JP2005011444A - 光記録ディスク - Google Patents
光記録ディスク Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005011444A JP2005011444A JP2003175130A JP2003175130A JP2005011444A JP 2005011444 A JP2005011444 A JP 2005011444A JP 2003175130 A JP2003175130 A JP 2003175130A JP 2003175130 A JP2003175130 A JP 2003175130A JP 2005011444 A JP2005011444 A JP 2005011444A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- layer
- optical recording
- recording disk
- artificial fingerprint
- fingerprint liquid
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Optical Record Carriers And Manufacture Thereof (AREA)
- Manufacturing Optical Record Carriers (AREA)
Abstract
【課題】光記録ディスクのレーザ光の入射面に、指紋が付着した場合にも、トラッキング制御特性が低下することがなく、データを記録し、再生することができる光記録ディスクを提供する。
【解決手段】基板2と、基板上に形成された記録層5と、記録層上に形成された光透過層7と、光透過層上に形成されたハードコート層8と、ハードコート層8上に形成された潤滑剤層9とを備えた光記録ディスク1であって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたり、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、レーザ光が入射する光入射面を構成する潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、人工指紋液を潤滑剤層9の表面に付着させたときに、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスク。
【選択図】 図2
【解決手段】基板2と、基板上に形成された記録層5と、記録層上に形成された光透過層7と、光透過層上に形成されたハードコート層8と、ハードコート層8上に形成された潤滑剤層9とを備えた光記録ディスク1であって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたり、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、レーザ光が入射する光入射面を構成する潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、人工指紋液を潤滑剤層9の表面に付着させたときに、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスク。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録ディスクに関するものであり、さらに詳細には、光記録ディスクのレーザ光の入射面に、指紋が付着した場合にも、トラッキング制御特性が低下することがなく、データを記録し、再生することができる光記録ディスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、デジタルデータを記録するための記録媒体として、CDやDVDに代表される光記録ディスクが広く利用されているが、近年においては、より大容量で、かつ、高いデータ転送レートを有する次世代型の光記録ディスクの開発が盛んに行われている。
【0003】
大容量で、かつ、高いデータ転送レートを有する次世代型の光記録ディスクを開発するためには、必然的に、データの記録・再生に用いるレーザ光のビームスポット径を非常に小さく絞ることが要求される。
【0004】
レーザ光のビームスポット径を小さく絞るためには、レーザ光を集束するための対物レンズの開口数(NA)を大きくするとともに、レーザ光の波長λを短くすることが必要であり、開口数(NA)が0.85の対物レンズを用い、405nmの波長λを有するレーザ光を集束させて、次世代型の光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを再生することが提案されている。
【0005】
しかしながら、レーザ光を集束するための対物レンズの開口数(NA)を高くすると、次式(1)で示されるように、光記録媒体に対するレーザ光の光軸の傾きに許される角度誤差、すなわち、チルトマージンTが非常に狭くなるという問題が生じる。
【0006】
【数1】
式(1)において、λは、記録・再生に用いるレーザ光の波長であり、dは、レーザ光が透過する光透過層の厚さである。
【0007】
式(1)から明らかなように、チルトマージンTは、対物レンズのNAが高いほど、小さくなり、光透過層の厚さdが薄いほど、大きくなる。したがって、チルトマージンTが小さくなることを防止するためには、光透過層の厚さdを小さくすることが効果的である。
【0008】
そこで、次世代型の光記録ディスクにおいては、チルトマージンを広くするために、光透過層の厚さを100μm程度まで薄くすることが提案されている。
【0009】
しかしながら、レーザ光が透過する光透過層の厚さを100μm程度にまで薄くすると、光透過層の表面におけるレーザ光のビームスポットの面積が小さくなるため、光透過層のレーザ光の入射面に、ゴミや指紋が付着した場合や、傷がついた場合には、データの読み取り時に、エラーが生じやすいという問題がある。
【0010】
そこで、光透過層を介して、レーザ光を照射するように構成され、家庭における利用を想定している次世代型の光記録ディスクを、カートリッジに収容して、使用することが提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、CDやDVDは、カートリッジに収容することなく、いわゆるベア・ディスクとして使用されているにもかかわらず、次世代型の光記録ディスクだけが、カートリッジに収容しなければ使用できないということは、ユーザーにとって、きわめて不便であるし、また、次世代型の光記録ディスクがカートリッジに収容されることが必要不可欠であるとすると、次世代型の光記録ディスクのコストが高くなるという問題も生じる。
【0012】
そこで、光透過層の表面に、硬いハードコート層が形成され、ベア・ディスクの形で使用することができる次世代型の光記録ディスクが提案されている。
【0013】
このように、光透過層の表面に、硬いハードコート層が形成された光記録ディスクは、カートリッジに収容する必要がなく、CDやDVDと同様に使用することができるという大きな利点を有している。
【0014】
しかしながら、その一方で、光透過層の表面に、硬いハードコート層が形成された光記録ディスクは、ベア・ディスクの形で、使用されることが前提とされているため、ユーザーが光記録ディスクに直接触れやすく、ハードコート層の表面に、指紋が付着しやすく、ハードコート層の表面に、指紋が付着した場合には、ハードコート層を介して、レーザ光が照射されるため、付着した指紋によって、光記録ディスクの表面に形成されたトラックの読み取りが妨げられ、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを再生することができなくなるおそれがある。すなわち、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを再生するにあたっては、まず、光記録ディスクに刻まれたトラックに、レーザ光を照射することによって得られるトラッキングエラー信号に基づき、レーザ光を発するピックアップの位置を制御して、レーザ光がトラックに正確に追従するように、トラッキング制御が実行されるのが一般であるが、光入射面であるハードコート層の表面に、指紋が多量に付着したときには、ハードコート層の表面に付着した指紋が、トラッキング制御に悪影響を及ぼして、トラックへのレーザ光の追従性が悪化し、その結果、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを再生することができなくなるという問題が生ずる。
【0015】
したがって、本発明は、光記録ディスクのレーザ光の入射面に、指紋が付着した場合にも、トラッキング制御特性が低下することがなく、データを記録し、再生することができる光記録ディスクを提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のかかる目的は、少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、前記エタノールを含ませた前記自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、前記自己接着型の長繊維不織布と、前記光入射面とを10往復にわたって、相対的に移動させて、前記自己接着型の長繊維不織布で、前記光入射面を擦り、この後に、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させたときに、前記光入射面の単位面積当たりに付着した前記人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスクによって達成される。
【0017】
本発明者の研究によれば、光入射面に人工指紋液を付着させたときに、光入射面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下である場合には、光入射面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本発明によれば、光記録ディスクの光入射面が、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、光記録ディスクを50時間にわたり、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、レーザー光が入射する光入射面を、10往復にわたって擦り、この後に、レーザ光の光入射面に指紋が付着した場合でも、光入射面の単位面積当たりに付着する人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有し、人工指紋液が、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの光入射面に指紋が付着した場合にも、光入射面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0018】
本発明の前記目的はまた、少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、前記エタノールを含ませた前記自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、前記自己接着型の長繊維不織布と、前記光入射面とを10往復にわたって、相対的に移動させて、前記自己接着型の長繊維不織布で、前記光入射面を擦り、この後に、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させたときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下であるような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスクによって達成される。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、光入射面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、光入射面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0019】
本発明者の研究によれば、光入射面に人工指紋液を付着させたときに、光入射面の単位面積当たりに付着した指紋の液滴の直径の最大値が82μm以下である場合には、光入射面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本発明によれば、光記録ディスクの光入射面が、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、光記録ディスクを50時間にわたり、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、レーザー光が入射する光入射面を、10往復にわたって擦り、この後に、レーザ光の光入射面に指紋が付着した場合でも、光入射面の単位面積当たりに付着した指紋の液滴の直径の最大値が82μm以下になるような表面特性を有し、人工指紋液が、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの光入射面に指紋が付着した場合にも、光入射面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0020】
本発明の前記目的はまた、少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、前記エタノールを含ませた前記自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、前記自己接着型の長繊維不織布と、前記光入射面とを10往復にわたって、相対的に移動させて、前記自己接着型の長繊維不織布で、前記光入射面を擦り、この後に、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させたときに、20μm以上の直径の前記人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスクによって達成される。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、光入射面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、光入射面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0021】
本発明者の研究によれば、光入射面に人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の直径を有する指紋を構成する液体の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たす場合には、光入射面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本発明によれば、光記録ディスクの光入射面が、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、光記録ディスクを50時間にわたり、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、レーザー光が入射する光入射面を、10往復にわたって擦り、この後に、レーザ光の光入射面に指紋が付着した場合でも、20μm以上の直径を有する指紋を構成する液体の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有し、人工指紋液が、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの光入射面に指紋が付着した場合にも、光入射面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0022】
本発明の好ましい実施態様においては、光記録ディスクは、さらに、前記光透過層上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層上に形成された潤滑剤層を備え、前記潤滑剤層の表面によって、前記光入射面が構成されている。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記潤滑剤層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として含んでいる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様においては、光記録ディスクは、さらに、前記光透過層上に形成されたハードコート層を備え、前記ハードコート層が潤滑剤を含有し、前記ハードコート層の表面によって、前記光入射面が構成されている。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記ハードコート層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態においては、光記録ディスクは、さらに、前記光透過層上に形成された潤滑剤層を備え、前記潤滑剤層の表面によって、前記光入射面が構成されている。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、前記潤滑剤層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として、含んでいる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態においては、光記録ディスクは、前記光透過層が潤滑剤を含有し、前記光透過層の表面によって、前記光入射面が構成されている。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、前記光透過層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0030】
本発明においては、光記録ディスクを、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたり、保存する保存試験が実行される。こうした保存試験は、通常の使用環境より高温、多湿な条件下で、所定時間にわたって、保存することにより、実際の使用環境での長期間の使用または保存後に相当する程度に、光記録ディスクの表面特性を劣化させるものである。
【0031】
本発明においては、さらに、保存試験に続いて、光記録ディスクの表面が、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、擦られて、擦り試験が実行される。すなわち、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、光記録ディスクの表面との接触部分を中心として、1.0mlのエタノールを、スポイトで滴下し、こうしてエタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布を、光記録ディスクの表面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、自己接着型の長繊維不織布と、光記録ディスクの表面とを10往復にわたって、相対的に移動させることにより、光記録ディスクの表面が、自己接着型の長繊維不織布で擦られる。こうした擦り試験は、光記録ディスクの表面に存在する潤滑性物質を払拭させるような操作を試験的に行うことにより、光記録ディスクの表面の潤滑性物質の接着性を確かめるためのものである。ここに、セルロースを主成分として含むとは、実質的にセルロース以外の原料を含まないことを意味し、具体的には、長繊維不織布の95%以上がセルロースからなることをいう。
【0032】
本発明において、保存試験および擦り試験を組み合わせて行う試験は、実際の使用環境下で、光記録ディスクが、長期間にわたって、繰り返し、使用され、あるいは、長期間にわたって、保存された場合を想定したものであり、実際の使用環境での長期間の使用または保存後における光記録ディスクの信頼性を確かめるものである。
【0033】
本発明においては、人工指紋液は、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製される。
【0034】
本発明において用いられる人工指紋液は、微粒子状物質と、微粒子状物質を分散可能な分散媒とを含んでいる。
【0035】
人工指紋液の分散媒は、25℃における表面張力が20ないし50mNm−1の範囲内にあることが好ましい。分散媒の25℃における表面張力が20ないし50mNm−1の範囲内にあるときは、実際の指紋に可能な限り近い性質を有する人工指紋液を調製することができる。
【0036】
人工指紋液に用いられる分散媒は、人間の汗や皮脂を構成する液体に近い物性を有していることが好ましく、25℃における表面張力が、20ないし50mNm−1の範囲内にあり、200℃における飽和蒸気圧が、760mmHg(101325Pa)以下であることが好ましい。25℃における表面張力が20mNm−1未満の場合には、表面に対する濡れ性が高くなり過ぎ、実際の指紋に比して、著しく物体表面に付着しやすくなり、除去することが困難になるので、好ましくない。一方、25℃における表面張力が50mNm−1を越えている場合には、表面に対する濡れ性が低下し、実際の指紋に比して、著しく物体表面に付着させることが困難になり、その一方で、除去されやすくなり、好ましくない。
【0037】
さらに、人工指紋液に用いられる分散媒の200℃における飽和蒸気圧が、760mmHg(101325Pa)を越えている場合には、人工指紋液の付着後に、徐々に分散媒が揮発し、表面に付着した人工指紋液の状態が変化することがあり、好ましくない。
【0038】
人工指紋液に用いられる分散媒は、25℃における粘度が500cP以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜300cP、さらに好ましくは、5〜250cPである。分散媒が、このような粘度を有している場合には、表面への指紋付着後においても、微粒子状物質を良好に分散させて、表面へ定着させやすい。
【0039】
人工指紋液に用いられる分散媒としては、一般に、高級脂肪酸、高級脂肪酸の誘導体、テルペン類およびテルペン類の誘導体などが挙げられる。分散媒に用いられる高級脂肪酸としては、たとえば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。分散媒に用いられる高級脂肪酸の誘導体としては、エステル誘導体が挙げられ、たとえば、ジグリセリド誘導体や、トリオレインなどのトリグリセリド誘導体が挙げられる。分散媒に用いられるテルペン類としては、たとえば、スクアレン、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、リナロール、テルピネオール、カジネンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。さらに、これらのうちの少なくとも1種以上の化合物と、水とを混合して、分散媒を調製することもできる。
【0040】
本発明においては、人工指紋液の分散媒として、トリオレインが用いられており、トリオレインは、人工指紋液の分散媒に要求される上述したすべての性質を満足している。
【0041】
人工指紋液は、分散媒中に微粒子状物質を含んでいる。実際の指紋に含まれる固体成分の大半は、ケラチンと呼ばれる蛋白質である。したがって、ケラチンの微粉末を前記分散媒に添加、混合することによって、人工指紋液を調製することができ、事実、水、オレイン酸、スクアレン、トリオレインなどの分散媒に、ケラチン微粉末を適当な比率で混合したものは、人工指紋液として、効果的に使用することができるが、ケラチンに代えて、分散媒に対して良好な濡れ性を有し、かつ、実際の指紋成分に含まれるケラチンに近い粒子サイズを有する微粒子状物質を用いて、人工指紋液を調製することもできる。
【0042】
人工指紋液に含まれる微粒子状物質は、100μm以下の平均粒径を有することが好ましく、50μm以下の平均粒径を有することがより好ましい。
【0043】
本発明においては、人工指紋液に含まれる微粒子状物質として、JIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームが用いられており、関東ロームは、分散媒であるトリオレインに対して良好な濡れ性を有し、かつ、実際の指紋成分に含まれるケラチンに近い粒子サイズを有している。
人工指紋液は、1重量部の分散媒に対して、0.1ないし5.0重量部の微粒子状物質を添加して、調製されることが好ましく、さらに好ましくは、1重量部の分散媒に対して、0.1ないし3.0重量部の微粒子状物質を添加し、最も好ましくは、0.2ないし1.0重量部の微粒子状物質を添加して、人工指紋液が調製される。
【0044】
本発明においては、1重量部のトリオレインに対して、0.4重量部の関東ロームが添加されて、人工指紋液が調製される。
【0045】
人工指紋液の光記録ディスク表面への転写性を向上させるために、必要に応じて、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メトキシプロパノールなどの希釈剤によって、人工指紋液が希釈される。光記録ディクスの表面に転写された後、最終的に、これらの希釈剤の大部分が除去されるように、希釈剤は、200℃における飽和蒸気圧が760mmHg(101325Pa)を越えていることが必要である。
【0046】
本発明においては、希釈剤として、メトキシプロパノールが用いられている。
【0047】
本発明において、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液は、光記録ディスクのレーザ光が入射する光入射面に付着される。
【0048】
本発明において、光記録ディスクは、少なくとも、基板と、基板上に形成された記録層と、記録層上に形成された光透過層を備えている。
【0049】
本発明において、基板は、光記録ディスクに求められる機械的強度を確保するための支持体として、機能するものである。
【0050】
本発明において、基板を形成するための材料は、光記録ディスクの支持体として機能することができれば、とくに限定されるものではなく、基板は、たとえば、ガラス、セラミックス、樹脂などによって、形成することができる。これらのうち、成形の容易性の観点から、樹脂が好ましく使用される。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性、光学特性などの点から、ポリカーボネート樹脂が、とくに好ましく、使用される。
【0051】
本発明においては、レーザ光は、基板とは反対側に位置する光入射面を介して、照射されるから、基板が、光透過性を有していることは必要でない。
【0052】
本発明において、好ましくは、基板の表面には、交互に、グルーブおよびランドが形成されている。基板の表面に形成されたグルーブおよび/またはランドは、データを記録する場合およびデータを再生する場合において、レーザ光のガイドトラックとして、機能する。
【0053】
グルーブの深さは、とくに限定されるものではないが、λ/(8n)ないしλ/(4n)(λは、レーザ光の波長であり、nは、後述する光透過層の屈折率である。)に設定することが好ましく、グルーブのピッチは、とくに限定されるものではないが、0.2μmないし0.4μmに設定することが好ましい。
【0054】
本発明において、光記録ディスクは、少なくとも一層の記録層を備え、光記録ディスクが、書き換え型光記録媒体として構成される場合には、少なくとも一層の記録層は、相変化材料によって形成された相変化膜と、相変化膜の両側に設けられた第一の誘電体層および第二の誘電体層を含んでいる。
【0055】
相変化膜を形成する相変化材料は、レーザ光の照射を受けると、結晶状態とアモルファス状態との間で、可逆的に変化し、異なる光学特性を示す性質を有している。本発明において使用可能な相変化材料としては、たとえば、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Sn−Se−Te、Ge−Te−Sn、In−Se−Tl、In−Sb−Teなどが挙げられる。これらの材料に、Co、Pt、Pd、Au、Ag、Ir、Nb、Ta、V、W、Ti、Cr、Zr、BiおよびInよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を微量に添加してもよく、また、窒素などの還元性ガスを微量に添加してもよい。
【0056】
相変化膜の厚さは、とくに限定されるものではなく、通常、3ないし50nm程度である。
【0057】
第一の誘電体層および第二の誘電体層は、相変化膜を機械的、化学的に保護するとともに、光学特性を調整する機能を有している。
【0058】
第一の誘電体層および第二の誘電体層は、それぞれ、単層によって構成されていても、複数層によって構成されていてもよい。
【0059】
第一の誘電体層および第二の誘電体層は、それぞれ、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物から形成されることが好ましい。
【0060】
光記録ディスクが、追記型光記録媒体として構成される場合には、光記録ディスクは、有機色素を含む単層の記録層または無機化合物を含む単一の記録層もしくは二以上の記録層を備えている。
【0061】
本発明において、光記録ディスクが、有機色素を含む単層の記録層を備えている場合には、有機色素としては、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ色素、ポルフィリン系色素などを使用することができる。
【0062】
シアニン系色素としては、次の一般式で表わされるモノメチンシアニン系色素のうち、370ないし425nmの波長の範囲に屈折率n(複素屈折率の実部)の極小値nminを有し、記録時のレーザー光および再生時のレーザー光の波長における屈折率nが1.2以下であり、かつ、390ないし420nmの波長の記録時のレーザー光を吸収して、溶融または分解し、屈折率変化を生じる性質を有している色素が好ましい。
【0063】
【化1】
一般式(1)において、QおよびQ’は、含窒素複素環を形成する原子群を表わし、含窒素複素環は縮合環であってもよく、置換基を有していてもよい。QおよびQ’は、同一でも異なっていてもよい。
【0064】
R1およびR1’は、アルキル基を表わし、アルキル基は置換基を有していてもよい。R1およびR1’は同一でも異なっていてもよい。R1およびR1’として用いられるアルキル基としては、炭素数1ないし6のアルキル基が挙げられ、炭素数1ないし4のアルキル基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基が好ましい。
【0065】
X−は陰イオンを表わし、mは0または1である。X−として用いられる陰イオンとしては、Cl−、Br−、I−などのハロゲンイオン、ClO4 −、BF4 −、PF6 −、SbF6 −、SCN−などが挙げられる。
【0066】
具体的には、以下の構造式で示されるモノメチンシアニン系色素が、好ましく使用される。
【0067】
【化2】
本発明において、記録層が、モノメチンシアニン系色素を含んでいる場合には、記録層は、さらに、放射線硬化性樹脂を含んでいる。
【0068】
記録層に含まれる放射線硬化性樹脂としては、光学的に透明で、使用されるレーザー光波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さい樹脂が選ばれ、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが用いられ、紫外線硬化性樹脂および電子線硬化性樹脂が、とくに好ましく使用される。
【0069】
本発明において、記録層は、次の一般式で表わされるポルフィリン系色素を含んでいてもよい。
【0070】
【化3】
ポルフィリン系色素は、370ないし425nmの範囲に屈折率n(複素屈折率の実部)の極小値nminを有し、390ないし420nmの波長のレーザー光の波長における屈折率nが1.2以下であり、かつ、390ないし420nmの波長の記録時のレーザー光を吸収して、溶融または分解し、屈折率変化を生じる性質を有していることが好ましい。
【0071】
本発明において、好ましくは、ポルフィリン系色素の一般式(1)中のRが、
【0072】
【化4】
【0073】
【化5】
【0074】
【化6】
または、
【0075】
【化7】
から選ばれる。
【0076】
本発明において、光記録ディスクが、無機化合物を含む単層の記録層を備えている場合には、記録層が、Al、Si、Ge、C、Sn、Au、Zn、Cu、B、Mg、Ti、Mn、Fe、Ga、Zr、AgおよびPtよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を主成分として含んでいることが好ましい。
【0077】
本発明において、光記録ディスクが、無機化合物を含む二以上の記録層を備えている場合には、光記録ディスクが、第一の記録層および第二の記録層を備え、第一の記録層が、Si、Ge、Sn、Mg、In、Zn、BiおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含み、第二の記録層が、Cuを主成分として含んでいることが好ましく、第二の記録層は、第一の記録層に近傍に、好ましくは、第一の記録層に接触して、設けられる。
【0078】
光記録ディスクが、Si、Ge、Sn、Mg、In、Zn、BiおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含む第一の記録層と、Cuを主成分として含み、第一の記録層の近傍に設けられた第二の記録層を備えている場合には、データを記録する際に、レーザ光によって、第一の記録層に主成分として含まれている元素と、第二の記録層に主成分として含まれている元素とが混合した領域が形成され、反射率を大きく変化させることが可能になり、第一の記録層に主成分として含まれている元素と、第二の記録層に主成分として含まれている元素とが混合した領域の反射率と、それ以外の領域の反射率の大きな差を利用することにより、情報を良好な感度で記録することができ、良好な感度で記録された初期の記録情報を、長期にわたって、保存することが可能になる。
【0079】
本発明において、さらに好ましくは、第一の記録層が、Ge、Si、Mg、AlおよびSnよりなる群から選ばれる元素を主成分として含んでいる。
【0080】
本発明において、好ましくは、第二の記録層に、Al、Si、Zn、Mg、Au、Sn、Ge、Ag、P、Cr、FeおよびTiよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が添加されている。
【0081】
本発明において、さらに好ましくは、第二の記録層に、Al、Zn、SnおよびAuよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が添加されている。
【0082】
本発明において、記録層が、ポルフィリン系色素を含んでいる場合には、記録層の表面に、誘電体層が形成されることが好ましい。
【0083】
誘電体層は、記録層を機械的、化学的に保護する機能を有するとともに、記録層の光学特性を調整する干渉層としての機能を有している。誘電体層は、単層によって構成されていても、複数層によって構成されていてもよい。
【0084】
本発明において、誘電体層は、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物によって形成することができ、ZnS−SiO2 、AlN、Ta2 O3 、CeO2−Al2O3などが、誘電体層を形成するために好ましく用いられる。
【0085】
本発明において、光記録ディスクは、記録層上に形成された光透過層を備えている。
【0086】
