前記特許文献1に開示の立坑構築方法は、掘削坑の下方に建て込まれた下部杭材を建て込み位置において保持固定する手段がなく、掘削坑に充填されたソイルモルタルが養生するまでの間に下部杭材がモルタル中を徐々に沈降するから、下部杭材を掘削坑の建て込み位置に設置することができないばかりか、下部杭材の頂部と上部杭材の底部との離間寸法が一定せず、シールド機が通過可能な一定形状の領域を作ることができない場合がある。また、この立坑仮壁構築方法は、下部杭材の姿勢を安定させることができず、掘削坑に充填されたソイルモルタルが養生するまでの間に下部杭材が掘削坑において不用意にずれ動き、掘削坑に下部芯材を直立させた状態で設置することができない場合がある。この立坑構築方法は、上部杭材とその下方に連なる下部杭材との位置決めが難しく、上部杭材の直下に下部杭材を位置させることができない場合がある。
本発明の目的は、杭材を掘削坑の建て込み位置に直立させた姿勢で設置することができ、杭材の間にシールド機が通過可能な一定形状の領域を作ることができる立坑仮壁構築方法を提供することにある。
前記課題を解決するための本発明の前提は、地盤を掘削して縦方向へ延びる掘削坑を形成し、掘削坑に養生充填材を充填するとともに縦方向に建て込み杭材を建て込んで立坑仮壁を構築する立坑仮壁構築方法である。
前記前提における本発明の特徴は、建て込み杭材が、互いに離間対向する対向端部を有して軸方向へ並ぶ第1杭材および第2杭材と、第1杭材の反対端部から第2杭材に向かって軸方向へ延びていて該第2杭材の所定の位置に達する鋼線と、第2杭材に取り付けられて鋼線を支持可能かつ該鋼線を切り離し可能な鋼線第1支持部材と、第1および第2杭材に跨ってそれら杭材に取り外し可能に取り付けられた杭材支持部材とから形成され、第2杭材を下にした状態で建て込み杭材を起立させた後、杭材支持部材を第1および第2杭材から取り外しつつ、建て込み杭材を掘削坑に建て込む杭材建て込み工程と、充填材を養生させた後、鋼線を鋼線第1支持部材から切り離して該鋼線を掘削坑から引き抜く鋼線引き抜き工程とを有することにある。
本発明の一例としては、建て込み杭材が、第1および第2杭材の対向端部の間に配置されたコンクリート杭材と、第1杭材に取り付けられて鋼線を摺動可能に支持する鋼線第2支持部材とを含み、鋼線が、コンクリート杭材の内部を軸方向へ貫通しつつ、鋼線第1支持部材と鋼線第2支持部材との間において緊張した状態にある。
本発明の他の一例としては、第1および第2杭材が、互いに並行離間して軸方向へ延びる第1および第2対向壁と、それら対向壁の間に位置して軸方向へ延びる連結壁とを有するH形綱であり、第1対向壁と連結壁との交点に形成された第1角部および第2角部と、第2対向壁と連結壁との交点に形成されて第1角部に対向する第3角部および第2角部に対向する第4角部とを備え、鋼線が、第1角部に配置された第1鋼線と、第2角部に配置された第2鋼線と、第3角部に配置された第3鋼線と、第4角部に配置された第4鋼線とから形成されている。
本発明の他の一例としては、立坑仮壁構築方法が、杭材建て込み工程によって建て込み杭材を所定の位置まで建て込んだ後、第1杭材の上方から継ぎ足し杭材を建て込む継ぎ足し杭材建て込み工程を含み、継ぎ足し杭材建て込み工程では、鋼線が継ぎ足し杭材の長さ分だけ延ばされ、該継ぎ足し杭材の反対端部から第2杭材の所定の位置に達している。
本発明の他の一例としては、継ぎ足し杭材が、互いに並行離間して軸方向へ延びる第1および第2対向壁と、それら対向壁の間に位置して軸方向へ延びる連結壁とを有するH形綱であり、第1対向壁と連結壁との交点に形成された第1角部および第2角部と、第2対向壁と連結壁との交点に形成されて第1角部に対向する第3角部および第2角部に対向する第4角部とを備え、継ぎ足し杭材では、第1鋼線が第1角部に配置され、第2鋼線が第2角部に配置され、第3鋼線が第3角部に配置され、第4鋼線が第4角部に配置されている。
本発明の他の一例として、鋼線第1支持部材には、高周波誘導加熱コイルが設置され、鋼線引き抜き工程では、高周波誘導加熱コイルが鋼線に渦電流を発生させて該鋼線自体を発熱破断させることで、該鋼線を鋼線第1支持部材から切り離す。
