上記した従来の工作機械にあっては、左右一対の側壁部が加工ヘッドの左右移動を制限して左右方向のワーク加工可能範囲の拡大化を阻むと共に、治具真上でのワークの左右方向移動を制限して治具に対する簡易迅速なワークの搬入搬出を困難となすのであり、またベースの前下部上に高温の切粉が集積されるため、該切粉の熱に起因してワーク加工精度が損なわれ易いのであり、またベースの前下部が上下方向のワーク加工可能範囲を制限すると共に切粉搬出手段の設置自在性を低減させるなどの問題点がある。
さらにはワーク加工時の工具に作用する力が図24に示すように工具T、加工ヘッド102、ベース100、治具28、ワークwを経てループLP1を描くように伝達されるのであり、この伝達距離が比較的長いものであるため、機械全体の剛性が低下し、工具Tに作用する力が大きいとき加工精度が損なわれることが生じるのである。
本出願人はこれらの問題点を解消させることのできる工作機械として、既に特願平17−79858号を提案している。
この特願平17−79858号では、ベースの前面と治具との前後方向距離を一定程度以上に大きくすると、ベース及び治具周辺の剛性が低下して精度の高い加工が行えなくなるため、前記前後方向距離は一定程度以下になされるが、このようになされると、治具及びこれに固定されたワークの左右方向線回りの旋回半径の大きさが前記一定程度に関連して制限されるため、左右方向線回りの旋回により加工可能し得るワークの大きさが前記旋回半径大きさに関連して制限されるのである。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたもので、即ち、特願平17−79858号の工作機械の利点を維持させつつ、しかも高精度な加工の行えるワークの大きさの制限を緩和させることのできる工作機械を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため本発明に係る第一の工作機械は、請求項1に記載したように、床面に定置されるベースと、下端部に工具を固定される縦回転駆動軸を具備した加工ヘッドと、前記ベースの上面上に形成され該加工ヘッドを案内部を介して前後方向、左右方向及び上下方向へ変位させる案内駆動手段とを備えた工作機械において、前記ベースの前面の略全体を前後方向に対し直交した単一平面になし、この前面の左右端部の上下方向全長箇所又は上下方向略全長箇所を含む左右一対のベース左右方向端前部の間をなすベース左右方向中間前部をこれ以外のベース部分に対し脱着可能となすと共に、前記工具で加工されるワークを固定するための治具を前記前面の高さ途中箇所から前方へ張り出させた状態に設けたことを特徴とする
また本発明に係る第二の工作機械は、請求項2に記載したように、床面に定置されるベースと、下端部に工具を固定される縦回転駆動軸を具備した加工ヘッドと、前記ベースの上面上に形成され該加工ヘッドを案内部を介して前後方向、左右方向及び上下方向へ変位させる案内駆動手段とを備えた工作機械において、前記ベースが前面の略全体を前後方向に対し直交した単一平面になした後に、この前面の左右端部の上下方向全長箇所又は上下方向略全長箇所を含む左右一対のベース左右方向端前部の間をなすベース左右方向中間前部を切除された形態となされると共に、前記工具で加工されるワークを固定するための治具が前記前面の高さ途中箇所から前方へ張り出した状態に設けられる構成を特徴とする。
上記発明は次のように具体化するのがよい。
即ち、請求項3に記載したように、前記ベース左右方向端前部の前後方向長さが凡そ100mm〜300mm程度となされている構成となす。
また請求項4に記載したように、左右各側の前記ベース左右方向端前部の左右方向長さが凡そ100mm程度以上となされている構成となす。
また請求項5に記載したように、前記治具が左右一対の前記ベース左右方向端前部の前端面をなす前記前面部分から前方へ張り出させてある構成となす。
また請求項6に記載したように、前記治具が前記ベース左右方向中間前部の前端面をなす前記前面部分から前方へ張り出させてある構成となす。
さらには請求項7に記載したように、前記治具が左右一対の前記ベース左右方向端前部の間に位置され且つ前記前面の後側に位置されている構成となす。
本発明によれば次のような効果が得られる。
即ち、請求項1に記載したものによれば、ベースの前面の治具やこれに固定されたワークの左右箇所に縦形マシニングセンタの構成部材が存在しないものとなるから、加工ヘッドによる加工領域の左右方向範囲を比較的広く確保することができると共に治具の直上近傍でワークを左右方向へ移動させることができて治具へのワークの搬入や治具上からのワークの搬出を簡易迅速に行うことができるものとなる。
