(実施の形態1)
以下、本発明の攪拌装置、判定回路、攪拌装置の異常判定方法及び分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の攪拌装置を用いて分析を行う実施の形態1にかかる自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1に示す自動分析装置で使用する攪拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。図3は、反応容器に取り付ける表面弾性波素子の斜視図である。なお、以下の各実施の形態の説明において使用する図面においては、説明に必要な線を優先的に表示するため断面図における破断線を適宜省略している。
自動分析装置1は、図1に示すように、試薬テーブル2,3、キュベットホイール4、検体容器移送機構8、分析光学系12、洗浄機構13、制御部15及び攪拌装置20を備えている。
試薬テーブル2,3は、図1に示すように、それぞれ周方向に配置される複数の試薬容器2a,3aを保持し、駆動手段に回転されて試薬容器2a,3aを周方向に搬送する。このとき、試薬テーブル2には、第一試薬を保持した試薬容器2aが配置され、試薬テーブル3には、第二試薬を保持した試薬容器3aが配置されている。
キュベットホイール4は、図1に示すように、内周側に配置され、周方向に回転するホイール4aに反応容器5を配置する複数のホルダが周方向に形成され、ホイール4aの外周側に配置された外周壁4cに形成した切欠き部に対向して攪拌装置20が配置されている。ホイール4aは、反応容器5を配置する各ホルダと対応する位置に半径方向に貫通する測光孔4bが設けられ、図示しない駆動手段によって回転されて反応容器5を搬送する。反応容器5は、近傍に設けた試薬分注機構6,7によって試薬テーブル2,3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。キュベットホイール4は、一周期で反時計方向に(1周−1キュベット)/4分回転し、四周期で時計方向に反応容器5の1個分回転する。
反応容器5は、分析光学系12から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂から成形された液体の保持部5aを有する四角筒状の容器である。反応容器5は、側壁5bに表面弾性波素子22が音響整合層28(図6,図8参照)を兼ねる接着剤等によって取り付けられている。表面弾性波素子22は、攪拌装置20によって駆動される。
試薬分注機構6,7は、それぞれ水平面内を矢印方向に回動するアーム6a,7aに試薬を分注するプローブ6b,7bが設けられ、洗浄水によってプローブ6b,7bを洗浄する洗浄手段を有している。
検体容器移送機構8は、図1に示すように、フィーダ9に配列した複数のラック10を矢印方向に沿って1つずつ移送する移送手段であり、ラック10を歩進させながら移送する。ラック10は、検体を収容した複数の検体容器10aを保持している。ここで、検体容器10aは、検体容器移送機構8によって移送されるラック10の歩進が停止するごとに、水平方向に回動するアーム11aとプローブ11bとを有する検体分注機構11によって検体が各反応容器5へ分注される。このため、検体分注機構11は、洗浄水によってプローブ11bを洗浄する洗浄手段を有している。
分析光学系12は、試薬と検体とが反応した反応容器5内の液体試料を分析するための分析光(340〜800nm)を出射するもので、図1に示すように、発光部12a,分光部12b及び受光部12cを有している。発光部12aから出射された分析光は、反応容器5内の液体試料を透過し、分光部12bと対向する位置に設けた受光部12cによって受光される。受光部12cは、制御部15と接続されている。
洗浄機構13は、ノズル13aによって反応容器5内の液体試料を吸引して排出した後、ノズル13aによって洗剤や洗浄水等の洗浄液等を繰り返し注入し、吸引することにより、分析光学系12による分析が終了した反応容器5を洗浄する。
制御部15は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、発光部12aの出射光量と受光部12cが受光した光量に基づく反応容器5内の液体試料の吸光度に基づいて検体の成分濃度等を分析する部分であり、例えば、マイクロコンピュータ等が使用される。制御部15は、図1に示すように、キーボード等の入力部16及びディスプレイパネル等の表示部17と接続されている。
入力部16は、制御部15へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。入力部16は、攪拌装置20の表面弾性波素子27に入力する駆動信号の周波数を切り替える操作等にも使用される。表示部17は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
攪拌装置20は、ホイール4aの回転に伴って当接する反応容器5が順次替わるブラシ状の接触子を有しており、この接触子を受電パッド27cに当接させて表面弾性波素子27に電力を供給する。攪拌装置20は、図2に示すように、攪拌制御部21と表面弾性波素子27とを有しており、表面弾性波素子27は攪拌制御部21によって作動が制御される。攪拌制御部21は、制御部15を介して入力部16から入力される液体試料の検査項目、液体試料の性状又は液量等の情報に基づいて表面弾性波素子27に出力する駆動信号の周波数を変更し、通信回路22、制御部23、信号発生回路24、増幅回路25及び電力検出回路26を備えている。
通信回路22は、制御部15との間で制御信号を送受信すると共に、オンラインネットワークを介して自動分析装置1をメーカーのホストコンピュータに接続してデータ等を送受信する。
制御部23は、信号発生回路24と増幅回路25を制御して表面弾性波素子27へ出力される信号の駆動周波数と駆動電力を制御すると共に、表面弾性波素子27から反応容器5に保持された液体に至る音波伝搬経路上の異常を判定し、判定回路23aと記憶部23bとを有している。制御部23は、メモリとタイマを内蔵した電子制御手段(CPU)が使用される。
判定回路23aは、表面弾性波素子27から反応容器5に保持された液体に至る音波伝搬経路が正常な際の反射電力と駆動時の反射電力とをもとに表面弾性波素子27から反応容器5が保持した液体試料に至る音波伝搬経路上における異常の有無を判定する判定手段である。このとき、判定回路23aは、反射率の変動係数(=標準偏差/平均値)を算出し、以下に説明する異常判定方法によって前記音波伝搬経路における異常の有無を判定する。ここで、反射率とは、電力検出回路26が表面弾性波素子27へ出力する駆動電力に対する表面弾性波素子27から反射される反射電力の比をいう。
記憶部23bは、電力検出回路26が検出した前記音波伝搬経路が正常な際の駆動電力データや反射電力データが入力され、参照駆動電力及び参照反射電力として記憶する。制御部23は、通信回路22、信号発生回路24、増幅回路25及び電力検出回路26の作動を制御する。このとき、制御部23は、信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号の電圧や電流を制御する。制御部23は、信号発生回路24の作動を制御することにより、例えば、表面弾性波素子27が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、制御部23は、内蔵したタイマに従って信号発生回路24が発振する高周波信号の周波数を変化させることができる。
