しかし、紙送り出しローラの回転力で紙を送り出すためには、紙を保持する十分な挟持力と、これに抗してローラを回転させるための強力な回転力が必要であり、これを弾性力で自己復帰可能な可動板の蓄力のみで賄うことは困難であった。
一方、ロール紙ホルダの軸を直接回転させて紙を送り出す場合には、紙の繰り出し量はカバーの押し下げ量に相当する長さとなるため、紙とカバーの離れが少ない場合には僅かな長さしか吐出できず、カバーと紙との距離を大きくとるとホルダとしての使い勝手が悪くなる問題点があった。
この発明は、上記課題を解決し、ロール紙を引き出し切断した後、モータ等の動力を用いなくとも、十分な回転力で摘み代となる必要長さを確実に繰り出すことが可能なロール紙ホルダを提供することを目的としている。
上記課題を解決するため、この発明のロール紙ホルダは、ロール紙の空心部を貫通するロール紙軸と、ロール紙を収納する筐体と、この匝体の前面に開口する紙取出口とを備えるロール紙ホルダにおいて、前記ロール紙軸は、周設するロール紙保持部を前記空心部内面に密着し、このロール紙保持部の側方にあってロール紙軸を遊挿する傘歯車及び端部歯車は、夫々付設する爪クラッチに摺接して紙取出方向への回転時に係止する円周溝を形成し、前記ロール紙軸と平行に配設する下方軸には、中段歯車を介して前記端部歯車の回転を受け下方軸を遊挿すると共に前記円周溝を形成して付設する爪クラッチに摺接する下段歯車と、この下段歯車の爪クラッチから突設するピンを孔部に遊挿する鍔を備え下方軸を遊挿する遊動管体と、この遊動管体に対し軸方向のみ移動可能に挿設して下段歯車の反対側に位置する端部外管と、前記遊動管体を遊挿する共に前記円周溝を形成して付設する横移動可能な爪クラッチに接離し前記傘歯車と接離可能に配設する下段傘歯車と、この下段傘歯車に密着し筐体内面に固設する爪に対して接離可能に配設する鋸歯車と、この鋸歯車に一端を固着すると共に他端を前記端部外管に固着して前記下段歯車の回転力を蓄力するつる巻ばねと、前記鋸歯車及び下段傘歯車を前記遊動管体に対して横移動させると共に遊動管体中間部に突設する係止部に端部外管を当接して遊動管体を横移動せしめ前記横移動可能な爪クラッチと前記下段傘歯車の円周溝との係合を解き放すために端部外管に係合する揺動杆と、この揺動杆を下段歯車と反対方向に引き寄せるための弾性体と、前記紙取出口より取り出したロール紙の切断時に応動して前記揺動杆を下段歯車方向に押し込むためのアームを備えることを特徴とするものである。
筐体は、ロール紙軸及び下方軸を軸支するための壁体を適宜配設する。ロール紙軸はロール紙保持部を装着することでロール紙の空心部内面に密着しロール紙の回転とロール紙軸の回転を一致させる。ロール紙の交換を可能とするため筐体側面を開閉動作可能とし、この開口部を利用して使用済み紙芯の撤去及び新規ロール紙の補充を行なう。このため、ロール紙軸の一端を軸支する軸受部は軸に対して係脱可能な構成とする。又ロール紙軸は片持が可能な構成とする。
傘歯車及び端部歯車はロール紙軸に対しフリーな構成で、これら歯車の回転は、付設する爪クラッチ若しくは連結する下段傘歯車又は中段歯車に依存している。爪クラッチは夫々傘歯車又は端部歯車に密着する円板でロール紙軸と同時に回転する。円板には爪ピンを遊挿する孔を穿設し、板面に装着する弾性体によって爪ピンを各歯車の円周溝方向に付勢している。
爪ピンを収納する円周溝は円周を適宜分割するよう複数設置し、各円周溝は夫々の歯車面板に形成する入口部より漸深して奥部に係止部を設ける。ロール紙軸の回転により爪ピンが回転する場合は、歯車面板に爪ピン先端を摺接しながら円周溝に進入する。この時、入口部より進入する回転の時には係止部で停止し、その回転力を夫々の歯車に伝達する。一方係止部側から進入する回転の時には入口部より溝外に出るため回転力は歯車に伝達されない。
