JP4797221B2 - 光電子集積回路装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光電子集積回路装置に関し、特に、超高速情報処理に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
LSIの集積度が増加し、集積される回路ブロックの数が増えてくると、従来の導電配線によるクロック信号の分配または信号の伝送に要する遅延時間は回路ブロック内単位回路の演算時間よりはるかに長くなる。このため、クロックスキューが原因となるタイミングトラブルを生じ、信号の遅延とともにLSIの動作速度を制限するようになっている。
【0003】
一方、導電配線の遅延時間の弊害を解決する手段として、光導波路による光配線が考えられてきたが、LSIの配線の幅を決めるデザインルール自体が、半導体が発光する光の波長より小さくなってきた現状では、単純に導電配線を光導波路配線に置き換えても配線密度はかえって減少してしまう。これは、光導波路の幅は伝送される光の波長の数倍は必要だからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この問題を解決するために、面状光導波路のコンセプトが提案されている。
【0005】
すなわち、特公平5−17712号公報(半導体集積構造)には、面状光導波路をLSIの配線層に接して設け(同公報の図2の構造)、光は全ての単位回路の受信部に入射(方向性の限定なし)することが開示されている。これに加えて、光放送バス(ブロードキャスト)のコンセプトが開示されているが、光信号が回路ブロックを指定するアドレッシングのコンセプトは開示されていない。
【0006】
一方、特公平6−42527号公報(光導波路を用いた情報処理装置)には、基板上に複数のICチップを設け、その上に分配手段としてのプレーナ光導波路および光源と光検出器とを設けたサブシステムが開示されている。そして、その中に、異なる波長の光を出射する複数の光源と、基板に複数のプレーナ光導波路が積層されている構成と、各プレーナ光導波路で通信波長が異なる方式と、分配手段(光導波路)上に配置された複数の画素、の具体例が開示されている。ここでも上記特公平5−17712号公報と同様にブロードキャストのコンセプトが開示されているが、更に、アドレッシングはATM(非同期転送モード)通信のように光パルスのパケット中に埋め込むこと、光の波長(周波数)多重または位相変調によることが開示されている。
【0007】
なお、特開平5−218384号公報(光導波路付き半導体集積回路)には、電子デバイス層の一方の面に電子配線層、他方の面に光導波路(複数層)を構成し、素子分離用絶縁体中に光導波路を埋設する構成、光素子と光導波路との結合の実施例として回折格子、が開示されているが、すでに述べた、光導波路の幅が配線幅より大きい現状からは効果の少ない構成である。
【0008】
しかし、上記の特公平6−42527号公報では、クロックは導電配線で分配することが記載されている。上述のように最近のLSIではクロックスキューの問題が100万ゲートを超えるLSIでは動作の保証の上で重要な問題となっている。また、光の波長(光の周波数)を回路ブロックのアドレッシングに使うことが開示されているが、受光側に光の選択機構を設けることは大きな面積を専有することを意味する。光パルスのパケット中にアドレスを埋め込むことが開示されているが、電話のATMシステムで検討されているように、最悪状態では交信数分だけ情報伝達速度は遅れる。
【0009】
したがって、この発明が解決しようとする課題は、集積度が増大しても、クロックスキューを防止することができ、高速で信号処理を行うことができる光電子集積回路装置を提供することにある。
【0010】
この発明が解決しようとする他の課題は、本明細書の以下の記述によって明らかとなるであろう。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術が有する上述の課題を解決する有効な対策について鋭意検討を行った。その概要について説明すると以下のとおりである。
【0012】
1)光導波路で入出力を一対一に接続することなく、光導波面を用いて、回路ブロック間の信号送受信を行う。これにより、波長がデザインルールより大きい問題を解決する。
【0013】
2)勿論距離の近い局所配線は従来の金属配線で行う方が単純でしかも速度も速いので従来の金属配線層、より一般的には電子配線層も同時に用いる。
【0014】
3)回路ブロック間の情報送信は回路ブロックの出力に電気結合(直流的に接続または交流的にカップリング)した発光素子を上記光導波面と光結合して、光導波面にいわゆるブロードキャストする。
【0015】