信号発生回路24は、制御部23から入力される制御信号に基づいて発振周波数を変更可能な発振回路を有しており、100〜160MHzの信号を発生して2分周し、50〜80MHzの駆動信号を表面弾性波素子27へ出力する。増幅回路25は、信号発生回路24と共に表面弾性波素子27を駆動する駆動手段を構成しており、信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号を予め設定した増幅率で増幅する。
検出手段である電力検出回路26は、カプラと、増幅回路25で増幅されて表面弾性波素子27へ出力される駆動電力を検出し、駆動電力データとして判定回路23aへ出力するディテクタと、表面弾性波素子27から反射されてくる反射電力を検出し、反射電力データとして判定回路23aへ出力するディテクタ(SWR計)とを有している。電力検出回路26が検出した駆動電力データや反射電力データは、駆動電力及び反射電力として記憶部23bに記憶される。
表面弾性波素子27は、図3に示すように、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電素材からなる圧電基板27aの表面に櫛型電極(IDT)からなる振動子27bが形成されている。振動子27bは、攪拌制御部21から入力された駆動信号を表面弾性波(音波)に変換する発音部であり、振動子27bを構成する複数のフィンガーが圧電基板27aの長手方向に沿って配列されている。また、表面弾性波素子27は、一組の受電パッド27cに攪拌装置20の接触子を当接させて攪拌制御部21と接続される。振動子27bは、受電パッド27cとの間がバスバー27dによって接続されている。表面弾性波素子27は、振動子27bを外側に向け、圧電基板27aとの間にエポキシ樹脂等の音響整合層28(図6,図8参照)を介して反応容器5の側壁5bに取り付けられる。
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール4によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5に試薬分注機構6,7が試薬容器2a,3aから試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器5は、検体分注機構11によってラック10に保持された複数の検体容器10aから検体が順次分注される。そして、キュベットホイール4が停止する都度、一組の受電パッド27cを介して攪拌制御部21から駆動信号が出力される。このため、反応容器5に分注された試薬と検体からなる液体試料は、攪拌装置20によって順次攪拌されて反応する。自動分析装置1においては、通常、試薬の量に比べて検体の量が少なく、攪拌によって液体中に生ずる一連の流れによって反応容器5に分注された少量の検体が多量の試薬に引き込まれて検体と試薬との反応が促進される。
このようにして反応した液体試料は、キュベットホイール4が再び回転したときに分析光学系12を通過し、発光部12aから出射された光束が透過する。このとき、反応容器5内の液体試料は、受光部12cで測光され、制御部15によって成分濃度等が分析される。そして、液体試料の分析が終了した反応容器5は、洗浄機構13によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
このとき、攪拌装置20においては、判定回路23aが表面弾性波素子27から反応容器5が保持した液体試料に至る音波伝搬経路における異常の有無を判定する。即ち、表面弾性波素子27は、バルク波の中心周波数fB0で駆動した場合、圧電基板27aの裏面(振動子27bが形成されていない面)に音響整合層がなく、圧電基板27aの裏面が空気層と接していると、図4に示すように、振動子27bが発生したバルク波Wbは、圧電基板27aと空気層との間の音響インピーダンスの不整合によって圧電基板27aの裏面で反射し、多重反射しながら圧電基板27a内を伝搬してゆく。
この場合、圧電基板27aを構成するニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電素材の結晶は異方性を有しており、この異方性によって音波がある特定の方向に伝搬し易い特徴を有している。この場合、音波は伝搬に伴って広がるため、この音波の広がりに起因した圧電基板27a裏面での反射により、圧電基板27a中には中心周波数fB0のバルク波Wbの他に、周波数が僅かに異なる周波数fB0+Δf1や周波数fB0+Δf2のバルク波Wb1,Wb2が発生する。このため、振動子27bには、これらのバルク波Wb,Wb1,Wb2が入射し、攪拌制御部21側へ出力される。この結果、電力検出回路26では、これらのバルク波Wb,Wb1,Wb2が合成された不要振動を伴う反射電力が検出される。
一方、圧電基板27aの裏面に音響整合層Lmが存在すると、表面弾性波素子27は、表面弾性波素子27と音響整合層Lmとの間で音響インピーダンスが整合するため、図5に示すように、振動子27bが発生したバルク波Wbは、圧電基板27aの裏面を透過して音響整合層Lmに入射する。このため、電力検出回路26では、不要振動を伴う反射電力は検出されない。
従って、図6に示すように、音響整合層28を介して反応容器5に表面弾性波素子27を隙間や剥離がない状態で適切に取り付けると、振動子27bが発生したバルク波は、圧電基板27aを伝搬して音響整合層28に入射する。このため、図7に示すように、バルク波Wbは、側壁5bから液体試料Ls中へ入射する。このとき、バルク波Wbの一部には、側壁5bと液体試料Lsとの密度差に起因する音響インピーダンスの不整合によって側壁5bと液体試料Lsとの界面で反射しながら液体試料Ls中へ疎密波WLとして入射してゆくものもある。この結果、反応容器5は、図6に示したように、液体試料Ls中に音響流Faが惹起され、この流れによって液体試料Lsが攪拌される。この場合、圧電基板27a、音響整合層28及び側壁5bを含む反応容器5の壁が音波伝搬経路Raw(図7参照)となる。
一方、音響整合層28を介して表面弾性波素子27を反応容器5に取り付けたときに、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離によって、図8に示すように、圧電基板27aと反応容器5との間に隙間が存在したとする。このような音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良がある場合、振動子27bが発生したバルク波Wbは、音響整合層28が欠如した隙間の部分には入射できないので、図9に示すように、圧電基板27a中を反射しながら伝搬し、音響整合層28が存在する部分で音響整合層28に入射するだけである。このため、このような場合には、バルク波の一部が側壁5bから液体試料Ls中へ疎密波WLとして僅かに入射するだけである。このため、反応容器5は、液体試料Lsが殆ど攪拌されない。
