば1000〜1500ヌクレオチド、1500〜2500ヌクレオチド、2500〜5000ヌクレオチド、5000〜6500ヌクレオチド、またはそれ以上)を改変することができる(すなわち、少数の塩基を変更して免疫原エピトープを挿入または切除し、あるいは小さいゲノムセグメントを変更することができ、一方、遺伝子または大きなゲノムセグメントを付加、置換、欠失または再配列する場合には大ブロックの塩基が関与してもよい)。
【0120】
関連態様において本発明は、生物由来のPIVから組換えPIVクローン中へ移入した補足変異(たとえばcpおよびts変異)を提供し、追加タイプの変異はさらに修飾したPIVクローン中の同一または異なる遺伝子に関連する。PIV遺伝子それぞれを発現レベルに関して選択的に改変し、あるいはその全体または部分において、単独で、または他の目的修飾と組み合わせて、付加、欠失、置換または再配列して、新規ワクチン特性を示すヒト-ウシキメラPIVを得ることができる。したがって、生物由来PIV変異体から移入した弱毒変異のほかに、またはそれと組み合わせて、本発明は感染性PIVクローンの組換え工学的方法に基づいてヒト-ウシキメラPIVを弱毒化または他の形で表現型修飾するための他の一連の方法をも提供する。ターゲット遺伝子またはゲノムセグメント(感染性クローンに取り込ませるためのキメラPIVゲノムまたはアンチゲノム中のドナーまたはレシピエント遺伝子またはゲノム配列を含める)をコードする単離ポリヌクレオチド配列において多様な改変を行うことができる。より具体的には、組換えPIVにおいて目的とする構造および表現型の変更を達成するために、本発明は親ゲノムまたはアンチゲノム由来の選択した1つのヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドを欠失、置換、導入または再配列する修飾、および全遺伝子またはゲノムセグメントを欠失、置換、導入または再配列する変異を、ヒト-ウシキメラPIVクローンに導入できる。
【0121】
したがって、ヒト-ウシキメラPIVにおいて、選択した遺伝子の発現を、たとえば下記により単に改変または排除する修飾が提供される:選択したPIVコード配列への終止コドン導入、あるいはその翻訳開始部位またはRNA編集部位の改変、作動可能な状態で結合したプロモーターに対するPIV遺伝子の位置の変更、発現速度を改変するための上流開始コドン導入、表現型(たとえば増殖性、転写に際しての温度制限など)改変のためのGSおよび/またはGE転写シグナルの修飾(たとえば位置を変更し、既存の配列を改変し、または既存の配列をヘテロロガス配列で置換することにより)、ならびにウイルス複製、選択した遺伝子の転写、または選択したRNAの翻訳における量的および質的変更を特定する他の種々の欠失、置換、付加または再配列。これに関して、組換えPIVにおいて増殖に必須でない任意のPIV遺伝子またはゲノムセグメントを切除その他の形で修飾して、毒性、病原性、免疫原性その他の表現型特性に対する目的効果を得ることができる。コード配列と同様に、非コード、リーダー、トレイラーおよび遺伝子間領域を単に欠失、置換または修飾し、それらの表現型効果をたとえばミニレプリコンおよび組換えPIVによって容易に分析できる。
【0122】
さらに、PIVゲノムまたはアンチゲノムに、ヒト-ウシキメラPIVに導入するための他の多様な遺伝子改変を、単独で、または生物由来の変異PIVから移入した1以上の弱毒変異と一緒に行って、たとえば増殖性、弱毒性、免疫原性、遺伝子安定性を調節し、あるいは他の有利な構造および/または表現型効果を得ることができる。これらの追加タイプの変異も前記に引用した文献に示されており、本発明のヒト-ウシキメラPIVの容易に工学的に導入できる。
【0123】
これらの変更のほかに、ヒト-ウシキメラPIVにおける遺伝子の順序を変更し、PIVゲノムプロモーターをそれのアンチゲノムカウンターパートで交換し、遺伝子の部分を除去または置換し、全体を欠失させることすらできる。配列の異なる修飾または追加修飾は、種々の遺伝子間領域などへのユニーク制限部位挿入などの操作を容易にするために行うことができる。外来配列挿入のための容量を高めるために、非翻訳遺伝子配列を除去することができる。
【0124】
本発明のヒト-ウシキメラPIVに取り込ませる他の変異には、シス作用シグナルに対する変異が含まれ、これはたとえばPIVミニゲノムの変異分析により同定できる。たとえばリーダー、トレイラーおよびフランキング配列の挿入および欠失分析により、ウイルスプロモーターおよび転写シグナルが同定され、種々の程度のRNA複製または転写低下に関連する一連の変異が得られる。これらのシス作用シグナルの飽和変異誘発(これにより各位置を修飾してそれぞれの改変ヌクレオチドにする)によっても、RNAの複製または転写に影響する多くの変異が同定された。これらの変異はいずれも、本発明のヒト-ウシキメラPIVアンチゲノムまたはゲノムに挿入できる。完全アンチゲノムcDNAを用いるトランス作用タンパク質およびシス作用RNA配列の評価および操作は、前記に引用した文献の記載に従ってPIVミニゲノムの使用により補助される。
【0125】
ヒト-ウシキメラPIVにおける追加変異は、ゲノムの3'末端をそれのアンチゲノム由来のカウンターパートで交換するものであり、これに伴ってRNAの複製および転写が変化する。一例においては、特異的PIVタンパク質、たとえば防御HNおよび/またはF抗原の発現レベルは、効率的翻訳と適合するように設計および合成された配列で天然配列を置換することによって高めることができる。これに関して、哺乳動物ウイルスタンパク質の翻訳レベルにおいてはコドン使用が主要因となりうることが示された(Hans et al., Current Biol., 6:315-324, 1996;本明細書に援用する)。主要防御抗原であるPIV HNおよび/またはFタンパク質をコードするmRNAのコドン使用を組換え法により最適化すると、これらの遺伝子の発現が改善される。
【0126】
他の態様例においては、選択したPIV遺伝子の翻訳開始部位を囲む配列(好ましくは-3位のヌクレオチドを含む)を、単独で、または上流開始コドンの導入と組み合わせて修飾して、翻訳のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを特定することにより、PIV遺伝子発現を調節する(Kozak et al., J. Mol. Biol., 196:947-950, 1987)。その代わりに、または本明細書に開示する他のPIV修飾と組み合わせて、選択したいずれかのウイルス遺伝子の転写GSまたはGEシグナルを改変することにより、ヒト-ウシキメラPIVの遺伝子発現を調節できる。他の態様においては、ヒト-ウシキメラPIVの遺伝子発現レベルを転写レベルで修飾する。1態様においては、選択した遺伝子のPIV遺伝子地図中における位置を、よりプロモーターに近い位置またはプロモーターから遠い位置へ変更することができ、これにより遺伝子はそれぞれ、より高い効率または低い効率で発現するであろう。この態様によれば、特定の遺伝子の発現を調節することができ、その結果、相互ポジショナル置換した遺伝子の同等の発現レベル低下により弱毒化される場合が多い野生型レベルと比較して、遺伝子発現が2倍、より一般的には4倍から、最高10倍またはそれ以上にまで低下または増大する。これらおよび他の転位による変更により、たとえばRNA複製に関与する選択したウイルスタンパク質の発現低下による弱毒表現型をもつか、あるいは抗原発現増大など他の望ましい特性をもつ、新規ヒト-ウシキメラPIVが得られる。
【0127】
本発明の感染性ヒト-ウシキメラPIVクローンは、本明細書に開示する方法および組成物に従って工学的に処理して、免疫原性を高め、野生型PIVまたは親PIVによる感染で得られるより高いレベルの防御を誘導することもできる。たとえば、ゲノムまたはアンチゲノムをコードするポリヌクレオチド配列における適切なヌクレオチド交換により、ヘテロロガスPIV株もしくはタイプまたは非PIV源(たとえばRSV)に由来する免疫原エピトープを組換えクローンに付加することができる。あるいは本発明の変異PIVを工学的に処理して、免疫原タンパク質、タンパク質ドメイン、または目的もしくは目的外の免疫反応に関連する特異的タンパク質形態を付加または切除できる(たとえばアミノ酸の挿入、置換または欠失による)。
【0128】
本発明方法において、追加遺伝子またはゲノムセグメントをヒト-ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノム中またはその近くに挿入することができる。これらの遺伝子はレシピエントと共通の制御下にあってもよく、あるいは独立した一組の転写シグナルの制御下にあってもよい。当該遺伝子には、前記で同定したPIV遺伝子、および非PIV遺伝子が含まれる。当該非PIV遺伝子には、サイトカイン(たとえばIL-2〜IL-18、特にIL-2、IL-6、IL-12、IL-18など)、γ-インターフェロン、およびTヘルパー細胞エピトープに富むタンパク質が含まれる。これらの追加タンパク質は、別個のタンパク質として、または既存のPIVタンパク質(たとえばHNまたはF)の過剰コピーとして発現できる。これにより、PIVに対する免疫応答を量的および質的に修飾および改善することができる。
【0129】
ヒト-ウシキメラPIV中のウイルス遺伝子またはゲノムセグメント全体の変更を伴う欠失、挿入、置換その他の変異により、高度に安定なワクチン候補が得られ、これらは免疫抑制された個体の場合、特に重要である。これらの変更の多くは得られるワクチン株を弱毒化し、他は異なるタイプの目的表現型変更を特定する。たとえばアクセサリー(すなわち、インビトロ増殖に必須でない)遺伝子は、宿主免疫と特異的に相互作用するタンパク質をコードするための優れた候補である(たとえばKato et al., 1997a、前掲、参照)。ワクチンウイルス中のそのような遺伝子を切除すると、毒性および病原性が低下し、および/または免疫原性が改善されると期待される。
【0130】
本発明の他の態様においては、単離した感染性PIVを作製するための組成物(たとえば単離ポリヌクレオチド、およびヒト-ウシキメラPIVコードcDNAを取り込ませたベクター)が提供される。これらの組成物および方法を用いて、PIVゲノムまたはアンチゲノム、ヌクレオキャプシド(N)タンパク質、ヌクレオキャプシドリンタンパク質(P)、およびラージ(L)ポリメラーゼタンパク質から、感染性PIVが形成される。本発明の関連態様においては、前記の構造および表現型の変更を組換えPIVに導入して感染性弱毒ワクチンウイルスを得るための組成物および方法が提供される。
【0131】
感染性ヒト-ウシキメラPIVクローン中への前記変異の導入は、多様な周知方法により達成できる。DNAに関して”感染性クローン”とは、感染性ウイルスまたはサブウイルス粒子のゲノムを生成するための鋳型として作用しうるゲノムまたはアンチゲノムRNAに転写できる、合成その他のcDNAまたはその生成物を意味する。たとえば、特定の変異を常法(たとえば部位特異的変異誘発)によりゲノムまたはアンチゲノムのcDNAコピーに導入できる。本明細書に記載する完全アンチゲノムまたはゲノムcDNAの組立てにアンチゲノムまたはゲノムcDNAサブフラグメントを使用することは、各領域を別個に操作でき(小さいcDNAは大きいものより操作しやすい)、次いで容易に組み立てて完全cDNAにすることができるという利点をもつ。このように、完全アンチゲノムもしくはゲノムcDNAまたはそのサブフラグメントを、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発のための鋳型として使用できる。これは、一本鎖ファージミド形の中間体を経る方法、たとえばBio-Rad Laboratories(カリフォルニア州リッチモンド)のMuta-gene(登録商標)キットを用いる方法、または二本鎖プラスミド、たとえばStratagene(カリフォルニア州ラヨラ)のChameleon変異誘発キットを直接に鋳型として用いる方法、あるいはオリゴヌクレオチドプライマーまたは目的変異を含む鋳型を用いるポリメラーゼ連鎖反応による方法であってもよい。次いで変異サブフラグメントを組み立てて、完全なアンチゲノムまたはゲノムcDNAにすることができる。PIVアンチゲノムまたはゲノムcDNAにおける目的変異の形成に使用できる他の多様な変異誘発方法が知られており、採用できる。変異は、単一ヌクレオチド変更から、1以上の遺伝子またはゲノム領域を含む大きなcDNA片の交換にまで及びうる。
【0132】
たとえばある態様においては、Bio-Radから入手できるMuta-geneファージミドインビトロ変異誘発キットを用いて変異を導入する。すなわち、PIVゲノムまたはアンチゲノムの部分をコードするcDNAをプラスミドpTZ18U中へクローニングし、CJ236細胞(Life Technologies)の形質転換に用いる。製造業者の推奨に従ってファージミド調製物を調製する。ゲノムまたはアンチゲノムの目的位置に改変ヌクレオチドを導入することにより、変異誘発用オリゴヌクレオチドを設計する。遺伝子改変したゲノムまたはアンチゲノムフラグメントを含むこのプラスミドを、次いで増幅させ、次いで変異片を全長ゲノムまたはアンチゲノムクローン中へ再導入する。
【0133】
本発明の感染性PIVは、PIVゲノムまたはアンチゲノムRNAをコードする1以上の単離ポリヌクレオチド分子を、転写性複製性ヌクレオキャプシドの形成に必要なウイルスタンパク質をコードする1以上のポリヌクレオチドと、細胞内または無細胞系で同時発現させることにより作製される。同時発現させて感染性PIVを得るのに有用なウイルスタンパク質には、主要ヌクレオキャプシドタンパク質(N)、ヌクレオキャプシドリンタンパク質(P)、ラージ(L)ポリメラーゼタンパク質、融合タンパク質(F)、ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ糖タンパク質(HN)およびマトリックスタンパク質(M)が含まれる。これに関して有用なものは、PIVのC、DおよびV ORFの生成物である。
【0134】
PIVゲノムまたはアンチゲノムをコードするcDNAを、感染性PIVの形成に必要なウイルスタンパク質との細胞内またはインビトロ同時発現用に構築する。”PIVアンチゲノム”とは、子孫PIVゲノムの合成用鋳型として作用する単離したプラス-センスポリヌクレオチド分子を意味する。好ましくは、複製性中間体RNAに対応するPIVゲノムまたはアンチゲノムのプラス-センス形態であるcDNAを構築し、これにより転写性複製性ヌクレオキャプシドの形成に必要なタンパク質をコードする相補配列のプラス-センス転写配列とハイブリダイズする可能性を最小限にする。
【0135】
本発明のある態様において、組換えPIV(rPIV)のゲノムまたはアンチゲノムは、それによりコードされるウイルスまたはサブウイルス粒子を感染性にするのに必要な遺伝子またはその部分を含有しさえすればよい。さらに、これらの遺伝子またはその部分を、1より多いポリヌクレオチド分子により供給することができる。すなわち、別個のヌクレオチド分子からの相補性などにより遺伝子を供給してもよい。他の態様において、PIVゲノムまたはアンチゲノムは、プラスミドまたはヘルパー細胞系により供給されるヘルパーウイルスまたはウイルス機能の関与なしに、ウイルスの増殖、複製および感染に必要なすべての機能をコードする。
