出願人の提案する本発明の無線通信モジュールの構成例を図1に示す。図1の実施例はPHS向けの本発明の無線通信モジュールである。以下、本明細書においては、本発明をPHSに適用した場合の様々な実施例を記載するが、本発明は、PHSのみならず、従来の携帯電話など、他の通信方式を使用するシステムにおいても適用可能である。図1の無線通信モジュール100は、アンテナ102、アンテナ・スイッチ104、送信部106及び受信部108、変調部110及び復調部112、時分割多元接続(TDMA)符号化部114及びTDMA復号化部116、ADPCMトランスコーダ118、制御部120、フラッシュメモリ122、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)124、PS126、インターフェース部128からなる。このように、図1の無線通信モジュール100は、従来のPHS通信端末における無線通信部の各構成要素を含んでおり、また、例えばフラッシュメモリ122に電話帳等のユーザデータを格納することができるなど、汎用性のある多機能通信モジュールとなっている。
試作された無線通信モジュール100の外観を図2に示す。具体的な寸法の一例として、ここでは幅25.6mm、長さ42.0mm、厚さ4.0mmとなっており、従来のPCMCIAカード(例えば、ネットインデックス製AH−H407P、幅54.0mm、長さ85.6mm、厚さ5.0mm)と比較して非常にコンパクトな構成となっている。
図2に示すように、本発明の無線通信モジュールは上端部を幅方向に突出させた持ち手部分102を有する。これにより、持ち手部分として適切な箇所をユーザに明示することができ、また、ユーザが無線通信モジュールをジャケットのスロットに逆向きに挿入することを防止することができる。また、持ち手部分102においてはゴム或いは熱可塑性エラストマー等を使用することでソフトな感触とすることにより、持ち易さを実現している。また、図2に示すように、本発明の無線通信モジュールは、ピン端子自体が極力むき出しにならないよう、ピンの両サイドにガイド104を設けている。さらに、図2に示すように、本発明の無線通信モジュールにおいては、ピンのある側にロゴ106が表示されている。本発明の無線通信モジュールにおいては、アンテナとして、例えば誘電体チップアンテナ等の短縮型アンテナを用い、例えば図2の裏面側に内蔵されているが、外部から眺めてもその位置は視認できない。使用の際には、電波放射特性の悪化を防ぐため、アンテナの内蔵されている側の面がユーザの頭部に対して外側(ジャケットの裏面側)に来るように無線通信モジュールをジャケットに挿入して使用すべきである。本発明のようにロゴを表示することにより、ピンが並んでいる側が正面であるとユーザに認識させることが可能となり、正面をユーザ側に向けて差し込むようユーザに促すことができる。結果として、無線通信モジュールがジャケットに挿入された状態においては、アンテナがユーザに対して外側に位置することとなり、上記の目的が達せられる。
また、周囲の温度もしくは湿度の変化や製造誤差、経年変化等によってインターフェースコネクタピンとの位置関係がずれることを考慮すると、本発明の無線通信モジュール100の各ピンは、例えば、1.1mm程度のピッチで配置される必要がある。携帯型の電話機は、一般に、横幅が50mmを超えると手に持っていて大きいと感じられることが知られているが、インターフェースの各ピンのピッチをこのように1.1mm程度とすればこうした違和感はなく構成することが可能になる。
また、本発明の無線通信モジュールの厚さを、従来のPCMCIAカードの厚さと比較して薄い4mm程度とすることにより、アンテナの内蔵を可能にしつつ、以下において説明する図4Aに示すようなUSB対応のアダプタや、標準的なPCMCIAカードアダプタへの挿入も可能となる。
図3A及び図4Aは本発明の無線通信モジュールに対応した端末(ジャケット)の一例をそれぞれ示している。図3Aに示すジャケット300は、音声通信及びデータ通信対応型の従来のPHS通信端末から図1に示すような無線通信部分を省いた構成を有する装置であり、本発明の無線通信モジュールと接続するためのインターフェース及び本発明の無線通信モジュールを挿入するためのスロットを有している。ジャケット300は、無線通信モジュール挿入用のスロット部分を保護するキャップ301を有しており、無線通信モジュールを差し込む際には、ユーザは当該キャップを外してスロットを露出させ、当該スロットへ無線通信モジュールを挿入した後に当該キャップを閉じて使用する。さらに、当該キャップは、無線通信モジュール挿入用スロット部分を機械的に保護するばかりでなく、様々な使用環境下において無線通信モジュール上端部に配置された内蔵アンテナの放射特性を所定の範囲内に確保するためのアンテナレドームとしても機能する。ジャケット300内に設けられた対応スロットに無線通信モジュール100を挿入することにより、従来のPHS通信端末のように音声通信及びデータ通信の両方に使用することができる。
