JP4801271B2 - 新規な含フッ素ナフタレン化合物及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な含フッ素ナフタレン化合物類、及びそれらの製造方法に関する。本発明による新規化合物は、有機蛍光物質、液晶材料、染料等の前駆体として有用であり、その他の各種中間体として工業的に有意義な広範な用途が期待されるものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明の含フッ素ナフタレン化合物類は新規であり、従ってそれらの化合物を製造するための方法も新規である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、工業的に有意義な含フッ素有機化合物である下記一般式(I)で示される新規な含フッ素ナフタレン化合物とその製造方法を提供することである。
【0004】
【化6】
【0005】
ただし、式(I)において、YはF,Cl,Br,IまたはCNである。
即ち、本発明は以下の式(VI)で示される新規な1−シアノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレン、及びその前駆体である式(V)で示される1−ハロゲノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレン〔1位のハロゲノメチル基のハロゲン原子はF,Cl,BrまたはIである。〕に関するものである。本発明によって提供される式(VI)で示される1−シアノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンは、活性メチレン基を有することから各種化合物との反応性に富み、トリフルオロメチル基を有する有機蛍光物質、染料、液晶材料等を製造するための利用が期待される有用な中間体化合物である。また、式(V)で示される1−ハロゲノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンは、式(VI)の1−シアノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンの前駆体として有用であるばかりでなく、反応活性なハロゲン原子を有することからトリフルオロメチル基を有する医農薬、機能性材料等の中間体として利用が期待される有用な化合物である。
【0006】
【化7】
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、式(VI)で示される新規な1−シアノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを、式(II)で示される1−ブロモ−4−メチルナフタレンを原料として、式(III)で示される4−メチルナフタレン−1−カルボン酸と式(IV)で示される1−メチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレン及び式(V)で示される新規な1−ハロゲノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンとを経由して製造する方法を見出した。
【0008】
本発明の新規化合物の具体的な製造方法について以下に説明する。
式(II)で示される1−ブロモ−4−メチルナフタレンは、試薬として容易に入手可能な化合物である。
【0009】
式(II)で示される1−ブロモ−4−メチルナフタレンを原料として、式(III)で示される4−メチルナフタレン−1−カルボン酸を製造する方法としては、乾燥不活性ガス雰囲気下で式(II)の化合物から有機金属化合物を調製して、これに二酸化炭素を反応させることにより製造することができる。
【0010】
式(II)で示される1−ブロモ−4−メチルナフタレンのブロモ基を、溶媒中、攪拌下、所定温度、所定時間で有機リチウム試薬あるいは金属マグネシウムと反応させることにより、有機金属化合物を含む溶液を調製し、その溶液と二酸化炭素とを攪拌下、所定温度、所定時間で反応させることによって、式(III)で示される4−メチルナフタレン−1−カルボン酸を製造することができる。本反応は水分を嫌う反応であるために、反応容器内を窒素等の乾燥不活性雰囲気として実施するのが好ましい。
【0011】
上記反応のための溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が使用できる。その使用量は、好ましくは原料1gに対して1〜100ミリリットルである。
【0012】
有機リチウム試薬を作用させる場合には、一般には極低温で行う必要があるが、この基質の場合は温度が低すぎるとリチオ化反応が進行しない。よって、この場合のリチオ化反応温度としては−20〜80℃の範囲が好ましい。金属マグネシウムを作用させる場合には−30〜200℃が好ましい。有機リチウム試薬及び金属マグネシウムの使用量は、好ましくは原料に対して1〜2倍モル量である。 調製された有機金属化合物を含む溶液は、二酸化炭素と反応させるが、その二酸化炭素は炭酸ガス(気体)を有機金属化合物を含む溶液の気液界面上に吹込んでもよいし、あるいはドライアイス(固体)と反応させてもよい。その使用量は原料に対して1〜20モル倍量となるようにする。二酸化炭素との反応は−50〜30℃の温度で行うのが好ましい。反応時間は、0.5〜5時間が好ましい。反応終了後、室温以下の温度で希硫酸、希塩酸等を滴下し、通常の後処理後、精製を行うことにより、式(III)で示される4−メチルナフタレン−1−カルボン酸を製造することができる。
【0013】
次に式(III)で示される4−メチルナフタレン−1−カルボン酸のカルボキシル基を四フッ化硫黄でフッ素化することにより、式(IV)で示されるナフタレン化合物である1−メチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを製造することができる。
【0014】
式(III)で示される原料は、無溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム等の塩素系溶媒やフッ化水素溶媒で希釈して使用するのが好ましい。その溶媒使用量は、好ましくは原料1gに対して0〜20ミリリットルである。フッ素化剤である四フッ化硫黄の使用量は、好ましくは、原料に対して2.0〜6.0倍モル量である。四フッ化硫黄との反応には触媒を用いるのが好ましい。その触媒としては、フッ化水素、BF3、AsF3、PF5、TiF4等が使用できる。その使用量は、好ましくは、原料に対して0.01〜1.0倍モル量である。
【0015】
この反応は常圧下でも行えるが、加熱する場合は加圧下で行うのが好ましい。反応圧力は0〜20MPaの範囲であるのが好ましい。反応温度は−30〜180℃であるのが好ましい。反応時間は、好ましくは1〜24時間である。反応終了後は、通常の後処理、精製を行うことにより、式(IV)で示されるナフタレン化合物である1−メチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを製造することができる。