4)回路ブロック間の情報送信は回路ブロックの入力に電気結合した受光素子を上記光導波面と光結合させて行う。
【0016】
5)光導波面へは、複数の回路ブロックを発光素子、受光素子を介して光結合させて並列または時系列的に多重情報送受信を行う。
【0017】
6)このためには、発光素子が光導波面へ発信する光学情報には送信先を示す識別記号を付与する。この識別信号は、光の光量、位相の変調周波数である場合(この場合は各回路ブロックに固有の周波数が割り当てられている場合を考えると良く分かる)、または情報列の先頭に付加したアドレスコードである場合(この場合は、情報の送受信が回路ブロックA、B間、C、D間と時系列的に行われることもある。)など用途に応じて適宜選択することができる。
【0018】
7)このためには、受光素子が光導波面から取り込む信号に含まれる識別信号を識別する回路部を各回路ブロックに設ける。
【0019】
8)情報の発信受信が時系列的に行われる場合は、受信側で識別結果を返信(して情報の送信を要求)する光送信、送信側で情報を送り終えた場合の送信終了を宣言する光送信が必要となる。この送信終了宣言で他の回路ブロックが同じ周波数を使って情報の送受信ができるようになる。この方式は同一光導波面に結合する回路ブロックの数に制限はない。
【0020】
9)各回路ブロックに周波数を特性する方式は、並行送受信が可能な分だけ高速の情報処理ができるが、周波数弁別回路の性能によって、交信できる回路ブロックの数に限りがある。
【0021】
この発明は、本発明者による以上のような検討に基づいて案出されたものである。
【0022】
すなわち、上記課題を解決するために、この発明の第1の発明による光電子集積回路装置は、
複数の電子素子が設けられた少なくとも一層の電子素子層と、
複数の電子配線が設けられた少なくとも一層の電子配線層と、
少なくとも一層の光導波面と、
複数の発光素子および複数の受光素子とを同一の基板上に有し、
複数の電子素子および複数の電子配線は複数の回路ブロックを構成し、
発光素子は回路ブロックの出力部に接続され、受光素子は回路ブロックの入力部に接続され、かつ、複数の発光素子のうちの少なくとも一つの発光素子および複数の受光素子のうちの少なくとも一つの受光素子は少なくとも一層の光導波面のうちの同一の光導波面に光結合され、
複数の発光素子のうちの少なくとも一つの発光素子は信号で強度変調された信号光パルスを同一の光導波面へ結合するとともに、少なくとも一つの発光素子はクロック周波数で強度変調されたクロック光パルスを同一の光導波面へ結合し、このクロック光パルスを同一の光導波面に光結合した受光素子が受光し、この受光素子が入力部に接続されている回路ブロックのクロック周波数および位相を制御するようにした
ことを特徴とする光電子集積回路装置である。
【0023】
この発明の第1の発明においては、例えば、クロック周波数として複数のクロック周波数を用い、これらの複数のクロック周波数を複数の回路ブロックに割り当てて回路ブロックを指定する信号とする。あるいは、クロック周波数を複数の回路ブロックに割り当て、信号光パルスに回路ブロックを指定するアドレス信号光パルス列を加える。クロック光パルスは信号光パルスが結合する光導波面とは異なる光導波面に結合するようにしてもよい。また、クロック光パルスは信号光パルスと異なる波長の光パルスとしてもよい。
【0024】
この発明の第2の発明による光電子集積回路装置は、
複数の電子素子が設けられた少なくとも一層の電子素子層と、
複数の電子配線が設けられた少なくとも一層の電子配線層と、
少なくとも一層の光導波面と、
複数の発光素子および複数の受光素子とを同一の基板上に有し、
複数の電子素子および複数の電子配線は複数の回路ブロックを構成し、
発光素子は回路ブロックの出力部に接続され、受光素子は上記回路ブロックの入力部に接続され、かつ、複数の発光素子のうちの少なくとも一つの発光素子および複数の受光素子のうちの少なくとも一つの受光素子は少なくとも一層の光導波面のうちの同一の光導波面に光結合され、
複数の発光素子のうちの少なくとも二つの発光素子は互いに異なる周波数で強度変調された複数の信号光パルスを同一の光導波面へ光結合し、これらの複数の信号光パルスを複数の受光素子が受光し、選択された少なくとも二つの回路ブロック間で異なる周波数を用いて同時にそれぞれ独立に信号を伝送するようにした
ことを特徴とする光電子集積回路装置である。
【0025】
この発明の第2の発明においては、例えば、複数の回路ブロックに周波数を割り当て、回路ブロックの入力部に周波数弁別回路を設ける。また、複数の回路ブロックに一つの周波数を割り当て、信号光パルスに回路ブロックを指定するアドレス信号光パルス列を加える。互いに異なる周波数のそれぞれの周波数のクロック光パルスを信号光パルスと同時に光導波面へ結合するようにしてもよい。また、クロック光パルスは信号光パルスが光結合する光導波面とは異なる光導波面に結合するようにしてもよい。さらに、クロック光パルスは信号光パルスと異なる波長の光パルスとしてもよい。
