JP2005011447A - 光記録ディスク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板2と、基板上に形成された記録層5と、記録層上に形成された光透過層7と、光透過層上に形成された潤滑剤層8とを備えた光記録ディスク1であって、レーザ光が入射する光入射面に、人工指紋液を付着させ、入射面に付着した人工指紋液を拭き取る操作を、5回にわたり、繰り返したときに、ジッターが、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下になることを特徴とする光記録ディスク。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録ディスクに関するものであり、さらに詳細には、レーザ光の入射面に、指紋が付着した場合にも、ジッターの悪化を効果的に防止することができる光記録ディスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、デジタルデータを記録するための記録媒体として、CDやDVDに代表される光記録ディスクが広く利用されているが、近年においては、より大容量で、かつ、高いデータ転送レートを有する次世代型の光記録ディスクの開発が盛んに行われている。
【0003】
大容量で、かつ、高いデータ転送レートを有する次世代型の光記録ディスクを開発するためには、必然的に、データの記録・再生に用いるレーザ光のビームスポット径を非常に小さく絞ることが要求される。
【0004】
レーザ光のビームスポット径を小さく絞るためには、レーザ光を集束するための対物レンズの開口数(NA)を大きくするとともに、レーザ光の波長λを短くすることが必要であり、開口数(NA)が0.85の対物レンズを用い、405nmの波長λを有するレーザ光を集束させて、次世代型の光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを再生することが提案されている。
【0005】
しかしながら、レーザ光を集束するための対物レンズの開口数(NA)を高くすると、次式(1)で示されるように、光記録媒体に対するレーザ光の光軸の傾きに許される角度誤差、すなわち、チルトマージンTが非常に狭くなるという問題が生じる。
【0006】
【数1】
式(1)において、λは、記録・再生に用いるレーザ光の波長であり、dは、レーザ光が透過する光透過層の厚さである。
【0007】
式(1)から明らかなように、チルトマージンTは、対物レンズのNAが高いほど、小さくなり、光透過層の厚さdが薄いほど、大きくなる。したがって、チルトマージンTが小さくなることを防止するためには、光透過層の厚さdを小さくすることが効果的である。
【0008】
そこで、次世代型の光記録ディスクにおいては、チルトマージンを広くするために、光透過層の厚さを100μm程度まで薄くすることが提案されている。
【0009】
しかしながら、レーザ光が透過する光透過層の厚さを100μm程度にまで薄くすると、光透過層の表面におけるレーザ光のビームスポットの面積が小さくなるため、光透過層のレーザ光の入射面に、ゴミや指紋が付着した場合や、傷がついた場合には、データの読み取り時に、エラーが生じやすいという問題がある。
【0010】
そこで、光透過層を介して、レーザ光を照射するように構成され、家庭における利用を想定している次世代型の光記録ディスクを、カートリッジに収容して、使用することが提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、CDやDVDは、カートリッジに収容することなく、いわゆるベア・ディスクとして使用されているにもかかわらず、次世代型の光記録ディスクだけが、カートリッジに収容しなければ使用できないということは、ユーザーにとって、きわめて不便であるし、また、次世代型の光記録ディスクがカートリッジに収容されることが必要不可欠であるとすると、次世代型の光記録ディスクのコストが高くなるという問題も生じる。
【0012】
そこで、光記録ディスクを、ベア・ディスクの形で使用することができる次世代型の光記録ディスクが提案されている。
【0013】
しかしながら、こうした光記録ディスクは、光記録ディスクの表面に、指紋が付きやすく、指紋が付着した場合には、データ読み取り時におけるジッターが大きくなって、エラーが発生しやすくなるという問題がある。
【0014】
したがって、本発明は、レーザ光の入射面に、指紋が付着した場合にも、ジッターの悪化を効果的に防止することができる光記録ディスクを提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のかかる目的は、少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させ、前記人工指紋液が付着した前記光入射面に、重ねられた8枚のフェイシャルティシューを介して、直径16mmのシリコーンゴム栓の端面を4.9Nの圧力で押圧し、前記光入射面と、前記シリコーンゴム栓とを相対的に移動させて、前記光入射面に付着した前記人工指紋液を拭き取る操作を、5回にわたり、繰り返したときに、ジッターが、前記人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下になることを特徴とする光記録ディスクによって達成される。
【0016】
本発明によれば、レーザ光の光入射面に、指紋が付着しても、指紋の拭き取り操作を、5回にわたって、繰り返すことによって、指紋が付着したことに起因して、増大したジッターを実用的なレベルにまで低下させることができ、したがって、データの読み取り時のエラーを防止することが可能になる。
【0017】
本発明の好ましい実施態様においては、前記光入射面が、前記人工指紋液を付着させたときに、光入射面の単位面積当たりに付着した前記人工指紋液が占める面積割合が29%以下になるような表面特性を有している。
【0018】
本発明の好ましい実施態様においては、前記光入射面が、前記人工指紋液を付着させたときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の直径の最大値が80μm以下であるような表面特性を有している。ここに、前記人工指紋液の液滴の直径は、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0019】
本発明の好ましい実施態様においては、前記光入射面が、前記人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の直径の前記人工指紋液の液滴の周囲長さと面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長さ)2 ≧0.70の関係を満たすような表面特性を有している。ここに、前記人工指紋液の液滴の直径は、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0020】
本発明の好ましい実施態様においては、光記録ディスクは、前記光透過層上に形成された潤滑剤層を備え、前記潤滑剤層の表面によって、前記光入射面が構成されている。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記潤滑剤層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として含んでいる。
【0022】
本発明の好ましい実施態様においては、光記録ディスクは、前記光透過層が潤滑剤を含有し、前記光透過層の表面によって、前記光入射面が構成されている。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記光透過層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0024】
本発明においては、人工指紋液は、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製される。
【0025】
本発明において用いられる人工指紋液は、微粒子状物質と、微粒子状物質を分散可能な分散媒とを含んでいる。
【0026】
人工指紋液の分散媒は、25℃における表面張力が20ないし50mNm−1の範囲内にあることが好ましい。分散媒の25℃における表面張力が20ないし50mNm−1の範囲内にあるときは、実際の指紋に可能な限り近い性質を有する人工指紋液を調製することができる。
【0027】
人工指紋液に用いられる分散媒は、人間の汗や皮脂を構成する液体に近い物性を有していることが好ましく、25℃における表面張力が、20ないし50mNm−1の範囲内にあり、200℃における飽和蒸気圧が、760mmHg(101325Pa)以下であることが好ましい。25℃における表面張力が20mNm−1未満の場合には、表面に対する濡れ性が高くなり過ぎ、実際の指紋に比して、著しく物体表面に付着しやすくなり、除去することが困難になるので、好ましくない。一方、25℃における表面張力が50mNm−1を越えている場合には、表面に対する濡れ性が低下し、実際の指紋に比して、著しく物体表面に付着させることが困難になり、その一方で、除去されやすくなり、好ましくない。
【0028】
さらに、人工指紋液に用いられる分散媒の200℃における飽和蒸気圧が、760mmHg(101325Pa)を越えている場合には、人工指紋液の付着後に、徐々に分散媒が揮発し、表面に付着した人工指紋の状態が変化することがあり、好ましくない。
【0029】
人工指紋液に用いられる分散媒は、25℃における粘度が500cP以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜300cP、さらに好ましくは、5〜250cPである。分散媒が、このような粘度を有している場合には、表面への指紋付着後においても、微粒子状物質を良好に分散させて、表面へ定着させやすい。
【0030】
人工指紋液に用いられる分散媒としては、一般に、高級脂肪酸、高級脂肪酸の誘導体、テルペン類およびテルペン類の誘導体などが挙げられる。分散媒に用いられる高級脂肪酸としては、たとえば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。分散媒に用いられる高級脂肪酸の誘導体としては、エステル誘導体が挙げられ、たとえば、ジグリセリド誘導体や、トリオレインなどのトリグリセリド誘導体が挙げられる。分散媒に用いられるテルペン類としては、たとえば、スクアレン、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、リナロール、テルピネオール、カジネンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。さらに、これらのうちの少なくとも1種以上の化合物と、水とを混合して、分散媒を調製することもできる。
