JP4797865B2 - 光学フィルムの製造方法および光学フィルム - Google Patents

光学フィルムの製造方法および光学フィルム Download PDF

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Description

本発明は、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を開環(共)重合して得られる構造単位を含む環状オレフィン系重合体からなり、表面平滑性に優れる光学フィルム、およびその製造方法に関する。
環状オレフィン系開環(共)重合体は、主鎖構造の剛直性に起因してガラス転移温度が高く、主鎖構造に嵩高い基が存在するために非晶性で光線透過率が高く、しかも屈折の異方性が小さいことにより低複屈折性を示すなどの特長を有しており、耐熱性、透明性、光学特性に優れた透明熱可塑性樹脂として注目されている。このような環状オレフィン系開環(共)重合体としては、例えば特許文献1〜6に記載のものなどが挙げられる。
近年、上記の特徴を利用して、例えば光ディスク、光学レンズ、光ファイバーなどの光学材料、光半導体封止などの封止材料などの分野において、環状オレフィン系開環(共)重合体を応用することが検討されている。また、フィルムまたはシート(以下、シートも含めてフィルムという。)に応用し、従来の光学用フィルムの問題点を改良する試みもなされている。
すなわち、従来から光学用フィルムとして使用されているポリカーボネート、ポリエステルあるいはトリアセチルアセテート等のフィルムは、光弾性係数が大きいために微小な応力変化により位相差が発現したり変化したりする問題や、耐熱性や吸水変形等の問題があるため、これらの問題を解決するものとして、環状オレフィン系開環(共)重合体からなるフィルムが光学用の各種フィルムとして提案されている。このような用途としては、位相差フィルム、偏光板の保護フィルム、液晶表示素子用基板などが挙げられる。
ところで、近年、液晶表示素子(LCD)の大型化や高機能化等に伴い、LCDに用いる位相差板に対する要求特性も高度化し、例えば、LCDの大画面化や軽量化に対しては位相差の均一性や光軸ぶれのないことがより高いレベル求められ、LCDの視野角向上に対しては厚み方向での位相差の制御などが求められるようになってきている。そこで、これらの要求に対応するために、種々の環状オレフィン系単量体の開環単独重合体(ホモポリマー)や開環共重合体が位相差板の材料として提案されている。
しかしながら、単独重合体の場合には、用いる環状オレフィン系単量体の特性により得られる重合体の特性が一義的に決定されてしまい、様々な要求特性全てに対応するのには限界がある。
一方、共重合体の場合には、共重合体のガラス転移温度(以下、Tgともいう)付近で延伸すると、延伸後のフィルムが白濁したり、位相差の均一性が低下したりするなどの重大な問題が発生することがある。もちろん、これらの問題はフィルム延伸温度を高くして延伸することにより回避することは可能であるが、高温で延伸すると位相差の発現性が低下するため所望の位相差値を得るための延伸倍率が高くなる、あるいはフィルム厚を厚くする必要があるなど位相差値制御の上で問題があった。
このため、耐熱性、透明性などの環状オレフィン系樹脂の優れた特性を有し、かつTg付近などの比較的低温でフィルム成形あるいはフィルムの延伸を行った場合にも、白濁などの不具合を生じず、位相差板などの用途に好適な樹脂が強く望まれていた。
このような状況において、本願出願人は、極性基および炭化水素基を有する環状オレフィンと、置換基を有してもよいトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(ジヒ
ドロジシクロペンタジエン)と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどの極性基を有さない環状オレフィンとから得られる環状オレフィン系開環共重合体が、Tg付近の温度条件で延伸しても白濁等の問題を生じず、フィルムまたはシート、および位相差板の用途に好適であることを見出し、既に提案している(特願2005−213011号)。
しかしながら、ジヒドロジシクロペンタジエン骨格を有する環状オレフィンを、開環(共)重合して得られる重合体を溶液流延法で成形する場合には、ゲルを生じやすく、得られるフィルムなどの成形体が表面性状に劣るものとなるという問題があった。
このため、前記のような重合体からなり、表面平滑性に優れた光学フィルム、ならびに、前記のような重合体を溶液流延法で製膜する場合にも、ゲルの影響なく表面平滑性に優れたフィルムが得られるフィルムの製造方法の出現が強く望まれていた。
特開平1−132625号公報 特開平1−132626号公報 特開昭63−218726号公報 特開平2−133413号公報 特開昭61−120816号公報 特開昭61−115912号公報
本発明は、置換基を有してもよいトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンか
ら導かれた構造単位を含む環状オレフィン系開環(共)重合体からなり、表面平滑性に優れた光学フィルム、ならびに、前記開環(共)重合体を溶液流延法で製膜する場合にも、ゲルの影響なく表面平滑性に優れたフィルムが得られるフィルムの製造方法を提供することを課題としている。
本発明の光学フィルムの製造方法は、
下記式(1)で表される構造単位(1)を有する環状オレフィン系重合体を、1気圧における沸点が30℃以上50℃以下である溶媒に溶解し、当該溶媒の沸点−30℃以上沸点以下の温度条件で0.1μm〜100μmのフィルターを用いて濾過する工程と、
得られた濾液を用いて、35℃未満でありかつ濾過温度よりも5℃以上低い温度条件で製膜する工程と
を有することを特徴としている。
Figure 0004797865
(式(1)中、Xは独立に式:−CH=CH−で表される基又は式:−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R6は各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。)
本発明の光学フィルムの製造方法では、製膜を溶液流延法により行うことが好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法では、JIS-B0601:2001の記載に準拠して求められるフィルムの二乗平均平方根粗さRqの値が2以下であるフィルムを得ることが好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法は、さらに延伸する工程を有することが好ましい。
本発明の光学フィルムは、前記式(1)で表される構造単位(1)を有する環状オレフィン系重合体からなり、JIS-B0601:2001の記載に準拠して求められるフィルムの二乗平均平方根粗さRqの値が2以下であることを特徴としている。
また本発明の光学フィルムは、前記式(1)で表される構造単位(1)を有する環状オレフィン系重合体からなる未延伸のフィルムを延伸して得られ、JIS-B0601:2001の記載に準拠して求められるフィルムの二乗平均平方根粗さRqの値が0.3以下であることを特徴としている。
このような本発明の光学フィルムは、前記未延伸のフィルムの、JIS-B0601:2001の記載に準拠して求められるフィルムの二乗平均平方根粗さRqの値が2以下のフィルムであることが好ましい。
本発明の光学フィルムは、環状オレフィン系重合体が、前記式(1)で表される構造単位(1)とともに、下記式(2)で表され、式(2)中のR7〜R10の少なくとも一つが
極性基であり、かつその他のR7〜R10の少なくとも一つが炭素原子数1〜10の炭化水
