JP4794116B2 - 光情報媒体 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、再生専用光ディスク、光記録ディスク、光磁気記録ディスク等の光情報媒体に関し、より詳しくは、記録及び/又は再生ビーム入射側表面の防汚性に優れ、エラーレート特性に優れる光情報媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
再生専用光ディスク、光記録ディスク、光磁気記録ディスク等の光ディスクの表面には、その使用に際して各種汚染物質による汚染や指紋の付着が起こる。これら汚染や指紋の付着は好ましいことではなく、光ディスクの表面に、防汚性の改善、指紋付着性の減少、又は指紋除去性の向上のために適切な表面処理が施されることもある。例えば、光ディスク表面に種々の撥水・撥油処理を施すことが検討されている。
【0003】
特に近年、光情報媒体においては、動画像情報等の膨大な情報を収めるためにさらに記録密度を高めることが求められており、さらなる記録容量の高密度化のため研究開発がさかんに行われている。その中のひとつとして、例えばDVDに見られるように、記録/再生波長を短くし、対物レンズの開口数(NA)を大きくして、記録/再生ビームの集光スポット径を小さくすることが提案されている。実際に、CDと比較すると、記録/再生波長を780nmから650nmに、開口数(NA)を0.45から0.60にすることにより、6〜8倍の記録容量(4.7 GB/面)を達成している。また、最近、高品位の動画像を長時間記録するための方法として、さらに記録/再生波長を400nm程度まで短くし、開口数を0.85まで高めることによって、DVDの4倍以上の記録容量を達成した Blu-ray Disc が製品化された。
【0004】
このように記録密度を高めていくと、媒体の記録/再生ビーム入射側表面における記録/再生ビームの集光スポット径が小さくなるために( Blu-ray Disc におけるスポット面積はDVDの7%程度)、媒体のレーザービーム入射側表面に付着した塵埃や指紋等に対して従来以上に敏感になってしまう。特に、指紋をはじめとする有機物を含む汚れについては、汚れが媒体のレーザービーム入射側表面に付着した際の影響が大きく、また、その除去もしにくいことから、これまでに多くの対策が考えられている。
【0005】
例えば、特開平10−110118号公報及び特開平11−293159号公報には、ポリカーボネート等からなる光ディスク基板の表面にハードコート剤塗膜を形成する際に、ハードコート剤中に非架橋型のフッ素系界面活性剤を練り込むことが提案されている。
【0006】
特開2002−190136号公報には、表面の防汚性に優れた光情報媒体が開示されている。
【0007】
WO03/029382A1号公報には、表面の指紋除去性に優れた光情報媒体が開示され、光情報媒体表面の指紋除去性等を定量的に評価するための人工指紋液が開示されている。人工指紋液は、微粒子状物質と前記微粒子状物質を分散可能な分散媒とを含む。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−110118号公報
【特許文献2】
特開平11−293159号公報
【特許文献3】
特開2002−190136号公報
【特許文献4】
WO03/029382A1号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、記録及び/又は再生ビーム入射側表面の防汚性に優れ、前記表面に指紋が付着した場合においても、再生時のエラーレート特性に非常に優れる光情報媒体を提供することにある。
【0010】
本発明のさらなる目的は、記録及び/又は再生ビーム入射側表面の防汚性に優れ、前記表面に指紋が付着した後に記録した場合においても、エラーレート特性に非常に優れる光情報媒体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) 支持基体上に情報記録層と、情報記録層上の光透過層と、光透過層上のハードコート層とを少なくとも有し、ハードコート層が記録及び/又は再生ビーム入射側とされ且つ記録及び/又は再生ビーム入射側表面における記録及び/又は再生ビームの最小径が500μm以下となるシステムに用いられる光情報媒体であって、
前記ハードコート層は、(A)平均粒子径5nm以上100nm以下の無機微粒子と、(B)活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物と、(C)前記(B)以外の活性エネルギー線硬化性化合物とを、前記(A)、(B)及び(C)の総和を基準として、(A)無機微粒子5重量%以上80重量%以下と、(B)シリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物0.25重量%以上10重量%以下と、(C)活性エネルギー線硬化性化合物10重量%以上89.999重量%以下とを含む組成物の硬化物からなり、
(A)無機微粒子は、シリカ微粒子であり、
(B)活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物は、シリコーン系置換基及び/又はフッ素系置換基と、(メタ)アクリロイル基とを有する化合物であり、
(C)活性エネルギー線硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、
光情報媒体の記録及び/又は再生ビーム入射側表面に、微粒子状物質としてJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ローム0.4重量部、分散媒としてトリオレイン1重量部、及び希釈剤としてメトキシプロパノール10重量部からなる評価用分散液を、次の手順:
A.評価用分散液を原版用ポリカーボネート基板上にスピンコート法により塗布し、評価用分散液転写用の原版を作製し、
B.シリコーンゴム製の転写材を準備し、
C.作製された原版の評価用分散液が塗布された表面に、転写材を4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分を転写材に移行させ、
D.評価用分散液成分が移行した転写材を、付着量低減用ポリカーボネート基板表面に4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分の付着量を低減させ、
E.評価用分散液成分の付着量が低減された転写材を、付着量低減用ポリカーボネート基板表面の別の箇所に4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分の付着量をさらに低減させ、
F.評価用分散液成分の付着量が2回低減された転写材を、光情報媒体の記録及び/又は再生ビーム入射側表面に4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分を光情報媒体の前記表面に付着させる
によって付着させたとき、付着操作が行われた表面の単位面積当たりに付着した評価用分散液滴が占める面積割合が6%以下である光情報媒体。
【0012】
(2) 付着操作が行われた表面の単位面積当たりに付着した評価用分散液滴が占める前記面積割合が4.8%以下である、(1) に記載の光情報媒体。
【0018】
(3) 前記光透過層及び前記ハードコート層の合計の厚さは、70〜150μmである、(1) 又は(2) に記載の光情報媒体。
【0019】
(4) 青色レーザービームを用いた記録/再生システムに用いられる、(1) 〜(3) のうちのいずれかに記載の光情報媒体。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の光情報媒体は、記録及び/又は再生ビーム入射側表面の防汚性に非常に優れており、前記表面における記録及び/又は再生ビームの最小径が500μm以下となるシステムに非常に好適に用いられる。
【0024】
1.記録/再生ビーム入射側表面における記録/再生ビームの最小径が500μm以下となる光情報媒体:
まず、記録/再生ビーム入射側表面における記録/再生ビームの最小径が500μm以下となる光情報媒体について説明する。このような光情報媒体では、使用に際して記録/再生ビーム入射側表面に指紋等が付着すると、エラーレートが悪化する不都合が特に起こりやすい。指紋等が多く付着すると、エラーレートの悪化のみならず、トラッキングが破綻する。
【0025】
本発明の光情報媒体の構成例を図1に示す。この光情報媒体は記録媒体であり、比較的剛性の高い支持基体(20)上に情報記録層としての記録層(4) を有し、記録層(4) 上に光透過層(7) を有し、光透過層(7) 上に光透過性ハードコート層(8) を有する。ハードコート層(8) が記録/再生ビーム入射側とされ、記録又は再生のためのレーザービームはハードコート層(8) 及び光透過層(7) を通して記録層(4) に入射する。光透過層(7) の厚さは、ハードコート層(8) を含めて、好ましくは30〜300μm、より好ましくは70〜150μmである。このような光情報媒体は、ハードコート層(8) 側の鉛筆硬度試験でB以上の硬さを有する。