【0031】
本発明においては、人工指紋液の分散媒として、トリオレインが用いられており、トリオレインは、人工指紋液の分散媒に要求される上述したすべての性質を満足している。
【0032】
人工指紋液は、分散媒中に微粒子状物質を含んでいる。実際の指紋に含まれる固体成分の大半は、ケラチンと呼ばれる蛋白質である。したがって、ケラチンの微粉末を前記分散媒に添加、混合することによって、人工指紋液を調製することができ、事実、水、オレイン酸、スクアレン、トリオレインなどの分散媒に、ケラチン微粉末を適当な比率で混合したものは、人工指紋液として、効果的に使用することができるが、ケラチンに代えて、分散媒に対して良好な濡れ性を有し、かつ、実際の指紋成分に含まれるケラチンに近い粒子サイズを有する微粒子状物質を用いて、人工指紋液を調製することもできる。
【0033】
人工指紋液に含まれる微粒子状物質は、100μm以下の平均粒径を有することが好ましく、50μm以下の平均粒径を有することがより好ましい。
【0034】
本発明においては、人工指紋液に含まれる微粒子状物質として、JIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームが用いられており、関東ロームは、分散媒であるトリオレインに対して良好な濡れ性を有し、かつ、実際の指紋成分に含まれるケラチンに近い粒子サイズを有している。
人工指紋液は、1重量部の分散媒に対して、0.1ないし5.0重量部の微粒子状物質を添加して、調製されることが好ましく、さらに好ましくは、1重量部の分散媒に対して、0.1ないし3.0重量部の微粒子状物質を添加し、最も好ましくは、0.2ないし1.0重量部の微粒子状物質を添加して、人工指紋液が調製される。
【0035】
本発明においては、1重量部のトリオレインに対して、0.4重量部の関東ロームが添加されて、人工指紋液が調製される。
【0036】
人工指紋液の光記録ディスク表面への転写性を向上させるために、必要に応じて、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メトキシプロパノールなどの希釈剤によって、人工指紋液が希釈される。光記録ディクスの表面に転写された後、最終的に、これらの希釈剤の大部分が除去されるように。希釈剤は、200℃における飽和蒸気圧が760mmHg(101325Pa)を越えていることが必要である。
【0037】
本発明においては、希釈剤として、メトキシプロパノールが用いられている。
【0038】
本発明において、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液は、光記録ディスクのレーザ光が入射する光入射面に付着される。
【0039】
本発明において、光記録ディスクは、少なくとも、基板と、前記基板上に形成された記録層と、前記記録層上に形成された光透過層を備えている。
【0040】
本発明において、基板は、光記録ディスクに求められる機械的強度を確保するための支持体として、機能するものである。
【0041】
本発明において、基板を形成するための材料は、光記録ディスクの支持体として機能することができれば、とくに限定されるものではなく、基板は、たとえば、ガラス、セラミックス、樹脂などによって、形成することができる。これらのうち、成形の容易性の観点から、樹脂が好ましく使用される。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性、光学特性などの点から、ポリカーボネート樹脂が、とくに好ましく、使用される。
【0042】
本発明においては、レーザ光は、基板とは反対側に位置する光入射面を介して、照射されるから、基板が、光透過性を有していることは必要でない。
【0043】
本発明において、好ましくは、基板の表面には、交互に、グルーブおよびランドが形成されている。基板の表面に形成されたグルーブおよび/またはランドは、データを記録する場合およびデータを再生する場合において、レーザ光のガイドトラックとして、機能する。
【0044】
グルーブの深さは、とくに限定されるものではないが、λ/(8n)ないしλ/(4n)(λは、レーザ光の波長であり、nは、後述する光透過層の屈折率である。)に設定することが好ましく、グルーブのピッチは、とくに限定されるものではないが、0.2μmないし0.4μmに設定することが好ましい。
【0045】
本発明において、光記録ディスクは、少なくとも一層の記録層を備え、光記録ディスクが、書き換え型光記録媒体として構成される場合には、少なくとも一層の記録層は、相変化材料によって形成された相変化膜と、相変化膜の両側に設けられた第一の誘電体層および第二の誘電体層を含んでいる。
【0046】
相変化膜を形成する相変化材料は、レーザ光の照射を受けると、結晶状態とアモルファス状態との間で、可逆的に変化し、異なる光学特性を示す性質を有している。本発明において使用可能な相変化材料としては、たとえば、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Sn−Se−Te、Ge−Te−Sn、In−Se−Tl、In−Sb−Teなどが挙げられる。これらの材料に、Co、Pt、Pd、Au、Ag、Ir、Nb、Ta、V、W、Ti、Cr、Zr、BiおよびInよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を微量に添加してもよく、また、窒素などを微量に添加してもよい。
【0047】
相変化膜の厚さは、とくに限定されるものではなく、通常、3ないし50nm程度である。
【0048】
第一の誘電体層および第二の誘電体層は、相変化膜を機械的、化学的に保護するとともに、光学特性を調整する機能を有している。
【0049】
第一の誘電体層および第二の誘電体層は、それぞれ、単層によって構成されていても、複数層によって構成されていてもよい。
【0050】
第一の誘電体層および第二の誘電体層は、それぞれ、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物から形成されることが好ましい。
【0051】
光記録ディスクが、追記型光記録媒体として構成される場合には、光記録ディスクは、有機色素を含む単層の記録層または無機化合物を含む単一の記録層もしくは二以上の記録層を備えている。
【0052】
本発明において、光記録ディスクが、有機色素を含む単層の記録層を備えている場合には、有機色素としては、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ色素、ポルフィリン系色素などを使用することができる。
【0053】
シアニン系色素としては、次の一般式で表わされるモノメチンシアニン系色素のうち、370ないし425nmの波長の範囲に屈折率n(複素屈折率の実部)の極小値nminを有し、記録時のレーザー光および再生時のレーザー光の波長における屈折率nが1.2以下であり、かつ、390ないし420nmの波長の記録時のレーザー光を吸収して、溶融または分解し、屈折率変化を生じる性質を有している色素が好ましい。
【0054】
【化1】
一般式(1)において、QおよびQ’は、含窒素複素環を形成する原子群を表わし、含窒素複素環は縮合環であってもよく、置換基を有していてもよい。QおよびQ’は、同一でも異なっていてもよい。
【0055】
R1およびR1’は、アルキル基を表わし、アルキル基は置換基を有していてもよい。R1およびR1’は同一でも異なっていてもよい。R1およびR1’として用いられるアルキル基としては、炭素数1ないし6のアルキル基が挙げられ、炭素数1ないし4のアルキル基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基が好ましい。
【0056】
X−は陰イオンを表わし、mは0または1である。X−として用いられる陰イオンとしては、Cl−、Br−、I−などのハロゲンイオン、ClO4 −、BF4 −、PF6 −、SbF6 −、SCN−などが挙げられる。
【0057】
具体的には、以下の構造式で示されるモノメチンシアニン系色素が、好ましく使用される。
【0058】
【化2】
本発明において、記録層が、モノメチンシアニン系色素を含んでいる場合には、記録層は、さらに、放射線硬化性樹脂を含んでいる。
【0059】
記録層に含まれる放射線硬化性樹脂としては、光学的に透明で、使用されるレーザー光波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さい樹脂が選ばれ、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが用いられ、紫外線硬化性樹脂および電子線硬化性樹脂が、とくに好ましく使用される。
【0060】
本発明において、記録層は、次の一般式(1)で表わされるポルフィリン系色素を含んでいてもよい。
【0061】
【化3】
ポルフィリン系色素は、370ないし425nmの範囲に屈折率n(複素屈折率の実部)の極小値nminを有し、390ないし420nmの波長のレーザー光の波長における屈折率nが1.2以下であり、かつ、390ないし420nmの波長の記録時のレーザー光を吸収して、溶融または分解し、屈折率変化を生じる性質を有していることが好ましい。
【0062】
本発明において、好ましくは、ポルフィリン系色素の一般式(1)中のRが、
【0063】
【化4】
【0064】
【化5】
【0065】
【化6】
または、
【0066】
【化7】
から選ばれる。
【0067】
本発明において、光記録ディスクが、無機化合物を含む単層の記録層を備えている場合には、記録層が、Al、Si、Ge、C、Sn、Au、Zn、Cu、B、Mg、Ti、Mn、Fe、Ga、Zr、AgおよびPtよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を主成分として含んでいることが好ましい。
【0068】
本発明において、光記録ディスクが、無機化合物を含む二以上の記録層を備えている場合には、光記録ディスクが、第一の記録層および第二の記録層を備え、第一の記録層が、Si、Ge、Sn、Mg、In、Zn、BiおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含み、第二の記録層が、Cuを主成分として含んでいることが好ましく、第二の記録層は、第一の記録層に近傍に、好ましくは、第一の記録層に接触して、設けられる。
【0069】