素基である構造単位(2A)および/または下記式(2)で表され、R7〜R10がいずれ
も極性基ではない構造単位(2B)を有することが好ましい。
Figure 0004797865
(式(2)中、Xは独立に式:−CH=CH−で表される基又は式:−CH2CH2−で表される基であり、R7〜R10は各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ
若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。)
本発明によれば、ゲル化しやすく従来表面平滑性に優れたフィルムの製造が困難であった、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンまたはその誘導体から導かれた構
造単位を含む環状オレフィン系開環(共)重合体を用いて、優れた表面性状を有する光学
フィルムおよびその製造方法を提供することができる。従来、溶液流延法で製膜するために用いられる重合体の濾過処理は、用いる溶媒の沸点が低いため、例えば溶媒の沸点−35℃以下のような低温で行われていた。本発明は、濾過処理温度を従来の温度よりも高温で行って濾過性能を改良し、かつ、製膜処理を低温で行うことにより溶媒の蒸発速度を抑え、優れた表面性状を有するフィルムが得られるという効果を有するものである。本発明に係る光学フィルムは、表面平滑性に優れており、透明性などの光学特性に優れるとともに、耐熱性、耐薬品性等に優れ、ガラス転移温度付近の比較的低温でも、白濁などの不具合を生じることなく延伸することができ、位相差フィルムを形成した場合には均一な位相差を示し光軸ブレが少ない。
以下、本発明について具体的に説明する。
環状オレフィン系重合体
本発明に係る光学フィルムを構成する環状オレフィン系重合体は、下記式(1)で表される構造単位(1)を有する。なお、本明細書において、重合体とは単独重合体および共重合体を表す。
Figure 0004797865
(式(1)中、Xは独立に式:−CH=CH−で表される基又は式:−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R6は各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。)
このような構造単位(1)は、開環重合により下記式(1m)で表される環状オレフィン系単量体(1m)から誘導される。
Figure 0004797865
(式(1m)中において、R1〜R6は、前記式(1)で定義のとおり。)
式(1)あるいは(1m)において、極性基としては、たとえば、水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基、およびカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基などが挙げられ;カルボニルオキシ基としては、例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基などのアルキルカルボニルオキシ基、およびベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基などが挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基などが挙げられ;トリオルガノシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられ;アミノ基としては第1級アミノ基が挙げられ、アルコキシシリル基としては、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基などのアルケニル基などが挙げられる。
また、置換または非置換の炭化水素基は直接環構造に結合していてもよいし、あるいは連結基(linkage)を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば炭素原子数1〜
10の2価の炭化水素基(例えば、−(CH2m−(式中、mは1〜10の整数)で表されるアルキレン基);酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基(例えば、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、スルホン基(−SO2−)、エー
テル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−N
HCO−,−CONH−)、シロキサン結合(−OSi(R2)−(式中、Rはメチル、エ
チルなどのアルキル基))などが挙げられ、これらの複数を含む連結基であってもよい。
なお、これらの基の例示は、後述する式(2)、(2A−m)および(2B−m)に関しても同様である。
このような環状オレフィン系単量体(1m)としては、具体的には、例えば
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−イソプロピル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,7−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メチル−8−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェノキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−メチル−7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エ
ン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エ
ン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,7−ジフルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジフルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
等を挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。
また、構造単位(1)は、開環重合および五員環の水素添加により、下記式(1m’)で表される環状オレフィン系単量体(1m’)から誘導されてもよい。
Figure 0004797865
(式(1m’)中、R1、R2、R3およびR5は、前記式(1)において定義のとおり。)
このような環状オレフィン系単量体(1m’)としては、具体的には、例えば
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(DCP)、
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
9−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン
7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−フェノキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−メチル−7−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7
−ジエン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7,8−ジフルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン
などが挙げられるが、これらの例示に限定されるものではない。本発明では、このうち、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエンが特に好ましく用いられる。
本発明で用いられる環状オレフィン系重合体は、前記式(1)で表される構造単位(1)のみから構成されていてもよいが、構造単位(1)とともにその他の構造単位を有することが好ましい。その他の構造単位としては、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系単量体を開環共重合して導かれる構造単位が好ましいものとして挙げられ、また、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロオレフィン系
単量体を開環共重合して導かれる構造単位、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖にオレフィン性不飽和結合を有する不飽和炭化水素系ポリマーなどを共重合して導かれる構造単位が挙げられる。本発明で用いられる環状オレフィン系重合体は、好ましくは、構造単位(1)と、環状オレフィン系単量体を開環共重合して導かれる構造単位のみを有する共重合体であることが望ましい。
本発明で用いられる環状オレフィン系重合体は、好ましくは、前記式(1)で表される構造単位(1)とともに、下記式(2)で表され、式(2)中のR7〜R10の少なくとも
一つが極性基であり、かつその他のR7〜R10の少なくとも一つが炭素原子数1〜10の
炭化水素基である構造単位(2A)および/または下記式(2)で表され、R7〜R10
いずれも極性基ではない構造単位(2B)を有することが望ましい。さらに、本発明で用いられる環状オレフィン系重合体は、構造単位(1)と、構造単位(2A)と、構造単位(2B)とを有することが特に好ましい。
Figure 0004797865
(式(2)中、Xは独立に式:−CH=CH−で表される基又は式:−CH2CH2−で表される基であり、R7〜R10は各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ
若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。)。
構造単位(2A)は、下記式(2m)で表され、式(2m)中のR7〜R10の少なくと
も一つが極性基であり、かつその他のR7〜R10の少なくとも一つが炭素原子数1〜10
の炭化水素基である環状オレフィン系単量体(2A−m)から、構造単位(2B)は、下記式(2m)で表され、R7〜R10がいずれも極性基ではない構造単位(2B−m)から
、それぞれ開環共重合により誘導される。
Figure 0004797865
(式(2m)中、R7〜R9は前記式(2)で定義のとおり。)
このような環状オレフィン系単量体(2A−m)としては、具体的には、例えば、
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−6−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−6−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
ドデカ−3−エン
等を挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。
ここで、構造単位(2A)および環状オレフィン系単量体(2A−m)は、その極性基が下記式(3)で表される基であることが好ましい。すなわち、式(2)あるいは(2m)中のR7〜R10の少なくとも一つが、下記式(3)で表される基であることが好ましい
−(CH2pCOOR’ …(3)
(式(3)中、pは0または1〜5の整数であり、R’は炭素数1〜15の炭化水素基である。)
上記式(3)において、pの値が小さいものほど、また、R’が炭素数の小さいほど、得られる共重合体のガラス転移温度が高くなり耐熱性が向上するので好ましい。すなわち、pは通常0または1〜5の整数であるが、好ましくは0または1であり、また、R’は通常炭素数1〜15の炭化水素基であるが、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であるのが望ましい。
さらに、上記式(2)において、上記一般式(3)で表される極性基が結合した炭素原子にさらにアルキル基が結合している構造単位(2A)を有する場合には、共重合体の耐熱性と吸水(湿)性がバランスに優れるため好ましい。当該アルキル基の炭素数は1〜5
であることが好ましく、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
また、環状オレフィン系単量体(2B−m)としては、具体的には、例えば、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプト−4−エン、
5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
などが挙げられるが、これらの例示に限定されるものではない。これらのうちビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンが特に好ましく用いられる。
本発明で用いられる環状オレフィン系重合体は、構造単位(1)を全構造単位中(5)モル%以上、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜40モル%の量で含有することが望ましい。構造単位(1)を30モル%以上含有する環状オレフィン系重合体は、ゲル化を生じやすく、従来法では成形体の表面性状などに悪影響を及ぼす場合があったが、本発明によれば構造単位(1)含有量が比較的多いものであってもフィルム原料として用いることができる。本発明で用いられる環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、構造単位(1)の含有量により適宜調節することができる。
本発明で用いられる環状オレフィン系重合体が、構造単位(1)と、構造単位(2A)と、構造単位(2B)とを有する場合には、その含有割合は、全構造単位100モル%中において、構造単位(1)が5〜50モル%、構造単位(2A)が30〜90モル%、構造単位(2B)が1〜30モル%であるのが好ましく、構造単位(1)が10〜40モル%、構造単位(2A)が40〜80モル%、構造単位(2B)が1〜20モル%であるのがより好ましい。ここで構造単位(1)、(2A)、(2B)の合計が100モル%であることが望ましい。
本発明に係る環状オレフィン系重合体は、前記単量体(1m)または(1m’)と、前記単量体(2A−m)および/または前記単量体(2B−m)のみを単量体として用いて開環共重合し、水素添加して得られた重合体であることがより好ましい。
このような単量体の共重合に際しては、用いる各単量体の反応性に留意して重合条件を適宜選択して行うことができる。共重合に際しては、重合系中の単量体組成比が重合初期と後期とで大幅に変化しないことが好ましく、単量体濃度が経時的に変化する場合には、重合を早い段階でストップさせるか、重合系中に濃度の減少した単量体を連続的あるいは間欠的に重合系内に供給して、単量体組成比を一定に保つことが好ましい。このように単量体組成比を制御しながら共重合を行うと、透明性に優れた光学フィルムを形成可能な共重合体を得ることができる。