逆に各歯車が連結する下段傘歯車又は中段歯車の回転により各歯車自身が回転する場合は、歯車面板に爪ピン先端を摺接しながら円周溝の方が回転することになる。この場合には、爪ピンに対して入口部から進入する回転の時、係止部で爪ピンを保持するため回転力が爪クラッチを介してロール紙軸に伝達される。係止部側から進入する回転の時にはロール紙軸に回転力は伝達されない。
下方軸は下段歯車と下段傘歯車が夫々端部歯車及び傘歯車の回転を受ける高さにロール紙軸と平行に配設する。下段歯車に付設する爪クラッチは、下方軸と同方向に回転するものであるが、下段歯車及び遊動管体は下方軸に対しフリーな構成をとる。
下段歯車の回転は中段歯車の回転に依存するものであり、付設する爪クラッチの円板には爪ピンを遊挿する孔を穿設し、円板の板面に装着する弾性体によって爪ピンを下段歯車に形成する円周溝方向に付勢する。この円周溝も円周を適宜分割するように複数設置するもので、歯車面板に形成する入口部より漸深して奥部に係止部を設ける。
下段歯車が中段歯車の回転を受けて回転する場合、歯車面板に爪ピン先端を摺接しながら円周溝が回転する。紙取出方向の回転を受けて下段歯車が回転する場合には、円周溝は爪ピンに対して入口部から進入し係止部で爪ピンを保持する。このため爪クラッチから突設するピンを孔部に遊挿する鍔を介して回転力が遊動管体に伝達される。即ち紙取出方向の回転を受けて遊動管体も同方向に回転する
遊動管体には一方の端部にピンを遊挿する鍔、その内側に小円板を夫々突設し、小円板からも下段傘歯車の面板に向かって小ピンを突設する。下段傘歯車の面板にはこの小ピンが当接及び係合し得る円周溝が形成されている。この小円板及び小ピンが横移動可能な爪クラッチを構成し、遊動管体と下段傘歯車との相対的な移動によって小ピンが接離する。
下段傘歯車は遊動管体に対してフリーな構成であるが、遊動管体が紙取出方向への回転を行なう場合には、小ピンが歯車面板に先端を摺接しながら円周溝に進入している。この時、小ピンが入口部より進入する回転の時には係止部で停止することになるので、その回転力を下段傘歯車に伝達する。
ロール紙軸に設ける傘歯車と遊動管体に設ける下段傘歯車は、相互に接離可能な状態に構成され、噛み合わせ状態となった時のみ相互の回転を相手方に伝達する。歯車の形状は下段傘歯車がスライドする時にスムーズに噛み合わせ若しくは分離動作が成し得るように設定する。
鋸歯車は下段傘歯車の側方に密着するもので、外周には筐体内面に固設する爪に対して接離可能な鋸歯を形成する。この爪は鋸歯に合致し得る形状の小片を弾性体により鋸歯方向に付勢するもので、爪と鋸歯が噛み合っている場合には紙取出方向のみ回転を許容する。噛み合いが外れた場合には鋸歯車及び下段傘歯車の回転方向は双方向可能である。
遊動管体の他方の端部にも鍔を形成し、その内方に端部外管を挿設する。端部外管は断面略楕円形状で、係合する揺動杆の作用により回転が抑止されるため軸方向のみ移動可能な構成である。
この端部外管と鋸歯車との間につる巻ばねを設ける。つる巻ばねは、紙取出方向の下段歯車の回転力を受けた鋸歯車の回転によって、その長さを縮めながら蓄力するもので、蓄力時には、端部外管はつる巻ばねの縮小により鋸歯車側に引き寄せられる。鋸歯と爪の噛み合わせが外れて蓄力が開放される時には、鋸歯車を逆回転させると共に、つる巻ばねの伸張によって端部外管を外方に押し戻す。
揺動杆には筐体内部に設ける弾性体の作用によって、常時下段歯車と反対方向に引き寄せる力を付勢する。このため通常は、端部外管、つる巻ばね、鋸歯車、下段傘歯車及び遊動管体は傘歯車と離隔する方向に位置している。従って紙取出方向に下段歯車が回転した場合にも傘歯車同士の噛み合わせは実現されない。
紙取出口よりロール紙を取り出し、これを切断する時にアームを動作させ、この動きに合わせ揺動杆を下段歯車方向に押し込むと、この時鋸歯車及び下段傘歯車は遊動管体に対して横移動することになり、鋸歯と爪の噛み合わせが外れると同時に傘歯車同士の噛み合わせが実現される。