光記録ディスクが、Si、Ge、Sn、Mg、In、Zn、BiおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含む第一の記録層と、Cuを主成分として含み、第一の記録層の近傍に設けられた第二の記録層を備えている場合には、データを記録する際に、レーザ光によって、第一の記録層に主成分として含まれている元素と、第二の記録層に主成分として含まれている元素とが混合した領域が形成され、反射率を大きく変化させることが可能になり、第一の記録層に主成分として含まれている元素と、第二の記録層に主成分として含まれている元素とが混合した領域の反射率と、それ以外の領域の反射率の大きな差を利用することにより、情報を良好な感度で記録することができ、良好な感度で記録された初期の記録情報を、長期にわたって、保存することが可能になる。
【0070】
本発明において、さらに好ましくは、第一の記録層が、Ge、Si、Mg、AlおよびSnよりなる群から選ばれる元素を主成分として含んでいる。
【0071】
本発明において、好ましくは、第二の記録層に、Al、Si、Zn、Mg、Au、Sn、Ge、Ag、P、Cr、FeおよびTiよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が添加されている。
【0072】
本発明において、さらに好ましくは、第二の記録層に、Al、Zn、SnおよびAuよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が添加されている。
【0073】
本発明において、記録層が、ポルフィリン系色素を含んでいる場合には、記録層の表面に、誘電体層が形成されることが好ましい。
【0074】
誘電体層は、記録層を機械的、化学的に保護する機能を有するとともに、記録層の光学特性を調整する干渉層としての機能を有している。誘電体層は、単層によって構成されていても、複数層によって構成されていてもよい。
【0075】
本発明において、誘電体層は、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物によって形成することができ、ZnS−SiO2 、AlN、Ta2 O3 、CeO2−Al2O3などが、誘電体層を形成するために好ましく用いられる。
【0076】
本発明において、光記録ディスクは、記録層上に形成された光透過層を備えている。
【0077】
光透過層は、その内部を、記録用および/または再生用のレーザ光が透過する層である。
【0078】
光透過層を形成するための材料としては、光学的に透明で、使用されるレーザ光の波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さいことが要求され、スピンコーティング法などによって、光透過層が形成される場合には、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが、光透過層を形成するために用いられ、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂が、とくに好ましく、使用される。
【0079】
光透過層を形成するために用いられる紫外線硬化性化合物および電子線硬化性化合物ならびにそれらの重合用組成物の具体例としては、アクリル酸やメタクリル酸のエステル化合物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどのアクリル系二重結合、ジアリルフタレートのようなアリル系二重結合、マレイン酸誘導体等の不飽和二重結合などの紫外線照射または電子線照射によって架橋あるいは重合する基を分子中に含有または導入したモノマー、オリゴマーおよびポリマーなどを挙げることができる。これらは、多官能化合物、とくに3官能以上の化合物であることが好ましく、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。単官能化合物を含んでいてもよい。
【0080】
紫外線硬化性モノマーとしては、分子量2000未満の化合物が、オリゴマーとしては、分子量2000ないし10000のものが好適である。これらの例としては、スチレン、エチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレートなども挙げられるが、とくに好ましいものとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ) アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ) アクリレート、フェノールエチレンオキシド付加物の(メタ) アクリレートなどが挙げられる。この他、紫外線硬化性オリゴマーとしては、オリゴエステルアクリレートやウレタンエラストマーのアクリル変性体などが挙げられる。
【0081】
紫外線硬化性材料としては、さらに、エポキシ樹脂および光カチオン重合触媒を含有する組成物も、好ましく使用される。エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂が好ましく、とくに、分子内に、2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどの1種以上が好ましい。脂環式エポキシ樹脂のエポキシ当量はとくに限定されるものではないが、良好な硬化性が得られることから、60ないし300g/mol、とくに100ないし200g/molであることが好ましい。
【0082】
光カチオン重合触媒は、公知のいずれのものを用いてもよく、とくに限定されるものではない。たとえば、光カチオン重合触媒として、1種以上の金属フルオロホウ酸塩および三フッ化ホウ素の錯体、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、6A族元素の芳香族オニウム塩、5A族元素の芳香族オニウム塩、3A族ないし5A族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6 アニオン(ただし、Mは、P、AsまたはSb)を有する6A族元素、トリアリールスルホニウム錯塩、芳香族イオドニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩などを用いることができ、とくに、ポリアリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム塩またはイオドニウム塩、3A族元素、5A族元素および6A族元素の芳香族オニウム塩の1種以上を用いることが好ましい。
【0083】
光透過層を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂としては、25℃において、1,000ないし10,000センチポイズの粘度を有するものが好ましい。
【0084】
本発明において、光透過層は、光記録ディスクが、ベア・ディスクの形で使用されることが想定されているから、ユーザーが光記録ディスクを取り扱う際に、光透過層の表面に傷が生じるおそれがあるので、耐擦傷性を有するのが好ましい。
【0085】
本発明においては、好ましくは、光透過層は、ハードコート層としての機能を有することもでき、このような場合には、ハードコート層を設けなくても、光透過層によって、光記録ディスクの光入射面を保護することができるので、光透過層の表面に、ハードコート層を形成する必要がないから、製造工程を簡略化することができる。
【0086】
本発明において、光記録層は、その表面に傷が入るのを防止するために、光透過層を硬くするための成分として、たとえば、無機微粒子が含有されたり、分子量2000未満の硬化性モノマーが多く含有されることが好ましい。無機微粒子としては、たとえば、金属もしくは半金属の酸化物の微粒子が挙げられる。金属または半金属としては、例えば、Si、Ti、Al、Zn、In、Sn、Sbなどが挙げられる。また、酸化物、硫化物に代えて、Se化物、Te化物、窒化物、炭化物を用いることもできる。具体的には、たとえば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの微粒子が挙げられ、これらの中ではシリカ微粒子が好ましい。このような無機微粒子を光透過層に添加しておくことにより、光透過層の耐久磨耗性をより高めることができる。
【0087】
シリカ微粒子の中では、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物によって、表面修飾されたものが、好ましく用いられる。このような反応性シリカ微粒子は、光透過層を硬化させる際の活性エネルギー線照射によって、架橋反応を起こし、ポリマーマトリクス中に固体される。このような反応性シリカ微粒子の例は、特開平9−100111号公報などに記載されており、特開平9−100111号公報に記載された反応性シリカ微粒子は、本発明において、好ましく用いることができる。
【0088】
また、光透過層は、その表面に傷が入るのを防止するために、硬くするのではなく、逆に、より柔らかくし、柔軟性を持たせることによって、表面耐久性が確保されてもよい。
【0089】
本発明において、光透過層は、活性エネルギー線硬化型樹脂をスピンコーティング法によって塗布し、その後、紫外線などの活性エネルギー線を照射して、硬化させて、形成することが好ましい。
【0090】
本発明において、光透過層は、光学的に透明で、使用されるレーザ光の波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さい樹脂によって形成された所望の厚さのシートを、接着剤を用いて、接着することによって、光透過層を形成することもできる。
【0091】
光透過層は、光透過性樹脂のシートを、接着剤を用いて、接着することによって、形成される場合には、光透過性樹脂のシートの表面耐久性を確保するために、光透過性樹脂に、無機微粒子が含まれることが好ましい。
【0092】
光透過層を形成するためのシートに用いられる樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエステルなどを挙げることができる。樹脂のシートの貼付前に、樹脂の熱変形温度に対して、−20ないし+80℃の範囲で、シートの成膜時の残留応力を取り除く目的で、シート状の樹脂に、アニール処理(熱緩和処理)を施すこともできる。シート状の樹脂に、アニール処理を施さなかった場合には、光記録ディスクの保存時に、シートの残留応力の影響で、光記録ディスクが変形するおそれがある。アニール処理を施すための加熱手段は、ヒーター、ホットプレート、ホットローラ、ベーク炉、電磁誘導加熱などの公知の加熱手段の中から、工程条件などを元に、適宜選択することができる。