各環状オレフィン系単量体を開環共重合しただけの開環共重合体は、その分子内にオレフィン性不飽和結合を有しており、耐熱着色などの問題を有しているため、係るオレフィン性不飽和結合は水素添加されることが好ましいが、係る水素添加反応も公知の方法を適用できる。例えば、特開昭63−218726号公報、特開平1−132626号公報、特開平1−240517号公報、特開平2−10221号公報などに記載された触媒や溶媒および温度条件などを適用することで、開環重合反応および水素添加反応を実施することができる。
オレフィン性不飽和結合の水素添加率としては、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であることが望ましい。なお、本発明における水素添加反応とは、上記の通り、分子内のオレフィン性不飽和結合に対するものであ
り、本発明で用いる環状オレフィン系重合体が芳香族基を有する場合、係る芳香族基は屈折率など光学的な特性や耐熱性において有利に作用することもあるので、必ずしも水素添加される必要はない。
本発明で用いる環状オレフィン系重合体の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常8000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは10,000〜100,000であり、また、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、通常10,000〜3,000,000、好ましくは20,000〜1,000,000、さらに好ましくは30,000〜500,000の範囲であるのが望ましい。
分子量が過小である場合には、得られるフィルムの強度が低いものとなることがある。一方、分子量が過大である場合には、溶液粘度が高くなりすぎて本発明の共重合体の生産性や加工性が悪化することがある。
また、本発明で用いる環状オレフィン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.5〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2.2〜5であるのが望ましい。
本発明で用いる環状オレフィン系重合体は、23℃における飽和吸水率が、通常0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.7重量%、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%であるのが望ましい。本発明で用いる環状オレフィン系重合体の飽和吸水率が上記の範囲内にあれは、得られるフィルムの各種の光学特性、透明性、位相差および位相差の均一性、あるいは寸法精度が、高温多湿のような条件下でも安定に維持されると共に、他の材料との密着性・接着性に優れるため、使用中に剥離などが発生することがなく、また、酸化防止剤等の添加剤との相溶性も良好であるため、添加剤の種類および添加量の選択の自由度が大きくなる。
この飽和吸水率が0.01重量%未満である場合には、得られるフィルムは、他材料との密着性や接着性が低いものとなり、使用中に剥離を生じやすくなり、また、酸化防止剤等の添加剤の添加量が制約されることがある。一方、この飽和吸水率が1重量%を超える場合には、吸水により光学特性の変化や寸法変化を起こしやすくなる。
ここで、飽和吸水率は、ASTM D570に準拠し、23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる値である。
本発明で用いる環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、通常110〜250℃であり、好ましくは115〜220℃、さらに好ましくは120〜200℃である。Tgが110℃以上である場合には、優れた耐熱性を有するため好ましい。Tgが110℃未満である場合には、熱変形温度が低くなるため、耐熱性に問題が生じるおそれがあり、また、得られるフィルムにおける温度による光学特性の変化が大きくなるという問題が生じることがある。一方、Tgが250℃を超える場合には、延伸加工する際に加工温度が高くなりすぎて本発明の共重合体が熱劣化する場合がある。
また、本発明で用いる環状オレフィン系重合体は、DSCの微分示差走査熱量曲線が単ピークを示し、かつ、該ピークの立ち上がり温度幅であるTg分布が40℃以下、好ましくは35℃以下という狭い分布を有していることが好ましい。なお、本発明において用いられるDSCの微分示差走査熱量曲線は、昇温速度20℃/分、窒素雰囲気にて測定したに際得られるものである。また、ピークの立ち上がり温度幅とは、ベースラインからピークが立ち上がる変曲点間の幅である。さらに、環状オレフィン系開環共重合体のTgとは、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)及び最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA
点を起点とする接線との交点として求められる。
<添加剤>
本発明で用いる環状オレフィン系重合体には、本発明の効果を損なわない範囲において、耐熱劣化性や耐光性の改良のために公知の酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤を添加して用いることができる。例えば、下記フェノール系化合物、チオール系化合物、スルフィド系化合物、ジスルフィド系化合物、リン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を、本発明で用いる重合体100重量部に対して0.01〜10重量部添加することで、耐熱劣化性を向上させることができる。
・フェノール系化合物
フェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ―t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)―6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕―1,1−ジメチルエチル]―2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、などを挙げることができる。好ましくは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられ、特に好ましくは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などを挙げることができる。
・チオール系化合物
チオール系化合物としては、t−ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1−メチル−2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5,6−ジメチルベンズイミダゾール、2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、1−メチル−2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1,3−ジメチルベンズイミダゾール、メルカプト酢酸などを挙げることができる。
・スルフィド系化合物
スルフィド系化合物としては、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール、ジラウリル3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3'−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテ
トラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル3,3'−チオジプロピオ