本発明にかかる立坑仮壁構築方法によれば、養生充填材が養生するまでの間、掘削坑の下方に位置する第2杭材が鋼線によって支持されるから、第2杭材が充填材中を沈降することはなく、第2杭材を掘削坑の建て込み位置に確実に設置することができる。また、第1杭材の対向端部と第2杭材の対向端部との離間寸法を一定に保持することができ、第1杭材と第2杭材との間にシールド機が通過可能な一定形状の領域を作ることができる。立坑仮壁構築方法は、第2杭材が鋼線によって支持されるから、第2杭材の姿勢を安定させることができ、第2杭材が掘削坑において不用意にずれ動くことはなく、第2杭材を掘削坑の建て込み位置に直立させた姿勢で設置することができる。立坑仮壁構築方法は、第1杭材とそれの下方の連なる第2杭材との位置決めが容易であり、第1杭材の直下に第2杭材を確実に位置させることができる。この立坑仮壁構築方法は、杭材支持部材によってそれら杭材どうしを連結することで、第1杭材の起立動作に第2杭材を連動させることができ、それら杭材を直状に並べた状態でそれら杭材を同時かつ容易に起立させることができる。
建て込み杭材が第1および第2杭材の対向端部の間に配置されたコンクリート杭材と第1杭材に取り付けられて鋼線を摺動可能に支持する鋼線第2支持部材とを含む立坑仮壁構築方法は、コンクリート杭材を介して第1杭材と第2杭材とが連結されることで、第2杭材が掘削坑において不用意にずれ動くことはなく、第1杭材に対する第2杭材の位置ずれを防ぐことができ、第1杭材の直下に第2杭材を確実に位置させることができる。
第1および第2杭材がH形綱であり、鋼線が第1〜第4鋼線から形成された立坑仮壁構築方法は、一対の鋼線がH形綱の対角線に位置するとともに、他の一対の鋼線がH形綱の対角線に位置するから、掘削坑から鋼線を引き抜くときの力が第1杭材や第2杭材に偏って作用することはなく、掘削坑に建て込まれた第1および第2杭材の鋼線引き抜き時におけるずれ動きを防ぐことができる。この立坑仮壁構築方法は、第1および第2杭材を掘削坑の建て込み位置に直立させた姿勢で確実に設置することができ、第1杭材の直下に第2杭材を確実に位置させることができる。
杭材建て込み工程によって建て込み杭材を建て込んだ後、第1杭材の上方から継ぎ足し杭材を建て込む継ぎ足し杭材建て込み工程を含む立坑仮壁構築方法は、継ぎ足し杭材を用いることで、第1杭材と第2杭材とを地中の深い箇所まで建て込むことができ、第1杭材と第2杭材との間に形成される領域を継ぎ足し杭材の長さに応じた所定の深さに作ることができる。
継ぎ足し杭材がH形綱であり、第1〜第4鋼線が継ぎ足し杭材の角部に配置された立坑仮壁構築方法は、一対の鋼線がH形綱の対角線に位置するとともに、他の一対の鋼線がH形綱の対角線に位置するから、掘削坑からそれら鋼線を引き抜くときの力が第1および第2杭材や継ぎ足し杭材に偏って作用することはなく、掘削坑に建て込まれたそれら杭材の鋼線引き抜き時におけるずれ動きを防ぐことができる。この立坑仮壁構築方法は、第1および第2杭材と継ぎ足し杭材とを掘削坑の建て込み位置に直立させた姿勢で確実に設置することができ、継ぎ足し杭材の直下に第1杭材を確実に位置させることができるとともに、第1杭材の直下に第2杭材を確実に位置させることができる。
高周波誘導加熱コイルが鋼線に渦電流を発生させて鋼線自体を発熱破断させる立坑仮壁構築方法は、渦電流によって鋼線自体が発熱するから、外部熱源から鋼線に熱を加える場合と比較し、鋼線を確実に破断させることができ、第1支持部材からの鋼線の切り離し不能を防ぐことができる。
添付の図面を参照し、本発明に係る立坑仮壁構築方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。図1は、建て込み杭材10Aの一例を示す図であり、図2は、図1のA−A線端面図である。図3は、図1のB−B線端面図であり、図4は、鋼線第1支持部材23の一例を示す図である。図1では、軸方向を矢印L1で示す。この立坑構築方法は、掘削機を利用して地盤を掘削し、地表11から地中12に向かって縦方向へ延びる掘削坑13を作るとともに、その掘削坑13にソイルモルタル14(養生充填材)を充填し、掘削坑13に建て込み杭材10Aと継ぎ足し杭材24とを建て込んで立坑仮壁15を構築する(図15参照)。立坑仮壁構築方法に使用する建て込み杭材10Aは、第1杭材16および第2杭材17と、第1および第2杭材16,17を支持する一対の杭材支持板18(杭材支持部材)と、第1〜第4鋼線19,20,21,22と、それら鋼線19,20,21,22を支持する鋼線第1支持部材23とから形成されている。なお、この立坑仮壁構築方法では、建て込み杭材10Aの他に、継ぎ足し杭材24が使用される(図8参照)。