【0093】
樹脂のシートを貼付するために使用される接着剤は、感圧性粘着剤や紫外線硬化型樹脂などから選択することができる。たとえば、光透過層の材料として上述した活性エネルギー線硬化型樹脂は、樹脂のシートを貼付するための接着剤として好適である。
【0094】
樹脂のシートを貼付して、光透過層を形成する場合には、接着剤として、活性エネルギー線硬化型樹脂をスピンコーティング法によって塗布し、未硬化の活性エネルギー線硬化型樹脂層上に、樹脂のシートを載置し、その後、紫外線などの活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂層を硬化することによって、樹脂のシートを接着して、光透過層を形成するとよい。より具体的には、真空中(0.1気圧以下)において、樹脂のシートを未硬化の活性エネルギー線硬化型樹脂層上に載置し、次いで、大気圧雰囲気に戻して、紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂層を硬化させるとよい。
【0095】
光透過層の膜厚は、スピンコーティング法により、光透過層を形成する場合には、1ないし150μmが好ましく、シート状の樹脂を貼付して、光透過層を形成する場合には50ないし150μmが好ましい。
【0096】
本発明において、光透過層の表面によって、レーザ光が入射する光入射面が構成されている場合には、光透過層は、その表面が、撥水性および/または潤滑性を有していることが好ましく、好ましくは、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0097】
シリコーン系化合物としては、シリコーン系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられ、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられる。
【0098】
活性エネルギー線重合性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基などの活性エネルギー線ラジカル重合性反応性基や、環状エーテル基およびビニルエーテル基などの活性エネルギー線カチオン重合性反応性基が挙げられる。
【0099】
シリコーン系化合物としては、シリコーン系の置換基を有する部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。たとえば、以下の一般式で示される化合物が挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−R
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−Si(CH3 )3
(CH3 )3 SiO−〔Si(CH3 )2 O〕n−〔Si(CH3 )(R)O〕m−Si(CH3 )3
ここに、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基およびビニルエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を含む置換基であり、n、mは重合度である。
【0100】
フッ素系化合物としては、フッ素系(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2− ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフッ化アクリレートが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。たとえば、(メタ)アクリレート基が導入されたパーフルオロポリエーテルなどの高分子化合物、あるいは、(メタ)アクリレート基の代わりに、ビニル基またはメルカプト基を有するフッ素系化合物なども好ましく用いることができる。
【0101】
また、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基を有する部位と、環状エーテル基およびビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、3−(1H,1H−パーフルオロオクチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロウンデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロテトラデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロヘキサデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,9H,9H−パーフルオロ−1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,12H,12H−パーフルオロ−1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、アウジモント株式会社製「Fombrin Z DOL」(商品名:アルコール変性パーフルオロポリエーテル)のジグリシジルエーテルなどが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。たとえば、反応性基として、3,4−エポキシシクロヘキシル基などの脂環エポキシ基や、ビニルエーテル基を有する化合物も、好ましく用いることができる。
【0102】
本発明において、光透過層の厚さが、70μmないし150μmであることが好ましい。光透過層の層厚が70μm未満であるときは、光記録ディスクの表面に付着したゴミなどによって、データの読み取りエラーが生じやすくなり、一方、光透過層の層厚が150μmを越えると、開口数(NA)が0.85の対物レンズを用いて、405nmの波長λを有するレーザ光を記録層上に集束させる場合に、チルトマージンTが著しく小さくなるという問題が生じる。
【0103】
本発明において、好ましくは、光記録ディスクは、光透過層の表面上に形成された潤滑剤層を備え、潤滑剤層によって、レーザ光が入射する光入射面が構成されている。
【0104】
本発明において、潤滑剤層は、好ましくは、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として含んでいる。潤滑剤層に含まれる活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物としては、光透過層に含有させることができる活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物と同様な化合物を用いることができる。
【0105】
本発明において、好ましくは、潤滑剤層は、潤滑剤溶液を、光透過層の表面に、スピンコーティング法などによって、塗布して、潤滑剤溶液の塗膜を形成し、活性エネルギー線を照射して、光透過層と潤滑剤溶液の塗膜を同時に硬化させて、形成される。
【0106】
本発明において、潤滑剤層は、好ましくは、1nmないし100nmの厚さを有するように、光透過層の表面上に形成される。
【0107】
本発明において、光透過層の表面上に、潤滑剤層が形成される場合には、光透過層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいることは必ずしも必要でない。
【0108】
本発明において、以上のような構成を有する光記録ディスクのレーザ光が入射する光入射面に、まず、人工指紋液が付着される。
【0109】
本発明において、人工指紋液を、光記録ディスクの光入射面に付着させるにあたっては、人工指紋液を、マグネティックスターラーを用いて、攪拌しながら、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、人工指紋液を、ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、塗膜中の不要な希釈溶剤であるメトキシプロパノールを完全に除去することによって、まず、擬似指紋パターン転写用の原版が形成される。
【0110】
一方、株式会社アズワンから入手した直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨することによって、擬似指紋転写材が作製される。
【0111】
こうして得られた擬似指紋転写材の研磨された端面を、擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てることによって、人工指紋液成分が、擬似指紋転写材の端面に転写される。
【0112】
次いで、光記録ディスクの中心から半径方向に40mmの位置にある光入射面、すなわち、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液成分が付着された擬似指紋転写材の端面が、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てられ、人工指紋液が、光記録ディスクの光入射面に転写される。
【0113】
こうして、光記録ディスクの光入射面に転写された人工指紋液は、光記録ディスクの光入射面に、重ねられた8枚のフェイシャルティシュー(株式会社クレシア製:商品名「クリネックス」)を介して、直径16mmのシリコーンゴム栓の端面を4.9Nの圧力で押圧し、シリコーンゴム栓の端面を、光記録ディスクの光入射面の中央から外周にかけて、ゆっくりと移動させることによって、人工指紋液が拭き取られる。
【0114】
本発明において、好ましくは、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面は、人工指紋液を付着させたときに、光入射面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%以下になるような表面特性を有している。
【0115】
したがって、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液が付着したときには、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合は29%以下になる。
【0116】
光記録ディスクの光入射面に、指紋が付着している場合には、ジッターが増大することが知られており、本発明において、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液が付着している場合には、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合は29%以下であっても、データ読み取り時におけるジッターが増大して、エラーが発生しやくなる。
