JP4808994B2 - 太陽電池の製造方法 - Google Patents
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Description
この電極と基板との間の接触抵抗は、取り出せる電気エネルギを減少させるので、太陽電池の効率に大きな影響を与える。このため、この接触抵抗の低減を目的とした、太陽電池構造の最適化や、電極形成方法、電極材料、基板材料の改良が、多くなされてきた。
しかし、導電性ペーストを電極材料に用いた太陽電池における接触抵抗は、真空蒸着やスパッタなどのPVD法によって電極を作製した太陽電池における接触抵抗よりも高いという問題がある。
この方法における接触抵抗低減の原理は、明らかではないが次のような仮説が考えられている。
しかし、一方でこのガラスフリットは不導体のために接触部分において接触抵抗の増大を引き起こしてもいる。
そこで、酸によってこの基板と電極界面付近におけるガラスフリットを溶解し除去することで、基板と電極内の金属粒子との接触点が増加するために、接触抵抗が低減すると言われている。
接触抵抗の低減幅は、酸の濃度や浸漬時間によってばらつきを生じる。例えば、酸の濃度を低くして酸浸漬の時間を短くした場合、酸浸漬の効果が低く、十分に低い接触抵抗を得ることができない。その一方で、酸浸漬の効果を高めるために、酸の濃度を高くして酸浸漬時間を長くした場合、電極の剥離が発生してしまう。
これは、導電性ペーストを印刷して焼成した半導体基板を、同じ浸漬時間で同じ濃度の同じ酸に浸漬させても、酸が浸透して到達する部分が均一になるように制御することは困難であり、ガラスフリットを溶融して除去できる部分の不均一性が大きいためと考えられる。そこで、酸を十分に浸透させるために浸漬時間を長時間化することも考えられたが、電極の剥離を助長することになる上、工程時間が増大してしまうこととなった。
これは、基板を乾燥させることなく酸に浸漬させることによって、焼成した導電性ペースト内の空孔に既に存在する親水性溶媒中を酸が拡散し浸透するため、導電性ペースト内に隈なく酸が行き渡って酸とガラスフリットとの反応の均一性が高まり、また、反応領域周辺に存在する親水性溶媒が酸を希釈するため、反応が緩やかに進行して反応の安定性も高まるためである。
このように親水性溶媒を水または水溶液とすることにより、電極を形成する焼成した導電性ペースト内の空孔に、低コストで容易に浸漬する酸の溶媒となる親水性溶媒を提供することができる。
このように親水性溶媒を純水とすることによって、汚染物質が基板および電極に付着して品質が低下するのを防ぐことができる。
このように親水性溶媒を充填した液槽へ浸漬することによって、基板に焼成した導電性ペースト全体を十分に親水性溶媒で濡らすことができる。
このように溶媒の散布によって濡らしてもよく、この場合は、液槽が不要となるので工程を簡略化することができる。
このように基板を溶媒で濡らす際に超音波を印加することで、基板に焼成した導電性ペースト内部に速やかでかつ確実に溶媒をより均一に浸透させることができ、工程時間を短縮することができる。
このように溶媒で濡らす時間を1秒以上10分以下とすることにより、焼成した導電性ペースト全体を確実に濡らすことが可能である。
このように基板を浸漬させる酸として、フッ化水素酸または臭化水素酸を用いることにより、優れた電気的特性を得ることができる上に、電極腐食を生じることもない。
このように基板の酸浸漬を0.1〜10体積%の酸を含む水溶液に浸漬させることにより行うことで、電極と基板界面のガラスフリットを十分に溶解・除去することができる。
このように半導体基板として、ガリウムをドープしたp型単結晶シリコン基板を用いることにより、製造する太陽電池が、光劣化を生じることのない光電変換効率が非常に高い実用的なものとなる。
ここで用いる半導体基板は、ガリウムをドープしたp型単結晶シリコン基板であることが好ましく、これにより、製造する太陽電池が光劣化を生じない光電変換効率の非常に高い実用的なものとなる。まず、半導体基板からエッチングによりダメージ層を除去した後、反射防止のためのテクスチャ構造を形成した半導体基板にPN接合を形成することが好ましい。
PN接合の形成は、受光面側にリンなどのn型不純物を熱拡散によって行うのが好ましいが、塗布拡散もしくはイオン注入法によって行ってもよい。ここで、太陽光反射防止と表面保護のために、プラズマCVD法またはPVD法等によって、窒化膜を受光面上に形成することが好ましい。
基板上に印刷した導電性ペーストの焼成は、500℃から800℃で1〜5分間加熱することによって行うことができる。
親水性溶媒としては、浸漬する酸の溶媒として十分に機能し、汚染を防止することができるものであれば、特に限定しないが、特に、純水を用いることが好ましい。また、浸漬する酸の溶媒となるものであれば、水溶液やアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)の親水性溶媒であってもよい。
従来は、乾燥した状態の半導体基板を直接酸に浸漬したため、表面に気泡が付着していたりして浸漬時間内に酸が浸透して到達する部分とそうでない部分とが生じてしまい、ガラスフリットを溶融して除去できる部分とできない部分の不均一性が大きく、接触抵抗のばらつきや電極の剥離が生じていた。
