JP4810660B2 - ダイ内の熱可塑性溶融樹脂の流動状態の解析方法及びそのためのダイ - Google Patents
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Description
本発明はダイ内の熱可塑性溶融樹脂の流動状態の解析方法及びそのためのダイに関し、更に詳しくは熱可塑性樹脂のフィルム状、シート状及びチューブ状などの押出成形品の外観、透明性、機械特性等に影響を及ぼすダイ内での溶融樹脂の流動状態を迅速、簡便かつ正確に評価できるようにするため、ダイに観察窓を設けて観察、記録して解析できるようにする方法及びそのためのダイに関する。
熱可塑性樹脂の押出成形に対し、従来から押出機内の流動状態を観察して、押出機内の流動状態を良好にして所望の押出成形品を得ることが種々試みられている。例えば特許文献1では樹脂溶融体と発泡剤の混合物を押し出す際に、押出機の途中に観察窓を設け、発泡開始位置を観察している。特許文献2では樹脂溶融体を押し出す際に、押出機のダイに測色窓とこれに接続された測色用光ファイバーケーブルを設け時々刻々と押出樹脂の色値の変化を監視する技術が報告されている。しかし、これらの方法では押し出される成形品の外観、透明性、機械特性に影響を及ぼすダイ内での流動状態を測定、記録して解析することはできない。また、上記の方法では2種以上の樹脂からなる非相溶ポリマーブレンドにおけるドメインの変形や多層樹脂押出物における界面での挙動についての情報が得られないことは明白である。
従って、本発明の目的は、熱可塑性樹脂のフィルム、シート及びチューブなどの押出成形品の外観、透明性、機械特性等に影響を及ぼすダイ内での溶融樹脂の流動状態を迅速、簡便かつ正確に評価するために、ダイ内の流動状態を観察、記録して解析できるようにする方法並びにそのためのダイを提供することにある。
本発明に従えば、少なくとも一種の熱可塑性樹脂を用いて少なくとも一層の平面状もしくは円筒状のフィルムもしくはシート又は円筒状のチューブを押出成形するに際し、熱可塑性樹脂の少なくとも一種に蛍光剤を配合しかつ観察窓を設けた押出ダイを用いて、ダイ内の溶融樹脂の流動状態を、最大画像取得可能速度が10フレーム毎秒(fps)以上である共焦点レーザ顕微鏡を用いて熱可塑性樹脂の少なくとも一種から励起される蛍光を検出し、最高撮影速度が30フレーム毎秒(fps)以上の高速度カメラを用いて、観察、記録して解析できるようにしたダイ内の流動状態の解析方法が提供される。
本発明に従えば、少なくとも一種の熱可塑性樹脂を用いて少なくとも一層の平面状もしくは円筒状のフィルムもしくはシート又は円筒状のチューブを押出成形するに際し、熱可塑性樹脂の少なくとも一種に蛍光剤を配合し、かつ観察窓を設けた押出ダイを用いて、ダイ内の溶融樹脂の流動状態を、最大画像取得可能速度が10フレーム毎秒(fps)以上である共焦点レーザ顕微鏡を用いて熱可塑性樹脂の少なくとも一種から励起される蛍光を検出し、最高撮影速度が30フレーム毎秒(fps)以上の高速度カメラを用いて、観察、記録して解析できるようにした押出ダイが提供される。
本発明によれば、熱可塑性樹脂の押出成形品(フィルム、シート又はチューブなど、特に積層フィルム、積層シート又は積層チューブなど)の外観、透明性、機械特性等に影響を及ぼすダイ内での流動状態を、押出ダイに設けた流動観察窓から観察、記録することにより、成形品の流動状態を迅速、簡便かつ正確に評価(又は解析)することができる。
本発明者らは、前記課題を解決すべく研究を進めた結果、熱可塑性樹脂の押出用ダイに流動状態の観察窓を設けて、使用する熱可塑性樹脂の少なくとも一種に蛍光剤を配合して押出し、観察窓からレーザ光を照射して、蛍光剤を励起させることで蛍光を放出させ、それを観察記録することにより、熱可塑性樹脂のフィルム、シート、チューブなどの押出成形品の外観、透明性、機械特性等に影響を及ぼすダイ内での溶融樹脂の流動状態を迅速、簡便かつ正確に評価(解析)することができることを見出した。