【0136】
”組換えPIV”とは、組換え発現系から直接的または間接的に誘導された、あるいはそれから産生したウイルスまたはサブウイルス粒子から増殖した、PIVまたはPIV様のウイルスまたはサブウイルス粒子を意味する。組換え発現系は、下記のものを含む組換え発現ベクターを用いる:少なくともPIV遺伝子発現において調節の役割をもつ1以上の遺伝子要素(たとえばプロモーター)のアセンブリーを含む作動可能な状態で結合した転写ユニット、転写されてPIV RNAになる構造またはコード配列、ならびに適切な転写開始および終止配列。
【0137】
cDNA発現したPIVゲノムまたはアンチゲノムから感染性PIVを作製するためには、ゲノムまたはアンチゲノムを、(i)RNA複製可能なヌクレオキャプシドが形成されるのに必要な、かつ(ii)子孫のヌクレオキャプシドがRNA複製および転写両方の能力をもつのに必要な、PIV N、PおよびLタンパク質と同時発現させる。ゲノムヌクレオキャプシドによる転写は、他のPIVタンパク質を供給し、生産的感染を開始する。あるいは、生産的感染に必要な追加PIVタンパク質を同時発現により供給できる。
【0138】
PIVアンチゲノムまたはゲノムと前記ウイルスタンパク質との同時合成は、インビトロ(無細胞)でたとえば組合わせ転写-翻訳反応させ、次いで細胞中へトランスフェクションすることによっても達成できる。あるいは、アンチゲノムまたはゲノムRNAをインビトロで合成し、そしてPIVタンパク質発現細胞中へトランスフェクションすることもできる。
【0139】
本発明のある態様においては、転写性複製性PIVヌクレオキャプシドの形成に必要なタンパク質をコードする相補配列を1以上のヘルパーウイルスにより供給する。そのようなヘルパーウイルスは野生型または変異体であってよい。好ましくは、ヘルパーウイルスはPIV cDNAによりコードされるウイルスと表現型において区別できる。たとえば、ヘルパーウイルスと免疫反応するが、PIV cDNAによりコードされるウイルスとは反応しないモノクローナル抗体を供給することが望ましい。そのような抗体は中和抗体であってもよい。ある態様においては、抗体をアフィニティークロマトグラフィーに用いてヘルパーウイルスを組換えウイルスから分離できる。そのような抗体の獲得を補助するために、ヘルパーウイルスからの抗原差を与える変異をPIV cDNAの、たとえばHNまたはF糖タンパク質遺伝子に導入してもよい。
【0140】
本発明の他の態様においては、N、P、Lその他の目的とするPIVタンパク質が1以上の非ウイルス性発現ベクターによりコードされる。これはゲノムまたはアンチゲノムをコードするものと同一でも別個でもよい。所望により追加タンパク質を含有させてもよく、これらはそれぞれ、それ自身のベクターによりコードされるか、あるいはN、P、Lその他のPIVタンパク質のうち1以上をコードするベクターまたは完全ゲノムもしくはアンチゲノムによりコードされる。トランスフェクションしたプラスミドからのゲノムまたはアンチゲノムおよびタンパク質の発現は、T7 RNAポリメラーゼに対するプロモーターの制御下にある各cDNAにより達成でき、T7 RNAポリメラーゼはそれに対する発現系、たとえばT7 RNAポリメラーゼを発現するワクシニアウイルスMVA株の感染、トランスフェクションまたはトランスダクションにより供給される(Wyatt et al., Virology, 210:202-205, 1995;その全体を本明細書に援用する)。ウイルスタンパク質および/またはT7 RNAポリメラーゼは、形質転換した哺乳動物細胞により、または予め形成したmRNAもしくはタンパク質のトランスフェクションにより供給することもできる。
【0141】
本発明に使用するPIVアンチゲノムは、たとえば集合すると完全アンチゲノムとなるクローン化cDNAセグメントを、PIV mRNAまたはゲノムRNAの逆転写コピーのポリメラーゼ連鎖反応(PCR;たとえばUSP4,683,195および4,683,202;ならびにPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications, Innis et al., 編、Academic Press, サンディエゴ、1990;それぞれの全体を本明細書に援用する)などにより組み立てることによって構築できる。たとえば、適切なプロモーター(たとえばT7 RNAポリメラーゼプロモーター)からアンチゲノムの左手側末端を含有するcDNAを含む第1構築体を形成し、適切な発現ベクター、たとえばプラスミド、コスミド、ファージまたはDNAウイルスベクター中に組み立てる。変異誘発により、および/または組み立てを容易にするように設計したユニーク制限部位を含む合成ポリリンカーの挿入により、ベクターを修飾してもよい。調製を容易にするために、N、P、Lその他の目的PIVタンパク質を1以上の別個のベクター中に組み立てることもできる。アンチゲノムプラスミドの右手側末端に、所望により追加配列、たとえばフランキングリボザイムおよび縦列T7転写ターミネーターが含まれてもよい。リボザイムはハンマーヘッドタイプのものであってもよく(たとえばGrosfeld et al., J. Virol., 69:5677-5686, 1995)、これにより単一の非ウイルスヌクレオチドを含む3'末端が得られる。あるいはリボザイムは他の適切な任意のリボザイム、たとえば肝炎デルタウイルスのものであってもよく(Perrotta et al., Nature, 350:434-436, 1991;その全体を本明細書に援用する)、これにより非PIVヌクレオチドを含まない3'末端が得られる。次いで左手側末端と右手側末端を共通の制限部位により結合させる。
【0142】
cDNA構築の途中または後で、PIVゲノムまたはアンチゲノム中において多様なヌクレオチド挿入、欠失および再配列を行うことができる。たとえば特定の目的ヌクレオチド配列を合成し、好都合な制限酵素部位を利用してcDNA中の適切な領域に挿入することができる。あるいは、部位特異的変異誘発、アラニンスキャニング、PCR変異誘発などの技術、または当技術分野で周知の他の技術を用いて、cDNAに変異を導入することができる。
【0143】
ゲノムまたはアンチゲノムをコードするcDNAを構築するための他の手段には、改良PCR条件を用いる逆転写PCR(たとえばCheng et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91:5695-5699, 1994に記載;本明細書に援用する)が含まれ、これによりサブユニットcDNA成分の数は1または2片程度に減る。他の態様においては、異なるプロモーター(たとえばT3、SP6)または異なるリボザイム(たとえば肝炎デルタウイルス)を使用できる。大サイズのゲノムまたはアンチゲノムをより良く収容するために、異なるDNAベクター(たとえばコスミド)を増殖に使用できる。
【0144】
生産的PIV感染を支持しうる細胞、たとえばHEp-2、FRhL-DBS2、LLC-MK2、MRC-5およびVero細胞中へのトランスフェクション、エレクトロポレーション、機械的挿入、トランスダクションなどにより、ゲノムまたはアンチゲノムをコードする単離ポリヌクレオチド(たとえばcDNA)を適切な宿主細胞に挿入できる。たとえば下記の方法で、培養細胞中への単離ポリヌクレオチド配列のトランスフェクションを行うことができる:リン酸カルシウム仲介トランスフェクション(Wigler et al., Cell, 14:725, 1978;Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics, 7:603, 1981;Graham and Van der Eb, Virology, 52:456, 1973)、エレクトロポレーション(Neumann et al., EMBO J., 1:841-845, 1982)、DEAE-デキストラン仲介トランスフェクション(Ausubel et al.編、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons社、ニューヨーク、1987)、カチオン脂質仲介トランスフェクション(Hawley-Nelson et al., Focus, 15:73-79, 1993)または市販のトランスフェクション試薬、たとえばLipofectACE(登録商標)(Life Technologies、メリーランド州ガイザースバーグ)など(以上の各文献の全体を本明細書に援用する)。
【0145】
前記のように、本発明のある態様においては、N、P、Lその他の目的PIVタンパク質が、ゲノムまたはアンチゲノムをコードするものと表現型の識別可能な1以上のヘルパーウイルスによりコードされる。N、P、Lその他の目的PIVタンパク質が1以上の発現ベクターによりコードされてもよく、これらはゲノムまたはアンチゲノムをコードするものと同一または別個のもの、およびその種々の組合わせであってもよい。所望により、それぞれがそれ自身のベクターによりコードされるか、あるいは1以上のN、P、Lその他の目的PIVタンパク質をコードするベクター、または完全ゲノムもしくはアンチゲノムによりコードされる追加タンパク質を含有させてもよい。
【0146】
感染性PIVクローンの提供により、本発明はPIVゲノム(またはアンチゲノム)に広範な改変を組換え形成して、目的とする表現型変更を特定する一定の変異体を得ることができる。”感染性クローン”とは、感染性ウイルスまたはサブウイルス粒子のゲノムを生成するための鋳型として作用しうるゲノムまたはアンチゲノムRNAに転写できる、感染性ウイルス粒子に直接に取り込まれうるcDNA、またはその生成物である合成その他のRNAを意味する。前記のように、多様な常法(たとえば部位特異的変異誘発)によりゲノムまたはアンチゲノムのcDNAコピーに一定の変異を導入できる。前記のように、完全なゲノムまたはアンチゲノムcDNAの組立てにゲノムまたはアンチゲノムcDNAのサブフラグメントを使用することは、各領域を別個に操作でき(小さいcDNAは大きいものより操作しやすい)、次いで容易に組み立てて完全cDNAにすることができるという利点をもつ。このように、完全アンチゲノムもしくはゲノムcDNAまたはそのサブフラグメントを、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発のための鋳型として使用できる。これは、一本鎖ファージミド形の中間体を経る方法、たとえばBio-Rad Laboratories(カリフォルニア州リッチモンド)のMUTA-gen(登録商標)キットを用いる方法、または二本鎖プラスミド、たとえばStratagene(カリフォルニア州ラヨラ)のChameleon(登録商標)変異誘発キットを直接に鋳型として用いる方法、あるいはオリゴヌクレオチドプライマーまたは目的変異を含む鋳型を用いるポリメラーゼ連鎖反応による方法であってもよい。次いで変異サブフラグメントを組み立てて、完全アンチゲノムまたはゲノムcDNAにすることができる。本発明のPIVアンチゲノムまたはゲノムcDNAにおける目的変異の形成に使用できる他の多様な変異誘発方法が知られており、ルーティンに適用できる。
【0147】
たとえばある態様においては、Bio-Rad Laboratoriesから入手できるMUTA-geneファージミドインビトロ変異誘発キットを用いて変異を導入する。すなわち、PIVゲノムまたはアンチゲノムの部分をコードするcDNAをプラスミドpTZ18U中へクローニングし、CJ236細胞(Life Technologies)の形質転換に用いる。製造業者の推奨に従ってファージミド調製物を調製する。ゲノムまたはアンチゲノムの目的位置に改変ヌクレオチドを導入することにより、変異誘発用オリゴヌクレオチドを設計する。遺伝子改変したゲノムまたはアンチゲノムフラグメントを含むこのプラスミドを、次いで増幅させる。
【0148】
変異は、単一ヌクレオチド変更から、1以上の遺伝子またはゲノムセグメントを含有する大きなcDNAセグメントの導入、欠失または置換にまで及びうる。ゲノムセグメントは、構造ドメインおよび/または機能ドメイン、たとえばタンパク質の細胞質、貫膜またはエクトドメイン、活性部位、たとえば種々のタンパク質との結合その他の生化学的相互作用を仲介する部位、エピトープ部位、たとえば抗体結合および/または体液性もしくは細胞性免疫応答を刺激する部位などに対応するものであってよい。これに関して有用なゲノムセグメントは、タンパク質の小さな機能性ドメインをコードするゲノムセグメント(たとえばエピトープ部位)の場合の約15〜35ヌクレオチドから、約50、75、100、200〜500および500〜1500またはそれ以上のヌクレオチドに及ぶ。
【0149】
特定の変異を感染性PIVに導入できることは、PIV病原性および免疫原性機序の操作を含めた多くの用途をもつ。たとえば、タンパク質発現を排除し、もしくは発現レベルを低下させる変異、または変異タンパク質を生成する変異の導入により、N、P、M、F、HNおよびLタンパク質ならびにC、DおよびV ORF生成物を含めたPIVタンパク質の機能を操作できる。種々のゲノムRNA構造要素、たとえばプロモーター、遺伝子間領域および転写シグナルも、本発明の方法および組成物においてルーティンに操作できる。たとえば、PIVミニゲノムを用いる並行アッセイ(Dimock et al., J. Virol., 67:2722-778, 1993;その全体を本明細書に援用する)に完全アンチゲノムcDNAを使用して、トランス作用タンパク質およびシス作用RNA配列の効果を容易に判定でき、そのレスキュー依存状態は複製-非依存ウイルスとして回復させるには有害すぎる変異体を解明するのに有用である。
【0150】
本発明の組換えPIVにおいて、遺伝子またはゲノムセグメントのある種の置換、挿入、欠失または再配列(たとえば選択したタンパク質またはタンパク質領域、たとえば細胞質テイル、貫膜ドメインまたはエクトドメイン、エピトープ部位または領域、結合部位または領域、活性部位または活性部位を含む領域をコードするゲノムセグメントの置換)を、既存の”カウンターパート”遺伝子またはゲノムセグメントに対して構造または機能関係で同一もしくは異なるPIVまたは他の供給源から行う。そのような修飾により、野生型もしくは親PIVまたは他のウイルス株と比較して新規な目的表現型変更をもつ組換え体が得られる。たとえばこのタイプの組換え体は、あるPIVの細胞質テイルおよび/または貫膜ドメインが他のPIVのエクトドメインに融合したキメラタンパク質を発現できる。このタイプの組換え体の他の列は、二重タンパク質領域、たとえば二重免疫原領域を発現する。
【0151】