更に揺動杆が端部外管を押圧すると、つる巻ばねは縮小しながら遊動管体中間部に突設する係止部に当接し、遊動管体を下段傘歯車に対し更に横移動させる。この時、小ピンを突設する小円板も横移動するため、小ピンと下段傘歯車の面板に形成する円周溝との係合が外れる。このため、つる巻ばねの蓄力が開放される時には、遊動管体に対してフリーな構成の下段傘歯車は、噛み合う傘歯車を紙取出方向へ回転させることになる。
この時傘歯車は、面板に爪クラッチの爪ピン先端を摺接しながら円周溝を回転させ入口部から進入した爪ピンを係止部で保持し、蓄力開放時の回転力をロール紙軸に伝達する。従ってつる巻ばねの回転力に応じて摘み部が自動的に送り出される。
なお、この時ロール紙軸は紙取出方向に回転するため、端部歯車、中段歯車、下段歯車及び遊動管体も同方向に回転することになるが、下段傘歯車は遊動管体に対してフリーな構成となっているため相互の回転を妨げない。
請求項2記載のロール紙ホルダの紙取出口は、三角形開口部を開閉するための蓋体を有し、この蓋体には開口部に合致する大きさの切断枠を備える共に、切断時に前記アームを押し込む当接部を設けることを特徴とするものである。
切断枠と三角形開口部縁とは相互の切断刃が摺接する構成で、挟み込む紙を三角形に切断する。アームは先端を筐体外部に突設し、蓋体の押し込み動作時に所要長さ押し込まれるように設定する。
請求項3記載のロール紙ホルダのロール紙軸は、ロール紙側方にベルト車と補助回転板を配設し、このベルト車に連動する上下ローラはロール紙を前記紙取出口方向に誘導し、前記補助回転板は、筐体内に設ける爪に摺接して紙取出方向への回転を許容する一方逆方向への回転は阻止する円周溝を形成することを特徴とするものである。
補助回転板は筐体外部に円周の一部を出現し、摘み部が不足する場合などに回転させることで紙を送り出す。補助回転板を誤って逆回転させると摘み部が引き込まれるため、これを防止する目的で爪に係止する円周溝を形成する。爪は筐体内の中壁等に固着する弾性体によって補助回転板の円周溝方向に付勢している。
爪を収納する円周溝は円周を適宜分割するよう複数設置し、各円周溝は板面に形成する入口部より漸深して奥部に係止部を設ける。補助回転板を紙取出方向に回転する場合は、爪に対して円周溝の係止部側から進入することになるため回転は自由である。逆回転を行なう時には入口部から進入することとなるため、係止部で爪が回転を抑止する。
この発明のロール紙ホルダは、ロール紙軸と同一方向に回転する傘歯車及び端部歯車を備え、ロール紙軸と平行に配設する下方軸には回転力を蓄力するつる巻ばね及びこの回転力を傘歯車に伝達するための歯車群及びその付属機構を備えるので、ロール紙の引き出しによる軸回転力を利用するだけで、ロール紙を切断した後、摘み代となる必要長さを自動的に、かつ確実に繰り出すことができる。
請求項2記載のロール紙ホルダは、紙切断部を三角形とする開口部及び蓋体を備え、この蓋体によってアームを押し込むので、ワンタッチの切断動作で摘み代を持ち易い三角形になすと共に、つる巻ばねの蓄力を開放するための操作も同時に行なえる。
請求項3記載のロール紙ホルダは、補助回転板とロール紙送り出し用のローラを備えるので、摘み部が不足する場合などに回転板を操作することで確実に先端を送り出すことができる。又補助回転板には逆方向回転防止手段を備えるので摘み代の引き込みを阻止することができる。
次にこの発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1はロール紙ホルダの正面図、図2は図1のII−II断面を示す断面図、図3は図2のIII−III断面を示す断面図である。ロール紙ホルダ1は、筐体2の正面にロール紙3を引き出し切断するための紙取出口4を備え、その側部に補助回転板開口部5を開設する。
紙取出口4は、三角形開口部4aを開閉するための蓋体4bを有し、この筐体4bには三角形開口部4aに合致する大きさの切断枠4cを突設する。切断枠4cは筐体2に枢支する蓋体平板4dの内側に貼着する略三角形板4eの二辺に周設するもので、切断枠4cと三角形開口部4aに設ける縁金4fとは相互の端部が摺接する構成で、蓋体4bの閉鎖時に挟み込むロール紙3を三角形に切断して摘み部を形成する。