第1杭材16と第2杭材17とは、それら杭材16,17の一方の端部25,26(対向端部)どうしが軸方向へ所定寸法離間対向した状態で軸方向へ直状に並んでいる。第1および第2杭材16,17の端部25,26の間には、杭材16,17が存在しない空間27が形成されている。第1および第2杭材16,17と継ぎ足し杭材24とは、軸方向へ長いH形綱であり、互いに並行離間して軸方向へ延びる第1および第2対向壁28,29と、それら対向壁28,29の間に位置して軸方向へ延びる連結壁30とを有する。それら杭材16,17,24は、第1対向壁28と連結壁30との交差箇所(交点)に形成された略直角の第1角部31と、第1対向壁28と連結壁30との交差箇所(交点)に形成されて第1角部31の反対側に位置する略直角の第2角部32と、第2対向壁29と連結壁30との交差箇所(交点)に形成されて第1角部31に対向する略直角の第3角部33と、第2対向壁29と連結壁30との交差箇所(交点)に形成されて第2角部32に対向する略直角の第4角部34とを有する。
それら支持板18には、軸方向へ長い矩形の綱板が使用されている。支持板18は、第1および第2杭材16,17に跨り、空間27を挟んでそれら杭材16,17の端部25,26に達している。支持板18は、それら杭材16,17の端部25,26において対向壁28,29に当接し、固定手段(ボルトおよびナットによる固定)によって杭材16,17の対向壁28,29に取り外し可能に取り付けられている。支持板18は、それら杭材16,17をその軸方向から支持し、杭材16,17どうしを連結することで、第1杭材16の起立動作に第2杭材17を連動させる。
第1〜第4鋼線19,20,21,22には、PC綱撚線が使用されている。それら鋼線19,20,21,22は、杭材16,17に沿って軸方向へ延びている。第1鋼線19は、それら杭材16,17の第1角部31に配置され、第2鋼線20は、それら杭材16,17の第2角部32に配置されている。第3鋼線21は、それら杭材16,17の第3角部33に配置され、第4鋼線22は、それら杭材16,17の第4角部34に配置されている。第1および第4鋼線19,22はH形綱(第1および第2杭材16,17)の対角線に位置し、第2および第3鋼線20,21はH形綱(第1および第2杭材16,17)の対角線に位置している。それら鋼線19,20,21,22は、第1杭材16の他方の端部35(反対端部)から杭材16の端部25(対向端部)を越え、さらに、空間27を通って第2杭材17の端部26に達している。それら鋼線19,20,21,22は、第1杭材16の端部35の側に位置する端部分36が杭材16の端部35から軸方向外方に延出している。
鋼線第1支持部材23は、4個のそれが第2杭材17の端部26に配置され、杭材17の連結壁30における第1〜第4角部31,32,33,34に固定手段(溶接による固定またはボルトおよびナットによる固定)によって固定されている(図2参照)。第1支持部材23は、鋼線19,20,21,22を固定支持する固定部37と、鋼線19,20,21,22を支持部材23から切り離す高周波誘導加熱コイル38とから形成されている。第1支持部材23では、鋼線19,20,21,22の一部が固定部37に挿入され、鋼線19,20,21,22が固定部37に抜脱不能に支持されている。第1支持部材23の高周波誘導加熱コイル38には、配線39を介して高周波発生装置(図示せず)が接続されている。高周波誘導加熱コイル38に高周波発生装置から高周波電圧を印加すると、コイル38に高周波電流が流れ、高周波電流と鎖交する方向へ磁束が発生する。発生した磁束がコイル38に対向する鋼線19,20,21,22の部位40に作用すると、鋼線19,20,21,22の部位40に渦電流が発生し、それによって鋼線19,20,21,22自体が発熱(ジュール熱)する。発熱した鋼線19,20,21,22の部位40では、鋼線19,20,21,22の強度が著しく低下する。鋼線19,20,21,22に張力をかけた状態で、それら鋼線19,20,21,22の部位40が高温に発熱すると、部位40に作用する張力によって鋼線19,20,21,22が部位40おいて破断し、鋼線19,20,21,22が第1支持部材23から切り離される。