またベース上に高温の切粉が堆積しないものとなることから、切粉の熱がベースに伝達され難くなって、ワーク加工精度を良好に維持させることができるのであり、また治具の真下にベースが存在しなくなるため、加工ヘッドによる上下方向のワーク加工領域がベースの存在で制限されることのないものとなるほか切粉排出手段としての切粉コンベアの設置自在性が向上する。
またワークの加工中には工具に作用する力が加工ヘッド、案内駆動手段、ベース、治具及びワークを経てループ状に伝達されるが、この際の力の伝達距離は治具がベースの前面の高さ途中から前方へ張り出し状に設けられていることから比較的短いものとなり、該力に対する縦形マシニングセンタの剛性を増大させてワークの加工精度を向上させることができる。
さらには、ベース左右方向中間前部を他のベース部分から分離させ除去することにより、ベース前面に凹み部が形成されるため、治具やこれに固定されたワークの旋回半径をベース左右方向端前部の前後方向長さ(ベース左右方向中間前部の前後方向長さ)に関連して増大させることができるのであり、このさいベース左右方向端前部はベースの前面の左右端部の上下方向全長箇所又は上下方向略全長箇所を含みしかも左右方向長さ及び前後方向長さが特定大きさであるものとなされているため、特願平17−79858号のものに比べこれの加工時の力の伝達距離を伸ばすことなく、しかも殆どそのベースの剛性を低下させることなく、治具やこれに固定されたワークの旋回半径を増大させることができ、高精度な加工を行うことのできるワークの上限大きさの制限を緩和させることができる。
そして、分離され除去されたベース左右方向中間前部を元位置に装着した状態では、ベース左右方向中間前部の前面に治具などを固定させることが可能となって、特願平17−79858号のものと同様に機能させることができるものである。
請求項2に記載したものによれば、請求項1記載の工作機械においてベース左右方向中間前部が取り外されたものと同一形態となって同一の効果が得られるものである。
請求項3に記載したものによれば、前後左右及び上下方向の長さが数mに及ぶ大きさとなされるベースの剛性を実際上殆ど低下させることなく治具及びこれに固定されたワークの左右方向線回りの旋回半径を凡そ100mm〜300mm程度大きくなすことができ、これにより高精度な加工が可能となるワークの左右方向線回りの旋回半径の長さを凡そ100mm〜300mm程度大きくなすことができる。
請求項4に記載したものによれば、前後左右及び上下方向の長さが数mに及ぶ大きさとなされるベースの剛性を実際上殆ど低下させることなく治具及びこれに固定されたワークの左右方向線回りの旋回半径をベース左右方向端前部の前後方向長さに関連して大きくなすことができる。
また請求項5に記載したものによれば、治具が左右一対のベース左右方向端前部の前端面である前記前面部分から前方へ張り出させてあるため、治具の左右箇所がベースの前記前面部分に支持されてこの治具に固定されたワークが安定的に支持されるものとなる。
また請求項6に記載したものによれば、治具がベース左右方向端前部を介することなくベース左右方向中間前部で支持されるため比較的左右方向長さの小さな治具を介してワークを支持させることができるのであり、これにより加工時の力伝達距離を小さくなしてベース及び治具の加工時の外力による歪みを小さくなすことができ、高精度な加工が行えるものとなる。
さらには請求項7に記載したように、治具が左右一対のベース左右方向端前部の間に位置され且つこれらベース左右方向端前部の前端面をなす前面部分の後側に位置されるため、治具に固定されたワークの被加工範囲を前記単一平面よりも前側に位置させ且つ前記単一平面に近い位置に位置させることができ、これにより加工時の力伝達距離を一層小さくなしてベース及び治具の加工時の外力による歪みを可及的に小さくなすことができ、高精度な加工が行えるものとなる。
図1〜図23は本発明に係る工作機械としての縦形マシニングセンタを示すものであり、図1は第1実施例の縦形マシニングセンタの一部を省略した斜視図、図2は前記縦形マシニングセンタの側面図、図3は図1に示す縦形マシニングセンタからベース左右方向中間前部を取り外した状態を示す斜視図、図4は図1中の治具を変形した状態の縦形マシニングセンタを示す斜視図、図5は図1中の治具を変形した状態の縦形マシニングセンタを示す斜視図、図6は図1中の治具を変形した状態の縦形マシニングセンタを示す斜視図、図7は図1の縦形マシニングセンタにホッパー部などを設けた状態を示す斜視図、図8は図6の縦形マシニングセンタに外周カバーを設けた状態を示す斜視図、図9は前記縦形マシニングセンタをこれの治具を省略した状態で斜め下方から見た図、図10は図8の縦形マシニングセンタに内側カバーを設けた状態を示す斜視図、図11は図10の縦形マシニングセンタの治具にテーブルを具備したものとした状態を示す斜視図、図12は前記縦形マシニングセンタの工具交換装置などの平面視説明図、図13は前記工具交換装置の側面視作動説明図、図14は