JP4807542B2 - 低損失遠心ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円板摩擦による損失が少なく、低流量で使用しても流体の温度上昇が少ない低損失遠心ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は、ジェットエンジンの燃焼器に燃料を噴射するための従来の燃料流量制御装置の構成図である。この図において、1は燃料ポンプ、2は計量バルブ、3はドレインバルブ、4はノズルであり、燃料ポンプ1で加圧した液体燃料(ジェット燃料)を、計量バルブ2で計量(流量調節)し、ドレインバルブ3を開き、ノズル4から燃焼器(図示せず)に噴射するようになっている。
【0003】
また、余分な燃料を燃料ポンプ1の上流側に戻すためのバイパスバルブ5と、このバイパスバルブ5を制御して、計量バルブ2の上流側圧力P1と下流側圧力P2の差圧ΔPを一定に制御する差圧センサーバルブ6とを備えている。
【0004】
計量バルブ2は、計量スプール2aとノズルフラッパ2bを有し、ノズルフラッパ2bを電気的又は機械的に移動(図で左右に)させることにより、計量スプール2aの左端に作用する流体圧が変化し、計量スプール2aを左右に移動させて通過流量を制御する。例えば、この図でノズルフラッパ2bを右に移動させると、計量スプール2aの左端圧力が上昇し、計量スプール2aが右に移動して流量を絞り、逆にノズルフラッパ2bを左に移動させると、計量スプール2aの左端圧力が低下し、計量スプール2aが左に移動して流量が増加する。
【0005】
計量バルブ2は、上流側圧力P1と下流側圧力P2の差圧ΔPを一定に保持することにより、ノズルフラッパ2bの変位に通過流量が比例する。そのため、差圧センサーバルブ6のスプール6aをバネ6で図で左側に付勢し、スプール6aの左端に上流側圧力P1、右端に下流側圧力P2をそれぞれパイロットライン7a,7bで導いている。
【0006】
差圧ΔPが所定の値より小さくなると、この図でスプール6aが左に移動し、パイロットライン8aから8bに高圧(上流側圧力P1)の燃料が流れ、バイパスバルブ5のスプール5aを右に移動してバイパスライン9bを閉じ、上流側圧力P1を高め計量バルブ2の通過流量を増加させる。
【0007】
逆に、差圧ΔPが所定の値より大きくなると、この図でスプール6aが右に移動し、バイパスバルブ5のバネ5b側の圧力をパイロットライン8b,8cを介して燃料ポンプ1の上流側(低圧部)に抜き、バイパスバルブ5のスプール5aを左に移動してバイパスライン9bを開き、上流側圧力P1を下げ計量バルブ2の通過流量を減少させる。
【0008】
上述した構成により、差圧センサーバルブ6により上流側圧力P1と下流側圧力P2の差圧ΔPを常に一定に保持し、ノズルフラッパ2bの変位に比例した燃料流量をノズル4から噴射することができるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した航空用エンジンの燃料流量制御装置では、大流量を使用するときに燃料ポンプとして図2に例示するような、低比速度の遠心ポンプ10を使用している。この図において、11はインペラ、12はシュラウド、13はケーシング、14は軸受、15はシール(ラビリンスシール)、16は加圧前の低圧流体、17は加圧後の高圧流体である。
【0010】
低比速度の遠心ポンプとは、高回転で大流量を吐出できるポンプであり、軽量に設計できるため航空用の場合、その点でメリットが大きい。
【0011】
しかし、低比速度の遠心ポンプの場合、小型化のため回転数を高くしているため、円板摩擦が大きく効率が悪い問題点がある。またそのため、低流量で使用すると流体の温度が過剰に上昇する問題がある。すなわち、A.J.Stepanoffらの研究によれば、比速度100程度の場合、最も大きい損失は円板摩擦であり、20%以上の損失となる。
【0012】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、円板摩擦による損失を低減することができ、これにより、低流量で使用しても流体の温度上昇を抑制することができる低損失遠心ポンプを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、液体燃料を加圧する低比速度の遠心ポンプであって、高速回転可能なインペラ(11)のシュラウド(12)とインペラを囲むケーシング(13)との間に、インペラと同一方向に自由回転可能なフローティング部材(20)を備え、
前記フローティング部材(20)は、シュラウド(12)とケーシング(13)との間でこれらと接触せず、流体の摩擦だけにより駆動されるフローティングディスク(21、22)を有する、ことを特徴とする低損失遠心ポンプが提供される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記フローティング部材(20)は、前記フローティングディスクの半径方向外端とケーシング(13)との隙間を液密にシールする外側シール部材(21a,22a)と、前記フローティングディスクの軸方向外端とケーシング(13)との隙間を液密にシールする内側シール部材(21b,22b)とを有する。
【0015】
円板摩擦は、ケーシングとシュラウドの相対速度の二乗に比例するため、相対速度を半分にするディスクをケーシングとシュラウドの間に入れれば、円板摩擦の生じる面積は2倍になるが、円板摩擦が1/4になるため、全体で損失が1/2になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明による低損失遠心ポンプの構成図である。この図において、本発明の低損失遠心ポンプは、液体燃料を加圧する低比速度の遠心ポンプである。また、本発明の低損失遠心ポンプは、高速回転可能なインペラ11のシュラウド12とインペラを囲むケーシング13との間に、インペラ11と同一方向に自由回転可能なフローティング部材20を備える。
【0018】
フローティング部材20は、この例では、シュラウド12とケーシング13との間で非接触に回転可能なフローティングディスク21、22と、これらのフローティングディスク21、22とケーシング13との隙間を液密にシールするシール部材21a,21b,22a,22bとからなる。シール部材21a,21b,22a,22bはこの例ではラビリンスシールである。