このように、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良は、電力検出回路26が検出する反射電力に含まれる不要振動の有無によって検出することができる。この場合、表面弾性波素子27を反応容器5へ接合したときの音響整合層28の厚さの不均一がある場合にも圧電基板27aと音響整合層28との間に音響インピーダンスの不整合が生じ、電力検出回路26で不要振動を伴う反射電力が検出される。従って、この不要振動の有無によって、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良や音響整合層28の厚さの不均一を表面弾性波素子27から反応容器5が保持した液体試料Lsに至る音波伝搬経路上の異常として検出することができる。
ここで、音波伝搬経路Raw上に異常がある場合として、反応容器5への接合が不良な表面弾性波素子27を有する攪拌装置20において、信号発生回路24が発生する駆動周波数を60〜90MHzの範囲で変化させて表面弾性波素子27を駆動した。そして、電力検出回路26が表面弾性波素子27へ出力する駆動電力に対する電力検出回路26が検出する表面弾性波素子27から反射される反射電力の比である電力の反射率(=反射電力/駆動電力)を判定回路23aにおいて計算した。その結果、電力の反射率の周波数特性は、図10に示すようになっていた。また、音波伝搬経路Rawに異常がない場合として、反応容器5への接合が良好な表面弾性波素子27を有する攪拌装置20において、同様にして電力の反射率の周波数特性を求めたところ、図11に示す結果が得られた。
図10及び図11に示すように、音波伝搬経路に異常があると反射電力に含まれる不要振動が多く、異常がないと反射電力に含まれる不要振動が激減している。このため、予め設定した周波数範囲内の連続した複数点の反射率から求めた反射率の変動係数Cv(=標準偏差/平均値)を、音波伝搬経路に異常がない場合に同様にして求めた反射率の参照変動係数CvNと比較すれば、音波伝搬経路上の異常の有無を判定することができる。ここで、参照変動係数CvNは、予め記憶部23bに参照駆動電力及び参照反射電力を記憶させた際に、判定回路23aが算出して参照駆動電力及び参照反射電力と共に記憶部23bに記憶させてあり、異常の有無を判定する際に記憶部23bから読み出せばよい。
即ち、表面弾性波素子27を駆動する中心周波数を含む図10及び図11の78〜84MHzの範囲近傍を拡大した図12に示すように、78〜84MHzの範囲で等間隔に連続する100点を決め、これら100点について判定回路23aによって求めた変動係数Cvを基準変動係数CvNと比較する。この場合、変動係数Cv>参照変動係数CvNとなる。このため、予め閾値として参照変動係数CvN+αを決めて記憶部23b記憶させておき、変動係数Cv>閾値=参照変動係数CvN+αの場合に、判定回路23aは音波伝搬経路上に異常ありと判定する。
以下、実施の形態1の攪拌装置の異常判定方法を、図13に示すフローチャートを参照して以下に説明する。ここで、攪拌装置20において、表面弾性波素子27から反応容器5が保持した液体試料に至る音波伝搬経路上における異常は、自動分析装置1の使用上、日常的に頻繁に発生するものではない。このため、音波伝搬経路上における異常の有無の判定は、例えば、毎朝、自動分析装置1のスイッチをオンして分析作業を開始する前に表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5の総てについて実行すればよい。
先ず、判定回路23aは、電力検出回路26から入力される駆動電力データから表面弾性波素子27へ出力された駆動電力を検出する(ステップS100)。次に、判定回路23aは、電力検出回路26から入力される反射電力データから、駆動された表面弾性波素子27から反射されてくる反射電力を検出する(ステップS102)。
次いで、判定回路23aは、電力検出回路26が検出した前記音波伝搬経路が正常な際の参照駆動電力及び参照反射電力を記憶部23bから読み出す(ステップS104)。その後、判定回路23aは、表面弾性波素子27の駆動電力に対する表面弾性波素子27から反射される反射電力の比である電力の反射率を計算する(ステップS106)。
そして、判定回路23aは、求めた電力の反射率をもとに上述した反射率の変動係数Cvを算出する(ステップS108)。このようにして求めた変動係数Cvと基準変動係数CvNとをもとに、判定回路23aは、変動係数Cvが閾値を超えたか否かを判定する(ステップS110)。判定の結果、変動係数Cvが閾値を超えていない場合(ステップS110,No)、表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5は、音波伝搬経路に異常がない。このため、判定回路23aは、通信回路22を介して制御部15へ制御信号を出力してキュベットホイール4を回転させ、攪拌装置20の接触子を新たな反応容器5に接触させる。そして、判定回路23aは、ステップS100に戻り、新たな反応容器5について音波伝搬経路上の異常の有無の判定を開始する。
一方、判定の結果、変動係数Cvが閾値を超えている場合(ステップS110,Yes)、判定回路23aは、音波伝搬経路上に異常ありと判定する(ステップS112)。この場合、判定回路23aは、音波伝搬経路上に異常ありと判定した表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5の位置を表示部17に表示する。また、判定回路23aは、表示部17への異常の表示と併せて、攪拌装置20又は自動分析装置1を停止させてもよい。
ここで、上述の音波伝搬経路上の異常は、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良や音響整合層28の厚さの不均一による。このため、例えば、音波伝搬経路上の異常が表面弾性波素子27の接合不良である場合、攪拌装置20は、表面弾性波素子27が接合不良な反応容器5に保持された液体を設計通りに攪拌することができない。このため、このような音波伝搬経路上の異常ありと判定した場合、攪拌装置20の判定回路23aは、反応容器5に保持された液体試料を設計通りに攪拌するため、信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号を増幅回路25によって設定値よりも増幅し、表面弾性波素子27の駆動電力を増加させる。また、音波伝搬経路上の異常が音響整合層28の厚さの不均一である場合、判定回路23aは、信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号の周波数を変化させてもよい。
このように、本発明の攪拌装置の異常判定方法は、電力検出回路26が検出した駆動電力と反射電力から電力の反射率を求め、反射率の変動係数をもとに音波伝搬経路上の異常の有無を判定するので、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良や音響整合層28の厚さの不均一を音波伝搬経路上の異常として容易に判定することができる。