前記縦形マシニングセンタのワーク加工時の力の伝達状態を示す説明図、図15は図6の縦形マシニングセンタのベース前後方向中間前部を取り外した状態を示す斜視図、図16は図15の縦形マシニングセンタを示す側面図、図17は図7の縦形マシニングセンタのベース前後方向中間前部を取り外した状態を示す斜視図、図18は図4の縦形マシニングセンタのベース前後方向中間前部を取り外した状態を示す斜視図、図19は図5の縦形マシニングセンタのベース前後方向中間前部を取り外した状態を示す斜視図、図20は図11の縦形マシニングセンタのベース前後方向中間前部を取り外した状態を示す斜視図、図21は図17中の治具を変形した状態の縦形マシニングセンタを示す斜視図、図22は6台の前記縦形マシニングセンタを列設した状態を示し、Aは平面図でBは側面図、図23は6台の前記縦形マシニングセンタを列設した別の状態を示し、Aは平面図でBは一部を省略した側面図である。
図1〜図3に示すように、本発明に係る縦形マシニングセンタはベース100、案内駆動手段101及び加工ヘッド102を備えている。
ベース100は床面に定置されるもので全体形状を左右方向(X軸方向)長さが凡そ1.4m〜2.8m程度、前後方向(Y軸方向)長さが凡そ2m〜4m程度、上下方向(Z軸方向)長さが1m〜3m程度である略々方形体となされ、また左右の各側面1a、1bを左右方向と直交した単一平面になされると共に前面1c及び後面1dの大部分を前後方向と直交した単一平面になされている。
ベース100の下部は床面に支持されるベッド部a1をなしており、該ベッド部a1の下面1eの四隅近傍には高さ調整可能となされた支持部材2が設けられている。このさい、前側の左右一対の支持部材2、2はベッド部a1の前面下端部の左右端箇所に前方Y1へ張り出させた張出付加部2aを設け、この張出付加部2aに縦ネジ部材2bを螺着し、この縦ネジ部材2bの下端にこの縦ネジ部材2bを支持するように係着され、ベース100の左右各側面1a、1bよりも左右方向の外方へ張り出さないように位置されている。そして後側の左右一対の支持部材2、2はベッド部a1の後面下端部の左右端箇所に側面視コ形の凹み部2cを形成し、この凹み部2cの下側部位2dに縦ネジ部材2aを螺着し、この縦ネジ部材2aの下端にこの縦ネジ部材2aを支持するように係着され、ベース100の左右側面1a、1bから左右方向の外方へ張り出さないように且つベース100の後面1dから後方Y2へ張り出さないように位置されている。
ベース100の前部には左右一対のベース左右方向端前部100A、100Aとベース左右方向中間前部100Bとからなっている。そして、ベース左右方向端前部100Aのそれぞれはベース100の前面1cの左右端部の上下方向全長箇所(又は上下方向略全長箇所)を含み、しかも前後方向長さL1を凡そ200mm〜300mm程度となされ且つ左右方向長さL2を凡そ100mm程度以上(好ましくは凡そ200mm〜300mm程度)となされており、またベース左右方向中間前部100Bは左右一対のベース左右方向端前部100A、100Aの間に位置したベース100前部分をなすもので左右一対のベース左右方向端前部100A、100Aの前端面a3である前面部分の間に位置した前面1c部分を前端面a4としたものとなされている。
ここに、 前後方向長さL1が凡そ200mm〜300mm程度であること及び左右方向長さL2が凡そ100mm程度以上であることは、縦形マシニングセンタによるワーク加工時にベース100に作用する外力に対してベース100(特に左右一対のベース左右方向端前部100A、100Aの周辺部分)の剛性を十分な大きさに維持するに足りるものである。また左右方向長さL2が凡そ200mm〜300mm程度であることは前記外力がさらに大きなものとなってもベース100の剛性を十分な大きさに維持することを可能となすものである。
ベース左右方向中間前部100Bはこれを含まないベース100部分に対して脱着可能となされており、 ベース左右方向中間前部100Bの装着状態ではボルトによりベース左右方向中間前部100Bを含まないベース100部分に締結固定された状態となされ、左右側面箇所を左右一対のベース左右方向端前部100A、100Aのそれぞれの内方側の側面に密接され、後面箇所が前記これを除いたベース100部分に密接された状態となされるのであり、また取外しにさいしては例えば、加工ヘッド102を後方Y2へ移動させた状態の下で、クレーンなどで上方へ抜き外されるものとなすのがよい。
ベースの下面1eにはY軸方向へ延びる凹み溝部a2が形成されており、またベース100の内方でベッド部a1の上側箇所にはベース上面1fの一部を開放された空間a5が形成されている。
上記案内駆動手段101は第1サドル4、第1案内部5及び第1駆動部6と、第2サドル7、第2案内部8及び第2駆動部9と、第3案内部10及び第3駆動部11とからなっている。