本発明の無線通信モジュールがジャケットに挿入された状態を具体的に示すブロック図を図3Bに示す。無線通信モジュール100とジャケット300とがインターフェース128を介して接続されている。図3B中の矢印は信号の流れる方向を示している。無線通信モジュール100が挿入されたジャケット300が音声通信及びデータ通信の両方を行う通常のPHS通信端末のようにして使用される場合には、ユーザの音声はマイク304を介してPCMコーデック302へ入力され、パルス符号変調されてデジタルデータに変換される。インターフェース128は18のピン(信号線)を有している。具体的には、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)シリアルインターフェースとして、制御用データおよびデータ通信時のデータのやり取りの為に、TXD(送信シリアルデータ)、RXD(受信シリアルデータ)、RTS(送信データレディ)、CTS(送信レディ)、DTR(受信レディ)、DCD(データキャリア検出)、RI(リングインジケータ)の7つのピンが使用され、PCMクロック信号(PCMCLK)、PCM同期信号(PCMSYNC)、PCM入力信号(PCMIN)及びPCM出力信号(PCMOUT)の4つのピンが音声用の各信号のやり取りのために使用され、INS(検出信号)は本発明の無線通信モジュールの挿入を認識する為に使用され、無線通信モジュールへの電源の供給およびアース用に、電源(Vcc)、グラウンド(GND)の2つの信号が使用され、電界強度用の各信号(DISP1、DISP2、DISP3)にて、ジャケットのLCDおよびLED等の外部表示デバイスに電界強度表示(アンテナ表示)を行う為に、3つのピンが使用され、インターフェース通知用の信号(IF_SEL)は、現状UARTで使用しているピンをUART以外の別のデータ転送方式でも使えるようにした場合に、UARTなのか、別方式なのかの確認のために使用される。PCMコーデック302において符号化された音声データは当該4つのピンのうちの1つを介して無線通信モジュール100内のADPCMトランスコーダへ入力され、ADPCM変調されたデータへと変換される。ADPCMトランスコーダ118の出力信号は時分割多元接続(TDMA)用ベースバンド信号に符号変換され(114)、さらに変調部110及び送信部106において1.9GHz帯の変調波に変換され、アンテナ・スイッチ104及びアンテナ102を介して基地局へと無線伝送される。一方、ユーザによりジャケット300のキーボード310等の入力装置から入力されたデータはジャケット制御部308へと入力され、さらにインターフェース128のUARTシリアルインターフェース用のピンを介して無線通信モジュール100側の制御部120に入力される。当該データ信号はTDMA符号化部114に入力され、以降は音声信号と同様にして変調部110、送信部106、アンテナ・スイッチ104及びアンテナ102を介して基地局へと無線伝送される。
基地局から送信された無線信号は、アンテナ102において受信され、アンテナ・スイッチにより受信部108へと入力される。この受信信号(例えば、1.9GHz帯)は、受信部108において増幅、周波数変換され、ついで復調部112でTDMAベースバンド信号に復調された後、TDMA復号化部116によりADPCM音声信号もしくはデータ信号が得られる。ADPCM音声信号はADPCMトランスコーダ118へ入力されてPCM音声信号へ変換される。PCM音声信号は、さらにインターフェース128の音声信号用のピンを介してジャケット300側のPCMコーデック302に入力され、アナログ信号に変換されてスピーカ306を介して出力される。ユーザはこの出力された音声を聞くことができる。一方、TDMA復号化部116から制御部120へと入力されたデータ信号は、インターフェース128のUART用のピンを介してジャケット300の制御部308へ入力され、ユーザの要求に応じてジャケット300が具備するディスプレイ312を介して表示される。
本発明の無線通信モジュールに内蔵されたフラッシュメモリ122は無線通信モジュールの電話番号、PIN(Personal Identify Number)、PUK(Personal Unblock Key)等の固有情報や電話帳等のデータを格納し、RAM124は制御データや送受信されるデータ等を一時的に保持するために使用される。