【0026】
指紋付着による記録/再生特性への影響は、媒体のレーザービーム入射側表面におけるレーザービームの直径(ビーム断面が楕円の場合は最小径)に依存し、この直径が小さいと、エラー訂正が不可能な連続エラーが生じるなど、影響が大きくなる。本発明者らの研究によれば、媒体の入射側表面におけるレーザービームの直径が500μm以下、特に300μm以下であると、媒体の取り扱いの際に指紋が付着したときの記録/再生特性への悪影響が顕著となることが分かった。なお、媒体のレーザービーム入射側表面におけるレーザービームの直径は、図1における光透過層(7) の厚さをt、光透過層(7) の屈折率をnとし、記録/再生光学系の対物レンズの開口数をNAとしたとき、
レーザービームの直径=2t・tan{sin-1(NA/n)}
で表される。ただし、ハードコート層(8) と光透過層(7) の屈折率の差は小さく、また、ハードコート層(8) の厚さは光透過層(7) の厚さに比べて小さいため、ハードコート層は無視されている。例えば、 Blu-ray Disc においては、t=100μm、NA=0.85、n=1.55とすると、ディスクの入射側表面におけるレーザービームの直径の値は、約130μmとなる。
【0027】
本発明は、記録層の種類によらず適用できる。すなわち、例えば、相変化型記録媒体であっても、ピット形成タイプの記録媒体であっても、光磁気記録媒体であっても適用できる。なお、通常は、記録層の少なくとも一方の側に、記録層の保護や光学的効果を目的として誘電体層や反射層が設けられるが、図1では図示が省略されている。また、本発明は、図示するような記録可能タイプに限らず、再生専用タイプにも適用可能である。その場合、支持基体(20)と一体的にピット列が形成され、そのピット列を被覆する反射層(金属層又は誘電体多層膜)が、情報記録層を構成する。
【0028】
本発明の相変化型記録媒体の場合の光情報媒体について説明する。
図2は、本発明の光ディスクの一例の概略断面図である。図2において、光ディスクは、支持基体(20)の情報ピットやプリグルーブ等の微細凹凸が形成されている側の面上に、反射層(3) 、第2誘電体層(52)、相変化記録材料層(4) 及び第1誘電体層(51)をこの順で有し、第1誘電体層(51)上に光透過層(7) を有し、光透過層(7) 上にハードコート層(8) を有する。この例では、反射層(3) 、第2誘電体層(52)、相変化記録材料層(4) 及び第1誘電体層(51)が情報記録層を構成する。光ディスク(1) は、ハードコート層(8) 及び光透過層(7) を通して、記録又は再生のためのレーザー光が入射するように使用される。
【0029】
支持基体(20)は、厚さ0.3〜1.6mm、好ましくは厚さ0.5〜1.3mmであり、記録層(4) が形成される側の面に、情報ピットやプリグルーブ等の微細な凹凸が形成されている。
【0030】
支持基体(20)としては、上記のように光透過層(7) 側からレーザー光が入射するように使用されるので光学的に透明である必要はないが、透明な材料としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種プラスチック材料等が使用できる。あるいは、ガラス、セラミックス、金属等を用いても良い。凹凸パターンは、プラスチック材料を用いる場合には、射出成形することにより作成されることが多く、プラスチック材料以外の場合には、フォトポリマー法(2P法)によって成形される。
【0031】
支持基体(20)上には、通常、反射層(3) がスパッタリング法により形成される。反射層の材料としては、金属元素、半金属元素、半導体元素又はそれらの化合物を単独あるいは複合させて用いる。具体的には、例えばAu、Ag、Cu、Al、Pd等の周知の反射層材料から選択すればよい。反射層は、厚さ20〜200nmの薄膜として形成することが好ましい。
【0032】
反射層(3) 上に、あるいは反射層のない場合には支持基体(20)上に直接、第2誘電体層(52)、相変化記録材料層(4) 、第1誘電体層(51)がこの順でスパッタリング法により形成される。
【0033】
相変化記録材料層(4) は、レーザー光照射によって結晶状態とアモルファス状態とに可逆的に変化し、両状態の間で光学特性が異なる材料により形成される。
例えば、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Sn−Se−Te、Ge−Te−Sn、In−Se−Tl、In−Sb−Te等が挙げられる。さらに、これらの材料に、Co、Pt、Pd、Au、Ag、Ir、Nb、Ta、V、W、Ti、Cr、Zr、Bi、In等から選ばれる金属のうちの少なくとも1種を微量に添加してもよく、窒素等の還元性ガスを微量に添加してもよい。記録材料層(4) の厚さは、特に限定されることなく、例えば、3〜50nm程度である。
【0034】
第2誘電体層(52)及び第1誘電体層(51)は、記録材料層(4) の上下両面側にこれを挟んで形成される。第2誘電体層(52)及び第1誘電体層(51)は、記録材料層(4) の機械的、化学的保護の機能と共に、光学特性を調整する干渉層としての機能を有する。第2誘電体層(52)及び第1誘電体層(51)はそれぞれ、単層からなっていてもよく、複数層からなっていてもよい。
【0035】
第2誘電体層(52)及び第1誘電体層(51)はそれぞれ、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgから選ばれる金属のうちの少なくとも1種を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいはこれらの複合物から形成されることが好ましい。また、第2誘電体層(52)及び第1誘電体層(51)のそれぞれの消衰係数kは、0.1以下であることが好ましい。
【0036】
第2誘電体層(52)の厚さは、特に限定されることなく、例えば、20〜150nm程度が好ましい。第1誘電体層(51)の厚さは、特に限定されることなく、例えば、20〜200nm程度が好ましい。両誘電体層(52)(51)の厚さをこのような範囲で選択することにより、反射の調整ができる。
【0037】
第1誘電体層(51)上に、光透過層(7) を活性エネルギー線硬化性材料を用いて、あるいはポリカーボネートシート等の光透過性シートを用いて形成する。
【0038】
光透過層(7) に用いる活性エネルギー線硬化性材料としては、光学的に透明で、使用されるレーザー波長領域での光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さいことを条件として、紫外線硬化性材料及び電子線硬化性材料から選択する。
【0039】
具体的には、紫外線(電子線)硬化性化合物やその重合用組成物から構成されることが好ましい。このようなものとしては、アクリル酸やメタクリル酸のエステル化合物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートのようなアクリル系二重結合、ジアリルフタレートのようなアリル系二重結合、マレイン酸誘導体等の不飽和二重結合等の紫外線照射によって架橋あるいは重合する基を分子中に含有又は導入したモノマー、オリゴマー及びポリマー等を挙げることができる。これらは多官能、特に3官能以上であることが好ましく、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。また、単官能のものを必要に応じて用いてもよい。
【0040】
紫外線硬化性モノマーとしては、分子量2000未満の化合物が、オリゴマーとしては分子量2000〜10000のものが好適である。これらはスチレン、エチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート等も挙げられるが、特に好ましいものとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ) アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ) アクリレート、フェノールエチレンオキシド付加物の(メタ) アクリレート等が挙げられる。この他、紫外線硬化性オリゴマーとしては、オリゴエステルアクリレートやウレタンエラストマーのアクリル変性体等が挙げられる。
【0041】
紫外線(電子線)硬化性材料は、公知の光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤は、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には特に必要はないが、紫外線を用いる場合には必要となる。光重合開始剤は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから適宜選択すればよい。光重合開始剤のうち、光ラジカル開始剤としては、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア651 、イルガキュア184 、イルガキュア907 (いずれもチバスペシャルティケミカルズ社製)が挙げられる。光重合開始剤の含有量は、例えば、前記紫外線(電子線)硬化性成分に対して、0.5〜5重量%程度である。