本発明の方法によってそのダイ内での流動状態を解析するのに使用することができる熱可塑性樹脂としては、均一系、又は2種もしくはそれ以上の樹脂からなるブレンド、更には無機粒子を含む複合系樹脂などをあげることができ、これから、単層又は2層もしくはそれ以上の多層押出フィルム、シート、チューブなどを押出すことができる。具体的な熱可塑性樹脂の例をあげれば以下の通りである。ポリエチレン系樹脂(PE)、ポリプロピレン系樹脂(PP)などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネートなどの生分解性樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、ポリアセタール、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリカーボネイト系樹脂(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、液晶系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。積層の組み合わせの最も一般的な系としては、2種2層であれば、PP/PP,PC/ポリメチルメタクリレート系樹脂(PMMA)、PC/PC,PMMA/ABS、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET)/PET、汎用ポリスチレン(GPPS)/耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(HIPS)などがある。2種3層であれば、PE/EVOH/PEなどである。3種3層であればPA/EVOH/PE、4種4層であればPET/PA/EVOH/PEなどが例として挙げられる。
本発明を構成するポリオレフィン系樹脂は、一般的にポリオレフィン系樹脂と称されているもので、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜12のα−オレフィンの単独重合体又は共重合体を示す。例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体などのエチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等のエチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン−α,β不飽和カルボン酸のイオン架橋物、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体等のエチレン系(共)重合体及びその変性物、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などのプロピレン系(共)重合体とその変性物、ポリ1−ブテン、ポリ1−ヘキセン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
本発明において使用されるポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの他、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステル、オキシ酸あるいはその分子内環化物の重合体に代表されるポリエステル樹脂あるいはその変性体等が挙げられる。
本発明において使用されるポリアミド系樹脂としては、例えば、ε−カプロラクタムを主原料としたナイロン6を挙げることができる。また、その他のポリアミド樹脂としては、3員環以上のラクタム、ω−アミノ酸、二塩基酸とジアミン等の重縮合によって得られるポリアミド樹脂を挙げることができる。具体的には、ラクタム類としては、先に示したε−カプロラクタムの他に、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム、ω−アミノ酸類としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸を挙げることができる。また、二塩基酸類としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸を挙げることができる。更に、ジアミン類としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4(又は2,4,4)−トルメチルヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン等を挙げることができる。そして、これらを重縮合して得られる重合体又はこれらの共重合体、たとえばナイロン6,7,11,12,6.6,6.9,6.11,6.12,6T,6I,MXD6(メタキシレンジパンアミド6)、6/6.6,6/12,6/6T,6/6I,6/MXD6等を挙げることができる。