ここで、表面弾性波素子は、図14に示す表面弾性波素子31のように、圧電基板31aの表面にバルク波を出射する出射用の振動子31b、一組の受電パッド31c及びバスバー31dを形成すると共に、圧電基板31aの裏面から反射してくるバルク波が入射する異常検出用の振動子31eを音波発生用の振動子31bと電気的に並列に設けてもよい。
このように、表面弾性波素子31に圧電基板31aの裏面から反射してくるバルク波が入射する入射用の振動子31eを設けると、攪拌装置20は、表面弾性波素子27の接合不良や音響整合層28の厚さの不均一や最適厚さからのずれ等によって音波伝搬経路に異常がある場合、振動子31bが発生したバルク波Wb(中心周波数fB0)が圧電基板31a内を伝搬するのに伴って、図15に示すように、圧電基板31aの裏面で反射したバルク波Wb,Wb1(周波数fB0+Δf1),Wb2(周波数fB0+Δf2)が振動子31eに入射し、バルク波Wb,Wb1,Wb2に伴う反射電力が攪拌制御部21側へ出力される。このため、表面弾性波素子31を使用した攪拌装置20は、表面弾性波素子27を用いた場合と同様にして音波伝搬経路の異常の有無を判定することができる。
また、表面弾性波素子は、図16に示す表面弾性波素子32のように、圧電基板32aの表面に振動子32b、一組の受電パッド32c及びバスバー32dを形成すると共に、一組の受電パッド32cの間に出力パッド32eを設けてもよい。このとき、受電パッド32c及び出力パッド32eは、図17に示すように、圧電基板32aの表面から端面に亘って形成されている。
従って、表面弾性波素子32を使用した攪拌装置20は、音波伝搬経路の異常によって内部を反射しながら圧電基板32aの端面へ伝搬してくるバルク波Wb(中心周波数fB0),Wb1(周波数fB0+Δf1),Wb2(周波数fB0+Δf2)が、音響インピーダンスが近いことから一組の受電パッド32cの一方と出力パッド32eに入射し、バルク波Wb,Wb1,Wb2に伴う反射電力を電力検出回路26へ出力する。このため、表面弾性波素子32を使用した攪拌装置20は、表面弾性波素子27を用いた場合と同様にして音波伝搬経路の異常の有無を判定することができる。
更に、表面弾性波素子は、図18に示す表面弾性波素子33のように、圧電基板33aの表面に振動子33b、一組の受電パッド33c及びバスバー33dを形成すると共に、一組の受電パッド33c側の圧電基板33aの端面を斜めに形成してもよい。このような表面弾性波素子33を使用した攪拌装置20は、図19に示すように、圧電基板33a内を伝搬するバルク波Wbが斜めの端面で反射して振動子33bに入射する。このため、表面弾性波素子33は、圧電基板の端面を斜めに形成しない表面弾性波素子に比べて、圧電基板33aのバルク波Wbが伝搬する方向における長さを短くすることができる。この場合、圧電基板33aの端面の傾斜角度は、圧電基板33aを構成するニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電素材の結晶構造から決定する。
また、表面弾性波素子は、図20及び図21に示す表面弾性波素子34のように、圧電基板34aの表面に、振動子34b、一組の受電パッド34c及びバスバー34dからなる駆動用IDT34Aと、振動子34e、一組の受電パッド34f及びバスバー34gからなる異常検出用IDT34Bとを形成してもよい。この場合、判定回路23aは、異駆動用IDT34Aに入力される電力を一定と仮定し、異常検出用IDT34Bが検出した電力をもとに電力の反射率を算出する。或いは、単に異常検出用IDT34Bが検出した電力の変動係数Cvの値を比較することで、異常の有無を判定してもよい。
一方、攪拌装置20は、図22に示すように、圧電基板35aの表面に振動子35bがアンテナ35cと共に一体に設けられた表面弾性波素子35を使用し、攪拌制御部21のRF送信アンテナ29から無線によって表面弾性波素子35に電力を供給するようにしてもよい。このようにすると、表面弾性波素子35は、表面弾性波素子27に比べて一組の受電パッド27cと接触子が不要となるので、構造が簡単、かつ、小型になり、攪拌装置20を更に小型化することができる。
なお、攪拌装置20は、図23に示すように、振動子27bを側壁5bに向けて表面弾性波素子27を反応容器5に取り付けることにより、表面弾性波によって液体試料Ls中に誘起される疎密波WLを利用して反応容器5に保持された液体試料Lsを攪拌するようにしてもよい。
(実施の形態2)
次に、本発明の攪拌装置、判定回路及び攪拌装置の異常判定方法にかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の異常判定方法は、検出手段が検出した音波発生手段の駆動電力と、音波発生手段から反射される反射電力とを用いて音波伝搬経路上の異常の有無を判定した。これに対し、実施の形態2の異常判定方法は、検出手段が検出した測定光の光量と音波伝搬経路上の音響光学効果に基づく回折によって偏向した測定光の光量とを用いて音波伝搬経路上の異常の有無を判定している。
図24は、実施の形態2に係る攪拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。図25は、表面弾性波素子を取り付けた反応容器の断面を光源及び受光器の配置と共に示す図である。ここで、以下に説明する各実施の形態の攪拌装置は、実施の形態1で説明した自動分析装置で使用するので、自動分析装置の説明は省略し、実施の形態1の攪拌装置と同一の構成要素には同一の符号を使用している。
攪拌装置40は、表面弾性波素子27を駆動する攪拌制御部21の他に、光源41と受光器42が設けられており、受光器42が検出手段となる。光源41及び受光器42は、図25に示すように、表面弾性波素子27及び反応容器5を挟んで液体試料Lsよりも上方に対向配置される。受光器42は、光源41が出射し、表面弾性波素子27の圧電基板27a及び反応容器5の側壁5bを透過してくる測定光の光量を受光し、受光量に対応する光信号を制御部23へ出力する。制御部23では、入力された光信号から判定回路23aが透過光量を算出する。
このとき、図25に示すように、音響整合層28を介して表面弾性波素子27を反応容器5に隙間や剥離がない状態で適切に取り付けると、振動子27bが発生したバルク波によって液体試料Ls中に誘起される疎密波WLは、圧電基板27aを伝搬して音響整合層28に入射するため、圧電基板27aには音響光学効果は生じない。このため、光源41が出射した測定光は、音響光学効果に基づく回折を受けずに圧電基板27aを透過する。このとき、受光器42は、図26の(a)に示すように、時間の経過による受光する光量の変化は見られない。