図4Aに示す別の形態のジャケット400は、データ通信対応型の従来のPHSカードから図1に示すような無線通信部分を省いたような構成を有しており、無線通信モジュール100を挿入するためのスロットと、PC等への接続のためのUSBインターフェース401とを有する。ジャケット400内に設けられたスロットに無線通信モジュール100を挿入することにより、従来のPHSカードのようにデータ通信に使用することが可能となる。無線通信モジュールがジャケット400に挿入された状態を具体的に示すブロック図を図4Bに示す。無線通信モジュール100とジャケット400とがインターフェース128を介して接続される。データ信号等がやり取りされ、無線通信モジュール100とジャケット400との間の動作は図3Bにおけるデータ信号の通信の場合と同様である。ジャケット400はさらに、USB制御部402及びUSBインターフェースを介して、ジャケット400に接続されたPC等との間でデータのやり取りを行う。
このような本発明の無線通信モジュールを使用すれば、無線通信機能を有する独立したモジュールを、様々な機能を有する多様な端末に挿入し、当該端末を無線通信機能を具備するPHS通信端末として使用することが可能となる。このように、図1のような構成の本発明の無線通信モジュールは、ユーザの用途に応じて多種多様に利用することができる。
本発明の無線通信モジュール及び対応する各種ジャケットにおいては、無線通信モジュールがジャケットに挿入されているか否かを確認できる機能が提供される。具体的には、本発明においては、無線通信モジュールが有するインターフェース用の18のピンのうちの1本「INS」を、挿抜確認用の信号線として使用する。例えば、図3Aのジャケット300に無線通信モジュール100が挿入されていない状態における当該信号線上の電圧と、ジャケット300に無線通信モジュール100が挿入された状態における当該信号線上の電圧とが異なる値となるように構成することにより、ジャケット制御部308が現在の挿抜の状態を検出できるようにする。検出結果に基き、ジャケット制御部308は、ディスプレイ312上で挿抜の状態に関する表示を行い、無線通信モジュールが挿入されているか否かをユーザに知らせる。
出願人の提案する無線通信モジュール/ジャケット構成においては、無線通信モジュールがジャケット内に完全に挿入されてジャケットのキャップが閉じられると、外部からは無線通信モジュールが挿入されているか否かは視認できない。本実施例の構成を採用することにより、本発明の無線通信モジュールが抜き出されていても、ユーザは無線通信モジュールの不在にすぐに気づくことができる。
図3Bのような構成の無線通信モジュール100をあるジャケットから抜き出して、別のジャケットに挿入し、当該別のジャケットを新たに電話機として使用する場合を想定する。この場合、最初に使用していたジャケットに格納されていたデータ(例えば、電話帳データ)を一旦無線通信モジュール側のフラッシュメモリ122に移動させ、無線通信モジュールを当該最初のジャケットから抜き出して別のジャケットに挿入し、さらに無線通信モジュールのフラッシュメモリ122に格納されているデータを当該別のジャケットに移動させる、といった動作が必要となる。無線通信モジュールとジャケットとの間でのデータ交換中にユーザが無線通信モジュールを抜き出すとメモリ保持データの破損等が生じる恐れがある。この問題を解決すべく、本発明のジャケットにおいては、本発明の無線通信モジュールが装着されていること、データ転送モードに移管する手順をジャケット自身が行なっていること、ジャケットからの指示により無線通信モジュールからデータが送出されてくることを、INS、TXD、RXD、RTS、CTS、DCD、RIの各信号線を用いて確認し、データ交換中であることをジャケット制御部308が認識すると、データ交換中である旨を例えばディスプレイ312に表示することにより、ユーザに通知する。
通常のUART(シリアル)インターフェースにおいては、230.4kbpsあるいは115.2kbpsといったボーレートが一般に使用される。一方、通常の1.9GHz帯のPHS通信システムにおいて使用されている19.2MHzのクロック信号から生成できるボーレートは、240kbpsもしくは120kbpsといったように、上記と異なる値である。従って、UARTインターフェース用に通常の230.4kbpsや115.2kbpsといったボーレートを使用しようとすれば、新たにクロック発生源を設ける必要がある。そのような構成においては、当該クロック発生源のための消費電力が増加し、無線通信モジュールの寸法が増大するという問題が生じる。この問題を解決すべく、本発明の無線通信モジュールにおいては、UARTインターフェース用に使用するボーレートとして、240kbps又は120kbpsといった、PHSシステムのクロック信号から生成できるボーレートを採用する。これにより、新たなクロック源を追加する必要がなくなり、無線通信モジュールの省電力化及び小型化を図ることができる。