光透過層は、その内部を、記録用および/または再生用のレーザ光が透過する層である。
【0087】
光透過層を形成するための材料としては、光学的に透明で、使用されるレーザ光の波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さいことが要求され、スピンコーティング法などによって、光透過層が形成される場合には、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが、光透過層を形成するために用いられ、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂が、とくに好ましく、使用される。
【0088】
光透過層を形成するために用いられる紫外線硬化性化合物および電子線硬化性化合物ならびにそれらの重合用組成物の具体例としては、アクリル酸やメタクリル酸のエステル化合物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどのアクリル系二重結合、ジアリルフタレートのようなアリル系二重結合、マレイン酸誘導体等の不飽和二重結合などの紫外線照射または電子線照射によって架橋あるいは重合する基を分子中に含有または導入したモノマー、オリゴマーおよびポリマーなどを挙げることができる。これらは、多官能化合物、とくに3官能以上の化合物であることが好ましく、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。単官能化合物を含んでいてもよい。
【0089】
紫外線硬化性モノマーとしては、分子量2000未満の化合物が、オリゴマーとしては、分子量2000ないし10000のものが好適である。これらの例としては、スチレン、エチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレートなども挙げられるが、とくに好ましいものとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ) アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ) アクリレート、フェノールエチレンオキシド付加物の(メタ) アクリレートなどが挙げられる。この他、紫外線硬化性オリゴマーとしては、オリゴエステルアクリレートやウレタンエラストマーのアクリル変性体などが挙げられる。
【0090】
紫外線硬化性材料としては、さらに、エポキシ樹脂および光カチオン重合触媒を含有する組成物も、好ましく使用される。エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂が好ましく、とくに、分子内に、2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどの1種以上が好ましい。脂環式エポキシ樹脂のエポキシ当量はとくに限定されるものではないが、良好な硬化性が得られることから、60ないし300g/mol、とくに100ないし200g/molであることが好ましい。
【0091】
光カチオン重合触媒は、公知のいずれのものを用いてもよく、とくに限定されるものではない。たとえば、光カチオン重合触媒として、1種以上の金属フルオロホウ酸塩および三フッ化ホウ素の錯体、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、6A族元素の芳香族オニウム塩、5A族元素の芳香族オニウム塩、3A族ないし5A族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6 アニオン(ただし、Mは、P、AsまたはSb)を有する6A族元素、トリアリールスルホニウム錯塩、芳香族イオドニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩などを用いることができ、とくに、ポリアリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム塩またはイオドニウム塩、3A族元素、5A族元素および6A族元素の芳香族オニウム塩の1種以上を用いることが好ましい。
【0092】
光透過層を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂としては、25℃において、1,000ないし10,000センチポイズの粘度を有するものが好ましい。
【0093】
本発明において、光透過層は、活性エネルギー線硬化型樹脂をスピンコーティング法によって塗布し、その後、紫外線などの活性エネルギー線を照射して、硬化させて、形成することが好ましい。
【0094】
本発明において、光学的に透明で、使用されるレーザ光の波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さい樹脂によって形成された所望の厚さのシートを、接着剤を用いて、接着することによって、光透過層を形成することもできる。
【0095】
光透過層を形成するためのシートに用いられる樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエステルなどを挙げることができる。樹脂のシートの貼付前に、樹脂の熱変形温度に対して、−20ないし+80℃の範囲で、シートの成膜時の残留応力を取り除く目的で、シート状の樹脂に、アニール処理(熱緩和処理)を施すこともできる。シート状の樹脂に、アニール処理を施さなかった場合には、光記録ディスクの保存時に、シートの残留応力の影響で、光記録ディスクが変形するおそれがある。アニール処理を施すための加熱手段は、ヒーター、ホットプレート、ホットローラ、ベーク炉、電磁誘導加熱などの公知の加熱手段の中から、工程条件などを元に、適宜選択することができる。
【0096】
樹脂のシートを貼付するために使用される接着剤は、感圧性粘着剤や紫外線硬化型樹脂などから選択することができる。たとえば、光透過層の材料として上述した活性エネルギー線硬化型樹脂は、樹脂のシートを貼付するための接着剤として好適である。
【0097】
樹脂のシートを貼付して、光透過層を形成する場合には、接着剤として、活性エネルギー線硬化型樹脂をスピンコーティング法によって塗布し、未硬化の活性エネルギー線硬化型樹脂層上に、樹脂のシートを載置し、その後、紫外線などの活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂層を硬化することによって、樹脂のシートを接着して、光透過層を形成するとよい。より具体的には、真空中(0.1気圧以下)において、樹脂のシートを未硬化の活性エネルギー線硬化型樹脂層上に載置し、次いで、大気圧雰囲気に戻して、紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂層を硬化させるとよい。
【0098】
光透過層の膜厚は、スピンコーティング法により、光透過層を形成する場合には、1ないし150μmが好ましく、シート状の樹脂を貼付して、光透過層を形成する場合には50ないし150μmが好ましい。
【0099】
本発明において、好ましくは、光記録ディスクは、光透過層の表面に形成されたハードコート層を備えている。
【0100】
ハードコート層は、光記録ディスクを保護し、カートリッジに収容することなく、光記録ディスクを使用可能にする機能を有している。
【0101】
本発明において、好ましくは、ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子を含んでいる。
【0102】
ハードコート層を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの活性基を有する化合物であれば、とくに限定されるものではない。活性エネルギー線硬化性樹脂は、十分な硬度を有するハードコート層を形成するために、1つの分子内に、2つ以上、好ましくは、3つ以上の重合性基を含む多官能モノマーもしくはオリゴマーを含んでいることが好ましい。
【0103】
本発明において、ハードコート層を形成するために用いられる(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、たとえば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレートなどが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。
【0104】
本発明において、ハードコート層を形成するために用いられるビニル基を有する化合物としては、たとえば、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ヒドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテルなどが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。
【0105】
本発明において、ハードコート層を形成するために用いられるメルカプト基を有する化合物としては、たとえば、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)などが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。
【0106】
本発明において、ハードコート層は、一種の活性エネルギー線硬化性樹脂のみを含んでいても、二種以上の活性エネルギー線硬化性樹脂を含んでいてもよい。
【0107】
本発明において、ハードコート層は、透明性を確保するために、100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子、好ましくは、20nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子を含んでいる。無機微粒子の平均粒子径は、コロイド溶液製造上の制約から、好ましくは、5nm以上である。
【0108】
本発明において、ハードコート層を形成するために用いられる無機微粒子としては、たとえば、金属もしくは半金属の酸化物の微粒子、または、金属もしくは半金属の硫化物の微粒子が挙げられる。金属または半金属としては、たとえば、Si、Ti、Al、Zn、Zr、In、Sn、Sbなどが挙げられる。また、酸化物、硫化物に代えて、Se化物、Te化物、窒化物、炭化物を用いることもできる。具体的には、たとえば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの微粒子が挙げられ、これらの中では、シリカ微粒子が好ましい。このような無機微粒子をハードコート剤組成物に添加しておくことにより、ハードコート層の耐摩耗性をより高めることができる。
【0109】
シリカ微粒子の中では、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物によって、表面修飾されたものが、好ましく用いられる。このような反応性シリカ微粒子は、ハードコートを硬化させる際の活性エネルギー線照射によって、架橋反応を起こし、ポリマーマトリクス中に固定される。このような反応性シリカ微粒子の例は、特開平9−100111号公報などに記載されており、特開平9−100111号公報に記載された反応性シリカ粒子は、本発明において好ましく用いることができる。
【0110】
本発明において、ハードコート層の表面によって、レーザ光が入射する光入射面が構成されている場合には、ハードコート層は、その表面が、撥水性、撥油性および潤滑性の少なくとも1つを有していることが好ましく、好ましくは、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0111】
シリコーン系化合物としては、シリコーン系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられ、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられる。
【0112】
活性エネルギー線重合性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基などの活性エネルギー線ラジカル重合性反応性基や、環状エーテル基およびビニルエーテル基などの活性エネルギー線カチオン重合性反応性基が挙げられる。
【0113】
シリコーン系化合物としては、シリコーン系の置換基を有する部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。たとえば、以下の一般式で示される化合物が挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−R
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−Si(CH3 )3
(CH3 )3 SiO−〔Si(CH3 )2 O〕n−〔Si(CH3 )(R)O〕m−Si(CH3 )3
ここに、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基およびビニルエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を含む置換基であり、n、mは重合度である。
【0114】
フッ素系化合物としては、フッ素系(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2− ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフッ化アクリレートが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。たとえば、(メタ)アクリレート基が導入されたパーフルオロポリエーテルなどの高分子化合物、あるいは、(メタ)アクリレート基の代わりに、ビニル基またはメルカプト基を有するフッ素系化合物なども好ましく用いることができる。
【0115】
また、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基を有する部位と、環状エーテル基およびビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、3−(1H,1H−パーフルオロオクチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロウンデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロテトラデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロヘキサデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,9H,9H−パーフルオロ−1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,12H,12H−パーフルオロ−1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、アウジモント株式会社製「Fombrin Z DOL」(商品名:アルコール変性パーフルオロポリエーテル)のジグリシジルエーテルなどが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。たとえば、反応性基として、3,4−エポキシシクロヘキシル基などの脂環エポキシ基や、ビニルエーテル基を有する化合物も、好ましく用いることができる。
【0116】
本発明において、ハードコート層の表面によって、レーザ光が入射する光入射面が構成されている場合には、ハードコート層を形成するためのハードコート剤組成物は、5重量%以上、80重量%以下の無機微粒子と、0.01重量%以上、1重量%以下のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物と、19重量%以上、94.99重量%以下の活性エネルギー線硬化性樹脂を含んでいることが好ましい。無機微粒子を80重量%よりも多く含有させると、ハードコート層の膜強度が弱くなりやすく、その一方で、無機微粒子が5重量%未満では、ハードコート層の耐摩耗性向上効果が十分でなくなる。シリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を1重量%よりも多く含有させると、ハードコート層の表面の潤滑性は向上するが、ハードコート層の硬さが低下しやすく、その一方で、シリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物が0.01重量未満では、潤滑性向上効果が十分でなくなる。より好ましくは、ハードコート剤組成物は、10重量%以上、60重量%以下の無機微粒子と、0.01重量%以上、1重量%以下のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物と、39重量%以上、89.99重量%以下の活性エネルギー線硬化性樹脂を含んでいる。とくに、ハードコート層に、0.025重量%以上、0.3重量%以下のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物が含まれていることが好ましく、0.15重量%以上、0.25重量%以下のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物が含まれていることが最も好ましい。
【0117】
ハードコート層を形成するためのハードコート剤組成物は、公知の光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤は、活性エネルギー線として、電子線を用いる場合には、とくに必要はないが、紫外線を用いる場合には、必要となる。光重合開始剤は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系などの公知のものから選択することができる。光重合開始剤の含有量は、たとえば、無機微粒子、シリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物ならびに活性エネルギー線硬化性樹脂の総重量に対して、0.5ないし5重量%程度である。
【0118】
また、ハードコート層を形成するためのハードコート剤組成物は、さらに、必要に応じて、非重合性の希釈溶剤、有機フィラー、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、ケイ素化合物などを含んでいてもよい。
【0119】
本発明において、ハードコート層は、光透過層の表面上に、ハードコート剤組成物を塗布して、塗膜を形成し、塗膜に、活性エネルギー線を照射して、ハードコート剤組成物層を硬化させ、形成することができる。ハードコート剤組成物の塗布方法は、とくに限定されるものではなく、スピンコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法などを用いることができるが、スピンコーティング法が好ましく使用される。
【0120】
本発明において、光透過性のシートを、接着剤を用いて、接着することによって、光透過層が形成される場合には、長尺状の光透過性のシートの表面に、あらかじめ、ハードコート剤組成物を塗布して、ハードコート層を形成しておき、ハードコート層が形成されたシートをディスク形状に打ち抜き、接着剤を用いて、貼付して、光透過層を形成してもよい。
【0121】
ハードコート剤組成物が非反応性希釈有機溶剤を含んでいる場合には、ハードコート剤組成物を塗布して、塗膜を形成した後に、加熱して、非反応性有機溶剤を除去し、次いで、活性エネルギー線を照射して、塗膜を硬化させ、ハードコート層を形成することが好ましい。希釈有機溶剤を用いて、ハードコート剤組成物を塗布し、加熱によって、有機溶剤を除去する場合には、反応性シリコーンが未硬化の塗膜の表面近傍に、より多く集まりやすくなり、硬化後のハードコート層の表面近傍に、より多くシリコーンが存在するから、より大きな潤滑性向上効果が得ることができる。未硬化の塗膜は、たとえば、温度40℃以上、100℃以下で加熱することが好ましい。
【0122】
非反応性希釈有機溶剤は、とくに限定されるものではないが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコールなどが用いられる。
【0123】
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光などの活性エネルギー線の中から適切なものを選択することができるが、紫外線または電子線を用いることが好ましい。
【0124】
本発明において、ハードコート層 の膜厚は、0.5ないし5μmであることが好ましい。
【0125】
本発明において、光透過層とハードコート層の総厚が、70μmないし150μmであることが好ましい。光透過層とハードコート層の総厚が70μm未満であるときは、光記録ディスクの表面に付着したゴミなどによって、データの読み取りエラーが生じやすくなり、一方、光透過層とハードコート層の総厚が150μmを越えると、開口数(NA)が0.85の対物レンズを用いて、405nmの波長λを有するレーザ光を記録層上に集束させる場合に、チルトマージンTが著しく小さくなるという問題が生じる。
【0126】
本発明において、ハードコート層を設けることなく、光透過層が、光記録ディスクを保護する機能を有するように構成されていてもよい。この場合には、光透過層の表面によって、レーザ光の光入射面が構成され、光透過層の層厚は、70ないし150μmであることが好ましい。光透過層を、光記録ディスクを保護する機能を有するように構成することによって、ハードコート層を形成する工程をなくすことができ、光記録ディスクの製造工程を簡略化することができる。
【0127】
本発明において、光透過層の表面によって、レーザ光の光入射面が構成される場合には、光透過層は、その表面に傷が入るのを防止するために、光透過層に、光透過層を硬くするための成分として、たとえば、無機微粒子を含ませたり、分子量2000未満の硬化性モノマーを多く含有させることが好ましい。光透過層に用いられる無機微粒子としては、たとえば、金属もしくは半金属の酸化物の微粒子が挙げられる。金属または半金属としては、例えば、Si、Ti、Al、Zn、In、Sn、Sbなどが挙げられる。また、酸化物、硫化物に代えて、Se化物、Te化物、窒化物、炭化物を用いることもできる。具体的には、たとえば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの微粒子が挙げられ、これらの中ではシリカ微粒子が好ましい。このような無機微粒子を光透過層に添加しておくことにより、光透過層の耐久磨耗性をより高めることができる。
【0128】
シリカ微粒子の中では、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物によって、表面修飾されたものが、好ましく用いられる。このような反応性シリカ微粒子は、光透過層を硬化させる際の活性エネルギー線照射によって、架橋反応を起こし、ポリマーマトリクス中に固体される。このような反応性シリカ微粒子の例は、特開平9−100111号公報などに記載されており、特開平9−100111号公報に記載された反応性シリカ微粒子は、本発明において、好ましく用いることができる。
【0129】
光透過層は、光透過性樹脂のシートを、接着剤を用いて、接着して、形成される場合には、光透過性樹脂のシートの耐擦傷性を確保するために、光透過性樹脂に、無機微粒子が含まれることが好ましい。
【0130】
また、光透過層は、その表面に傷が入るのを防止するために、硬くするのではなく、逆に、より柔らかくし、柔軟性を持たせることによって、耐擦傷性が確保されてもよい。
【0131】
本発明において、光透過層の表面によって、レーザ光が入射する光入射面が構成される場合には、光透過層は、その表面が、撥水性、撥油性および潤滑性の少なくとも1つを有していることが好ましく、好ましくは、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0132】
本発明において、好ましくは、光記録ディスクは、ハードコート層の表面上に形成された潤滑剤層を備え、潤滑剤層によって、レーザ光が入射する光入射面が構成されている。
【0133】
本発明において、潤滑剤層は、好ましくは、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として含んでいる。潤滑剤層に含まれる活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物としては、ハードコート層を形成するためのハードコート剤組成物に含有させることができる活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物と同様な化合物を用いることができる。
【0134】
本発明において、好ましくは、潤滑剤層は、潤滑剤溶液を、未硬化のハードコート層の表面に、スピンコーティング法などによって、塗布して、潤滑剤溶液の塗膜を形成し、活性エネルギー線を照射して、ハードコート層と潤滑剤溶液の塗膜を同時に硬化させて、形成される。
【0135】
本発明において、潤滑剤層は、好ましくは、1nmないし100nmの厚さを有するように、ハードコート層の表面上に形成される。
【0136】
本発明において、ハードコート層の表面上に、潤滑剤層が形成される場合には、ハードコート層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいることは必ずしも必要でない。
【0137】
本発明において、ハードコート層が設けられていない場合には、好ましくは、光記録ディスクは、光透過層の表面上に形成された潤滑剤層を備え、潤滑剤層によって、レーザ光が入射する光入射面が構成されている。
【0138】
本発明において、ハードコート層が設けられず、光透過層の表面上に、潤滑剤層が形成される場合には、光透過層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいることは必ずしも必要でない。
【0139】
本発明において、以上のような構成を有する光記録ディスクが、保存試験および擦り試験が行われて、その後に、光記録ディスクのレーザ光が入射する光入射面に、人工指紋液が付着される。
【0140】
本発明において、人工指紋液を、光記録ディスクの光入射面に付着させるにあたっては、まず、光記録ディスクが、温度80℃、相対湿度85%の環境下において、50時間にわたり、保持されて、保存試験が実行される。
【0141】
次いで、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、自己接着型の長繊維不織布と、レーザ光が入射する光入射面とを、10往復にわたって、相対的に移動させて、光記録ディスクの表面が、自己接着型の長繊維不織布で擦られて、擦り試験が実行される。
【0142】
本発明での試験は、保存試験および擦り試験を組み合わせて、実際の使用環境において、光記録ディスクが、長期間にわたって、繰り返し、使用され、あるいは、長期間にわたって、保存された場合を想定したものであり、実際の使用環境での長期間の使用または保存後における光記録ディスクの信頼性を確かめるものである。
【0143】
その一方で、人工指紋液が、ガラスや樹脂によって形成された剛性を有する基板の表面上に、均一に塗布される。人工指紋液を塗布するためには、スピンコーティング法やディップコーティング法を用いることができるが、スピンコーティング法によって、人工指紋液を基板上に塗布することが好ましい。
【0144】
人工指紋液を基板上に塗布するにあたって、人工指紋液をイソプロピルアルコールやメチルエチルケトンなどの有機溶媒で希釈し、塗布後に、乾燥によって、除去するようにしてもよい。
【0145】
こうして、基板上に、人工指紋液が均一に塗布されたのち、乾燥されて、擬似指紋パターン転写用の原版が作製される。
【0146】
一方、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨し、擬似指紋が転写しやすいように、表面を粗面化して、擬似指紋転写材が作製される。
【0147】
こうして得られた擬似指紋転写材の研磨された端面を、擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てることによって、人工指紋液成分が、擬似指紋転写材の端面に転写される。
【0148】
次いで、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液成分が付着された擬似指紋転写材の端面が、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てられ、人工指紋液が、光記録ディスクの光入射面に転写される。
【0149】
本発明において、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面は、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させたときに、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有している。
【0150】
したがって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液が付着したときには、人工指紋液は、表面の単位面積当たりで、占める面積割合が30%以下となるように、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着する。
【0151】
しかしながら、本発明者の研究によれば、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に指紋が付着したときに、表面の単位面積当たりに付着する人工指紋液の占める面積割合が30%以下である場合には、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、人工指紋液は、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、指紋が付着しても、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0152】
さらに、本発明においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させたときに、表面の単位面積当たりで、人工指紋液の占める面積割合が30%以下であるような表面特性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0153】
また、本発明において、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面は、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦った後に、人工指紋液を付着させたときに、表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下であるような表面特性を有している。
【0154】
したがって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、表面に人工指紋液が付着したときには、人工指紋液は、液滴の直径の最大値が82μm以下となるように、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着する。
【0155】
しかしながら、本発明者の研究によれば、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に指紋が付着したときに、人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下である場合には、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、人工指紋液は、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、指紋が付着しても、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0156】
さらに、本発明においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させたときに、人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下であるような表面特性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0157】
また、本発明において、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面は、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦った後に、人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有している。
【0158】
したがって、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦った後に、表面に人工指紋液が付着したときには、人工指紋液は、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすように、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着する。
【0159】
しかしながら、本発明者の研究によれば、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に人工指紋液が付着したときに、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たす場合には、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、人工指紋液は、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、指紋が付着しても、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0160】
さらに、本発明においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0161】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0162】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図であり、図2には、図1のAで示される部分の略拡大断面図である。
【0163】
図1に示されるように、本実施態様にかかる光記録ディスク1は、円板上をなし、図1および図2において、矢印で示される方向から、レーザ光が照射されるように構成されている。
【0164】
図2に示されるように、本実施態様にかかる光記録ディスク1は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成され、相変化膜によって形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8と、ハードコート層8の表面上に形成された潤滑剤層9を備えている。
【0165】
基板2は、光記録ディスク1の機械的な支持体として、機能するものである。
【0166】
基板2を形成するための材料は、光記録ディスク1の支持体として機能することができれば、とくに限定されるものではなく、基板2は、たとえば、ガラス、セラミックス、樹脂などによって、形成することができる。これらのうち、成形の容易性の観点から、樹脂が好ましく使用される。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性、光学特性などの点から、ポリカーボネート樹脂が、とくに好ましく、本実施態様においては、基板2は、ポリカーボネート樹脂によって形成されている。