これをさらに具体的に説明すると、第1サドル4は側面視略台形のブロックとなされベース上面1f上に配置されるもので、下面が水平面となされ、前面がY軸方向と直交した平面となされ高さ中央箇所が側面視凹み状となされ、左右側部が側面視三角状になされている。
そして第1案内部5は、ベース上面1fの左右側に固設されY軸方向へ直状となされた一対のガイドレール12と、第1サドル4の下面の左右側の前後位置に固設され対応する1本のガイドレール12に摺動変位自在に嵌合されたガイドブロック13とからなっている。
そして第1駆動部6は、ベース上面1fと第1サドル4の下面との間でX軸方向中央位置にY軸方向に沿って位置され軸受を介してベース上面1fの特定位置で回動自在に保持された第1ネジ軸14と、該第1ネジ軸14を回転駆動する第1サーボモータ15と、第1サドル4の下面に固定され第1ネジ軸14を螺合された図示しないナット体とからなり、第1サーボモータ15が図示しない数値制御による制御装置(NC制御装置)からの指令により回転作動されることにより第1サドル4がベース100上でY軸方向へ移動されるものとなされている。
また第2サドル7は縦向き略方形板状のブロックとなされていて第1サドル4の前面に近接して配置されたもので、上部及び下部の左右端が中央部の左右端から少し左右側へ張り出した状態となされると共に上部が中央部及び下部よりも後方へ張り出されているものである。
そして第2案内部8は、第1サドル4の前面の下箇所に固設されX軸方向へ直状となされた下側のガイドレール17aと、第1サドル4の上面前部に固設されX軸方向へ直状となされた上側のガイドレール17bと、それぞれのガイドレール17a、17bに摺動変位自在に嵌合され案内される左右一対のガイドブロック18とからなっている。
そして第2駆動部9は、第1サドル4の前面と第2サドル7の後面との間のZ軸方向中央位置にX軸方向に沿って位置され軸受を介して第1サドル4の前面の特定位置で回動自在に保持された第2ネジ軸19と、該第2ネジ軸19を回転駆動する第2サーボモータ20と、第2サドル7の後面に固定され第2ネジ軸19を螺合されたナット体とからなり、第2サーボモータ20が図示しないNC制御装置からの指令により回転作動されることにより第2サドル7が第1サドル4の前面上でX軸方向へ移動されるものとなされている。
また第3案内部10は、上側ヘッド本体部23b及び下側ヘッド本体部23aからなるヘッド本体部23の後面の左右側に固設されZ軸方向へ直状となされた一対のガイドレール22と、第2サドル7の前面の左右各側の上下位置に固設され前記1本のガイドレール22を摺動変位自在に嵌合され上下方向へ案内するガイドブロックb1、b2からなっている。
そして第3駆動部11は、第2サドル7の前面と上側ヘッド本体部23bの後面との間でこれらのX軸方向中央にZ軸方向に沿って位置され軸受を介して第2サドル7の前面の特定位置で回動自在に保持された図示しない第3ネジ軸と、この第3ネジ軸を回転駆動する第3サーボモータ24と、上側ヘッド本体部23bの後面に固定され前記第3ネジ軸を螺合された図示されないナット体とからなり、第3サーボモータ24が図示しないNC制御装置からの指令により回転作動されることにより加工ヘッド102が第2サドル7の前面上でZ軸方向へ移動されるものとなされている。
加工ヘッド102は、ヘッド本体部23と、下端に工具Tを固定されヘッド本体部23に軸受を介して回転のみ自在に支持された縦回転駆動軸26と、上側ヘッド本体部23bに固定され縦回転駆動軸26を回転させるスピンドルモータ27とを備えている。
上記した構成において、ベース100の前面1cにはワークwを固定状に支持するための治具28が設けられている。この治具28はワークwをネジ部材などを介して固定状に支持可能となされた平板体となされており、またベース100のX軸方向中央位置上での治具28の高さを複数箇所の任意位置に変更するための手段が形成されているのであって、具体的にはベース100の前面1cであるベース左右方向端前部100Aの前面部分a3とベース左右方向中間前部100Bの前面部分a4とに多数のネジ孔c1がZ軸方向へ列設されていて、治具28を固定するためのネジ部材c3を螺着するべきネジ孔c1、c2を変更することにより治具28がそのネジ孔c1、c2に対応した高さに変更されるようになされている。治具28は図4に示すような鈎状板となしてもよいし、或いは図5に示すように主要部28aが直方体状となされた肉厚ブロックとなしてもよい。
この際、治具28を固定するために例えばベース100の前面1cと治具28との間に図示しない比較的薄厚の板部材を突出状に設けることや、治具28をZ軸方向へ案内するために凸状或いは凹み状の案内軌道などを設けることも差し支えない。また前面1cには必要に応じて比較的前後方向の寸法の小さいその他の凸状部や凹み状部を形成することもある。このように前面1cに設けられる比較的前後方向寸法の小さい凸状部や凹み状部は、本発明上、前面1cが単一平面であるという構成を逸脱するものではない。