【0026】
この発明の第3の発明は、
複数の電子素子が設けられた少なくとも一層の電子素子層と、
複数の電子配線が設けられた少なくとも一層の電子配線層と、
少なくとも一層の光導波面と、
複数の発光素子および複数の受光素子とを同一の基板上に有し、
複数の電子素子および複数の電子配線は複数の回路ブロックを構成し、
発光素子は回路ブロックの出力部に接続され、受光素子は回路ブロックの入力部に接続され、かつ、複数の発光素子のうちの少なくとも一つの発光素子および複数の受光素子のうちの少なくとも一つの受光素子は少なくとも一層の光導波面のうちの同一の光導波面に光結合され、
発光素子は信号光パルスを光結合した同一の光導波面へ供給し、この信号光パルスを同一の光導波面へ光結合した受光素子が受光し、複数の回路ブロックのうちの選択された少なくとも二つの回路ブロック間で信号を伝送するようにした光電子集積回路装置であって、
発光素子または受光素子の同一の光導波面への光結合は、発光素子または受光素子を同一の光導波面に投影した位置の同一の光導波面に設けられた、発光面または受光面側に凸の反射面による光の反射により行われる
ことを特徴とする光電子集積回路装置である。
【0027】
この発明の第3の発明において、反射面は、典型的には円錐形であるが、その他の任意の形状であってよい。
【0028】
この発明の第4の発明は、
複数の電子素子が設けられた少なくとも一層の電子素子層と、
複数の電子配線が設けられた少なくとも一層の電子配線層と、
少なくとも一層の光導波面と、
複数の発光素子および複数の受光素子とを同一の基板上に有し、
複数の電子素子および複数の電子配線は複数の回路ブロックを構成し、
発光素子は回路ブロックの出力部に接続され、受光素子は回路ブロックの入力部に接続され、かつ、複数の発光素子のうちの少なくとも一つの発光素子および複数の受光素子のうちの少なくとも一つの受光素子は少なくとも一層の光導波面のうちの同一の光導波面に光結合され、
発光素子は信号光パルスを光結合した光導波面へ供給し、信号光パルスを光導波面へ光結合した受光素子が受光し、複数の回路ブロックのうちの少なくとも二つの回路ブロック間で信号を伝送するようにした光電子集積回路装置であって、
発光素子から発生する信号光パルスまたは受光素子が受光する信号光パルスの波長は、電子素子層を構成する半導体のバンドギャップエネルギーに対応する波長より長波長である
ことを特徴とする光電子集積回路装置である。
【0029】
この発明において、電子素子が形成される半導体基板または半導体層がGaAs、GaP、InPのように発光性の半導体の場合は、半導体基板あるいは半導体層に形成される。これに対して、電子素子が形成される半導体基板または半導体層がSiのように非発光性の場合は、例えば、半導体基板あるいは半導体層上にヘテロエピタキシャル成長技術により格子定数の比較的近いGaAs、GaP等の半導体をヘテロエピタキシャル成長させ、場合により更にその上に多元化合物半導体層をエピタキシャル成長させ、その中に形成する。
【0030】
電子素子は、電界効果トランジスタ(MISFETやMESFETなどの各種のものがある)、バイポーラトランジスタなどであり、これらの中の一種または二種類以上が用いられる。
【0031】
電子配線は、金属(Al、Cuなど)、多結晶シリコン、TiNなどの導電体による相互接続のほか、二つの導電体間の誘導結合、導電膜間の容量結合などであってもよい。
【0032】
上述のように構成されたこの発明の第1の発明による光電子集積回路装置によれば、回路ブロックのクロック周波数および位相をクロック光パルスにより制御することができることにより、集積度が増加し、集積する回路ブロックの数が増えても、クロックスキューの問題が発生することがなく、クロックスキューによるタイミングトラブルを防止することができる。
【0033】
上述のように構成されたこの発明の第2の発明による光電子集積回路装置によれば、回路ブロック間の信号の伝送を異なる周波数を用いて行うことにより、配線本数が多くなったのと同等の効果を得ることができ、実効的に配線密度の向上を図ることができる。
【0034】
上述のように構成されたこの発明の第3の発明による光電子集積回路装置によれば、反射面を介して発光素子および受光素子と光導波面との光結合を行うことにより、ブロードキャストを容易かつ確実に行うことができる。
【0035】
上述のように構成されたこの発明の第4の発明による光電子集積回路装置によれば、発光素子からの信号光パルスおよび受光素子が受光する信号光パルスの波長が、電子層を構成する半導体のバンドギャップエネルギーに対応する波長よりも長波長であることにより、信号光パルスが電子素子層で吸収されることがなく、光による電流リークを防止することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0037】
