JP4803077B2 - 浸炭焼入用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、浸炭焼入れ用鋼板およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、浸炭焼入れ後に優れた強度と靭性とを備える鋼板部材を得ることが可能な、優れた加工性を有する浸炭焼入れ用鋼板およびその製造方法に関する。
現在、自動車部品に供する浸炭焼入れ用鋼板としては、SAE1010鋼、SAE1015鋼やSCM415鋼などが用いられている。
このうち、SAE1010鋼、SAE1015鋼は、表層部については浸炭によりヴィッカース硬さ(Hv)で500〜600を確保することが可能であるが、焼入れ性に劣るため、通常の浸炭焼入れ処理の条件下では板厚中心部までは十分に焼きが入らず、板厚中心部のヴィッカース硬さ(Hv)は200〜300程度にしかならない。より長時間の浸炭処理を施せば浸炭焼入れ後の鋼板部材の強度をさらに向上させることが可能となるが実用上限界がある。
また、SCM415鋼は優れた焼入れ性を有し、浸炭焼入れ後の鋼板部材は良好な強度が得られるものの、CrやMoを多量に含有するためコストが高く、また、浸炭焼入れ前の鋼板の強度が高く、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難である。
一方、特許文献1には、フェライト中の合金元素固溶量を所定値以下とすることにより加工性を確保した、加工性および浸炭性の優れた浸炭用鋼が開示されている。しかし、浸炭焼入れ処理後の鋼板部材についての靭性については何等考慮されていないため、実用上問題がある。
特開昭57−98657号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、浸炭焼入れ後に優れた強度と靭性とを備える鋼板部材を得ることが可能な、優れた加工性を有する浸炭焼入れ用鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、浸炭焼入れ前においては優れた加工性を有し、浸炭焼入れ後においては優れた強度と靭性とを有することを可能にする、浸炭焼入れ用鋼板の化学組成について鋭意検討を行い、以下の新たな知見を得た。
(i)浸炭焼入れ前において優れた加工性を確保し、かつ浸炭焼入れにより良好な焼入れ性を確保するには、従来焼入れ性を向上させるために添加されているCrやMoの含有量を低減させて、Bを添加することが有効である。
(ii)Bによる焼入れ性向上は固溶状態にあるBによってもたらされるため、所定の焼入れ性を確保するにはN含有量に応じてBの含有量の下限を決定することが必要である。ただし、B含有量が過剰であると製造が困難となるため、B含有量の上限についてもN含有量に応じて下記式(2)〜(4)のように決定する必要がある。
(11/14)×N+0.0005≦B≦(11/14)×N+0.0030 ・・・(2)
=max[B−(11/14)×N,0] ・・・(3)
=max[N−(14/48)×Ti,0] ・・・(4)
なお、上記式(2)〜(4)は、BとNとの関係をプロットした図1より導かれた。図1における記号の意味は次のとおりである。
○:浸炭焼入れ後の表層部(表面から0.7mm深さ位置)の硬度がHv≧390、かつ製造上の問題なし
×:浸炭焼入れ後の表層部の硬度がHv<390
+:製造上の問題あり(スラブ割れ)
(iii)浸炭焼入れ後の靭性は、P含有量の増加に伴って大きく劣化するためその含有量の上限を規制する必要があるが、Bを添加することによりP含有量の上限は緩和され、下記式(1)、(3)および(4)のように決定される。
P≦0.2×(31/11)×(B0.5 ・・・(1)
=max[B−(11/14)×N,0] ・・・(3)
=max[N−(14/48)×Ti,0] ・・・(4)
なお、上記式(1)、(3)および(4)は、BとPとの関係をプロットした図2より導かれた。図2における記号は2mmVノッチシャルピー試験の結果に基づいており、その意味は次のとおりである。
○:20.0J以上
△:15.0〜19.9J
×:14.9J以下
(iv)Bにより焼入れ性を確保する場合には、鋼中のNを固定してBの消費を抑制するためにTiを添加することが有効であるが、過剰なTiは炭窒化物を形成することにより、浸炭焼入れ前の鋼板の強度上昇を招いて加工性を劣化させたり、浸炭焼入れ後の靭性の劣化を招いたりするため、Ti含有量の上限は厳格に制限する必要がある。
上記の知見に基づいて完成された本願発明は次のとおりである。
〔1〕質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.15%以下、Mn:0.50〜1.5%、S:0.02%以下、Cr:0.30%以下、Al:0.050%以下およびN :0.0050%未満を含有し、さらにPおよびBの含有量が下記式(1)〜(4)を満足し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、穴拡げ率が60%以上である機械特性を有することを特徴とする浸炭焼入用鋼板。