【0167】
本実施態様においては、基板2は、約1.1mmの厚さを有している。
【0168】
本実施態様においては、レーザ光は、基板2とは反対側に位置する光透過層7を介して、照射されるから、基板2が、光透過性を有していることは必ずしも必要でない。
【0169】
図2に示されるように、基板2の表面には、交互に、グルーブ2aおよびランド2bが形成されている。基板2の表面に形成されたグルーブ2aおよび/またはランド2bは、データを記録する場合およびデータを再生する場合において、レーザ光のガイドトラックとして、機能する。
【0170】
グルーブ2aの深さは、とくに限定されるものではないが、λ/(8n)ないしλ/(4n)(λは、レーザ光の波長であり、nは、後述する光透過層の屈折率である。)に設定することが好ましく、グルーブ2aのピッチは、とくに限定されるものではないが、0.2μmないし0.4μmに設定することが好ましい。
【0171】
図2に示されるように、基板2の表面上には、反射層3が形成されている。
【0172】
反射層3は、光透過層7を介して、照射されるレーザ光を反射し、再び、光透過層7から出射させる役割を果たし、通常、10ないし300nm程度の厚さを有している。
【0173】
反射層3の厚さは、とくに限定されるものではないが、10nmないし300nmであることが好ましく、20nmないし200nmであることが、とくに好ましい。
【0174】
反射層3を形成するための材料は、レーザ光を反射できればよく、とくに限定されるものではなく、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ag、Pt、Auなどによって、反射層3を形成することができる。これらのうち、高い反射率を有しているAl、Au、Ag、Cu、または、AgとCuとの合金などのこれらの金属の少なくとも1つを含む合金などの金属材料が、反射層3を形成するために、好ましく用いられる。
【0175】
反射層3は、たとえば、反射層12の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0176】
反射層3は、レーザ光を用いて、記録層5に記録されたデータを再生するときに、多重干渉効果によって、記録部と未記録部との反射率の差を大きくして、高い再生信号(C/N比)を得るために、設けられている。
【0177】
図2に示されるように、反射層3の表面上には、第二の誘電体層4が形成されている。
【0178】
第二の誘電体層4は、第一の誘電体層6とともに、記録層5を機械的、化学的に保護するとともに、光学特性を調整する機能を有している。
【0179】
第二の誘電体層は、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物から形成されることが好ましい。
【0180】
第二の誘電体層4は、たとえば、第二の誘電体層4の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、反射層3の表面上に形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0181】
図2に示されるように、第二の誘電体層4の表面上には、記録層5が形成されている。
【0182】
記録層5は、相変化膜によって形成され、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Sn−Se−Te、Ge−Te−Sn、In−Se−Tl、In−Sb−Teなどを含んでいる。
【0183】
記録層5は、記録層5の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0184】
記録層5は、通常、3ないし50nm程度の厚さを有するように形成される。
【0185】
図2に示されるように、記録層5の表面上には、第一の誘電体層6が形成されている。
【0186】
第一の誘電体層6は、たとえば、第一の誘電体層6の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0187】
第一の誘電体層は、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物から形成されることが好ましい。
【0188】
第一の誘電体層6と第二の誘電体層4は、互いに同じ誘電体材料によって形成されていてもよいが、異なる誘電体材料によって形成されていてもよい。さらに、第一の誘電体層6および第二の誘電体層4の少なくとも一方が、複数の誘電体膜からなる多層構造であってもよい。
【0189】
図2に示されるように、第一の誘電体層6の表面上には、光透過層7が形成されている。
【0190】
光透過層7は、その内部を、記録用および/または再生用のレーザ光が透過する層である。
【0191】
光透過層7を形成するための材料としては、光学的に透明で、使用されるレーザ光の波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さいことが要求され、スピンコーティング法などによって、光透過層7が形成される場合には、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが、光透過層7を形成するために用いられ、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂が、とくに好ましく、使用される。
【0192】
光透過層7は、第一の誘電体層6の表面に、光透過性樹脂によって形成されたシートを、接着剤を用いて、接着することによって、形成されてもよい。
【0193】
光透過層7の膜厚は、スピンコーティング法により、光透過層7を形成する場合には、1ないし150μmが好ましく、光透過性樹脂によって形成されたシートを、接着剤を用いて、第一の誘電体層6の表面に接着して、光透過層7を形成する場合には50ないし150μmが好ましい。
【0194】
図2に示されるように、光透過層7の表面上には、ハードコート層8が形成されている。
【0195】
ハードコート層8は、光記録ディスク1を保護し、カートリッジに収容することなく、光記録ディスク1を使用可能にする機能を有している。
【0196】
本実施態様においては、ハードコート層8は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子を含むハードコート剤組成物が、スピンコーティング法によって、光透過層7の表面に塗布されて、塗膜が形成され、塗膜に、活性エネルギー線が照射されて、ハードコート剤組成物層が硬化され、形成される。
【0197】
ハードコート層8を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの活性基を有する化合物であれば、とくに限定されるものではない。
【0198】
ハードコート層8は、透明性を確保するために、5nm以上、100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子、好ましくは、5nm以上、20nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子を含んでいる。
【0199】
ハードコート層8を形成するために用いられる無機微粒子としては、たとえば、金属もしくは半金属の酸化物の微粒子、または、金属もしくは半金属の硫化物の微粒子が挙げられる。金属または半金属としては、たとえば、Si、Ti、Al、Zn、Zr、In、Sn、Sbなどが挙げられる。また、酸化物、硫化物に代えて、Se化物、Te化物、窒化物、炭化物を用いることもできる。具体的には、たとえば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの微粒子が挙げられ、これらの中では、シリカ微粒子が好ましい。このような無機微粒子をハードコート剤組成物に添加しておくことにより、ハードコート層8の耐摩耗性をより高めることができる。
【0200】
図2に示されるように、ハードコート層8の表面上には、潤滑剤層9が形成されている。
【0201】
潤滑剤層9は活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として含んでいる。
【0202】
シリコーン系化合物としては、シリコーン系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられ、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられる。
【0203】
活性エネルギー線重合性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基などの活性エネルギー線ラジカル重合性反応性基や、環状エーテル基およびビニルエーテル基などの活性エネルギー線カチオン重合性反応性基が挙げられる。
【0204】
潤滑剤層9に含まれるシリコーン系化合物としては、シリコーン系の置換基を有する部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられ、たとえば、以下の一般式で示されるシリコーン系化合物が挙げられる。
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−R
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−Si(CH3 )3
(CH3 )3 SiO−〔Si(CH3 )2 O〕n−〔Si(CH3 )(R)O〕m−Si(CH3 )3
ここに、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基およびビニルエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を含む置換基であり、n、mは重合度である。
【0205】
潤滑剤層9に含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2− ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフッ化アクリレートが挙げられる。
【0206】
また、潤滑剤層9に含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系置換基を有する部位と、環状エーテル基およびビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、3−(1H,1H−パーフルオロオクチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロウンデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロテトラデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロヘキサデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,9H,9H−パーフルオロ−1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,12H,12H−パーフルオロ−1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、アウジモント株式会社製「Fombrin Z DOL」(商品名:アルコール変性パーフルオロポリエーテル)のジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0207】
潤滑剤層9は、1nmないし100nmの厚さを有している。
【0208】
潤滑剤層9は、潤滑剤溶液を、未硬化のハードコート層8の表面に、スピンコーティング法などによって、塗布して、潤滑剤溶液の塗膜を形成し、活性エネルギー線を照射して、ハードコート層8と潤滑剤溶液の塗膜を同時に硬化させて、形成される。
【0209】
本実施態様においては、以上のような構成を有する光記録ディスク1に対して、以下に示すように、人工指紋液が付着される。
【0210】
人工指紋液を付着するにあたっては、まず、光記録ディスク1が、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、保存され、保存試験が実行される。
【0211】
次いで、保存試験に続いて、光記録ディスク1の表面を、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、擦る擦り試験が実行される。すなわち、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、光記録ディスク1の表面との接触部分を中心として、1.0mlのエタノールを、スポイトで滴下し、こうしてエタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布を、光記録ディスク1の表面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、自己接着型の長繊維不織布と、光記録ディスク1の表面とを10往復にわたって、相対的に移動させることにより、光記録ディスク1の表面が、自己接着型の長繊維不織布で擦られる。ここに、セルロースを主成分として含むとは、実質的にセルロース以外の原料を含まないことを意味し、具体的には、長繊維不織布の95%以上がセルロースからなることをいう。
【0212】
本実施形態での保存試験および擦り試験を組み合わせて行う試験は、実際の使用環境において、光記録ディスク1が、長期間にわたって、繰り返し、使用され、あるいは、長期間にわたって、保存された場合を想定したものであり、実際の使用環境での長期間の使用または保存後における光記録ディスク1の信頼性を確かめるものである。
【0213】
その一方で、微粒子状物質として、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種(中位径:1.6ないし2.3μm)の関東ロームと、分散媒として、1重量部のトリオレインと、希釈剤として、10重量部のメトキシプロパノールとを混合、攪拌して,人工指紋液が調製される。
【0214】
次いで、こうして調製された人工指紋液を、マグネティックスターラーを用いて、攪拌しながら、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、人工指紋液を、ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、塗膜が形成された基板を、60℃で、3分間にわたり、加熱して、塗膜中の不要な希釈溶剤であるメトキシプロパノールを完全に除去することによって、擬似指紋パターン転写用の原版が形成される。
【0215】
さらに、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨することによって、擬似指紋転写材が作製される。
【0216】
こうして得られた擬似指紋転写材の研磨された端面が、擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てられ、人工指紋液が、擬似指紋転写材の端面に転写される。
【0217】
次いで、光記録ディスク1の中心から半径方向に40mmの位置にある潤滑剤層9の表面に、人工指紋液が付着された擬似指紋転写材の端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てることによって、潤滑剤層9の表面に、人工指紋液が転写される。
【0218】
本実施態様においては、潤滑剤層9は、こうして、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、潤滑剤層9の表面に人工指紋液を付着させたときに、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有している。
【0219】
したがって、本実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、潤滑剤層9の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるように、潤滑剤層9の表面に付着する。
【0220】
本発明者の研究によれば、潤滑剤層9の表面に人工指紋液が付着したときに、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着する人工指紋液の占める面積割合が30%以下である場合には、光入射面である潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク1を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク1の潤滑剤層9の表面に指紋が付着した場合にも、潤滑剤層9の表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク1に、データを記録し、光記録ディスク1から、データを読み出すことが可能になる。
【0221】
あるいは、本実施態様においては、潤滑剤層9の表面は、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦った後に、潤滑剤層9の表面に人工指紋液を付着させたときに、光入射面を構成する潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下であるような表面特性を有している。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0222】
したがって、本実施態様においては温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、潤滑剤層9の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、その液滴の直径の最大値が82μm以下になるように、潤滑剤層9の表面に付着する。
【0223】
本発明者の研究によれば、潤滑剤層9の表面に人工指紋液が付着したときに、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径が82μm以下である場合には、光入射面である潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク1を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク1の潤滑剤層9の表面に指紋が付着した場合にも、潤滑剤層9の表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク1に、データを記録し、光記録ディスク1から、データを読み出すことが可能になる。
【0224】
あるいは、本実施形態においては、潤滑剤層9は、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、潤滑剤層9の表面に人工指紋液を付着させたときに、潤滑剤層9の表面は、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有している。
【0225】
したがって、本実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、潤滑剤層9の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすように、潤滑剤層9の表面に付着する。
【0226】
本発明者の研究によれば、潤滑剤層9の表面に人工指紋液が付着したときに、20μm以上の直径の人工指紋液の人工指紋液の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たす場合には、光入射面である潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク1を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク1の潤滑剤層9の表面に指紋が付着した場合にも、潤滑剤層9の表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク1に、データを記録し、光記録ディスク1から、データを読み出すことが可能になる。
【0227】
以上のとおり、本実施態様によれば、光記録ディスク1の光入射面を構成する潤滑剤層9の表面が、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、指紋と実質的に同じ物性を有する人工指紋液を付着させたときに、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になる表面特性、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下となる表面特性、および、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすといった表面特性を有しているから、実際の使用環境において、光記録ディスク1を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク1の潤滑剤層9の表面に指紋が付着した場合にも、潤滑剤層9の表面に付着した指紋によって、トラッキング制御特性が低下することがなく、したがって、光記録ディスク1に、データを記録し、光記録ディスク1から、データを読み出すことが可能となる。
【0228】
図3は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図であり、図4は、図3のBで示された部分の略拡大断面図である。
【0229】
図4に示されるように、本実施態様にかかる光記録ディスク10は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8とを備え、図1および図2に示された光記録ディスク1とは異なり、ハードコート層8の表面上に、潤滑剤層は形成されていない。
【0230】
本実施態様にかかる光記録ディスク10のハードコート層8は、活性エネルギー線硬化性樹脂および100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子に加えて、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0231】
すなわち、本実施態様においては、ハードコート層8は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子と、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含むハードコート剤組成物が、スピンコーティング法によって、光透過層7の表面に塗布されて、塗膜が形成され、塗膜に、活性エネルギー線が照射されて、ハードコート剤組成物層が硬化され、形成されている。
【0232】
ハードコート層8に含まれるシリコーン系化合物としては、シリコーン系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられ、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられる。
【0233】
活性エネルギー線重合性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基などの活性エネルギー線ラジカル重合性反応性基や、環状エーテル基およびビニルエーテル基などの活性エネルギー線カチオン重合性反応性基が挙げられる。
【0234】
ハードコート層8に含まれるシリコーン系化合物としては、シリコーン系の置換基を有する部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられ、たとえば、以下の一般式で示される化合物が挙げられる。
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−R
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−Si(CH3 )3
(CH3 )3 SiO−〔Si(CH3 )2 O〕n−〔Si(CH3 )(R)O〕m−Si(CH3 )3
ここに、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基およびビニルエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を含む置換基であり、n、mは重合度である。
【0235】
ハードコート層8に含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2− ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフッ化アクリレートが挙げられる。
【0236】
ハードコート層8にに含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系置換基を有する部位と、環状エーテル基およびビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、3−(1H,1H−パーフルオロオクチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロウンデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロテトラデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロヘキサデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,9H,9H−パーフルオロ−1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,12H,12H−パーフルオロ−1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、アウジモント株式会社製「Fombrin Z DOL」(商品名:アルコール変性パーフルオロポリエーテル)のジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0237】
本実施態様においては、ハードコート層8によって、光記録ディスク10のレーザ光が入射する光入射面が構成されており、ハードコート層8の表面は、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、ハードコート層8の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に人工指紋液を付着させたときに、ハードコート層8の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有している。
【0238】
したがって、本実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、ハードコート層8の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるように、ハードコート層8の表面に付着する。
【0239】
本発明者の研究によれば、ハードコート層8の表面に人工指紋液が付着したときに、ハードコート層8の表面の単位面積当たりに付着する人工指紋液の占める面積割合が30%以下である場合には、光入射面であるハードコート層8の表面に付着した人工指紋液によって、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク10を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク10の表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク10に、データを記録し、光記録ディスク10から、データを読み出すことが可能になる。
【0240】
あるいは、本実施態様においては、ハードコート層8の表面は、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、ハードコート層8の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液を付着させたときに、光入射面を構成するハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下であるような表面特性を有している。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、ハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、ハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0241】
したがって、本実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、その液滴の直径の最大値が82μm以下になるように、ハードコート層8の表面に付着する。
【0242】
本発明者の研究によれば、ハードコート層8の表面に人工指紋液が付着したときに、ハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径が82μm以下である場合には、光入射面であるハードコート層8の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク10を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク10の表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク10に、データを記録し、光記録ディスク10から、データを読み出すことが可能になる。
【0243】
あるいは、本実施形態においては、ハードコート層8の表面は、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、ハードコート層8の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有している。
【0244】
したがって、本実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすように、ハードコート層8の表面に付着する。
【0245】
本発明者の研究によれば、ハードコート層8の表面に人工指紋液が付着したときに、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たす場合には、光入射面であるハードコート層8の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク10を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク10の表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク10に、データを記録し、光記録ディスク10から、データを読み出すことが可能になる。
【0246】
以上のとおり、本実施態様によれば、光記録ディスク10の光入射面を構成するハードコート層8の表面が、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、ハードコート層8の表面を擦り、この後に、指紋と実質的に同じ物性を有する人工指紋液を付着させたときに、ハードコート層8の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になる表面特性、ハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下となる表面特性、および、ハードーコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすといった表面特性を有しているから、実際の使用環境において、光記録ディスク10を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク10のハードコート層8の表面に指紋が付着した場合にも、ハードコート層8の表面に付着した指紋によって、トラッキング制御特性が低下することがなく、したがって、光記録ディスク10に、データを記録し、光記録ディスク10から、データを読み出すことが可能となる。
【0247】
【実施例】
以下、本発明の効果をより明瞭なものとするため、実施例を掲げる。
【0248】
実施例1
1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有し、一方の表面に、グルーブおよびランドが形成されたディスク状のポリカーボネート基板を用意し、ポリカーボネート基板のグルーブおよびランドが形成された表面に、98:1:1の原子比で、Al、PdおよびCuを含み、100nmの厚さを有する反射層を、スパッタリング法により形成した。
【0249】
グルーブの深さは,405nmの波長λのレーザ光の光路長で表わして、λ/6としたし、オングルーブ記録方式における記録トラックピッチは0.32μmとした。
【0250】
次いで,反射層の表面に、Al2O3からなるターゲットを用いて、スパッタリング法により、20nmの厚さを有する第二の誘電体層を形成し、さらに、第二の誘電体層の表面に、相変化材料からなる合金ターゲットを用いて、スパッタリング法により、12nmの厚さを有する記録層を形成した。記録層の組成は、原子比で、Sb74Te18(Ge7In1)とした。
【0251】
次いで、記録層の表面に、ZnSとSiO2の混合物よりなるターゲットを用いて、スパッタリング法により、130nmの厚さを有する第一の誘電体層を形成した。ZnSとSiO2の混合物中のZnSとSiO2のモル比率は、80:20であった。
【0252】
さらに、第一の誘電体層の表面に、以下の組成を有するラジカル重合性の紫外線硬化型樹脂を、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、形成された塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、98nmの厚さを有する光透過層を形成した。
【0253】
ここに、ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、三菱レイヨン株式会社製「ダイヤビームUK6035」(商品名)を用い、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートとしては、東亞合成化学工業株式会社製の「アロニックスM315」(商品名)、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートとしては、東亞合成化学工業株式会社製「アロニックスM215」(商品名)を用いた。
【0254】
次いで、光透過層上に、以下の組成を有する紫外線/電子線硬化型ハードコート剤を、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、大気中で、3分間にわたって、60℃に加熱することによって、塗膜中の希釈溶剤を除去し、未硬化のハードコート層を形成した。
【0255】
ここに、反応性基修飾コロイダルシリカは、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、不揮発分は40重量%であった。
【0256】
次いで、99.75重量部のフッ素系溶剤フロリナート(住友スリーエム株式会社製「FC−77」(商品名))に対して、以下の化合物を加え、潤滑剤溶液を調製した.