【0042】
また、紫外線硬化性材料としては、エポキシ化合物及び光カチオン重合触媒を含有する組成物も好適に使用される。エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物が好ましく、特に、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド等の1種以上が好ましい。脂環式エポキシ化合物のエポキシ当量に特に制限はないが、良好な硬化性が得られることから、60〜300、特に100〜200であることが好ましい。
【0043】
光カチオン重合触媒は、公知のいずれのものを用いてもよく、特に制限はない。例えば、1種以上の金属フルオロホウ酸塩及び三フッ化ホウ素の錯体、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、6A族元素の芳香族オニウム塩、5A族元素の芳香族オニウム塩、3A族〜5A族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6 アニオン(ただしMは、P、As又はSb)を有する6A族元素、トリアリールスルホニウム錯塩、芳香族イオドニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩等を用いることができ、特に、ポリアリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム塩又はイオドニウム塩、3A族元素、5A族元素及び6A族元素の芳香族オニウム塩の1種以上を用いることが好ましい。光カチオン重合触媒の含有量は、例えば、前記紫外線硬化性成分に対して、0.5〜5重量%程度である。
【0044】
この光透過層に用いる活性エネルギー線硬化性材料としては、1,000 〜10,000cpの粘度(25℃)を有するものが好ましい。
【0045】
光透過層(7) の形成において、第1誘電体層(51)上への活性エネルギー線硬化性材料の塗布はスピンコーティング法により行うとよい。光透過層(7) の厚さは、例えば、硬化後において、10〜300μm程度、好ましくは20μm以上200μm以下、とりわけ70μm以上150μm以下、より特別に75μm以上150μm以下とするとよい。紫外線を照射して、硬化させるとよい。この際の紫外線照射を複数回に分けて行ってもよい。また、活性エネルギー線硬化性材料の塗布操作を複数回に分けて行ってもよく、各塗布操作の後に紫外線照射を行ってもよい。紫外線照射を複数回に分けて行い樹脂を段階的に硬化させることで、一度にディスクにたまる硬化収縮による応力を小さくすることが可能となり、最終的にディスクにたまる応力が小さくなる。その結果、光透過層(7) の厚さが上記のように厚い場合であっても、機械特性に優れたディスクを作成することができるので好ましい。
【0046】
あるいは、本発明において、光透過性樹脂シートを用いて光透過層を形成することもできる。この場合には、第1誘電体層(51)上に、光透過層用と同様の活性エネルギー線硬化性材料を塗布し、未硬化の樹脂材料層を形成する。未硬化の樹脂材料層上に、光透過層(7) としての光透過性シートを載置し、その後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して樹脂材料層を硬化することにより、光透過性シートを接着し光透過層(7) とする。この樹脂材料層に用いる活性エネルギー線硬化性材料としては、3〜500cpの粘度(25℃)を有するものが好ましい。樹脂材料層の塗布はスピンコーティング法により行うとよい。樹脂材料層の厚さは、例えば、硬化後において、1〜50μm程度とするとよい。
【0047】
光透過性シートとしては、例えば、50〜300μmから選ばれる所望の厚さを有するポリカーボネートシートが用いられる。光透過層(7) の形成は、より具体的には、真空中(0.1気圧以下)において、所望厚さのポリカーボネートシートを、未硬化の樹脂材料層上に載置し、次いで、大気圧雰囲気に戻し、紫外線を照射して樹脂材料層を硬化させる。
【0048】
光透過層(7) 上に、活性エネルギー線硬化性のハードコート層用組成物を塗布し、紫外線、電子線、可視光等の活性エネルギー線を照射して組成物を硬化して、ハードコート層(8) を形成する。ハードコート層用組成物は、(A)平均粒子径100nm以下の無機微粒子と、(B)活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物と、(C)前記(B)以外の活性エネルギー線硬化性化合物とを含む。これらの各成分について説明する。
【0049】
ハードコート層用組成物に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物(C)は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びメルカプト基の中から選択される少なくとも1つの活性基を有する化合物であれば、特にその構造は限定されない。活性エネルギー線硬化性化合物は、ハードコートとして十分な硬度を得るため、1つの分子内に2つ以上、好ましくは3つ以上の重合性基を含む多官能モノマーもしくはオリゴマーを含んでいることが好ましい。多官能モノマーもしくはオリゴマーを多く用い過ぎるとハードコートの硬度は高くなるが、硬化収縮が大きくなり、ディスクの反りが大きくなるので、注意を要する。
【0050】
このような活性エネルギー線硬化性化合物(C)のうち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレート等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0051】
また、ビニル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ヒドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0052】
また、メルカプト基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0053】
ハードコート層用組成物に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物(C)としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
ハードコート層用組成物に含まれる無機微粒子(A)は、ハードコート層の透明性を確保するために平均粒子径100nm以下、好ましくは20nm以下のものである。無機微粒子(A)の平均粒子径は、コロイド溶液製造上の制約から、5nm以上である。
【0055】
(A)無機微粒子は、例えば、金属(又は半金属)酸化物の微粒子、又は金属(又は半金属)硫化物の微粒子である。無機微粒子の金属又は半金属としては、例えば、Si、Ti、Al、Zn、Zr、In、Sn、Sb等が挙げられる。また、酸化物、硫化物の他に、Se化物、Te化物、窒化物、炭化物を用いることもできる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の微粒子が挙げられ、シリカ微粒子が好ましい。このような無機微粒子をハードコート剤組成物に添加しておくことにより、ハードコート層の耐摩耗性をより高めることができる。
【0056】
前記シリカ微粒子の中でも、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物によって表面修飾されたものが好ましく用いられる。このような反応性シリカ微粒子は、ハードコートを硬化させる際の活性エネルギー線照射によって、架橋反応を起こし、ポリマーマトリックス中に固定される。このような反応性シリカ微粒子として、例えば特開平9−100111号公報に記載された反応性シリカ粒子があり、本発明において好ましく用いることができる。
【0057】
(B)活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物は、ハードコート層表面に撥水性及び/又は潤滑性を賦与するために用いられる。撥水性及び/又は潤滑性を賦与するための置換基として、シリコーン系置換基及び/又はフッ素系置換基が挙げられる。また、活性エネルギー線重合性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びメルカプト基から選択される活性エネルギー線ラジカル重合性反応性基や、環状エーテル基及びビニルエーテル基から選択される活性エネルギー線カチオン重合性反応性基が挙げられる。このようなラジカル重合性反応性基又はカチオン重合性反応性基を有するシリコーン系化合物、又はフッ素系化合物を用いる。
【0058】