ネートなどを挙げることができる。
・ジスルフィド系化合物
ジスルフィド系化合物としては、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド 、ビス(
2−クロロフェニル)ジスルフィド 、ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド 、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド 、ビス(2−ニトロフェニル
)ジスルフィド 、2,2'−ジチオジ安息香酸エチル、ビス(4−アセチルフェニル)ジスルフィド 、ビス(4−カルバモイルフェニル)ジスルフィド、1,1'−ジナフチルジスルフィド 、2,2'−ジナフチルジスルフィド 、1,2'−ジナフチルジスルフィド
、2,2'−ビス(1 −クロロジナフチル)ジスルフィド 、1,1'−ビス(2 −クロ
ロナフチル)ジスルフィド 、2,2'−ビス(1 −シアノナフチル)ジスルフィド 、2
,2'−ビス(1−アセチルナフチル)ジスルフィド、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオン酸エステルなどを挙げることができる。
・リン系化合物
リン系化合物としては、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどを挙げることができる。
さらに、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどベンゾフェノン系化合物、N−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、あるいは2−エチルオキサニリド、2−エチル−2’−エトキシオキサニリドなどのオキサニリド系化合物を、本発明の共重合体100重量部に対して、0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部添加することにより、耐光性を向上させることができる。
なお、これらの化合物は、一種単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
また、本発明で用いる環状オレフィン系重合体には、目的とする光学フィルムの特性に応じて、その他の添加剤を添加してもよい。たとえば、着色されたフィルムを得ることを目的として、染料、顔料等の着色剤を添加してもよく、得られるフィルムの平滑性を向上させることを特徴としてレベリング剤を添加してもよい。レベリング剤としては、たとえば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
なお本発明において、環状オレフィン系重合体に添加剤を添加して用いる場合、係る添加剤は、溶媒に溶解する前に添加してもよく、溶媒に溶解する段階または溶解した後で、濾過する前に添加してもよく、また、濾過後製膜前に添加してもよい。
フィルムの製造
<濾液の調製>
・溶媒
本発明では、上述のような環状オレフィン系重合体を、溶媒に溶解して用いる。溶媒としては、本発明で用いる環状オレフィン系重合体を溶解しうる溶媒であって、比較的高温の条件で溶液流延法での製膜が可能であるという観点から、1気圧における沸点が30℃以上50℃以下のものが用いられる。また、本発明で用いられる溶媒は、20℃での誘電率が2.0〜12のものが好ましく、特に好ましくは2.3〜9.1のものが用いられる。
このような溶媒としては、具体的には、ペンタン(沸点=36.1℃、誘電率=1.84)、ペンテン(沸点=35〜37℃、誘電率=2.01)などの炭化水素溶媒、塩化メ
チレン(沸点=39.8℃、誘電率=9.08)等のハロゲン含有溶媒、エチルエーテル(沸点=34.4℃、誘電率=4.34)等のエーテル系溶媒などを挙げることができる。
本発明ではこのうち、塩化メチレンが特に好ましく用いられる。
これらの溶媒は単独で用いても組み合わせて混合溶媒として用いてもよい。
また、本発明で用いる溶媒は、SP値(溶解度パラメーター)が、通常10〜30(MPa1/2)、好ましくは10〜25(MPa1/2)、さらに好ましくは15〜25(MPa1/2)、特に好ましくは15〜20(MPa1/2)の範囲であることが望ましい。溶媒が混合溶媒である場合には、混合溶媒のSP値がこのような範囲を満たせばよく、個々の溶媒成分がこのような範囲を満たさないものであっても混合溶媒の成分として用いることができる。
本発明において、溶媒の使用量は、フィルムの製膜に適切な量であるのが望ましく、本発明で用いる環状オレフィン系重合体の濃度が、通常0.1〜70重量%、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは10〜35重量%となる量であるのが望ましい。重合体濃度が過小である場合には、所要の厚みを有するフィルムを得ることが困難となる他、乾燥により溶媒を除去する際に当該溶媒の蒸発に伴って発泡等が生じやすく、表面平滑性が良好なフィルムを得ることが困難となることがある。一方、この濃度が過大である場合には、フィルム形成液である濾液の粘度が高くなりすぎるため、厚みや表面状態が均一なフィルムを得ることが困難となることがある。
また、溶媒の使用量は、濾液の粘度が、室温で、通常1〜1,000,000(mPa・s)、好ましくは10〜100,000(mPa・s)、さらに好ましくは100〜80,000(mPa・s)、特に好ましくは1000〜60,000(mPa・s)となる量であるのが望ましい。
・濾過
本発明では、溶媒に溶解した環状オレフィン系重合体を、濾過する工程により、部分的にゲルを含有することのない均一な濾液を調製する。
環状オレフィン系重合体を溶媒に溶解した溶液の濾過は、重合体および溶媒の種類などにもよるが、溶液温度が溶媒の沸点−30℃以上溶媒の沸点以下、好ましくは溶媒の沸点−25℃以上溶媒の沸点−10℃以下の温度条件で、0.1〜100μm、好ましくは0.1〜50μmのフィルターを用いて濾過することが望ましい。濾過温度が溶媒の沸点近傍の温度である場合、濾過は加圧下で行われてもよい。
異物の濾過に使用するフィルターに関しては、リーフディスクタイプ、キャンドルフィルタータイプ、リーフタイプ、スクリーンメッシュなどが挙げられるが、比較的滞留時間分布が小さく、ろ過面積を大きくすることが可能な、リーフディスクタイプのものが好ましい。フィルターエレメントとしては、金属繊維焼結タイプ、金属粉末焼結タイプ、金属繊維/粉末積層タイプなどが挙げられる。
フィルターのセンターポールの形状には、外流タイプ、六角柱内部流動タイプ、円柱内部流動タイプなどが挙げられるが、滞留部が小さい形状であれば、いずれの形状を選択することも可能であるが、好ましくは、外流タイプである。
<製膜>
本発明では、上述の濾過工程で得られた濾液を用いて、35℃未満であり、かつ、濾過温度よりも5℃以上低い温度(「濾過温度−5℃」以下の温度)で製膜を行う。
製膜は、溶液流延法により行うのが好ましい。
製膜に用いるキャリヤーとしては、金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等よりなるポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン製ベルトなどが挙げられる。
また、キャリヤーとしてポリエステルフィルムを使用する場合には、表面処理されたフィルムを使用してもよい。ここで、表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、例えばアクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーティングまたはラミネートすることにより、これらの樹脂よりなる層を形成する方法、あるいは、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法等が挙げられる。