図5〜図7は、建て込み杭材10Aを掘削坑13に建て込む杭材建て込み工程の説明図であり、図8,9は、継ぎ足し杭材24を掘削坑13に建て込む継ぎ足し杭材建て込み工程の説明図である。図10は、図9のC−C線端面図である。図6では、縦方向を矢印L2で示す。建て込み杭材10Aを掘削坑13に建て込む前の準備として、掘削機(図示せず)を使用して地盤を掘削し、縦方向へ延びる掘削坑13を作り、その掘削坑13にソイルモルタル14(養生充填材)を充填する。あわせて、図1の建て込み杭材10Aを用意する。それらの準備が完了した後、クレーン41の玉掛け42で杭材10Aの端部(第1杭材16の端部35)を支持し、クレーン41によって杭材10Aを垂直に起立させて空中に吊り上げる(杭材起立工程)。第1および第2杭材16,17の端部25,26には支持板18が取り付けられているから、第1杭材16を起立させると、それに連動して第2杭材17が起立する。この立坑仮壁構築方法は、支持板18を利用することで、第2杭材17を容易に起立させることができる。杭材10Aは、クレーン41によって空中に吊り上げられた状態で掘削坑13の上方に搬送される。
クレーン41に保持された建て込み杭材10Aでは、第1杭材16が上方に位置し、杭材16の下方に第2杭材17が位置する。杭材10Aを掘削坑13の上方に搬送した後、クレーン41によって杭材10Aを徐々に下降させ、杭材10Aをその下端部(第2杭材17の反対端部43)から掘削坑13に建て込む。図6に示すように、第2杭材17の端部26を地上に露出させた状態で一時杭材10Aの建て込みを停止し、支持板18をそれら杭材16,17の端部25,26から取り外す(支持板撤去工程)。杭材16,17から支持板18を取り外した後は、再び杭材10Aを徐々に下降させ、杭材10Aを掘削坑13に建て込む。図7に示すように、建て込み杭材10Aの大部分を掘削坑13に建て込み、第1杭材16の端部35を地上に露出させた状態で、杭材10Aの建て込みを再び停止する。このとき、固定手段44によって地上に露出する杭材17の端部35を地表11において固定し、杭材10Aの掘削坑13における沈降を防ぐ。次に、クレーン41の玉掛け42で継ぎ足し杭材24の端部45(反対端部)を支持し、クレーン41によって杭材24を垂直に起立させて空中に吊り上げる。継ぎ足し杭材24は、クレーン41によって空中に吊り上げられた状態で第1杭材16の上方に搬送される。
継ぎ足し杭材24を第1杭材16の上方に搬送した後、クレーン41によって杭材24を徐々に下降させ、杭材24の端部46と第1杭材16の端部35とを当接させる。次に、固定手段(溶接による固定またはボルトおよびナットによる固定)によってそれら杭材16,24の端部35,46どうしを連結するとともに(杭材連結工程)、鋼線19,20,21,22を継ぎ足し杭材24の長さ分だけ延ばす(鋼線延長工程)。延長された鋼線19,20,21,22は、図9に示すように、継ぎ足し杭材24の端部45から第2杭材17に向かって延び、杭材24と杭材16とを超え、さらに、空間27を通って杭材17の端部26に達している。第1〜第4鋼線19,20,21,22の延長部分は、継ぎ足し杭材24の第1〜第4角部31,32,33,34に配置され、杭材24に沿って縦方向へ延びている。図10に示すように、第1および第4鋼線19,22はH形綱(継ぎ足し杭材24)の対角線に位置し、第2および第3鋼線20,21はH形綱(継ぎ足し杭材24)の対角線に位置している。鋼線19,20,21,22の端部分36は、継ぎ足し杭材24の端部45を超え、端部45の縦方向外方に延出している。
ここで、鋼線19,20,21,22の延長には、第1杭材16の端部35から縦方向外方に延出する端部分36に新たな延長鋼線を溶接によって接続する方法、または、あらかじめ第1杭材16の端部35から延出する端部分36に所定の長さを確保しておき、延長鋼線を用いることなく、端部分36を継ぎ足し杭材24の端部45まで伸ばす方法がある。杭材16,24の端部35,46どうしを連結するとともに鋼線19,20,21,22を延長した後は、第1杭材16の端部35から固定手段44を外し、クレーン41によって継ぎ足し杭材24を徐々に下降させ、杭材10A,24を掘削坑13に建て込む。継ぎ足し杭材建て込み工程は、第1および第2杭材16,17の全体と継ぎ足し杭材24の大部分とを地中12に建て込み、継ぎ足し杭材24の端部45のみを地上に露出させた状態で終了する。継ぎ足し杭材建て込み工程が終了すると、杭材24の大部分が掘削坑13に埋没し、杭材24の端部45のみが地上に露出する(図11参照)。
図11,12は、掘削坑13から鋼線19,20,21,22を引き抜く鋼線引き抜き工程の説明図であり、図13は、立坑仮壁15の完成図である。図14は、図13のD−D線端面図である。なお、図11,12では、クレーン41や油圧ジャッキの図示を省略している。鋼線引き抜き工程では、固定手段47によって地上に露出する杭材24の端部45を地表11において固定し、杭材10A,24の掘削坑13における沈降を防ぐ。鋼線引き抜き工程では、端部45を地表11において固定した状態で、ソイルモルタル14を所定期間養生し、モルタル14を養生した後、それら鋼線19,20,21,22を掘削坑13(ソイルモルタル14)から引き抜く。ソイルモルタル14を養生すると、モルタル14が固結し、モルタル14によってそれら杭材10A,24が掘削坑13に固定される。