シリコーン系化合物としては、シリコーン系の置換基を有する部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられ、より詳細には、例えば下記式(1)から(3)に示す化合物が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0059】
R−[Si(CH3)2O]n−R (1)
R−[Si(CH3)2O]n−Si(CH3)3 (2)
(CH3)3SiO −[Si(CH3)20]n−[Si(CH3)(R)O]m−Si(CH3)3 (3)
ここで、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基を含む置換基であり、n、mはそれぞれ重合度であり、nは5〜1000、mは2〜100である。
【0060】
フッ素系化合物としては、フッ素含有(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-5- メチルヘキシル)-2- ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3-パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート等のフッ化アクリレートが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。例えば、(メタ)アクリレート基が導入されたパーフルオロポリエーテルも好ましく用いることができる。あるいは(メタ)アクリレート基の代わりにビニル基又はメルカプト基を有するフッ素系化合物等も好ましく用いることができる。Fombrin Z DOL (アルコール変性パーフルオロポリエーテル(アウジモント社製))のジアクリレート、フルオライトART3、フルオライトART4(共栄社化学)が具体例として挙げられる。
【0061】
また、フッ素系化合物としては、フッ素含有置換基を有する部位と、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、3-(1H,1H-パーフルオロオクチロキシ)-1,2- エポキシプロパン、3-(1H,1H-パーフルオロノニロキシ)-1,2- エポキシプロパン、3-(1H,1H-パーフルオロデシロキシ)-1,2- エポキシプロパン、3-(1H,1H-パーフルオロウンデシロキシ)-1,2- エポキシプロパン、3-(1H,1H-パーフルオロテトラデシロキシ)-1,2- エポキシプロパン、3-(1H,1H-パーフルオロヘキサデシロキシ)-1,2- エポキシプロパン、1H,1H,6H,6H-パーフルオロ-1,6- ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,8H,8H-パーフルオロ-1,8- オクタンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,9H,9H-パーフルオロ-1,9- ノナンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,10H,10H-パーフルオロ-1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,12H,12H-パーフルオロ-1,12-ドデカンジオールジグリシジルエーテル、Fombrin Z DOL (アルコール変性パーフルオロポリエーテル(アウジモント社製))のジグリシジルエーテル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。例えば、反応性基として3,4-エポキシシクロヘキシル基等の脂環エポキシ基や、ビニルエーテル基を有する化合物も好ましく用いることができる。その他に、フッ素系ブロックコポリマーとして、モディパーF220,F600,F2020,F3035(日本油脂(株)製)等も用いることができる。
【0062】
本発明において、前記ハードコート層用組成物は、前記(A)、(B)及び(C)の総和を基準として、(A)無機微粒子5重量%以上80重量%以下、好ましくは10重量%以上60重量%以下と、(B)シリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物0.25重量%以上10重量%以下、好ましくは0.25重量%以上3重量%以下と、(C)活性エネルギー線硬化性化合物10重量%以上89.999重量%以下、好ましくは30重量%以上89.999重量%以下とを含む。無機微粒子(A)を80重量%よりも多く含有させると、ハードコート層の膜強度が弱くなりやすく、一方、5重量%未満では、ハードコート層の耐摩耗性向上効果が弱い。シリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物(B)を10重量%よりも多く含有させると、潤滑性は向上するがハードコート層の硬さが低くなりやすく、一方、0.25重量%未満では、潤滑性向上効果が弱い。
【0063】
ハードコート層用組成物は、上述したような公知の光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤は、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には特に必要はないが、紫外線を用いる場合には必要となる。光重合開始剤の含有量は、例えば、ハードコート層用組成物中において、前記(A)、(B)及び(C)の総和に対して、0.5〜5重量%程度である。
【0064】
また、ハードコート層用組成物はさらに、必要に応じて、非重合性の希釈溶剤、有機フィラー、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、ケイ素化合物などを含んでいても差し支えない。
【0065】
本発明において、光透過層(7) 上に、前記ハードコート層用組成物を塗布して未硬化のハードコート層を形成し、その後、活性エネルギー線を照射して未硬化層を硬化して、ハードコート層(8) とする。塗布方法は、限定されることなく、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法等の各種塗布方法を用いるとよい。あるいは、光透過層(7) として光透過性シートを使用する場合、長尺状の光透過性シート原反に予め上記と同様の方法でハードコート層(8) を形成しておき、この原反をディスク形状に打ち抜いた後、前記のように未硬化の樹脂材料層上に載置し樹脂材料層を硬化させてもよい。
【0066】
前記ハードコート層用組成物が非反応性希釈有機溶剤を含んでいる場合には、前記ハードコート層用組成物を塗布して未硬化のハードコート層を形成した後、非反応性有機溶剤を加熱乾燥により除去し、その後、活性エネルギー線を照射して未硬化層を硬化して、ハードコート層(8) とする。希釈有機溶剤を用いてハードコート層用組成物を塗布して、有機溶剤を加熱乾燥により除去することにより、反応性シリコーンが未硬化のハードコート層の表面近傍により多く集まりやすくなり、硬化後のハードコート層(8) の表面近傍により多くシリコーンが存在することになり、より大きな潤滑性向上効果が得られ易い。この際の加熱乾燥の温度としては、例えば、温度40℃以上100℃以下が好ましい。加熱乾燥の時間としては、例えば30秒以上8分以下、好ましくは1分以上5分以下、より好ましくは3分以上5分以下とする。非反応性希釈有機溶剤としては、特に限定されないが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール等が用いられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光などの活性エネルギー線の中から適切なものを選択して用いればよいが、好ましくは紫外線又は電子線を用いる。硬化後のハードコート(8) の膜厚は、0.5〜5μm程度とする。
【0067】
また、本発明において、図3に例示するように、光情報媒体は、ハードコート層(8) 上にさらに、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物を主成分とする組成物の塗布・硬化物からなる表面薄層(9) を有していてもよい。表面薄層(9) 用の活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物としては、前述したハードコート層(8) 用のシリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物(B)の中から、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。表面薄層(9) の厚さは、例えば1nm〜100nmである。表面薄層(9) により、防汚性がさらに向上する。
【0068】
以上のように、記録/再生ビーム入射側表面における記録/再生ビームの最小径が500μm以下となる光情報媒体として、図2又は図3に例示する相変化型光記録ディスクが得られる。
【0069】