図1はこの発明の第1の実施形態による光導波面を用いた光電子集積回路装置を示す断面図、図2はこの光電子集積回路装置の平面図である。
【0038】
図1および図2に示すように、この光電子集積回路装置においては、半導体基板1の全面または所定の領域に電子配線層2および光導波面を構成する光導波層3が二次元的な広がりを持って順次積層されている。所定領域における半導体基板1および電子配線層2によりn個の回路ブロックBi (i=1、2、・・・、n)が形成されている。各回路ブロックBi の半導体基板1の上部の電子素子層4には、その回路ブロックに持たせる機能に応じて複数の電子素子Dが形成されている。これらの電子素子Dは、その回路ブロックの機能を実現することができるように、電子配線層2に形成された一層または多層の電子配線Wにより相互に電気的に接続されている。また、各回路ブロックBi の入力部および出力部にはそれぞれ受光素子Pi および発光素子Li が接続されている。これらの受光素子Pi および発光素子Li は光導波層3、すなわち光導波面に光結合している。さらに、各受光素子Pi および各発光素子Li の上方の部分における光導波層3の上部には、各受光素子Pi の受光面および各発光素子Li の発光面にそれらの先端が向くように円錐状の反射部材5が埋め込まれている。この反射部材5は、その錐面による反射により、光導波層3を伝播する光が各受光素子Pi の受光面に効率的に入射し、あるいは、各発光素子Li から発光した光が効率的に光導波層3に送られるようにするためのものである。
【0039】
電子素子Dとしては、回路ブロックに持たせる機能や使用する半導体基板1などに応じて、MISFET、MESFET、バイポーラトランジスタなどのうちの1種類または2種類以上のものを用いることができる。電子配線4としては、Al、Cuなどの金属、多結晶シリコン、TiN等の導電配線のほか、二つの導電体間の誘導結合や導電膜間の容量結合などを用いることができる。さらに、受光素子Pi としてはフォトダイオード、発光素子Li としては発光ダイオードなどを用いることができる。この場合、発光素子Li の発光波長は半導体基板1、したがって電子素子層4を構成する半導体のバンドギャップエネルギーに対応する波長よりも長波長に選ばれている。具体的には、例えば、半導体基板1がSi基板であり、電子素子層4がSi層である場合を考えると、発光素子Li としては、InPAs、GaInAs、AlInAs、AlGaInAs、GaInPAsなどを用いた発光ダイオードを用いることができる。
【0040】
半導体基板1はバルクの半導体基板であってもよいし、いわゆるSOI(Semiconductor on Insulator)基板のような支持基板上に半導体層を設けたものであってもよい。
次に、上述のように構成されたこの第1の実施形態による光電子集積回路装置の動作について説明する。
【0041】
n個の回路ブロックB1 、B2 、・・・、Bn に互いに異なるクロック周波数f1 、f2 、・・・、fn を割り当て、これらの周波数を回路ブロックを指定する信号とする。いま、一例として、回路ブロックB1 から回路ブロックB2 に情報を送信する場合を考える。まず、回路ブロックB1 の出力部に接続された発光素子L1 から発光する光をクロック周波数f2 で強度変調し、周波数f2 のクロック光パルスを発生させる。この周波数f2 のクロック光パルスは光導波層3に発信される。このとき、このクロック光パルスは、円錐状の反射部材5の錐面で反射されて放射状に光導波層3内を伝播する。すなわち、発光素子L1 から発光する周波数f2 のクロック光パルスを、光導波層3にブロードキャストする。この周波数f2 のクロック光パルスは、光導波層3に光結合した全ての受光素子に入射するが、このクロック周波数f2 で識別される回路ブロックB2 の受光素子P2 により受光されたときに、この回路ブロックB2 の識別信号を受信したことを示す識別信号光パルスを、この回路ブロックB2 の出力部に接続された発光素子L2 から光導波層3にブロードキャストする。この識別信号光パルスが情報信号の送信側である回路ブロックB1 の入力部に接続された受光素子P1 により受光されたとき、回路ブロックB1 からの情報信号の発信が要求される。そして、この要求により回路ブロックB1 から情報信号が信号光パルスとして光導波層3にブロードキャストされ、この情報信号が回路ブロックB2 により受信される。この情報信号の送信のシーケンスを図3に示す。
【0042】