本明細書中で用いる”カウンターパート”遺伝子、ゲノムセグメント、タンパク質またはタンパク質領域は、一般にヘテロロガス供給源に由来する(たとえば異なるPIV遺伝子に由来するか、あるいは異なるPIVタイプまたは株の同一(すなわち相同または対立)遺伝子またはゲノムセグメントである)。これに関して選択した一般的なカウンターパートは、おおまかな構造特色が共通する。たとえば、各カウンターパートは対比しうるタンパク質またはタンパク質構造ドメイン、たとえば細胞質ドメイン、貫膜ドメイン、エクトドメイン、結合部位または領域、エピトープ部位または領域などをコードすることができる。カウンターパートドメインおよびそれらのコードゲノムセグメントは、それらのドメインまたはゲノムセグメント変異体に共通の生物学的活性により定められる広範なサイズおよび配列多様性をもつ種のアセンブラージを含む。
【0152】
本発明の組換えPIVを作製するための、本明細書に開示したカウンターパート遺伝子およびゲノムセグメントならびに他のポリヌクレオチドは、選択した”参照配列”、たとえば他の選択したカウンターパート配列と実質的な配列同一性をもつ場合がしばしばある。本明細書中で用いる”参照配列”は、配列比較の基礎として用いられる特定の配列、たとえば全長cDNAもしくは遺伝子のセグメント、または完全cDNAまたは遺伝子配列である。一般に参照配列は少なくとも20ヌクレオチドの長さ、多くの場合少なくとも25ヌクレオチドの長さ、しばしば少なくとも50ヌクレオチドの長さである。2つのポリヌクレオチドはそれぞれ(1)それら2つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち完全ポリヌクレオチド配列の部分)を含む可能性があり、(2)さらにそれら2つのポリヌクレオチド間で異なる配列を含む可能性があるので、2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチドの配列比較は一般に、2つのポリヌクレオチドの配列を配列類似性の局所領域を同定および比較するための”比較ウインドウ”で比較することにより行われる。本明細書中で用いる”比較ウインドウ”は、少なくとも20の連続ヌクレオチド位置の概念上のセグメントを表し、これらの位置でポリヌクレオチド配列を少なくとも20の連続ヌクレオチド参照配列と比較し、比較ウインドウ中のポリヌクレオチド配列の部分は2配列の最適アラインメントのために参照配列(これは付加または欠失を含まない)と比較して20%以下の付加または欠失(すなわちギャップ)を含むことができる。
【0153】
比較ウインドウのアラインメントに最適な配列アラインメントは、SmithとWatermanの局所相同アルゴリズム(Adv. Appl. Math., 2:482, 1981;本明細書に援用する)により、NeedlemanとWunschの相同アラインメントアルゴリズム(J. Mol. Biol., 48, 443, 1970;本明細書に援用する)により、PearsonとLipmanの類似性検索法(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:2444, 1988;本明細書に援用する)により、これらのアルゴリズムの電子化処理系(GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI;本明細書に援用する)により、または検索により実施され、各方法で得られた最良のアラインメント(すなわち比較ウインドウにおいて最高%の配列類似性が得られたもの)を選択する。”配列同一性”という用語は、2つのポリヌクレオチド配列が比較ウインドウにおいて同一である(すなわちヌクレオチド-対-ヌクレオチド基準で)ことを意味する。”配列同一性%”は、比較ウインドウにおいて最適アラインメントを示す2配列を比較し、2配列中に同一核酸塩基(たとえばA、T、C、G、UまたはI)が現われる位置の数を判定して整合位置の数を求め、整合位置の数をその比較ウインドウ中の全位置数(すなわちウインドウサイズ)で割り、この商を100倍して配列同一性%を得ることにより計算される。本明細書中で用いる”実質的に同一”という用語は、ポリヌクレオチドが少なくとも20ヌクレオチド位置の比較ウインドウ、多くの場合少なくとも25〜50ヌクレオチドのウインドウの参照配列と対比して少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、より普通には少なくとも99%の配列同一性をもつ配列を含むポリヌクレオチド配列の特性を表すために用いられる。その際、配列同一性%は参照配列をポリヌクレオチド配列と比較することにより計算され、これは合計して比較ウインドウの参照配列の20%以下の付加または欠失を含むことができる。参照配列はより大きな配列のサブセットであってもよい。
【0154】
これらのポリヌクレオチド配列関係のほかに、本発明の組換えPIVによりコードされるタンパク質またはタンパク質領域は、一般に保存関係をもつように、すなわち選択した参照ポリヌクレオチドと実質的な配列同一性または配列類似性をもつように選択される。ポリヌクレオチドに適用される”配列同一性”という用語は、ペプチドが対応する位置において同一アミノ酸を共有することを意味する。”配列類似性”という用語は、ペプチドが対応する位置において同一または類似のアミノ酸をもつ(すなわち保存的置換)ことを意味する。”実質的な配列同一性”という用語は、2つのペプチド配列を適切にアラインメントした場合(たとえばプログラムGAPまたはBESTFITによりデフォルトギャップを用いて)、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性(たとえば99%の配列同一性)をもつことを意味する。”実質的な類似性”という用語は、2つのペプチド配列が対応する%の配列類似性をもつことを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換による違いである。保存的アミノ酸置換とは、類似側鎖をもつ残基の互換性を表す。たとえば脂肪族側鎖をもつアミノ酸群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシ側鎖をもつアミノ酸群はセリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖をもつアミノ酸群はアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖をもつアミノ酸群はフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖をもつアミノ酸群はリシン、アルギニンおよびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖をもつアミノ酸群はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群はバリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンである。本明細書中で用いる20の天然アミノ酸についての略号は一般的な使用に従う(Immunology-A Synthesis、第2版、E.S. Gloub & D.R. Gren編、Sinauer Associates、メリーランド州サンダーランド、1991;本明細書に援用する)。一般的な20のアミノ酸立体異性体(たとえばD-アミノ酸)、非天然アミノ酸、たとえばα,α-ジ置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、および他の一般的でないアミノ酸も、本発明のポリペプチドに適した成分となりうる。一般的でないアミノ酸の例には、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、ε-N,N,N-トリメチルリシン、ε-N-アセチルリシン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリシン、ω-N-メチルアルギニン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(たとえば4-ヒドロキシプロリン)が含まれる。さらに、アミノ酸をグリコシル化、リン酸エステル化などにより修飾してもよい。
【0155】
本発明による候補ワクチンウイルスを選択するには、周知の方法に従って生存性、弱毒性および免疫原性の基準を決定する。本発明のワクチンに最も望ましいウイルスは、生存性を維持し、安定な弱毒表現型をもち、免疫化宿主において複製を示し(比較的低いレベルではあるが)、かつその後の野生型ウイルス感染により起きる重篤な疾患に対して防御するのに十分な免疫応答をワクチンにおいて効率的に誘発しなければならない。本発明の組換えPIVは生存性であり、かつ従来のワクチン候補より適切に弱毒化されているだけでなく、インビボで遺伝学的にいっそう安定である--防御免疫応答を刺激する能力および場合により多重修飾により与えられた防御を拡張する能力を維持し、たとえば異なるウイルス株もしくはサブグループに対する防御または異なる免疫原理(たとえば血清免疫グロブリンに対する分泌型免疫グロブリン、細胞性免疫など)に対する防御を誘発する。
【0156】
本発明の組換えPIVは、一般的に受け入れられている周知のインビトロおよびインビボモデルにおいて試験して、ワクチン使用について適切な弱毒性、表現型復帰に対する抵抗性および免疫原性を確認できる。インビトロアッセイ法においては、修飾ウイルス(たとえば多重弱毒化した生物由来または組換えPIV)を、たとえば複製レベル、ウイルス複製の温度感受性(すなわちts表現型)、および縮小プラークその他の表現型について試験する。修飾ウイルスをさらにPIV感染の動物モデルにおいて試験する。多様な動物モデルが、本明細書に引用した各種文献に記載および概説されている。PIVワクチン候補の弱毒性および免疫原性を評価するための、げっ歯類および非ヒト霊長類を含めたPIVモデル系が当技術分野で広く受け入れられており、それらから得られるデータはヒトにおけるPIV感染性、弱毒性および免疫原性と良好に相関する。
【0157】
以上の記載に従って、本発明はワクチンとして使用するための単離した感染性組換えPIVウイルス組成物をも提供する。ワクチン成分である弱毒ウイルスは、単離された、一般に精製した形のものである。単離とは、野生型ウイルスの天然以外の環境、たとえば感染個体の鼻咽頭内にあるPIVを表すものとする。より一般的には単離は、細胞培養物、または制御された状態で増殖および解明できる他の人工培地の成分として弱毒ウイルスを含むものとする。たとえば、本発明の弱毒PIVは感染細胞培養により産生され、細胞培養物から分離され、安定剤に添加される。
【0158】
ワクチンとして使用するためには、本発明により作製した組換えPIVをそのままワクチン配合物中に使用し、あるいは所望により当業者に周知の凍結乾燥プロトコルを用いて凍結乾燥することができる。凍結乾燥ウイルスは一般に約4℃に保持される。使用に際して、凍結乾燥ウイルスを安定化溶液、たとえば塩類溶液またはSPG、Mg++およびHEPESを含む溶液(後記に詳述するアジュバントを含むもの、または含まないもの)中に再生する。
【0159】
本発明のPIVワクチンは、活性成分として本明細書の記載に従って作製した免疫学的有効量のPIVを含有する。この修飾ウイルスを生理学的に許容できるキャリヤーおよび/またはアジュバント、たとえば水、緩衝水、0.4%塩類溶液、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などと共に宿主に導入することができる。得られた水溶液をそのまま包装し、または凍結乾燥することができる。凍結乾燥製剤は、前記のように投与前に無菌溶液と組み合わせる。組成物は、所望により生理学的状態に近似させる医薬的に許容できる助剤、たとえばpH調節剤および緩衝剤、張力調節剤、湿潤剤など(たとえば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノオレイン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなど)を含有してもよい。許容できるアジュバントには、不完全フロイントアジュバント、MPL(商標)(3-o-脱アシル化モノホスホリル脂質A;RIBI ImmunoChem Research社、モンタナ州ハミルトン)およびIL-12(Genetics Institute、メリーランド州ケンブリッジ)ならびに当技術分野で周知の他のアジュバントが含まれる。
【0160】
本明細書に記載するPIV組成物によりエアゾール、経口、局所その他の経路で免疫化すると、宿主の免疫系がPIVウイルスタンパク質、たとえばFおよびHN糖タンパク質に特異的な抗体の産生により応答する。本明細書の記載に従って作製した免疫学的有効量のPIVを接種した結果、宿主はPIV感染に対して少なくとも部分的または完全に免疫になり、または中程度もしくは重症のPIV感染症、特に下気道感染症の発症に対して抵抗性になる。
【0161】
ワクチンを投与される宿主は、PIVまたは近縁ウイルス感染に対して感受性のいかなる哺乳動物であってもよく、宿主は接種株の抗原に対して防御免疫を生じることができる。したがって本発明は、多様なヒトおよび動物用のワクチン調製のための方法を提供する。
【0162】
本発明のPIVを含有するワクチン組成物を、PIV感染に対して感受性できるか、または他のリスクをもつ宿主に投与して、宿主自身の免疫応答能を高める。そのような量を”免疫学的有効量”と定義する。この使用に際して、有効量内での厳密なPIV投与量は、宿主の健康状態および体重、投与様式、配合物の性質などに依存するであろうが、一般に宿主当たり約103〜約107プラーク形成単位(PFU)またはそれ以上のウイルス、より一般的には宿主当たり約104〜約106PFUのウイルスであろう。いずれにしろ、ワクチン配合物は重篤なまたは致命的なPFU感染症に対して宿主を効果的に防御するのに十分な量の修飾PIVを供給しなければならない。
【0163】
本発明に従って作製したPIVを他のPIV血清型または株のウイルスと組み合わせて、多重のPIV血清型または株に対する防御を達成することができる。あるいは、本明細書に記載するように、1ウイルス中に多重の血清型または株の防御エピトープを工学的に組み合わせることにより、多重のPIV血清型または株に対する防御を達成することができる。一般にこの異なるウイルスを投与する場合、それらを混合して同時に投与するか、あるいは別個に投与してもよい。1株による免疫化で、同一または異なる血清型の異なる株に対して防御できる。
【0164】
場合により、本発明のPIVワクチンと、他の病原性、特に小児ウイルスに対する防御応答を誘発するワクチンと組み合わせることが望ましいであろう。本発明の他の態様においては、PIVを他の病原体たとえば呼吸系発疹ウイルス(RSV)または麻疹ウイルスの防御抗原のためのベクターとして、これらの防御抗原をコードする配列を本明細書に記載する感染性PIVの作製に用いるPIVゲノムまたはアンチゲノム中へ取り込ませることにより使用できる(米国仮特許出願60/170,195:Murphyらにより1999年12月10日出願;本明細書に援用する)。
【0165】