P≦0.2×(31/11)×(B0.5 ・・・(1)
(11/14)×N+0.0005≦B≦(11/14)×N+0.0030 ・・・(2)
=max[B−(11/14)×N,0] ・・・(3)
=max[N−(14/48)×Ti,0] ・・・(4)
ここで、各式におけるP,N,Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
〔2〕前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.030%未満を含有することを特徴とする〔1〕記載の浸炭焼入用鋼板。
〔3〕前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.15%以下を含有することを特徴とする上記〔1〕または〔2〕記載の浸炭焼入用鋼板。
〔4〕前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ni:0.15%以下、Mo:0.30%以下およびNb:0.03%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の浸炭焼入用鋼板。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の化学組成を有する鋼塊または鋼片を1220℃以上としてから熱間圧延に供し、860〜910℃の温度域で熱間圧延を完了し、30℃/秒以下の平均冷却速度で700℃まで冷却し、620〜660℃の温度域で巻き取ることを特徴とする浸炭焼入用鋼板の製造方法。
本発明によれば、浸炭焼入れ後に優れた強度と靭性とを備える鋼板部材を得ることが可能な、優れた加工性を有する浸炭焼入れ用鋼板およびその製造方法が得られる。
1.化学組成
C:0.15〜0.30%
Cは、浸炭焼入れ後の鋼板部材の硬度を決定するとともに、焼入れ前の鋼板の強度に大きな影響を及ぼす重要な元素である。鋼板部材に浸炭焼入れを施すと、鋼板部材の表層部は浸炭によって硬度を高めることが可能であるが、鋼板部材の板厚中心部についても高い硬度を確保するには、素材段階でのC含有量が重要となる。本発明においては、鋼板部材の板厚中心部においてヴィッカース硬さで400以上とするために、C含有量を0.15%以上とする。一方、C含有量が0.30%超では、浸炭焼入れ前の鋼板の強度が高くなり、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となる。このため、C含有量を0.30%以下とする。
Si:0.15%以下
Siは、不純物として鋼中に含有される元素であるが、脱酸剤としても有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、Siは固溶強化元素であり、過剰に含有すると浸炭焼入れ前の鋼板の強度が高くなり、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となる。したがって、Si含有量を0.15%以下とする。
Mn:0.50〜1.5%
Mnは、脱酸剤として有効な元素であるが、浸炭焼入れ時の焼入れ倍数を高め、硬化深度を高める有効な元素である。このため、Mn含有量を0.50%以上とする。一方、過剰に含有すると浸炭焼入れ前の鋼板の強度が高くなり、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となる。このため、Mn含有量を1.5%以下とする。好ましくは、1.2%以下である。
P:P≦0.2×(31/11)×(B0.5
Pは、本発明において重要な元素である。
Pは、オーステナイト粒界に偏析しやすい元素であり、これにより鋼板内の強度変動を大きくしたり、粒界強度の低下により靭性を大きく低下させたりする。したがって、P含有量は少ないほど好ましい。
ただし、本発明においては、後述するようにBを含有させるのであり、このBのうちNと結合してBNを形成していない固溶状態にあるBは、浸炭焼入れ時に、Pに優先してオーステナイト粒界に偏析し、Pの粒界偏析を抑制することが判明し、その効果は、1原子当りPの約20倍であることが確認できた。したがって、P含有量の上限はB含有量に応じて緩和されることとなり、P含有量は下記の式(1)、(3)および(4)を満足させるようにする。
P≦0.2×(31/11)×(B0.5 ・・・(1)
=max[B−(11/14)×N,0] ・・・(3)
=max[N−(14/48)×Ti,0] ・・・(4)
ここで、各式におけるP,N,Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
S:0.02%以下