こうして調製した潤滑剤溶液を、未硬化のハードコート層上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、形成された塗膜を、60℃で、3分間にわたって、乾燥し、未硬化の潤滑剤層を形成した。なお、2−(パーフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカノイルオキシ)エチルメタクリレートは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを、パーフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン酸を用いて、常法に従って、エステル化することにより得た。
【0257】
次いで,窒素気流下で、未硬化のハードコート層と未硬化の潤滑剤層に、電子線を照射して、ハードコート層と潤滑剤層とを同時に硬化させた。電子線照射装置としては、ウシオ電機株式会社製「MinEB」(商品名)を用い、電子線加速電圧を50kV、照射線量を5Mradとした。電子線照射雰囲気中の酸素濃度は80ppmであった。
【0258】
硬化後のハードコート層の膜厚は3.2μm、潤滑剤層の膜厚は約25nmであった。ここに、潤滑剤層の膜厚は、パーフルオロポリエーテル(ダイキン工業株式会社製「デムナム」(商品名))を標準物質として、蛍光X線分析(XRF)により測定した。
【0259】
こうして、ハードコート層および潤滑剤層が形成された光記録ディスクサンプル#1を作製した。
【0260】
実施例2
以下の組成を有する潤滑剤溶液を用いた点を除き、実施例1と同様にして、光記録ディスクサンプル#2を作製した。
【0261】
【0262】
実施例3
実施例1と同様にして、ポリカーボネート基板のグルーブおよびランドが形成された表面上に、反射層、第二の誘電体層、記録層、第一の誘電体層および光透過層を形成した。
【0263】
次いで、光透過層上に、以下の組成を有する紫外線/電子線硬化型ハードコート剤を、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、大気中で、3分間にわたり、60℃に加熱することによって、塗膜中の希釈溶剤を除去し、さらに、塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0264】
ここに、反応性基修飾コロイダルシリカは、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、不揮発分は40重量%であった。
こうして、光記録ディスクサンプル#3を作製した。
【0265】
実施例4
実施例1と同様にして、ポリカーボネート基板のグルーブおよびランドが形成された表面上に、反射層、第二の誘電体層、記録層、第一の誘電体層および光透過層を形成した。
【0266】
次いで、光透過層上に、以下の組成を有する紫外線/電子線硬化型ハードコート剤を、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、大気中で、3分間にわたり、60℃に加熱することによって、塗膜中の希釈溶剤を除去し、さらに、塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0267】
ここに、反応性基修飾コロイダルシリカは、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、不揮発分は40%重量部であった。
こうして、光記録ディスクサンプル#4を作製した。
【0268】
比較例1
実施例1と同様にして、ポリカーボネート基板のグルーブおよびランドが形成された表面上に、反射層、第二の誘電体層、記録層、第一の誘電体層および光透過層を形成した。
【0269】
次いで、光透過層上に、以下の組成を有する紫外線/電子線硬化型ハードコート剤を、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、大気中で、3分間にわたり、60℃に加熱することによって、塗膜中の希釈溶剤を除去し、さらに、塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0270】
ここに、反応性基修飾コロイダルシリカは、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、不揮発分は40重量%であった。
こうして、光記録ディスクサンプル#5を作製した。
【0271】
[ディスクサンプルの保存試験]
光記録ディスクサンプル#1ないし#5を、温度80℃、相対湿度85%の環境下において、50時間にわたり、保持し、保存試験を実行した。
【0272】
[ディスクサンプルの表面に対する擦り試験]
保存試験後の光記録ディスク#1ないし#5の表面を、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、擦り、擦り試験を実行した。すなわち、セルロースを主成分として含む旭化成株式会社製の自己接着型の長繊維不織布「ベンコットリントフリーCT−8」(商品名)に、光記録ディスクサンプル#1ないし#5の表面との接触部分を中心として、1.0mlのエタノールを、スポイトで滴下し、こうしてエタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布を、光記録ディスクサンプル#1ないし#5の表面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、自己接着型の長繊維不織布と、光記録ディスクサンプル#1ないし#5の表面とを10往復にわたって、相対的に移動させることにより、光記録ディスクサンプル#1ないし#5の表面を、自己接着型の長繊維不織布で擦った。ここに、セルロースを主成分として含むとは、実質的にセルロース以外の原料を含まないことを意味し、具体的には、長繊維不織布の95%以上がセルロースからなることをいう。
【0273】
[人工指紋液の調製]
微粒子状物質として、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種(中位径:1.6ないし2.3μm)の関東ロームと、分散媒として、1重量部のトリオレインと、希釈剤として、10重量部のメトキシプロパノールとを混合、攪拌して,人工指紋液を調製した。
【0274】
[擬似指紋パターン転写用の原版の作製]
擬似指紋パターン転写用の原版を、以下のようにして作製した。
【0275】
人工指紋液を、マグネティックスターラーを用いて、攪拌しながら、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成した。
【0276】
塗膜が形成された基板を、60℃で、3分間にわたり、加熱して、塗膜中の不要な希釈溶剤であるメトキシプロパノールを完全に除去した。
【0277】
こうして、擬似指紋パターン転写用の原版を得た。
【0278】
[ディスクサンプルの表面への擬似指紋パターンの転写]
直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS Z8901に定められたAA240の研磨紙と同等の性能を有する#240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製した。
【0279】
こうして得られた擬似指紋転写材の研磨された端面を、擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、人工指紋液を、擬似指紋転写材の端面に付着させた。
【0280】
次いで、光記録ディスクサンプル#1の中心から半径方向に40mmの位置にある潤滑剤層の表面に、人工指紋液が付着された擬似指紋転写材の端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、潤滑剤層の表面に、人工指紋液を転写した。
【0281】
光記録ディスクサンプル#2の潤滑剤層の表面、光記録ディスクサンプル#3、#4および#5のハードコート層の表面にも、同様にして、人工指紋液を転写した。
【0282】
[光入射面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合の測定]
保存試験および擦り試験後の光記録ディスクサンプル#1ないし#5のハードコート層の表面に転写した人工指紋液の状態を、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製「VK−8510」(商品名))を用いて、観察し、人工指紋液の画像を、プリンター(株式会社キーエンス製「VH−P40」(商品名))を用いて、出力した。
【0283】
出力された画像を、コンピュータ内に取り込み、三谷商事株式会社製の画像処理解析ソフトWin ROOFを用いて、5μm以上の直径を有する人工指紋液の液滴の全面積に対する面積割合(%)を測定した。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、光入射面である潤滑剤層の表面あるいはハードコート層の表面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、潤滑剤層の表面あるいはハードコート層の表面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義した。
【0284】
測定結果は、表1に示されている。
【0285】
[光入射面に付着した人工指紋液の液滴の直径の測定]
同様に、画像処理解析ソフトWin ROOFを用いて、潤滑剤層の表面あるいはハードコート層の表面に付着している人工指紋液の液滴の直径の最大値を測定した。
【0286】
測定結果は、表1に示されている。
【0287】
[光入射面に付着した人工指紋液の液滴の円との類似性の測定]
同様に、画像処理解析ソフトWin ROOFを用いて、20μm以上の直径を有する人工指紋液の液滴の周囲長さLと面積Sを測定し、4π×S/L2によって、人工指紋液の液滴の円との類似性を評価した。
【0288】
測定結果は、表1に示されている。
【0289】
[ディスクサンプルに対するトラッキング制御試験]
保存試験および擦り試験後に人工指紋液を付着させた光記録ディスクサンプル#1ないし#5を、順次、パルステック工業株式会社製の光記録媒体評価装置「DDU1000」(商品名)にセットし、波長が405nmの青色レーザ光を、光記録ディスクサンプルに刻まれたトラックの再生用レーザ光として用い、NA(開口数)が0.85の対物レンズを用いて、レーザ光を、光透過層を介して、集光し、以下の条件で、各光記録ディスクサンプルの中心から半径方向の40mmに位置するトラックに、レーザ光を追従させるように、トラッキング制御を試み、正常なトラッキング制御が可能であるか否かを判定した。
【0290】
線速度:5.3m/秒
レーザーパワー:0.30mW
トラッキングエラー信号生成方法:プッシュプル法
トラッキング制御を、30秒間、行う試験を、5回にわたって、実行し、この間に、3回以上、トラックの追従ができなかったものを、正常なトラッキング制御が不可能であると判定した。
【0291】
試験結果は、表1に示されている。表1において、「○」は、正常なトラッキング制御が可能であった場合を示し、「×」は、正常なトラッキング制御が不可能であった場合を示している。
【0292】
【表1】
表1に示されるように、光記録ディスクサンプル#1ないし#4の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の液滴が占める面積割合は、それぞれ、8.3%、11.9%、14.9%および29.5%で、人工指紋液の占める面積割合が30%以下であった光記録ディスクサンプル#1ないし#4においては、正常なトラッキング制御が可能であったのに対し、光記録ディスクサンプルの表面の単位面積当たりに占める人工指紋液の面積割合が59.6%で、人工指紋液の占める面積割合が30%を越えた光記録ディスクサンプル#5においては、正常なトラッキング制御が不可能であることが判明した。
【0293】
これは、光記録ディスクサンプル#1においては、ハードコート層の表面に、活性エネルギー線硬化性のフッ素系化合物を主成分として含み、良好な保存特性を有する潤滑剤層が形成されているため、その結果、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスクサンプル#1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクサンプル#1の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させた場合でも、光記録ディスクサンプル#1の表面に、人工指紋液がほとんど付着することがなく、一方、光記録ディスクサンプル#2においても、ハードコート層の表面に、活性エネルギー線硬化性のシリコーン化合物を主成分として含む潤滑剤層が形成されており、その結果、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスクサンプル#2を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクサンプル#2の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させた場合でも、人工指紋液の多くが、光記録ディスクサンプル#2の表面に付着することがなく、その結果、光記録ディスクサンプルの光入射面に付着した人工指紋液の影響を受けることなく、正常にトラッキング制御を実行することができたためと考えられる。
【0294】
また、光記録ディスクサンプル#3および#4においては、ハードコート層の表面に、潤滑剤を含む潤滑剤層は形成されていないが、ハードコート層自体が、潤滑剤を含んでいるため、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたり、光記録ディスクサンプル#3および#4を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクサンプル#3および#4の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させた場合においても、人工指紋液の多くが、光記録ディスクサンプル#3および#4の表面に付着することがなく、その結果、正常なトラッキング制御が可能であったのに対して、光記録ディスクサンプル#5においては、ハードコート層の表面に、潤滑剤を含む潤滑剤層が形成されておらず、また、ハードコート層が潤滑剤を含んでいないため、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたり、光記録ディスクサンプル#5を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクサンプル#5の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させた場合に、人工指紋液の多くが光記録ディスクサンプル#5の表面に付着し、その結果、表面に付着した人工指紋液によって、光記録ディスクサンプル#5のトラックの読み取りが妨げられ、正常なトラッキング制御ができなかったものと考えられる。
【0295】
光記録ディスクサンプル#1ないし#5の表面に付着させた人工指紋液は、人間の汗や皮脂、すなわち、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、人工指紋液に代えて、光記録ディスクサンプル#1ないし#5の光入射面に、指紋を付着させた場合にも、同様の結果が得られると考えられる。
【0296】
したがって、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたり、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクの表面を擦り、この後に、光記録ディスクの光入射面に、指紋を付着させた場合において、正常なトラッキング制御を可能とするためには、光記録ディスクの光入射面が、光記録ディスクの光入射面に付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有している必要があることが判明した。
【0297】
また、表1に示されるように、光記録ディスクサンプル#1ないし#4の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値は、それぞれ、29.6μm、51.3μm、69.8μmおよび81.3μmで、人工指紋液の液滴の直径が82μm以下であった光記録ディスクサンプル#1ないし#4においては、正常なトラッキング制御が可能であったのに対し、光記録ディスクサンプル#5の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値は、光記録ディスクサンプル#5の表面に付着した人工指紋液の多くが、人工指紋液の液滴同士が繋がり合う状態で存在していたため、測定することができず、人工指紋液の直径の最大値を測定することができなかった光記録ディスクサンプル#5においては、正常なトラッキング制御が不可能であることが判明した。
【0298】
したがって、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたり、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクの表面を擦り、この後に、光記録ディスクの光入射面に、指紋を付着させた場合において、正常なトラッキング制御を可能とするためには、光記録ディスクの光入射面が、光記録ディスクの光入射面に付着した人工指紋液の直径の最大値が82μm以下になるような表面特性を有している必要があることが判明した。
【0299】
さらに、表1に示されるように、光記録ディスクサンプル#1ないし#3の表面に付着した人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係4πS/L2の平均値が、それぞれ、0.96、0.97、0.79および0.67で、人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係4πS/L2の平均値が、0.67以上である光記録ディスクサンプル#1ないし#4においては、正常なトラッキング制御が可能であったのに対して、光記録ディスクサンプル#5の表面に付着した人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係4πS/L2の平均値は、光記録ディスクサンプル#5の表面に付着した人工指紋液の多くが、人工指紋液の液滴同士が繋がり合う状態で存在していたため、測定することができず、人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係を測定することができなかった光記録ディスクサンプル#5においては、正常なトラッキング制御が不可能であることが判明した。
【0300】
したがって、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたり、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクの表面を擦り、この後に、光記録ディスクの光入射面に、指紋を付着させた場合において、正常なトラッキング制御を可能とするためには、光記録ディスクの光入射面が、光記録ディスクの光入射面に付着した人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係4πS/L2の平均値が0.67以上になるような表面特性を有している必要があることが判明した。
【0301】
上述のとおり、保存試験および擦り試験を組み合わせた試験は、実際の使用環境において、光記録ディスクが、長期間にわたって、繰り返し、使用され、あるいは、長期間にわたって、保存された場合を想定して試験されたものであるから、光記録ディスクサンプル#1ないし#4においては、実際の使用環境下で、その光入射面に、指紋が付着した場合にも、光入射面に付着した指紋によって、光記録ディスクのトラックの読み取りが妨げられることがなく、正常に、トラッキング制御を実行し得ることが判明した。
【0302】
本発明は、以上の実施態様および実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0303】
たとえば、図1および図2に示された実施態様においては、光記録ディスク1の光入射面を構成する潤滑剤層9の表面は、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存し、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦った後に、潤滑剤層9の表面に、人工指紋液を付着させたときに、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が30%以下になる表面特性、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下になる表面特性、および、人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすといった表面特性を有し、図3および図4に示された実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスク10を保存し、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、ハードコート層8の表面を擦った後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液を付着させたときに、ハードコート層8の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が30%以下になる表面特性、ハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下になる表面特性、および、人工指紋液の液滴の面積と周囲長とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有しているが、光記録ディスク10の光入射面が、これら表面特性のうち、2以上の表面特性を備えていてもよい。
【0304】
また、図1および図2に示された実施態様においては、光記録ディスク1は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成され、相変化膜によって形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8と、ハードコート層8の表面上に形成された潤滑剤層9を備え、図3および図4に示された実施態様においては、光記録ディスク10は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8とを備えているが、光記録ディスク1が、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成され、相変化膜によって形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8と、ハードコート層8の表面上に形成された潤滑剤層9を備え、光記録ディスク10が、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8とを備えていることは必ずしも必要でなく、相変化膜によって形成された記録層5に代えて、モノメチンシアニン系色素や、ポルフィリン系色素などの有機色素を含む記録層を備えていてもよく、さらには、Si、Ge、Sn、Mg、In、Zn、BiおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含む第一の記録層と、Cuを主成分として含み、第一の記録層の近傍に設けられた第二の記録層を備えていてもよい。
【0305】
また、図1および図2に示された実施態様ならびに図3および図4に示された実施形態においては、光記録ディスク1、10は、ハードコート層8を備えているが、ハードコート層8を設けることなく、ハードコート剤組成物を含む光透過層7を形成し、光透過層7によって、光記録ディスクを保護するようにしてもよく、その場合には、光透過層7に、潤滑剤を含有させてもよいし、光透過層7の表面上に、潤滑剤層9を形成してもよい。
【0306】
【発明の効果】
本発明によれば、光記録ディスクのレーザ光の入射面に、指紋が付着した場合にも、トラッキング制御特性が低下することがなく、データを記録し、再生することができる光記録ディスクを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図である。
【図2】図2は、図1のAで示された部分の略拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図である。
【図4】図4は、図3のBで示された部分の略拡大断面図である。
【符号の説明】
1 光記録ディスク
2 基板
2a グルーブ
2b ランド
3 反射層
4 第二の誘電体層
5 記録層
6 第一の誘電体層
7 光透過層
8 ハードコート層
9 潤滑剤層
10 光記録ディスク
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録ディスクに関するものであり、さらに詳細には、光記録ディスクのレーザ光の入射面に、指紋が付着した場合にも、トラッキング制御特性が低下することがなく、データを記録し、再生することができる光記録ディスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、デジタルデータを記録するための記録媒体として、CDやDVDに代表される光記録ディスクが広く利用されているが、近年においては、より大容量で、かつ、高いデータ転送レートを有する次世代型の光記録ディスクの開発が盛んに行われている。
【0003】
大容量で、かつ、高いデータ転送レートを有する次世代型の光記録ディスクを開発するためには、必然的に、データの記録・再生に用いるレーザ光のビームスポット径を非常に小さく絞ることが要求される。
【0004】
レーザ光のビームスポット径を小さく絞るためには、レーザ光を集束するための対物レンズの開口数(NA)を大きくするとともに、レーザ光の波長λを短くすることが必要であり、開口数(NA)が0.85の対物レンズを用い、405nmの波長λを有するレーザ光を集束させて、次世代型の光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを再生することが提案されている。
【0005】
しかしながら、レーザ光を集束するための対物レンズの開口数(NA)を高くすると、次式(1)で示されるように、光記録媒体に対するレーザ光の光軸の傾きに許される角度誤差、すなわち、チルトマージンTが非常に狭くなるという問題が生じる。
【0006】
【数1】
式(1)において、λは、記録・再生に用いるレーザ光の波長であり、dは、レーザ光が透過する光透過層の厚さである。
【0007】
式(1)から明らかなように、チルトマージンTは、対物レンズのNAが高いほど、小さくなり、光透過層の厚さdが薄いほど、大きくなる。したがって、チルトマージンTが小さくなることを防止するためには、光透過層の厚さdを小さくすることが効果的である。
【0008】
そこで、次世代型の光記録ディスクにおいては、チルトマージンを広くするために、光透過層の厚さを100μm程度まで薄くすることが提案されている。
【0009】
しかしながら、レーザ光が透過する光透過層の厚さを100μm程度にまで薄くすると、光透過層の表面におけるレーザ光のビームスポットの面積が小さくなるため、光透過層のレーザ光の入射面に、ゴミや指紋が付着した場合や、傷がついた場合には、データの読み取り時に、エラーが生じやすいという問題がある。
【0010】
そこで、光透過層を介して、レーザ光を照射するように構成され、家庭における利用を想定している次世代型の光記録ディスクを、カートリッジに収容して、使用することが提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、CDやDVDは、カートリッジに収容することなく、いわゆるベア・ディスクとして使用されているにもかかわらず、次世代型の光記録ディスクだけが、カートリッジに収容しなければ使用できないということは、ユーザーにとって、きわめて不便であるし、また、次世代型の光記録ディスクがカートリッジに収容されることが必要不可欠であるとすると、次世代型の光記録ディスクのコストが高くなるという問題も生じる。
【0012】
そこで、光透過層の表面に、硬いハードコート層が形成され、ベア・ディスクの形で使用することができる次世代型の光記録ディスクが提案されている。
【0013】
このように、光透過層の表面に、硬いハードコート層が形成された光記録ディスクは、カートリッジに収容する必要がなく、CDやDVDと同様に使用することができるという大きな利点を有している。
【0014】
しかしながら、その一方で、光透過層の表面に、硬いハードコート層が形成された光記録ディスクは、ベア・ディスクの形で、使用されることが前提とされているため、ユーザーが光記録ディスクに直接触れやすく、ハードコート層の表面に、指紋が付着しやすく、ハードコート層の表面に、指紋が付着した場合には、ハードコート層を介して、レーザ光が照射されるため、付着した指紋によって、光記録ディスクの表面に形成されたトラックの読み取りが妨げられ、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを再生することができなくなるおそれがある。すなわち、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを再生するにあたっては、まず、光記録ディスクに刻まれたトラックに、レーザ光を照射することによって得られるトラッキングエラー信号に基づき、レーザ光を発するピックアップの位置を制御して、レーザ光がトラックに正確に追従するように、トラッキング制御が実行されるのが一般であるが、光入射面であるハードコート層の表面に、指紋が多量に付着したときには、ハードコート層の表面に付着した指紋が、トラッキング制御に悪影響を及ぼして、トラックへのレーザ光の追従性が悪化し、その結果、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを再生することができなくなるという問題が生ずる。
【0015】
したがって、本発明は、光記録ディスクのレーザ光の入射面に、指紋が付着した場合にも、トラッキング制御特性が低下することがなく、データを記録し、再生することができる光記録ディスクを提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のかかる目的は、少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、前記エタノールを含ませた前記自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、前記自己接着型の長繊維不織布と、前記光入射面とを10往復にわたって、相対的に移動させて、前記自己接着型の長繊維不織布で、前記光入射面を擦り、この後に、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させたときに、前記光入射面の単位面積当たりに付着した前記人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスクによって達成される。
【0017】
本発明者の研究によれば、光入射面に人工指紋液を付着させたときに、光入射面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下である場合には、光入射面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本発明によれば、光記録ディスクの光入射面が、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、光記録ディスクを50時間にわたり、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、レーザー光が入射する光入射面を、10往復にわたって擦り、この後に、レーザ光の光入射面に指紋が付着した場合でも、光入射面の単位面積当たりに付着する人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有し、人工指紋液が、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの光入射面に指紋が付着した場合にも、光入射面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0018】