【0019】
図2に示した従来の低比速度の遠心ポンプの場合、A.J.Stepanoffらの研究によれば、比速度100程度の場合、最も大きい損失は円板摩擦であり、20%以上の損失となる。また、これはインペラ11のシュラウド12(円盤状の羽根を覆う板)と流体の摩擦によるものであり回転速度の2乗に比例する。またこの円板摩擦は図2に太い破線18で示す4ケ所部分で発生する。この円板摩擦部分18は、この例ではすべて高圧流体内であり円板摩擦も大きくなっている。
【0020】
シュラウド12と流体の相対速度を1/2にできれば、円盤摩擦はその二乗の1/4に減少する。この効果を得るために、図1に示した装置では、シュラウド12(インペラ回転数)とケーシング13(回転数:0)との間にフリーに回転する円盤(フローティングディスク)を挿入している。
【0021】
この構成により、シュラウド12とフリー円盤(フローティングディスク)の相対速度が約1/2となり、ケーシング13とフローティングディスクとの相対速度も約1/2となる。すなわちフローティングディスク21、22は、その両面に作用する摩擦抵抗が一致する速度、言い換えれば損失エネルギーが最小となる速度で回転し、両面の面積が同一の場合、その速度はインペラ回転数の約1/2となる。
【0022】
図1において、フローティングディスク21、22は受圧面(4ケ所の円板摩擦部分18)の釣り合いにより、どの部材とも接触しておらず、流体の摩擦だけにより駆動される。
【0023】
シール部材(ラビリンスシール)21a,21b,22a,22bにより、フローティングディスク21、22の外面は、高圧流体17と低圧流体16の中間圧力、すなわち外側シール部材21a,22aと内側シール部材21b,22bを通して高圧から低圧までに抜ける中間圧力を受ける。従ってこの中間圧力により、フローティングディスク21、22は、インペラ11のシュラウド12に向けて押し付けられる。
【0024】
一方、フローティングディスク21、22の内面は、この例では高圧流体17の圧力を受け、インペラ11のシュラウド12から遠ざかる方向に力を受ける。
【0025】
フローティングディスク21、22の外面圧力は、シュラウド12に近づいたとき内側シール部材21b,22bが開き外側シール部材21a,22aを流れる流量も増えて中間圧力が下がる。またシュラウド12から遠ざかったときに、内側シール部材21b,22bが閉まり、リークが減り圧力が上がる。また、内側シール部材21b,22bのリークが0となったときフローティングディスク21、22の外面圧力は中間圧力と同圧になる。
【0026】
このような関係によりリークが0でないどこかのリーク量で、部材は完全にどこにも接していない状態で圧力がバランスする点で静止する。なお、径方向にも圧力バランス溝等を設けることによって、径方向もどこにも接していない状態にすることが可能である。この構成により、フローティングディスク21、22は、ポンプによって生じる流体の回転の摩擦のトルクにより自転する。
【0027】
円板摩擦は、ケーシングとシュラウドの相対速度の二乗に比例するため、上述したフローティングディスク21、22をケーシング13とシュラウド12の間に入れることにより、円板摩擦の生じる面積は2倍になるが、円板摩擦が1/2の二乗の1/4になるため、全体で損失が1/2になる。
従って、低比速度の遠心ポンプの効率が向上し、低流量域まで使用できるようになる。
【0028】
なお本発明は以上に述べた実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。
【0029】
【発明の効果】
上述したように、本発明の低損失遠心ポンプは、円板摩擦による損失を低減することができ、これにより、低流量で使用しても流体の温度上昇を抑制することができる等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による低損失遠心ポンプの構成図である。
【図2】従来の低損失遠心ポンプの構成図である。
【図3】従来の燃料流量制御装置の構成図である。
【符号の説明】
1 燃料ポンプ、2 計量バルブ、3 ドレインバルブ、
4 ノズル、5 バイパスバルブ、6 差圧センサーバルブ、
7a,7b パイロットライン、8a,8b,8c パイロットライン、
9a,9b バイパスライン、10 遠心ポンプ、11 インペラ、
12 シュラウド、13 ケーシング、14 軸受、
15 シール(ラビリンスシール)、16 低圧流体、17 高圧流体、
20 フローティング部材、21、22 フローティングディスク、
21a,21b,22a,22b シール部材(ラビリンスシール)
Claims (2)
- 液体燃料を加圧する低比速度の遠心ポンプであって、高速回転可能なインペラ(11)のシュラウド(12)とインペラを囲むケーシング(13)との間に、インペラと同一方向に自由回転可能なフローティング部材(20)を備え、
前記フローティング部材(20)は、シュラウド(12)とケーシング(13)との間でこれらと接触せず、流体の摩擦だけにより駆動されるフローティングディスク(21、22)を有する、ことを特徴とする低損失遠心ポンプ。 - 前記フローティング部材(20)は、前記フローティングディスクの半径方向外端とケーシング(13)との隙間を液密にシールする外側シール部材(21a,22a)と、前記フローティングディスクの軸方向外端とケーシング(13)との隙間を液密にシールする内側シール部材(21b,22b)とを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の低損失遠心ポンプ。
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JP2001207312A JP4807542B2 (ja) | 2001-07-09 | 2001-07-09 | 低損失遠心ポンプ |
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