尚、無線通信区間の高速化に伴い、本発明の無線通信モジュールとジャケットとの間でのシリアル通信速度として、将来的に240kbpsよりも速い速度が必要となることが想定されるため、インターフェース128のIF_SELピンを用いて切り換えを行う。図3Bの例で説明すれば、例えば、無線通信モジュール側の制御部120が無線通信区間でのデータ通信速度を検出して、当該速度に応じたシリアル通信速度に切り換えてジャケット300側にデータを伝達するようにする。
無線区間での通信によりエラーが生じるため、ADPCM処理された音声データを復号してそのまま再生しても、明瞭な音声は得られない。そこで、例えば、図3Bの構成においては、通常、ジャケット300において通話品質改善のための補間処理やミュート処理などのエラー補正処理を行う必要がある。しかしながら、この場合には、エラー情報を無線通信モジュール100からジャケット300に通知するためのピンを新たに設ける必要があり、従って、無線通信モジュールの寸法が大きくなり、より小型のジャケットに対して汎用的に適用することが困難になるという問題が生じる。また、ジャケット300側でエラー補正処理を行うため、ジャケット内のCPUを常時稼動させる必要があり、消費電力の増加や連続通話時間の減少などの問題が生じる。また、エラー補正処理による遅延を最小限に抑制するため、比較的高速なCPUをエラー補正処理用に別途使用する必要がある。結果として、ジャケットが高価なものとなってしまう。さらに、エラー補正処理に関する技術を有していないメーカーがジャケットの開発に携わることが困難となる。
これらの問題を解決するため、本発明の無線通信モジュール/ジャケット構成においては、無線通信モジュールにより受信されたADPCM音声データは、まずADPCMトランスコーダによりPCM音声信号へと変換され、エラーを含むPCM音声信号となる。当該信号は、無線通信モジュール内のエラー補正処理回路により処理され、聴感的に改善された品質を有する、PCM音声信号となる。このPCM音声信号はさらにジャケットのPCMコーデックにより、改善された品質を有する、元の音声信号へと復号化される。無線通信モジュール内にはさらにμ-law変換部が具備されており、当該改善された品質を有する音声信号はここでμ-law変換される。無線通信モジュールのインターフェースはμ-law用のピン(信号線)を有し、μ-law変換された音声信号はこのピンを介してジャケット側のμ-lawコーデックに入力され、ここで復調されて元の音声信号となり、スピーカを介して出力される。
本発明の無線通信モジュール/ジャケット構成においては、無線区間で発生したエラー補正処理が全て無線通信モジュール側で行われるので、エラー情報通知のためのピンをインターフェースに設ける必要はなく、ジャケット側のCPUをエラー補正処理のために常時稼動させる必要もなく、ジャケットにおいて高価なCPUを使用する必要もなく、また、ジャケットの開発を行うメーカーはエラー補正処理に関する技術を有している必要もない。PHS音声通信においては、エラーレートの増加に伴い通話品質が劣化するため、既知の方法による補正手段によって通話品質の改善が行われている。さらに、将来ハーフレート等新たな音声符号化方式に対応した無線通信モジュールが将来的に登場するとしても、無線通信モジュールとジャケットとの間のインターフェースをμ-lawのままにしておけば、ジャケットについての設計変更は必要ない。従って、ジャケットのメーカーは、データ変調方式に関連した新たな開発負担を強いられることなく、ジャケットそのものの機能の設計に注力することができる。また、ユーザにとっても、無線通信モジュールのみを新しい方式のものに買い換えて、お気に入りのジャケットは買い換えずにそのまま使用する、といった使い方も可能となり、従来の一体型のPHS通信端末や、図3Bに示した無線通信モジュール/ジャケットと比較して、より柔軟な使用形態が提供される。
出願人が提案した本発明の無線通信モジュールはアンテナ(例えば、誘電体チップアンテナ)を内蔵しており、無線通信モジュール内のその他のデバイスが発生する電磁波ノイズがノイズフロアを上昇させるという問題がある。
図5は、無線通信モジュール内部におけるアンテナとその他のデバイスとの配置関係を示している。出願人が実験を通じて得た知見によれば、当該アンテナとその他のデバイスとの間隔を少なくとも3mm以上とすることにより、当該その他のデバイスの発生するノイズフロアを実用上必要なレベル以下にとどめることが可能であることが見いだされた。