【0117】
しかしながら、本発明者の研究によれば、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%の場合には、上述した人工指紋液の拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させ得るとともに、人工指紋液の占める面積割合が29%から小さくなるほど、より少ない拭き取り回数によって、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させ得ることが見出されている。
【0118】
したがって、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に人工指紋液を付着させたときに、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%以下の場合には、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、実際に、指紋が付着した場合にも、指紋の拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、指紋が付着した後のジッターの値を、指紋が付着する前のジッターの値の1.15倍以下にまで低下させることができ、指紋が付着したことに起因して、増大したジッターを実用的なレベルにまで低下させることが可能になる。
【0119】
あるいは、本発明において、好ましくは、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面は、人工指紋液を付着させたときに、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が80μm以下であるような表面特性を有している。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0120】
したがって、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液が付着したときには、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値は80μm以下になる。
【0121】
光記録ディスクの光入射面に、指紋が付着している場合には、ジッターが増大することが知られており、本発明において、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液が付着している場合には、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が80μm以下であっても、データ読み取り時におけるジッターが増大して、エラーが発生しやくなる。
【0122】
しかしながら、本発明者の研究によれば、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が80μmの場合には、上述した人工指紋液の拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させ得るとともに、人工指紋液の液滴の直径の最大値が80μmから小さくなるほど、より少ない拭き取り回数によって、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させ得ることが見出されている。
【0123】
したがって、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に人工指紋液を付着させたときに、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が80μm以下の場合には、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、実際に、指紋が付着した場合にも、指紋の拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、指紋が付着した後のジッターの値を、指紋が付着する前のジッターの値の1.15倍以下にまで低下させることができ、指紋が付着したことに起因して、増大したジッターを実用的なレベルにまで低下させることが可能になる。
【0124】
あるいは、本発明において、好ましくは、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面には、人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の径の人工指紋液の液滴の周囲長さと面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長さ)2 ≧0.70の関係を満たすような表面特性を有している。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、光入射面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、光入射面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0125】
したがって、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液が付着したときには、20μm以上の径の人工指紋液の液滴の周囲長さと面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長さ)2 ≧0.70の関係を満たすことになる。
【0126】
光記録ディスクの光入射面に、指紋が付着している場合には、ジッターが増大することが知られており、本発明において、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液が付着している場合には、20μm以上の径の人工指紋液の液滴の周囲長さと面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長さ)2 ≧0.70の関係を満たしている場合であっても、データ読み取り時におけるジッターが増大して、エラーが発生しやくなる。
【0127】
しかしながら、本発明者の研究によれば、20μm以上の径の人工指紋液の液滴の周囲長さと面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長さ)2 =0.70の関係を満たしている場合には、上述した人工指紋液の拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、人工指紋液を容易に拭き取ることができ、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させ得るとともに、20μm以上の径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係4π×面積/(周囲長)2 が、平均値で、0.70より大きくなり、人工指紋液の液滴の形状が真円に近づくほど、より少ない拭き取り回数によって、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させ得ることが見出されている。
【0128】
したがって、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.70の関係を満たしている場合には、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、実際に、指紋が付着した場合にも、指紋の拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、光記録ディスクの光透過層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、指紋が付着した後のジッターの値を、指紋が付着する前のジッターの値の1.15倍以下にまで低下させることができ、指紋が付着したことに起因して、増大したジッターを実用的なレベルにまで低下させることが可能になる。
【0129】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0130】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図であり、図2には、図1のAで示される部分の略拡大断面図である。
【0131】
図1に示されるように、本実施態様にかかる光記録ディスク1は、円板上をなし、図1および図2において、矢印で示される方向から、レーザ光が照射されるように構成されている。
【0132】
図2に示されるように、本実施態様にかかる光記録ディスク1は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成され、相変化膜によって形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成された潤滑剤層8を備えている。
【0133】
基板2は、光記録ディスク1の機械的な支持体として、機能するものである。
【0134】
基板2を形成するための材料は、光記録ディスク1の支持体として機能することができれば、とくに限定されるものではなく、基板2は、たとえば、ガラス、セラミックス、樹脂などによって、形成することができる。これらのうち、成形の容易性の観点から、樹脂が好ましく使用される。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性、光学特性などの点から、ポリカーボネート樹脂が、とくに好ましく、本実施態様においては、基板2は、ポリカーボネート樹脂によって形成されている。
【0135】
本実施態様においては、基板2は、約1.1mmの厚さを有している。
【0136】
本実施態様においては、レーザ光は、基板2とは反対側に位置する光透過層7を介して、照射されるから、基板2が、光透過性を有していることは必ずしも必要でない。
【0137】
図2に示されるように、基板2の表面には、交互に、グルーブ2aおよびランド2bが形成されている。基板2の表面に形成されたグルーブ2aおよび/またはランド2bは、データを記録する場合およびデータを再生する場合において、レーザ光のガイドトラックとして、機能する。
【0138】