本発明の前記目的はまた、少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、前記エタノールを含ませた前記自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、前記自己接着型の長繊維不織布と、前記光入射面とを10往復にわたって、相対的に移動させて、前記自己接着型の長繊維不織布で、前記光入射面を擦り、この後に、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させたときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下であるような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスクによって達成される。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、光入射面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、光入射面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0019】
本発明者の研究によれば、光入射面に人工指紋液を付着させたときに、光入射面の単位面積当たりに付着した指紋の液滴の直径の最大値が82μm以下である場合には、光入射面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本発明によれば、光記録ディスクの光入射面が、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、光記録ディスクを50時間にわたり、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、レーザー光が入射する光入射面を、10往復にわたって擦り、この後に、レーザ光の光入射面に指紋が付着した場合でも、光入射面の単位面積当たりに付着した指紋の液滴の直径の最大値が82μm以下になるような表面特性を有し、人工指紋液が、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの光入射面に指紋が付着した場合にも、光入射面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0020】
本発明の前記目的はまた、少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、前記エタノールを含ませた前記自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、前記自己接着型の長繊維不織布と、前記光入射面とを10往復にわたって、相対的に移動させて、前記自己接着型の長繊維不織布で、前記光入射面を擦り、この後に、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させたときに、20μm以上の直径の前記人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスクによって達成される。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、光入射面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、光入射面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0021】
本発明者の研究によれば、光入射面に人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の直径を有する指紋を構成する液体の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たす場合には、光入射面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本発明によれば、光記録ディスクの光入射面が、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、光記録ディスクを50時間にわたり、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、レーザー光が入射する光入射面を、10往復にわたって擦り、この後に、レーザ光の光入射面に指紋が付着した場合でも、20μm以上の直径を有する指紋を構成する液体の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有し、人工指紋液が、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの光入射面に指紋が付着した場合にも、光入射面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0022】
本発明の好ましい実施態様においては、光記録ディスクは、さらに、前記光透過層上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層上に形成された潤滑剤層を備え、前記潤滑剤層の表面によって、前記光入射面が構成されている。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記潤滑剤層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として含んでいる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様においては、光記録ディスクは、さらに、前記光透過層上に形成されたハードコート層を備え、前記ハードコート層が潤滑剤を含有し、前記ハードコート層の表面によって、前記光入射面が構成されている。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記ハードコート層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態においては、光記録ディスクは、さらに、前記光透過層上に形成された潤滑剤層を備え、前記潤滑剤層の表面によって、前記光入射面が構成されている。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、前記潤滑剤層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として、含んでいる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態においては、光記録ディスクは、前記光透過層が潤滑剤を含有し、前記光透過層の表面によって、前記光入射面が構成されている。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、前記光透過層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0030】
本発明においては、光記録ディスクを、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたり、保存する保存試験が実行される。こうした保存試験は、通常の使用環境より高温、多湿な条件下で、所定時間にわたって、保存することにより、実際の使用環境での長期間の使用または保存後に相当する程度に、光記録ディスクの表面特性を劣化させるものである。
【0031】
本発明においては、さらに、保存試験に続いて、光記録ディスクの表面が、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、擦られて、擦り試験が実行される。すなわち、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、光記録ディスクの表面との接触部分を中心として、1.0mlのエタノールを、スポイトで滴下し、こうしてエタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布を、光記録ディスクの表面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、自己接着型の長繊維不織布と、光記録ディスクの表面とを10往復にわたって、相対的に移動させることにより、光記録ディスクの表面が、自己接着型の長繊維不織布で擦られる。こうした擦り試験は、光記録ディスクの表面に存在する潤滑性物質を払拭させるような操作を試験的に行うことにより、光記録ディスクの表面の潤滑性物質の接着性を確かめるためのものである。ここに、セルロースを主成分として含むとは、実質的にセルロース以外の原料を含まないことを意味し、具体的には、長繊維不織布の95%以上がセルロースからなることをいう。
【0032】
本発明において、保存試験および擦り試験を組み合わせて行う試験は、実際の使用環境下で、光記録ディスクが、長期間にわたって、繰り返し、使用され、あるいは、長期間にわたって、保存された場合を想定したものであり、実際の使用環境での長期間の使用または保存後における光記録ディスクの信頼性を確かめるものである。
【0033】
本発明においては、人工指紋液は、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製される。
【0034】
本発明において用いられる人工指紋液は、微粒子状物質と、微粒子状物質を分散可能な分散媒とを含んでいる。
【0035】
人工指紋液の分散媒は、25℃における表面張力が20ないし50mNm−1の範囲内にあることが好ましい。分散媒の25℃における表面張力が20ないし50mNm−1の範囲内にあるときは、実際の指紋に可能な限り近い性質を有する人工指紋液を調製することができる。
【0036】
人工指紋液に用いられる分散媒は、人間の汗や皮脂を構成する液体に近い物性を有していることが好ましく、25℃における表面張力が、20ないし50mNm−1の範囲内にあり、200℃における飽和蒸気圧が、760mmHg(101325Pa)以下であることが好ましい。25℃における表面張力が20mNm−1未満の場合には、表面に対する濡れ性が高くなり過ぎ、実際の指紋に比して、著しく物体表面に付着しやすくなり、除去することが困難になるので、好ましくない。一方、25℃における表面張力が50mNm−1を越えている場合には、表面に対する濡れ性が低下し、実際の指紋に比して、著しく物体表面に付着させることが困難になり、その一方で、除去されやすくなり、好ましくない。
【0037】
さらに、人工指紋液に用いられる分散媒の200℃における飽和蒸気圧が、760mmHg(101325Pa)を越えている場合には、人工指紋液の付着後に、徐々に分散媒が揮発し、表面に付着した人工指紋液の状態が変化することがあり、好ましくない。
【0038】
人工指紋液に用いられる分散媒は、25℃における粘度が500cP以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜300cP、さらに好ましくは、5〜250cPである。分散媒が、このような粘度を有している場合には、表面への指紋付着後においても、微粒子状物質を良好に分散させて、表面へ定着させやすい。
【0039】
人工指紋液に用いられる分散媒としては、一般に、高級脂肪酸、高級脂肪酸の誘導体、テルペン類およびテルペン類の誘導体などが挙げられる。分散媒に用いられる高級脂肪酸としては、たとえば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。分散媒に用いられる高級脂肪酸の誘導体としては、エステル誘導体が挙げられ、たとえば、ジグリセリド誘導体や、トリオレインなどのトリグリセリド誘導体が挙げられる。分散媒に用いられるテルペン類としては、たとえば、スクアレン、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、リナロール、テルピネオール、カジネンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。さらに、これらのうちの少なくとも1種以上の化合物と、水とを混合して、分散媒を調製することもできる。
【0040】
本発明においては、人工指紋液の分散媒として、トリオレインが用いられており、トリオレインは、人工指紋液の分散媒に要求される上述したすべての性質を満足している。
【0041】
人工指紋液は、分散媒中に微粒子状物質を含んでいる。実際の指紋に含まれる固体成分の大半は、ケラチンと呼ばれる蛋白質である。したがって、ケラチンの微粉末を前記分散媒に添加、混合することによって、人工指紋液を調製することができ、事実、水、オレイン酸、スクアレン、トリオレインなどの分散媒に、ケラチン微粉末を適当な比率で混合したものは、人工指紋液として、効果的に使用することができるが、ケラチンに代えて、分散媒に対して良好な濡れ性を有し、かつ、実際の指紋成分に含まれるケラチンに近い粒子サイズを有する微粒子状物質を用いて、人工指紋液を調製することもできる。
【0042】
人工指紋液に含まれる微粒子状物質は、100μm以下の平均粒径を有することが好ましく、50μm以下の平均粒径を有することがより好ましい。
【0043】
本発明においては、人工指紋液に含まれる微粒子状物質として、JIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームが用いられており、関東ロームは、分散媒であるトリオレインに対して良好な濡れ性を有し、かつ、実際の指紋成分に含まれるケラチンに近い粒子サイズを有している。
人工指紋液は、1重量部の分散媒に対して、0.1ないし5.0重量部の微粒子状物質を添加して、調製されることが好ましく、さらに好ましくは、1重量部の分散媒に対して、0.1ないし3.0重量部の微粒子状物質を添加し、最も好ましくは、0.2ないし1.0重量部の微粒子状物質を添加して、人工指紋液が調製される。
【0044】
本発明においては、1重量部のトリオレインに対して、0.4重量部の関東ロームが添加されて、人工指紋液が調製される。
【0045】
人工指紋液の光記録ディスク表面への転写性を向上させるために、必要に応じて、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メトキシプロパノールなどの希釈剤によって、人工指紋液が希釈される。光記録ディクスの表面に転写された後、最終的に、これらの希釈剤の大部分が除去されるように、希釈剤は、200℃における飽和蒸気圧が760mmHg(101325Pa)を越えていることが必要である。
【0046】
本発明においては、希釈剤として、メトキシプロパノールが用いられている。
【0047】
本発明において、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液は、光記録ディスクのレーザ光が入射する光入射面に付着される。
【0048】
本発明において、光記録ディスクは、少なくとも、基板と、基板上に形成された記録層と、記録層上に形成された光透過層を備えている。
【0049】
本発明において、基板は、光記録ディスクに求められる機械的強度を確保するための支持体として、機能するものである。
【0050】
本発明において、基板を形成するための材料は、光記録ディスクの支持体として機能することができれば、とくに限定されるものではなく、基板は、たとえば、ガラス、セラミックス、樹脂などによって、形成することができる。これらのうち、成形の容易性の観点から、樹脂が好ましく使用される。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性、光学特性などの点から、ポリカーボネート樹脂が、とくに好ましく、使用される。
【0051】
本発明においては、レーザ光は、基板とは反対側に位置する光入射面を介して、照射されるから、基板が、光透過性を有していることは必要でない。
【0052】
本発明において、好ましくは、基板の表面には、交互に、グルーブおよびランドが形成されている。基板の表面に形成されたグルーブおよび/またはランドは、データを記録する場合およびデータを再生する場合において、レーザ光のガイドトラックとして、機能する。
【0053】
グルーブの深さは、とくに限定されるものではないが、λ/(8n)ないしλ/(4n)(λは、レーザ光の波長であり、nは、後述する光透過層の屈折率である。)に設定することが好ましく、グルーブのピッチは、とくに限定されるものではないが、0.2μmないし0.4μmに設定することが好ましい。
【0054】
本発明において、光記録ディスクは、少なくとも一層の記録層を備え、光記録ディスクが、書き換え型光記録媒体として構成される場合には、少なくとも一層の記録層は、相変化材料によって形成された相変化膜と、相変化膜の両側に設けられた第一の誘電体層および第二の誘電体層を含んでいる。
【0055】
相変化膜を形成する相変化材料は、レーザ光の照射を受けると、結晶状態とアモルファス状態との間で、可逆的に変化し、異なる光学特性を示す性質を有している。本発明において使用可能な相変化材料としては、たとえば、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Sn−Se−Te、Ge−Te−Sn、In−Se−Tl、In−Sb−Teなどが挙げられる。これらの材料に、Co、Pt、Pd、Au、Ag、Ir、Nb、Ta、V、W、Ti、Cr、Zr、BiおよびInよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を微量に添加してもよく、また、窒素などの還元性ガスを微量に添加してもよい。
【0056】
相変化膜の厚さは、とくに限定されるものではなく、通常、3ないし50nm程度である。
【0057】
第一の誘電体層および第二の誘電体層は、相変化膜を機械的、化学的に保護するとともに、光学特性を調整する機能を有している。
【0058】
第一の誘電体層および第二の誘電体層は、それぞれ、単層によって構成されていても、複数層によって構成されていてもよい。
【0059】
第一の誘電体層および第二の誘電体層は、それぞれ、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物から形成されることが好ましい。
【0060】
光記録ディスクが、追記型光記録媒体として構成される場合には、光記録ディスクは、有機色素を含む単層の記録層または無機化合物を含む単一の記録層もしくは二以上の記録層を備えている。
【0061】
本発明において、光記録ディスクが、有機色素を含む単層の記録層を備えている場合には、有機色素としては、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ色素、ポルフィリン系色素などを使用することができる。
【0062】
シアニン系色素としては、次の一般式で表わされるモノメチンシアニン系色素のうち、370ないし425nmの波長の範囲に屈折率n(複素屈折率の実部)の極小値nminを有し、記録時のレーザー光および再生時のレーザー光の波長における屈折率nが1.2以下であり、かつ、390ないし420nmの波長の記録時のレーザー光を吸収して、溶融または分解し、屈折率変化を生じる性質を有している色素が好ましい。
【0063】
【化1】
一般式(1)において、QおよびQ’は、含窒素複素環を形成する原子群を表わし、含窒素複素環は縮合環であってもよく、置換基を有していてもよい。QおよびQ’は、同一でも異なっていてもよい。
【0064】
R1およびR1’は、アルキル基を表わし、アルキル基は置換基を有していてもよい。R1およびR1’は同一でも異なっていてもよい。R1およびR1’として用いられるアルキル基としては、炭素数1ないし6のアルキル基が挙げられ、炭素数1ないし4のアルキル基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基が好ましい。
【0065】
X−は陰イオンを表わし、mは0または1である。X−として用いられる陰イオンとしては、Cl−、Br−、I−などのハロゲンイオン、ClO4 −、BF4 −、PF6 −、SbF6 −、SCN−などが挙げられる。
【0066】
具体的には、以下の構造式で示されるモノメチンシアニン系色素が、好ましく使用される。
【0067】
【化2】
本発明において、記録層が、モノメチンシアニン系色素を含んでいる場合には、記録層は、さらに、放射線硬化性樹脂を含んでいる。
【0068】
記録層に含まれる放射線硬化性樹脂としては、光学的に透明で、使用されるレーザー光波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さい樹脂が選ばれ、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが用いられ、紫外線硬化性樹脂および電子線硬化性樹脂が、とくに好ましく使用される。
【0069】
本発明において、記録層は、次の一般式で表わされるポルフィリン系色素を含んでいてもよい。
【0070】
【化3】
ポルフィリン系色素は、370ないし425nmの範囲に屈折率n(複素屈折率の実部)の極小値nminを有し、390ないし420nmの波長のレーザー光の波長における屈折率nが1.2以下であり、かつ、390ないし420nmの波長の記録時のレーザー光を吸収して、溶融または分解し、屈折率変化を生じる性質を有していることが好ましい。
【0071】
本発明において、好ましくは、ポルフィリン系色素の一般式(1)中のRが、
【0072】
【化4】
【0073】
【化5】
【0074】
【化6】
または、
【0075】
【化7】
から選ばれる。
【0076】
本発明において、光記録ディスクが、無機化合物を含む単層の記録層を備えている場合には、記録層が、Al、Si、Ge、C、Sn、Au、Zn、Cu、B、Mg、Ti、Mn、Fe、Ga、Zr、AgおよびPtよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を主成分として含んでいることが好ましい。
【0077】
本発明において、光記録ディスクが、無機化合物を含む二以上の記録層を備えている場合には、光記録ディスクが、第一の記録層および第二の記録層を備え、第一の記録層が、Si、Ge、Sn、Mg、In、Zn、BiおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含み、第二の記録層が、Cuを主成分として含んでいることが好ましく、第二の記録層は、第一の記録層に近傍に、好ましくは、第一の記録層に接触して、設けられる。
【0078】
光記録ディスクが、Si、Ge、Sn、Mg、In、Zn、BiおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含む第一の記録層と、Cuを主成分として含み、第一の記録層の近傍に設けられた第二の記録層を備えている場合には、データを記録する際に、レーザ光によって、第一の記録層に主成分として含まれている元素と、第二の記録層に主成分として含まれている元素とが混合した領域が形成され、反射率を大きく変化させることが可能になり、第一の記録層に主成分として含まれている元素と、第二の記録層に主成分として含まれている元素とが混合した領域の反射率と、それ以外の領域の反射率の大きな差を利用することにより、情報を良好な感度で記録することができ、良好な感度で記録された初期の記録情報を、長期にわたって、保存することが可能になる。
【0079】
本発明において、さらに好ましくは、第一の記録層が、Ge、Si、Mg、AlおよびSnよりなる群から選ばれる元素を主成分として含んでいる。
【0080】
本発明において、好ましくは、第二の記録層に、Al、Si、Zn、Mg、Au、Sn、Ge、Ag、P、Cr、FeおよびTiよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が添加されている。
【0081】
本発明において、さらに好ましくは、第二の記録層に、Al、Zn、SnおよびAuよりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が添加されている。
【0082】
本発明において、記録層が、ポルフィリン系色素を含んでいる場合には、記録層の表面に、誘電体層が形成されることが好ましい。
【0083】
誘電体層は、記録層を機械的、化学的に保護する機能を有するとともに、記録層の光学特性を調整する干渉層としての機能を有している。誘電体層は、単層によって構成されていても、複数層によって構成されていてもよい。
【0084】
本発明において、誘電体層は、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物によって形成することができ、ZnS−SiO2 、AlN、Ta2 O3 、CeO2−Al2O3などが、誘電体層を形成するために好ましく用いられる。
【0085】
本発明において、光記録ディスクは、記録層上に形成された光透過層を備えている。
【0086】
光透過層は、その内部を、記録用および/または再生用のレーザ光が透過する層である。
【0087】
光透過層を形成するための材料としては、光学的に透明で、使用されるレーザ光の波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さいことが要求され、スピンコーティング法などによって、光透過層が形成される場合には、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが、光透過層を形成するために用いられ、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂が、とくに好ましく、使用される。
【0088】
光透過層を形成するために用いられる紫外線硬化性化合物および電子線硬化性化合物ならびにそれらの重合用組成物の具体例としては、アクリル酸やメタクリル酸のエステル化合物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどのアクリル系二重結合、ジアリルフタレートのようなアリル系二重結合、マレイン酸誘導体等の不飽和二重結合などの紫外線照射または電子線照射によって架橋あるいは重合する基を分子中に含有または導入したモノマー、オリゴマーおよびポリマーなどを挙げることができる。これらは、多官能化合物、とくに3官能以上の化合物であることが好ましく、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。単官能化合物を含んでいてもよい。
【0089】
紫外線硬化性モノマーとしては、分子量2000未満の化合物が、オリゴマーとしては、分子量2000ないし10000のものが好適である。これらの例としては、スチレン、エチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレートなども挙げられるが、とくに好ましいものとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ) アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ) アクリレート、フェノールエチレンオキシド付加物の(メタ) アクリレートなどが挙げられる。この他、紫外線硬化性オリゴマーとしては、オリゴエステルアクリレートやウレタンエラストマーのアクリル変性体などが挙げられる。
【0090】
紫外線硬化性材料としては、さらに、エポキシ樹脂および光カチオン重合触媒を含有する組成物も、好ましく使用される。エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂が好ましく、とくに、分子内に、2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどの1種以上が好ましい。脂環式エポキシ樹脂のエポキシ当量はとくに限定されるものではないが、良好な硬化性が得られることから、60ないし300g/mol、とくに100ないし200g/molであることが好ましい。
【0091】
光カチオン重合触媒は、公知のいずれのものを用いてもよく、とくに限定されるものではない。たとえば、光カチオン重合触媒として、1種以上の金属フルオロホウ酸塩および三フッ化ホウ素の錯体、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、6A族元素の芳香族オニウム塩、5A族元素の芳香族オニウム塩、3A族ないし5A族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6 アニオン(ただし、Mは、P、AsまたはSb)を有する6A族元素、トリアリールスルホニウム錯塩、芳香族イオドニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩などを用いることができ、とくに、ポリアリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム塩またはイオドニウム塩、3A族元素、5A族元素および6A族元素の芳香族オニウム塩の1種以上を用いることが好ましい。
【0092】
光透過層を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂としては、25℃において、1,000ないし10,000センチポイズの粘度を有するものが好ましい。
【0093】
本発明において、光透過層は、活性エネルギー線硬化型樹脂をスピンコーティング法によって塗布し、その後、紫外線などの活性エネルギー線を照射して、硬化させて、形成することが好ましい。
【0094】
本発明において、光学的に透明で、使用されるレーザ光の波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さい樹脂によって形成された所望の厚さのシートを、接着剤を用いて、接着することによって、光透過層を形成することもできる。
【0095】
光透過層を形成するためのシートに用いられる樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエステルなどを挙げることができる。樹脂のシートの貼付前に、樹脂の熱変形温度に対して、−20ないし+80℃の範囲で、シートの成膜時の残留応力を取り除く目的で、シート状の樹脂に、アニール処理(熱緩和処理)を施すこともできる。シート状の樹脂に、アニール処理を施さなかった場合には、光記録ディスクの保存時に、シートの残留応力の影響で、光記録ディスクが変形するおそれがある。アニール処理を施すための加熱手段は、ヒーター、ホットプレート、ホットローラ、ベーク炉、電磁誘導加熱などの公知の加熱手段の中から、工程条件などを元に、適宜選択することができる。
【0096】
樹脂のシートを貼付するために使用される接着剤は、感圧性粘着剤や紫外線硬化型樹脂などから選択することができる。たとえば、光透過層の材料として上述した活性エネルギー線硬化型樹脂は、樹脂のシートを貼付するための接着剤として好適である。
【0097】
樹脂のシートを貼付して、光透過層を形成する場合には、接着剤として、活性エネルギー線硬化型樹脂をスピンコーティング法によって塗布し、未硬化の活性エネルギー線硬化型樹脂層上に、樹脂のシートを載置し、その後、紫外線などの活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂層を硬化することによって、樹脂のシートを接着して、光透過層を形成するとよい。より具体的には、真空中(0.1気圧以下)において、樹脂のシートを未硬化の活性エネルギー線硬化型樹脂層上に載置し、次いで、大気圧雰囲気に戻して、紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型樹脂層を硬化させるとよい。
【0098】
光透過層の膜厚は、スピンコーティング法により、光透過層を形成する場合には、1ないし150μmが好ましく、シート状の樹脂を貼付して、光透過層を形成する場合には50ないし150μmが好ましい。
【0099】
本発明において、好ましくは、光記録ディスクは、光透過層の表面に形成されたハードコート層を備えている。
【0100】
ハードコート層は、光記録ディスクを保護し、カートリッジに収容することなく、光記録ディスクを使用可能にする機能を有している。
【0101】
本発明において、好ましくは、ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子を含んでいる。
【0102】
ハードコート層を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの活性基を有する化合物であれば、とくに限定されるものではない。活性エネルギー線硬化性樹脂は、十分な硬度を有するハードコート層を形成するために、1つの分子内に、2つ以上、好ましくは、3つ以上の重合性基を含む多官能モノマーもしくはオリゴマーを含んでいることが好ましい。