【0016】
次に、式(IV)で示される1−メチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンのメチル基をハロゲン化剤と反応させて直接モノハロゲン化することにより、式(V)で示される新規なナフタレン化合物である1−ハロゲノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを製造することができる。上記ハロゲン化剤としては、ベンジル基をハロゲン化させる通常のハロゲン化剤を使用でき、例えば、ハロゲン分子、N−ハロゲノイミド類、次亜ハロゲン酸t−ブチル等が挙げられる。
この直接モノハロゲン化反応の収率、次工程〔式(VI)の化合物の製造〕の収率及び経済性等を考慮すると、式(V)で示される1−ハロゲノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンのハロゲノメチル基のハロゲンは臭素原子であることが、取扱い上好ましく、推奨される。
【0017】
そこで、式(V)におけるハロゲンが臭素原子である1−ブロモメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレン〔式(VII)で示される化合物〕の製造方法を以下に説明する。
【0018】
式(IV)で示される1−メチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンから式(VII)で示される新規な1−ブロモメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを製造する方法としては、光や過酸化物触媒の存在下で臭素化剤と溶媒中、攪拌下、所定温度、所定時間で反応させる方法がある。
【0019】
臭素化剤としては、臭素、N−ブロモコハク酸イミド(NBS)、次亜臭素酸t−ブチル等が使用できる。その使用量は、好ましくは原料に対して0.9〜1.1倍モル量である。過酸化物としてはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や過酸化ベンゾイル等が使用できる。その使用量は、好ましくは原料に対して0〜0.1倍モル量である。溶媒としては、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラクロロエチレン等が使用できる。その使用量は、好ましくは原料1gに対して1〜20ミリリットルである。反応温度は、0〜150℃の範囲であるのが好ましい。反応時間は、好ましくは0.5〜5時間である。反応終了後は、通常の後処理、精製を行うことにより、式(VII)で示される新規なナフタレン化合物である1−ブロモメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを製造することができる。
【0020】
式(V)で示される1−ハロゲノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを原料として、これから式(VI)で示される新規な1−シアノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを製造する方法としては、式(V)の化合物を極性溶媒中、攪拌下、所定温度、所定時間でシアノ化剤と反応させる方法がある。
【0021】
極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトン等が使用できる。その使用量は、好ましくは原料1gに対して1〜100ミリリットルである。シアノ化剤としてはシアン化ナトリウム、シアン化カリウム等が使用できる。その使用量は、好ましくは原料に対して1〜2倍モル量である。シアノ化の反応温度は、−50〜150℃の範囲であるのが好ましい。反応時間は、好ましくは0.5〜5時間である。反応終了後、通常の後処理、精製を行うことにより、式(VI)で示される新規なナフタレン化合物である1−シアノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを製造することができる。シアノ化反応の収率及び経済性を考慮すると、式(V)で示される1−ハロゲノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンのハロゲノメチル基のハロゲンは臭素原子であることが、取扱い上好ましく、推奨される。
【0022】
式(VII)で示される1−ブロモメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを原料として、これから式(VI)で示される新規な1−シアノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを製造する方法としては、式(VII)の化合物を極性溶媒中、攪拌下、所定温度、所定時間でシアノ化剤と反応させる方法がある。
【0023】
極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトン等が使用できる。その使用量は、好ましくは原料1gに対して1〜100ミリリットルである。シアノ化剤としてはシアン化ナトリウム、シアン化カリウム等が使用できる。その使用量は、好ましくは原料に対して1〜2倍モル量である。シアノ化の反応温度は、−50〜150℃の範囲であるのが好ましい。反応時間は、好ましくは0.5〜5時間である。反応終了後、通常の後処理、精製を行うことにより、式(VI)で示される新規なナフタレン化合物である1−シアノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを製造することができる。
【0024】
以下に本発明の種々の態様の実施例を示す。本発明における新規化合物類の製造方法は実施例に記載された具体的な態様及び詳細事項にのみに限定されるものではない。
【0025】
【実施例】
4−メチルナフタレン−1−カルボン酸の製造
実施例1
冷却浴、ガス吹込管、温度計及び圧力平衡管付き滴下ロートを備えた500mLガラス製フラスコに窒素雰囲気下、1−ブロモ−4−メチルナフタレン20g(0.090モル)とジエチルエーテル250mlとを仕込んだ。約0℃に冷却し、攪拌下、n−ブチルリチウムのへキサン溶液(1.54M)61.6ml(0.095モル)を液温が5℃以下になるように0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、約0℃でさらに30分間攪拌を続けた。次に、気液界面上に炭酸ガスを0.1リットル/分の流量で2時間吹込んだ。この反応は発熱反応であるので、液温が15℃以下となるように注意して吹込んだ。反応終了後、攪拌下、5%塩酸100mlを滴下・混合後、有機相を分取した。水相はクロロホルム100mlで抽出し、分取したクロロホルム相と有機相とを混合した。混合有機相は、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムを濾別後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をクロロホルムより再結晶し、4−メチルナフタレン−1−カルボン酸の黄色固体を得た。LC純度98%、収量14.3g(収率84.9%)であった。