これに対し、音響整合層28を介して表面弾性波素子27を反応容器5に取り付けたとき、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因して図27に示すように圧電基板27aと反応容器5との間に隙間が存在し、或いは音響整合層28に厚さの不均一等の音響不整合が存在するとする。このような音波伝搬経路上の音響不整合による異常がある場合、振動子27bが発生したバルク波Wbは、音響インピーダンスの相違によって音響整合層28側へ僅かしか入射しない。このため、バルク波Wbは、圧電基板27a内を多重反射しながら伝搬し、光源41が出射した測定光BLは、音響光学効果に基づく回折を受け、圧電基板27a透過する際に進行方向が変化する。この結果、受光器42が受光する光量は、図26の(b)に示すように、(a)よりも光量が少なく、かつ、時間の経過によって変化する。
従って、音波伝搬経路上の音響不整合による異常がある場合に受光器42が受光した光量と、音波伝搬経路が正常な際に受光器42が受光した参照光量とをもとに、受光器42が受光する光量について予め所定の閾値を設定しておく。このようにすると、判定制御部23aは、受光器42が受光した光量を予め設定した閾値と比較することにより、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良や音響整合層28の厚さの不均一等の音響不整合による音波伝搬経路上の異常の有無を判定することができる。この場合、参照光量は、受光器42が制御部23へ出力した光信号から判定回路23aが算出し、記憶部23bに記憶しておき、異常の有無の判定に際し記憶部23bから読み出せばよい。
以下、実施の形態2の攪拌装置の異常判定方法を、図28に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
先ず、判定回路23aは、受光器42から入力される光信号をもとに回折を受けて圧電基板27aを透過した光量を算出する(ステップS200)。次に、判定回路23aは、音波伝搬経路が正常な際に受光器42が検出した参照光量を記憶部23bから読み出す(ステップS202)。
次いで、判定回路23aは、圧電基板27aを透過した光量が、閾値以下か否かを判定する(ステップS204)。判定の結果、透過した光量が、閾値を超えている場合(ステップS204,No)、表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5は、透過する光が音響光学効果に基づく回折を受けていないことから音波伝搬経路が正常である。このため、判定回路23aは、通信回路22を介して制御部15へ制御信号を出力してキュベットホイール4を回転させ、攪拌装置40の接触子を新たな反応容器5に接触させる。そして、判定回路23aは、ステップS200に戻り、新たな反応容器5について音波伝搬経路上の異常の有無の判定を開始する。
一方、判定の結果、圧電基板27aを透過した光量が、閾値以下の場合(ステップS204,Yes)、透過する光は音響光学効果に基づく回折を受けている。このため、判定回路23aは、音波伝搬経路上に異常ありと判定する(ステップS206)。この場合、判定回路23aは、音波伝搬経路上に異常ありと判定した表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5の位置を表示部17に表示する。また、判定回路23aは、表示部17への異常の表示と併せて、攪拌装置40又は自動分析装置1を停止させてもよい。
なお、音波伝搬経路上に異常ありと判定された反応容器5の場合、攪拌装置40は、実施の形態1の場合と同様に、制御部23によって信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号を増幅回路25によって設定値よりも増幅して表面弾性波素子27の駆動電力を増加させ、或いは制御部23によって信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号の周波数を変化させ、反応容器5に保持された液体試料を設計通りに攪拌するようにする。
このように、実施の形態2の攪拌装置の異常判定方法は、光源41が出射し、受光器42が受光した測定光の光量をもとに音波伝搬経路上の異常の有無を判定するので、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良や音響整合層28の厚さの不均一による音響不整合を音波伝搬経路上の異常として容易に判定することができる。
ここで、攪拌装置40は、図29に示すように、光源41及び受光器42を表面弾性波素子27の斜め上方に配置し、音波伝搬経路上の音響光学効果に基づく回折によって偏向する測定光の光量を圧電基板27aの端面における反射を利用して測定してもよい。このようにして光量を測定すると、攪拌装置40は、光源41及び受光器42を配置する設計上の自由度が増すという利点がある。
また、攪拌装置40は、図30に示すように、振動子27bを側壁5bに向けて表面弾性波素子27を反応容器5に取り付けることにより、表面弾性波によって液体試料Ls中に誘起される疎密波WLを利用して反応容器5に保持された液体試料Lsを攪拌するようにしてもよい。このとき、光源41及び受光器42を表面弾性波素子27の斜め上方に配置する図29に示す場合にも、振動子27bを側壁5bに向けて表面弾性波素子27を反応容器5に取り付けてもよい。
一方、攪拌装置40は、表面弾性波素子27に代えて、実施の形態1の攪拌装置20と同様に、圧電基板35aの表面に振動子35bがアンテナ35cと共に一体に設けられた表面弾性波素子35を使用し、攪拌制御部21のRF送信アンテナ29から無線によって表面弾性波素子35に電力を供給するようにしてもよい。
(実施の形態3)
次に、本発明の攪拌装置、判定回路及び攪拌装置の異常判定方法にかかる実施の形態3について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態2の異常判定方法は、検出手段が検出した測定光の光量と音波伝搬経路上の音響光学効果に基づく回折によって偏向した測定光の光量とを用いて音波伝搬経路上の異常の有無を判定した。これに対し、実施の形態3の異常判定方法は、音波伝搬経路上の温度をもとに音波伝搬経路上の異常の有無を判定している。図31は、実施の形態3に係る攪拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。図32は、反応容器の壁面の発熱を説明するモデル図である。
攪拌装置50は、攪拌制御部21の他に、表面弾性波素子27から反応容器5が保持した液体に至る音波伝搬経路上の温度を検出する検出手段として非接触温度計51を備えている。非接触温度計51は、音波伝搬経路上の温度を非接触で検出する温度計であり、いわゆる放射温度計が使用されている。非接触温度計51は、前記音波伝搬経路が正常な際に検出した参照温度を制御部23に出力し、記憶部23bに記憶させておく。このとき、音波伝搬経路が正常な際としては、例えば、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良がないか、音響整合層28の厚さが均一であり、音響インピーダンスが整合した状態で表面弾性波素子27が反応容器5に取り付けられている状態をいう。