鋼線引き抜き工程では、鋼線19,20,21,22の地上に露出する端部分36をクレーン41の玉掛け42または油圧ジャッキで支持しつつ、クレーン41または油圧ジャッキで鋼線19,20,21,22を矢印L3で示す縦方向上方へ引っ張り、鋼線19,20,21,22を緊張状態に保持する。次に、鋼線第1支持部材23の高周波誘導加熱コイル38に高周波発生装置から高周波電圧を印加する。コイル38に高周波電圧を印加すると、コイル38に発生した磁束により、コイル38に対向する鋼線19,20,21,22の部位40に渦電流が発生し、部位40が発熱して高温になる。この立坑仮壁構築方法では、コイル38に対向する鋼線19,20,21,22の部位40が高温に発熱するとともに、部位40に作用する張力によって部位40が瞬時に破断し、鋼線19,20,21,22が第1支持部材23から切り離される。この立坑仮壁構築方法では、渦電流によって鋼線19,20,21,22自体が発熱するから、第1〜第4鋼線19,20,21,22が確実に破断し、それら鋼線19,20,21,22を第1支持部材23から確実に切り離すことができる。
鋼線19,20,21,22が第1支持部材23から切り離されると、ソイルモルタル14の抵抗に抗って鋼線19,20,21,22が掘削坑13から徐々に引き上げられ、鋼線19,20,21,22全体が掘削坑13から地上に引き抜かれる。第1〜第4鋼線19,20,21,22を引き抜いた後は、継ぎ足し杭材24の端部45から固定手段47を取り外す。なお、鋼線引き抜き工程では、第1および第4鋼線19,22が掘削坑13から同時に引き抜かれ、第2および第3鋼線20,21が掘削坑13から同時に引き抜かれる。鋼線を引き抜くと、図14に示すように、第1および第2杭材16,17の間にソイルモルタル14のみの領域48が形成された立坑仮壁15が構築される。
図15は、この立坑構築方法によって作られた立坑仮壁15のユニット49の一例を示す図であり、図16は、杭材16,17の間の領域48を通るシールド装置50を模式的に示す図である。前記各工程をトンネルの進行方向と交差する方向へ繰り返すことで、図15に示すように、複数の杭材16,17,24,51から形成された1つのユニット49を作ることができる。ユニット49では、それら杭材16,17,51に囲繞されたソイルモルタル14のみの円形の領域48が形成されている。なお、ユニット49の両側に位置する杭材51は、1本のH形綱を使用しており、前記各工程によって建て込まれたものではなく、掘削坑13に単に建て込んだものである。また、地上に露出する継ぎ足し杭材24の端部45や杭材51の端部は、それら杭材24,51の建て込み終了後に切断される。
この立坑仮壁構築方法では、杭材16,17どうしの離間寸法L4(図13参照)を調節することで、領域48を円形にすることができるのみならず、領域48を他の形状にすることもできる。図16に示すように、トンネルの進行方向へ各ユニット49を隣接させることで、杭材16,17,51に囲繞された円形の領域48をトンネルの進行方向へ並べることができる。この立坑仮壁構築方法によって作られた立坑仮壁15では、杭材16と杭材17との間にそれら杭材16,17が存在しないソイルモルタル15のみの領域48が形成されるから、ユニット49においてシールド機50がそのまま通過可能な円形の領域48を容易に作ることができ、シールド機50の通過領域を確保するための杭材の切断、撤去(鏡切り)を行う必要はない。
この立坑仮壁構築方法は、ソイルモルタル14が養生するまでの間、掘削坑13の下方に位置する第2杭材17が鋼線19,20,21,22によって支持されるから、第2杭材17がソイルモルタル14中を沈降することはなく、第2杭材17を掘削坑13の建て込み位置に確実に設置することができる。また、第1杭材16の対向端部25と第2杭材17の対向端部26との離間寸法を一定に保持することができ、第1杭材16と第2杭材17との間にシールド機50が通過可能な一定形状の領域48を確実に作ることができる。