Sは、Mnと結合しMnSを形成して鋼板の加工性を劣化させる。特に、圧延直角方向の劣化が著しい。したがって、S含有量は少ないほど好ましく、本発明においては0.02%以下とする。好ましくは0.01%以下である。
Cr:0.30%以下
Crは、不純物として含有されるが、Mn同様に浸炭焼入れ時の焼入れ倍数を高め、硬化深度を高める有効な元素でもある。しかしながら、過剰に含有すると浸炭焼入れ前の鋼板の強度が高くなり、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となる。また、コストの増加も招く。このため、Cr含有量0.30%以下とする。浸炭焼入れ時の焼入れ倍数を高め、硬化深度を高める作用効果を確実に得るには、Cr含有量を0.010%以上とすることが好ましい。
B:(11/14)×N+0.0005≦B≦(11/14)×N+0.0030
Bは、本発明において最も重要な元素である。
Bは、浸炭焼入れ時の焼入れ倍数を高め、鋼板部材の板厚中心部まで焼きを入れるのに有効な元素である。Bによる焼入れ性向上作用は、固溶状態にある有効B(以下、「B」とも表記する。)によってもたらされ、Nと結合してBNを形成しているBは焼入れ性向上に寄与しない。そこで、鋼板部材の板厚中心部において所定の硬さを得るために、下記式(4)および(5)を満足するようにBを含有させる。一方、B含有量が過剰になると、スラブ段階での割れや熱間圧延時の絞込みが生じやすくなり、製造が困難になるなどの弊害が現れる。このため、B含有量を下記式(4)および(6)を満足するようにする。
=max[N−(14/48)×Ti,0] ・・・(4)
B≧(11/14)×N+0.0005 ・・・(5)
B≦(11/14)×N+0.0030 ・・・(6)
ここで、各式におけるN,Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
Al:0.050%以下
Alは、脱酸剤としては有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、過剰に含有すると、表面欠陥を生じ易くなったり、浸炭焼入れ前の鋼板の強度が高くなり、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となったりする。したがって、Al含有量を0.050%以下とする。なお、脱酸をSiのみで行う場合には、Alは添加しなくともよい。
N:0.0050%以下
Nは、上述したようにBと結びついてBNを形成し、固溶状態にある有効Bを減少させてしまう。したがって、N含有量は少ないほど好まく、本発明においては0.0050%以下とする。好ましくは0.0040%以下である。
Ti:0.030%未満
Tiは、Bよりも高温域でNと結合して、NをTiNとして固定する作用を有するので、Nと結合することにより消費されるBの量を低減し、有効Bを確保するのに有効な元素である。したがって、必要に応じて添加することができ、特にN含有量が多い場合には添加することが好ましい。しかし、過剰に含有すると、Nに対して過剰なTiがCを結合してTiCを形成し、浸炭焼入れ前の鋼板の強度が高くなり、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となる。また、炭窒化物を形成することにより、靭性の劣化や焼入れ性の低下を招く。したがって、Ti含有量を0.030%未満とする。好ましくは0.025%以下、さらに好ましくは0.020%以下である。なお、N含有量が低い場合や、BのみによりNを固定しても構わない場合には、Tiは添加しなくともよい。
Cu:0.15%以下
Cuは、酸洗時の過酸洗を抑制し、酸洗後の表面状態を安定化する作用を有するので、必要に応じて添加してもよい。一方、過剰に含有すると浸炭焼入れ前の鋼板の強度が高くなり、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となる。また、コストの増加も招く。このため、Cu含有量を0.15%以下とする。
Ni:0.15%以下、
Niは、靭性向上に有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、Niは高価な元素であり、過剰な添加は著しいコストの増加を招く。したがって、Ni含有量を0.15%以下とする。
Mo:0.30%以下
Moも、靭性向上に有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、過剰に含有すると浸炭焼入れ前の鋼板の強度が高くなり、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となる。また、コストの増加も招く。したがって、Mo含有量を0.30%以下とする。
Nb:0.030%以下