ここで、表面弾性波素子27を反応容器5に取り付けたとき、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良、或いは音響整合層28の厚さの不均一等によって圧電基板27aと側壁5bとの間の音響インピーダンスが整合していないと(音響不整合)、発生したバルク波Wbは、圧電基板27a内や反応容器5の側壁5b内を多重反射しながら伝搬する。この場合、圧電基板27a内や反応容器5の側壁5b内のバルク波Wbは、多重反射を繰り替えしながら圧電基板27a内や側壁5b内を伝搬し、伝搬途中に媒質に吸収されることにより、熱に変わり、圧電基板27aや側壁5bが発熱する。
このため、圧電基板27aと側壁5bとの間に音響不整合が存在すると、反応容器5は、図33に示すように、発熱部Ahが表面弾性波素子27を取り付けた部分から離れた範囲まで広範囲に発生する。これに対し、このような音響不整合がないと、バルク波Wbは、音響整合層28を通って反応容器5の側壁5bから液体試料へと漏れ出してゆく。このため、バルク波Wbは、主として圧電基板27a内で反射するだけであるから、反応容器5は、図34に示すように、圧電基板27aの中央に沿った狭い部分に発熱部Ahが発生するだけである。
そこで、攪拌装置50は、非接触温度計51が音波伝搬経路上の温度を検出する位置として、予め側壁5bの表面弾性波素子27を取り付けた位置と上縁との間に検出部Amを設定しておく。これにより、攪拌装置50は、判定回路23aによって反応容器5の側壁5bと表面弾性波素子27との間の音響不整合によって非接触温度計51が検出した側壁5bの温度が、前記音波伝搬経路が正常な際に検出した参照温度に基づいて予め決めておいた閾値を超えている場合、圧電基板27aと側壁5bとの間の音響不整合を音波伝搬経路上の異常として容易に判定することができる。この場合、参照温度は、非接触温度計51が制御部23へ出力した検出温度に関する温度信号から判定回路23aが算出して記憶部23bに記憶しておき、異常の有無を判定する際に判定回路23aが記憶部23bから読み出せばよい。
以下、実施の形態3の攪拌装置の異常判定方法を、図35に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
先ず、判定回路23aは、非接触温度計51から入力される温度信号から検出部Amの温度を算出する(ステップS300)。次に、判定回路23aは、音波伝搬経路が正常な際に非接触温度計51が検出した参照温度を記憶部23bから読み出す(ステップS302)。
次いで、判定回路23aは、検出部Amの温度が、閾値を超えているか否かを判定する(ステップS304)。判定の結果、検出部Amの温度が、閾値以下の場合(ステップS304,No)、表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5は、検出部Amが過度に発熱してなく、音波伝搬経路が正常である。このため、判定回路23aは、通信回路22を介して制御部15へ制御信号を出力してキュベットホイール4を回転させ、攪拌装置50の接触子を新たな反応容器5に接触させる。そして、判定回路23aは、ステップS300に戻り、新たな反応容器5について音波伝搬経路上の異常の有無の判定を開始する。
一方、判定の結果、検出部Amの温度が、閾値を超えている場合(ステップS304,Yes)、判定回路23aは、音波伝搬経路上に異常ありと判定する(ステップS306)。この場合、判定回路23aは、音波伝搬経路上に異常ありと判定した表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5の位置を表示部17に表示する。また、判定回路23aは、表示部17への異常の表示と併せて、攪拌装置50又は自動分析装置1を停止させてもよい。
なお、攪拌対象の液体によっては、音波伝搬経路上に異常ありと判定された反応容器5の場合、攪拌装置50は、制御部23によって信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号を増幅回路25によって設定値よりも増幅して表面弾性波素子27の駆動電力を増加させ、或いは制御部23によって信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号の周波数を変化させるようにしてもよい。これにより、攪拌装置50は、音波伝搬経路上に異常ありと判定された反応容器5に保持された液体試料を所定の時間で攪拌するように調整する。
このように、実施の形態3の攪拌装置の異常判定方法は、非接触温度計51が検出した検出部Amの温度をもとに音波伝搬経路上の異常の有無を判定する。このため、実施の形態3の攪拌装置の異常判定方法は、表面弾性波素子27の圧電基板27aと反応容器5の側壁5bとの間の音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良、或いは音響整合層28の厚さの不均一等に起因する音響不整合を音波伝搬経路上の異常として容易に判定することができる。
このとき、反応容器5と表面弾性波素子27との間に配置する音響整合層28として接着剤を使用した場合、図36に示すように、音響整合層28が圧電基板27aの端面から側壁5bへはみ出すことがある。このような音響整合層28のはみ出しが発生すると、はみ出した音響整合層28と周囲の空気層との間の音響不整合によって、はみ出した部分の音響整合層28が発熱する。このため、攪拌装置50は、非接触温度計51によって音波伝搬経路上の温度を検出する位置として、図37に示すように、圧電基板27aの端面部分を検出部Amと設定しておくと、反応容器5と表面弾性波素子27との間の音響不整合を音響整合層28のはみ出しによってその差を顕著にさせた状態で、音波伝搬経路上の異常として判定することもできる。
従って、攪拌装置50は、図38に示すように、検出部Am1を側壁5bの上部、検出部Am3を圧電基板27aの端面部分、検出部Am2を側壁5bの上部と圧電基板27aの端面部分との間の3箇所に設定しておくと、音波伝搬経路上の異常の発生位置を検出することに加え、検出した検出部Am1〜Am3の温度によって音波伝搬経路上の異常を反応容器5と表面弾性波素子27との間の音響不整合なのか音響整合層28のはみ出しによる音響不整合なのかという原因まで判定することができる。
一方、攪拌装置50は、非接触温度計51に代えて、図39に示すように、反応容器5の側壁5bに測温プローブ52を取り付け、測温プローブ52が検出した温度の温度信号を制御部23の判定回路23aに温度検出回路53を介して出力するようにしてもよい。これにより、攪拌装置50は、側壁5bと表面弾性波素子27との間の音響不整合を音波伝搬経路上の異常として判定することができる。
このとき、反応容器5と表面弾性波素子27との間に音響不整合が存在すると、圧電基板27a内や側壁5b内を伝搬するバルク波Wbのうち、側壁5b内を伝搬するバルク波Wbは、図40に示すように、多重反射によって底壁5c内にも伝搬してゆく。このため、底壁5c内を伝搬するバルク波Wbが伝搬途中に媒質に吸収されることにより、図41に示すように、底壁5cが発熱し、発熱部Ahが生ずる。
このため、攪拌装置50は、図42に示すように、測温プローブ52を反応容器5の底壁5cに取り付けてもよい。このように、測温プローブ52を反応容器5の下側に配置すると、攪拌装置50は、反応容器5の周辺構成の設計が簡単になるという利点がある。