三角形開口部4aの下方には後述するアーム10dの先端が突出するが、蓋体平板4dの応答する箇所にはこれを押し込むための当接部4gを設ける。
筐体2の内部にはロール紙3の空心部3aを貫通するロール紙軸6と、ロール紙3を挟持してその先端を紙取出口4に誘導する上下ローラ7と、ロール紙軸6と平行に配設する下方軸8と、この下方軸8に接続する揺動杆9と、この揺動杆9を引き寄せ若しくは押し込むための押引き手段10を備える。
ロール紙軸6は、弾性変形可能なロール紙保持部6aを周設し、その外面を空心部3aの内面に密着する。このためロール紙3の回転とロール紙軸6の回転は一致することになり、ロール紙3を引き出すとロール紙軸6は図2の矢印方向に回転する。
ロール紙軸6には、ロール紙保持部3aの側方にベルト車11と補助回転板12を配設する。ベルト車11はベルト11aを介して上下ローラ7を回動する。補助回転板12は開口部5より筐体2の外部に円周の一部を出現し、ロール紙3の摘み部が不足する場合などにこれを回転させることでロール紙3を送り出す。
補助回転板12の側部にはロール紙軸6を挿通軸支する中間壁体13を横設し、その上下端部より爪14を、弾性板15を介して補助回転板12の板面12aに当接するように突設する。補助回転板板面の構成を図4に示す。図4は図3のIV−IV断面における補助回転板を示す断面図である。
補助回転板12の板面12aには、爪14を収納し得る円周溝12bを、爪14が配置される円周部分を適宜分割するように複数箇所設置する。この円周溝12bと爪14の作用の詳細を図5に基づき説明する。図5は円周溝近傍の部分拡大斜視図である。各円周溝12bは板面12aに形成する入口部12cより漸深する形状で奥部に係止部12dを設ける。
補助回転板12を図4の矢印方向である紙取出方向に回転する場合は、弾性板15の作用により摺接する爪14に対して円周溝12bの係止部12d側から進入することになるため回転は自由である。逆回転を行なう時には入口部12c側から進入することとなるため、係止部12dで爪14が回転を抑止することになる。即ち補助回転板12を誤って逆回転させても、僅かな回転しかできず摘み部の引き込みを防止できる。
ロール紙軸6には傘歯車16及び端部歯車17を正逆回転自在に取り付け、夫々爪クラッチ16a,17aを付設する。端部歯車17の下方には中段歯車18を介して、その回転力を伝達する下段歯車19を配する。下段歯車19は下方軸8を遊挿するもので、爪クラッチ20を付設する。
下方軸8には下段歯車19の爪クラッチ20の側方に遊動管体21を配設し、下段歯車19の反対側に端部外管22を挿設する。遊動管体21は、その両端に、爪クラッチ20から突設するピン20aを孔部に遊挿する鍔21aと、端部外管22の外端鍔22a内面に当接する鍔21bを夫々設け、中間部には小円板21cと係止部21dを突設する。
下段歯車19及び遊動管体21は下方軸8に対してフリーな構成で、遊動管体21は回転及び横移動が可能であるが、端部外管22は揺動杆9が係合するため回転はできず、遊動管体21に対し軸方向にのみ移動が可能である。
遊動管体21を遊挿する下段傘歯車23には小円板21cから突設する小ピン21eが接離する。この小円板21c及び小ピン21eは下段傘歯車23の回転を制御する横移動可能な爪クラッチを構成する。
下段傘歯車23には鋸歯車24が密着し、その面板にはつる巻ばね25の一端が固着する。鋸歯車24は、筐体2の内面に固設する爪24aに対して接離可能に配設されている。つる巻ばね25の他端は端部外管22の内端鍔22b外面に固着しており、鋸歯車24のみが回転可能であるため、このつる巻ばね25に回転力を蓄力できる。