2.記録/再生ビーム入射側表面における記録/再生ビームの最小径が500μmを超える光情報媒体(本発明の範囲外):
次に、記録/再生ビーム入射側表面における記録/再生ビームの最小径が500μmを超える光情報媒体について説明する。このような光情報媒体においても、使用に際して記録/再生ビーム入射側表面に指紋等が付着すると、エラーレートが悪化する不都合が起こりやすい。指紋等が多く付着すると、エラーレートの悪化のみならず、トラッキングすらできなくなる。
【0070】
本発明の光情報媒体の構成例を図4に示す。図4に例示する媒体は、光透過性支持基体(20)の一方の面上に情報記録層(4) と、情報記録層(4) 上の保護層(6) とを有し、支持基体(20)の他方の面上に光透過性ハードコート層(8) を有する。ハードコート層(8) が記録/再生ビーム入射側とされ、記録又は再生のためのレーザービームはハードコート層(8) 及び支持基体(20)を通して記録層(4) に入射する。
【0071】
本発明の光情報媒体の他の構成例を図5に示す。図5に例示する光記録媒体は、光透過性支持基体(20)の一方の面上に情報記録層としての有機色素層(4) と、色素層(4) 上の反射層(3) と、反射層(3) 上に接着層(61)を介して貼り合わされた支持基体(21)とを有し、支持基体(20)の他方の面上に光透過性ハードコート層(8) を有し、ハードコート層(8) が記録/再生ビーム入射側とされる。
【0072】
このような光記録媒体として、再生専用型のDVD−ROM、追記型のDVD−R、書換え可能型のDVD−RAM等、種々のものが商品化されている。再生専用型のDVDとしては、DVD−VideoやDVD−ROM等があるが、これらの光記録媒体では、光透過性基板の形成の際に、情報信号が記録されたピットと呼ばれる凹凸が形成され、その上にAlなどの金属反射層が形成され、さらに保護層が形成される。保護層上に接着層(61)を介して別の支持基体が貼り合わされて、最終的な光記録媒体となる。
【0073】
支持基体(20)としては、光透過性の基板が用いられる。光透過性支持基体(20)は従来、ポリカーボネート樹脂を射出成形し、その表面に種々の情報、例えばプレピットやプレグルーブ等を形成しているが、用いる材料はこれに限定されるものでなく、ポリオレフィン樹脂等の樹脂等も好ましく用いられる。あるいは、ガラス平板に2P法によりプレピットやプリグルーブを形成することによっても得られる。
【0074】
支持基体(20)上に、スピンコート法により溶剤に溶解した有機色素を塗布し、乾燥することで目的の膜厚の有機色素層(4) を形成する。有機色素としては、種々のシアニン色素、アゾ色素、フタロシアニン色素等から選択する。色素層形成の方法はスピンコート法以外にスプレー法やスクリーン印刷法、さらには蒸着法等も適用可能で、形成する膜厚は用いる色素によって適宜、選択される。
【0075】
スピンコート法を適用する場合、色素成分を溶媒に溶解して有機色素溶液として使用するが、溶媒としては、色素を十分溶解することができ、また透過性基板に悪影響を及ぼさないものを選択して用いる。濃度は0.01〜10重量%程度が好ましい。
【0076】
溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、オクタフルオロペンタノール、アリルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラフルオロプロパノール等のアルコール系;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒;3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、乳酸メチル等のエステル系溶媒;水などが挙げられ、これらの中から基板材料を侵さないものを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0077】
有機色素層の膜厚は、特に限定するものでないが、10〜300nm程度が好ましく、特には60〜250nm程度である。
【0078】
有機色素層(4) 上に反射層(3) を設ける。反射層の材料としては、再生光の波長で反射率の充分高いもの、例えばAu、Ag、Cu、Al、Ni、Pd、Cr、Pt等の元素を単独または合金として用いる。また上記以外でも下記のものを含んでいてもよい。例えばMg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属および半金属等を挙げることができる。
【0079】
反射層の形成は、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。また、基板の上や反射層の下に反射率の向上や記録特性の改善のために公知の無機系または有機系の中間層、接着層を設けてもよい。反射層の膜厚は特に限定されるものでないが、10〜300nm程度が好ましく、特には80〜200nm程度である。
【0080】
反射層(3) の上には通常、接着層(61)を介して支持基体(21)が貼り合わされる。支持基体(21)は、前記支持基体(20)と同様のものが用いられる。接着層(61)の材料としては、両基体(21)及び(20)を接着でき、反射層を外力から保護するものであれば特に限定されるものでなく、公知の有機物質又は無機物質を用いることができる。有機物質としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等を挙げることができる。また、無機物質としては、SiO2 、SiN4 、MgF2 、SnO2 等が挙げられる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶媒に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。UV硬化性樹脂は、そのまま若しくは適当な溶媒に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。UV硬化性樹脂としては、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリレート樹脂を用いることができる。これらの材料は単独で、あるいは混合して用いてもよいし、1層だけでなく多層膜にして用いてもよい。
【0081】
接着層(61)の形成方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法などの塗布方法や、スパッタ法や化学蒸着法等の方法が用いられる。
【0082】
また、貼り合わせに用いる接着剤は、ホットメルト接着剤、紫外線硬化型接着剤、加熱硬化型接着剤、粘着型接着剤などが用いられ、それぞれにあった方法、例えば、ロールコーター法や、スクリーン印刷法、スピンコート法などが挙げられるが、DVD−Rの場合、作業性や生産性、ディスク特性などから総合的に判断して紫外線硬化接着剤を用い、スクリーン印刷法やスピンコート法が用いられる。
【0083】
一方、支持基体(20)の他方の面上に光透過性ハードコート層(8) が形成される。ハードコート層(8) の材料及び形成は、1.において述べたのと同様である。
ハードコート層(8) が記録/再生ビーム入射側とされる。記録/再生ビームとしては、650nmや660nmの波長のレーザービームが用いられる。また、青色レーザービームが用いられる。
【0084】
以上のように、記録/再生ビーム入射側表面における記録/再生ビームの最小径が500μmを超える光情報媒体として、図5に例示するDVD−Rが得られる。
【0085】
以上説明した本発明の光情報媒体は、記録及び/又は再生ビーム入射側表面に、以下の評価用分散液を以下の手順によって付着させたとき、付着操作が行われた表面の単位面積当たりに付着した評価用分散液滴が占める面積割合が6%以下である。
【0086】
評価用分散液は、微粒子状物質としてJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ローム0.4重量部、分散媒としてトリオレイン1重量部、及び希釈剤としてメトキシプロパノール10重量部からなる。この評価用分散液は、WO03/29382A1号公報に開示された人工指紋液である。トリオレインは皮脂構成成分の一つである。分散媒とは、評価対象となる光情報媒体の表面に転写した後に、疑似指紋成分として残留する液状成分のみを指し、転写後に最終的にその大部分もしくは全部が留去される希釈剤とは区別する。適切な不溶成分である関東ロームを、実際の指紋に含まれる液状成分であるトリオレインに分散させた不均一系を構成することにより、前記評価用分散液は、実際の指紋に可能な限り近い性状を有している。
【0087】
この評価用分散液を以下の一定の手順によって付着させる。
A.評価用分散液を原版用ポリカーボネート基板上にスピンコート法により塗布し、評価用分散液転写用の原版を作製する。スピンコートは、評価用分散液1mLを基板上に滴下し、500rpmで3秒間回転させ、続いて直ぐに250rpmで3秒間回転させて行う。希釈剤としてメトキシプロパノールを用いているので、塗布性は良好である。この基板を60℃で3分間加熱して、以降で不要となるメトキシプロパノールを除去する。