この立坑仮壁構築方法は、第2杭材17が鋼線19,20,21,22によって支持されるから、第2杭材17の姿勢を安定させることができ、第2杭材17が掘削坑13において不用意にずれ動くことはなく、第2杭材17を掘削坑13の建て込み位置に直立させた姿勢で確実に設置することができる。立坑仮壁構築方法は、第1杭材16とそれの下方の連なる第2杭材17との位置決めが容易であり、第1杭材16の直下に第2杭材17を確実に位置させることができる。立坑仮壁構築方法は、支持板118によってそれら杭材16,17どうしを連結することで、第1杭材16の起立動作に第2杭材17を連動させることができ、それら杭材16,17を直状に並べた状態でそれら杭材16,17を同時かつ容易に起立させることができる。
立坑仮壁構築方法は、各鋼線がそれら杭材19,20,21,22の第1〜第4角部31,32,33,34に配置されることで、一対の鋼線19,22が杭材16,17,24の対角線に位置するとともに、他の一対の鋼線20,21が杭材16,17,24の対角線に位置するから、それら鋼線19,20,21,22を掘削坑13から引き抜くときの力が杭材16,17,24に偏って作用することはなく、掘削坑13の建て込み位置におけるそれら杭材16,17,24の不用意なずれ動きを防ぐことができる。立坑仮壁構築方法は、継ぎ足し杭材24を建て込むことで、第1杭材16と第2杭材17とを地中12の深い箇所に位置させることができ、第1杭材16と第2杭材17との間に形成される領域48を継ぎ足し杭材24の長さに応じた所定の深さに作ることができる。
図17は、建て込み杭材10Bの他の一例を示す図であり、図18は、図17のE−E線端面図である。図19は、図17のF−F線端面図である。図17では、軸方向を矢印L1で示す。なお、図1のA−A線端面図と図14のD−D線端面図とは、この建て込み杭材10Bの端面を示す端面図として援用することができ、図9のC−C線端面図は、継ぎ足し杭材24の端面を示す端面図として援用することができる。建て込み杭材10Bは、第1杭材16および第2杭材17と、それら杭材16,17の間に位置するプレキャストコンクリート杭材52(コンクリート杭材)と、第1および第2杭材16,17を支持する一対の杭材支持板18(杭材支持部材)と、第1〜第4鋼線19,20,21,22と、それら鋼線19,20,21,22を支持する鋼線第1支持部材23および鋼線第2支持部材53とから形成されている。なお、第1および第2杭材16,17は図1のそれらと同一であり、継ぎ足し杭材24は図8のそれと同一であるから、図1や図8のそれらと同一の符号を付すことで、それら杭材16,17,24の説明は省略する。また、支持板18や第1〜第4鋼線19,20,21,22、鋼線第1支持部材23は、図1のそれらと同一であるから、図1のそれらと同一の符号を付すことで、それらの説明は省略する。
プレキャストコンクリート杭材52は、角柱状を呈し、プレストレスを与えながら作られた一定強度を有する角柱状のコンクリート柱である。コンクリート杭材52は、第1杭材16と第2杭材17との間に配置され、一方の端部54が杭材16の端部25(対向端部)に固定手段(図示せず)によって連結され、他方の端部55が杭材17の端部26(対向端部)に固定手段(図示せず)によって連結されている。建て込み杭材10Bでは、第1および第2杭材16,17とコンクリート杭材52とが軸方向へ直状に並んでいる。第1〜第4鋼線19,20,21,22の第1支持部材23と第2支持部材53との間に延びる部材間部分56は、コンクリート杭材52の内部に埋設され、コンクリート杭材52を軸方向へ貫通している。
鋼線第2支持部材53は、第1杭材16の端部25に配置され、杭材16の連結壁30における第1〜第4角部31,32,33,34に固定手段(溶接による固定またはボルトおよびナットによる固定)によって固定されている(図17参照)。第2支持部材53は、楔であり、第1〜第4鋼線19,20,21,22をその周方向から圧着し、それら鋼線19,20,21,22を支持している。ただし、鋼線19,20,21,22は第2支持部材53において摺動可能かつ第2支持部材53から抜脱可能である。ゆえに、第1〜第4鋼線19,20,21,22の端部分36を軸方向外方へ強く引っ張ると、それら鋼線19,20,21,22が第2支持部材53の抵抗に抗って支持部材53を摺動し、鋼線19,20,21,22が支持部材53から徐々に引き抜かれる。なお、鋼線19,20,21,22の第1支持部材23と第2支持部材53との間の部材間部分56は、軸方向外方へ引っ張られた状態でそれら支持部材23,53に支持されている。ゆえに、部材間部分56は、第1支持部材23と第2支持部材56との間において緊張した状態にある。