端部外管22に係合する揺動杆9を引き寄せ若しくは押し込むための押引き手段10は、揺動杆9をその先端で保持する平面略L字形状の挺子材10a、この挺子材10aを支点10b回りに回動付勢する引張部材10c、この引張部材10cの引張力に抗して挺子材10aを逆方向に回転せしめるためのアーム10dを備える。
次に紙取出時におけるつる巻ばねの蓄力過程を図6に基づき説明する。図6は紙取出直前の蓄力機構を示すロール紙ホルダの歯車群の断面図である。傘歯車16及び端部歯車17はロール紙軸6に対しフリーな構成で、これら歯車の回転は、付設する爪クラッチ16a,17a若しくは連結する場合の下段傘歯車23又は回転する場合の中段歯車18に依存している。
爪クラッチ16a,17aは、夫々傘歯車16又は端部歯車17に密着する円板16b,17bと、各円板に穿設する孔16c,17cと、この孔に遊挿する爪ピン16d,17dと、この爪ピンを各歯車方向に付勢する弾性板16e,17eを有する。
又下段歯車19は下方軸8に対し、下段傘歯車23及び鋸歯車24は遊動管体21に対して夫々フリーな構成であり、下段歯車19の回転は中段歯車18の回転に専ら依存するものである。又、下段傘歯車23及び鋸歯車24の回転は、横移動可能な爪クラッチである小円板21c及び小ピン21eが係合する場合の回転、若しくはつる巻ばね25が蓄力を解放する際の回転力に依存している。
各爪クラッチを係止するため各歯車の板面には円周溝が形成されているが、この爪クラッチの作用を図7乃至図10に基づき説明する。図7乃至図10は、夫々図6のVII−VII断面、VIII−VIII断面、IX−IX断面、X−X断面における各歯車の平面構成を示す断面図である。
図7に示すようにロール紙軸6が紙取出方向へ回転すると、爪クラッチ16aも同時に図の矢印方向に回転し、爪ピン16dも同方向に回転する。この時、弾性板16eにより付勢されている爪ピン16dは、図8に示すように傘歯車16の表面を摺接しながら図の矢印方向に回転する。
傘歯車16の板面16fには、補助回転板12と同様に、爪ピン16dを収納し得る円周溝16gを、爪ピン16dが配置される円周部分を適宜分割するように複数箇所設置する。この円周溝16gも板面16fに形成する入口部16hより漸深して奥部に係止部16iを設ける。
傘歯車16の円周溝16gは、図8の矢印方向である紙取出方向に爪ピン16dが回転する場合、係止部16i側から進入するように形成する。このためロール紙軸6が紙取出方向に回転する場合には傘歯車16は回転しない。
端部歯車17は、図9に示すようにロール紙軸6が紙取出方向へ回転すると、爪クラッチ17aも同時に図の矢印方向に回転し、爪ピン17dも同方向に回転する。この時、弾性板17eにより付勢されている爪ピン17dは、図10に示すように端部歯車17の表面を摺接しながら図10の矢印方向に回転する。
端部歯車17の板面17fにも円周溝17gを同様に複数箇所設置する。端部歯車17の円周溝17gは、爪ピン17dが図10の矢印方向である紙取出方向に回転する場合、入口部17h側から進入して奥部の係止部17iで係合する向きで形成する。このためロール紙軸6が紙取出方向に回転する場合、端部歯車17は同一方向に回転することになり、この時端部歯車17の回転は中段歯車18を介して下段歯車19に伝達される。
下段歯車19の板面19aにも同様な構成の円周溝19bを複数箇所設置する。この円周溝19bには付設する爪クラッチ20の爪ピン20bが摺接する。爪クラッチ20は、図9に示すように下段歯車19に密着する円板20cと、この円板に穿設する孔に遊挿する爪ピン20bと、この爪ピン20bを下段歯車19方向に付勢する弾性板20dを有する。
下段歯車19が図10の矢印方向に回転する場合、円周溝19bの入口部19c側から進入して奥部の係止部19dで爪ピン20bが係合する向きに形成する。このためロール紙軸6が紙取出方向に回転する場合、下段歯車19の回転は爪クラッチ20に伝達され、更に図8に示すように爪クラッチ20から突設するピン20aが遊動管体21の鍔21aの孔部を押圧することで遊動管体21を図の矢印方向に回転せしめる。この時小円板21c及び小ピン21eも同方向に回転する。