すべての対象において、組換えPIVワクチンの厳密な投与量、ならびに投与の時期および回数は、患者の健康状態および体重、投与様式、配合物の性質などに依存するであろう。投与量は一般に、患者当たり約103〜約107プラーク形成単位(PFU)またはそれ以上のウイルス、より一般的には患者当たり約104〜約106PFUのウイルスであろう。いずれにしろ、ワクチン配合物は抗PIV免疫応答を効果的に刺激または誘発するのに十分な量の弱毒PIVを供給しなければならない。これはたとえば補体結合、プラーク中和、および/または酵素結合イムノソルベントアッセイならびに他の方法により測定できる。これに関して、個体の上気道疾患の徴候および症状についても監視する。アカゲザルへの投与について、本発明ワクチンの弱毒ウイルスは被接種体の鼻咽頭内で野生型ウイルスより約10倍以上低い、または不完全弱毒PIVのレベルと比較して約10倍以上低いレベルで増殖する。
【0166】
新生児および乳児においては、十分なレベルの免疫を誘発するために多数回投与が必要であろう。投与は生後1カ月以内に開始し、野生型PIV感染症に対して十分なレベルの防御を維持するために、必要に応じて2カ月、6カ月、1年および2年の間隔で行うべきである。同様に、再発性または重篤なPIV感染症に対して、特に感受性の成人、たとえばヘルスケアワーカー、デイケアワーカー、幼児の家族、高齢者、免疫不全心肺機能個体は、防御免疫応答を樹立および/または維持するために多数回免疫化が必要であろう。誘導免疫のレベルは分泌型および血清型の中和抗体の量を測定することにより監視でき、目的レベルの防御を維持するのに必要に応じて、投与量を調節し、または接種を反復する。さらに、異なるレシピエント群に対しては異なるワクチンウイルスの投与を指示することができる。たとえばサイトカイン、またはT細胞エピトープに富む追加タンパク質を発現する工学的に作製したPIV株は、乳児より成人に対して特に有利であろう。
【0167】
本発明に従って作製したPIVワクチンを、他のサブグループまたは株のPIVの抗原を発現するウイルスと組み合わせて、多重PIVサブグループまたは株に対する防御を達成することができる。あるいはワクチンウイルスは、本明細書に記載するように1つのPIVクローン中に工学的に挿入した多重PIVサブグループまたは株の防御エピトープを取り込むことができる。
【0168】
本発明のPIVワクチンは、重篤な下気道疾患、たとえば肺炎および気管支炎に対して、その後個体が野生型PIVに感染した際に防御する免疫応答を誘発する。天然の循環性ウイルスは特に上気道においてなお感染症を引き起す可能性があるが、鼻炎は接種の結果大幅に低下する可能性があり、かつその後の野生型ウイルス感染により抵抗性が増強される可能性がある。接種後、宿主産生による血清抗体および分泌型抗体が検出可能なレベルで産生され、これらはインビトロおよびインビボで相同(同一サブグループの)野生型ウイルスを中和することができる。多くの場合、宿主抗体は異なる非ワクチンサブグループの野生型ウイルスをも中和するであろう。
【0169】
本発明の好ましいPIVワクチン候補は、ヒトにおいて自然状態で循環している野生型ウイルスと比較すると、実質的に著しい毒性低下を示す。このウイルスは、大部分の免疫化個体において感染症が起きないほど十分に弱毒化している。場合により、この弱毒ウイルスはワクチン接種していない個体に対してはなお播種性の可能性がある。しかしその毒性は、接種した宿主または発症宿主において重篤な下気道感染症が起きないほど十分に低下している。
【0170】
PIVワクチン候補の弱毒化レベルは、たとえば免疫化宿主の気道に存在するウイルスの量を測定し、この量と野生型PIVまたは候補ワクチン株として評価されたことがある他の弱毒PIVが産生するウイルス量を比較することにより判定できる。たとえば、本発明の弱毒ウイルスは高感受性宿主(たとえばチンパンジーまたはアカゲザル)の上気道における複製制限度が、野生型ウイルスの複製度と比較してたとえば10〜1000倍低い。上気道におけるウイルス複製に伴う鼻漏の進行をさらに低下させるために、理想的な候補ワクチンは上および下気道の両方における複製度制限を示すべきである。ただし本発明の弱毒ウイルスは接種個体を防御するのに十分なほど感染性かつ免疫原性でなければならない。感染宿主の鼻咽喉におけるPIVレベルの測定方法は文献中に周知である。
【0171】
本発明のワクチンにより得られる誘導免疫のレベルは、分泌型および血清型の中和抗体の量を測定することによっても監視できる。これらの測定に基づいて、ワクチン投与量を調節し、あるいは目的の防御レベルを維持するために必要に応じて接種を反復することができる。さらに、異なるレシピエント群には異なるワクチンウイルスが有利であるかもしれない。たとえばT細胞エピトープに富む追加タンパク質を発現する工学的に作製したPIV株は、乳児より成人に対して特に有利であろう。
【0172】
本発明のさらに他の態様においては、PIVを気道の一時遺伝子療法のためのベクターとして使用する。この態様によれば、組換えPIVゲノムまたはアンチゲノムに当該遺伝子生成物をコードしうる配列を取り込ませる。当該遺伝子生成物は、PIV発現を制御するものと同一または異なるプロモーターの制御下にある。N、PおよびLその他の目的PIVを含み、かつ当該遺伝子生成物をコードする配列を含む組換えPIVゲノムまたはアンチゲノムの同時発現により形成された感染性PIVが患者に投与される。投与は一般に、処置される患者の気道へのエアゾール、ネブライザーその他の局所適用による。組換えPIVは、治療または予防レベルの目的遺伝子生成物を発現するのに十分な量で投与される。この方法で投与できる代表的な遺伝子生成物は、好ましくはたとえばインターロイキン-2、インターロイキン-4、γ-インターフェロン、GM-CSF、G-CSF、エリスロポエチンおよび他のサイトカイン、グルコセレブロシゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、細胞毒素、腫瘍抑制遺伝子、アンチセンスRNA、およびワクチン抗原の一時発現に適したものである。
【0173】
以下の実施例は説明のために提示するものであり、限定のためのものではない。
実施例 I
キメラ HPIV3/BPIV3 アンチゲノムをコードする cDNA の構築および感染性ウィルスの回復
以下の3つの実施例は、BPIV3のいずれが霊長類におけるその宿主の範囲の制限に寄与するかを同定するための研究を詳細に記録する。これらの方法を説明するために、野生型HPIV3ウィルスのNタンパク質を、BPIV3由来のその対応物により置換した。この置換は、上述したようなcDNAからの感染性PIVの回復のための、リバースジェネティクス(reverse genetics)システムを使用して行った。この研究は、このタンパク質が、他のHPIV3およびBPIV3タンパク質と比較して、そのHPIV3対応物と中程度のアミノ酸配列変異を有するため、BPIV3のN遺伝子により開始した(実施例Iを参照)。
【0174】
HPIV3のJS系統のN ORFを、BPIV3のKa系統またはSF系統のものにより置換した、キメラ組換えウィルスを構築した(図1)。これらのキメラウィルスは、HPIV3親株のHNおよびF糖タンパク質を有し、そして霊長類におけるHPIV3に対する高レベルの免疫を誘導するであろう。両方のキメラウィルスが、うまく回収された。両方ともが細胞培養中で高力価に増殖し、そして両方ともがアカゲザルにおいて弱毒化されたことが示された。このように、Nタンパク質は、BPIV3の宿主範囲表現型に寄与する典型的なタンパク質として同定された。KaまたはSFキメラ組換えウィルスによるアカゲザルの免疫化により、野生型チャレンジとして用いられたHPIV3の複製に対して、高レベルの抵抗性が誘導された。
【0175】
したがって、本発明は、BPIV3の宿主範囲弱毒化特性とHPIV3 HNおよびF防御性抗原の免疫原性とを組み合わせるキメラヒト-ウシPIVウィルスを生成するための、リバースジェネティクス(reverse genetics)法の有用性を確立する。そのようなキメラ組換え体によるヒトの免疫化により、以前にヒトにおいて見られた、BPIV3ワクチンの免疫原性が最適以下であるという問題が是正されるであろう。
【0176】
Ka BPIV3系統またはSF BPIV3系統のそれぞれに対して完全にコンセンサスなヌクレオチド配列を、ビリオンRNAから生成したRT-PCR産物から決定した。これらの配列は、図6A-6Gおよび図7A-7Gにそれぞれ示す。BPIV3 Kaの完全な15456ヌクレオチド(nt)アンチゲノムRNAをコードする完全長cDNAは、本明細書中の図6A-6Gに示す(GenBank受託番号#AF 178654も参照)。BPIV3カンザス系統についてのGenBank配列は、典型的なcDNAの配列とは、ヌクレオチド21および23の2個所で異なる。公開された配列および典型的なcDNA中の配列の両方とも、カンザス系統ウィルス集団中で同程度の頻度で天然に生じる。本実施例において使用したcDNAには、ヌクレオチド18で始まる配列、ACTGGTT(SEQ ID NO. 1)が含まれ、その一方で対応する公開された配列(GenBank受託番号#AF 178654;図6A-6G、SEQ ID NO. 22)はACTTGCTと読まれている(位置21および23での異なるヌクレオチドを下線で示す)。
【0177】
KaおよびSF BPIV3系統に対するコンセンサスヌクレオチド配列を構築するため、ビリオンRNAを、Superscript II Preamplification System(Life Technologies, Gaithersburg, MD)および200 ngのランダムヘキサマープライマーを使用する逆転写に供した。PCRは、Advantage cDNA PCRキット(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA)を使用して、ファーストストランド産物に対して行った。KaおよびSFゲノムを、3または4つのオーバーラップする断片中でのPCRにより、以前に公開されたパラミクソウィルス(paramyxovirus)の配列の間で保存されているRNAの領域と相同なプライマーを使用して、増幅した。それぞれのプライマー対を、適合する制限酵素部位(増幅の標的とされる配列中には示されていない)を含むように構築した。
【0178】
1セットのPCR産物を適切な制限酵素で消化し、その後ゲル精製し、タンデムアレイ(tandem arrays)および超音波処理中でライゲーションすることにより、それぞれのアンプリコン(amplicon)について別個のランダムライブラリーを生成した。剪断されたcDNA配列のこのプールから、サブセット(約500 bpの断片)をM 13中にクローニングすることにより、ランダムライブラリーを生成した。cDNA挿入物のヌクレオチド配列を、Taq DYE Deoxy ターミネーターサイクルシークエンシングキット(ABI, Foster City, CA)を使用する自動化DNAシークエンシングにより決定した。それぞれのヌクレオチド位置を最小で3つの別個のM13クローンにより確認した、十分なリダンダンシーを有するもとの大型RT-PCR断片のそれぞれについて、連続配列(contig)を組み立てた。KaおよびSFの5'および3'末端ゲノム配列は、Rapid Amplification of cDNA Ends(Life Technologies, Gaithersburg, MD)のためのシステムを使用して、cDNAに変換し、そして自動化シークエンシングにより配列を決定した。
【0179】
これらの配列は、図6A-6G(Ka)および図7A-7G(SF)にそれぞれ示す。これらの配列の解析から、HPIV3およびBPIV3の以下のタンパク質のそれぞれについて、%アミノ酸同一性は:N(86%)、P(65%)、M(93%)、F(83%)、HN(77%)、そしてL(91%)であることが示された。このように、配列相違(divergence)が多くの遺伝子にわたって分布したものであることがわかった。これらの2種のウィルスのN遺伝子の推定アミノ酸配列は、GenBank #Af178654(Ka)および#AF178655(SF)中に示されるが、含まれない。BPIV3ゲノム中のN ORFの位置は、それぞれのGenBank報告中に示され、そして本明細書中に参考文献として含まれる。以下の実施例において、N遺伝子が6種のHPIV3タンパク質およびBPIV3タンパク質の中で中レベルの配列変異を有する遺伝子に相当するため、HPIV3ウィルス中の対応する遺伝子の置換のために、KaまたはSFウィルスのN ORFをはじめに選択した。この研究において、3'または5'の非コードN遺伝子配列ではなく、観察されたcKaおよびcSFの弱毒表現型をN遺伝子によりコードされるタンパク質に対して割り当てることを可能にするN ORFを置換した。
【0180】
そのHPIV3対応物について置換するものとして、HPIV3(+)センス(positive-sense)アンチゲノムRNAの完全なコピーをコードするrJS cDNA p3/7(131)2G中に、BPIV3 KaまたはSF Nコード領域を導入することにより、ヒト-ウシキメラ完全長PIV3ゲノムを構築した(たとえば、Durbin et al., 1997a、上述;Hoffman et al., 1997、上述;Skiadopoulos et al., 1998、上述;1998年5月22日出願の米国特許出願シリアル番号No. 09/083,793;1997年5月23日に出願の米国仮出願No. 60/047,575(国際出願No. WO 98/53078に対応);そして1997年9月19日に出願の米国仮出願No. 60/059,385を参照;それぞれは参考文献として本明細書中に援用される)。隣接する配列を有するBPIV3およびHPIV3 Nコード領域は、まずサブクローニングされそしてさらに修飾されて、ちょうどN ORFの置換を可能にした。HPIV3 N遺伝子を有するpUC119JSN、およびBPIV3 N KaまたはSF遺伝子を有するプラスミド(pBSKaNおよびpBSSFN)を、Kunkel(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492, 1985、本明細書中に参考文献として援用する)の方法を使用して変異生成に供し、NcolおよびAflII制限酵素認識部位を翻訳開始部位および翻訳停止部位にそれぞれ導入した(図1A)。pUC119KaN-Ncol/AflIIのNcol/AflII消化の後、HPIV3 Nコード領域を置換するものとして、BPIV3 Nコード領域をpUC119JSN-Ncol/AflII中にNcol/AflIII断片として導入した(図1B)。HPIV3 3'および5'非コード配列およびBPIV3 ORFを含有するキメラN遺伝子を、部位特異的変異生成により修飾し、もとのHPIV3非コード配列およびBPIV3コード配列を回復させた。ついで、このキメラN遺伝子を、その対応する配列、HPIV3配列を置換する際に、ヒト配列中に存在する現存するMIulおよびEcoRI部位を使用して、rJSアンチゲノムの5'側半分、pLeft中に導入した(図2Aおよび2B)。それぞれの場合において、SF N ORFについて、同時に並行して反応を行った。キメラpLeftプラスミドを、その3'末端にデルタリボザイムとT7ターミネーターとが隣接するrJSアンチゲノムの3'側半分を含有するpRightに由来するXhol/NgoMl断片と組み合わせた(図2)。pB/HPIV3NKaまたはpB/HPIV3NSFと命名された得られたキメラPIV3プラスミドには、N ORFがBPIV3 KaまたはSF Nタンパク質をコードする、完全長rJSアンチゲノムが含まれた。