本発明で用いるこれら熱可塑性樹脂は、他の樹脂や無機充填剤等から選ばれる一種又は二種以上を組み合せて用いてもよい。また、本発明で用いる熱可塑性樹脂のそれぞれの層の厚みは特に制限はなく、目的等に応じて適宜選定すればよいが、フィルム、シート及びチューブ状の成形品における各層の厚みは通常10〜1000μmの範囲である。
本発明に従って押出ダイに設ける流動観察窓は、耐圧性、耐熱性、高強度、光透過性などを有する材料から製作することができ、具体的には石英、サファイア、パイレックス(登録商標)強化ガラス、バイコール(登録商標)強化ガラスなどを採用することができる。本発明に従った観察窓の形状、寸法及び取付位置などには特に限定はないが、円形、長方形、楕円形で、寸法がそれぞれ0.5〜5cm程度のものを、押出ダイの押出方向に平行な面(押出フィルム、シート、チューブなどの厚さ方向に垂直な面)に設けるのが好ましい。またガラス窓のガラスの厚さは、圧力や開口部の形状に依存するが、たとえば開口部の幅と同じ厚さであれば、通常10MPa程度の耐圧が得られる。
以下図面を参照して本発明について更に説明する。
図1は本発明の押出ダイ1及びそれに設けた観察窓2の一例を示す模式図であり、図1の態様では2種類のポリマーA及びB(熱可塑性樹脂)からなる3層の積層フィルム4を押出成形する態様について説明するもので、この場合には中央のポリマーAが蛍光剤を含み、レーザ光を共焦点レーザ顕微鏡中の対物レンズ3を通して観測窓2に照射し、ダイ内の蛍光剤を含む流動溶融樹脂層からの励起蛍光を対物レンズ3を通して高速度カメラで撮影するように構成されている。
図1は本発明の押出ダイ1及びそれに設けた観察窓2の一例を示す模式図であり、図1の態様では2種類のポリマーA及びB(熱可塑性樹脂)からなる3層の積層フィルム4を押出成形する態様について説明するもので、この場合には中央のポリマーAが蛍光剤を含み、レーザ光を共焦点レーザ顕微鏡中の対物レンズ3を通して観測窓2に照射し、ダイ内の蛍光剤を含む流動溶融樹脂層からの励起蛍光を対物レンズ3を通して高速度カメラで撮影するように構成されている。
図2は本発明に係る観察窓2を設けた押出ダイ(フィルムダイ)1を2機の押出機5に取り付けて2層以上の押出フィルム(積層フィルム)4を押出成形する構成の一例を示すものである。6はダイの入口前で複数の樹脂を併合するためのアダプタを示す。
本発明において所望の熱可塑性樹脂中に配合して使用することができる蛍光剤としては熱可塑性樹脂の押出温度においてレーザ光の照射により蛍光を励起することができる任意の蛍光剤を用いることができ、好ましくは、耐熱性があり、樹脂への分散性の良いものがよい。具体的には、樹脂の一般的な加工温度である200〜300℃の耐熱性を持つナフタルイミド、チオキサンテン系蛍光染料、クマリン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、メチン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料などが好ましい。
チオキサンテン系蛍光染料の具体例としては、CI Solvent Yellow 98等、クマリン系蛍光染料の具体例としては、CI Solvent Yellow 160:1,Macrolex Fluorescent Red G(バイエル社製)及びKayaset Yellow SF−G(日本化薬社製)等、ペリレン系蛍光染料の具体例としては、CI Vat Red 15,CI Vat Orange 7,CI Solvent Yellow 5,Lumogen F Yellow 083(ビー・エー・エス・エフ社製)及びLumogen F Red 305(ビー・エー・エス・エフ社製)等、メチン系蛍光染料の具体例としては、CI Disperse Yellow 82等、ベンゾピラン系蛍光染料の具体例としては、Kayaset Red SF−B(日本化薬社製)等、チオインジゴ系蛍光染料の具体例としては、CI Vat Red 1,CI Vat Red 2、及びCI Vat Red 41等、アンスラキノン系蛍光染料の具体例としては、CI Solvent Red 150,CI Solvent Red 197、及びCI Solvent Red 150等が挙げられる。蛍光剤の配合量には特に制限はないが、熱可塑性樹脂に対する重量基準で0.01〜5重量%であるのが好ましく、0.05〜1重量%であるのが更に好ましい。