治具28はワーク支持部をNC制御装置を介して任意な方向へ移動させることを可能となすように支持する構成となすこともできるのであり、例えば図6に示すように、ベース100の前面1cの左右箇所にサーボモータの組み込まれた駆動部d1と軸受部d2とかなるテーブルdを前方Y1への張出状に固設し、これら駆動部d1と軸受部d2との間にX軸方向の回転支持軸を介してワーク支持部d3を左右方向線O1回りの旋回可能に設け、該ワーク支持部d3の左右方向線回りの位置がNC制御装置からの指令により変化されるものとなしてもよいのであり、またこれに代えて、ワーク支持部d3に固定されたワークwの左右傾斜姿勢がNC制御装置からの指令により変化されるものとなしたり、或いはワーク支持部d3に固定されたワークwがNC制御装置からの指令によりZ軸方向の特定軸回りへ変位されるものとなすことも可能である。これらの治具28についてもこれの高さを変更調整可能となすことは必要に応じて任意になし得ることである。それには例えば、サーボモータや流体圧シリンダなどの駆動装置の作動に連動して治具28を特定軌道上でZ軸方向へ平行移動させる機構を形成することも差し支えないのであり、またワーク支持部d3に固定されたワークwの任意の特定方向への移動を手動ハンドルの操作により行わせてもよい。
なお上記の図1〜図6に示す治具はベース左右方向端前部の前面部分a3、a3に固定されているが、これに代えて、ベース左右方向中間部100Bの前面部分a4に固定しても或いはこれら双方の前面部分a3、a4に固定することも差し支えない。
ベース100の下側には、一般に、治具28に固定されたワークwが切削されたときに生じる切粉を特定場所へ搬送するための切粉コンベア29が設けられる。該切粉コンベア29は治具28の真下に切粉入口29aを位置されると共に切粉出口29bを切粉搬出に適した場所に位置されるのであり、切粉コンベア29の切粉搬送方向は現場の状況に応じて適当に決定されるのであって、図示のようにY軸方向へ向けられたり、或いはX軸方向などへ向けられることもある。切粉コンベア29は切粉を上面に載置した状態で移動させる無限搬送帯29cを具備すると共に、該無限搬送帯29cの外周囲をケーシング29dで液密状に囲った状態となされ、ケーシング29d内がクーラントの通路として使用されると共に、ケーシング29dの長手方向途中箇所にクーラントを貯溜するためのタンク29eを形成されている。
図1〜図6に示す縦形マシニングセンタでは、一般に、図4、図5、図7、図8に示すように、治具28の下側でベース100の前面1c箇所に、治具28に固定されたワークwを切削したときに生成される切粉や工具Tによるワークwの切削箇所などに供給されるクーラントを受け入れ下端開口を通じ切粉コンベア29の切粉入口29a内に落下させるものとしたホッパー部30が形成される。そして、ホッパー部30の上側であるベース100の前側空間と、ベース100の上側空間とを包囲するための外周カバー31が設けられる。図4、図5、図7、図8のそれぞれに示される縦形マシニングセンタにおける外周カバー31は左右の側面壁31a、31bと、前面壁31cと、第一サドル4に固定された上部X軸方向縦面壁31dを備えるほか、上部X軸方向縦面壁31dの上部と前面壁31c上部内面とを結合し且つY軸方向の伸縮変形自在となされた蛇腹状水平面壁31eなどを備えたものとなされる。この際、蛇腹状水平面壁31eの左右の各端縁は左右の側面壁31a、31bの内面に近接される。なお、前面壁31cや左右の側面壁31a、31bには必要に応じワークwを外周カバー31内に搬入し或いは外周カバー31内から搬出するための開閉口が形成される。また図9に示すように、上部X軸方向縦面壁31dの下端縁とベース100の前端上縁部との間でヘッド本体部23の下端部の左右各側にはヘッド本体部23のX軸方向移動に連動して変位する摺動壁面31g、31gが形成されており、この摺動壁面31g、31gはヘッド本体部23がX軸方向の任意位置に移動しても、上部X軸方向縦面壁31dの下端縁とベース100の前端上縁部との間を切粉やクーラントの外方飛散を阻止する状態に保持するものとなされている。またヘッド本体部23の左右各側の摺動壁面31gはヘッド本体部23がX軸方向へ大きく変位してもベース100の左右側面1a、1bの外方へ出ない構造となされるのであって、具体的には特許公報第3168328号に開示された技術を使用するのであり、摺動壁面31gがヘッド本体部23により大きくX軸方向へ押されたときに、案内レール31hの案内作用により、ベース100の左右側面1a、1b近傍で立ち上がり状に姿勢変更するものとなされている。