【0181】
2種の以前に記載されたサポートプラスミド、pTM(P no C)およびpTM(L)、Lipofectace(Life Technologies, Gaithersburg, MD)とともに6-ウェルプレート中でほぼコンフルエントまで増殖させ、そして以前に記載されたように(Durbin et al., Virology 234:74-83, 1997b)バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ(MVA-T7)を発現する修飾ワクシニアウィルス組換え体に感染させたHEp-2細胞中に、キメラアンチゲノムHPIV3/BPIV3 cDNAsをトランスフェクトした。アンチゲノムプラスミドが十分なレベルのNタンパク質を発現したため、以前の研究で使用されたNサポートプラスミドは排除した。培養物を、32℃で3.5日間維持し、その後上清を回収し、LLC-MK2細胞中で継代(passage)し、そしてLLC-MK2細胞中で3回プラーク精製した。トランスフェクションの結果得られたヒトPIV 3バックグラウンドのゲノムまたはアンチゲノムおよびBPIV3 Nタンパク質を組み込むキメラウィルス(rHPIV3-NBキメラ組換え体と命名、またはより具体的には、“cKa”および“cSF”キメラウィルスと命名)の独自性を、3回プラーク精製したウィルスの増幅後に単離されたビリオンRNA由来のN ORF開始コドンおよび停止コドンの領域を含有するRT-PCR産物をシークエンシングすることにより確認した(図3)。この増幅産物および対応する増幅HPIV3 rJSおよびBPIV3 KaまたはSF配列もまた、TaqI消化に供し、cKaおよびcSFウィルスのキメラ特性を確認した(図4)。TaqI消化プロファイルは、3種の親ウィルスおよび2種のキメラウィルスに独特のものであり、そしてそれぞれの親プロファイルには独自サイズのTaqI断片が含まれ、分類すべきキメラウィルスに対して、rJS、KaおよびSF親ウィルスの配列が寄与することを可能にする。回収されたcKaおよびcSFキメラ組換え体はそれぞれ、設計されたように予想された配列を含有した。
【0182】
実施例II
細胞培養中での HPIV3/BPIV3 キメラウィルスの複製
生弱毒ウィルスワクチンの組織培養細胞中での効率的な複製は、組換えワクチン材料を効率的に製造することを可能にする、本発明のヒト-ウシキメラPIVの特徴である。以前に記載されているように(Tao et al., 1998、上述、本明細書中に参考文献として援用する)、ウィルスを感染多重度0.01で細胞に感染させ、そしてサンプルを5日間の期間後に(トリプリケートで)回収することにより、ウシ細胞株(MDBK)中およびサル細胞株(LLC-MK2)中でのrJS親、cKa、Ka親、cSF、およびSF親の複数サイクルの複製を調べた(図5)。複製がそれほど遅れることなく、あるいは得られたウィルス力価がそれほど減少することなく、それらのヒトまたはウシ親ウィルスと同様に両方の細胞株中で、キメラウィルスは効率的に複製した。それぞれのケースにおいて、キメラウィルスは107.0 TCID50/ml以上で複製し、これはヒトの臨床試験で現在使用されている生弱毒ヒトあるいはウシPIVワクチンの用量である104.0あるいは105.0を十分に上回っている(Karron et al., 1996、上述;Karron et al., 1995a、上述;およびKarron et al., 1995b、上述)。
【0183】
実施例 III
アカゲザルにおける HPIV3/BPIV3 キメラウィルスの弱毒化および保護効率の評価
SFおよびKa BPIV3の両方を、アカゲザルの上部および下部気道に対して弱毒化する(van Wyke Coelingh et al., 1988、上述)。完全に感受性の血清反応陰性の幼児および子供の上部気道において、Kaの複製が非常に制限されるという事実により示されるように、この弱毒表現型は、ヒトにおける弱毒化と相関する(Karron et al., 1995a、上述)。BPIV3-感染ワクチンにおいて、咳、クルップ(croup)、細気管支炎、または肺炎がないことから、Ka BPIV3ウィルスは下部気道についても弱毒化されることが示唆される。したがって、アカゲザルは、候補PIVワクチンウィルスの弱毒化および野生型PIVによるチャレンジに対するその効率を評価するための合理的な相関モデルとして広く受け入れられている。
【0184】
rJS、cKa、Ka親、cSF、およびSF親を、アカゲザルに対して部位あたり105.0 TCID50の用量で、鼻内および気管内に投与した。上部気道(鼻咽頭スワブ検体)および下部気道(気管洗浄検体)からサンプルを得るために、そしてLLC-MK2細胞中でのウィルスの力価を測定するために、以前に記載された方法を使用して複製をモニターした(Hall et al., 1992、上述)。cKaおよびcSF組換え体は、上部気道について顕著に弱毒化され(表1)、平均ピークウィルス力価が、rJS HPIV3親のそれと比較して、それぞれ63倍または32倍減少したことを示している。cKaおよびcSFの両方とも、下部気道についても弱毒化されたが、この差は、cSFについてのみ統計的に有意であった。この部位での弱毒表現型により、下部気道における低レベルのrJSの複製は、統計的に有意な様式で、さらに複製が制限されることを示すことは困難であった。
【0185】
表1: cKaおよびcSFの複製は、HPIV3と比較して、アカゲザルの上部気道および下部気道において制限される
【0186】
【表1】
【0187】
1各部位につき、サルに鼻内および気管内で1 ml中105.0TCID50を予防接種した。2それぞれのカラムの平均ウィルス力価は、Duncanの複数範囲試験(α=0.05)を使用して、統計的に同様の群(文字で示した)に割り振った。別々の文字を当てたそれぞれのカラムの平均力価は、統計的に異なっている。
【0188】
それぞれのキメラウィルス、cKaおよびcSFの複製のレベルは、キメラウィルスのそれぞれが上部気道においてそれらのBPIV3親よりもいくらかよく複製したが、上部気道または下部気道におけるそのウシ親とはそれほど異ならなかった。このように、rJS HPIV3によるKaまたはSF BPIV3のいずれかのN遺伝子の獲得は、アカゲザルに対するヒトウィルスを、ほぼBPIV親のレベルと同等のレベルまで弱毒化した。HPIV3/BPIV3キメラ組換え体がin vitroの組織培養細胞において効率的に複製したため、2種のウシ親ウィルスにより証明された宿主範囲限定的複製の表現型が、N ORFによりHPIV3に対して移植されたことは明らかである。rJSにおいて、そのHPIV3対応物の代わりにその他のBPIV3遺伝子、たとえばM、P、またはLを用いることにより、HPIV3 N遺伝子の代わりにBPIV3 N遺伝子を用いた場合に観察されたように、同様のまたはそれ以上のレベルの弱毒化が得られるであろうということは、可能であるが、しかし知られておらずそして予測できないことである。上部気道において、cKaおよびcSFの複製レベルがそれらのBPIV3親の複製レベルよりも若干上であるという観察から、この部位において、さらなるウシ遺伝子がBPIV3親ウィルスの宿主範囲弱毒表現型に寄与していることが示唆される。
【0189】
予防接種していないサルおよび以前にヒトまたはウシPIV3親ウィルスに感染した、またはcKaまたはcSFキメラウィルスに感染したサルを、それぞれの部位につき1 mlの接種物で、rJSの106.0 TCID50を鼻内および気管内により初回接種した後、42日間チャレンジした。表2に示した日数で、鼻咽腔および気管を以前に記載したようにサンプリングした。それぞれの部位に存在するウィルス力価を、それぞれのサルにつきLLC-MK2細胞単層培養物上で測定し、そして示された力価が平均ピーク力価である(Hall et al., 1992、上述)。いずれかのキメラウィルスにより以前の感染により、rJSチャレンジウィルスの複製に対する高レベルの抵抗性が、上部気道および下部気道の両方において誘導された。cKaを以前に感染させたサルでは、予防接種していない対照サルと比較して、上部気道において野生型HPIV3(rJS)の複製が300倍減少しおよび下部気道において1000倍減少することが証明された。cSFを以前に感染させたサルでは、予防接種していない対照サルと比較して、上部気道においてrJSの複製が2000倍減少し、そして下部気道において1000倍減少することが証明された。以前にcKaまたはcSFを接種したサルにおける、rJSチャレンジウィルスの複製の減少レベルは、以前にウシまたはヒトPIV親のいずれかに感染させたサルのレベルと匹敵した。このように、HPIV3/BPIV3キメラウィルスのいずれかによる感染により、サルの上部気道および下部気道において高レベルの防御が提供され、そして両方のキメラウィルス有望なワクチン候補であることが示される。
【0190】
第0日および第28日にサルから回収された血清を、HPIV3(JS系統)およびBPIV3(Ka系統)を以前に記載されたように抗原として使用する(Coelingh et al., J. Infect. Dis. 157:655-662, 1988)、HAIアッセイにより試験した。cKa-NおよびcSF-Nは、アカゲザルの上部気道および下部気道において、rJSに比べて高度に弱毒化されたが、それぞれのキメラウィルスは、そのそれぞれのBPIV3親により免疫化することにより誘導されるものよりも、2.5〜5倍高い、HPIV3に対する血球凝集-阻害(HAI)抗体反応を引き起こした。このことは、HPIV3 HNタンパク質がキメラウィルス中に存在することによる様である。さらに、キメラウィルスにより誘導されるHPIV3特異的HAI反応は、rjSによる免疫化により誘導されるものと、統計的に区別することができた。本明細書ch宇電子召されるさらなる予期せぬ結果は、HPIV3によるサルのチャレンジの後、cKa-NまたはcSF-Nにより最初に免疫化されたサルにおけるHAI抗体のレベルは、rJS、KaまたはSFにより免疫化された動物において観察されるレベルよりも顕著に高かった。
【0191】
実施例 IV
異種融合糖タンパク質および血球凝集素 - ノイラミニダーゼ糖タンパク質を有 するキメラ HPIV3BPIV3 ワクチン候補物の構築および特性決定
前述の実施例において、Nオープンリーディングフレーム(ORF)をそのBPIV3対応物のものにより置換した組換えヒトPIV3(rHPIV3)を生成しそして特性決定することにより、霊長類の気道に対するBPIV3の複製の宿主範囲制限の基礎を調べた。得られたキメラウィルス、rHPIV3-NB、は、cKaまたはcSFとも呼ばれるが、in vitroで効率よく複製するものの、しかしアカゲザルの上部気道において複製が制限され、アカゲザルにおけるBPIV3の宿主範囲制限の重要な決定因子としてのNタンパク質が同定された(Bailly et al., J. Virol. 74:3188-3195, 2000)。
【0192】
本実施例において、ウシパラインフルエンザウィルス3型(BPIV3)の融合(F)および血球凝集素-ノイラミニダーゼ(HN)糖タンパク質遺伝子の、非ヒト霊長類の気道におけるその限定的な複製に対する寄与を、2種の相反する(reciprocal)キメラBPIV3/HPIV3ウィルスを生成しそして特性決定することにより調べた。異種BPIV3 FおよびHN糖タンパク質遺伝子を、それら自体の代わりに含有するキメラHPIV3、およびHPIV3 FおよびHN遺伝子を保持するBPIV3“バックボーン”を含む相反する(reciprocal)組換え体を、対応物BPIV3糖タンパク質遺伝子と置換したものを生成して、糖タンパク質置換の、アカゲザルの上部気道および下部気道におけるHPIV3およびBPIV3の複製に対する作用を評価した。このように、一つのキメラウィルスにおいて、HPIV3のFおよびHN遺伝子を、そのBPIV3対応物により置換し、結果としてrHPIV3-FBHNBキメラ組換え体を得た。相反するキメラ組換えPIV3(rBPIV3-FHHNH)を、組換えBPIV3(rBPIV3)のFおよびHN遺伝子を、それらのHPIV3対応物により置換することにより構築した。後者のウィルスにおいて、BPIV3バックボーン中へのHPIV3 FおよびHN ORFの導入は、HPIV3の抗原認識部位とBPIV3のバックボーンとを組み合わせ、そしてそれにより親BPIV3と比較して改良したワクチン候補物を提供する。完全な機能的活性のための、パラインフルエンザウィルスに対する相同なHNおよびFタンパク質の提示された要求性の観点において、FおよびHN遺伝子をついにして交換した(Deng et al., Virology 209:457-469, 1995;およびTanabayashi et al., J. Virol. 70:6112-6118, 1996;それぞれを、本明細書中に参考文献として援用する)。
【0193】
前述したキメラウィルスが、サルLLC-MK2細胞において、それらの親ウィルスのものと匹敵する複製の動態が容易に得られそして示されたことから、異種糖タンパク質がPIV3内部タンパク質と両立することが示唆された。BPIV3対HPIV3の細胞病理学の特有の特徴は、それらのそれぞれのFおよびHN遺伝子とともに共分離された。BPIV3 FおよびHN遺伝子を保持するHPIV3は、アカゲザルにおける複製についてそのBPIV3親ウィルスのレベルと同様のレベルまで弱毒化され、これによりBPIV3の糖タンパク質遺伝子がアカゲザルにおける複製のその宿主範囲制限の主要な決定因子であることが示される。HPIV3 FおよびHN遺伝子を保持するBPIV3(rBPIV3-FHHNH)は、アカゲザルにおいてHPIV3およびBPIV3のレベルの中間レベルで複製された。
【0194】
これらの結果から、FおよびHN遺伝子がBPIV3の全体的な弱毒化に対して重要な寄与をすることが示される。さらに、これらの結果から、FおよびHN領域の外側のBPIV3配列もまた、霊長類における弱毒表現型に寄与していることが示される。この後者の知見は、BPIV3の核タンパク質コード配列が霊長類に対するその弱毒化の決定因子であるという前述の実施例における知見と一致している。アカゲザルの気道におけるその限定的な複製にもかかわらず、rBPIV3-FHHNHは、野生型HPIV3によるチャレンジに対するあるレベルの防御を付与し、これは野生型HPIV3による以前の感染により付与された防御と区別することができた。これらのそして関連する知見から、rBPIV3-FHHNHのHPIV3に対するワクチン候補物としての有用性は、すぐに明らかなものである。