図20〜図22は、建て込み杭材10Bを掘削坑13に建て込む杭材建て込み工程の説明図であり、図23,24は、継ぎ足し杭材24を掘削坑13に建て込む継ぎ足し杭材建て込み工程の説明図である。図20では、縦方向を矢印L2で示す。建て込み杭材10Bを掘削坑13に建て込む前の準備は、上述したとおりであるから、その説明は省略する。ただし、この立坑仮壁構築方法では、図18に示す建て込み杭材10Bが使用される。建て込み前の準備が完了した後、クレーン41の玉掛け42で杭材10Bの端部(第1杭材16の反対端部35)を支持し、クレーン41によって杭材10Bを垂直に起立させて空中に吊り上げる(杭材起立工程)。第1および第2杭材16,17の端部25,26には支持板18が取り付けられ、さらに、コンクリート杭材52がそれら杭材16,17の端部25,26に連結されているから、第1杭材16に続いて第2杭材17を容易に起立させることができる。杭材10Bは、起立した状態でクレーン41によって掘削坑13の上方に搬送される。
杭材10Bを掘削坑13の上方に搬送した後、クレーン41によって杭材10Bを徐々に下降させ、杭材10Bをその下端部(第2杭材17の反対端部43)から掘削坑13に建て込む。図21に示すように、第2杭材17の端部26を地上に露出させた状態で一時杭材10Bの建て込みを停止し、支持板18をそれら杭材16,17から取り外す(支持板撤去工程)。杭材16,17から支持板18を取り外した後は、再び杭材10Bを掘削坑13に建て込む。図22に示すように、建て込み杭材10Bの大部分を掘削坑13に建て込み、第1杭材16の端部35のみを地上に露出させた状態で、杭材10Bの建て込みを再び停止する。このとき、固定手段44によって地上に露出する杭材16の端部35を地表11において固定する。次に、クレーン41の玉掛け42で継ぎ足し杭材24の端部45(反対端部)を支持し、クレーン41によって杭材24を垂直に起立させて空中に吊り上げる。継ぎ足し杭材24は、クレーン41によって杭材16の上方に搬送される。
継ぎ足し杭材24を第1杭材16の上方に搬送した後、クレーン41によって杭材24を徐々に下降させ、杭材24の端部46と第1杭材16の端部35とを当接させた後、固定手段によってそれら杭材16,24の端部35,46どうしを連結するとともに(杭材連結工程)、鋼線19,20,21,22を継ぎ足し杭材24の長さ分だけ延ばす(鋼線延長工程)。鋼線19,20,21,22の延長方式は、図1に示す実施例と同一である。延長された鋼線19,20,21,22は、図24に示すように、継ぎ足し杭材24の端部45から第2杭材17に向かって延び、杭材24と杭材16とを超え、さらに、杭材52を貫通して杭材17の端部26に達している。第1〜第4鋼線19,20,21,22の延長部分は、継ぎ足し杭材24の第1〜第4角部31,32,33,34に配置され、杭材24に沿って縦方向へ延びている。第1および第4鋼線19,22はH形綱(継ぎ足し杭材24)の対角線に位置し、第2および第3鋼線20,21はH形綱(継ぎ足し杭材24)の対角線に位置している。鋼線19,20,21,22の端部分36は、継ぎ足し杭材24の端部45を超え、端部45の縦方向外方に延出している。杭材16,24の端部35,46どうしを連結するとともに鋼線19,20,21,22を延長した後は、第1杭材16の端部25から固定手段44を外し、クレーン41によって継ぎ足し杭材24を徐々に下降させ、杭材10B,24を掘削坑13に建て込む。継ぎ足し杭材建て込み工程が終了すると、杭材10B,24の大部分が掘削坑13に埋没し、杭材24の端部45のみが地上に露出する(図25参照)。
図25,26は、掘削坑13から鋼線19,20,21,22を引き抜く鋼線引き抜き工程の説明図であり、図27は、立坑仮壁15の完成図である。図28は、図27のG−G線端面図である。なお、図25〜図27では、クレーン41や油圧ジャッキの図示を省略している。鋼線引き抜き工程では、固定手段47によって地上に露出する継ぎ足し杭材24の端部45を地表11において固定し、杭材10B,24の掘削坑13における沈降を防ぐ。鋼線引き抜き工程では、端部45を地表11において固定した状態で、ソイルモルタル14を所定期間養生し、モルタル14を養生した後、それら鋼線19,20,21,22を掘削坑13(ソイルモルタル14)から引き抜く。ソイルモルタル14を養生すると、モルタル14が固結し、モルタル14によってそれら杭材10B,24が掘削坑13に固定される。