【0103】
本発明において、ハードコート層を形成するために用いられる(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、たとえば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレートなどが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。
【0104】
本発明において、ハードコート層を形成するために用いられるビニル基を有する化合物としては、たとえば、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ヒドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテルなどが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。
【0105】
本発明において、ハードコート層を形成するために用いられるメルカプト基を有する化合物としては、たとえば、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)などが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。
【0106】
本発明において、ハードコート層は、一種の活性エネルギー線硬化性樹脂のみを含んでいても、二種以上の活性エネルギー線硬化性樹脂を含んでいてもよい。
【0107】
本発明において、ハードコート層は、透明性を確保するために、100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子、好ましくは、20nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子を含んでいる。無機微粒子の平均粒子径は、コロイド溶液製造上の制約から、好ましくは、5nm以上である。
【0108】
本発明において、ハードコート層を形成するために用いられる無機微粒子としては、たとえば、金属もしくは半金属の酸化物の微粒子、または、金属もしくは半金属の硫化物の微粒子が挙げられる。金属または半金属としては、たとえば、Si、Ti、Al、Zn、Zr、In、Sn、Sbなどが挙げられる。また、酸化物、硫化物に代えて、Se化物、Te化物、窒化物、炭化物を用いることもできる。具体的には、たとえば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの微粒子が挙げられ、これらの中では、シリカ微粒子が好ましい。このような無機微粒子をハードコート剤組成物に添加しておくことにより、ハードコート層の耐摩耗性をより高めることができる。
【0109】
シリカ微粒子の中では、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物によって、表面修飾されたものが、好ましく用いられる。このような反応性シリカ微粒子は、ハードコートを硬化させる際の活性エネルギー線照射によって、架橋反応を起こし、ポリマーマトリクス中に固定される。このような反応性シリカ微粒子の例は、特開平9−100111号公報などに記載されており、特開平9−100111号公報に記載された反応性シリカ粒子は、本発明において好ましく用いることができる。
【0110】
本発明において、ハードコート層の表面によって、レーザ光が入射する光入射面が構成されている場合には、ハードコート層は、その表面が、撥水性、撥油性および潤滑性の少なくとも1つを有していることが好ましく、好ましくは、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0111】
シリコーン系化合物としては、シリコーン系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられ、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられる。
【0112】
活性エネルギー線重合性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基などの活性エネルギー線ラジカル重合性反応性基や、環状エーテル基およびビニルエーテル基などの活性エネルギー線カチオン重合性反応性基が挙げられる。
【0113】
シリコーン系化合物としては、シリコーン系の置換基を有する部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。たとえば、以下の一般式で示される化合物が挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−R
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−Si(CH3 )3
(CH3 )3 SiO−〔Si(CH3 )2 O〕n−〔Si(CH3 )(R)O〕m−Si(CH3 )3
ここに、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基およびビニルエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を含む置換基であり、n、mは重合度である。
【0114】
フッ素系化合物としては、フッ素系(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2− ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフッ化アクリレートが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。たとえば、(メタ)アクリレート基が導入されたパーフルオロポリエーテルなどの高分子化合物、あるいは、(メタ)アクリレート基の代わりに、ビニル基またはメルカプト基を有するフッ素系化合物なども好ましく用いることができる。
【0115】
また、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基を有する部位と、環状エーテル基およびビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、3−(1H,1H−パーフルオロオクチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロウンデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロテトラデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロヘキサデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,9H,9H−パーフルオロ−1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,12H,12H−パーフルオロ−1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、アウジモント株式会社製「Fombrin Z DOL」(商品名:アルコール変性パーフルオロポリエーテル)のジグリシジルエーテルなどが挙げられるが、必ずしも、これらに限定されるものではない。たとえば、反応性基として、3,4−エポキシシクロヘキシル基などの脂環エポキシ基や、ビニルエーテル基を有する化合物も、好ましく用いることができる。
【0116】
本発明において、ハードコート層の表面によって、レーザ光が入射する光入射面が構成されている場合には、ハードコート層を形成するためのハードコート剤組成物は、5重量%以上、80重量%以下の無機微粒子と、0.01重量%以上、1重量%以下のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物と、19重量%以上、94.99重量%以下の活性エネルギー線硬化性樹脂を含んでいることが好ましい。無機微粒子を80重量%よりも多く含有させると、ハードコート層の膜強度が弱くなりやすく、その一方で、無機微粒子が5重量%未満では、ハードコート層の耐摩耗性向上効果が十分でなくなる。シリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を1重量%よりも多く含有させると、ハードコート層の表面の潤滑性は向上するが、ハードコート層の硬さが低下しやすく、その一方で、シリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物が0.01重量未満では、潤滑性向上効果が十分でなくなる。より好ましくは、ハードコート剤組成物は、10重量%以上、60重量%以下の無機微粒子と、0.01重量%以上、1重量%以下のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物と、39重量%以上、89.99重量%以下の活性エネルギー線硬化性樹脂を含んでいる。とくに、ハードコート層に、0.025重量%以上、0.3重量%以下のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物が含まれていることが好ましく、0.15重量%以上、0.25重量%以下のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物が含まれていることが最も好ましい。
【0117】
ハードコート層を形成するためのハードコート剤組成物は、公知の光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤は、活性エネルギー線として、電子線を用いる場合には、とくに必要はないが、紫外線を用いる場合には、必要となる。光重合開始剤は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系などの公知のものから選択することができる。光重合開始剤の含有量は、たとえば、無機微粒子、シリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物ならびに活性エネルギー線硬化性樹脂の総重量に対して、0.5ないし5重量%程度である。
【0118】
また、ハードコート層を形成するためのハードコート剤組成物は、さらに、必要に応じて、非重合性の希釈溶剤、有機フィラー、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、ケイ素化合物などを含んでいてもよい。
【0119】
本発明において、ハードコート層は、光透過層の表面上に、ハードコート剤組成物を塗布して、塗膜を形成し、塗膜に、活性エネルギー線を照射して、ハードコート剤組成物層を硬化させ、形成することができる。ハードコート剤組成物の塗布方法は、とくに限定されるものではなく、スピンコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法などを用いることができるが、スピンコーティング法が好ましく使用される。
【0120】
本発明において、光透過性のシートを、接着剤を用いて、接着することによって、光透過層が形成される場合には、長尺状の光透過性のシートの表面に、あらかじめ、ハードコート剤組成物を塗布して、ハードコート層を形成しておき、ハードコート層が形成されたシートをディスク形状に打ち抜き、接着剤を用いて、貼付して、光透過層を形成してもよい。
【0121】
ハードコート剤組成物が非反応性希釈有機溶剤を含んでいる場合には、ハードコート剤組成物を塗布して、塗膜を形成した後に、加熱して、非反応性有機溶剤を除去し、次いで、活性エネルギー線を照射して、塗膜を硬化させ、ハードコート層を形成することが好ましい。希釈有機溶剤を用いて、ハードコート剤組成物を塗布し、加熱によって、有機溶剤を除去する場合には、反応性シリコーンが未硬化の塗膜の表面近傍に、より多く集まりやすくなり、硬化後のハードコート層の表面近傍に、より多くシリコーンが存在するから、より大きな潤滑性向上効果が得ることができる。未硬化の塗膜は、たとえば、温度40℃以上、100℃以下で加熱することが好ましい。
【0122】
非反応性希釈有機溶剤は、とくに限定されるものではないが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコールなどが用いられる。
【0123】
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光などの活性エネルギー線の中から適切なものを選択することができるが、紫外線または電子線を用いることが好ましい。
【0124】
本発明において、ハードコート層 の膜厚は、0.5ないし5μmであることが好ましい。
【0125】
本発明において、光透過層とハードコート層の総厚が、70μmないし150μmであることが好ましい。光透過層とハードコート層の総厚が70μm未満であるときは、光記録ディスクの表面に付着したゴミなどによって、データの読み取りエラーが生じやすくなり、一方、光透過層とハードコート層の総厚が150μmを越えると、開口数(NA)が0.85の対物レンズを用いて、405nmの波長λを有するレーザ光を記録層上に集束させる場合に、チルトマージンTが著しく小さくなるという問題が生じる。
【0126】
本発明において、ハードコート層を設けることなく、光透過層が、光記録ディスクを保護する機能を有するように構成されていてもよい。この場合には、光透過層の表面によって、レーザ光の光入射面が構成され、光透過層の層厚は、70ないし150μmであることが好ましい。光透過層を、光記録ディスクを保護する機能を有するように構成することによって、ハードコート層を形成する工程をなくすことができ、光記録ディスクの製造工程を簡略化することができる。
【0127】
本発明において、光透過層の表面によって、レーザ光の光入射面が構成される場合には、光透過層は、その表面に傷が入るのを防止するために、光透過層に、光透過層を硬くするための成分として、たとえば、無機微粒子を含ませたり、分子量2000未満の硬化性モノマーを多く含有させることが好ましい。光透過層に用いられる無機微粒子としては、たとえば、金属もしくは半金属の酸化物の微粒子が挙げられる。金属または半金属としては、例えば、Si、Ti、Al、Zn、In、Sn、Sbなどが挙げられる。また、酸化物、硫化物に代えて、Se化物、Te化物、窒化物、炭化物を用いることもできる。具体的には、たとえば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの微粒子が挙げられ、これらの中ではシリカ微粒子が好ましい。このような無機微粒子を光透過層に添加しておくことにより、光透過層の耐久磨耗性をより高めることができる。
【0128】
シリカ微粒子の中では、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物によって、表面修飾されたものが、好ましく用いられる。このような反応性シリカ微粒子は、光透過層を硬化させる際の活性エネルギー線照射によって、架橋反応を起こし、ポリマーマトリクス中に固体される。このような反応性シリカ微粒子の例は、特開平9−100111号公報などに記載されており、特開平9−100111号公報に記載された反応性シリカ微粒子は、本発明において、好ましく用いることができる。
【0129】
光透過層は、光透過性樹脂のシートを、接着剤を用いて、接着して、形成される場合には、光透過性樹脂のシートの耐擦傷性を確保するために、光透過性樹脂に、無機微粒子が含まれることが好ましい。
【0130】
また、光透過層は、その表面に傷が入るのを防止するために、硬くするのではなく、逆に、より柔らかくし、柔軟性を持たせることによって、耐擦傷性が確保されてもよい。
【0131】
本発明において、光透過層の表面によって、レーザ光が入射する光入射面が構成される場合には、光透過層は、その表面が、撥水性、撥油性および潤滑性の少なくとも1つを有していることが好ましく、好ましくは、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0132】
本発明において、好ましくは、光記録ディスクは、ハードコート層の表面上に形成された潤滑剤層を備え、潤滑剤層によって、レーザ光が入射する光入射面が構成されている。
【0133】
本発明において、潤滑剤層は、好ましくは、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として含んでいる。潤滑剤層に含まれる活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物としては、ハードコート層を形成するためのハードコート剤組成物に含有させることができる活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物と同様な化合物を用いることができる。
【0134】
本発明において、好ましくは、潤滑剤層は、潤滑剤溶液を、未硬化のハードコート層の表面に、スピンコーティング法などによって、塗布して、潤滑剤溶液の塗膜を形成し、活性エネルギー線を照射して、ハードコート層と潤滑剤溶液の塗膜を同時に硬化させて、形成される。
【0135】
本発明において、潤滑剤層は、好ましくは、1nmないし100nmの厚さを有するように、ハードコート層の表面上に形成される。
【0136】
本発明において、ハードコート層の表面上に、潤滑剤層が形成される場合には、ハードコート層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいることは必ずしも必要でない。
【0137】
本発明において、ハードコート層が設けられていない場合には、好ましくは、光記録ディスクは、光透過層の表面上に形成された潤滑剤層を備え、潤滑剤層によって、レーザ光が入射する光入射面が構成されている。
【0138】
本発明において、ハードコート層が設けられず、光透過層の表面上に、潤滑剤層が形成される場合には、光透過層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいることは必ずしも必要でない。
【0139】
本発明において、以上のような構成を有する光記録ディスクが、保存試験および擦り試験が行われて、その後に、光記録ディスクのレーザ光が入射する光入射面に、人工指紋液が付着される。
【0140】
本発明において、人工指紋液を、光記録ディスクの光入射面に付着させるにあたっては、まず、光記録ディスクが、温度80℃、相対湿度85%の環境下において、50時間にわたり、保持されて、保存試験が実行される。
【0141】
次いで、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、自己接着型の長繊維不織布と、レーザ光が入射する光入射面とを、10往復にわたって、相対的に移動させて、光記録ディスクの表面が、自己接着型の長繊維不織布で擦られて、擦り試験が実行される。
【0142】
本発明での試験は、保存試験および擦り試験を組み合わせて、実際の使用環境において、光記録ディスクが、長期間にわたって、繰り返し、使用され、あるいは、長期間にわたって、保存された場合を想定したものであり、実際の使用環境での長期間の使用または保存後における光記録ディスクの信頼性を確かめるものである。
【0143】
その一方で、人工指紋液が、ガラスや樹脂によって形成された剛性を有する基板の表面上に、均一に塗布される。人工指紋液を塗布するためには、スピンコーティング法やディップコーティング法を用いることができるが、スピンコーティング法によって、人工指紋液を基板上に塗布することが好ましい。
【0144】
人工指紋液を基板上に塗布するにあたって、人工指紋液をイソプロピルアルコールやメチルエチルケトンなどの有機溶媒で希釈し、塗布後に、乾燥によって、除去するようにしてもよい。
【0145】
こうして、基板上に、人工指紋液が均一に塗布されたのち、乾燥されて、擬似指紋パターン転写用の原版が作製される。
【0146】
一方、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨し、擬似指紋が転写しやすいように、表面を粗面化して、擬似指紋転写材が作製される。
【0147】
こうして得られた擬似指紋転写材の研磨された端面を、擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てることによって、人工指紋液成分が、擬似指紋転写材の端面に転写される。
【0148】
次いで、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液成分が付着された擬似指紋転写材の端面が、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てられ、人工指紋液が、光記録ディスクの光入射面に転写される。
【0149】
本発明において、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面は、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させたときに、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有している。
【0150】
したがって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、人工指紋液が付着したときには、人工指紋液は、表面の単位面積当たりで、占める面積割合が30%以下となるように、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着する。
【0151】
しかしながら、本発明者の研究によれば、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に指紋が付着したときに、表面の単位面積当たりに付着する人工指紋液の占める面積割合が30%以下である場合には、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、人工指紋液は、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、指紋が付着しても、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0152】
さらに、本発明においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させたときに、表面の単位面積当たりで、人工指紋液の占める面積割合が30%以下であるような表面特性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0153】
また、本発明において、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面は、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦った後に、人工指紋液を付着させたときに、表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下であるような表面特性を有している。
【0154】
したがって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、表面に人工指紋液が付着したときには、人工指紋液は、液滴の直径の最大値が82μm以下となるように、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着する。
【0155】
しかしながら、本発明者の研究によれば、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に指紋が付着したときに、人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下である場合には、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、人工指紋液は、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、指紋が付着しても、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0156】
さらに、本発明においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させたときに、人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下であるような表面特性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0157】
また、本発明において、光記録ディスクの光入射面、すなわち、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面は、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦った後に、人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有している。
【0158】
したがって、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦った後に、表面に人工指紋液が付着したときには、人工指紋液は、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすように、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着する。
【0159】
しかしながら、本発明者の研究によれば、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に人工指紋液が付着したときに、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たす場合には、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、人工指紋液は、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、光入射面である光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面に、指紋が付着しても、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0160】
さらに、本発明においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光透過層の表面、ハードコート層の表面あるいは潤滑剤層の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有しているから、光記録ディスクを、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスクの表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスクに、データを記録し、光記録ディスクから、データを読み出すことが可能になる。
【0161】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0162】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図であり、図2には、図1のAで示される部分の略拡大断面図である。
【0163】
図1に示されるように、本実施態様にかかる光記録ディスク1は、円板上をなし、図1および図2において、矢印で示される方向から、レーザ光が照射されるように構成されている。
【0164】
図2に示されるように、本実施態様にかかる光記録ディスク1は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成され、相変化膜によって形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8と、ハードコート層8の表面上に形成された潤滑剤層9を備えている。
【0165】
基板2は、光記録ディスク1の機械的な支持体として、機能するものである。
【0166】
基板2を形成するための材料は、光記録ディスク1の支持体として機能することができれば、とくに限定されるものではなく、基板2は、たとえば、ガラス、セラミックス、樹脂などによって、形成することができる。これらのうち、成形の容易性の観点から、樹脂が好ましく使用される。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性、光学特性などの点から、ポリカーボネート樹脂が、とくに好ましく、本実施態様においては、基板2は、ポリカーボネート樹脂によって形成されている。
【0167】
本実施態様においては、基板2は、約1.1mmの厚さを有している。
【0168】
本実施態様においては、レーザ光は、基板2とは反対側に位置する光透過層7を介して、照射されるから、基板2が、光透過性を有していることは必ずしも必要でない。
【0169】
図2に示されるように、基板2の表面には、交互に、グルーブ2aおよびランド2bが形成されている。基板2の表面に形成されたグルーブ2aおよび/またはランド2bは、データを記録する場合およびデータを再生する場合において、レーザ光のガイドトラックとして、機能する。
【0170】
グルーブ2aの深さは、とくに限定されるものではないが、λ/(8n)ないしλ/(4n)(λは、レーザ光の波長であり、nは、後述する光透過層の屈折率である。)に設定することが好ましく、グルーブ2aのピッチは、とくに限定されるものではないが、0.2μmないし0.4μmに設定することが好ましい。
【0171】
図2に示されるように、基板2の表面上には、反射層3が形成されている。
【0172】
反射層3は、光透過層7を介して、照射されるレーザ光を反射し、再び、光透過層7から出射させる役割を果たし、通常、10ないし300nm程度の厚さを有している。
【0173】
反射層3の厚さは、とくに限定されるものではないが、10nmないし300nmであることが好ましく、20nmないし200nmであることが、とくに好ましい。
【0174】
反射層3を形成するための材料は、レーザ光を反射できればよく、とくに限定されるものではなく、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ag、Pt、Auなどによって、反射層3を形成することができる。これらのうち、高い反射率を有しているAl、Au、Ag、Cu、または、AgとCuとの合金などのこれらの金属の少なくとも1つを含む合金などの金属材料が、反射層3を形成するために、好ましく用いられる。
【0175】
反射層3は、たとえば、反射層12の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0176】
反射層3は、レーザ光を用いて、記録層5に記録されたデータを再生するときに、多重干渉効果によって、記録部と未記録部との反射率の差を大きくして、高い再生信号(C/N比)を得るために、設けられている。
【0177】
図2に示されるように、反射層3の表面上には、第二の誘電体層4が形成されている。
【0178】
第二の誘電体層4は、第一の誘電体層6とともに、記録層5を機械的、化学的に保護するとともに、光学特性を調整する機能を有している。
【0179】
第二の誘電体層は、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物から形成されることが好ましい。
【0180】
第二の誘電体層4は、たとえば、第二の誘電体層4の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、反射層3の表面上に形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0181】
図2に示されるように、第二の誘電体層4の表面上には、記録層5が形成されている。
【0182】
記録層5は、相変化膜によって形成され、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Sn−Se−Te、Ge−Te−Sn、In−Se−Tl、In−Sb−Teなどを含んでいる。
【0183】
記録層5は、記録層5の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0184】
記録層5は、通常、3ないし50nm程度の厚さを有するように形成される。
【0185】
図2に示されるように、記録層5の表面上には、第一の誘電体層6が形成されている。
【0186】