【0088】
B.シリコーンゴム製の転写材を準備する。No.1のシリコーンゴム栓の小さい方の端面(直径12mm)を、#240の研磨紙で一様に粗くしたもの。#240の研磨紙は、JIS R6251又はJIS R6252規定のAA240研磨紙と同等性能を有するものである。
【0089】
C.作製された原版の評価用分散液が塗布された表面に、転写材の粗くされた端面を4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分を転写材の前記端面に移行させる。
【0090】
D.評価用分散液成分が移行した転写材の前記端面を、付着量低減用ポリカーボネート基板の平滑な表面に4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分の付着量を低減させる。付着量低減用ポリカーボネート基板としては、原版用ポリカーボネート基板と同種のものを用いる。
【0091】
E.評価用分散液成分の付着量が低減された転写材の前記端面を、付着量低減用ポリカーボネート基板表面の別の箇所に4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分の付着量をさらに低減させる。
【0092】
F.評価用分散液成分の付着量が2回低減された転写材の前記端面を、光情報媒体ディスクの記録及び/又は再生ビーム入射側表面の中心から半径方向に40mm付近のところに、4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分を付着させる。
【0093】
ここで、上記手順による2回の分散液の付着量低減操作D及びEを行う付着操作を、便宜的に付着レベル3と呼ぶ。1回の分散液の付着量低減操作Dを行う付着操作を、便宜的に付着レベル2と呼ぶ。分散液の付着量低減操作D及びEを行わない付着操作を、便宜的に付着レベル1と呼ぶ。付着レベル1から付着レベル3へとレベルが上がるに従って、評価対象の光ディスク表面への評価用分散液の転写付着量は少なくなっていく。付着レベル3は、ユーザーの通常のディスク使用で起こり得る指紋付着レベルと考えられる。付着レベル1は、ユーザーの通常のディスク使用では起こらないであろう大量の指紋付着レベルと考えられる。
【0094】
本発明の光情報媒体は、記録/再生ビーム入射側表面に上記付着レベル3によって評価用分散液を付着させたとき、付着操作が行われた表面の単位面積当たりに付着した評価用分散液滴が占める面積割合が6%以下である。この付着レベル3での面積割合が6%を超えると、予め記録された後に記録/再生ビーム入射側表面に指紋が付着した場合においては、再生時のエラーレート特性が悪化する。従って、再生専用光情報媒体、1回のみ記録可能な光情報媒体、及び書換え可能型光情報媒体のいずれの場合においても、付着レベル3での面積割合が6%以下であることが必要である。
【0095】
本発明の好ましい光情報媒体は、記録/再生ビーム入射側表面に上記付着レベル3によって評価用分散液を付着させたとき、付着操作が行われた表面の単位面積当たりに付着した評価用分散液滴が占める面積割合が4.8%以下である。この付着レベル3での面積割合が4.8%以下であると、記録/再生ビーム入射側表面の防汚性にさらに優れ、前記表面に指紋が付着した後に記録した場合においても、エラーレート特性に非常に優れる光情報媒体となる。1回のみ記録可能な光情報媒体や、書換え可能型光情報媒体の場合には非常に重要な特性である。
【0096】
また、本発明の好ましい光情報媒体は、記録/再生ビーム入射側表面に上記付着レベル1、すなわちA→B→C→Fの手順によって評価用分散液を付着させたとき、付着操作が行われた表面の単位面積当たりに付着した評価用分散液滴が占める面積割合が4.9%以下である。付着レベル1のような大量の指紋付着レベルにおいても、前記面積割合が4.9%以下であると、媒体の表面の防汚性に非常に優れる。
【0097】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0098】
[ディスクサンプルNo.1の作製:参考例]
図3に示す層構成の光記録ディスクサンプルNo.1を次のように作製した。
情報記録のためにグルーブが形成されたディスク状支持基体(20)(ポリカーボネート製、直径120mm、厚さ1.1mm)のグルーブが形成された面上に、Al98Pd1 Cu1 (原子比)からなる厚さ100nmの反射層(3) をスパッタリング法により形成した。前記グルーブの深さは、波長λ=405nmにおける光路長で表してλ/6とした。グルーブ記録方式における記録トラックピッチは、0.3μmとした。
【0099】
次いで、反射層(3) 表面に、Al2 O3 ターゲットを用いてスパッタリング法により、厚さ20nmの第2誘電体層(52)を形成した。第2誘電体層(52)表面に、相変化材料からなる合金ターゲットを用いてスパッタリング法により、厚さ12nmの記録層(4) を形成した。記録層(4) の組成(原子比)は、Sb74Te18(Ge7 In1 )とした。記録層(4) 表面に、ZnS(80モル%)−SiO2 (20モル%)ターゲットを用いてスパッタリング法により、厚さ130nmの第1誘電体層(51)を形成した。
【0100】
次いで、第1誘電体層(51)表面に、下記組成のラジカル重合性の紫外線硬化性材料をスピンコート法により塗布して、紫外線を照射して、硬化後の厚さ98μmとなるように光透過層(7) を形成した。
【0101】
(光透過層:紫外線硬化性材料の組成)
ウレタンアクリレートオリゴマー 50重量部
(三菱レイヨン(株)製、ダイヤビームUK6035)
イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート 10重量部
(東亜合成(株)製、アロニックスM315)
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート 5重量部
(東亜合成(株)製、アロニックスM215)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 25重量部
イルガキュア184(重合開始剤) 3重量部
【0102】
次いで、光透過層(7) 上に、下記組成の紫外線/電子線硬化型ハードコート剤をスピンコート法により塗布して被膜とし、大気中で60℃で3分間加熱することにより被膜内部の希釈溶剤を除去し、その後、紫外線を照射して、硬化後の厚さ2μmのハードコート層(8) を形成した。
【0103】
(ハードコート剤の組成)
反応性基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエー
テルアセテート、不揮発分:40重量%) 100重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 48重量部
テトラヒドロフルフリルアクリレート 12重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 40重量部
(非反応性希釈溶剤)
イルガキュア184(重合開始剤) 3重量部
【0104】
さらに、ハードコート層(8) 上に、下記組成の紫外線/電子線硬化型フッ素系防汚剤をスピンコート法により塗布して被膜とし、大気中で60℃で3分間加熱することにより被膜内部の希釈溶剤を除去し、その後、電子線を照射して硬化後の厚さ約30nmの表面層(9) を形成した。このようにしてディスクサンプルNo.1を作製した。
【0105】
(防汚剤の組成)
パーフルオロポリエーテルジアクリレート 1重量部
(アウジモント製、Fombrin ZDOLのアクリレート変性品、分子量約2000)
3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート
(ダイキンファインケミカル研究所製、R−1833) 3重量部
フッ素系溶剤
(住友スリーエム(株)製、フロリナートFC−77) 1600重量部
【0106】
以下のディスクサンプルNo.2〜6は、図2に示す層構成の光記録ディスクサンプルである。
【0107】
[ディスクサンプルNo.2の作製:本発明]
光透過層(7) の形成までは、上記ディスクサンプルNo.1の場合と同様に行った。
【0108】
光透過層(7) 上に、下記組成の紫外線/電子線硬化型ハードコート剤をスピンコート法により塗布して被膜とし、大気中で60℃で3分間加熱することにより被膜内部の希釈溶剤を除去し、その後、紫外線を照射して、硬化後の厚さ2μmのハードコート層(8) を形成した。このようにしてディスクサンプルNo.2を作製した。
【0109】
(ハードコート剤の組成)
反応性基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエー
テルアセテート、不揮発分:40重量%) 100重量部
フッ素系ブロックコポリマー(日本油脂(株)製、モディパーF600)