グルーブ2aの深さは、とくに限定されるものではないが、λ/(8n)ないしλ/(4n)(λは、レーザ光の波長であり、nは、後述する光透過層の屈折率である。)に設定することが好ましく、グルーブ2aのピッチは、とくに限定されるものではないが、0.2μmないし0.4μmに設定することが好ましい。
【0139】
図2に示されるように、基板2の表面上には、反射層3が形成されている。
【0140】
反射層3は、光透過層7を介して、照射されるレーザ光を反射し、再び、光透過層7から出射させる役割を果たし、通常、10ないし300nm程度の厚さを有している。
【0141】
反射層3の厚さは、とくに限定されるものではないが、10nmないし300nmであることが好ましく、20nmないし200nmであることが、とくに好ましい。
【0142】
反射層3を形成するための材料は、レーザ光を反射できればよく、とくに限定されるものではなく、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ag、Pt、Auなどによって、反射層3を形成することができる。これらのうち、高い反射率を有しているAl、Au、Ag、Cu、または、AgとCuとの合金などのこれらの金属の少なくとも1つを含む合金などの金属材料が、反射層3を形成するために、好ましく用いられる。
【0143】
反射層3は、たとえば、反射層12の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0144】
反射層3は、レーザ光を用いて、記録層5に記録されたデータを再生するときに、多重干渉効果によって、記録部と未記録部との反射率の差を大きくして、高い再生信号(C/N比)を得るために、設けられている。
【0145】
図2に示されるように、反射層3の表面上には、第二の誘電体層4が形成されている。
【0146】
第二の誘電体層4は、第一の誘電体層6とともに、記録層5を機械的、化学的に保護するとともに、光学特性を調整する機能を有している。
【0147】
第二の誘電体層は、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物から形成されることが好ましい。
【0148】
第二の誘電体層4は、たとえば、第二の誘電体層4の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、反射層3の表面上に形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0149】
図2に示されるように、第二の誘電体層4の表面上には、記録層5が形成されている。
【0150】
記録層5は、相変化膜によって形成され、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Sn−Se−Te、Ge−Te−Sn、In−Se−Tl、In−Sb−Teなどを含んでいる。
【0151】
記録層5は、記録層5の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0152】
記録層5は、通常、3ないし50nm程度の厚さを有するように形成される。
【0153】
図2に示されるように、記録層5の表面上には、第一の誘電体層6が形成されている。
【0154】
第一の誘電体層6は、たとえば、第一の誘電体層6の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0155】
第一の誘電体層は、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物から形成されることが好ましい。
【0156】
第一の誘電体層6と第二の誘電体層4は、互いに同じ誘電体材料によって形成されていてもよいが、異なる誘電体材料によって形成されていてもよい。さらに、第一の誘電体層6および第二の誘電体層4の少なくとも一方が、複数の誘電体膜からなる多層構造であってもよい。
【0157】
図2に示されるように、第一の誘電体層6の表面上には、光透過層7が形成されている。
【0158】
光透過層7は、レーザ光を透過させるとともに、光記録ディスクの光入射面を保護する機能を有している。
【0159】
光透過層7を形成するための材料としては、光学的に透明で、使用されるレーザ光の波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さいことが要求され、スピンコーティング法などによって、光透過層7が形成される場合には、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが、光透過層7を形成するために用いられ、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂が、とくに好ましく、使用される。
【0160】
本実施態様においては、光透過層7が、ハードコート層としての機能を有し、光記録ディスクを保護する機能を有するように構成される。
【0161】
光記録層7は、その表面に傷が入るのを防止するために、光透過層を硬くするための成分として、たとえば、無機微粒子が含有されたり、分子量2000未満の硬化性モノマーが多く含有されることが好ましい。
【0162】
光透過層7に用いられる無機微粒子としては、たとえば、金属もしくは半金属の酸化物の微粒子、または、金属もしくは半金属の硫化物の微粒子が挙げられる。金属または半金属としては、たとえば、Si、Ti、Al、Zn、Zr、In、Sn、Sbなどが挙げられる。また、酸化物、硫化物に代えて、Se化物、Te化物、窒化物、炭化物を用いることもできる。具体的には、たとえば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの微粒子が挙げられ、これらの中では、シリカ微粒子が好ましい。このような無機微粒子を光透過層に添加しておくことにより、光透過層7の耐摩耗性をより高めることができる。
【0163】
また、光透過層7は、第一の誘電体層6の表面に、光透過性樹脂によって形成されたシートを、接着剤を用いて、接着することによって、形成されてもよく、光透過層7が、光透過性樹脂のシートを、接着剤を用いて、接着することによって、形成される場合には、光透過性樹脂のシートの表面耐久性を確保するために、光透過性樹脂に、無機微粒子が含まれることが好ましい。
【0164】
光透過層7の膜厚は、スピンコーティング法により、光透過層7を形成する場合には、70ないし150μmが好ましく、光透過性樹脂によって形成されたシートを、接着剤を用いて、第一の誘電体層6の表面に接着して、光透過層7を形成する場合には70ないし150μmが好ましい。
【0165】
図2に示されるように、光透過層7の表面上には、潤滑剤層8が形成されている。
【0166】
潤滑剤層8は活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として含んでいる。
【0167】
シリコーン系化合物としては、シリコーン系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられ、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられる。
【0168】
活性エネルギー線重合性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基などの活性エネルギー線ラジカル重合性反応性基や、環状エーテル基およびビニルエーテル基などの活性エネルギー線カチオン重合性反応性基が挙げられる。
【0169】
潤滑剤層8に含まれるシリコーン系化合物としては、シリコーン系の置換基を有する部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられ、たとえば、以下の一般式で示されるシリコーン系化合物が挙げられる。
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−R
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−Si(CH3 )3
(CH3 )3 SiO−〔Si(CH3 )2 O〕n−〔Si(CH3 )(R)O〕m−Si(CH3 )3
ここに、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基およびビニルエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を含む置換基であり、n、mは重合度である。
【0170】
潤滑剤層8に含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2− ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフッ化アクリレートが挙げられる。
【0171】
また、潤滑剤層8に含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系置換基を有する部位と、環状エーテル基およびビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、3−(1H,1H−パーフルオロオクチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロウンデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロテトラデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロヘキサデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,9H,9H−パーフルオロ−1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,12H,12H−パーフルオロ−1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、アウジモント株式会社製「Fombrin Z DOL」(商品名:アルコール変性パーフルオロポリエーテル)のジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0172】
潤滑剤層8は、1nmないし100nmの厚さを有している。
【0173】
潤滑剤層8は、潤滑剤溶液を、光透過層7の表面に、スピンコーティング法などによって、塗布して、潤滑剤溶液の塗膜を形成し、活性エネルギー線を照射して硬化させて、形成される。
【0174】
