JP4809382B2 - 無電解Niめっき廃液からのNiの回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、無電解Niめっき液廃液からのNiの回収方法に関するものであり、さらに、詳しく述べるならば、アンモニアを含む使用済み無電解Niめっき廃液からNiを有効に回収する方法に関するものである。
無電解Niめっき液は、硫酸Ni、次亜リン酸ナトリウムなどの還元剤及びクエン酸などの錯化剤を基本成分としている。また、アンモニウムイオンを含む無電解Niめっき液は、めっき速度が大きいめっきに使用されている。無電解Niめっき液は、上記した薬剤を補充しながら繰り返し使用されるが、ある程度繰り返し使用されると廃棄され、廃液中に残存しているNiが回収される。
無電解Niめっき廃液からNiを回収する技術は、非特許文献1:JOURNAL OF MMJ, 2007,12 (Vol.123)「製錬‐リサイクリング大特集号」、第842頁に概説されており、その中には廃液に Niを種結晶として添加し、pHを中性付近に制御することによりNiを還元晶析する方法も説明されている。また、本発明は非特許文献1に挙げられている「溶媒抽出法」に関係する。
特許文献1:特許第3259008号公報が提案する無電解Niめっき廃液からのNi回収方法では、先ず、廃液にニッケル抽出剤を含む油性液体を接触させる抽出工程を行う。ニッケル抽出剤としては、2−ヒドロキシー5−ノニルアセトフェノンオキシム、2−ヒドロキシオキシム、5−ドデシルサリシルアルドキシムなどのオキシム系抽出剤や、ジ−2−エチルヘキシルリン酸、2−エチルヘキシルホスオホン酸モノー2−エチルヘキシル、リン酸トリブチルなどの有機リン酸系抽出剤などが挙げられている。また、油性液体としては、ケロシン、キシレン、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素油が挙げられている。油性液体中の抽出剤の濃度は10 〜 800g/Lが例示されている。
抽出工程の後には、油性液体に硫酸、塩酸などの酸性水溶液を接触させて、Niを酸性溶液中に逆抽出を行い、続いて、水溶液にニッケル化合物を加えてNi濃度の調節を行い、無電解Niめっきの補充液として使用する。
特許文献2:特開2004−307983号公報は、硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム及び乳酸、クエン酸などの錯化剤から構成される無電解Niめっき液の廃液からNiを有機溶媒相中に高い抽出率で抽出するために、抽出剤としてβ‐ヒドロキシオキシム系抽出剤及び酸性有機リン化合物系抽出剤を同時に含有するものを使用することを提案する。抽出剤中の酸性有機リン化合物系抽出剤の含有量は、β‐ヒドロキシオキシム系抽出剤に対して10〜50体積%であり、10〜30体積%であることが好ましく(請求項3)、またβ‐ヒドロキシオキシム系抽出剤の含有量は有機溶媒に対して5 〜40体積%が好ましい。抽出液は、鉱酸で逆抽出し、無電解Niめっきに再利用する。
特許第3259008号公報 特開2004−307983号公報 JOURNAL OF MMJ, 2007,12 (Vol.123)「製錬‐リサイクリング大特集号」、第842頁
公知の無電解Niめっき廃液からのNiの溶媒抽出法では、逆抽出液をそのままNi源として再利用しており、中和によりNiを回収する方法は採用されていない。本発明者らは、特許文献2の処理工程後に逆抽出液を中和する方法を追試したところ、特許文献2において提案されている薬剤濃度範囲であると、特にβ-ヒドロキシオキシム系抽出剤に対して10〜50体積%の酸性有機リン化合物系抽出剤濃度範囲であると、無電解Niめっき廃液中のアンモニアが多量にNiとともに共抽出されることが分かった。
Ni抽出有機溶媒がアンモニアを多く含むと、アンモニアはそのまま逆抽出液に移動し、中和の際にpH9ぐらいから強烈なアンモニアガスが発生し始め環境に良くなく、さらに、中和の際にNiがアンモニアと錯体を形成し、Niの沈殿が困難になる。
よって、本発明は、アンモニアを含む使用済み無電解Niめっき廃液から、β‐ヒドロキシオキシム系抽出剤と酸性有機リン化合物系抽出剤を含有する有機溶媒を用いてNiを効率良く抽出する無電解Niめっき廃液からのNiを回収する方法において、アンモニアなどの不純物の共抽出を少なくすることを目的とする。