ここで、攪拌装置50は、非接触温度計51を使用する場合や測温プローブ52を使用する場合に、音波伝搬経路上の温度を検出する検出部Amに接着剤等の音波吸収体を塗布しておくと、表面弾性波素子27が発生した音波の吸収率が増加して発熱部Ahの温度が急激に上昇する。このため、検出部Amに音波吸収体を塗布しておくと、攪拌装置50は、側壁5bと表面弾性波素子27との間の音響不整合による温度上昇を、音波伝搬経路上の異常としてより明確に判定することができる。
また、攪拌装置50は、図43に示すように、音波伝搬経路上の温度を検出する検出部に温度表示部材54を貼付し、温度表示部材54が表示する反応容器5の側壁5b上の温度をCCDカメラ55によって撮像し、判定回路23aにおいて温度表示部材54が表示した温度を検出すると共に、音波伝搬経路上の異常の有無を判定してもよい。ここで、温度表示部材54は、貼付した部分の温度を色変化又は色変化と温度(数値)と共に表示する市販のサーモテープ或いはサーモフィルムを使用することができる。
更に、攪拌装置50は、図44に示すように、振動子27bを側壁5bに向けて表面弾性波素子27を反応容器5に取り付けることにより、表面弾性波を利用して反応容器5に保持された液体試料を攪拌するようにしてもよい。ここで、表面弾性波素子27が発生する表面弾性波Waは、圧電基板27aの表面に沿って伝搬し、圧電基板27aの端面で熱を発生する。このとき、図45に示すように、圧電基板27aにクラックCr等の傷が存在すると、表面弾性波Waは、クラックCrの部分で反射され、圧電基板27a内を多重反射する。このため、表面弾性波素子27は、多重反射する表面弾性波Waの伝搬損失により、図44に示すように、振動子27bに沿った部分が発熱して発熱部Ahが生ずる。
従って、攪拌装置50は、図44に示すように、音波伝搬経路上の温度を検出する検出部Amを圧電基板27aの端部に設定しておく。これにより、攪拌装置50は、非接触温度計51が検出した検出部Amの温度が、前記音波伝搬経路が正常な際に検出した検出部Amの参照温度に基づいて決定した閾値よりも低い場合に、判定回路23aによって圧電基板27a上にクラックCr等の傷が存在すると判定すると共に、この傷を音波伝搬経路上の異常として判定することができる。なお、クラックCr等の傷の存在による音波の反射は、バルク波の場合にも生ずるので、振動子27bを側壁5bの外側に向けて表面弾性波素子27を反応容器5に取り付けた場合にも、クラックCr等の傷を音波伝搬経路上の異常として判定することができる。
一方、攪拌装置50は、図46に示すように、圧電基板35aの表面に振動子35bがアンテナ35cと共に一体に設けられた表面弾性波素子35を使用し、攪拌制御部21のRF送信アンテナ29から無線によって表面弾性波素子35に電力を供給するようにしてもよい。このようにすると、表面弾性波素子35は、表面弾性波素子27に比べて一組の受電パッド27cと接触子が不要となるので、構造が簡単、かつ、小型になり、攪拌装置50を更に小型化することができる。
(実施の形態4)
次に、本発明の攪拌装置、判定回路及び攪拌装置の異常判定方法にかかる実施の形態4について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態3の異常判定方法は、検出手段が検出した音波伝搬経路上の温度をもとに音波伝搬経路上の異常の有無を判定した。これに対し、実施の形態4の異常判定方法は、音波伝搬経路上の温度による音波伝搬経路上の歪量を検出し、検出した歪量をもとに音波伝搬経路上の異常の有無を判定している。図47は、実施の形態4に係る攪拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。
攪拌装置60は、攪拌制御部21の他に、表面弾性波素子27から反応容器5が保持した液体に至る音波伝搬経路上の温度による音波伝搬経路の歪を検出するための検出手段である歪センサ61と歪検出回路62を備えている。歪センサ61は、反応容器5の側壁5bに取り付けて側壁5bの温度変化に伴う歪量を検出する。歪検出回路62は、歪センサ61から入力される側壁5bの温度変化に伴う歪量に基づく歪信号をもとに歪量を検出する回路で、歪量信号を制御部23に出力する。攪拌装置60は、前記音波伝搬経路が正常な際に検出した参照歪量を予め歪検出回路62から出力し、制御部23の記憶部23bに記憶させておくと共に、参照歪量をもとに音波伝搬経路上の異常か否かを判定するための歪量に関する閾値を決めておく。これにより、判定回路23aは、音響整合層28の部分的な欠如や圧電基板27aの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良、或いは音響整合層28の厚さの不均一等の音響不整合による温度上昇に伴う側壁5bの歪量から音波伝搬経路上の異常の有無を検出することができる。
以下、実施の形態4の攪拌装置の異常判定方法を、図48に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
先ず、判定回路23aは、歪検出回路62から入力される歪量信号から反応容器5の側壁5bの温度変化に伴う歪量を算出する(ステップS400)。次に、判定回路23aは、音波伝搬経路が正常な際に歪検出回路62から出力した参照歪量を記憶部23bから読み出す(ステップS402)。
次いで、判定回路23aは、算出した歪量が、閾値を超えたか否かを判定する(ステップS404)。判定の結果、算出した歪量が、閾値以下の場合(ステップS404,No)、表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5は、音波伝搬経路が正常である。このため、判定回路23aは、通信回路22を介して制御部15へ制御信号を出力してキュベットホイール4を回転させ、攪拌装置60の接触子を新たな反応容器5に接触させる。そして、判定回路23aは、ステップS400に戻り、新たな反応容器5について音波伝搬経路上の異常の有無の判定を開始する。
一方、判定の結果、算出した歪量が、閾値を超えている場合(ステップS404,Yes)、判定回路23aは、音波伝搬経路上に異常ありと判定する(ステップS406)。この場合、判定回路23aは、音波伝搬経路上に異常ありと判定した表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5の位置を表示部17に表示する。また、判定回路23aは、表示部17への異常の表示と併せて、攪拌装置60又は自動分析装置1を停止させてもよい。
なお、攪拌対象の液体によっては、音波伝搬経路上に異常ありと判定された反応容器5の場合、攪拌装置60は、制御部23によって信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号を増幅回路25によって設定値よりも増幅して表面弾性波素子27の駆動電力を増加させ、或いは制御部23によって信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号の周波数を変化させるようにしてもよい。これにより、攪拌装置60は、音波伝搬経路上に異常ありと判定された反応容器5に保持された液体試料を所定の時間で攪拌するように調整する。