下段傘歯車23の板面にも同様な構成の円周溝23aを複数箇所設置する。この円周溝23aには小ピン21eが接離するが、揺動杆9が引張部材10cの作用によって引き寄せられている時、即ちロール紙3を切断するために蓋体4bを閉鎖押圧してアーム10d押し込むとき以外は常に摺接している。
下段傘歯車23の円周溝23aは小ピン21eが図8の矢印方向に回転する場合、円周溝23aの入口部23b側から進入して奥部の係止部23cで小ピン21eが係合する向きに形成する。このためロール紙軸6が紙取出方向に回転する場合、結局その回転は下段傘歯車23に伝達され、更に図7に示すように鋸歯車24を図の矢印方向に回転せしめる。
この時鋸歯車24は、揺動杆9及び押引き手段10の作用により引き寄せられているため爪24aに接触しているが、図7のように順方向回転となるため回転は可能となる、爪24aは鋸歯に合致し得る形状の小片を弾性体により鋸歯方向に付勢するもので、爪24aと鋸歯が噛み合っている場合には紙取出方向のみ回転を許容する。
これに伴いつる巻ばね25も同方向に回転することになるが、その先端は端部外管22の内端鍔22bの外面に固着しており、端部外管22は図7に示すように断面略楕円形状で、挿通する揺動杆9の開口部9aもこれに接し得る楕円形状であるため回転が抑止され、つる巻ばね25に回転力が蓄力される。
次につる巻ばねに蓄力がなされたときの歯車群の状態を図11及び図12に基づき説明する。図11は図3と同一断面であるがつる巻ばねに蓄力がなされたときのロール紙ホルダの断面図、図12は図6と同一断面であるがつる巻ばねに蓄力がなされたときのロール紙ホルダの歯車群の断面図である。なお、図11及び図12における部材構成は図3及び図6に示す部材構成と同一であるので、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
つる巻ばね25は、ロール紙3を引き出す際の回転力でその長さを縮めながら蓄力するため、端部外管22は遊動管体21に沿ってスライドし、鋸歯車24側に引き寄せられる。この時端部外管22に係合する揺動杆9も鋸歯車24側に移動するが、押引き手段10の引張作用により挺子材10aが回動支持し、このため端部外管22の外端鍔22aの内面に当接している。
なお、つる巻きばね25の蓄力解放力は、図7における矢印とは逆方向の回転力となるが、この時点では爪24aと鋸歯車24が噛み合っているため発散されない。又、つる巻ばね25の蓄力時に遊動管体21に作用する力は下段歯車19及び爪クラッチ20からの回転力のみであるため、横方向の移動は生じない。
又つる巻ばね25の縮小時には端部外管22側と鋸歯車24側の双方に対して引寄せ力が作用するが、夫々の重量及び種々の係合力等を総合して端部外管22のみがスライドするように設定する。
次にロール紙切断時の歯車群の状態を図13及び図14に基づき説明する。図13は図3と同一断面であるが蓋体を閉鎖押圧してアームを押し込むときのロール紙ホルダの断面図、図14は図6と同一断面であるが同じく蓋体を閉鎖押圧してアームを押し込むときのロール紙ホルダの歯車群の断面図である。なお、図13及び図14においても各部材については図3及び図6と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
紙取出口4よりロール紙3を取り出し蓋体を閉鎖押圧して切断する時に、押引き手段10のアーム10dを押し込むと、これに連結する平面略L字形状の挺子材10aは引張部材10cの引張力に抗して支点10b回りに回動する。これに伴い下端を枢支する揺動杆9は、その上端をつる巻ばね25側に倒し、端部外管22の内端鍔22bの内面を押圧する。
