JP4801869B2 - 単結晶成長方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は単結晶成長方法、特に坩堝を挟んで対向配置されたコイルにより坩堝内の原料融液に水平磁場を印加しつつ前記原料融液から単結晶を引上げる、水平磁場印加CZ法(HMCZ法:Horizontal Magnetic field applied CZ法)と呼ばれる単結晶成長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体基板に使用されるシリコン単結晶の製造方法には種々の種類があるが、工業的に広く用いられているのは回転引上げ法であるCZ法(チョクラルスキー法)である。CZ法によるシリコン単結晶の製造では、図6に示すような結晶成長装置が使用される。この結晶成長装置は、原料融液であるシリコン融液13を収容する坩堝1と、坩堝1の外側に配置された環状の抵抗式ヒータ2とを備えている。坩堝1は、内側の石英坩堝1aと外側の黒鉛坩堝1bとを組み合わせた二重構造であり、昇降及び回転が可能な支持軸6の上に載置されている。この坩堝1は、外側のヒータ2などと共に図示されないチャンバ内に収容されている。
【0003】
操業では、ワイヤなどからなる引上げ軸5に吊り下げられた種結晶15を坩堝1内のシリコン融液13に浸漬する。そして坩堝1及び引上げ軸5を逆方向又は同方向に回転させながら引上げ軸5を上昇させて種結晶15を引上げることより、種結晶15の下方にシリコン単結晶12を育成する。シリコン単結晶12の育成に伴うシリコン融液13の液面低下を相殺して、その液面レベルを一定に維持するために、坩堝1を徐々に上昇させる。
【0004】
更に詳しく説明すると、チャンバ内を所定の真空度に減圧し、且つ所定の不活性ガス雰囲気に維持した状態で、坩堝1内の固形原料を坩堝1の外側に配置されたヒータ2により溶かして坩堝1内にシリコン融液13を形成する。種結晶15を原料融液13に漬けた後、種結晶15に元から含まれる転位や着液時の熱ショックで導入される転位を除去するために、種結晶15を直径3mm程度まで細く絞る。この種絞り工程(ネッキング工程)の後、所定の径まで徐々に増径する肩部形成工程(増径工程)を経て直胴部の引上げを開始する。
【0005】
このようなCZ法によるシリコン単結晶の製造では、前述したとおり、原料融液を収容する容器として石英坩堝を使用するのが通例になっている。この石英坩堝はシリコン融液と接するとこの融液と反応して酸素を放出する。融液中に放出された酸素は、その一部が引上げ中に単結晶中に取り込まれ、シリコンウエーハの品質に様々な影響を及ぼす。このため、シリコン融液中の酸素濃度の制御が重要な技術となる。
【0006】
CZ法における原料融液中の酸素濃度を制御する方法の一つとして、磁場印加CZ法(MCZ法: Magnetic field applied CZ法)がある。この方法は坩堝内の原料融液に磁場を印加することにより、磁力線に直交する方向の融液対流を抑制して、酸素の溶出を抑制するものである。磁場の印加方法には種々の種類があるが、特に水平方向に磁場を印加するHMCZ法の実用化が進んでいる。
【0007】
HMCZ法に用いられる結晶成長装置は、図7及び図8に示すように、磁場印加のために、チャンバ7の外側に当該チャンバを挟んで対称的に対向配置された一組のコイル30a,30bを備えている。チャンバ7は、坩堝1などのホットゾーンを収容する大径筒状のメインチャンバ7aと、育成された単結晶を収容するためにメインチャンバ7aの中心部上に重ねられた小径長尺のプルチャンバ7bとからなり、一組のコイル30a,30bは、メインチャンバ7aの外側に、チャンバ中心と交差する水平線上に同軸に並んで配置されている。一方、メインチャンバ7aの内部には、坩堝1及びヒータ2の他に、断熱材8aがメインチャンバ7aの周壁内面に沿って配設されると共に、断熱材8bが底部表面に沿って配設されている。
【0008】