本発明の無線通信モジュール内のフラッシュメモリ(122)にはPIN(Personal Identity Number)、PUK(Personal Unblock Key)が格納されるとともに、これらの暗証番号による認証のためのプログラムが図示しないROM(Read Only Memory)に格納されている。無線通信モジュールがジャケットに挿入されるか、もしくは無線通信モジュールがジャケットに挿入された状態でジャケットの電源が投入されると、無線通信モジュール側への給電がなされ、当該プログラムが動作して、UART信号線の1つを介してジャケット側に所定の信号を送信し、ディスプレイを介するなどしてPINの入力をユーザに促す。ユーザによって誤ったPINが所定の回数以上入力されると、当該プログラムは無線通信モジュールの動作をロックし、ジャケットにおいてユーザが正しいPUKを入力しない限り無線通信モジュールを使用できないようにする。このような構成により、他人の無線通信モジュールを第三者が他のジャケットにそれを挿入して使用しようとした場合にも、無線通信モジュール内のデータの秘匿性を守ることが可能となり、悪意の第三者による盗用を防ぐことができる。
既存のPHS通信システムにおいて、電話機同士の間で比較的に短いメッセージのやり取りを行うことを可能とするショートメッセージサービスと呼ばれるサービスが提供されている。本発明の無線通信モジュールは、ショートメッセージサービスにおいて無線区間でやり取りされる、文字情報の付加されたUUI(User User Interface)、サブアドレス、ファシリティ等のデータを受信すると、これらのデータに対して何らの付加処理も施さずにインターフェースを介してそのままジャケットに受け渡すように構成される。このような構成を採用すれば、ショートメッセージサービスにおけるUUI、サブアドレスもしくはファシリティ等のデータの使用方式として異なる方式を採用している国においても、本発明の無線通信モジュールをその国の方式に対応したジャケットに挿入して使用することにより、どの国においてもショートメッセージサービスを利用できる。通常、国内及び海外においてショートメッセージサービスを展開する場合、全ての国で1つの共通化した方式を採用する必要があるが、本発明の構成ならばこうした必要はない。図6は、ショートメッセージサービスのための動作を説明するシーケンス図である。無線通信モジュールと基地局との間は、PHSの通信方式により手順が決まっている。無線通信モジュールは、基地局から受信した文字情報の付加されたUUI、サブアドレス、ファシリティ等の情報を、UARTピンを使用してジャケットに通知する。ジャケットは、無線通信モジュールから受信したUUI等の情報を、文字情報として認識し、LCD等のディスプレイに表示させる。
本発明の無線通信モジュールは、電源スイッチをオフとすることなく速やかに電波出力を停止する(停波)機能を有する。このような停波機能は、電車内やPHSサービス範囲外の地域など、無線通信モジュールから電波が出力されることが好ましくない状況において特に有用である。ユーザがジャケットを操作して停波指示を出す(例えば、ジャケットに設けられている停波用のボタンを押下する)と、ジャケット制御部は当該停波指示を認識し、停波指示に対応したATコマンドを、インターフェースのUART信号線のうち制御信号用のピンを介して無線通信モジュールの制御部に伝達する。無線通信モジュールの制御部は当該ATコマンドが停波指示を示すものであることを認識し、アンテナスイッチ(104)、送信部(106)、変調部(110)、並びにTDMA符号化部(114)を制御してその動作を停止させる。このような停波機能は既存の無線データ通信カードにはないものであり、上述の問題の解決に有用であるとともに、電力削減にも効果がある。例えばPHSサービス圏外にいる場合、通常なら端末は定期的に近隣の基地局を探索し、位置登録のための送信をフルパワーで行うため、その都度電力を消費するが、本実施例の構成を適用すればこのような電力消費を抑制できる。
ジャケットに本発明の無線通信モジュールが挿入されている状態でジャケットの電源を立ち上げた場合のシーケンス図、停波状態が予め設定されているジャケットに本発明の無線通信モジュールを挿入した場合のシーケンス図、及び、停波状態が予め設定されていないジャケットに本発明の無線通信モジュールを挿入した場合のシーケンス図を図7A、図7B、及び図7Cにそれぞれ示す。