【0026】
生成物の構造は核磁気共鳴分析等で確認した。核磁気共鳴分析〔VARIAN社製:Gemini 200〕の結果は以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
δ 9.16ppm(dd,J=1.62,7.34Hz,1H,ArH)
8.33ppm(d,J=7.40Hz,1H,ArH)
8.10ppm(dd,J=1.88,7.34Hz,1H,ArH)
7.64ppm(m,2H,ArH)
7.41ppm(d,J=7.54Hz,1H,ArH)
2.79ppm(s,3H,ArCH 3)
1−メチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンの製造
実施例2
ウォークインドラフト内に設置された攪拌機、ガス導入管、ガス放棄管、温度計、冷却(加熱)浴を備えた200mlステンレス製オートクレーブ装置の容器内に窒素雰囲気下、4−メチルナフタレン−1−カルボン酸10g(0.054モル)を仕込み、密閉し、−50℃に冷却した。ガス導入管より無水フッ化水素50g、次いで四フッ化硫黄23g(0.21モル)を仕込み、密閉した。攪拌下、液温を80℃まで加熱し、さらに約80℃で5時間攪拌を続けた。反応終了後、30℃前後で、ガス成分及び無水フッ化水素をアルカリスクラバーへと放棄し、さらに窒素ガスで容器内を十分に置換した。容器内のオイル状物をクロロホルム100mlで抽出し、飽和炭酸カリウム水溶液100mlで洗浄した。有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムを濾別後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して1−メチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを淡褐色オイル状物として得た。LC純度98%、収量7.8g(収率69.1%)であった。
【0027】
生成物の構造は核磁気共鳴分析等で確認した。核磁気共鳴分析〔VARIAN社製:Gemini 200〕の結果は以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
δ 8.22ppm(m,1H,ArH)
8.10ppm(m,1H,ArH)
7.77ppm(d,J=7.52Hz,1H,ArH)
7.63ppm(m,2H,ArH)
7.35ppm(d,J=7.52Hz,1H,ArH)
2.75ppm(s,3H,ArCH 3)
19F−NMR(溶媒:CDCl3,標準物質:CFCl3)
δ −59.10ppm(s,3F,CF 3)
1−ブロモメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンの製造
実施例3
加熱浴、温度計及び冷却凝縮管を備えた200mlガラス製フラスコに窒素雰囲気下、1−メチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレン5g(0.024モル)とベンゼン50mlとN−ブロモコハク酸イミド4.36g(0.025モル)、及び過酸化ベンゾイル0.23g(0.95ミリモル)とを仕込み、攪拌しながら昇温して1時間加熱還流した。反応終了後、反応液を5℃以下まで冷却し、コハク酸イミドを濾別した。濾液は5%水酸化ナトリウム水溶液50mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムを濾別後、ベンゼンを減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して1−ブロモメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを淡黄色オイル状物として得た。LC純度99%、収量6.2g(収率90.2%)であった。
【0028】
生成物の構造は核磁気共鳴分析等で確認した。核磁気共鳴分析〔VARIAN社製:Gemini 200〕の結果は以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
δ 8.26ppm(m,2H,ArH)
7.9〜7.5ppm(m,4H,ArH)
4.93ppm(s,2H,ArCH 2)
19F−NMR(溶媒:CDCl3,標準物質:CFCl3)
δ −59.34ppm(s,3F,CF 3)
1−シアノメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンの製造
実施例4
加熱浴、温度計及び圧力平衡管付き滴下ロートを備えた200mlガラス製フラスコに窒素雰囲気下、ジメチルスルホキシド50mlとシアン化ナトリウム1g(0.020モル)とを仕込み、約70℃に加熱して均一溶液とした。室温まで冷却後、攪拌下、予め1−ブロモメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレン3g(0.010モル)をジメチルスルホキシド10mlに溶解しておいた溶液を滴下ロートより全量速やかに添加した。有機相を分取し、水相はベンゼン(30ml×3回)で抽出した。分取した有機相と抽出液とを混合し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、硫酸マグネシウムを濾別した。溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して1−シアノモメチル−4−(トリフルオロメチル)ナフタレンを淡黄色固体として得た。LC純度99%、収量2.4g(収率71.5%)であった。
【0029】
生成物の構造は核磁気共鳴分析等で確認した。核磁気共鳴分析〔VARIAN社製:Gemini 200〕の結果は以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
δ 8.34〜8.22ppm(m,1H,ArH)
7.97ppm(dd,J=3.18,6.74Hz,1H,ArH)
7.89ppm(d,J=7.54Hz,1H,ArH)
7.78〜7.64ppm(m、3H,ArH)
4.21ppm(s,2H,ArCH 2)
19F−NMR(溶媒:CDCl3,標準物質:CFCl3)
δ −59.44ppm(s,3F,CF 3)
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