また図8の縦形マシニングセンタの場合には、さらに図10に示すように必要に応じて外周カバー31の内方に軸受部d1、d2の周囲を包囲する内側カバー32a、32bを設けるのがよいのであり、これら内側カバー32a、32bは軸受部d1、d2の相対摺動面に切粉が入り込んだり駆動部d1や軸受部d2の周辺にクーラントが飛散して付着するのを阻止する上で寄与する。また治具28が図11に示すように上下方向線回りへ回転されるテーブルdを図8に示されたワーク支持部d3上に設けたものとなされることがあるが、この場合にも、テーブルdの駆動部を包囲する適宜な内側カバーを外周カバー31の内方に設け、ワーク加工領域とテーブルd用の駆動装置の存在領域とをこの内側カバーで液密状に遮断して、テーブルd用の駆動装置にクーラントや切粉が降りかからないようになされる。
ベース100の内方の空間a5内には工具交換装置33が形成されている。工具交換装置33は種々に形成できるが、ここでは図12及び図13に示すように、ベース100内にサーボモータ34を備えた駆動部35を介して支持された円盤36に工具Tを保持する爪部37を配設し、サーボモータ34と減速機により工具Tの割り出しを行うようになされている。なおベース左右方向中間前部100Bを含むベース100の前部には工具交換のさいに加工ヘッド102の縦回転駆動軸26やこれにクランプされた工具Tの移動を可能となす通路a7が形成されている。
そして、工具Tの交換が次のように行われるものとなされているのであり、即ち、加工可能領域p1に位置している縦回転駆動軸26が工具交換開始位置p2に移動され、続いて工具交換位置p3に移動され、次に縦回転駆動軸26に既に装着されている工具Tが工具交換位置p3に位置された爪部37に保持された状態で、その工具Tのアンクランプ作動が行われ、この後、縦回転駆動軸26が上昇され、次に工具Tを保持している円盤36が旋回され、次に装着すべき工具Tが工具交換位置p3に割り出された後、縦回転駆動軸26が降下して工具交換位置p3に位置された工具Tのクランプ作動が行われ、その後、縦回転駆動軸26が工具交換開始位置p2と同じ位置である工具交換終了位置に移動され、次の加工指令に備えるものとなされている。このような工具交換装置33であればベース100の設置場所以外に工具交換装置33を設置する場所が不必要となって機械の設置スペースが小さくて済む。上記工具交換装置33は、機械前側部、右側面部、左側面部、案内駆動手段101などに配置することも差し支えない。
次に上記した図1、図2、図4〜図13に示す縦形マシニングセンタにより、ベース左右方向中間前部100Bをベース100から取り外さない状態の下でワークwを加工する場合の使用例及び作用について説明する。
作業者は外周カバー31の外側に存在するワークwを治具28のワーク支持部d3上に搬入し固定するのであり、またワークwの加工が終了した後、治具28からワークwを取り外し外周カバー31の外側へ搬出する。この際、ベース100の前面1cが単一平面であり且つ該単一平面の高さ途中に治具28を設けた構成であるため、特に図1〜図5に示す治具28の場合には外周カバー31の内方で治具28の前側及び左右側となる箇所に縦形マシニングセンタの構成部材が何ら存在しないものとなり、また図6に示す治具の場合には外周カバー31の内方で治具28の前側及び左右側となる箇所に駆動部及び軸受部以外には縦形マシニングセンタの構成部材が存在しないものとなり、従ってワークwは外周カバー31の外側から前面壁31cの開閉口を通じて治具28の前側からY軸方向へ移動されることにより、或いは左右の側面壁31a、31bの開閉口を通じて治具28の左右側からX軸方向へ移動されることにより比較的容易に治具28上に搬入されるようになり、また治具28上から前面壁31cの開閉口を通じてY軸方向へ移動されることにより、或いは左右の側面壁31a、31bの開閉口を通じてX軸方向へ移動されることにより比較的容易に外周カバー31の外側へ搬出されるようになるのであり、また図1〜図6に示す各実施例においてベース100の前面1cが単一平面であり且つ該単一平面の高さ途中に治具28を設けた構成は治具28に固定することのできるワークwのX軸方向の寸法範囲を比較的大きくなす上でも寄与するものである。
またワークwの大きさが変更されるなどにより工具Tによる加工領域を変化させる必要の生じたときは、治具28を固定するためのネジ部材c2を螺着するネジ孔c1を変更するなどして、治具28の高さを変更する。この際、治具28の床面からの高さを小さくすると、治具28から初期位置にある加工ヘッドの工具Tに至るまでの上下方向距離が増大されて上下方向の加工可能範囲が増大されるのであり、逆に治具28の高さを大きくすると、治具28から初期位置にある加工ヘッドの工具Tに至るまでの上下方向距離が減少されて上下方向の加工可能範囲が減少されるのである。