このように、実施の形態4の攪拌装置の異常判定方法は、歪センサが検出した反応容器5の歪量をもとに音波伝搬経路上の異常の有無を判定するので、表面弾性波素子27の圧電基板27aと反応容器5の側壁5bとの間の音響不整合を音波伝搬経路上の異常として容易に判定することができる。
なお、攪拌装置60は、振動子27bを側壁5bに向けて表面弾性波素子27を反応容器5に取り付けることにより、表面弾性波を利用して反応容器5に保持された液体試料を攪拌するようにしてもよい。また、攪拌装置60は、表面弾性波素子27に代えて、圧電基板35aの表面に振動子35bがアンテナ35cと共に一体に設けられた図46に示す表面弾性波素子35を使用し、攪拌制御部21のRF送信アンテナ29から無線によって表面弾性波素子35に電力を供給するようにしてもよい。
(実施の形態5)
次に、本発明の攪拌装置、判定回路及び攪拌装置の異常判定方法にかかる実施の形態5について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態4の異常判定方法は、音波伝搬経路上の温度による音波伝搬経路上の歪量を検出し、検出した歪量をもとに音波伝搬経路上の異常の有無を判定した。これに対し、実施の形態5の異常判定方法は、音波発生手段からの反射電力をもとに音波伝搬経路上の異常の有無を判定手段によって判定している。図49は、実施の形態5に係る攪拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。
実施の形態5の攪拌装置70は、攪拌制御部21と反応容器5の側壁5bに取り付けた表面弾性波素子27とを備えている。ここで、表面弾性波素子27は、一般に、駆動周波数が共振周波数の場合に電力の反射率が最小であり、圧電基板27aの温度が上昇するのに伴って共振周波数が高周波数側へ移動する特性を有している。このとき、攪拌装置70は、血液や体液等、人体から採取した検体を分析する自動分析装置1で使用することを考慮すると、例えば、理想的には37℃で電力の反射率が最小となるように設計する。このとき、表面弾性波素子27は、表面弾性波素子27の接合不良や音響整合層の厚さの不均一等のない音波伝搬経路が正常な場合の参照反射電力の周波数特性が図50に実線で示すようになる。
しかし、表面弾性波素子27を反応容器5の側壁5bに取り付ける際の音響整合層の部分的な欠如や圧電基板27aの側壁5bからの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良や音響整合層の厚さの不均一等、表面弾性波素子27から反応容器5が保持した液体試料に至る音波伝搬経路上に異常が生ずる場合がある。このような音波伝搬経路上の異常があると、攪拌装置70は、表面弾性波素子27の振動子27bが発生したバルク波が圧電基板27a内や反応容器5の壁面内で多重反射しながら伝搬し、伝搬に伴うバルク波の吸収によって圧電基板27aや反応容器5の壁面が発熱する。
このため、表面弾性波素子27を駆動したときの反射電力の周波数特性は、図50に示すように、点線で示すように変化し、中心周波数がf1に移動してしまう。この結果、攪拌装置70は、設計時の中心周波数f0で駆動すると、電力の反射率が0.1から0.5へと増加してしまう。
そこで、攪拌装置70は、音波伝搬経路が正常な場合に電力検出回路26によって検出した参照反射電力に基づいて反射率の閾値Tを決め、予め記憶部23bに参照反射電力と共に閾値Tを記憶させておく。そして、判定回路23aは、検体の分析時に電力検出回路26が検出した反射電力と前記閾値とをもとに、反射電力が閾値Tを超えている場合に、圧電基板27aや反応容器5の壁面が過度に発熱し、表面弾性波素子27から反応容器5が保持した液体試料に至る音波伝搬経路上に異常があると判定することができる。
以下、実施の形態5の攪拌装置の異常判定方法を、図51に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
先ず、判定回路23aは、電力検出回路26から入力される反射電力データをもとに表面弾性波素子27からの反射電力を検出する(ステップS500)。次に、判定回路23aは、参照反射電力に基づいて決めた反射率の閾値Tを記憶部23bから読み出す(ステップS502)。
次いで、判定回路23aは、検出した反射電力が、閾値を超えたか否かを判定する(ステップS504)。判定の結果、検出した反射電力が、参照反射電力に基づいて決めた閾値T以下の場合(ステップS504,No)、表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5は、音波伝搬経路が正常であると判断される。このため、判定回路23aは、通信回路22を介して制御部15へ制御信号を出力してキュベットホイール4を回転させ、攪拌装置70の接触子を新たな反応容器5に接触させる。そして、判定回路23aは、ステップS500に戻り、新たな反応容器5について音波伝搬経路上の異常の有無の判定を開始する。
一方、判定の結果、検出した反射電力が、閾値を超えている場合(ステップS504,Yes)、判定回路23aは、音波伝搬経路上に異常ありと判定する(ステップS506)。この場合、判定回路23aは、音波伝搬経路上に異常ありと判定した表面弾性波素子27を取り付けた反応容器5の位置を表示部17に表示する。また、判定回路23aは、表示部17への異常の表示と併せて、攪拌装置70又は自動分析装置1を停止させてもよい。
なお、音波伝搬経路上に異常ありと判定された反応容器5の場合、攪拌装置70は、制御部23によって信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号を増幅回路25によって設定値よりも増幅して表面弾性波素子27の駆動電力を増加させ、或いは制御部23によって信号発生回路24が表面弾性波素子27へ出力する駆動信号の周波数を変化させる。これにより、攪拌装置70は、音波伝搬経路上に異常ありと判定された反応容器5に保持された液体試料を設計通りに攪拌するようにする。
このように、実施の形態5の攪拌装置の異常判定方法は、電力検出回路26が検出した反射電力と参照反射電力に基づく閾値とをもとに音波伝搬経路上の異常の有無を判定するので、表面弾性波素子27を反応容器5の側壁5bに取り付ける際の音響整合層の部分的な欠如や圧電基板27aの側壁5bからの剥離に起因した表面弾性波素子27の接合不良、音響整合層の厚さの不均一等の音響不整合による音波伝搬経路上の異常を容易に判定することができる。
なお、攪拌装置70は、振動子27bを側壁5bに向けて表面弾性波素子27を反応容器5に取り付けることにより、表面弾性波を利用して反応容器5に保持された液体試料を攪拌するようにしてもよい。また、攪拌装置70は、表面弾性波素子27に代えて、圧電基板35aの表面に振動子35bがアンテナ35cと共に一体に設けられた図46に示す表面弾性波素子35を使用し、攪拌制御部21のRF送信アンテナ29から無線によって表面弾性波素子35に電力を供給するようにしてもよい。