【0195】
ウィルスおよび細胞
HEp-2およびサルLLC-MK2単層細胞培養を、5%ウシ胎児血清(Summit Biotechnology, Ft. Collins, CO)、50 ug/mlの硫酸ゲンタマイシン、および4 mMグルタミン(Life Technologies, Gaithersburg, MD)を添加したMEM培地(Life Technologies, Gaithersburg, MD)中で維持した。
【0196】
野生型BPIV3系統カンザス/15626/84(クローン5-2-4, Lot BPI3-1)(BPIV3 Ka)、HPIV3 JS野生型、その組換え版(rHPIV3)、そしてBPIV3 Ka N ORFをHPIV3-N ORFの代わりに含有するrHPIV3ウィルス(rHPIV3-NB)はそれぞれ、上述されている(Clements et al., 1991、上述;Karron et al., 1995a、上述;Bailly et al., 2000、上述;そしてDurbin et al., 1997、上述;も参照)。PIVは、LLC-MK2細胞(ATCC CCL-7)中32℃で、以前に記載された様に(Hall et al., 1992、上述)増殖させた。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼを発現する修飾したワクシニア系統アンカラ(MVA)組換えウィルスは、Wyattら(1995、上述)により記載されている。
【0197】
組換えBPIV3/HPIV3ウィルスをコードするアンチゲノムcDNAの構築
a)rBPIV3 を回収するための cDNA の構築
BPIV3 Kaの完全な15456ヌクレオチド(nt)アンチゲノムRNAをコードする完全長cDNAを、上述したように構築した。Superscript II Pre-amplification System(Life Technologies, Gaithersburg, MD)を使用するウィルスRNAの逆転写(RT)、およびHigh Fidelity PCRキット(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA)を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅に由来する4つのサブクローンから、cDNAを組み立てた。RT-PCR産物を、修飾pUC 19プラスミド(New England Biolabs, Beverly, MA)中に、以下の天然内部制限酵素認識部位を使用して、クローニングした:Sma I(BPIV3 Ka配列位置nt186)、Pst I(nt 2896)、Mlu I(nt 6192)、Sac II(nt 10452)およびBsp LUI I(nt 15412)。Multiple subclones of the アンチゲノムcDNAの複数のサブクローンを、dRhodamine Terminator Cycle Sequencing(Perkin Elmer Applied Biosystems, Warrington, UK)によるPerkin Elmer ABI 310シークエンサーを使用してシークエンシングし、そしてBPIV3 Kaのコンセンサス配列とマッチするもののみを、完全長クローンを組み立てるために使用した。BPIV3 Kaの3'および5'末端をクローニングし、そして完全長cDNAの組み立てを前述したp(Right)ベクター中で行い(Durbin et al., 1997、上述)、Xho I、Sma I、Mdu I、Sac II、Eco RI、Hind IIIおよびRsrIIに対する制限酵素認識部位を有する新規ポリリンカーを含有する様にこれを修飾した。完全長cDNAクローンpBPIV3(184)は、以下の要素を3'から5'へ順番に含有する:T7プロモーター、2つの非ウィルス性グアノシン残基、BPIV3 Kaの完全なアンチゲノム配列、肝炎デルタウィルスリボザイム、そしてT7ポリメラーゼ転写ターミネーター(Bailly et al., 2000、上述;そしてDurbin et al., 1997a、上述)。
【0198】
b)rHPIV3-F B HN B および rBPIV3-F H HN H の構築
独自の制限酵素認識部位をBPIV3アンチゲノムcDNA中および以前に記載したHPIV3アンチゲノムcDNA p3/7(131)2G(Durbin et al., 1997a、上述)中に導入して、BPIV3およびHPIV3 cDNAの間で、FおよびHN遺伝子野置換を容易にした。Clontech(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA)から入手したトランスフォーマー部位特異的変異生成プロトコルを使用して、SgrAI制限酵素部位をM遺伝子の非コード領域の下流、rBPIV3配列の位置4811とrHPIV3 JS配列の位置4835(GenBank受託# Z11575)に導入した。制限酵素認識部位の位置に付与されたヌクレオチド番号は、制限酵素認識部位の最初のヌクレオチドではなく、酵素が切断した後のヌクレオチドを示す。配列を、rBPIV3においてはTCCAACATTGCA(SEQ. ID. NO. 2)からTCCACCGGTGCA(SEQ. ID. NO. 3)へ、rHPIV3においてはCGGACGTATCTA(SEQ. ID. NO. 4)からCGCACCGGTGTA(SEQ. ID. NO. 5)へ置換した(認識部位には下線を引いた)。BsiWI制限酵素部位を、HN遺伝子の非コード領域の下流、rBPIV3配列のnt 8595およびrHPIV3 JS配列のnt 8601に導入した。配列を、rBPIV3においてはGATATAAAGA(SEQ. ID. NO. 6)からGACGTACGGA(SEQ. ID. NO. 7)へと置換してpBPIVs(107)を得て、そしてrHPIV3においてはGACAAAAGGG(SEQ. ID. NO. 8)からGACGTACGGG(SEQ. ID. NO. 9)へと置換してpHPIVs(l06)を得た。FおよびHN遺伝子を、それぞれをSgrAIおよびBsiWIにより消化し、断片をゲル精製し、そして適切な断片を2種の完全長cDNAに組み立てることにより、pBPIVs(107)およびpHPIV3s(106)との間で置換した。BPIV3 FおよびHN遺伝子を保持するHPIV3バックボーン、pHPIV(215)と呼ばれる、は、ウィルス配列の15480 ntをコードし、そのnt 4835〜nt 8619はBPIV3に由来し、そしてそれはrHPIV3-FBHNBを導くために使用された(図8A-8C)。HPIV3 FおよびHN遺伝子を保持するBPIV3バックボーン、pBPIV(215)と呼ばれる、は、ウィルス配列の15438 ntをコードし、そのnt 4811〜nt 8577はHPIV3に由来し、そしてそれはrBPIV3-FHHNHを導くために使用された(図8A-8C)。
【0199】
cDNA由来のウィルスの回収のためのBPIV3サポートプラスミド
BPIV3 Ka N、PおよびL遺伝子をコードするサポートプラスミドを、修飾pUC 19ベクター中に組み込み、ついで以前に記載したpTM-1ベクター中にクローニングした(Durbin et al., 1997a、上述)。個々の遺伝子をpTMベクター中のT7プロモーターのすぐ下流に位置づけるため、部位特異的変異生成を用いて、N、PおよびLオープンリーディングフレーム(ORFs)の開始コドンにNco I部位を導入した。Nco I制限酵素部位およびそれぞれのORFの下流の天然に存在する制限酵素部位(NについてのSpe I、PについてのHinclI、そしてLについてのBsp LUI II)を、pTM中へのクローニングのために使用した。クローニングの後、pTM(N)中のNco I部位に変異生成させて、もとの配列に戻し、2番目のコドンにおける正確なアミノ酸の割り当てを回復した。pTM(P)およびpTM(L)において、ORFによりコードされるアミノ酸配列は、Nco I部位の導入により変化しなかった。
【0200】
トランスフェクション
HEp-2細胞(6ウェルプレートのウェル当たり、約1.5×106細胞)を、90%コンフルエントになるまで増殖させ、そしてそれぞれ0.2μgのBPIV3サポートプラスミドpTM(N)およびpTM(P)、および0.1μgのpTM(L)により、5μgの完全長アンチゲノムcDNAおよび12μl LipofectACE(Life Technologies, Gaithersburg, MD)とともにトランスフェクトした。それぞれのトランスフェクション混合物もまた、以前に記載したように、1.5×107プラーク形成単位(PFU)のMVA-T7を含有した(Durbin et al., 1997、上述)。培養液を10%ウシ胎児血清を含有するMEM(Life Technologies, Gaithersburg, MD)により置換するまで、培養物を32℃にて12時間、インキュベートした。32℃でさらに3日間インキュベートした後上清を回収し、そして25 cm2フラスコ中LLC-MK2細胞単層上で継代しし、そして32℃で5日間インキュベートした。上清中に存在するウィルスを3回プラーク精製した後増幅しそして特性決定した。
【0201】
回収されたキメラ組換え体の分子的特性決定
rBPIV3およびrHPIV3中で保存された配列を認識するプライマー対を使用して行った感染細胞または上清から単離したウィルスRNAのRT-PCRにより、ウシまたはヒトPIV3バックボーン中の異種FおよびHN遺伝子の存在を、プラーク精製された組換えウィルスにおいて確認した。この結果、同様のサイズの断片(rBPIV3においてはnt 4206-9035、rHPIV3においてはnt 4224-9041、rBPIV3-FHHNHにおいてはnt 4206-9017、そしてrHPIV3-FBHNBにおいてはnt 4224-9059)が得られ、これらを次いでEco RIにより消化して、そして1%アガロースゲル状での電気泳動により解析した(図9)。それぞれのウィルス中の導入されたSgrAIおよびBsiWI制限酵素部位に隣接するヌクレオチド配列を、それぞれのRT-PCR産物をシークエンシングすることにより確認した。
【0202】
細胞培養におけるHPIV3/BPIV3キメラウィルスの複製
感染多重度(MOI)0.01でトリプリケートで感染させ、そして24時間ごとに6日間、以前に記載されたようにサンプルを回収することにより(Tao et al., 1998、上述)、LLC-MK2細胞におけるBPIV3 Ka、rHPIV3-FBHNB、rBPIV3-FHHNH、rHPIV3-NBおよびrHPIV3の複数サイクルの増殖動態を調べた。サンプルを瞬間冷凍し、そして96ウェルプレート中LLC-MK2細胞単層上での、32℃での1回のアッセイにおいて、以前に記載したように力価を測定した(Durbin et al.,Virology 261:319-330, 1999b、本明細書中に参考文献として援用する)。
【0203】
霊長類モデル研究
血球凝集-阻害(HAI)アッセイ(van Wyke Coelingh et al., 1988、上述)により測定した場合にPIV3に対して血清反応陰性であるアカゲザルに、2または4匹の動物の群で、BPIV3 Ka、rHPIV3-FBHNB、rBPIV3-FHHNH、rHPIV3-NBまたはrHPIV3のmlあたり105の組織培養感染性用量50(TCID50)で、鼻内および気管内の予防接種をした。鼻咽頭スワブを第1〜11日および第13日に毎日回収した。気管洗浄サンプルを、感染後第2、4、6、8、および10日に回収した。個々のサンプルを瞬間冷凍し、そして全てのサンプルが力価測定に利用可能になるまで-70℃で保存した。検体中のウィルスを、24および96ウェルプレート中LLC-MK2細胞単層上で、以前に記載されたように、力価測定した(Durbin et al., 1999b、上述)。第0日および第28日にサルから回収された血清を、HPIV3 JSおよびBPIV3 Kaを抗原として使用するHAIアッセイにより、以前に記載されたように試験した(van Wyke Coelingh et al., 1988、上述)。接種後第28日目に、サルに、部位あたり106 TCID50のHPIV3 JSにより、鼻内および気管内をチャレンジした。鼻咽頭スワブサンプルを第3、4、5、6、7および8日に回収し、そして気管洗浄サンプルをチャレンジ後第4、6および8日に回収した。上述したように、1回のアッセイにおいてサンプルの力価を測定した。血清をチャレンジ後第28日に回収した。
【0204】
cDNAからのrBPIV3およびBPIV3/HPIV3キメラウィルス(rHPIV3-FBHNBおよびrBPIV3-FHHNH)の回復
完全なBPIV3アンチゲノムcDNA、pBPIV(184)と呼ばれる、を、BPIV3 Kaのコンセンサス配列をコードする様に構築した。このBPIV3アンチゲノムcDNAを、独自のSgrAIおよびBsiWI部位を、それぞれMおよびHN遺伝子の非コード領域の下流中に導入することにより、さらに修飾した(図8C)。同一の制限酵素部位を、以前に記載した完全なHPIV3アンチゲノムcDNA、p3/7(131)2G(Durbin et al., 1997a、上述)のMおよびHN遺伝子の非コード領域の下流に導入した。HPIV3およびBPIV3のFおよびHN糖タンパク質遺伝子を、このSgrAI-BsiWI制限酵素断片を置換することにより交換した。遺伝子全体の直接的な交換は、BPIV3およびHPIV3のシス-活性化シグナル間での高レベルの配列保存性のために、十分に許容されるものと予想された。BPIV3 FおよびHN遺伝子を保持するHPIV3アンチゲノムcDNAは、pHPIV(215)と呼ばれ、そしてHPIV3 FおよびHN遺伝子を保持するBPIV3アンチゲノムcDNAはpBPIV(215)と呼ばれる。
【0205】
アンチゲノムcDNA、pBPIV(184)、pHPIV(215)、pBPIV(215)およびp3/7(131)2Gを、HEp-2細胞中に、3種のBPIV3サポートプラスミド、pTM(N)、pTM(P)およびpTM(L)とともに別々にトランスフェクトし、そして細胞をT7 RNAポリメラーゼを発現する組換えMVAにより同時に感染させた。回収されたウィルスが実際に予想されたrBPIV3、rHPIV3-FBHNB、rBPIV3-FHHNHおよびrHPIV3ウィルスであることを確認するため、HPIV3 JSおよびBPIV3 Kaにおける同一の配列を認識するプライマー対を使用するRT-PCRにより、細胞内RNAまたはそれぞれのクローン化ウィルス由来の上清から得たRNAを解析した。プライマー対は、M遺伝子、FおよびHN遺伝子の下流末端、およびL遺伝子の上流末端に対応するDNAの4.8 kbの断片(rBPIV3においてはnt 4206-9035、rHPIV3においてはnt 4224-9041、rBPIV3-FHHNHにおいてはnt 4206-9017、そしてrHPIV3-FBHNBにおいてはnt 4224-9059)を増幅した。それぞれのPCR産物の精製は、逆転写酵素の含有量に依存し、このことから、それぞれはウィルスRNAに由来し、コンタミネーションしたcDNAに由来するものではないことが示される(データは示していない)。PCR産物をEco RIにより消化し、それにより4種のウィルスのそれぞれについて、別個の、独自の制限酵素消化パターンを得られることが予想された(図9)。それぞれのケースにおいて、予想されるパターンを観察し、バックボーンの同一性および挿入されたFおよびHN遺伝子の同一性を確認した。さらに、ヌクレオチドシークエンシングをRT-PCR産物に対して行い、導入された制限酵素部位および隣接する配列の存在を確認した。