本発明において使用する共焦点レーザ顕微鏡は、例えば物質中に含まれる蛍光剤から励起される蛍光を色別検出することができるため各種形態解析(主に、ライフサイエンス分野における細胞分裂、シグナル伝達、小胞輸送、微小管ダイナミクス、微小循環などのリアルタイム観察)などに使用されている。本発明においては、押出ダイに設けた観察窓から一定波長(紫外域から近赤外域までの波長の領域)のレーザ光を照射することにより押出ダイ中を通る流動熱可塑性樹脂のフィルム(又はシート、チューブ)の壁面でのスリップ現象、又は多層樹脂間での剥離流れなどを観察することができる。即ち、予め対象となる熱可塑性樹脂中に蛍光剤を配合しておくことにより、紫外域から近赤外域までの領域の波長の蛍光の励起により熱可塑性樹脂層の表面、内面、界面、ダイ壁面、ダイ出口などからの蛍光を立体的な分布として可視化し、像を構築することができる。蛍光剤の配合方法としては特に制限はないが、例えば溶媒中に樹脂と一緒に溶解させて配合する方法、押出機中でブレンドする方法、又は化学的に結合させる方法があげられる。
本発明において使用することができる共焦点レーザ顕微鏡の構成の一例を図3を参照して以下に説明する。即ち、図3に示す構造の共焦点レーザ顕微鏡において、レーザ光は第一ピンホールを通過してダイの観察窓から試料面(例えばダイ中で流動する多層フィルム(シート))に照射される。目的とする押出フィルム(シート)界面などの観察面、即ち焦点面からの光(蛍光)は第二ピンホールに導かれ、焦点の合った光が第二ピンホールを通過し、非焦点光は遮断される。第二ピンホールを通過した光のみを抽出し、画像化する。このように、本発明では試料にレーザ光を入射し、試料中の蛍光剤により励起された蛍光を共焦点スキャナで掃引(スキャン)し、これを高速カメラで観測記録することにより流動中の溶融樹脂の内面、表面、界面などの状態の高速画像を直接観察記録することができ、焦点の合った画像だけが結像記録される。更に、レンズの上下などで焦点の合った位置を高速でずらすことにより、深さ方向の状態も観察することが可能となる。
共焦点レーザ顕微鏡を使ってダイ中を流動する熱可塑性樹脂の状態を観察した例はない。本発明に使用することができる共焦点レーザ顕微鏡は従来の顕微鏡と異なり、試料の極めて小さなスポットを観察することができる。画像を構成するには、このスポットをスキャンする必要がある。このときのスキャン方式としてはニポウ方式と呼ばれる多数のピンホールを用いた回転ディスクの使用によるマルチビーム方式と、1本のレーザビームをガルバノミラー等でスキャンするカルバノミラー方式があるが、流動状態を高速で観察するためには前者の方式がより好ましい。最大画像取得速度は流動状態によるものの、押出機中の樹脂の流れを鑑みれば10フレーム毎秒(fps)以上、好ましくは100fps以上、より好ましくは300fps以上である。共焦点レーザ顕微鏡として、たとえば横河電機製のCSU22を用いることが出来る。
一般に共焦点レーザ顕微鏡のアプリケーションは、ライフサイエンス分野における細胞分裂、シグナル伝達、小胞輸送、微小管ダイナミクス、微小循環等をリアルタイムに観察することに用いられてきた。これは前記のように微小領域を高感度にかつ鮮明に見ることができ、さらに試料台を上下させることによる試料の厚み方向の画像から3D画像を構築できたためである。この方式は特に生物学の分野の進展に大きく貢献した。しかし、共焦点顕微鏡を工学系の分野でプロセスの可視化に応用した例は極めて少なく、とりわけダイ中を高速で流動する熱可塑性樹脂の状態解析に着目した例はこれまで全く見当たらない。発明者は、共焦点レーザ顕微鏡を押出機のダイの可視化窓に設置して、単層又は2種以上の熱可塑性樹脂における壁面でのスリップ現象、又は多層樹脂間での剥離流れなどを観察・解析するため、共焦点レーザ顕微鏡及びピエゾアクチュエーターを用いて光学系を高速に上下させ、また耐熱性や分散性が適切な蛍光剤を使用することを見いだしている。