第一の誘電体層6は、たとえば、第一の誘電体層6の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
【0187】
第一の誘電体層は、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgよりなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいは、これらの複合物から形成されることが好ましい。
【0188】
第一の誘電体層6と第二の誘電体層4は、互いに同じ誘電体材料によって形成されていてもよいが、異なる誘電体材料によって形成されていてもよい。さらに、第一の誘電体層6および第二の誘電体層4の少なくとも一方が、複数の誘電体膜からなる多層構造であってもよい。
【0189】
図2に示されるように、第一の誘電体層6の表面上には、光透過層7が形成されている。
【0190】
光透過層7は、その内部を、記録用および/または再生用のレーザ光が透過する層である。
【0191】
光透過層7を形成するための材料としては、光学的に透明で、使用されるレーザ光の波長領域である390ないし420nmでの光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さいことが要求され、スピンコーティング法などによって、光透過層7が形成される場合には、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などが、光透過層7を形成するために用いられ、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂が、とくに好ましく、使用される。
【0192】
光透過層7は、第一の誘電体層6の表面に、光透過性樹脂によって形成されたシートを、接着剤を用いて、接着することによって、形成されてもよい。
【0193】
光透過層7の膜厚は、スピンコーティング法により、光透過層7を形成する場合には、1ないし150μmが好ましく、光透過性樹脂によって形成されたシートを、接着剤を用いて、第一の誘電体層6の表面に接着して、光透過層7を形成する場合には50ないし150μmが好ましい。
【0194】
図2に示されるように、光透過層7の表面上には、ハードコート層8が形成されている。
【0195】
ハードコート層8は、光記録ディスク1を保護し、カートリッジに収容することなく、光記録ディスク1を使用可能にする機能を有している。
【0196】
本実施態様においては、ハードコート層8は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子を含むハードコート剤組成物が、スピンコーティング法によって、光透過層7の表面に塗布されて、塗膜が形成され、塗膜に、活性エネルギー線が照射されて、ハードコート剤組成物層が硬化され、形成される。
【0197】
ハードコート層8を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの活性基を有する化合物であれば、とくに限定されるものではない。
【0198】
ハードコート層8は、透明性を確保するために、5nm以上、100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子、好ましくは、5nm以上、20nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子を含んでいる。
【0199】
ハードコート層8を形成するために用いられる無機微粒子としては、たとえば、金属もしくは半金属の酸化物の微粒子、または、金属もしくは半金属の硫化物の微粒子が挙げられる。金属または半金属としては、たとえば、Si、Ti、Al、Zn、Zr、In、Sn、Sbなどが挙げられる。また、酸化物、硫化物に代えて、Se化物、Te化物、窒化物、炭化物を用いることもできる。具体的には、たとえば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの微粒子が挙げられ、これらの中では、シリカ微粒子が好ましい。このような無機微粒子をハードコート剤組成物に添加しておくことにより、ハードコート層8の耐摩耗性をより高めることができる。
【0200】
図2に示されるように、ハードコート層8の表面上には、潤滑剤層9が形成されている。
【0201】
潤滑剤層9は活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として含んでいる。
【0202】
シリコーン系化合物としては、シリコーン系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられ、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられる。
【0203】
活性エネルギー線重合性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基などの活性エネルギー線ラジカル重合性反応性基や、環状エーテル基およびビニルエーテル基などの活性エネルギー線カチオン重合性反応性基が挙げられる。
【0204】
潤滑剤層9に含まれるシリコーン系化合物としては、シリコーン系の置換基を有する部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられ、たとえば、以下の一般式で示されるシリコーン系化合物が挙げられる。
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−R
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−Si(CH3 )3
(CH3 )3 SiO−〔Si(CH3 )2 O〕n−〔Si(CH3 )(R)O〕m−Si(CH3 )3
ここに、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基およびビニルエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を含む置換基であり、n、mは重合度である。
【0205】
潤滑剤層9に含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2− ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフッ化アクリレートが挙げられる。
【0206】
また、潤滑剤層9に含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系置換基を有する部位と、環状エーテル基およびビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、3−(1H,1H−パーフルオロオクチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロウンデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロテトラデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロヘキサデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,9H,9H−パーフルオロ−1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,12H,12H−パーフルオロ−1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、アウジモント株式会社製「Fombrin Z DOL」(商品名:アルコール変性パーフルオロポリエーテル)のジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0207】
潤滑剤層9は、1nmないし100nmの厚さを有している。
【0208】
潤滑剤層9は、潤滑剤溶液を、未硬化のハードコート層8の表面に、スピンコーティング法などによって、塗布して、潤滑剤溶液の塗膜を形成し、活性エネルギー線を照射して、ハードコート層8と潤滑剤溶液の塗膜を同時に硬化させて、形成される。
【0209】
本実施態様においては、以上のような構成を有する光記録ディスク1に対して、以下に示すように、人工指紋液が付着される。
【0210】
人工指紋液を付着するにあたっては、まず、光記録ディスク1が、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、保存され、保存試験が実行される。
【0211】
次いで、保存試験に続いて、光記録ディスク1の表面を、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、擦る擦り試験が実行される。すなわち、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、光記録ディスク1の表面との接触部分を中心として、1.0mlのエタノールを、スポイトで滴下し、こうしてエタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布を、光記録ディスク1の表面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、自己接着型の長繊維不織布と、光記録ディスク1の表面とを10往復にわたって、相対的に移動させることにより、光記録ディスク1の表面が、自己接着型の長繊維不織布で擦られる。ここに、セルロースを主成分として含むとは、実質的にセルロース以外の原料を含まないことを意味し、具体的には、長繊維不織布の95%以上がセルロースからなることをいう。
【0212】
本実施形態での保存試験および擦り試験を組み合わせて行う試験は、実際の使用環境において、光記録ディスク1が、長期間にわたって、繰り返し、使用され、あるいは、長期間にわたって、保存された場合を想定したものであり、実際の使用環境での長期間の使用または保存後における光記録ディスク1の信頼性を確かめるものである。
【0213】
その一方で、微粒子状物質として、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種(中位径:1.6ないし2.3μm)の関東ロームと、分散媒として、1重量部のトリオレインと、希釈剤として、10重量部のメトキシプロパノールとを混合、攪拌して,人工指紋液が調製される。
【0214】
次いで、こうして調製された人工指紋液を、マグネティックスターラーを用いて、攪拌しながら、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、人工指紋液を、ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、塗膜が形成された基板を、60℃で、3分間にわたり、加熱して、塗膜中の不要な希釈溶剤であるメトキシプロパノールを完全に除去することによって、擬似指紋パターン転写用の原版が形成される。
【0215】
さらに、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨することによって、擬似指紋転写材が作製される。
【0216】
こうして得られた擬似指紋転写材の研磨された端面が、擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てられ、人工指紋液が、擬似指紋転写材の端面に転写される。
【0217】
次いで、光記録ディスク1の中心から半径方向に40mmの位置にある潤滑剤層9の表面に、人工指紋液が付着された擬似指紋転写材の端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てることによって、潤滑剤層9の表面に、人工指紋液が転写される。
【0218】
本実施態様においては、潤滑剤層9は、こうして、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、潤滑剤層9の表面に人工指紋液を付着させたときに、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有している。
【0219】
したがって、本実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、潤滑剤層9の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるように、潤滑剤層9の表面に付着する。
【0220】
本発明者の研究によれば、潤滑剤層9の表面に人工指紋液が付着したときに、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着する人工指紋液の占める面積割合が30%以下である場合には、光入射面である潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク1を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク1の潤滑剤層9の表面に指紋が付着した場合にも、潤滑剤層9の表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク1に、データを記録し、光記録ディスク1から、データを読み出すことが可能になる。
【0221】
あるいは、本実施態様においては、潤滑剤層9の表面は、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦った後に、潤滑剤層9の表面に人工指紋液を付着させたときに、光入射面を構成する潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下であるような表面特性を有している。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0222】
したがって、本実施態様においては温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、潤滑剤層9の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、その液滴の直径の最大値が82μm以下になるように、潤滑剤層9の表面に付着する。
【0223】
本発明者の研究によれば、潤滑剤層9の表面に人工指紋液が付着したときに、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径が82μm以下である場合には、光入射面である潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク1を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク1の潤滑剤層9の表面に指紋が付着した場合にも、潤滑剤層9の表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク1に、データを記録し、光記録ディスク1から、データを読み出すことが可能になる。
【0224】
あるいは、本実施形態においては、潤滑剤層9は、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、潤滑剤層9の表面に人工指紋液を付着させたときに、潤滑剤層9の表面は、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有している。
【0225】
したがって、本実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、潤滑剤層9の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすように、潤滑剤層9の表面に付着する。
【0226】
本発明者の研究によれば、潤滑剤層9の表面に人工指紋液が付着したときに、20μm以上の直径の人工指紋液の人工指紋液の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たす場合には、光入射面である潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク1を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク1の潤滑剤層9の表面に指紋が付着した場合にも、潤滑剤層9の表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク1に、データを記録し、光記録ディスク1から、データを読み出すことが可能になる。
【0227】
以上のとおり、本実施態様によれば、光記録ディスク1の光入射面を構成する潤滑剤層9の表面が、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、指紋と実質的に同じ物性を有する人工指紋液を付着させたときに、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になる表面特性、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下となる表面特性、および、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすといった表面特性を有しているから、実際の使用環境において、光記録ディスク1を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク1の潤滑剤層9の表面に指紋が付着した場合にも、潤滑剤層9の表面に付着した指紋によって、トラッキング制御特性が低下することがなく、したがって、光記録ディスク1に、データを記録し、光記録ディスク1から、データを読み出すことが可能となる。
【0228】
図3は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図であり、図4は、図3のBで示された部分の略拡大断面図である。
【0229】
図4に示されるように、本実施態様にかかる光記録ディスク10は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8とを備え、図1および図2に示された光記録ディスク1とは異なり、ハードコート層8の表面上に、潤滑剤層は形成されていない。
【0230】
本実施態様にかかる光記録ディスク10のハードコート層8は、活性エネルギー線硬化性樹脂および100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子に加えて、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいる。
【0231】
すなわち、本実施態様においては、ハードコート層8は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、100nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子と、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含むハードコート剤組成物が、スピンコーティング法によって、光透過層7の表面に塗布されて、塗膜が形成され、塗膜に、活性エネルギー線が照射されて、ハードコート剤組成物層が硬化され、形成されている。
【0232】
ハードコート層8に含まれるシリコーン系化合物としては、シリコーン系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられ、フッ素系化合物としては、フッ素系置換基と活性エネルギー線重合性の反応性基を含む化合物が挙げられる。
【0233】
活性エネルギー線重合性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびメルカプト基などの活性エネルギー線ラジカル重合性反応性基や、環状エーテル基およびビニルエーテル基などの活性エネルギー線カチオン重合性反応性基が挙げられる。
【0234】
ハードコート層8に含まれるシリコーン系化合物としては、シリコーン系の置換基を有する部位と、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基及びビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられ、たとえば、以下の一般式で示される化合物が挙げられる。
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−R
R−〔Si(CH3 )2 O〕n−Si(CH3 )3
(CH3 )3 SiO−〔Si(CH3 )2 O〕n−〔Si(CH3 )(R)O〕m−Si(CH3 )3
ここに、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、メルカプト基、環状エーテル基およびビニルエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性基を含む置換基であり、n、mは重合度である。
【0235】
ハードコート層8に含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2− ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフッ化アクリレートが挙げられる。
【0236】
ハードコート層8にに含まれるフッ素系化合物としては、フッ素系置換基を有する部位と、環状エーテル基およびビニルエーテル基の中から選択される少なくとも1つの反応性基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、3−(1H,1H−パーフルオロオクチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロウンデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロテトラデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロヘキサデシロキシ)−1,2−エポキシプロパン、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,9H,9H−パーフルオロ−1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1H,1H,12H,12H−パーフルオロ−1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、アウジモント株式会社製「Fombrin Z DOL」(商品名:アルコール変性パーフルオロポリエーテル)のジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0237】
本実施態様においては、ハードコート層8によって、光記録ディスク10のレーザ光が入射する光入射面が構成されており、ハードコート層8の表面は、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、ハードコート層8の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に人工指紋液を付着させたときに、ハードコート層8の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有している。
【0238】
したがって、本実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、ハードコート層8の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるように、ハードコート層8の表面に付着する。
【0239】
本発明者の研究によれば、ハードコート層8の表面に人工指紋液が付着したときに、ハードコート層8の表面の単位面積当たりに付着する人工指紋液の占める面積割合が30%以下である場合には、光入射面であるハードコート層8の表面に付着した人工指紋液によって、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク10を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク10の表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク10に、データを記録し、光記録ディスク10から、データを読み出すことが可能になる。
【0240】
あるいは、本実施態様においては、ハードコート層8の表面は、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、ハードコート層8の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液を付着させたときに、光入射面を構成するハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下であるような表面特性を有している。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、ハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、ハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。
【0241】
したがって、本実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、その液滴の直径の最大値が82μm以下になるように、ハードコート層8の表面に付着する。
【0242】
本発明者の研究によれば、ハードコート層8の表面に人工指紋液が付着したときに、ハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径が82μm以下である場合には、光入射面であるハードコート層8の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク10を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク10の表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク10に、データを記録し、光記録ディスク10から、データを読み出すことが可能になる。
【0243】
あるいは、本実施形態においては、ハードコート層8の表面は、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、ハードコート層8の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液を付着させたときに、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有している。
【0244】
したがって、本実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦り、この後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液が付着した場合には、人工指紋液は、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすように、ハードコート層8の表面に付着する。
【0245】
本発明者の研究によれば、ハードコート層8の表面に人工指紋液が付着したときに、20μm以上の直径の人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たす場合には、光入射面であるハードコート層8の表面に付着した人工指紋液によって、トラッキング制御特性が実質的な悪影響を受けることがないことが見出されており、本実施態様においては、人工指紋液は、人間の汗や皮脂と実質的に同じ物性を有しているから、光記録ディスク10を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク10の表面に指紋が付着した場合にも、表面に付着した指紋の影響を受けることなく、光記録ディスク10に、データを記録し、光記録ディスク10から、データを読み出すことが可能になる。
【0246】
以上のとおり、本実施態様によれば、光記録ディスク10の光入射面を構成するハードコート層8の表面が、光記録ディスク10を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、ハードコート層8の表面を擦り、この後に、指紋と実質的に同じ物性を有する人工指紋液を付着させたときに、ハードコート層8の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になる表面特性、ハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下となる表面特性、および、ハードーコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすといった表面特性を有しているから、実際の使用環境において、光記録ディスク10を、長期間にわたって、繰り返し、使用し、あるいは、長期間にわたって、保存した後に、光記録ディスク10のハードコート層8の表面に指紋が付着した場合にも、ハードコート層8の表面に付着した指紋によって、トラッキング制御特性が低下することがなく、したがって、光記録ディスク10に、データを記録し、光記録ディスク10から、データを読み出すことが可能となる。
【0247】
【実施例】
以下、本発明の効果をより明瞭なものとするため、実施例を掲げる。
【0248】
実施例1
1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有し、一方の表面に、グルーブおよびランドが形成されたディスク状のポリカーボネート基板を用意し、ポリカーボネート基板のグルーブおよびランドが形成された表面に、98:1:1の原子比で、Al、PdおよびCuを含み、100nmの厚さを有する反射層を、スパッタリング法により形成した。
【0249】
グルーブの深さは,405nmの波長λのレーザ光の光路長で表わして、λ/6としたし、オングルーブ記録方式における記録トラックピッチは0.32μmとした。
【0250】
次いで,反射層の表面に、Al2O3からなるターゲットを用いて、スパッタリング法により、20nmの厚さを有する第二の誘電体層を形成し、さらに、第二の誘電体層の表面に、相変化材料からなる合金ターゲットを用いて、スパッタリング法により、12nmの厚さを有する記録層を形成した。記録層の組成は、原子比で、Sb74Te18(Ge7In1)とした。
【0251】
次いで、記録層の表面に、ZnSとSiO2の混合物よりなるターゲットを用いて、スパッタリング法により、130nmの厚さを有する第一の誘電体層を形成した。ZnSとSiO2の混合物中のZnSとSiO2のモル比率は、80:20であった。
【0252】
さらに、第一の誘電体層の表面に、以下の組成を有するラジカル重合性の紫外線硬化型樹脂を、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、形成された塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、98nmの厚さを有する光透過層を形成した。
【0253】
ここに、ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、三菱レイヨン株式会社製「ダイヤビームUK6035」(商品名)を用い、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートとしては、東亞合成化学工業株式会社製の「アロニックスM315」(商品名)、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートとしては、東亞合成化学工業株式会社製「アロニックスM215」(商品名)を用いた。
【0254】
次いで、光透過層上に、以下の組成を有する紫外線/電子線硬化型ハードコート剤を、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、大気中で、3分間にわたって、60℃に加熱することによって、塗膜中の希釈溶剤を除去し、未硬化のハードコート層を形成した。
【0255】
ここに、反応性基修飾コロイダルシリカは、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、不揮発分は40重量%であった。
【0256】
次いで、99.75重量部のフッ素系溶剤フロリナート(住友スリーエム株式会社製「FC−77」(商品名))に対して、以下の化合物を加え、潤滑剤溶液を調製した.