【0206】
LLC-MK2細胞においてrBPIV3-FHHNHにより引き起こされた細胞変性作用(cytopathic effect;CPE)は、HPIV3 JSのもの(凝縮し、球状化した細胞および小型のシンシチウム)とは区別することができないが、しかしBPIV3のもの(大型の多核シンシチウム)とは異なっており、一方でrHPIV3-FBHNBにより引き起こされたCPEは、BPIV3により引き起こされたものと同一である。このことは、キメラPIVの細胞病理が、FおよびHN遺伝子の起源である親により共分離されることを示す。
【0207】
BPIV3/HPIV3キメラウィルス細胞培養において効率的に複製する
rHPIV3-FBHNBおよびrBPIV3-FHHNHの増殖動態を、LLC-MK2単層に0.01のMOIで感染させ、そして感染性ウィルスの産生をモニターすることにより、それらの親ウィルスの動態と比較した。2種のキメラウィルスの複製の動態および程度は、それらのHPIV3またはBPIV3親ウィルスのものと匹敵した(図10)。このことは、BPIV3およびHPIV3糖タンパク質が、異種PIV3内部タンパク質と矛盾しないことを示唆している。これは、効率的にワクチンウィルスを産生することを可能にしうるため、重要な特性である。
【0208】
BPIV3/HPIV3キメラウィルスのFおよびHN遺伝子は、アカゲザルの気道におけるBPIV3 Kaの複製の宿主範囲制限の決定因子である
rHPIV3-FBHNBおよびrBPIV3-FHHNHを、それらのアカゲザルの上部気道および下部気道における複製能力について評価した。特に、BPIV3 Nタンパク質に対して上述したように、HPIV3中へのBPIV3 FおよびHN遺伝子の導入の、アカゲザルにおける複製の弱毒化に対する効果を示した(Bailly et al., 2000、上述も参照)。さらに、BPIV3中へのHPIV3 FおよびHN遺伝子の導入の、アカゲザルにおける複製に対する効果を測定した。BPIV3の優勢な弱毒変異がFおよびHNではなくHN遺伝子である場合、HPIV3-BPIV3糖タンパク質置換の、アカゲザルにおけるBPIV3の複製に対する全体的な効果を多少予想することができる。
【0209】
それぞれのキメラウィルスを、部位あたり105 TCID50の用量で、アカゲザルに対して鼻内および気管内に投与した。キメラウィルスの複製のレベルは、rHPIV3およびBPIV3親ウィルスのレベルおよびrHPIV3-NBのレベルと比較した(表3)。rHPIV3親ウィルスは、下部気道においては低いレベルから適度なレベルで複製するため、群どうしの意味のある比較は、上部気道における複製についてのみ行うことができる。rHPIV3-FBHNBの複製のレベルは、そのBPIV3親のレベルと同様であり、そしてそのHPIV3親のレベルよりは実質的に低い(表3;図11、パネルA)。このことから、BPIV3糖タンパク質遺伝子には、アカゲザルに対するBPIV3の宿主範囲弱毒表現型の、1またはそれ以上の主要な決定因子が含まれることが示された。rHPIV3-FBHNBおよびrHPIV3-NBの複製の程度およびパターンは非常に類似しており、このことから2種のウシ遺伝的要素、すなわちN遺伝子対FおよびHN遺伝子、のぞれぞれが同様な程度でHPIV3を弱毒化することが示される。
【0210】
表3:BPIV3のFおよびHN糖タンパク質遺伝子は、アカゲザルの呼吸気道においてその制限的な複製に寄与する
【0211】
【表2】
【0212】
1各部位につき、サルに鼻内および気管内で1 mlの接種物中105.0TCID50を予防接種した。
26匹の動物を含む群は、以前のアカゲザルの研究に由来する4匹の動物を含む(Bailly et al., 2000、上述)。
3そのグループ内のそれぞれの動物に対する平均ウィルス力価の平均は、サンプリング日によらない。S.E.=標準誤差
4ウィルス力価測定は、32℃にてLLC-MK2細胞上で行った。ウィルス力価の検出限界は、10 TCID50/mlであった。平均ウィルス力価は、Duncanの複数範囲試験(α=0.05)を使用して、比較した。それぞれのカラム中において、別の文字を当てた平均力価は、統計的に異なっている。2文字により示した力価は、それぞれの文字により示した力価と有意には異ならない。
5鼻咽腔スワブサンプルは、day 1〜11およびday 13に回収した。
6気管洗浄サンプルは、感染後day 2、4、6、8、および10に回収した。
7day 0における力価は、<2.0であった。day 28は、野生型HPIV3によるチャレンジの日である。
** fHPIV3群の2匹の動物は、糖タンパク質交換のための2種の制限酵素認識部位を含有するウィルスである、rHPIV3sにより感染させた。
【0213】
rBPIV3-FHHNHキメラウィルスは、rHPIV3よりも有意に低い程度で複製し(表3)、そしてDuncanのマルチレンジ試験においてBPIV3と一緒にグループ化された。しかしながら、図11Bにおけるその複製パターンを調べると、rBPIV3-FHHNHは、そのHPIV3親およびBPIV3親のレベルの中間のレベルで複製することが示唆された。rBPIV3-FHHNHがその親のレベルの中間のレベルで複製するという説明は、ランクの一貫性(consistency of ranks)のFriedmanの試験によりサポートされ(Sprent, P., “A Generalization Of The Sign Test,” Applied Nonparametric Statistical Methods, pp. 123-126, Chapman and Hall, London, 1989, incorporated herein by reference)、それにより感染後第3日および第8日の間のHPIV3、rBPIV3-FHHNH、およびBPIV3の中央値力価が顕著に異なることを示した(d.f.2,8;p<0.05)。HPIV3 FおよびHNタンパク質の導入の結果、アカゲザルにおいてBPIV3の複製が増加した、という知見から、(i)FおよびHNが 宿主範囲制限の1またはそれ以上の決定因子を含有すること、そして(ii)FおよびHN遺伝子の外側に位置するBPIV3の1またはそれ以上の遺伝的要素、たとえばNタンパク質、がアカゲザルに対するウィルスを弱毒化すること、が示される。このことは、宿主範囲制限に対する遺伝的基礎には、複数の遺伝子が関与しうることを追認している。
【0214】
HPIV3糖タンパク質遺伝子を保持するキメラBPIV3は、HPIV3に対する血清HAI抗体を誘導し、そしてwt HPIV3チャレンジに対する高レベルの抵抗性を誘導する
rBPIV3-FHHNHは、それをHPIV3に対する候補生弱毒ウィルスワクチンとする、BPIV3由来の弱毒化遺伝子およびHPIV3の抗原特異性、すなわち、主要な防御抗原であるFおよびHN糖タンパク質を含む、重要な特徴を有する。したがって、HPIV3によるチャレンジに対するその免疫原性および防御効率を詳細に報告した。BPIV3 Ka、rHPIV3-FBHNB、rBPIV3-FHHNH、rHPIV3-NB、またはrHPIV3による感染により、アカゲザルを免疫化した。アカゲザルには28日後にHPIV3 JS野生型ウィルスをチャレンジした。血清サンプルを採取し、その後第0日に最初の感染を行い、そしてその後チャレンジを行った。BPIV3およびrHPIV3-FBHNBは、BPIV3とHPIV3よりも効率的に反応する血清HAI抗体を誘導し、一方HPIV3およびrBPIV3-FHHNHの場合には逆のことが起こった。このように、それぞれのウィルスにおける糖タンパク質遺伝子の起源が、HAI抗体反応がHPIV3に対してあるいはBPIV3に対して優性であるかを指向するかどうかを決定した。チャレンジしたHPIV3ウィルスの複製は、以前に免疫化したサルの上部気道および下部気道において顕著に減少した(表4)。HPIV3に対する防御的効率のレベルは、様々なウィルスの間でそれほど異ならなかったが、HPIV3 FおよびHNを保持するウィルスは、BPIV3 FおよびHNを保持するウィルスの場合よりも、上部気道において一貫してより防御的であった。このことは、HPIV3 FおよびHNを保持するウィルスにより誘導されるより高レベルのHPIV3-特異的血清HAI抗体にしたがっている。
【0215】
表4:BPIV3/HPIV3キメラ組換えウィルスによるアカゲザルの免疫化により、野生型HPIV3によるチャレンジに対する抵抗性が誘導される
【0216】
【表3】
【0217】
1各部位につき、サルに鼻内および気管内で1 mlの接種物中105.0TCID50を予防接種した。
26匹の動物を含む群は、以前のアカゲザルの研究に由来する4匹の動物を含む(Bailly et al., 2000、上述)。
3そのグループ内のそれぞれの動物に対する平均ウィルス力価の平均は、サンプリング日によらない。
4ウィルス力価測定は、LLC-MK2細胞上で行った。ウィルス力価の検出限界は、10 TCID50/mlであった。平均ウィルス力価は、Duncanの複数範囲試験(α=0.05)を使用して、比較した。それぞれのカラム中において、別の文字を当てた平均力価は、統計的に異なっている。2文字により示した力価は、それぞれの文字により示した力価と有意には異ならない。免疫化していない動物群は、チャレンジの日においてDuncanの解析に含まれなかった。
5鼻咽腔スワブサンプルは、チャレンジ後day 3〜8に回収した。
6気管洗浄サンプルは、チャレンジ後day 4、6、および8に回収した。
** rHPIV3群の2匹の動物は、rHPIV3sにより感染させた。
【0218】
前述した実施例に基づいて、本発明は、BPIV遺伝子の外来のものを毒性のHPIVバックボーン中に提供し、そして逆に(visa versa)新規の、ヒト-ウシキメラPIVワクチン候補物を得た。本実施例において検討される典型的なキメラ組換え体の中で、rBPIV3-FHHNHおよびそのrHPIV3-FBHNB対応物およびそれぞれの親ウィルスは、in vitroで複製した。かなり互いに異なるHPIV 1 FおよびHNタンパク質がHPIV3バックグラウンドにおいて非常に機能的であり(Tao et al., J. Virol. 72:2955-2961, 1998)、in vitroでの複製についての弱毒化されていないキメラウィルスの能力により証明されたため、BPIV3およびHPIV3の間でのFおよびHNの置換は融和性のものであることも確認された。rBPIV3-FHHNHが、アカゲザルの上部気道において、そのHPIV3およびBPIV3親の中間のレベルで複製したことから、霊長類に対するBPIV3の全体的な弱毒化に対して、BPIV3 FおよびHN遺伝子は独立した寄与をすることが示される。このように、BPIV3ウィルスの全体的な弱毒化は、2またはそれ以上の遺伝的要素の合計であり、そのうちの一つはFおよびHN遺伝子のセットであり、そして別の一つはNであることが示される。
【0219】
BPIV3それ自体はHPIV3に対するワクチンウィルスとして評価されているが(Karron et al., Pediatr. Infect. Dis. J. 15:650-654, 1996;そしてKarron et al., J. Infect. Dis. 171:1107-1114, 1995)、it is only HPIV3に対する抗原性にすれば25%しか関連していない(Coelingh et al., J. Infect. Dis. 157:655-662, 1988)。このように、BPIV3のHPIV3に対する抗原性は、HPIV3の防御的なFおよびHN抗原を発現する様に本発明にしたがって修飾すれば、改善されるであろう。rBPIV3-FHHNHはそのようなウィルスを示し、そして本実施例において、rBPIV3-FHHNHによるアカゲザルの免疫化により、BPIV3により免疫化した場合よりもHPIV3に対するより高レベルの抗体が誘導された。さらに、rBPIV3-FHHNHは上部気道および下部気道におけるHPIV3チャレンジの複製に対して、一定レベルの防御を付与したが、これはrHPIV3による以前の感染により付与されたものと統計的には区別することができなかった。同様に、BPIV3 Nタンパク質により弱毒化されるが、しかしHPIV3防御的抗原を有するrHPIV3-NBは、HPIV3チャレンジに対する高レベルの抵抗性も誘導した。アカゲザルにおいて同様のレベルで複製するにもかかわらず、rHPIV3-NBは、rBPIV3-FHHNHよりもHPIV3に対してより高レベルの抗体を誘導した。
【0220】
rBPIV3-FHHNHは、HPIV3と比較して顕著に弱毒化されるにもかかわらず、アカゲザルにおいて、BPIV3よりも高レベルで複製する。ヒトにおけるBPIV3の複製のレベルは低いため(Karron et al., J. Infect. Dis. 171:1107-1114, 1995)、この上昇はワクチンの間で十分に許容されるものと予想される。あるいは、本発明のヒト-ウシキメラウィルスを弱毒化する追加の方法を本明細書中に開示し、たとえばヒト幼児において、ワクチンウィルスが適度なレベルでのみ複製し、ワクチンの中で許容できない気道疾患を防止することを確保する。本発明のその他の観点において、霊長類におけるrBPIV3-FHHNHの複製の若干の増加により、異種ウィルス抗原、たとえば他のPIV(たとえばHPIV 1およびHPIV2)の糖タンパク質、RSV FおよびG糖タンパク質、そして麻疹HA糖タンパク質など、のためのベクターとして、rBPIV3-FHHNHを使用する機会が提供され、それを弱毒HPIV3ワクチン候補物中に添加されたかまたは置換された1または複数の遺伝子または1または複数のゲノム断片として組み込むことができる。本明細書中に開示される様々な別の態様において、サルにおけるrBPIV3-FHHNHの複製の、BPIV3の複製に対する若干の増加は、外来のウィルス防御的抗原、たとえばRSV糖タンパク質、の添加により相殺することができ、そのような追加により選択したレベルの弱毒化が提供される。ここで示されたデータは、霊長類に対するBPIV3の宿主範囲制限のための基礎をさらに明らかにし、そしてrBPIV3-FHHNHを、HPIV3に対する潜在的なワクチン候補物としてそして異種ウィルス抗原に対するベクターとして、みなしている。
【0221】
微生物寄託情報
以下の材料は、ブダペスト条約の条件下でAmerican Type Culture Collection(10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209)に寄託されており、そして以下の通り命名されている:
プラスミド 受託番号 寄託日
p3/7(131) (ATCC 97990) 1997年4月18日
p3/7(131)2G (ATCC 97989) 1997年4月18日
p218(131) (ATCC 97991) 1997年4月18日。
【0222】
前述の発明は、理解を明確にする目的で実施例により詳細に記載したが、これらは説明のために提示したものであって限定的なものではなく、当業者であれば一定の変更および修正が記載に含まれ、そして過度の実験を行うことなく、添附の請求の範囲に記載の範囲内でそのような一定の変更および修正を実施することができることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、HPIV3中へのウシPIV株KaまたはSFのNコード領域のクローニングを示す。図1A〜Cでは、BPIV3 Nオープンリーディングフレーム(ORF)がそれに対応する全長rJSアンチゲノムcDNA中のHPIV3配列を置換する(Durbin et al., 1997a、前掲)。BPIV3 KaおよびSF N遺伝子を、まず標準的分子生物学的手法を用いるTR-PCRによりウイルス粒子RNAから増幅し、1.9kbフラグメントとしてpBluescript中へサブクローニングして、それぞれpBS-KaNまたはpBS-SFNを得た。HPIV3 rJS N遺伝子を1.9kb Mlul/EcoRIフラグメントとして、rJS HPIV3アンチゲノムの5'側半分を含むプラスミドからpUC119中へサブクローニングして(Durbin et al., 1997a、前掲;米国特許出願09/083,793:1998年5月22日出願;米国仮特許出願60/047,575:1997年5月23日出願(WO98/53078に対応);および米国仮特許出願60/059,385:1997年9月19日出願;それぞれを本明細書に援用する)、pUC119JSNを得た。各N遺伝子を部位特異的変異誘発により修飾して、それぞれ翻訳開始部位および停止部位にNcolおよびAflII部位を挿入した。KaおよびSF N遺伝子は、翻訳開始および停止部位領域が同一であり、従って図1Aに示すように両BPIV3 N遺伝子において同一の変異誘発反応が行われた。図1B--AflII/Ncol消化後、BPIV3 Nコード領域を提示するpBS-KaNまたはpBS-SFN由来の1.5kbフラグメントを、それのHPIV3カウンターパートに対する置換配列として、HPIV3 NサブクローンpUC119JSN-Ncol/AflIIのNcol/AflIIウインドウに導入した。図1C--次いで各キメラサブクローンを部位特異的変異誘発して、翻訳開始コドンの前または翻訳停止コドンの後のHPIV3 rJS中に存在する配列、および翻訳開始コドンの直後かつ翻訳停止コドンの前のBPIV3コード配列を再生した。これによりpUC119B/HKaNおよびpUC119B/HSFNが得られ、これらを用いて図2に示すようにBPIV3 N遺伝子をHPIV3 cDNAクローンに移入した。
図1、パネルA
【化3】
図1、パネルC
【化4】
【図2】 図2は、HPIV3アンチゲノムcDNA中へのHPIV3/BPIV3(株KaまたはSF)キメラN遺伝子の挿入を示す。図2Aにおいては、HPIV配列によりフランキングされたKaまたはSFのBPIV3 N ORFをMlul/EcoRIフラグメントとして、pUC119B/HKaNまたはpUC119B/HSFNからサブクローニングし、pLeft+2Gに挿入した(Durbin et al., 1997a、前掲)。pLeft+2Gプラスミドは、HPIV3 rJSアンチゲノムのnt2〜7437(ゲノムセンス)由来の5'側半分をT7プロモーターの後方に含む。T7プロモーターとHPIV3配列の間に転写改善のために挿入した2つのG残基の位置を星印で示した。図2B--肝炎デルタウイルスリボザイムおよびT7ターミネーターによりフランキングされたHPIV3アンチゲノムの3'末端を含むpRightのXhoI/NgoMIフラグメント(Durbin et al., 1997a、前掲;米国特許出願09/083,793:1998年5月22日出願;米国仮特許出願60/047,575:1997年5月23日出願(WO98/53078に対応);および米国仮特許出願60/059,385:1997年9月19日出願;それぞれを本明細書に援用する)を、修飾されたpLeftプラスミドのXhoI/NgoMIウインドウ中へクローニングして、プラスミドpB/HPIV3KaNおよびpB/HPIV3SFNを得た。これらの各キメラプラスミド構築体は、それのBPIV3 KaまたはSFカウンターパートで交換されたNコード領域以外は、HPIV3アンチゲノムRNAの完全プラスセンス配列を含む。
【図3】 図3は、HPIV3、BPIV3および本発明のキメラウイルスの、N翻訳開始(A)および停止(B)コドンの周囲のヌクレオチド配列を示す。各ORFの位置は各GenBankレポート(BPIV3 Kaについては#AF178654、BPIV3 SFについては#AF178655、および#Z11515)に記載されており、これを本明細書に援用する。N遺伝子中の翻訳開始(A)および停止(B)コドン(それぞれ下線)をフランキングする配列(プラス-センス)を、親組換えHPIV3 JS(rJS)、生物由来の親BPIV3 KaおよびSFウイルス(KaおよびSF)、ならびにキメラcKaおよびcSFウイルスについて示す。cKaおよびcSFウイルス配列中の宿主特異的残基、ならびにrJS中のそれらのカウンターパート(開始コドンの前および翻訳停止コドンの後)およびSFまたはKa中のそれらのカウンターパート(開始コドンから停止コドンまで、それらを含めて)を太字で示す。プラーク精製したキメラウイルスをRT-PCRによりウイルス粒子RNAから増幅させ、Taq Dye Deoxy Terminator Cycleキット(ABI、カリフォルニア州フォスターシティー)により配列決定した。これにより、推定配列が各キメラウイルス中に存在することが確認された。
図3A:rJS
【化5】
図3A:cKaおよびcSF
【化6】
図3A:KaおよびSF
【化7】
図3B:rJS
【化8】
図3B:cKaおよびcSF
【化9】
図3B:KaおよびSF
【化10】
【図4】 図4は、本発明のBPIV3/HPIV3キメラウイルスの構造、およびウイルスRNAから生成したRT-PCR生成物のTaqI消化による確認を詳細に示す。図4Aには、キメラcKaおよびcSFウイルスのゲノムをHPIV3およびBPIV3親ウイルスのゲノムと対比して模式的に(正確な縮尺率ではない)示す。KaおよびSF特異的領域を、それぞれ淡い陰影と濃い陰影で示す。rJSゲノム上の矢印は、診断TaqI消化のためにキメラおよび親ウイルスのRT-PCR増幅に用いたプライマーの位置を表す。これらのプライマーはHPIV3とBPIV3の間で保存された領域に対するものであり、したがってHPIV3、BPIV3およびキメラBPIV3/HPIV3ウイルスの増幅に使用できる。図4Bには、図4Aに示したプライマー対を用いてRNAから増幅した1898-bpのPCR生成物について、TaqI消化の予想サイズを各ウイルスにつき示す。このPCR生成物を図4Bの最上部に示し、N ORFを黒い四角で示す。各ウイルスにユニークであり、したがってウイルス同定に役立つTaqIフラグメントを星印で示す。図4Cには、キメラcKa(左)またはcSF(右)のPIV3 Nコード領域を含むPCR生成物のTaqIプロフィルを示す。HPIV3およびBPIV3親ウイルスのプロフィルを両側に示す。ウイルス同一性の診断となる特異なTaqIフラグメント、およびこれらに対応する(4B)で同定されたものを星印で示す。DNAゲルバンドの長さの計算値(bp)を示した。
【図5】 図5は、MDBK(A)細胞またはLLC-MK2(B)細胞中における親およびキメラウイルスの多サイクル増殖曲線を示す。6ウェルプレートのウェル(それぞれ9.6cm2)内のウシMDBK(A)細胞またはサルLLC-MK2(B)細胞の単層に、それぞれ感染多重度0.01で指示した親またはキメラウイルスを感染させた。各ウイルスについて3回の反復感染を行った。指示した時点で試料を採取し、-70℃に保存し、TCID50アッセイにより並行して力価測定した。各時点で3試料の平均値を用いて増殖曲線を作成した。検出下限は101.5TCID50/mlであり、これを点線で示した。
【図6】 図6A〜6Gは、ウシPIV3 Ka株の完全プラスセンスヌクレオチド配列(SEQ ID NO. 22)を示す。
【図7】 図7A〜7Gは、ウシPIV3 SF株の完全プラスセンスヌクレオチド配列(SEQ ID NO. 23)を示す。
【図8】 図8Aは、キメラrHPIV3-FBHNBおよびrBPIV3-FHHNHウイルス、ならびにそれらの親ウイルスrHPIV3 JSおよびBPIV3 Kaのゲノムを模式的に示す(正確な縮尺率ではない)。rHPIV3とrBPIV3の間で、それぞれM遺伝子およびHN遺伝子末端配列の前に導入したSgrAIおよびBsiWI部位を用いて単一制限フラグメント中においてFおよびHN遺伝子を交換した。
図8Bは、BPIV3 KaについてアンチゲノムcDNAの組立てを示す。BPIV3 Kaの完全アンチゲノム配列(GenBank寄託番号AF178754)をコードする全長cDNAを構築した。このcDNAは、ウイルス(v)RNAの逆転写(RT)およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅で得たサブクローンから組み立てられた。アンチゲノムの複数のサブクローンを配列決定し、BPIV3 Kaのコンセンサス配列に適合するクローンのみを全長クローンの組立てに用いた。nt21および23は例外であり、公表された配列とは異なるがウイルス集団に類似の頻度で現われた。
図8Cは、親およびキメラウシ-ヒトPIVゲノムの特色を説明する。キメラrHPIV3-FBHNBおよびrBPIV3-FHHNHウイルス、ならびにそれらの親ウイルスrHPIV3 JSおよびBPIV3 Kaのゲノムを模式的に示す(正確な縮尺率ではない)。2つのユニーク制限酵素認識部位SgrAIおよびBsiWIをそれぞれM遺伝子およびHN遺伝子の末端付近に導入した。導入したこれらの制限部位をもつ組換えHPIV3およびBPIV3ウイルスを、図8C2に示すようにrHPIV3sおよびrBPIV3sと表示した。rHPIV3 JSとrBPIV3 Kaの間で糖タンパク質遺伝子を交換した。変異誘発したヌクレオチドを各cDNA構築体の下に示し、各配列の第1ヌクレオチドの位置を記載した。導入したSgrAIおよびBsiWI制限部位に下線を施し、HPIV3とBPIV3の間で異なり、したがって挿入遺伝子の起源を同定するヌクレオチドを太字で表した。
図8C、パネル1
【化11】
図8C、パネル1
【化12】
図8C、パネル2
【化13】
図8C、パネル2
【化14】
図8C、パネル3
【化15】
図8C、パネル3
【化16】
【図9】 図9は、ウイルスRNAのRT-PCRおよびEcoRI消化による組換えウイルス同一性の確認を示す。ウイルスRNAのRT-PCR生成物は、BPIV3およびHPIV3の両方のFおよびHN遺伝子のいずれかの側の保存領域を認識するプライマー対を用いて調製された。EcoRIで消化すると4ウイルスそれぞれに特異なパターンの制限フラグメントが得られた。左側の模式図において、水平の線は増幅ウイルス配列を表し、垂直の線はEcoRI部位を示す。各制限フラグメントの予想サイズを線の上方に示した。各線の下方の数値は、BPIV3 Ka、HPIV JS(GenBank寄託番号#AF178654およびZ11575)、または記載したキメラ誘導体のアンチゲノムRNA中におけるその配列の位置に対応する。右側にはPCR生成物のEcoRI消化物の1%アガロースゲルを示し、これにより親ウイルスとキメラウイルスの同一性が確認される。星印はサイズが類似するため同時に移動する2つの制限フラグメントを含有するゲルバンドを表す。
【図10】 図10は、サルLLC-MK2細胞におけるキメラおよび親ウイルスの多サイクル複製を示す。3つのキメラウイルスrHPIV3-FBHNB、rBPIV3-FHHNHおよびrHPIV3-NB(cKaとも呼ぶ)の多サイクル複製(装入接種物のMOIは0.01)を、それらの親BPIV3 KaおよびrHPIV3の複製と比較する。ウイルス力価を3試料の平均log10TCID50/ml±標準誤差として示す。このアッセイの検出下限は10 TCID50であり、これを水平の点線で示した。
【図11】 図11は、感染したアカゲザルの鼻咽頭スワブ中のキメラおよび親ウイルスの平均力価を感染期間にわたって表す。同一ウイルスに感染した4または6匹のサルの群について、ウイルス力価をLLC-MK2細胞における3試料の平均TCID50/ml±標準誤差として示す。これは表3に示したものと同一実験を説明する。パネルAではrHPIV3-FBHNBの平均力価をrHPIV3およびBPIV3 Kaの力価と比較する。パネルBではrBPIV3-FHHNHの平均力価をBPIV3 KaおよびrHPIV3の力価と比較する;後2ウイルスについては力価はパネルAのものと同一であるが、比較しやすくするために別個に提示した。5日目の力価を図から除いたのは、それらが4および6日目の力価よりはるかに低かったからである。これは試料採取に際しての技術的問題によると思われる。
【配列表】
Claims (4)
- 融合(F)タンパク質、ヘマグルチニン−ノイラミニダーゼ(HN)糖タンパク質、主要ヌクレオキャプシド(N)タンパク質、および異なるPIVの1以上のヘテロロガス遺伝子と結合してヒト−ウシキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムを形成した、ヒトPIV(HPIV)またはウシPIV(BPIV)のバックグラウンドゲノムまたはアンチゲノムを含む、単離した感染性ヒト−ウシキメラ−パラインフルエンザウイルス(PIV)であって:
(i) FおよびHN遺伝子がHPIV3の対応物により置換されている組換えウシPIV3(rBPIV3−FHHNH);
(ii) FおよびHN遺伝子がBPIV3の対応物により置換されている組換えヒトPIV3(rHPIV3−FB HN B);および
(iii) NオープンリーディングフレームがBPIV3の対応物により置換されている組換えヒトPIV3(rHPIV3−NB)、
から成る群より選択される、前記キメラPIV。 - PIVに対する免疫応答を誘発するための免疫原組成物であって、免疫学的に十分な量の請求項1に記載のキメラPIVを生理学的に許容できるキャリヤー中に含む組成物。
- 請求項1に記載のキメラPIVをコード可能なキメラPIVゲノムまたはアンチゲノムを含む単離ポリヌクレオチド分子。
- 請求項1に記載のキメラPIVを製造する方法であって、
請求項3に記載の単離ポリヌクレオチド分子を含む発現ベクターを、細胞又は無細胞溶解物中において発現させることを含む方法。
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