キャリヤーにフィルム形成液である濾液を塗布する方法としては、ダイスやコーターを使用する方法、スプレー法、刷毛塗り法、ロールコート法、スピンコート法、ディッピング法などを利用することができる。また、濾液を繰り返し塗布することにより、得られるフィルムの厚みを制御することもできる。
本発明では、製膜時、すなわちキャリヤー上に濾液を塗布する際の濾液の温度を、35℃未満でありかつ濾過温度以下である温度となるよう、温度条件を制御することが肝要である。このような温度条件で製膜を行うことにより、表面平滑性に優れた光学フィルムを得ることができる。
<乾燥>
上述のようにして製膜されたフィルムは、通常乾燥する工程を経て光学フィルムとなる。
本発明において、キャリヤーに塗布された濾液中の溶剤を除去するための具体的な方法は、特に限定されず、一般的に用いられる乾燥処理法、例えば多数のローラーによって乾燥炉中を通過させる方法を利用することができるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴って気泡が発生すると、得られるフィルムの特性を著しく低下させるので、これを回避するために、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程における温度あるいは風量を制御することが好ましい。
このようにして得られるフィルム中の残留溶媒量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。ここで、フィルム中の残留溶媒量が10重量%を超える場合には、当該フィルムを実際に使用したときに経時による寸法変化が大きくなり好ましくない。また、残留溶媒によりガラス転移温度が低くなり、耐熱性も低下することため好ましくない。
なお、後述する延伸工程を好適に行うためには、フィルム中の残留溶媒量を上記範囲内で適宜調節することが必要となる場合がある。具体的には、延伸配向処理によってフィルムに位相差を安定して均一に発現させるために、フィルム中の残留溶媒量を通常10〜0.1重量%、好ましくは5〜0.1重量%、さらに好ましくは1〜0.1重量%にすることがある。フィルム中に微量の溶媒を残留させることにより、延伸配向処理が容易になる、あるいは位相差の制御が容易になる場合がある。
溶液流延法で得た本発明の光学フィルムは、その厚みが、通常0.1〜3,000μm、好ましくは0.1〜1,000μm、さらに好ましくは1〜500μm、最も好ましくは5〜300μmである。この厚みが過小である場合には、当該フィルムを実際上取り扱うことが困難となる。一方、この厚みが過大である場合には、ロール状に巻き取ることが困難になる。
また、溶液流延法で得た本発明に係る光学フィルムの厚み分布は、平均値に対して通常
±20%以内、好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動率は、通常10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
このようにして得られた本発明に係る光学フィルムは、JIS−B0601:2001の記載に準拠して求められるフィルムの二乗平均平方根粗さRqの値が2以下、好ましくは0.05〜1.0の範囲である。
ここで、二乗平均平方根粗さRqは、フィルムの肉厚曲線を基に輪郭曲線を求め、求めた輪郭曲線の数値微分(ラグランジェ多項式微分)を二階行い、微分曲線から算出された値であって、下記式により求められる。
Figure 0004797865
(上記式中、Rqは二乗平均平方根粗さ、lは輪郭曲線のX軸方向長さである基準長さ、Z(x)は任意の位置xにおける輪郭曲線の高さを表す。)
なお、本発明において、輪郭曲線は、JIS−B0601:2001に記載されているとおり移動ボックス関数を用いて求めており、該移動ボックス関数のサンプリング数nはサンプリング長10cmを基にし、任意段数mは10段として計算している。移動ボックス関数による輪郭曲線の求め方は、「精密工学会誌,Vol.63,No.3(1997)pp.378-382」に準じ算出し、数値微分(ラグランジェ多項式微分)は3点公式を使用した。
このようにして得られる本発明の光学フィルムは、表面粗さが小さく、上述のようなRq値を満たし、光学的なムラが少なく、そのままで各種保護フィルムなどの光学用途に好適に使用することができ、また、さらに延伸して用いることもできる。このような本発明に係る光学フィルムを用いることにより、延伸配向処理を行う際に、位相差ムラの発生を防止することができる。
<延伸>
上述のようにして得られた本発明に係る未延伸の光学フィルムは、延伸加工(延伸配向処理)を施すことにより、フィルムを形成する本発明の共重合体の分子鎖が一定の方向に規則的に配向し、透過光に位相差を与える機能を有する光学フィルム(位相差フィルム)とすることができる。
ここで、「規則的に配向」とは、未延伸のフィルムではフィルム中の高分子化合物(重合体)の分子鎖は特定な方向を向かずにランダムな状態であるのに対し、高分子化合物の分子鎖がフィルムの平面の一軸方向または二軸方向あるいは厚み方向に規則的に配向していることを意味する。高分子化合物の配向の規則性の程度はさまざまであり、延伸条件により制御することができる。
延伸加工法としては、具体的には、公知の一軸延伸法または二軸延伸法を挙げることができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、円周の異なる二組のロールを利用する縦一軸延伸法、あるいは横一軸と縦一軸を組み合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法等を用いることができる。
一軸延伸法を利用する場合には、延伸速度は通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
二軸延伸法としては、同時に互いに交わる2方向に延伸を行う方法や一軸延伸した後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸を行う方法を利用することができる。これらの方法において、2つの延伸軸の交わり角度は、所望する特性に応じて決定されるため特に限定はされないが、通常120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであっても、異なっていてもよく、通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
延伸加工における加工温度は、特に限定されるものではないが、フィルムを構成する環状オレフィン系重合体のガラス転移温度をTgとしたとき、通常Tg−5℃〜Tg+20℃、好ましくはTg〜Tg+10℃の範囲であるのが望ましい。処理温度を上記の範囲内とすることにより、高い位相差と位相差ムラの発生を抑制することが可能となり、また、屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
なお、係る温度範囲で延伸加工しても、本発明では、特定の環状オレフィン系重合体を用いているため、得られる光学フィルムに白濁等の問題は生じない。これは、本発明で用いる環状オレフィン系重合体はそのTg分布が比較的小さいため、Tg近傍に加熱することで実質的に均一に可塑化するためと考えられる。逆に、Tg分布が大きな環状オレフィン系開環共重合体の場合、Tg近傍に加熱するだけでは均一に可塑化せず部分的に未可塑状態の部分が存在するために係る部分が延伸加工時に白濁等の原因となると考えられる。