本実施態様においては、潤滑剤層8によって、光記録ディスク1のレーザ光が入射する光入射面が構成されており、潤滑剤層8の表面は、人工指紋液を付着させたときに、表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が、29%以下になるような表面特性を有している。
【0175】
すなわち、まず、微粒子状物質として、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種(平均粒径:1.6ないし2.3μm)の関東ロームと、分散媒として、1重量部のトリオレインと、希釈剤として、10重量部のメトキシプロパノールとを混合、攪拌して,人工指紋液が調製される。
【0176】
次いで、こうして調製された人工指紋液を、マグネティックスターラーを用いて、攪拌しながら、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、人工指紋液を、ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、塗膜が形成された基板を、60℃で、3分間にわたり、加熱して、塗膜中の不要な希釈溶剤であるメトキシプロパノールを完全に除去することによって、擬似指紋パターン転写用の原版が形成される。
【0177】
さらに、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨することによって、擬似指紋転写材が作製される。
【0178】
こうして得られた擬似指紋転写材の研磨された端面が、擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てられ、人工指紋液が、擬似指紋転写材の端面に転写される。
【0179】
次いで、図1および図2に示される光記録ディスク1の中心から半径方向に40mmの位置にある潤滑剤層8の表面に、人工指紋液が付着された擬似指紋転写材の端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てることによって、潤滑剤層8の表面に、人工指紋液が転写される。
【0180】
本実施態様においては、こうして、潤滑剤層8の表面に、人工指紋液を付着させたときに、潤滑剤層8の表面が、表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%以下になるような表面特性を有している。
【0181】
したがって、本実施態様においては、人工指紋液は、表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%以下になるように、潤滑剤層8の表面に付着し、本実施態様において、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク1の潤滑剤層8の表面に、指紋が付着した場合においても、人間の汗や皮脂よりなる指紋液は、表面の単位面積当たりに付着した指紋液が占める面積割合が29%以下になるように、潤滑剤層8の表面に付着する。
【0182】
光記録ディスク1の光入射面に、指紋が付着している場合には、ジッターが増大することが知られており、光入射面である潤滑剤層8の表面の単位面積当たりに付着した指紋液が占める面積割合は29%以下であっても、ジッターは増大する。
【0183】
したがって、データの読み取り時のエラーを防止するためには、ジッターを低下させることが必要であり、そのためには、光記録ディスク1の潤滑剤層8の表面に付着した指紋を拭き取ることが必要になる。
【0184】
本実施態様においては、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有し、光記録ディスク1の潤滑剤層8の表面に付着した人工指紋液が、光記録ディスク1の潤滑剤層8の表面に、重ねられた8枚のフェイシャルティシューを介して、直径16mmのシリコーンゴム栓の端面を4.9Nの圧力で押圧し、潤滑剤層8の表面と、シリコーンゴム栓とを相対的に移動させることによって、拭き取られるように構成されている。
【0185】
本発明者の研究によれば、光記録ディスク1の光入射面である潤滑剤層8の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%の場合には、かかる拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させ得るとともに、人工指紋液の占める面積割合が29%から小さくなるほど、より少ない拭き取り回数によって、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させ得ることが見出されている。
【0186】
したがって、本実施態様においては、光記録ディスク1の潤滑剤層8の表面に、実際に、指紋が付着した場合にも、指紋の拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、光記録ディスク1の光入射面である潤滑剤層8の表面に、指紋が付着した後のジッターの値を、指紋が付着する前のジッターの値の1.15倍以下にまで低下させることができ、指紋が付着したことに起因して、増大したジッターを実用的なレベルにまで低下させることが可能となり、ジッターの増大に起因するデータの読み取りエラーを効果的に防止することができる。
【0187】
図3は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図であり、図4は、図3のBで示された部分の略拡大断面図である。
【0188】
図4に示されるように、本実施態様にかかる光記録ディスク9は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7とを備え、図1および図2に示された光記録ディスク1とは異なり、光透過層7の表面上に、潤滑剤層は形成されていない。
【0189】
本実施態様にかかる光記録ディスク9の光透過層7は、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0190】
光透過層7に含まれるシリコーン系化合物としては、シリコーン系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられ、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられる。
【0191】
活性エネルギー線重合性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基などの活性エネルギー線ラジカル重合性反応性基や、環状エーテル基およびビニルエーテル基などの活性エネルギー線カチオン重合性反応性基が挙げられる。
【0192】
光透過層7に含まれるシリコーン系化合物としては、シリコーン系の置換基を有する部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられ、たとえば、以下の一般式で示される化合物が挙げられる。
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−R
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−Si(CH3 )3
(CH3 )3 SiO−〔Si(CH3 )2 O〕n−〔Si(CH3 )(R)O〕m−Si(CH3 )3
ここに、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基およびビニルエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を含む置換基であり、n、mは重合度である。
【0193】
光透過層7に含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2− ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフッ化アクリレートが挙げられる。
【0194】
光透過層7に含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系置換基を有する部位と、環状エーテル基およびビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、3−(1H,1H−パーフルオロオクチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロウンデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロテトラデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロヘキサデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,9H,9H−パーフルオロ−1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,12H,12H−パーフルオロ−1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、アウジモント株式会社製「Fombrin Z DOL」(商品名:アルコール変性パーフルオロポリエーテル)のジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0195】
本実施態様においては、光透過層7によって、光記録ディスク9のレーザ光が入射する光入射面が構成されており、光透過層7の表面は、人工指紋液を付着させたときに、表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%以下になるような表面特性を有している。
【0196】
したがって、本実施態様においては、人工指紋液は、表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%以下になるように、光透過層7の表面に付着し、本実施態様において、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク9の光透過層7の表面に、指紋が付着した場合においても、人間の汗や皮脂よりなる指紋液は、表面の単位面積当たりに付着した指紋液が占める面積割合が29%以下になるように、光透過層7の表面に付着する。
【0197】
光記録ディスク9の光入射面に、指紋が付着している場合には、ジッターが増大することが知られており、光入射面である光透過層7の表面の単位面積当たりに付着した指紋液が占める面積割合は29%以下であっても、ジッターは増大する。
【0198】