本発明において押出ダイに設けた観察窓から共焦点レーザ顕微鏡を用いて観察した励起蛍光は最高撮影速度が30フレーム毎秒(fps)以上、好ましくは100fps以上、より好ましくは500fps以上である高速度カメラを用いて記録する。このような高速度カメラは、流動中の試料を高速高解像度共焦点顕微鏡システムで観察するため大きな最高撮影速度が必要であり、かつ試料からの微弱な蛍光像を捉えるため高感度・高解像度カメラを必要とする。具体的には、最大撮影画素数が256×256画素以上で、微弱な蛍光像を捉える必要があるためスキャナ感度増加及びノイズ低減のためにビニング機能を有することが好ましい。例えば、Redlake社製MotionPro HS−4を用いることが出来る。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
実施例1及び比較例1
装置及び条件
(1)共焦点スキャナ:横河電機製のマイクロレンズ付きニポウディスク走査方式の高速共焦点スキャナCSU22を使用した。像の観測は、入射光ピンホールで焦点面に形成された多数のレーザビームを、この焦点面(X−Y軸)でマルチスキャンして1つの画像を得、このスキャンをピエゾアクチュエーターにてZ軸方向(ダイ厚み方向)にスキャンすることで行った。光源は波長532nm、出力200mWのレーザを用いた。倒立型の顕微鏡を使用し、対物レンズは20倍の倍率のものを用いた。
装置及び条件
(1)共焦点スキャナ:横河電機製のマイクロレンズ付きニポウディスク走査方式の高速共焦点スキャナCSU22を使用した。像の観測は、入射光ピンホールで焦点面に形成された多数のレーザビームを、この焦点面(X−Y軸)でマルチスキャンして1つの画像を得、このスキャンをピエゾアクチュエーターにてZ軸方向(ダイ厚み方向)にスキャンすることで行った。光源は波長532nm、出力200mWのレーザを用いた。倒立型の顕微鏡を使用し、対物レンズは20倍の倍率のものを用いた。
(2)イメージインテンシファイア:試料から放出される蛍光の強度は微弱である。更に高速撮影の場合、露光時間が短縮されるため蛍光の強度は更に弱められるので感度よく画像を取得することは困難である。そのために、浜松ホトニクス社製のC8600−03(イメージインテンシファイア)を用い、電子像を増幅した。
(3)流動中の画像を高速で撮影するため、高速CCDカメラRedlake社製MotionPro HS−4を用いた。
(4)押出機はテクノベル社製2軸同方向押出機(KZW−15)を用いた。スクリュー径は15mm、スクリュー径に対する長さの比L/Dは45である。多層フィルム、シートは2台の押出機を用いダイ手前に複数の樹脂を併合するアダプターを設け、積層したのち単層ダイのマニホールドにより拡幅し押し出すフィードブロック型のアダプターを用いることで2種3層の樹脂を押し出すことができる。また、ダイはコートハンガー型のものを用いた。また、ダイには耐熱ガラス、パッキン、金具からなる可視化窓が設けてあり、ここに設置された対物レンズ、共焦点スキャナ、イメージインテンシファイア、高速カメラ等から構成される共焦点レーザ顕微鏡システムにより樹脂の流動状態を観察することが出来る。ダイはバンドヒータを用いて温度制御され、圧力計にてダイ内部の圧力変化をモニターすることができる。
実施例1:PS/LDPE/PSフィルムの層間における流動状態の共焦点レーザ顕微鏡による観察
メルトフローレート(JIS K6922−2)が7.0g/10minの日本ポリエチレン(株)製低密度ポリエチレン(LDPE)LC600A(ノバテックLD)をバレル温度200℃の第一の押出機に、メルトフローレート(ISO 1133)が1.9g/10minのPSジャパン(株)製ポリスチレン(PS)SGP10(PS J−ポリスチレン)をバレル温度200℃の第二の押出機に投入して可塑化混練し、ダイから押し出した。蛍光剤は最大吸収波長が約525nm、最大放出波長が約571nmであるペリレン(ビー・エー・エス・エフ製Lumogen F Orange 240)を用い、あらかじめポリスチレンに1重量%混合した樹脂サンプルを用いた。フィルムの構成は中心層がLDPEで両側のスキン層はPSである。この押し出された樹脂成形品を前記の共焦点レーザ顕微鏡を用いて構造解析した。Z軸(厚み)方向の焦点面の移動はせずに、同一のX−Y平面内を1000本のレーザビームで同時にスキャンさせ、このときの励起光からPS層とLDPE層の界面構造に関する動画像を得た。次にピエゾアクチュエーターによりZ軸(厚み)方向へ焦点面を移動させ、同様の観察を行った。これらの観察結果を模式図で図4に示す。