また治具28に固定されたワークwを加工する際は図示しないNC制御装置の作動を開始させるのであり、これによりNC制御装置は予め入力されたプログラムに基づいて第1〜第3のサーボモータ15、20、24を適宜に作動させて加工ヘッド102をY軸方向、X軸方向及びZ軸方向へ移動させると共に、スピンドルモータ27を作動させて縦回転駆動軸26及びこれに装着された工具Tを回転させるほか、必要に応じて図6に示す治具28の駆動部d1のサーボモータを回転させてワーク支持部d3及びこれに固定されたワークwを左右方向線O1回りへ旋回させるのであり、また必要に応じて工具交換装置33を作動させて加工ヘッド102の工具Tを交換させたり、図示しないクーラント供給手段を適時に作動させてクーラントを供給させる。
上述した図示しないNC制御装置の制御作動により、工具Tがワークwを予定形状に加工するものとなるのであり、この加工時において工具Tに作用する力は図14に示すように加工ヘッド102、第2サドル7、第1サドル4、ベース100、治具28及びワークwを経てループLP1を描くように伝達される。
加工ヘッド102によるワークwの加工中には工具Tによるワークwの切削を円滑となし且つ切削箇所を冷却するために図示しないクーラント供給手段がクーラントを供給するのであり、一方で工具Tはワークwを切削して切粉を生成させるのであり、これらクーラントや切粉は工具Tの回転により周囲に飛散されつつ重力作用により落下する。飛散されたクーラントや切粉は外周カバー31(前面壁31c、左右の側面壁31a、31b、伸縮水平面壁31eなど)やベース100などで外方への飛散を阻止された後、ホッパー部30の内方に落下する。そしてクーラントは工具Tによる切削箇所に液状で供給されるときには切粉を洗い流すように流下し、またミスト状で供給されるときは切粉に付着した状態で落下する。
こうしてホッパー部30内に落下したクーラントや切粉は重力作用により、ホッパー部30内の底部に集められ、その下端開口から切粉コンベア29の切粉入口29a内に落下する。この際、クーラントや切粉は、ベース100の前面1cがZ軸方向に沿った単一平面となされているため、ベース100表面に堆積することなく円滑に切粉入口29a内に落下するのであり、従って摩擦熱で高温になった切粉がベース100に堆積してベース100を加熱するような従来の現象は発生しなくなり、ベース100は切粉による熱変形を抑制され、加工精度を良好に維持する。
切粉入口29a内に達したクーラント及び切粉のうち、クーラントは無限搬送帯29cの隙間を通り過ぎてケーシング29d内の底部に達し該底部を経てタンク29e内に流入するのであり、また切粉は無限搬送帯29c上に載置状に支持され無限搬送帯29cの移動により切粉出口29bへ向けて搬送されるのであり、切粉に付着したクーラントは切粉が無限搬送帯29cで搬送される過程で重力作用により分離されてケーシング29d内の底部に落下しタンク29e内に流入する。タンク29e内に貯溜されたクーラントは再び使用されるのであり、また切粉出口29bから排出された切粉は切粉出口29b下方に配置された容器に収容される。
ところで、図10〜図11に示すような治具28を使用する場合、ワーク支持部d3及びこれに固定されたワークwを左右方向線O1回りへ旋回させたいことがあるが、このとき左右方向線O1からベース100の前面1cまでの距離が不十分なためワーク支持部d3及びワークwを旋回させることができないことが生じる。
この場合には、案内駆動手段101により加工ヘッド102を後方Y2へ大きく後退させて加工ヘッド102がベース左右方向中間前部100Bの真上から後側へ外れた状態となし、この状態の下でベース左右方向中間前部100Bをベース本体部に結合させているボルトをベース左右方向中間前部100Bを含まないベース100部分(ベース本体部)から取り外すと共に、天井クレーンなどを使用することによりベース左右方向中間前部100Bに引上げ力を付与し、これを吊り上げることによりベース本体部から取り外した状態になす。
ベース100からベース左右方向中間前部100Bが取り外された後には、図15及び図16に示すように、左右一対のベース左右方向端前部100A、100Aの間をなす箇所は直方体状の空間k1となされており、したがって左右方向線(ワーク支持部d3の旋回中心)O1と、ベース本体部の左右一対のベース左右方向端前部100A、100A間をなすベース100部分の前端面a6との距離L3はベース左右方向端前部100A、100Aの前後方向長さ(ベース左右方向中間前部100Bの前後方向長さ)L1の分だけ増大されるのであり、これにより左右方向線O1回りの最大旋回半径はベース左右方向中間前部100Bの取り外される前よりもベース左右方向端前部100Aの前後方向長さL1だけ増大するのであり、治具28及びこれに固定されたワークwはその旋回半径がこの増大された最大旋回半径の範囲内にある限り仮想線位置kaを経て左右方向線O1回りに旋回し得るものとなり、これらの旋回により加工可能なワークwの大きさが増大化されるのである。