そして、最後に半導体基板を乾燥させることにより、高効率の太陽電池が完成する。乾燥方法には、放置や温風、IPA乾燥などを用いてもよい。
(実施例1、2)
図1に示した手順に従って太陽電池を製造した後、出力特性の測定結果と電極の接着強度の評価を行った。
まず、III族元素のガリウムを不純物元素とするp型単結晶太陽電池用シリコン基板(100mm角、面方位{100}、基板厚300μm、抵抗率0.5Ωcm)を、水酸化カリウム水溶液によりエッチングしてダメージ層を取り除いた。さらにIPAを混入した水酸化カリウム水溶液により、反射防止構造であるテクスチャ構造を形成した。
そして、純水で濡らした基板を乾燥させることなく、1体積%のフッ化水素酸(フッ酸)に45秒間(実施例1)、または、60秒間(実施例2)浸漬した。
次に、純水を充填した水槽内に基板を5分間浸漬して洗浄した後、温風で基板を乾燥させ、太陽電池を製造した。
また、電極の接着強度の評価を(1)フィンガ電極の剥がれ発生の目視確認による、電極剥がれ発生確率の測定、(2)フィンガ電極に粘着テープを貼り付け、剥がした後に電極が基板に残っているかどうかを目視確認することによる、テープ剥離試験による剥がれ発生確率の測定、(3)バスバ上にリボンを半田付けし、リボンを基板の垂直方向に2Nの力で引っ張った際に基板とバスバが剥がれるどうかを目視確認することによる、バスバ剥離試験による剥がれ発生確率の測定の3種類の方法で行った。
図2に示した従来の手順に従って太陽電池を製造した後、出力特性の測定と電極の接着強度の評価を行った。具体的には、酸浸漬の前に基板を純水で濡らす工程を行わないこと以外は、全て実施例1、2と同様の手順で行った。比較例1、2では、それぞれ、実施例1、2と同様に1体積%のフッ化水素酸(フッ酸)に、45秒間(比較例1)、60秒間(比較例2)浸漬した。
また、他の酸で酸浸漬を行う場合について、本発明の効果を確認するために、1体積%の臭化水素酸で酸浸漬を行い、太陽電池を製造した後、出力特性の測定と電極の接着強度の評価を行った。具体的には、1体積%のフッ酸に浸漬する代わりに1体積%の臭化水素酸に浸漬する以外は、全て実施例1、2と同様の手順で行った。実施例3、4では、それぞれ、実施例1、2と同様に1体積%の臭化水素酸に、45秒間(実施例3)、60秒間(実施例4)浸漬した。
さらに、1体積%の臭化水素酸で酸浸漬を行う場合の比較のために、図2に示した従来の手順に従って太陽電池を製造した後、出力特性の測定と電極の接着強度の評価を行った。具体的には、酸浸漬の前に基板を純水で濡らす工程を行わないこと以外は、全て実施例3、4と同様の手順で行った。比較例3、4では、それぞれ、実施例3、4と同様に1体積%の臭化水素酸に、45秒間(比較例3)、60秒間(比較例4)浸漬した。
なお、フッ酸浸漬の場合と臭化水素酸浸漬の場合を比較すると、臭化水素酸の方がフッ酸に比べて電極の剥がれを起こし難く、フッ酸の方が臭化水素酸よりも優れた電気的特性が得られる傾向があることが分かる。
Claims (10)
- 少なくとも、半導体基板上にPN接合を形成した後、導電性ペーストを印刷して焼成し、該半導体基板を1回以上酸に浸漬させることによって電極を形成する太陽電池の製造方法において、前記導電性ペーストを印刷して焼成した半導体基板を親水性溶媒で濡らした後、乾燥させることなく酸に浸漬させることを特徴とする太陽電池の製造方法。
- 前記親水性溶媒を、水または水溶液とすることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
- 前記親水性溶媒を、純水とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池の製造方法。
- 前記親水性溶媒で濡らす方法が、親水性溶媒を充填した液槽への浸漬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
- 前記親水性溶媒で濡らす方法が、親水性溶媒の散布であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
- 前記半導体基板を親水性溶媒で濡らす際に、超音波を印加することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
- 前記親水性溶媒で濡らす時間を、1秒以上10分以下とすることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
- 前記半導体基板を浸漬させる酸として、フッ化水素酸または臭化水素酸を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
- 前記半導体基板の酸浸漬を、0.1〜10体積%の酸を含む水溶液に浸漬させることにより行うことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
- 前記半導体基板として、ガリウムをドープしたp型単結晶シリコン基板を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
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