回路ブロックB2 においては、受光素子P2 により受光されたクロック光パルスにより、その内部の動作に用いられるクロック周波数および位相が制御されるようになっている。
【0043】
この第1の実施形態によれば、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、回路ブロックBi の入力部に接続された受光素子Pi が受光するクロック光パルスによりこの回路ブロックのクロック周波数および位相を制御するようにしているので、従来のLSIにおけるような複雑な長距離配線に伴うクロックスキューを有効に防止することができる。このため、光電子集積回路装置の集積度が増加し、集積される回路ブロックの数が増えても、クロックスキューが原因となるタイミングトラブルが生じることがなくなり、高速で信号処理を行うことができる。また、発光素子Li の発光波長が電子素子層4を構成する半導体のバンドギャップエネルギーに対応する波長よりも長波長であるので、電子素子層4により信号光パルスやクロック光パルスが吸収されて光リークによる電子素子の誤動作などが生じるのを防止することができ、動作の信頼性の向上を図ることができる。さらに、発光素子Li および受光素子Pi を光導波層3に対応した位置に円錐状の反射部材5を設けていることにより、発光素子Li から発光して光導波層3にブロードキャストされる光および光導波層3から受光素子Pi に入射する光を有効に利用することができる。
【0044】
そして、この光電子集積回路装置によれば、回路ブロック間の信号の伝送を光により行うため、回路ブロック間の配線を導電配線により行う従来のLSIが直面している信号伝送速度、機能、コストなどの限界を打破することができるとともに、信号レベルの異なる各種回路ブロックを相互に結合することができることにより、飛躍的な高機能化を図ることができる。
【0045】
次に、この発明の第2の実施形態による光電子集積回路装置について説明する。
【0046】
第1の実施形態においては、情報を送信する相手の回路ブロックの識別をクロック周波数で行っているのに対し、この第2の実施形態においては、情報信号の先頭に付加されたアドレス信号により回路ブロックの識別を行う。具体的には、n個の回路ブロックB1 、B2 、・・・、Bn に一つのクロック周波数を割り当て、信号光パルス列の先頭に各回路ブロックを指定するアドレス信号光パルス列を付加したものを送信側の回路ブロックの出力部に接続された発光素子から光導波層3にブロードキャストする。このとき、アドレス信号で指定された回路ブロックの入力部に接続された受光素子が受光モードになり、情報を信号光パルスとして受信する。このようにして、回路ブロックから回路ブロックへ情報信号が送信される。
【0047】
上記以外のことは第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
この第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な利点を得ることができる。
【0049】
次に、この発明の第3の実施形態による光電子集積回路装置について説明する。
【0050】
この第3の実施形態においては、少なくとも二つの発光素子から発光する光を互いに異なる周波数で強度変調して信号光パルスを得、これらの信号光パルスを光導波層3にブロードキャストする。これらの信号光パルスを複数の受光素子が受光し、規定された少なくとも二つの回路ブロック間で上記の異なる周波数を用いて同時にそれぞれ独立に情報信号を伝送する。
【0051】
このとき、n個の回路ブロックB1 、B2 、・・・、Bn に異なる周波数を割り当てる。回路ブロックの入力部に周波数弁別回路を設けておき、この周波数弁別回路により周波数を弁別し、情報信号を送信する回路ブロックの識別を行う。
【0052】
この周波数弁別回路(波長識別素子)の具体的な構造例(特開昭60−241277号公報)を図4に示す。図4に示すように、この例では、半導体基板1として例えばp型Si基板が用いられ、その中にn型領域11が設けられ、このn型領域11中にp型領域12およびn+ 型コンタクト用領域13が設けられている。そして、半導体基板1とn型領域11とのpn接合およびp型領域12とn型領域13とのpn接合によりそれぞれフォトダイオードが形成され、波長弁別回路が構成されている。ここで、p型領域12とn型領域11とのpn接合からなるフォトダイオードは短波長側、すなわち高周波数側に受光感度が高く、半導体基板1とn型領域11とのpn接合からなるフォトダイオードは長波長側、すなわち低周波数側に受光感度が高い。この周波数弁別回路によれば、広い周波数帯(波長帯)の受光光の周波数を弁別することができる。
【0053】
この第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な利点を得ることができる。