水平方向の磁場を形成するコイルの形状は、通常は横向きの円環状であるが、メインチャンバの外形に沿って鞍型に湾曲したものも特許文献1に記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−333190号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
HMCZ法において鞍型に湾曲したコイルを使用することにより、平面的な通常コイルを使用する場合と比べて、小さい起磁力で同じ強度の磁界を発生でき、コイルを小型化できるなどの利点がある。しかしながら、その利点の一方で次のような問題がある。
【0011】
鞍型コイルを用いたHMCZ法を、内径500mm以上の大口径坩堝による外径200mm以上の大径単結晶引上げに適用すると、引上げ中に突然結晶径が急増するという、鞍型コイルの使用時に特有の現象が発生することが判明した。この現象は、坩堝内の融液の温度の急変が原因と考えられている。この現象が生じると、所望の結晶品質が得られないばかりか、引上げ操作そのものが不可能になるおそれがある。このため、鞍型コイルを用いたHMCZ法においては、結晶径の急増現象を阻止することが重要な技術課題となる。
【0012】
本発明の目的は、鞍型コイルを用いたHMCZ法において問題となる引上げ中の結晶径の急増現象を阻止して、安定な結晶引上げを可能にする単結晶成長方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鞍型コイルを用いたHMCZ法において問題となる引上げ中の結晶径の急増現象を阻止することを目的として、その急増現象に影響する諸因子について調査検討を行った。その結果、この結晶径の急増現象には、坩堝内の融液量と、その時点の坩堝回転数が大きな影響を及ぼしていることが判明した。
【0014】
即ち、結晶径の急増現象は、坩堝内の残液量と坩堝回転数とが特定の関係を満足したときに発生し、その関係は、坩堝内の残液量が減少するに従って、結晶径の急増現象を生じる坩堝回転数が低下する傾向となるのである。従って、結晶径の急増現象を防止するには、この急増減少が生じる坩堝回転数を避けて操業を行うのが有効となる。
【0015】
図3は内径が750mmの石英坩堝で外径が300mmの単結晶を引上げた場合の結晶径急増条件を示す図表であり、横軸は坩堝内の融液量、縦軸は坩堝回転数を表している。同図から分かるように、結晶径の急増は、坩堝内の融液量に対応する特定の坩堝回転数において発生する。そして、結晶径の急増を生じる坩堝回転数は、坩堝内の融液量が減少するに従って低下する。
【0016】
本発明の単結晶成長方法は、かかる知見に基づいて完成されたものであり、坩堝を挟んで対向配置され、チャンバの外形に沿って湾曲した鞍型形状のコイルにより、前記坩堝内の原料融液に水平磁場を印加しつつ、前記原料融液から単結晶を引上げる単結晶成長方法において、予め、結晶径の急増が発生するときの坩堝回転数を坩堝内の融液量に対応させて求めておき、結晶引上げの進行に伴う融液量の減少に応じて、前記坩堝回転数を前記結晶径の急増が発生する坩堝回転数よりも高位又は低位の回転数とするとともに、前記坩堝回転数を前記低位の回転数とした場合は前記鞍型コイルの中心を結ぶコイル中心線を前記坩堝内の前記原料融液の減少に応じて低下させるものである。
【0017】
図3を用いて説明すると、結晶径の急増が発生しない坩堝回転数が、引上げの進行による坩堝内の融液量の減少に伴って図4のように推移する場合、結晶引上げの全期間を通し、図4中の実線の近傍に設定される危険ゾーンの上又は下に坩堝回転数を選択するのである。そうすると、結晶引上げの全期間を通して結晶径が急増する現象が阻止される。
【0018】
あとで説明するが、HMCZ法では坩堝回転数は低いほうが好まれる。このため、結晶径の急増が発生する坩堝回転数より低位に坩堝回転数を選択するのが好ましい。ただし、坩堝回転数を低くすると、結晶中の酸素濃度は低下する。これについては、両コイルの中心を結ぶコイル中心線を、坩堝内の融液の表面レベルに対して低下させることにより補うことができる。