ベース左右方向中間前部100Bが取りはずれた状態の縦形マシニングセンタはベース左右方向中間前部100Bが取り外される前の場合に準じて使用されるのであり、その使用状態は例えば図17〜図20のそれぞれに示すとおりであり、説明は省略する。
また図21はベース左右方向中間前部100Bが取りはずれた状態の縦形マシニングセンタでのみ使用される治具28を示している。この治具28は左右一対のベース左右方向端前部100A、100Aの間に位置され且つ前面部分a3の後側に位置されるものであり、具体的には、左右一対のベース左右方向端前部100A、100Aの前端面をなす全面部分a3に左右両端をボルトc3で固定され左右方向中央部28bを後方へ突出され平面視コ字形となされた固定板28Aと、左右方向中央部28bの前面箇所に固定されたテーブルdとを備えたものとなされており、左右方向中央部28b及びテーブルdが前面部分a3よりも後側に位置されている。
この治具28は、テーブルdを使用するにも拘わらず前面部分a3からのワークwの前張り出し量を小さく抑える上で寄与するものである。
図17〜図21に示すようにベース左右方向中間前部100Bが取りはずれた状態の縦形マシニングセンタによる加工時においても、工具Tに作用する力は図14に示すように加工ヘッド102、第2サドル7、第1サドル4、ベース100、治具28及びワークwを経てループLP1を描くように伝達される。このさい、ベース左右方向中間前部100Bが取りはずれていると否とに拘わらず、ループLP1の長さに変更はない。また左右一対のベース左右方向端前部100A、100Aのそれぞれが前後方向長さL1を凡そ100mm〜300mm程度となされ且つ左右方向長さL2が凡そ100mm程度以上となされているため、ベース左右方向中間前部100Bが取りはずれていても、ベース100及び治具28の全体の剛性は、ワークwの加工時にベース100などに通常状態で作用する外力により加工精度が損なわれる程度まで低下するものとならない。
次に上記した縦形マシニングセンタを複数配列する場合の設置例について説明する。図22及び図23のそれぞれは6台の上記縦形マシニングセンタを列設した状態を示し、Aは平面図でBは側面図である。なお、図23の側面図では一部が省略されている。
図22に示すものでは、各縦形マシニングセンタM1〜M6はそのY軸方向を加工ラインkと直交するように配置されると共に各縦形マシニングセンタM1〜M6の生成した切粉をY軸方向へ搬送するための独立の切粉コンベア29を具備しており、各縦形マシニングセンタM1〜M6で生成された切粉はその対応する独立の切粉コンベア29でベース100の後側へ搬出され容器33内に収集される構成となされている。また加工ラインK上にはワークwをX軸方向及びZ軸方向へ搬送することのできる動力搬送装置34が設けられている。e1及びe2は側面壁31a、31bに設けられた動力開閉口であり、また35はワーク仮置き台である。
一方、図23に示すものにおいては、4台の縦形マシニングセンタM1〜M4がそれぞれの生成させた切粉をX軸方向へ搬送する共通した単一の切粉コンベア29を備えると共に、他の2台の縦形マシニングセンタM5、M6がそれぞれの生成させた切粉をX軸方向へ搬送する共通した他の単一の切粉コンベア29を備えた構成となされている。この際、各縦形マシニングセンタM1〜M6で生成された切粉はその対応する切粉入口29a内に落下し、その対応する切粉コンベア29で搬出され容器33内に収集される。その他の構成は図22に示すものと変わりない。
図22及び図23の何れに示すものにおいても、動力搬送装置34はワークwを加工ラインK上でX軸方向へ前進搬送することで各縦形マシニングセンタM1〜M6の治具28のワーク支持部d3に動力により順に位置させることができるのであり、従って各ワークwは加工ライン上を図中左側へ間欠的に搬送され、6台の縦形マシニングセンタM1〜M6により順次、自動的に加工されるものとなる。
図22及び図23に示す複数の縦形マシニングセンタM1〜M6は左右側面を密接させた状態に配列される場合もあるのであり、この場合、ベース100の脚部をなす支持部材2がベース100の左右の側面1a、1bから張り出さないようにしたことから支持部材2同士の干渉が回避されるのであり、また前側の左右一対の支持部材2、2はベース100の前面c1よりも前方Y1へ張り出させてあるため、このように張り出させない場合に比べてベース100のより安定的な支持に寄与するのであり、また後側の左右一対の支持部材2、2はベース100の後面1dよりも後方Y2へ張り出さないようにしたことから切粉コンベア29のタンク29eをベース100の後面1dに当接させてもタンク29e干渉しないものとなる。