したがって、データの読み取り時のエラーを防止するためには、ジッターを低下させることが必要であり、そのためには、光記録ディスク9の光透過層7の表面に付着した指紋を拭き取ることが必要になる。
【0199】
本実施態様においては、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有し、光記録ディスク9の光透過層7の表面に付着した人工指紋液が、光記録ディスク9の光透過層7の表面に、重ねられた8枚のフェイシャルティシューを介して、直径16mmのシリコーンゴム栓の端面を4.9Nの圧力で押圧し、光透過層7の表面と、シリコーンゴム栓とを相対的に移動させることによって、拭き取られるように構成されている。
【0200】
本発明者の研究によれば、光記録ディスク9の光入射面である光透過層7の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%の場合には、かかる拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させ得るとともに、人工指紋液の占める面積割合が29%から小さくなるほど、より少ない拭き取り回数によって、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させ得ることが見出されている。
【0201】
したがって、本実施態様においては、光記録ディスク9の光透過層7の表面に、実際に、指紋が付着した場合にも、指紋の拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、光記録ディスク9の光入射面である光透過層7の表面に、指紋が付着した後のジッターの値を、指紋が付着する前のジッターの値の1.15倍以下にまで低下させることができ、指紋が付着したことに起因して、増大したジッターを実用的なレベルにまで低下させることが可能となり、ジッターの増大に起因するデータの読み取りエラーを効果的に防止することができる。
【0202】
本発明は、以上の実施態様および実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0203】
たとえば、図1および図2に示された実施態様においては、光記録ディスク1の光入射面を構成する潤滑剤層8の表面は、潤滑剤層8の表面に、人工指紋液を付着させたときに、表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%以下になるような表面特性を有し、図3および図4に示された実施態様においては、光記録ディスク9の光入射面を構成する光透過層7の表面は、光透過層7の表面に、人工指紋液を付着させたときに、表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%以下になるような表面特性を有しているが、光記録ディスク1の潤滑剤層の表面あるいは光記録ディスク9の光透過層7の表面が、人工指紋液を付着させたときに、人工指紋液の拭き取り操作を、5回にわたり、繰り返すことによって、ジッターの値を、人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下に低下させることができる表面特性を有していれば、光記録ディスク1の潤滑剤層の表面あるいは光記録ディスク9の光透過層7の表面が、人工指紋液を付着させたときに、表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が29%以下になるような表面特性を有していることは必ずしも必要でなく、光記録ディスク1の潤滑剤層の表面あるいは光記録ディスク9の光透過層7の表面が、人工指紋液を付着させたときに、表面に付着した人工指紋液の液滴の最大径が80μm以下であるような表面特性を有していてもよいし、光記録ディスク1の潤滑剤層の表面あるいは光記録ディスク9の光透過層7の表面が、人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の径の人工指紋液の液滴の周囲長さと面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長さ)2 ≧0.70の関係を満たすような表面特性を有していてもよい。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、潤滑剤層8の表面あるいは光透過層7の表面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、潤滑剤層8の表面あるいは光透過層7の表面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0204】
さらに、図1および図2に示された実施態様においては、光記録ディスク1は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成され、相変化膜によって形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成された潤滑剤層8を備え、図3および図4に示された実施態様においては、光記録ディスク9は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7とを備えているが、光記録ディスク1が、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成され、相変化膜によって形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成された潤滑剤層8を備え、光記録ディスク9が、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7とを備えていることは必ずしも必要でなく、記録層の構成およびそれに関連する層構成は、とくに限定されるものではなく、相変化膜によって形成された記録層5に代えて、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ色素、ポルフィリン系色素などの有機色素を含む記録層を備えていてもよく、さらには、Si、Ge、Sn、Mg、In、Zn、BiおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含む第一の記録層と、Cuを主成分として含み、第一の記録層の近傍に設けられた第二の記録層を備えていてもよい。
【0205】
【発明の効果】
本発明によれば、レーザ光の入射面に、指紋が付着した場合にも、ジッターの悪化を効果的に防止することができる光記録ディスクを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図である。
【図2】図2は、図1のAで示された部分の略拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図である。
【図4】図4は、図3のBで示された部分の略拡大断面図である。
【符号の説明】
1 光記録ディスク
2 基板
2a グルーブ
2b ランド
3 反射層
4 第二の誘電体層
5 記録層
6 第一の誘電体層
7 光透過層
8 潤滑剤層
9 光記録ディスク
Claims (10)
- 少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させ、前記人工指紋液が付着した前記光入射面に、重ねられた8枚のフェイシャルティシューを介して、直径16mmのシリコーンゴム栓の端面を4.9Nの圧力で押圧し、前記光入射面と、前記シリコーンゴム栓とを相対的に移動させて、前記光入射面に付着した前記人工指紋液を拭き取る操作を、5回にわたり、繰り返したときに、ジッターが、前記人工指紋液を付着させる前の値の1.15倍以下になることを特徴とする光記録ディスク。
- 前記光入射面が、前記人工指紋液を付着させたときに、光入射面の単位面積当たりに付着した前記人工指紋液が占める面積割合が29%以下になるような表面特性を有していることを特徴とする請求項1に記載の光記録ディスク。
- 前記光入射面が、前記人工指紋液を付着させたときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の直径の最大値(前記人工指紋液の液滴の直径は、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。)が80μm以下であるような表面特性を有していることを特徴とする請求項1に記載の光記録ディスク。
- 前記光入射面が、前記人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の直径(前記人工指紋液の液滴の直径は、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。)の前記人工指紋液の液滴の周囲長さと面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長さ)2 ≧0.70の関係を満たすような表面特性を有していることを特徴とする請求項1に記載の光記録ディスク。
- 前記光透過層上に形成された潤滑剤層を備え、前記潤滑剤層の表面によって、前記光入射面が構成されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
- 前記潤滑剤層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として、含んでいることを特徴とする請求項5に記載の光記録ディスク。
- 前記光透過層が、潤滑剤を含有し、前記光透過層の表面によって、前記光入射面が構成されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
- 前記光透過層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の光記録ディスク。
- 前記光透過層の厚さが、70ないし150μmであることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
- 前記記録層が、青色レーザ光を用いて、データの記録および/または再生が可能に構成されたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
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2003
- 2003-06-19 JP JP2003175133A patent/JP2005011447A/ja active Pending
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