本発明は、アンモニアを含む無電解Niめっき廃液から、β‐ヒドロキシオキシム系抽出剤、酸性有機リン化合物系抽出剤を含有する有機溶媒を用いてNiを抽出する無電解Niめっき廃液からのNiの回収方法において、有機溶媒全体に対してβ‐ヒドロキシオキシム系抽出剤の含有量が7.5〜25.0体積%であり、有機溶媒全体に対して酸性有機リン化合物系抽出剤の含有量が0.3〜1.0体積%であり、かつ、β‐ヒドロキシオキシム系抽出剤に対して酸性有機リン化合物系抽出剤の含有量が10体積%未満、好ましくは2〜8体積%である有機溶媒と無電解Niめっき廃液を接触させ、さらに有機溶媒からNiを鉱酸に逆抽出し、逆抽出した鉱酸を中和することによりNi化合物を沈殿させることを特徴とする。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明においては、処理できる無電解Niめっき廃液の組成は、特に制限はないが、Ni : 2.5〜7.5g/L ,NH 1〜100g/L ,P 1〜100g/Lを含有する無電解Ni廃液からNiを回収することができる。この他に、有価金属の回収の観点からは不純物となるZn,Fe,Co,Bなどが含有される。
本発明においては、β-ヒドロキシオキシム系抽出剤としては後述のLIX84-Iを使用することができ、また酸性有機リン化合物系抽出剤としては後述のPC-88A,D2EHPAを使用することができる。
β-ヒドロキシオキシム系抽出剤及び酸性有機リン化合物系抽出剤の濃度範囲を上述のように設定することにより、抽出速度及び逆抽出速度を高く保ちながら、アンモニアの共抽出量を少なくすることができる。具体的には、本発明方法によると、無電解Niめっき廃液中のアンモニア濃度に対してアンモニアは最大で3%未満しか有機溶媒中に共抽出されない。これに対して、本発明の薬剤濃度範囲外では共抽出量は5%以上となる。
続いて、抽出したNiを含有する有機溶媒を、鉱酸と接触させ、Niを水相中に逆抽出する。逆抽出工程では、アンモニアはほぼ全量水相に移動する。O/A比率は1〜10が好ましい。
逆抽出後、Ni含有硫酸溶液などを、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムなどを使用して中和し、Ni を水酸化Ni、炭酸Niなどとして沈殿させる。中和のためのpHは9以上が好ましく、より好ましくは10未満である。沈澱形成後、固液分離を行い、Ni化合物を固形物として分離し、その後必要により水洗を行う。
Ni抽出後のNiを含まない廃液は、有機酸やアンモニアなどを含むため、焼却処理を行う。
上記した方法により回収される水酸化Ni,炭酸Niなどには中和剤が若干含有されるが、純度が高いNi化合物である。例えば水酸化Naを中和剤として使用すると約500ppm程度のNaが随伴される。
ところで、無電解Niめっき廃液に含有されるNaはNiとともに有機溶媒中に共抽出されるが、本発明によると、このNa共抽出量も少なくなる。具体的には、本発明によると無電解Niめっき廃液中の濃度に対して2%以下しかNaは共抽出されないが、本発明の薬剤濃度範囲外では共抽出量は4%以上となり、この結果約50ppm程度のNaがNi化合物中に取込まれる。
本発明においては、無電解Niめっき廃液を一旦溶媒抽出することにより、高い収率で溶媒中に抽出し、その後中和と固液分離によりNi化合物を固形物として回収するが、中和の際にアンモニアガスの発生がほとんど起こらないので、密封容器や排ガス浄化設備などが必要なく、作業環境も良好である。
さらに、Niは水酸化物、炭酸塩などとして回収できるので、無電解Niめっきに繰り返す必要はなく、金属精製や、電気めっきの原料などとして広範囲に使用することができる。
抽出、逆抽出及び中和はすべて常温で行うことができるので、加熱コストが必要なく、さらに、加熱によるアンモニアガスの蒸散もない。
共抽出Na量が痕跡量となるので、NaOH 以外のKOHなどを中和剤として使用すると、回収固形物中のNa量を痕跡量とすることができる。
使用した無電解Niめっき廃液は、各実施例及び比較例とも500mLであり、その分析値は次のとおりであった: Ni:5g/L, NH3:15g/L, P:25g/L, Na:25g/L。
表1及び2に示す組成を示す有機溶媒をNiの抽出剤として使用し、次の抽出条件で抽出を行った:
液温25℃、抽出時間10分、撹拌速度500rpm、pH8.0(pH調製は25質量%水酸化ナトリウム溶液)。なお、LIX84-I はコグニス社製2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムであり、また PC-88Aは大八化学工業社製2−エチルヘキシル2−エチルヘキシルホスホネート系である。
液温25℃、抽出時間10分、撹拌速度500rpm、pH8.5(pH調製は25質量%水酸化ナトリウム溶液)。なお、LIX84-I はコグニス社製2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムであり、また D2EHPAはLANXESS社製ジ−2−エチルヘキシル燐酸である。
逆抽出を次の条件で行った:
O/A(有機溶媒/溶液)=1, 溶液:0.25mol/L硫酸溶液、液温25℃、逆抽出時間15分、撹拌速度500rpm。
O/A(有機溶媒/溶液)=1, 溶液:0.25mol/L硫酸溶液、液温25℃、逆抽出時間10分、撹拌速度500rpm。
Figure 0004809382
Figure 0004809382
試験の結果を表1及び2に示す。なお、アンモニア臭の判定は次の官能試験方法で行った。予め、試験液と同じ容量のアンモニア水溶液(NH3濃度‐0.075質量%)を用意したフラスコに入れ、常温で発生するアンモニア臭を検定者が嗅ぎ、この官能値を基準(即ち、表1において「NH3の臭いが漂う」レベルのもの)として、評価を行った。
また、中和は25質量%NaOH水溶液で行い、逆抽出されたNiが全量Ni(OH)2として沈澱した場合の質量を予め計算し、この計算量と実際の固形物Ni(OH)2の質量の差が秤量誤差程度の場合を全量沈殿として、表1,2に示した。
表1より次の結果が分かる。なお、以下の説明において、有機溶媒中の各成分含有量割合を次のように略記する。
含有量A:有機溶媒全体に対するβ‐ヒドロキシオキシム系抽出剤の含有量
含有量B:有機溶媒全体に対する酸性有機リン化合物系抽出剤の含有量
含有量C:β‐ヒドロキシオキシム系抽出剤に対する酸性有機リン化合物系抽出剤の含有量
比較例1〜6は含有量B,Cが本発明範囲外であるために、NH3及びNaの共抽出率が高く、Niを沈殿させる際にアンモニア臭が発生した。
比較例7、8は含有量B,Cが本発明範囲外であるために、Niを沈殿させる際にアンモニア臭はしないが、Ni抽出時間及び逆抽出時間が長くなった。
比較例9、10は含有量B,Cが本発明範囲外であるために、NH3及びNaの共抽出率が高く、Niを沈殿させる際にアンモニア臭が発生した。
これに対して、本発明実施例では、Ni抽出率が高くかつNiを沈殿させる際にアンモニア臭が発生しないことが明らかである。
本発明によると無電解Niめっき廃液からNiを固形化合物として回収することができるために、回収されたNiを種々のNi原料として使用することができる。さらに、本発明方法は、加熱や排ガス対策が必要なく、しかも作業環境もクリーンであるから、リサイクル事業として実施が容易である。

Claims (3)

  1. アンモニアを含む無電解Niめっき廃液から、β‐ヒドロキシオキシム系抽出剤、酸性有機リン化合物系抽出剤を含有する有機溶媒を用いてNiを抽出する無電解Niめっき廃液からのNiの回収方法において、
    有機溶媒全体に対してβ‐ヒドロキシオキシム系抽出剤の含有量が7.5〜25.0体積%であり、有機溶媒全体に対して酸性有機リン化合物系抽出剤の含有量が0.3〜1.0体積%であり、かつ、β‐ヒドロキシオキシム系抽出剤に対して酸性有機リン化合物系抽出剤の含有量が10体積%未満である前記有機溶媒と、前記無電解Niめっき廃液を接触させ、さらに前記有機溶媒からNiを鉱酸に逆抽出し、逆抽出した鉱酸を中和することによりNi化合物を沈殿させることを特徴とする無電解Niめっき廃液からのNiの回収方法。
  2. 前記β‐ヒドロキシオキシム系抽出剤に対する酸性有機リン化合物系抽出剤の含有量が2.0〜8.0体積%である請求項1記載の無電解Niめっき廃液からのNiの回収方法。
  3. 前記中和時のpHが9以上10未満である請求項1又は2に記載の無電解Niめっき廃液からのNiの回収方法。
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