延伸倍率は、所望する位相差などの特性に応じて決定されるため特に限定はされないが、通常1.01〜10倍、好ましくは1.03〜5倍、さらに好ましくは1.03〜3倍である。
本発明では、特定の環状オレフィン系重合体を用いているため、そのTg近傍で延伸加工できるため低倍率の延伸でもフィルムに高い応力をかけることが可能であり、したがって高い位相差を有する光学フィルムを製造することができる。また、上記のように比較的低い延伸倍率であると、透明性、光軸のずれのない位相差フィルムを容易に製造することができる。なお、延伸倍率が過大である場合には、位相差や光軸の制御が困難となることがある。
延伸したフィルムは、そのまま室温で冷却してもよいが、Tg−100℃〜Tg程度の温度雰囲気下に少なくとも10秒間以上、好ましくは30秒間〜60分間、さらに好ましくは1分間〜60分間保持してヒートセットし、その後、室温まで冷却することも好ましく、これにより、透過光の位相差の経時変化が少なく安定した位相差特性を有する光学フィルムが得られる。
上記のようにして得られる、延伸した本発明の光学フィルムは、延伸により分子が配向していることにより、透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、延伸倍率あるいは延伸前のフィルムの厚み等を調整することにより制御することができる。例えば、延伸倍率については、延伸前の厚みが同じフィルムであっても、延伸倍率が大きいフィルムほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差を透過光に与えるフィルムを得ることができる。また、延伸前のフィルムの厚みについては、延伸倍率が同じであっても、延伸前のフィルムの厚みが大きいほど透過光に与える位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸前のフィルムの厚み
を変更することによって所望の位相差を透過光に与える光学フィルムを得ることができる。
上記のようにして得られる延伸した本発明の光学フィルムにおいて、透過光に与える位相差の値は、その用途により決定されるものであり一義的に決定されるものではないが、液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはレーザー光学系の波長板に使用する場合には、通常1〜10,000nm、好ましくは10〜2,000nm、さらに好ましくは15〜1,000nmであることが望ましい。
また、フィルムを透過した光の位相差は、その均一性が高いことが好ましく、具体的には、光線波長550nmにおけるバラツキが通常±20%以下であり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは±5%以下であるのが望ましい。位相差のバラツキが±20%の範囲を超える場合には、液晶表示素子等に使用したときに、色ムラ等が発生し、ディスプレイ本体の性能が低下するという問題が生じることがある。同様に、光軸のバラツキは、通常±2.0度以下であり、好ましくは±1.0度以下、さらに好ましくは±0.5度以下であるのが望ましい。
本発明に係る延伸した光学フィルムは、位相差フィルムとして、単独でまたは2枚以上を積層して或いは透明基板等に貼り合わせて用いることができる。また、その他のフィルム、シート、基板に積層して使用することもできる。
フィルム等を積層する場合には、粘着剤や接着剤を用いることができる。かかる粘着剤、接着剤としては、透明性に優れたものを用いることが好ましく、その具体例としては、天然ゴム、合成ゴム、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリビニルエーテル、アクリル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂等の粘着剤や、水酸基、アミノ基等の官能基を有する前記樹脂等にイソシアナト基含有化合物などの硬化剤を添加した硬化型粘着剤、ポリウレタン系のドライラミネート用接着剤、合成ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
また、上記の位相差板には、その他のフィルム、シート、基板などとの積層の作業性を向上させるために、予め、粘着剤層または接着剤層を積層することができる。粘着剤層または接着剤層を積層する場合において、粘着剤や接着剤としては、前述のような粘着剤あるいは接着剤を用いることができる。
本発明に係る、延伸して得られた光学フィルムは、JIS−B0601:2001の記載に準拠して求められるフィルムの二乗平均平方根粗さRqの値が0.3以下、好ましくは0.01〜0.2の範囲であり、表面粗さが非常に小さいものであって光学特性に優れる。
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、特に断りがない限り、部または%は重量基準である。
なお、各種物性は、次のようにして測定あるいは評価した。
ガラス転移温度(Tg
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を用いて、昇温速度を毎分20℃、窒素気流下で測定を行った。Tgは、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)及び最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点と
するベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた。
水素添加率
核磁気共鳴分光計(NMR)はBruker社製AVANCE500を用い、測定溶媒はd−クロロホルムで1H−NMRを測定した。5.1〜5.8ppmのビニレン基、3
.7ppmのメトキシ基、0.6〜2.8ppmの脂肪族プロトンの積分値より、単量体の組成を算出後、水素添加率を算出した。
重量平均分子量
東ソー株式会社製HLC―8020ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、テトラヒドロフラン(THF)溶媒で、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を測定した。Mnは数平均分子量を表す。
残留溶媒量
サンプルをトルエンに溶解し、島津製作所製GC−14Bガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
濾過速度測定
ADVANTEC社製コンパクトカートリッジフィルター:MCP−HX−E10S(平均孔径2.0μm、濾過面積2000cm2)、MCP−JX−E10S(平均孔径1
.0μm、濾過面積2000cm2)、MCS―020−E10SR(平均孔径0.2μ
m、濾過面積1800cm2)各1つをこの順に直列に繋いで、水添後のポリマー溶液を
室温、窒素加圧3.0kgf/cm2で連続的に濾過し、濾過速度の経時変化を測定した
。なお、これらのフィルターは、コンパクトカートリッジ用ハウジング:MTA−2000Tを用いて使用した。
[調製例1]
下記式で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン(DNM)71部、ジシクロペンタジエン(DCP)15部、および、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NB)1部を単量体として用い、分子量調節剤の1−へキセン 18部、およびトルエン 200部とともに、窒素置換した反応容器に仕込んで100℃に加熱した。
Figure 0004797865