この時鋸歯車24及び下段傘歯車23は横移動して傘歯車同士の噛み合わせが実現されるのであるが、その詳細を図15及び図16に基づき説明する。図15はアーム押し始め時の下方軸における歯車群の拡大断面図、図16はアーム押し込み完了時における下方軸の歯車群の拡大断面図である。
既に説明したようにつる巻ばね25の蓄力時には、端部外管22は遊動管体21に沿ってスライドし鋸歯車24側に引き寄せられているが、揺動杆9は端部外管22の外端鍔22aの内面に当接している。この時遊動管体21は横移動していないため小円板21cより突設する小ピン21eは未だ下段傘歯車23の円周溝23aに係合している。又この時点では爪24aと鋸歯車24が噛み合っているため回転は生じない。
図16に示すように押引き手段10の梃子材10aが、揺動杆9をつる巻ばね25側に倒すと端部外管22の内端鍔22bの内面を押圧し、その力で鋸歯車24及び下段傘歯車23を横移動して傘歯車同士の噛み合わせを実現する。同時に鋸歯車24と爪24aの噛み合わせが外れる。
但し、この時点における遊動管体21の鍔21bの位置は、図16の二点鎖線に示すところであり、この段階では小ピン21eは未だ下段傘歯車23の円周溝23aに係合している。挺子材10aを介して更に揺動杆9が端部外管22の内端鍔22bの内面を押圧すると、つる巻ばね25は縮小しながら遊動管体21の中間部に突設する係止部21dに当接し、今度は遊動管体21のみを下段傘歯車23に対し離隔する方向に横移動させる。
この時、小ピン21eを突設する小円板21cも横移動することになるため、小ピン21eと円周溝23aとの係合が外れる。このため、傘歯車16と単独の連結となり、つる巻ばね25の蓄力が開放され、遊動管体21に対してフリーな構成の下段傘歯車23は、噛み合う傘歯車16を紙取出方向へ回転させることが可能となる。なお、遊動管体21は爪クラッチ20から突設するピン20aを鍔21aに挿通しているので、これに沿って爪クラッチ20側に移動することになる。
下段傘歯車23の蓄力解放による回転を受けた傘歯車16は、図14に示すように板面16fに爪クラッチ16aの爪ピン16dの先端を摺接しながら円周溝16gを回転させる。図8の歯車の平面構成図で説明したように、傘歯車16が爪ピン16dに対しその入口部16h側から進入した場合には、これを係止部16iで保持するので、これにより爪クラッチ16aが回転する。即ち、蓄力開放時の回転力をロール紙軸6に伝達し、図17に示すようにつる巻ばね25の回転力に応じてロール紙3の切断後の摘み部が自動的に送り出される。
なお、この時ロール紙軸6は紙取出方向に回転するため、端部歯車17、中段歯車18、下段歯車19及び遊動管体21も同方向に回転することになるが、小ピン21eと円周溝23aとの係合が外れており、下段傘歯車23は遊動管体21に対してフリーな構成となっているため相互の回転は妨げられない。
ロール紙3を切断した後の鋸歯車24及び下段傘歯車23の作用を図18に基づき説明する。図18は紙切断完了後の下方軸における歯車群の拡大断面図である。蓋体を閉鎖押圧することでつる巻ばね25の蓄力は解放され、鋸歯車24を逆回転させると共に、つる巻ばね25は伸張して端部外管22を外方に押し戻す。
又、押引き手段10のアーム10dが元の位置に戻り、挺子材10aには引張部材10cの引張力が卓越することになるので、挺子材10aは回動し揺動杆9の先端を端部外管22の外端鍔22aの内面に当接する。その復元力により端部外管22は、遊動管体21の鍔21bを押圧し遊動管体21を横移動させる。これにより小円板21c及び小ピン21eを横移動して小ピン21eが下段傘歯車23の円周溝23aに係合押圧する。
従って遊動管体21、端部外管22、つる巻ばね25、鋸歯車24、下段傘歯車23は傘歯車16と離隔する当初の位置まで横移動し、鋸歯車24は爪24aと接触する状態になる。以上説明したような一連の歯車群の構成・作用によりロール紙を引き出し、これを切断するだけで、次回の摘み部を自動的に送り出すことが連続的に可能となる。