メルトフローレート(JIS K6922−2)が7.0g/10minの日本ポリエチレン(株)製低密度ポリエチレン(LDPE)LC600A(ノバテックLD)をバレル温度200℃の第一の押出機に、メルトフローレート(ISO 1133)が1.9g/10minのPSジャパン(株)製ポリスチレン(PS)SGP10(PS J−ポリスチレン)をバレル温度200℃の第二の押出機に投入して可塑化混練し、ダイから押し出した。蛍光剤は最大吸収波長が約525nm、最大放出波長が約571nmであるペリレン(ビー・エー・エス・エフ製Lumogen F Orange 240)を用い、あらかじめポリスチレンに1重量%混合した樹脂サンプルを用いた。フィルムの構成は中心層がLDPEで両側のスキン層はPSである。この押し出された樹脂成形品を前記の共焦点レーザ顕微鏡を用いて構造解析した。Z軸(厚み)方向の焦点面の移動はせずに、同一のX−Y平面内を1000本のレーザビームで同時にスキャンさせ、このときの励起光からPS層とLDPE層の界面構造に関する動画像を得た。次にピエゾアクチュエーターによりZ軸(厚み)方向へ焦点面を移動させ、同様の観察を行った。これらの観察結果を模式図で図4に示す。
比較例1:PS/LDPE/PSフィルムの層間における流動状態の実体顕微鏡による観察
前記実施例1において共焦点レーザ顕微鏡の代わりに実体顕微鏡SZ61(オリンパス製、生物顕微鏡)を用いて、熱可塑性樹脂押出物の観察を行った。光源は通常の顕微鏡観察と同じようにハロゲンランプ照明である。しかしながら、実施例1で見られたような積層樹脂間での界面の乱れを観察することが出来なかった。即ち、従来の光学顕微鏡観察では、実施例1で可能であった積層樹脂の流動時の構造解析は不可能である。
前記実施例1において共焦点レーザ顕微鏡の代わりに実体顕微鏡SZ61(オリンパス製、生物顕微鏡)を用いて、熱可塑性樹脂押出物の観察を行った。光源は通常の顕微鏡観察と同じようにハロゲンランプ照明である。しかしながら、実施例1で見られたような積層樹脂間での界面の乱れを観察することが出来なかった。即ち、従来の光学顕微鏡観察では、実施例1で可能であった積層樹脂の流動時の構造解析は不可能である。
本発明に従えば、押出ダイに設けた流動観察用窓と共焦点レーザ顕微鏡システムにより、積層フィルム界面でのスリップ、剥離流れ、樹脂と壁面におけるスリップ、剥離流れ、非相溶ブレンドにおける分散層の変形挙動などを観察することができるので、熱可塑性樹脂を成形する際の不良現象の発生条件を精度良く解析したり、あるいは実際に成形品中に微細な不良現象が起こったとしてもこれに迅速に対応したりすることができる。
A 第一の熱可塑性樹脂(蛍光剤含有)
B 第二の熱可塑性樹脂
1 押出ダイ
2 観察窓
3 対物レンズ
4 積層フィルム
5 押出機
6 アダプタ
B 第二の熱可塑性樹脂
1 押出ダイ
2 観察窓
3 対物レンズ
4 積層フィルム
5 押出機
6 アダプタ
Claims (3)
- 少なくとも一種の熱可塑性樹脂を用いて少なくとも一層の平面状もしくは円筒状のフィルムもしくはシート又は円筒状のチューブを押出成形するに際し、熱可塑性樹脂の少なくとも一種に蛍光剤を配合しかつ観察窓を設けた押出ダイを用いて、ダイ内の溶融樹脂の流動状態を、最大画像取得可能速度が10フレーム毎秒(fps)以上である共焦点レーザ顕微鏡を用いて熱可塑性樹脂の少なくとも一種から励起される蛍光を検出し、最高撮影速度が30フレーム毎秒(fps)以上の高速度カメラを用いて、観察、記録して解析できるようにしたダイ内の流動状態の解析方法。
- 前記蛍光剤がナフタルイミド、チオキサンテン系蛍光染料、クマリン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、メチン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料及びアンスラキノン系蛍光染料から選ばれた少なくとも一種の蛍光剤である請求項1に記載の方法。
- 少なくとも一種の熱可塑性樹脂を用いて少なくとも一層の平面状もしくは円筒状のフィルムもしくはシート又は円筒状のチューブを押出成形するに際し、熱可塑性樹脂の少なくとも一種に蛍光剤を配合しかつ観察窓を設けた押出ダイを用いて、ダイ内の溶融樹脂の流動状態を、最大画像取得可能速度が10フレーム毎秒(fps)以上である共焦点レーザ顕微鏡を用いて熱可塑性樹脂の少なくとも一種から励起される蛍光を検出し、最高撮影速度が30フレーム毎秒(fps)以上の高速度カメラを用いて、観察、記録して解析できるようにした押出ダイ。
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