これにトリエチルアルミニウム 0.005部、メタノール変性WCl6(無水メタノール:PhPOCl2:WCl6=103:630:427 重量比)0.005部を加えて
1分反応させ、次いで、DCP 10部とNB3部を5分で追加添加して、さらに45分
反応させることにより共重合体を得た。
得られた共重合体の1H−NMR測定チャートを図1に示す。5.8ppmにDCP由
来のビニレンプロトン(Hc)、3.65ppmにDNM由来のメトキシプロトン(He)に、共重合体主鎖の2重結合が5.2〜5.6ppmに観察された。共重合体中のNB含有量は、DCP構造単位(Hbの3倍のプロトン)、DNM構造単位(Heの2/3倍のプロトン)を差し引くことで共重合体中の単量体構造単位を算出した結果、DNM/D
CP/NB=69.77/26.01/4.23(wt%)であった。
次いで、得られた共重合体の溶液をオートクレーブに入れ、さらにトルエンを200部加えた。次に、反応調整剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを1部と水素添加触媒であるRuHCl(CO)[P(C65)]3を0.006部添加し、155℃まで過熱した後、水素ガスを反応器へ投入し、
圧力を10MPaとした。その後、圧力を10MPaに保ったまま、165℃、3時間の反応を行った。反応終了後、トルエン100重量部、蒸留水3重量部、乳酸0.72重量部、過酸化水素0.00214重量部を加え60℃で30分加熱した。その後、メタノール200重量部を加え60℃で30分加熱し、これを25℃まで冷却すると2層に分離した。上澄み液500重量部を除去し、再びトルエン350重量部、水3重量部を加え60℃で30分加熱し、その後メタノール240重量部を加え60℃で30分加熱して25℃まで冷却し、2層に分離した。上澄み液500重量部を除去し、さらにトルエン350重量部、水3重量部を加え60℃で30分加熱し、その後メタノール240重量部を加え60℃で30分加熱して25℃まで冷却し、2層に分離した。最後に上澄み液500重量部を除去後、ポリマー溶液を50℃に加温し2.0μm、1.0μm、0.2μmのそれぞれのフィルターを用いて循環濾過をした。1000h後もフィルターの差圧は一定でフィルター目詰まりは発生しなかった。溶液のメタノールとトルエンとの比率をガスクロにて確認した所、メタノール/トルエン=20/80wt%、混合溶媒の誘電率は8.429(メタノールの誘電率=32.63、トルエンの誘電率=2.379より算出)であった。その後、ポリマー固形分量を55%まで濃縮し、250℃、4torr、滞留時間1時間で脱溶媒処理を行い、10μmのポリマーフィルターを通過させて、共重合体(1)を得た。 得られた共重合体(1)は、重量平均分子量(Mw)=6.10×104、分子
量分布
(Mw/Mn)=3.8、固有粘度(ηinh)=0.52、ガラス転移温度(Tg)=1
31℃であった。また、Tg分布は25℃であった。水素添加された共重合体である、共重合体(1)の1H−NMRチャートを図2に示す。これより共重合体(1)の水素添加
率を求めたところ、オレフィン性不飽和結合は99.9%以上水素添加されていた。
[実施例1]
調製例1で得たペレットを用い、28%−塩化メチレン(沸点39.8℃、誘電率=9.08)溶液を作製した。ポリマー溶液を20℃に加温し2.0μmフィルター単独で循環濾過をした。循環濾過後3h後の2μm以上の異物量はゼロであった。循環濾過1000h後もフィルターの差圧は一定でフィルター目詰まりは発生しなかった。その後、ドープ温度を10℃まで冷却し、フィルターをバイパス後、ペットフィルム上に塗布・乾燥し、40±0.1μmのフィルムを作製した。外観の指標となる原反のRq値は0.09であった。またフィルムの異物は全く観察されなかった。乾燥風と垂直方向に150℃、2.0倍延伸を行った。延伸後フィルムの膜厚27±0.1μm、位相差=275nm±2nm、Rq=0.090であった。延伸後のフィルムの異物は全く観察されなかった。
[比較例1]
実施例1において、濾過温度=10℃で濾過した所、2h後フィルター目詰まりが発生した。フィルター目詰まりが発生したため、フィルターをバイパスさせ、2μm以上の異物量は1200個/gであった。異物が多く、光学フィルムとして使用するには難がある
ものであった。
[比較例2]
実施例1において、塗布温度20℃で塗膜した。外観の指標となる原反のRq値は0.32であった。またフィルムの異物は全く観察されなかった。乾燥風と垂直方向に150℃、2.0倍延伸を行った。延伸後フィルムの膜厚27±0.1μm、位相差=275nm
±2nm、Rq=0.320であった。延伸後のフィルムの異物は全く観察されなかった。延伸後のRq=0.150であった。外観が悪く光学フィルムとして使用するには難があるものであった。
本発明の製造方法で得られる光学フィルムは、表面平滑性に優れ、光学特性および耐熱性に優れ、光学用途全般に好適に用いることができるが、未延伸のフィルムでは各種保護フィルムなどの光学用途に特に好適であり、また、Tg近傍で延伸加工しても白濁等の問題がなく安定して加工できるため、延伸加工して位相差を有する光学フィルムとして好適に用いることができる。本発明に係る光学フィルム、特に延伸してなる位相差を有する光学フィルムは、携帯電話、ディジタル情報端末機、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイなどの各種液晶表示素子や、エレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。
図1は、調製例1で得た共重合体(水素添加前)の1H−NMR測定チャートを示す。 図2は、調製例1で得た水素添加後の共重合体である、共重合体(1)の1H−NMR測定チャートを示す。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表される構造単位(1)を有する環状オレフィン系重合体を、1気圧における沸点が30℃以上50℃以下である溶媒に溶解し、当該溶媒の沸点−25℃以上溶媒の沸点−10℃以下の温度条件で0.1μm〜100μmのフィルターを用いて濾過する工程と、
    得られた濾液を用いて、35℃未満でありかつ濾過温度よりも5℃以上低い温度条件で製膜する工程と
    を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法;
    Figure 0004797865
    (式(1)中、Xは独立に式:−CH=CH−で表される基又は式:−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R6は各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウ若しくはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換又は非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基;または極性基を表す。)。
  2. 製膜を溶液流延法により行うことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. JIS-B0601:2001の記載に準拠して求められるフィルムの二乗平均平方根粗さRqの値が2以下であるフィルムを得ることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの
    製造方法。
  4. さらに延伸する工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
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