【0054】
次に、この発明の第4の実施形態による光電子集積回路装置について説明する。図5にこの光電子集積回路装置の断面構造を示す。この光電子集積回路装置の平面図は例えば図2と同様である。
【0055】
図5に示すように、この光電子集積回路装置においては、支持基板21の全面または所定の領域上に光導波面を構成する光導波層3、電子配線層22、電子素子層4および電子配線層2が二次元的な広がりを持って順次積層されている。これらの光導波層3、電子配線層22、電子素子層4、電子配線層2、回路ブロックBi (i=1、2、・・・、n)、電子素子D、電子配線W、受光素子Pi 、発光素子Li および反射部材5は、第1の実施形態におけるものと同様である。この場合、電子素子層4はSiなどの元素半導体またはGaAsなどの化合物半導体からなる半導体層であり、具体的には例えばSOI層である。支持基板21は任意の基板であってよく、例えばSi基板である。
【0056】
この光電子集積回路装置の動作方法は第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
この第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な利点を得ることができる。
【0058】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0059】
例えば、上述の第1〜第4の実施形態において挙げた数値、構造、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、構造、材料などを用いてもよい。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明による光電子集積回路装置によれば、集積度が増大しても、クロックスキューを防止することができ、高速で信号処理を行うことができるとともに、高機能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態による光電子集積回路装置を示す断面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態による光電子集積回路装置を示す平面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態による光電子集積回路装置の動作を説明するための断面図である。
【図4】この発明の第3の実施形態による光電子集積回路装置において用いる周波数弁別回路の構造例を示す断面図である。
【図5】この発明の第4の実施形態による光電子集積回路装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・半導体基板、2、22・・・電子配線層、3・・・光導波層、4・・・電子素子層、5・・・反射部材、Bi ・・・回路ブロック、Pi ・・・受光素子、Li ・・・発光素子、D・・・電子素子、W・・・電子配線

Claims (3)

  1. 複数の電子素子が設けられた少なくとも一層の電子素子層と、
    複数の電子配線が設けられた少なくとも一層の電子配線層と、
    少なくとも一層の光導波面と、
    複数の発光素子および複数の受光素子とを同一の基板上に有し、
    上記複数の電子素子および上記複数の電子配線は複数の回路ブロックを構成し、
    上記発光素子は上記回路ブロックの出力部に接続され、上記受光素子は上記回路ブロックの入力部に接続され、かつ、上記複数の発光素子のうちの少なくとも一つの発光素子および上記複数の受光素子のうちの少なくとも一つの受光素子は上記少なくとも一層の光導波面のうちの同一の光導波面に光結合され、
    上記複数の発光素子のうちの少なくとも一つの発光素子は信号で強度変調された信号光パルスを上記同一の光導波面へ結合するとともに、少なくとも一つの発光素子はクロック周波数で強度変調されたクロック光パルスを上記同一の光導波面へ結合し、このクロック光パルスを上記同一の光導波面に光結合した受光素子が受光し、この受光素子が入力部に接続されている回路ブロックのクロック周波数および位相を制御するようにした光電子集積回路装置。
  2. 上記クロック周波数として複数のクロック周波数を用い、これらの複数のクロック周波数を上記複数の回路ブロックに割り当てて回路ブロックを指定する信号とした請求項1記載の光電子集積回路装置。
  3. 上記クロック周波数を上記複数の回路ブロックに割り当て、上記信号光パルスに回路ブロックを指定するアドレス信号光パルス列を加える請求項1記載の光電子集積回路装置。
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