Nbは、浸炭焼入れ時にオーステナイト結晶粒を細粒化し、靭性を向上させる効果を有する有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、過剰に含有すると、炭化物を形成して、浸炭焼入れ前の鋼板の強度が高くなり浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となったり、浸炭焼入れ時の焼入れ性を低下させたりする。したがって、Nb含有量を0.030%以下とする。
2.機械特性
本発明に係る浸炭焼入れ用鋼板は、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工を容易にするために、穴拡げ率が60%以上である機械特性を有するものとする。
なお、ここでいう穴拡げ率は、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001に規定される穴拡げ試験方法により求められる値である。
3.製造方法
以下、本発明に係る浸炭焼入れ用鋼板の好適な製造方法について説明する。
熱間圧延に供する鋼塊または鋼片の温度:1220℃以上
熱間圧延に供する鋼塊または鋼片の温度は極めて重要な因子である。
例えば、化学組成がTiを含有する場合には、熱間圧延に供する段階で、鋼塊または鋼片の中に存在する、鋳造時に生成した粗大なTiNを可及的に固溶させておくことが好ましい。すなわち、鋳造時には、TiNは粗大に晶出または析出した状態となっているため、高温に加熱することにより少しでも多くのTiNを固溶させ、固溶させたTiとNとを熱間圧延の工程により微細に分散析出させるのである。このようにすることにより、浸炭焼入れの熱処理工程において、浸炭中のオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制して、靭性の劣化を防ぐことができる。よって、熱間圧延に供する鋼塊または鋼片の温度1220℃以上の加熱が必要となる。
なお、熱間圧延に供する鋼塊または鋼片は、連続鋳造後の高温状態にある鋼塊であってもよく、分解圧延後の高温状態にある鋼片であってもよい。1220℃以上の高温状態にある場合には特段加熱を施さなくてもよく、比較的短時間の保熱処理を施したのちに熱間圧延に供してもよい。
熱間圧延完了温度:860〜910℃
熱間圧延完了温度と熱間圧延後の冷却条件は、鋼板の軟質性を確保する上で重要である。
すなわち、設備長が固定された実操業を考慮すると、熱間圧延完了温度が910℃超である場合には、熱間圧延後の冷却速度が大きくなり、硬質第二相が生成して得られる鋼板は高強度となり、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となる。一方、熱間圧延完了温度が860℃未満の場合には、鋼塊または鋼片の変形抵抗が大きくなって熱間圧延そのものの実施が困難になったり、結晶粒が微細化して得られる鋼板が高強度となったりして、浸炭焼入れに供する鋼板部材への加工が困難となる。したがって、熱間圧延完了温度を860〜910℃とすることが好ましい。
冷却速度:熱間圧延完了後700℃までの平均冷却速度を30℃/秒以下
熱間圧延完了後の冷却速度も鋼板の機械特性に影響をおよぼす重要な因子である。
すなわち、鋼板の軟質性を確保するには、初期冷却速度は小さい方が好ましく、過大になると鋼板が硬質化する。上述した化学組成を有する鋼種の場合には、700℃近辺にBs点があるため、当該温度域までの冷却速度が重要となり、当該温度域までの冷却速度が大きいと、組織にベイナイトが現れて鋼板が硬質化する。したがって硬質なベイナイトの生成を防ぐために、熱間圧延完了後700℃までの平均冷却速度を30℃/秒以下とすることが好ましい。
巻取温度:620〜660℃
巻取温度も鋼板の軟質化のために重要な因子である。
上述のごとくの700℃までの冷却条件を実現できたとしても、その段階では未だ変態が完了しておらず、オーステナイトのまま未変態で残っている部分が相当量存在する。したがって700℃まで緩冷却したとしても、巻取温度が低すぎると硬質第二相が生成してしまい鋼板の硬質化を招く。所定の硬度(HRBで80以下)を得るためには、巻取温度を620℃以上とすることが好ましい。一方、巻取温度があまりに高すぎると、スケール厚が厚くなりすぎ、そのために表面品質を阻害する事となるので、巻取温度を660℃以下とすることが好ましい。
その他:
本発明に係る鋼板は、熱延鋼板であっても冷延鋼板であってもよい。
熱延鋼板の場合には、熱間圧延ままの鋼板であってもよく、熱延板焼鈍を施してさらに軟質化した鋼板であってもよい。熱延板焼鈍を施す場合には、焼鈍温度を(Ac1−100℃)以上(Ac1+50℃)以下とし、焼鈍時間を0.5時間以上25時間以下とすることが好ましい。通常酸洗処理が施されて鋼板部材へ加工されたのちに浸炭焼入れ処理が施される。
また、冷延鋼板の場合には、冷間圧延ままの鋼板であってもよく、焼鈍を施してさらに軟質化した鋼板であってもよい。焼鈍を施す場合には、焼鈍温度を(Ac1−100℃)以上(Ac1+50℃)以下とし、焼鈍時間を0.5時間以上25時間以下とすることが好ましい。冷間圧延と焼鈍とを複数回繰り返してもよい。