既に述べたように、本発明の無線通信モジュールにおいては、データ信号及び制御信号をやり取りするためのUARTインターフェース用のピンと音声信号のやり取りのためのPCMインターフェース用のピンとを独立して設けている。従って、音声通信対応のジャケットに本発明の無線通信モジュールを挿入して音声通信を行う際、PCMインターフェースのピンを使用すると同時にUARTインターフェースのピンも使用することができる。本発明のジャケットには例えばオープンサーチ用のキーが設けられており、音声通話中に音声品質が悪化した場合に当該キーを押下することにより、ジャケット制御部から無線通信モジュール制御部へ、UARTインターフェースのピンを介してオープンサーチ用のATコマンドを伝達し、新たな基地局を探索することが可能である。また、上述したように、本発明の無線通信モジュールはその内部の記憶装置に電話帳などのユーザデータを格納している。従って、例えば、音声通話中に自分の電話番号を確認したくなった場合などには、音声通話を続行しながら、UART信号線を介して必要なデータを無線通信モジュールから取得し、ジャケットのディスプレイに表示させるなどすることができる。従来のPCMCIAインターフェースを用いたデータ通信カード等においては、データ信号用のインターフェース信号線と制御信号用のインターフェース信号線とが共通であるため、データ通信中に通信品質が劣化しても上記のような制御信号を送ることはできなかった。このため、従来のデータ通信カードにおいては、データのやり取りを一旦停止してコマンドモードに移行する必要があった。このように、本発明の無線通信モジュールは、無線通信モジュールとジャケットとの間のインターフェースにおいて、音声通信用のインターフェースとデータ通信及び制御用のインターフェースとが独立して設けられているという新しい構成を有するため、本実施例のような機能を提供することが可能となっている。
オープンサーチ時のシーケンス図及び自分の電話番号確認を確認する際のシーケンス図を図8A及び図8Bに示す。
本発明の無線通信モジュールは、図9に示すように、内部にアンテナ端子を具備する。既に述べたように、本発明の無線通信モジュールはアンテナを内蔵しているため、通常の使用の際には当該内蔵アンテナを使用して通信を行う。一方、ジャケットがアンテナを具備している場合等、内蔵アンテナを使用せずに外付けのアンテナを使用する場合には、アンテナ端子付近のケース部分に穴を開けた本発明の無線通信モジュールを使用すれば、内部のアンテナ端子を介して外付けのアンテナを使用できる。また、これらのアンテナを切替スイッチにより適宜選択することにより、当業者に周知の方法で空間ダイバーシティシステムを構成することが可能となる。
本発明の無線通信モジュール/ジャケットは、基地局から得た時刻情報に基いてジャケットの時刻補正を行うことができる。このような構成についてのシーケンス図を図10に示す。パケット通信時に基地局から時刻情報が得られるので、当該時刻情報に基き、無線通信モジュールはUART信号線を介してジャケット制御部に時刻補正のためのATコマンドを送信する。ジャケット制御部は当該ATコマンドを認識してジャケットの時刻を補正する。
また、パケット通信時に限らず、基地局からの送信される何らかの情報を受信する際に、その情報に含まれる時刻情報に基いてジャケット(ジャケット)にATコマンドを送信し、時刻補正を行うことも可能である。
図11に、無線通信モジュール(100)をジャケット(300)に装着した実施例を示す。メイン基板の表側(ジャケット300の操作・表示面側)にはユーザインターフェースのためのキーボード、LCDパネル等が実装され、裏側には無線通信モジュールとのインターフェースコネクタ等を搭載したドータボードが具備されている。ジャケットにスロットインされた無線通信モジュールは、上記ドータボード上に設けられたインターフェースコネクタを介してメインボードと接続される。これらの構成要素とジャケット本体(300)並びにキャップ(302)との位置関係は、無線通信モジュール上端部に設けられたアンテナがキャップ301が内部に形成するキャビティのほぼ中央部に位置するように構成され、キャップ301がアンテナレドームとして十分機能するように配慮されている。出願人の知見によれば、当該キャビティの寸法は1.9GHz帯の誘電体チップアンテナの各方向に対し、少なくとも5mm以上が必要であり、望ましくは約10mm以上とするのが好適である。また、図11Bに示すように、メインボード上端部と無線通信モジュール内のアンテナ間の距離は、少なくともd以上となるように構成される。当該距離dは、メインボードからのノイズを軽減し、かつアンテナ放射特性を確保するため、1.9GHz帯を用いるPHS通信においては少なくとも5mm以上、好ましくは10mm以上に構成される。出願人が実験を通じて得た知見によれば、メインボードに形成されるベタグランドパタンの寸法は無線通信モジュールのアンテナ放射特性に極めて重大な影響を与えることが見いだされた。すなわち、図11Bに示すメインボード上のベタグランドパターンの長手方向の寸法L、或いは対角線方向の寸法Dが送受信波の半波長の整数倍に等しい場合は、その共振効果により無線通信モジュールのアンテナの放射特性、指向性に好ましからざる影響を及ぼす。