【0019】
本発明の単結晶成長方法は、鞍型コイルを用いたHMCZ法のなかでも結晶径の急増が発生しやすい、内径500mm以上の大口径坩堝を用いた外径200mm以上の大径単結晶の引上げに特に有効である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の単結晶成長方法を実施するのに適した結晶成長装置の模式断面図、図2は同結晶成長装置の平面図である。
【0021】
本結晶成長装置は、チャンバ7として円筒形状のメインチャンバ7aと、その上に同心状に重ねられた細長い円筒形状のプルチャンバ7bとを備えている。メインチャンバ7a内の中心部には坩堝1が配置されている。坩堝1は内側の石英坩堝1aと、その外側に配置された黒鉛製の保持坩堝1bとからなり、ペディスタルと呼ばれる支持軸6の上に受け皿を介して載置されている。坩堝1の外側にはヒータ2が配置されている。メインチャンバ7a内には、更に断熱材8が配置されている。この断熱材8は、メインチャンバ7aの周壁内面に沿って配設された第1の断熱材8aと、メインチャンバ7aの底部表面に沿って配設された第2の断熱材8bとからなる。
【0022】
一方、プルチャンバ7b内には、ワイヤからなる引上げ軸5が当該プルチャンバを貫通して垂下されており、その下端には種結晶15が装着されている。引上げ軸5は、結晶引上げのために、プルチャンバ上に設けられた図示されない回転巻き上げ機構により回転及び引き上げ駆動される。
【0023】
他方、メインチャンバ7aの外側には、中心線を水平方向に向けた一組のコイル30a,30bが、該メインチャンバを挟んで対称的に対向配置されている。これらのコイル30a,30bは、メインチャンバ7a内の坩堝位置に水平方向の磁場を生成する超電導磁石を構成しており、チャンバ7の垂直な中心線と交差する水平線上に同軸配置されている。そして、これらのコイル30a,30bは、メインチャンバ7aの外形に沿って水平方向に湾曲した鞍型コイルとされているす。
【0024】
次に、本結晶成長装置を用いて外径が300mmのシリコン単結晶を成長させる方法を、一操業例ついて説明する。
【0025】
チャンバ7内を25Torrに減圧し、そのチャンバ7内に不活性ガスとしてArを100L/minの流量で導入する。坩堝1内に充填されている結晶用シリコン原料及び不純物としてのボロンをヒータ2で溶融させる。種結晶15を坩堝1内のシリコン融液13に浸け、ネック部12a、シヨルダー部12b及び直胴部12cの順に単結晶12を成長させる。目標とする直胴部12cの引上げ長さは1000mmである。坩堝1の内径は750mmである。コイル30a,30bによる直胴部12cでの磁場強度は3000Gaussである。
【0026】
結晶成長中は、坩堝1及び引上げ軸5を回転させる。結晶成長に伴って、坩堝1内の融液量は徐々に減少する。融液量の減少に伴う液面低下を相殺して、その液面を一定レベルに維持するべく、坩堝1を徐々に上昇させる。このようにして結晶成長を行う途中、坩堝1の回転数を様々に変更して、結晶径の急増現象を意図的に発生させる。必要に応じて操業を繰り返す。これにより、結晶径の急増現象が発生する回転数を、坩堝1内の融液量に対応させて調査する。このようにして調査した径急増条件(坩堝回転数と融液量との関係)が例えば図3である。引上げ軸5の回転数は8rpm(一定)とした。
【0027】
なお、本発明者らによる別の調査から、コイル30a,30bの各中心を結ぶコイル中心線(図1及び図2中にC−Cで示す)と、坩堝1内の融液表面との位置関係も、結晶径の急増現象に影響することが判明している。具体的には、坩堝1内の融液表面からコイル中心線が降下する(降下量を図1中にLに示す)に従って、結晶径の急増現象が抑制される傾向となる。このため、坩堝1内の融液表面に対するコイル中心線のレベルは、急増現象が発生する範囲内で一定(L=−70mm)に維持した。
【0028】