表1に示す化学組成を有するスラブを表1に示す熱延条件にて熱間圧延を施して熱延鋼板とした。得られた熱延鋼板に酸洗処理を施して各試験に供した。
評価方法としては、まずスラブ段階で表面性状(割れの有無)を目視にて次の評価基準にて確認した。
○:割れ発生認められない。
△:微小な割れが認められる。
×:製品の品質に影響を与える割れが認められる。
次に、熱延鋼板について引張試験によりYS、TS、Elを測定し、板厚1/4位置における硬度(ロックウェルBスケール:HRB)を測定した。さらに、穴広げ試験を行い伸びフランジ性(穴広げ率)を調査した。その試験方法は上述したとおりであり、評価基準は次のとおりである。
○:λ≧60%
△:50%<λ<60%
×:λ≦50%
続いて、熱延鋼板に870℃×60分で浸炭した後に油焼入を行う浸炭焼入れ処理を施し、板厚表層部から中心部にかけての硬度を測定するとともに、2mmVノッチシャルピー試験により靭性についても評価した。その評価尺度は次のとおりである。
○:20.0J以上
△:15.0〜19.9J
×:14.9J以下
また、表層部がHv=500になるまでの浸炭時間の長さについても評価を行った。その評価基準は次のとおりである。
○:5時間未満
△: 5時間以上6時間未満
×: 6時間以上
さらに、製造コストについても次の基準で評価した。
○:Mn、Cr、Al、Ti、Cu、Ni,Mo、Nb合金元素の含有量が本発明で規定する範囲内である。
×:Mn、Cr、Al、Ti、Cu、Ni,Mo、Nbのいずれかの合金元素の含有量が本発明で規定する上限を超えている。
以上の評価のまとめとして、次の観点で総合評価を行った。
○:上記の○×式の評価全てにおいて○であり、素材特性として成形性が良好であり、さらに浸炭焼入れ後の表層部(表面から0.7mm深さ位置)の硬度がHv≧390である。
×:上記の○×式の評価のいずれかに×がある。
結果を同表に併せて示す。表1に示すように、本発明に係る鋼板は、上述したいずれの性能においても優れている。また、コスト面においても充分廉価である。
Figure 0004803077
本発明によれば、浸炭焼入れ後に優れた強度と靭性とを備える鋼板部材を得ることが可能な、優れた加工性を有する浸炭焼入れ用鋼板およびその製造方法が得られる。前記鋼板は、例えば自動車部品の浸炭焼入れ自動車部品に供する浸炭焼入れ用鋼板として好適である。
本願発明に係る浸炭焼入用鋼板におけるNとBとの関係を表す図である。 本願発明に係る浸炭焼入用鋼板におけるBとPとの関係を表す図である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.15%以下、Mn:0.50〜1.5%、S:0.02%以下、Cr:0.30%以下、Al:0.050%以下およびN :0.0050%未満を含有し、さらにPおよびBの含有量が下記式(1)〜(4)を満足し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、穴拡げ率が60%以上である機械特性を有することを特徴とする浸炭焼入用鋼板。
    P≦0.2×(31/11)×(B0.5 ・・・(1)
    (11/14)×N+0.0005≦B≦(11/14)×N+0.0030 ・・・(2)
    =max[B−(11/14)×N,0] ・・・(3)
    =max[N−(14/48)×Ti,0] ・・・(4)
    ここで、各式におけるP,N,Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
  2. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.030%未満を含有することを特徴とする請求項1記載の浸炭焼入用鋼板。
  3. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.15%以下を含有することを特徴とする請求項1または2記載の浸炭焼入用鋼板。
  4. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ni:0.15%以下、Mo:0.30%以下およびNb:0.030%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の浸炭焼入用鋼板。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の化学組成を有する鋼塊または鋼片を1220℃以上としてから熱間圧延に供し、860〜910℃の温度域で熱間圧延を完了し、30℃/秒以下の平均冷却速度で700℃まで冷却し、620〜660℃の温度域で巻き取ることを特徴とする浸炭焼入用鋼板の製造方法。
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