例えば、ベタグランドパターンの長手方向の寸法Lが半波長に等しい場合、無線通信モジュールのアンテナから放射される電磁波により当該ベタグランドパターン上には図11Bに示すような電圧・電流分布が生じる結果、新たな共振エレメントによりアンテナ放射特性が乱されることによるものである。実際、グランドパターン寸法Lが約半波長の場合、3m法で測定されたアンテナ放射効率は16.4%であったのに対し、寸法Lを25%増加した場合、アンテナ放射効率は26.6%に改善された。従って、メインボード上のベタグランドパターンの長手寸法L並びに対角寸法Dは、ともに半波長を基準として少なくとも12.5%以上、より好ましくは25%異ならせることにより、アンテナ放射特性を許容範囲まで改善可能であることを見出した。即ち、1.9GHz帯を用いるPHS方式においては、当該半波長は約7.9cmに相当するので、当該長手寸法L及び対角寸法Dが共に、少なくとも6.9cm以下もしくは8.9cm以上、より好ましくは5.9cm以下もしくは9.9cm以上の条件を満たすように構成することが要請される。
既に述べたように、本発明の無線通信モジュールは多種多様なジャケットに挿入して使用することが可能である。従って、あるジャケットに挿入した場合と、別のジャケットに挿入した場合とでは、それぞれのジャケットの筐体の形状、材質等の影響によるアンテナ放射特性や、ジャケットが発生するノイズフロアレベルが異なるため、挿入時の無線通信モジュールの受信性能は異なってくる。このような場合、無線通信モジュールが現在通信を行っている基地局から近隣の別の基地局にハンドオーバー開始を判断するハンドオーバー判定基準は、ジャケットごとに異なることになる。このような状況に対応すべく、本発明の無線通信モジュールは、無線通信モジュールをジャケットに挿入した際もしくは無線通信モジュールを挿入した状態のジャケットの電源を投入した際に行なわれる無線通信モジュールとジャケットとの間でのネゴシエーションを通じて、自身が現在接続されているジャケットの種類を知ることができる。例えば、電源が投入された状態のジャケットに本発明の無線通信モジュールが挿入されて無線通信モジュールへの給電がなされると、無線通信モジュールの制御部とジャケット制御部との間で、UART信号線を介してATコマンドのやり取りがなされ、互いに自己の情報を知らせ合う。ジャケット制御部から無線通信モジュール制御部へ伝達されるATコマンドにより、無線通信モジュール制御部はジャケットの種類を特定することができる。
本発明の無線通信モジュールは自身の内部の記憶装置に様々なジャケットの種類に対応する無線動作アルゴリズムの情報を格納しており、自身が現在接続されているジャケットの種類に適したアルゴリズムを選択して実際の無線動作に用いることができる。例えば、無線通信モジュール内に格納されている当該無線動作アルゴリズムには、無線通信モジュールが基地局から受信する電波の電界強度および受信されたデータのエラーレートがどのような値となった際にハンドオーバー動作を開始すべきか、といった設定が含まれる。無線通信モジュールは自身が受信している電界強度及びエラーレートをアンテナ102、受信部108、復調部112、TDMA復号化部116を通じて、制御部120で計測している。無線通信モジュールは受信電界強度及び受信データのエラーレートを継続的に監視し、これらの値が現在接続されているジャケットに対応した所定のレベル以下になった場合に、現在の位置が接続中の基地局から遠ざかっていると判断してハンドオーバー動作を開始する。無線通信モジュールの記憶装置に格納される、各ジャケットに対応した最適なアルゴリズムは、実際には、各ジャケットとの組合せにおいて許容される通信品質を保証する電界強度とエラーレートに基づくハンドオーバー判定基準を決定するといった手法で得られるであろう。
即ち、エラーを起こし難い(即ち、ノイスフロアレベルの低い)ジャケットの場合は、電界強度が比較的弱くてもハンドオーバー動作を起動させる必要がない。一方、エラーを起こし易い(即ち、ノイズフロアレベルの高い)ジャケットの場合は、前記エラーを起こし難いジャケットに比較して、より強い電界強度においてハンドオーバーを起動させる必要がある。各ジャケットに対するハンドオーバー判定基準は、無線通信モジュール内の図示しないROMに予め電界強度とエラーレートの組み合わせに基づく複数のハンドオーバー判定基準テーブルを格納しておき、前記ネゴシエーションで通知されたジャケットの種類に応じて当該ハンドオーバー判定基準テーブルから適切な組合せを選択することができる。また、当該ハンドオーバー判定基準テーブルは、当業者には周知のOTA(OVER THE AIR)技術を用いて無線通信モジュール内のフラッシュメモリ(122)に網からの指示値を格納し、更新することもできる。