1.5重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 48重量部
テトラヒドロフルフリルアクリレート 12重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 40重量部
(非反応性希釈溶剤)
イルガキュア184(重合開始剤) 5重量部
【0110】
[ディスクサンプルNo.3の作製:本発明]
ディスクサンプルNo.2におけるハードコート剤の組成を以下のように変更した以外は、ディスクサンプルNo.2におけるのと同様にしてディスクサンプルNo.3を作製した。
【0111】
(ハードコート剤の組成)
反応性基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエー
テルアセテート、不揮発分:40重量%) 100重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 48重量部
テトラヒドロフルフリルアクリレート 12重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 40重量部
(非反応性希釈溶剤)
イルガキュア184(重合開始剤) 5重量部
2官能シリコーンメタクリレート 0.25重量部
(信越化学工業(株)製、X−22−164A)
【0112】
[ディスクサンプルNo.4の作製:比較例]
ディスクサンプルNo.2におけるハードコート剤の組成を以下のように変更した以外は、ディスクサンプルNo.2におけるのと同様にしてディスクサンプルNo.4を作製した。
【0113】
(ハードコート剤の組成)
反応性基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエー
テルアセテート、不揮発分:40重量%) 100重量部
2官能シリコーンメタクリレート 0.05重量部
(信越化学工業(株)製、X−22−164A、分子量1500)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 48重量部
テトラヒドロフルフリルアクリレート 12重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 40重量部
(非反応性希釈溶剤)
イルガキュア184(重合開始剤) 5重量部
【0114】
[ディスクサンプルNo.5の作製:比較例]
ディスクサンプルNo.2におけるハードコート剤の組成を以下のように変更した以外は、ディスクサンプルNo.2におけるのと同様にしてディスクサンプルNo.5を作製した。
【0115】
(ハードコート剤の組成)
反応性基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエー
テルアセテート、不揮発分:40重量%) 100重量部
2官能シリコーンメタクリレート 0.025重量部
(信越化学工業(株)製、X−22−164A、分子量1500)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 48重量部
テトラヒドロフルフリルアクリレート 12重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 40重量部
(非反応性希釈溶剤)
イルガキュア184(重合開始剤) 5重量部
【0116】
[ディスクサンプルNo.6の作製:比較例]
ディスクサンプルNo.2におけるハードコート剤の組成を以下のように変更した以外は、ディスクサンプルNo.2におけるのと同様にしてディスクサンプルNo.6を作製した。
【0117】
(ハードコート剤の組成)
反応性基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、不揮発分:40重量%) 100重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 48重量部
テトラヒドロフルフリルアクリレート 12重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 40重量部
(非反応性希釈溶剤)
イルガキュア184(重合開始剤) 5重量部
【0118】
[ディスクサンプルへの評価用分散液の付着]
(評価用分散液の調製)
微粒子状物質としてJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種(中位径:1.6〜2.3μm)の関東ローム0.4重量部、分散媒としてトリオレイン1重量部、さらに希釈剤としてメトキシプロパノール10重量部を混合・攪拌して、評価用分散液とした。
【0119】
(評価用分散液転写用の原版の作製)
評価用分散液転写用の原版を次のようにして作製した。評価用分散液をマグネティックスターラーでよく攪拌しながら1mLを採取し、ポリカーボネート製基板(直径120mm、厚さ1.2mm)上にスピンコート法により塗布した。スピンコートは、評価用分散液の1mLを基板上に滴下し、500rpmで3秒間回転させ、続いて直ぐに250rpmで3秒間回転させて行った。この基板を60℃で3分間加熱して、不要な希釈剤であるメトキシプロパノールを完全に除去した。このようにして、評価用分散液転写用の原版を得た。
【0120】
(ディスクサンプル表面への評価用分散液の転写)
各ディスクサンプルのハードコート層(8) 又は表面層(9) 表面への評価用分散液成分の転写を、次に示す付着レベル3でそれぞれ行った。
【0121】
付着レベル3:
No.1のシリコーンゴム栓の小さい方の端面(直径12mm)を、#240の研磨紙(JIS R6251又はJIS R6252規定のAA240研磨紙と同等性能を有する)で一様に粗くしたものを擬似指紋転写材として用いた。擬似指紋転写材の粗くされた端面を、上記原版に荷重4.9Nで10秒間押し当てて、評価用分散液成分を転写材の前記端面に移行させた。
【0122】
その後、評価用分散液成分が付着された転写材の前記端面を、ポリカーボネート基板の平滑な面に荷重4.9Nで10秒間押し当てて、転写材の前記端面の評価用分散液成分付着量を低減させた。再度、転写材の前記端面を、ポリカーボネート基板の異なる箇所に荷重4.9Nで10秒間押し当てて、転写材の前記端面の評価用分散液成分付着量をさらに低減させた。
【0123】
次いで、各ディスクサンプルのハードコート層(8) 又は表面層(9) 表面の中心から半径方向に40mm付近のところに、評価用分散液成分が付着された転写材の前記端面を荷重4.9Nで10秒間押し当てて、評価用分散液成分を転写した。
【0124】
さらに、ディスクサンプルNo.1及び3については、各ディスクサンプルのハードコート層(8) 又は表面層(9) 表面への評価用分散液成分の転写を、次に示す付着レベル1でもそれぞれ行った。
【0125】
付着レベル1:
上記付着レベル3の操作において、転写材の評価用分散液成分付着量の低減操作を行わなかった。
【0126】
(表面の単位面積当たりに付着した評価用分散液滴が占める面積割合の測定)
各ディスクサンプルの表面に付着した評価用分散液滴の状態を、光学顕微鏡(キーエンス製、VK−8510)で観察し、その画像をプリンター(キーエンス製、VH−P40)で出力した。その画像をコンピュータ内に取り込み、画像処理解析ソフトWin ROOF Ver.3.61デモ版(三谷商事(株)製)で評価用分散液滴部分の全体に対する面積割合を計測した。付着レベル3の結果を表1に示し、付着レベル1の結果を表2に示す。
【0127】
[ディスクサンプルNo.1〜6の評価]
(初期エラーレートの測定)
各ディスクサンプルに光記録媒体評価装置(パルステック工業製、DDU−1000)を用いて次の条件:
レーザー波長λ:405nm,対物レンズのNA:0.85,変調方式:(1,7)RLL,チャンネルビット長:0.12μm,記録線速度:5.3m/s,チャンネルクロック:66MHz,記録信号:2T〜8Tの混合信号,データ転送速度:36Mbps
で記録を行った後、同じ評価装置(DDU−1000、レーザー波長λ:405nm、NA:0.85)でビットバイビットのエラーレート(bER)を測定した(初期エラーレート)。各ディスクサンプルの初期エラーレートは、0又は1×10-7のいずれかであった。
【0128】
(エラーレートの測定I)
各ディスクサンプルに上記と同条件で記録を行った後、各ディスクサンプルのハードコート層(8) 又は表面層(9) 表面に上記付着レベル3の操作で評価用分散液滴を付着させ、評価用分散液滴が付着した状態で、上記と同様にビットバイビットのエラーレート−I(bER−I)を測定した。なお、この時、評価用分散液滴を付着させた部分を中心として4msec分のゲートを開いて測定を行った。
【0129】
(エラーレートの測定II)
未記録の各ディスクサンプルのハードコート層(8) 又は表面層(9) 表面に上記付着レベル3の操作で評価用分散液滴を付着させ、評価用分散液滴が付着した状態で、上記と同条件で記録を行った。その後、上記と同様にビットバイビットのエラーレート−II(bER−II)を測定した。なお、この時、評価用分散液滴を付着させた部分を中心として4msec分のゲートを開いて測定を行った。