鋼線引き抜き工程では、鋼線第1支持部材23の高周波誘導加熱コイル38に高周波発生装置から高周波電圧を印加する。鋼線19,20,21,22では、その部材間部分56が緊張状態にあるから、鋼線19,20,21,22のコイル38に対向する部位40に張力が作用している。コイル38に高周波電圧を印加すると、コイル38に発生した磁束により、鋼線19,20,21,22のコイル38に対向する部位40に渦電流が発生し、部位40が高温に発熱するとともに、部位40に作用する張力によって部位40が瞬時に破断し、鋼線19,20,21,22が第1支持部材23から切り離される。この立坑仮壁構築方法では、鋼線19,20,21,22の部材間部分56が緊張状態にあり、さらに、渦電流によって鋼線19,20,21,22自体が発熱するから、鋼線19,20,21,22の部位40が確実に破断し、鋼線19,20,21,22を第1支持部材23から確実に切り離すことができる。
鋼線19,20,21,22を第1支持部材23から切り離した後、クレーン41の玉掛け42または油圧ジャッキで鋼線19,20,21,22の端部分36を支持して鋼線19,20,21,22を縦方向上方へ引っ張る。第1〜第4鋼線19,20,21,22は、第2支持部材53を摺動しつつ、杭材52や支持部材53から徐々に引き抜かれてそれらから離脱し、鋼線19,20,21,22全体が掘削坑13から地上に引き抜かれる。第1〜第4鋼線19,20,21,22を引き抜いた後は、継ぎ足し杭材24の端部45から固定手段47を取り外す。なお、鋼線引き抜き工程では、第1および第4鋼線19,22が掘削坑13から同時に引き抜かれ、第2および第3鋼線20,21が掘削坑13から同時に引き抜かれる。鋼線19,20,21,22を引き抜くと、図27に示すように、第1および第2杭材16,17の間に領域48が形成された立坑仮壁15が構築される。
前記各工程をトンネルの進行方向と交差する方向へ繰り返すことで、複数の杭材16,17,24,52,51から形成された1つのユニット49を作ることができる。ユニット49では、それら杭材16,17,51に囲繞された円形の領域48が形成されている(図15参照)。なお、図15に示すユニット49と異なるところは、領域48にコンクリート杭材52が存在している点にある。トンネルの進行方向へ各ユニット49を隣接させることで、杭材16,17,51に囲繞された円形の領域48をトンネルの進行方向へ並べることができる。この建て込み杭材10Bを使用する立坑仮壁構築方法は、図1の建て込み杭材10Aを使用する立坑仮壁構築方法が有する効果に加え、以下の効果を有する。コンクリート杭材52を介して第1杭材16と第2杭材17とが連結されることで、第2杭材17が掘削坑13において不用意にずれ動くことはなく、第1杭材16に対する第2杭材17の位置ずれを確実に防ぐことができ、第1杭材16の直下に第2杭材17を確実に位置させることができる。
それら図示の立坑仮壁構築方法では、継ぎ足し杭材24を使用して立坑仮壁15を構築しているが、継ぎ足し杭材24を使用せずに立坑仮壁15を構築することもできる。この場合の立坑仮壁構築方法の一例を説明すると、以下のとおりである。図1の建て込み杭材10Aまたは図17の建て込み杭材10Bを掘削坑13の上方に搬送した後、クレーン41によって杭材10Aまたは杭材10Bを徐々に下降させ、杭材10A,10Bを掘削坑13に建て込む。第2杭材17の端部26を地上に露出させた状態で一時杭材10A,10Bの建て込みを停止し、支持板18をそれら杭材10A,10Bから取り外す(支持板撤去工程)。杭材10A,10Bから支持板18を取り外した後は、再び杭材10A,10Bを掘削坑13に建て込む。建て込み杭材10A,10Bの大部分を掘削坑13に建て込み(杭材建て込み工程)、第1杭材17の端部35を地上に露出させた状態で、杭材10A,10Bの建て込みを終了する。次に、固定手段44によって地上に露出する杭材17の端部35を地表11において固定する。
第1杭材17の端部35を地表11において固定した状態で、ソイルモルタル14を所定期間養生し、モルタル14を養生した後、第1〜第4鋼線19,20,21,22を第1支持部材23から切り離し、それら鋼線19,20,21,22を掘削坑13から引き抜く(鋼線引き抜き工程)。ソイルモルタル14を養生すると、モルタル14が固結し、モルタル14によってそれら杭材10A,10Bが掘削坑13に固定される。鋼線19,20,21,22を引き抜くと、第1および第2杭材16,17の間に円形の領域48が形成された立坑仮壁15が構築される。