以上の実験操業により、結晶径の急増条件が求まると、この条件を避ける坩堝回転パターン(引上げの進行に対応する坩堝回転数の推移であり、坩堝内の融液量に対応する坩堝回転数)を決定する。ここでは図4に示す2つの回避パターンを選択した。回避パターン1は、引上げの全期間を通して、結晶径の急増現象が発生する回転数より高回転領域を推移するものであり、回避パターン2は、逆に、引上げの全期間を通して、結晶径の急増現象が発生する回転数より低回転領域を推移するものである。坩堝回転数以外は、実験操業と同じ条件を採用する。
【0029】
比較パターンは、従来の典型的な回転制御形態であり、低坩堝回転で引上げを開始し、引上げ途中から、この坩堝回転数を高回転へ推移させたものである。
【0030】
比較パターンでは、これが結晶径の急増条件と干渉する時点(融液量が約170kgで坩堝回転数が約2rpmのとき)に、結晶径の急増現象が発生した。これに対し、回避パターン1及び2では、引上げの全期間において、結晶径の急増現象は発生せず、安定な引上げを実施できた結果、有転位化及び品質面で問題は生じなかった。回避パターン1及び2で製造された単結晶の引上げ軸方向における酸素濃度分布を図5に示す。坩堝回転数が高い回避パターン1では高酸素、坩堝回転数が低い回避パターン1では低酸素となった。図5から分かるように、結晶径の急増条件を回避しても、単結晶中の酸素濃度を広範囲に制御することが可能である。
【0031】
なお、HMCZ法においては、坩堝回転数が高くなると、融液が坩堝と共に回転しようとする作用と、その融液が磁場の影響により停止しようとする作用とが同時に起こるため、融液は不安定になる。このため、HMCZ法において採用する坩堝回転数は低い方が望ましいとされている。この観点からは、結晶径の急増現象が発生する回転数より低回転領域を採用するのが好ましい。高い酸素濃度が必要な場合は、坩堝内の融液表面に対してコイル中心線を下げればよい。鞍型コイルの場合、コイル中心線のレベルは、結晶径の急増現象だけでなく結晶中の酸素濃度に影響することも判明しており、このレベルの低下により結晶中の酸素濃度を高めることができるのである。
【0032】
【発明の効果】
以上に説明から明らかなように、本発明の単結晶成長方法は、鞍型コイルを使用することにより、コイルを小型化できる。また、坩堝の回転数を坩堝内の融液量に対応させて制御することにより、鞍型コイルを用いたHMCZ法において問題となる引上げ中の結晶径の急増現象を阻止して、安定な結晶引上げを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の単結晶成長方法を実施するのに適した結晶成長装置の模式断面図である。
【図2】同結晶成長装置の平面図である。
【図3】結晶径の急増現象の発生条件を示した図表である。
【図4】結晶径の急増現象を回避するのに必要な坩堝回転数の制御パターンを例示した図表である。
【図5】同制御パターンを採用したときの、単結晶中の引上げ軸方向における酸素濃度分布を示す図表である。
【図6】CZ法の概念図である。
【図7】HMCZ法に使用される結晶成長装置の模式断面図である。
【図8】同結晶成長装置の平面図である。
【符号の説明】
1 坩堝
2 ヒータ
5 引上げ軸
7 チャンバ
12 単結晶
13 原料融液
15 種結晶
30a,30b コイル
Claims (1)
- 坩堝を挟んで対向配置され、チャンバの外形に沿って湾曲した鞍型形状のコイルにより、前記坩堝内の原料融液に水平磁場を印加しつつ、前記原料融液から単結晶を引上げる単結晶成長方法において、予め、結晶径の急増が発生するときの坩堝回転数を坩堝内の融液量に対応させて求めておき、結晶引上げの進行に伴う融液量の減少に応じて、前記坩堝回転数を前記結晶径の急増が発生する坩堝回転数よりも高位又は低位の回転数とするとともに、前記坩堝回転数を前記低位の回転数とした場合は前記鞍型コイルの中心を結ぶコイル中心線を前記坩堝内の前記原料融液の減少に応じて低下させることを特徴とする単結晶成長方法。
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