【0130】
以上の測定結果を表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
表1より、参考例又は本発明のディスクサンプルNo.1〜3では、記録後に付着レベル3で評価用分散液滴が付着した状態で、エラーレート−Iがそれぞれ2×10-6、1×10-5、6×10-5と実用範囲(1×10-4以下)内であり、良好に再生できることが示された。すなわち、付着レベル3での面積割合が6%以下であると、高い耐指紋付着性を有しており、少なくとも再生専用の光ディスクとして良好に用いることができる。
【0133】
参考例又は本発明の好ましいディスクサンプルNo.1及び2では、未記録で付着レベル3で評価用分散液滴が付着した状態で、記録を行っても、エラーレート−IIがそれぞれ1×10-7、9×10-5と実用範囲(1×10-4以下)内であり、良好に記録及び再生できることが示された。すなわち、付着レベル3での面積割合が4.8%以下であると、より高い耐指紋付着性を有しており、1回のみ記録可能な光ディスクや、書換え可能型光ディスクとしても良好に用いることができる。
【0134】
なお、ディスクサンプルNo.1、3、4、5及び6について、20℃、60%RHの環境下でトリオレインを測定液として静止接触角を測定したところ、表1に示す値が得られた。測定は、協和界面科学(株)の接触角計 FACE CONTACT-ANGLEMETERを用いて行った。
【0135】
(エラーレートの測定III )
ディスクサンプルNo.1及び3について、付着レベル1での評価を行った。
未記録の各ディスクサンプルのハードコート層(8) 又は表面層(9) 表面に上記付着レベル1の操作で評価用分散液滴を付着させ、評価用分散液滴が付着した状態で、上記と同条件で記録を行った。その後、上記と同様にビットバイビットのエラーレート−III (bER−III )を測定した。なお、この時、評価用分散液滴を付着させた部分を中心として4msec分のゲートを開いて測定を行った。
以上の測定結果を表2に示す。
【0136】
【表2】
【0137】
参考例のディスクサンプルNo.1では、未記録で付着レベル1で評価用分散液滴が付着した状態で、記録を行っても、エラーレート−III が1×10-5と実用範囲(1×10-4以下)内であり、良好に記録及び再生できることが示された。すなわち、付着レベル1での面積割合が4.9%以下であると、非常に高い耐指紋付着性を有している。
【0138】
[ディスクサンプルNo.7の作製:参考例]
第1誘電体層(51)の形成までは、上記ディスクサンプルNo.1の場合と同様に行った。
【0139】
第1誘電体層(51)表面に、上記ディスクサンプルNo.1の光透過層(7) の形成に用いたのと同じ紫外線硬化性材料をスピンコート法により塗布して、樹脂材料層を硬化後の厚さ2μmとなるように形成した。
【0140】
次いで、真空中(0.1気圧以下)において、厚さ100μmのポリカーボネートシートを、未硬化の樹脂材料層上に載置した。前記ポリカーボネートシートとしては、流延法によって製造された帝人(株)製のピュアエースを用いた。次いで、大気圧雰囲気に戻し、紫外線を照射して樹脂材料層を硬化することにより、前記ポリカーボネートシートを接着し、これを光透過層(7) とした。
【0141】
上記ディスクサンプルNo.1の場合と同様にして、光透過層(7) 上に硬化後の厚さ2μmのハードコート層(8) を形成し、ハードコート層(8) 上に硬化後の厚さ約30nmの表面層(9) を形成した。このようにしてディスクサンプルNo.7を作製した。
【0142】
ディスクサンプルNo.7について、ディスクサンプルNo.1の場合と同様にして評価を行ったところ、同じ結果が得られた。
【0143】
上記実施例では、相変化型光ディスクの例を示した。しかしながら、本発明は、記録層が相変化型の光ディスクのみならず、再生専用型光ディスクや、追記型光ディスクにも適用される。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【0144】
【発明の効果】
本発明によれば、記録及び/又は再生ビーム入射側表面の防汚性及び耐指紋付着性に優れ、前記表面に指紋が付着した場合においてもその付着量は少なく、再生時のエラーレート特性に非常に優れる光情報媒体が提供される。
【0145】
本発明によれば、記録及び/又は再生ビーム入射側表面の防汚性及び耐指紋付着性に優れ、前記表面に指紋が付着した後に記録した場合においても、エラーレート特性に非常に優れる光情報媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 光情報媒体の一つの構成例を示す概略断面図である。
【図2】 光情報媒体の他の構成例を示す概略断面図である。
【図3】 光情報媒体の他の構成例を示す概略断面図である。
【図4】 光情報媒体の他の構成例を示す概略断面図である。
【図5】 光情報媒体の他の構成例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
(20):支持基体
(3) :反射層
(52):第2誘電体層
(4) :記録層
(51):第1誘電体層
(7) :光透過層
(8) :ハードコート層
(9) :表面層
Claims (4)
- 支持基体上に情報記録層と、情報記録層上の光透過層と、光透過層上のハードコート層とを少なくとも有し、ハードコート層が記録及び/又は再生ビーム入射側とされ且つ記録及び/又は再生ビーム入射側表面における記録及び/又は再生ビームの最小径が500μm以下となるシステムに用いられる光情報媒体であって、
前記ハードコート層は、(A)平均粒子径5nm以上100nm以下の無機微粒子と、(B)活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物と、(C)前記(B)以外の活性エネルギー線硬化性化合物とを、前記(A)、(B)及び(C)の総和を基準として、(A)無機微粒子5重量%以上80重量%以下と、(B)シリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物0.25重量%以上10重量%以下と、(C)活性エネルギー線硬化性化合物10重量%以上89.999重量%以下とを含む組成物の硬化物からなり、
(A)無機微粒子は、シリカ微粒子であり、
(B)活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物は、シリコーン系置換基及び/又はフッ素系置換基と、(メタ)アクリロイル基とを有する化合物であり、
(C)活性エネルギー線硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、
光情報媒体の記録及び/又は再生ビーム入射側表面に、微粒子状物質としてJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ローム0.4重量部、分散媒としてトリオレイン1重量部、及び希釈剤としてメトキシプロパノール10重量部からなる評価用分散液を、次の手順:
A.評価用分散液を原版用ポリカーボネート基板上にスピンコート法により塗布し、評価用分散液転写用の原版を作製し、
B.シリコーンゴム製の転写材を準備し、
C.作製された原版の評価用分散液が塗布された表面に、転写材を4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分を転写材に移行させ、
D.評価用分散液成分が移行した転写材を、付着量低減用ポリカーボネート基板表面に4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分の付着量を低減させ、
E.評価用分散液成分の付着量が低減された転写材を、付着量低減用ポリカーボネート基板表面の別の箇所に4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分の付着量をさらに低減させ、
F.評価用分散液成分の付着量が2回低減された転写材を、光情報媒体の記録及び/又は再生ビーム入射側表面に4.9Nの一定荷重で10秒間押し当て、評価用分散液成分を光情報媒体の前記表面に付着させる
によって付着させたとき、付着操作が行われた表面の単位面積当たりに付着した評価用分散液滴が占める面積割合が6%以下である光情報媒体。 - 付着操作が行われた表面の単位面積当たりに付着した評価用分散液滴が占める前記面積割合が4.8%以下である、請求項1に記載の光情報媒体。
- 前記光透過層及び前記ハードコート層の合計の厚さは、70〜150μmである、請求項1又は2に記載の光情報媒体。
- 青色レーザービームを用いた記録/再生システムに用いられる、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の光情報媒体。
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