本発明の無線通信モジュールは、受信される電波の電界強度が弱まったことを検出するとジャケット警告音を発するなどにより、その旨をユーザに通知するように構成されている。従来のデータ通信カードはこのような機能を有していなかったが、本発明の無線通信モジュールは、音声通信とデータ通信の両方に対応したジャケットに挿入して使用されることも想定しており、電話機として機能させることを考慮して、このような機能が追加された。実施例14においても述べたように、本発明の無線通信モジュールの制御部は、無線通信モジュールにおいて受信される電波の電界強度を監視している。従って、例えば、測定された電界強度が所定のレベル以下となった場合に無線通信モジュールの制御部からジャケット制御部に対して電界強度が弱まった(PHSサービス圏外に近づいた)ことを示すATコマンドが、UART信号線を介して伝達される。ジャケット制御部は、当該ATコマンドにより状況を認識し、所定の警告音をスピーカから出力する。既に述べたように、本発明の無線通信モジュール/ジャケット構成においては音声通信用のインターフェースとデータ通信用のインターフェースとが独立しているため、音声通話中にデータ通信用のシリアル信号線を使用することができる。従って、本実施例の機能は音声通信中でも有効に提供される。
本発明の無線通信モジュールは、ジャケットのボーレートを自動的に検出する機能を有する。即ち、無線通信モジュールとジャケットのイニシャルネゴシエーションにおいて、ジャケットは所定のAT固定ワードをジャケット固有のボーレートで無線通信モジュールに送出する。無線通信モジュールがサポートするUARTインターフェースのボーレートは、2400,4800,9600,19200,38400,57600,120000,240000bpsの8通りあり、このうちどのボーレートでジャケットが当該固定ATワードを送出したかを判定し、以後のボーレートを当該判定されたボーレートに固定する。この方法によって、様々な用途を有するジャケットにそれぞれ最適なボーレートをジャケット自身が指定することが可能となる。
通常のPHS通信端末は、パケット通信中に送信すべきデータパケットが存在しなくなると、ドーマント(Dormant)状態と呼ばれる仮想接続状態(休眠状態)に移行する。例えば、既存のPHSデータ通信カードは、このような場合に、アプリケーション層では継続して接続されているように見せかけながら、物理層ではデータパケットの送受信を一旦停止させ、仮想接続状態に移行する。出願人の提案する本発明の無線通信モジュール/ジャケット構成においては、仮想接続状態となった場合、無線通信モジュールは自身が通信していないことを認識できるが、ジャケット側ではそのような認識ができない。このため、ジャケットのCPUが稼動し続け消費電力が増大するという問題が生じうる。そこで、本発明の構成においては、パケット通信中に無線通信モジュールが仮想接続状態に移行した場合には、無線通信モジュール制御部はUART信号線を介してATコマンドをジャケットに発行し、仮想接続状態にあることをジャケットに通知する。従来の一体型のPHS音声端末においては全ての構成要素が同一筐体内に組み込まれているため、データ送信がなく仮想接続状態にあることはすぐに認識できる。しかしながら、本発明の構成においては、無線通信を行う無線通信モジュールとその他の機能を具備するジャケットとが分離されているため、上記のような機能が必要となる。既存のデータ通信カードの場合には、仮想接続状態(休眠状態)にあっても、PC側ではこれを認識することはできないため、PCの電力消費を防ぐことはできないが、本発明においては、上記の構成により、無線通信モジュールだけでなくジャケットも休眠状態に入ることが可能となり、全体的な消費電力の増加を抑制できる。
また、仮想接続状態にあった本発明の無線通信モジュール/ジャケットが、ジャケット側でのユーザの操作により、無線通信モジュールを介した何らかの無線送信を行う必要が生じた場合には、ジャケット制御部から無線通信モジュールの制御部へATコマンドが発行され、仮想接続状態から通常の動作モードに復帰して通信を再開する。同様に、仮想接続状態にあった無線通信モジュール/ジャケットが基地局からの信号の受信した場合には、これを契機として無線通信モジュールが先に通常モードに復帰し、無線通信モジュールから発行されたATコマンドによりジャケットも通常モードに復帰する。
以上、本発明の実施形態についてPHS通信システムを用いて詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、PHS方式以外の他の通信方式を用いた実施形態やこの発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も本発明の技術的範囲に含まれることは当業者にとって明らかであろう。