こうして調製した潤滑剤溶液を、未硬化のハードコート層上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、形成された塗膜を、60℃で、3分間にわたって、乾燥し、未硬化の潤滑剤層を形成した。なお、2−(パーフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカノイルオキシ)エチルメタクリレートは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを、パーフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン酸を用いて、常法に従って、エステル化することにより得た。
【0257】
次いで,窒素気流下で、未硬化のハードコート層と未硬化の潤滑剤層に、電子線を照射して、ハードコート層と潤滑剤層とを同時に硬化させた。電子線照射装置としては、ウシオ電機株式会社製「MinEB」(商品名)を用い、電子線加速電圧を50kV、照射線量を5Mradとした。電子線照射雰囲気中の酸素濃度は80ppmであった。
【0258】
硬化後のハードコート層の膜厚は3.2μm、潤滑剤層の膜厚は約25nmであった。ここに、潤滑剤層の膜厚は、パーフルオロポリエーテル(ダイキン工業株式会社製「デムナム」(商品名))を標準物質として、蛍光X線分析(XRF)により測定した。
【0259】
こうして、ハードコート層および潤滑剤層が形成された光記録ディスクサンプル#1を作製した。
【0260】
実施例2
以下の組成を有する潤滑剤溶液を用いた点を除き、実施例1と同様にして、光記録ディスクサンプル#2を作製した。
【0261】
【0262】
実施例3
実施例1と同様にして、ポリカーボネート基板のグルーブおよびランドが形成された表面上に、反射層、第二の誘電体層、記録層、第一の誘電体層および光透過層を形成した。
【0263】
次いで、光透過層上に、以下の組成を有する紫外線/電子線硬化型ハードコート剤を、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、大気中で、3分間にわたり、60℃に加熱することによって、塗膜中の希釈溶剤を除去し、さらに、塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0264】
ここに、反応性基修飾コロイダルシリカは、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、不揮発分は40重量%であった。
こうして、光記録ディスクサンプル#3を作製した。
【0265】
実施例4
実施例1と同様にして、ポリカーボネート基板のグルーブおよびランドが形成された表面上に、反射層、第二の誘電体層、記録層、第一の誘電体層および光透過層を形成した。
【0266】
次いで、光透過層上に、以下の組成を有する紫外線/電子線硬化型ハードコート剤を、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、大気中で、3分間にわたり、60℃に加熱することによって、塗膜中の希釈溶剤を除去し、さらに、塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0267】
ここに、反応性基修飾コロイダルシリカは、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、不揮発分は40%重量部であった。
こうして、光記録ディスクサンプル#4を作製した。
【0268】
比較例1
実施例1と同様にして、ポリカーボネート基板のグルーブおよびランドが形成された表面上に、反射層、第二の誘電体層、記録層、第一の誘電体層および光透過層を形成した。
【0269】
次いで、光透過層上に、以下の組成を有する紫外線/電子線硬化型ハードコート剤を、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、大気中で、3分間にわたり、60℃に加熱することによって、塗膜中の希釈溶剤を除去し、さらに、塗膜に紫外線を照射して、硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0270】
ここに、反応性基修飾コロイダルシリカは、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、不揮発分は40重量%であった。
こうして、光記録ディスクサンプル#5を作製した。
【0271】
[ディスクサンプルの保存試験]
光記録ディスクサンプル#1ないし#5を、温度80℃、相対湿度85%の環境下において、50時間にわたり、保持し、保存試験を実行した。
【0272】
[ディスクサンプルの表面に対する擦り試験]
保存試験後の光記録ディスク#1ないし#5の表面を、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、擦り、擦り試験を実行した。すなわち、セルロースを主成分として含む旭化成株式会社製の自己接着型の長繊維不織布「ベンコットリントフリーCT−8」(商品名)に、光記録ディスクサンプル#1ないし#5の表面との接触部分を中心として、1.0mlのエタノールを、スポイトで滴下し、こうしてエタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布を、光記録ディスクサンプル#1ないし#5の表面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、自己接着型の長繊維不織布と、光記録ディスクサンプル#1ないし#5の表面とを10往復にわたって、相対的に移動させることにより、光記録ディスクサンプル#1ないし#5の表面を、自己接着型の長繊維不織布で擦った。ここに、セルロースを主成分として含むとは、実質的にセルロース以外の原料を含まないことを意味し、具体的には、長繊維不織布の95%以上がセルロースからなることをいう。
【0273】
[人工指紋液の調製]
微粒子状物質として、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種(中位径:1.6ないし2.3μm)の関東ロームと、分散媒として、1重量部のトリオレインと、希釈剤として、10重量部のメトキシプロパノールとを混合、攪拌して,人工指紋液を調製した。
【0274】
[擬似指紋パターン転写用の原版の作製]
擬似指紋パターン転写用の原版を、以下のようにして作製した。
【0275】
人工指紋液を、マグネティックスターラーを用いて、攪拌しながら、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成した。
【0276】
塗膜が形成された基板を、60℃で、3分間にわたり、加熱して、塗膜中の不要な希釈溶剤であるメトキシプロパノールを完全に除去した。
【0277】
こうして、擬似指紋パターン転写用の原版を得た。
【0278】
[ディスクサンプルの表面への擬似指紋パターンの転写]
直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS Z8901に定められたAA240の研磨紙と同等の性能を有する#240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製した。
【0279】
こうして得られた擬似指紋転写材の研磨された端面を、擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、人工指紋液を、擬似指紋転写材の端面に付着させた。
【0280】
次いで、光記録ディスクサンプル#1の中心から半径方向に40mmの位置にある潤滑剤層の表面に、人工指紋液が付着された擬似指紋転写材の端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、潤滑剤層の表面に、人工指紋液を転写した。
【0281】
光記録ディスクサンプル#2の潤滑剤層の表面、光記録ディスクサンプル#3、#4および#5のハードコート層の表面にも、同様にして、人工指紋液を転写した。
【0282】
[光入射面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合の測定]
保存試験および擦り試験後の光記録ディスクサンプル#1ないし#5のハードコート層の表面に転写した人工指紋液の状態を、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製「VK−8510」(商品名))を用いて、観察し、人工指紋液の画像を、プリンター(株式会社キーエンス製「VH−P40」(商品名))を用いて、出力した。
【0283】
出力された画像を、コンピュータ内に取り込み、三谷商事株式会社製の画像処理解析ソフトWin ROOFを用いて、5μm以上の直径を有する人工指紋液の液滴の全面積に対する面積割合(%)を測定した。ここに、人工指紋液の液滴の直径は、光入射面である潤滑剤層の表面あるいはハードコート層の表面に付着した人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、潤滑剤層の表面あるいはハードコート層の表面に付着した人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義した。
【0284】
測定結果は、表1に示されている。
【0285】
[光入射面に付着した人工指紋液の液滴の直径の測定]
同様に、画像処理解析ソフトWin ROOFを用いて、潤滑剤層の表面あるいはハードコート層の表面に付着している人工指紋液の液滴の直径の最大値を測定した。
【0286】
測定結果は、表1に示されている。
【0287】
[光入射面に付着した人工指紋液の液滴の円との類似性の測定]
同様に、画像処理解析ソフトWin ROOFを用いて、20μm以上の直径を有する人工指紋液の液滴の周囲長さLと面積Sを測定し、4π×S/L2によって、人工指紋液の液滴の円との類似性を評価した。
【0288】
測定結果は、表1に示されている。
【0289】
[ディスクサンプルに対するトラッキング制御試験]
保存試験および擦り試験後に人工指紋液を付着させた光記録ディスクサンプル#1ないし#5を、順次、パルステック工業株式会社製の光記録媒体評価装置「DDU1000」(商品名)にセットし、波長が405nmの青色レーザ光を、光記録ディスクサンプルに刻まれたトラックの再生用レーザ光として用い、NA(開口数)が0.85の対物レンズを用いて、レーザ光を、光透過層を介して、集光し、以下の条件で、各光記録ディスクサンプルの中心から半径方向の40mmに位置するトラックに、レーザ光を追従させるように、トラッキング制御を試み、正常なトラッキング制御が可能であるか否かを判定した。
【0290】
線速度:5.3m/秒
レーザーパワー:0.30mW
トラッキングエラー信号生成方法:プッシュプル法
トラッキング制御を、30秒間、行う試験を、5回にわたって、実行し、この間に、3回以上、トラックの追従ができなかったものを、正常なトラッキング制御が不可能であると判定した。
【0291】
試験結果は、表1に示されている。表1において、「○」は、正常なトラッキング制御が可能であった場合を示し、「×」は、正常なトラッキング制御が不可能であった場合を示している。
【0292】
【表1】
表1に示されるように、光記録ディスクサンプル#1ないし#4の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液の液滴が占める面積割合は、それぞれ、8.3%、11.9%、14.9%および29.5%で、人工指紋液の占める面積割合が30%以下であった光記録ディスクサンプル#1ないし#4においては、正常なトラッキング制御が可能であったのに対し、光記録ディスクサンプルの表面の単位面積当たりに占める人工指紋液の面積割合が59.6%で、人工指紋液の占める面積割合が30%を越えた光記録ディスクサンプル#5においては、正常なトラッキング制御が不可能であることが判明した。
【0293】
これは、光記録ディスクサンプル#1においては、ハードコート層の表面に、活性エネルギー線硬化性のフッ素系化合物を主成分として含み、良好な保存特性を有する潤滑剤層が形成されているため、その結果、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたって、光記録ディスクサンプル#1を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクサンプル#1の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させた場合でも、光記録ディスクサンプル#1の表面に、人工指紋液がほとんど付着することがなく、一方、光記録ディスクサンプル#2においても、ハードコート層の表面に、活性エネルギー線硬化性のシリコーン化合物を主成分として含む潤滑剤層が形成されており、その結果、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスクサンプル#2を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクサンプル#2の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させた場合でも、人工指紋液の多くが、光記録ディスクサンプル#2の表面に付着することがなく、その結果、光記録ディスクサンプルの光入射面に付着した人工指紋液の影響を受けることなく、正常にトラッキング制御を実行することができたためと考えられる。
【0294】
また、光記録ディスクサンプル#3および#4においては、ハードコート層の表面に、潤滑剤を含む潤滑剤層は形成されていないが、ハードコート層自体が、潤滑剤を含んでいるため、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたり、光記録ディスクサンプル#3および#4を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクサンプル#3および#4の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させた場合においても、人工指紋液の多くが、光記録ディスクサンプル#3および#4の表面に付着することがなく、その結果、正常なトラッキング制御が可能であったのに対して、光記録ディスクサンプル#5においては、ハードコート層の表面に、潤滑剤を含む潤滑剤層が形成されておらず、また、ハードコート層が潤滑剤を含んでいないため、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたり、光記録ディスクサンプル#5を保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクサンプル#5の表面を擦り、この後に、人工指紋液を付着させた場合に、人工指紋液の多くが光記録ディスクサンプル#5の表面に付着し、その結果、表面に付着した人工指紋液によって、光記録ディスクサンプル#5のトラックの読み取りが妨げられ、正常なトラッキング制御ができなかったものと考えられる。
【0295】
光記録ディスクサンプル#1ないし#5の表面に付着させた人工指紋液は、人間の汗や皮脂、すなわち、指紋を構成する液体と実質的に同じ物性を有しているから、人工指紋液に代えて、光記録ディスクサンプル#1ないし#5の光入射面に、指紋を付着させた場合にも、同様の結果が得られると考えられる。
【0296】
したがって、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたり、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクの表面を擦り、この後に、光記録ディスクの光入射面に、指紋を付着させた場合において、正常なトラッキング制御を可能とするためには、光記録ディスクの光入射面が、光記録ディスクの光入射面に付着した人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有している必要があることが判明した。
【0297】
また、表1に示されるように、光記録ディスクサンプル#1ないし#4の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値は、それぞれ、29.6μm、51.3μm、69.8μmおよび81.3μmで、人工指紋液の液滴の直径が82μm以下であった光記録ディスクサンプル#1ないし#4においては、正常なトラッキング制御が可能であったのに対し、光記録ディスクサンプル#5の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値は、光記録ディスクサンプル#5の表面に付着した人工指紋液の多くが、人工指紋液の液滴同士が繋がり合う状態で存在していたため、測定することができず、人工指紋液の直径の最大値を測定することができなかった光記録ディスクサンプル#5においては、正常なトラッキング制御が不可能であることが判明した。
【0298】
したがって、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたり、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクの表面を擦り、この後に、光記録ディスクの光入射面に、指紋を付着させた場合において、正常なトラッキング制御を可能とするためには、光記録ディスクの光入射面が、光記録ディスクの光入射面に付着した人工指紋液の直径の最大値が82μm以下になるような表面特性を有している必要があることが判明した。
【0299】
さらに、表1に示されるように、光記録ディスクサンプル#1ないし#3の表面に付着した人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係4πS/L2の平均値が、それぞれ、0.96、0.97、0.79および0.67で、人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係4πS/L2の平均値が、0.67以上である光記録ディスクサンプル#1ないし#4においては、正常なトラッキング制御が可能であったのに対して、光記録ディスクサンプル#5の表面に付着した人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係4πS/L2の平均値は、光記録ディスクサンプル#5の表面に付着した人工指紋液の多くが、人工指紋液の液滴同士が繋がり合う状態で存在していたため、測定することができず、人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係を測定することができなかった光記録ディスクサンプル#5においては、正常なトラッキング制御が不可能であることが判明した。
【0300】
したがって、温度80℃、相対湿度85%の環境下で、50時間にわたり、光記録ディスクを保存した後に、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、光記録ディスクの表面を擦り、この後に、光記録ディスクの光入射面に、指紋を付着させた場合において、正常なトラッキング制御を可能とするためには、光記録ディスクの光入射面が、光記録ディスクの光入射面に付着した人工指紋液の液滴の周囲長と面積との関係4πS/L2の平均値が0.67以上になるような表面特性を有している必要があることが判明した。
【0301】
上述のとおり、保存試験および擦り試験を組み合わせた試験は、実際の使用環境において、光記録ディスクが、長期間にわたって、繰り返し、使用され、あるいは、長期間にわたって、保存された場合を想定して試験されたものであるから、光記録ディスクサンプル#1ないし#4においては、実際の使用環境下で、その光入射面に、指紋が付着した場合にも、光入射面に付着した指紋によって、光記録ディスクのトラックの読み取りが妨げられることがなく、正常に、トラッキング制御を実行し得ることが判明した。
【0302】
本発明は、以上の実施態様および実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0303】
たとえば、図1および図2に示された実施態様においては、光記録ディスク1の光入射面を構成する潤滑剤層9の表面は、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスク1を保存し、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、潤滑剤層9の表面を擦った後に、潤滑剤層9の表面に、人工指紋液を付着させたときに、潤滑剤層9の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が30%以下になる表面特性、潤滑剤層9の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下になる表面特性、および、人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすといった表面特性を有し、図3および図4に示された実施態様においては、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、光記録ディスク10を保存し、エタノールを含ませた自己接着型の長繊維不織布で、10往復にわたって、ハードコート層8の表面を擦った後に、ハードコート層8の表面に、人工指紋液を付着させたときに、ハードコート層8の表面の単位面積当たりに付着した人工指紋液が占める面積割合が30%以下になる表面特性、ハードコート層8の表面に付着した人工指紋液の液滴の直径の最大値が82μm以下になる表面特性、および、人工指紋液の液滴の面積と周囲長とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有しているが、光記録ディスク10の光入射面が、これら表面特性のうち、2以上の表面特性を備えていてもよい。
【0304】
また、図1および図2に示された実施態様においては、光記録ディスク1は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成され、相変化膜によって形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8と、ハードコート層8の表面上に形成された潤滑剤層9を備え、図3および図4に示された実施態様においては、光記録ディスク10は、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8とを備えているが、光記録ディスク1が、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成され、相変化膜によって形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8と、ハードコート層8の表面上に形成された潤滑剤層9を備え、光記録ディスク10が、基板2と、基板2の表面上に形成された反射層3と、反射層3の表面上に形成された第二の誘電体層4と、第二の誘電体層4の表面上に形成された記録層5と、記録層5の表面上に形成された第一の誘電体層6と、第一の誘電体層6の表面上に形成された光透過層7と、光透過層7の表面上に形成されたハードコート層8とを備えていることは必ずしも必要でなく、相変化膜によって形成された記録層5に代えて、モノメチンシアニン系色素や、ポルフィリン系色素などの有機色素を含む記録層を備えていてもよく、さらには、Si、Ge、Sn、Mg、In、Zn、BiおよびAlよりなる群から選ばれる元素を主成分として含む第一の記録層と、Cuを主成分として含み、第一の記録層の近傍に設けられた第二の記録層を備えていてもよい。
【0305】
また、図1および図2に示された実施態様ならびに図3および図4に示された実施形態においては、光記録ディスク1、10は、ハードコート層8を備えているが、ハードコート層8を設けることなく、ハードコート剤組成物を含む光透過層7を形成し、光透過層7によって、光記録ディスクを保護するようにしてもよく、その場合には、光透過層7に、潤滑剤を含有させてもよいし、光透過層7の表面上に、潤滑剤層9を形成してもよい。
【0306】
【発明の効果】
本発明によれば、光記録ディスクのレーザ光の入射面に、指紋が付着した場合にも、トラッキング制御特性が低下することがなく、データを記録し、再生することができる光記録ディスクを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図である。
【図2】図2は、図1のAで示された部分の略拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる光記録ディスクの略斜視図である。
【図4】図4は、図3のBで示された部分の略拡大断面図である。
【符号の説明】
1 光記録ディスク
2 基板
2a グルーブ
2b ランド
3 反射層
4 第二の誘電体層
5 記録層
6 第一の誘電体層
7 光透過層
8 ハードコート層
9 潤滑剤層
10 光記録ディスク
Claims (13)
- 少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、前記エタノールを含ませた前記自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、前記自己接着型の長繊維不織布と、前記光入射面とを10往復にわたって、相対的に移動させて、前記自己接着型の長繊維不織布で、前記光入射面を擦り、この後に、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させたときに、前記光入射面の単位面積当たりに付着した前記人工指紋液の占める面積割合が30%以下になるような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスク。
- 少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、前記エタノールを含ませた前記自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、前記自己接着型の長繊維不織布と、前記光入射面とを10往復にわたって、相対的に移動させて、前記自己接着型の長繊維不織布で、前記光入射面を擦り、この後に、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させたときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の直径の最大値(前記人工指紋液の液滴の直径は、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。)が82μm以下であるような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスク。
- 少なくとも、基板と、前記基板上に形成された少なくとも一層の記録層と、前記記録層上に形成された光透過層とを備えた光記録ディスクであって、温度80℃、相対湿度85%の環境下に、50時間にわたって、保存した後に、セルロースを主成分として含む自己接着型の長繊維不織布に、エタノールを含ませ、前記エタノールを含ませた前記自己接着型の長繊維不織布を、レーザー光が入射する光入射面に、荷重4.9N±1.0N/cm2の圧力で押圧し、前記自己接着型の長繊維不織布と、前記光入射面とを10往復にわたって、相対的に移動させて、前記自己接着型の長繊維不織布で、前記光入射面を擦り、この後に、0.4重量部のJIS Z8901に定められた試験用粉体1第11種の関東ロームと、1重量部のトリオレインと、10重量部のメトキシプロパノールを混合、攪拌して、調製された人工指紋液を、約1mlを採取し、1.1mmの厚さおよび120mmの直径を有するポリカーボネート基板を、3秒間にわたって、500rpmで回転させ、次いで、3秒間にわたって、250rpmで回転させて、前記人工指紋液を、前記ポリカーボネート基板上に、スピンコーティング法により、塗布して、塗膜を形成し、60℃で、3分間にわたり、加熱して、擬似指紋パターン転写用の原版を作製し、直径12mmのシリコーンゴム栓の端面を、JIS R6252に規定された基材Cw、研磨材A、粒度P240の研磨紙を用いて、一様に研磨して、擬似指紋転写材を作製し、前記擬似指紋転写材の研磨された前記端面を、前記擬似指紋パターン転写用の原版に、荷重29Nで、10秒間にわたって、押し当てて、前記人工指紋液を、前記擬似指紋転写材の前記端面に付着させ、レーザ光が入射する光入射面の中心から半径方向に40mmの位置に、前記人工指紋液が付着した前記擬似指紋転写材の前記端面を、荷重29Nで、10秒間にわたり、押し当てて、前記人工指紋液を前記光入射面に付着させたときに、20μm以上の直径(前記人工指紋液の液滴の直径は、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴が真円であると仮定したときに、前記光入射面に付着した前記人工指紋液の液滴の面積と等しい面積を有する真円の直径として定義される。)の前記人工指紋液の液滴の周囲長と面積とが、平均値で、4π×面積/(周囲長)2 ≧0.67の関係を満たすような表面特性を有していることを特徴とする光記録ディスク。
- 前記光透過層上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層上に形成された潤滑剤層を備え、前記潤滑剤層の表面によって、前記光入射面が構成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
- 前記潤滑剤層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として、含んでいることを特徴とする請求項4に記載の光記録ディスク。
- 前記光透過層上に形成されたハードコート層を備え、前記ハードコート層が潤滑剤を含有し、前記ハードコート層の表面によって、前記光入射面が構成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
- 前記ハードコート層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいることを特徴とする請求項6に記載の光記録ディスク。
- 前記光透過層と前記ハードコート層の総厚が、70ないし150μmであることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
- 前記光透過層上に形成された潤滑剤層を備え、前記潤滑剤層の表面によって、前記光入射面が構成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
- 前記潤滑剤層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を主成分として、含んでいることを特徴とする請求項9に記載の光記録ディスク。
- 前記光透過層が潤滑剤を含有し、前記光透過層の表面によって、前記光入射面が構成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
- 前記光透過層が、活性エネルギー線硬化性のシリコーン系化合物および/またはフッ素系化合物を含んでいることを特徴とする請求項11に記載の光記録ディスク。
- 前記記録層が、青色レーザ光を用いて、データの記録および再生が可能に構成されたことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003175130A JP2005011444A (ja) | 2003-06-19 | 2003-06-19 | 光記録ディスク |
US10/834,105 US7132146B2 (en) | 2003-05-09 | 2004-04-29 | Optical recording medium |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003175130A JP2005011444A (ja) | 2003-06-19 | 2003-06-19 | 光記録ディスク |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005011444A true JP2005011444A (ja) | 2005-01-13 |
Family
ID=34098421
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003175130A Pending JP2005011444A (ja) | 2003-05-09 | 2003-06-19 | 光記録ディスク |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005011444A (ja) |
-
2003
- 2003-06-19 JP JP2003175130A patent/JP2005011444A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4590849B2 (ja) | ハードコート剤組成物及びこれを用いた光情報媒体 | |
JP4779293B2 (ja) | ハードコート剤組成物及びこれを用いた光情報媒体 | |
TWI240923B (en) | Optical information medium and its evaluation method | |
US7338695B2 (en) | Method for evaluating optical information medium and optical information medium | |
JP2005135550A (ja) | 光情報媒体 | |
US7132146B2 (en) | Optical recording medium | |
JP2004152418A (ja) | 光情報媒体 | |
EP1480061A1 (en) | Article with composite hard coat layer and method for forming composite hard coat layer | |
JP4496766B2 (ja) | 保護層の形成方法及び光情報媒体の製造方法 | |
TWI338892B (en) | Optical information medium and method for manufacturing the same | |
TW200415639A (en) | Optical recording disk, method for manufacturing optcial recording disk and optical recording and reproducing method for optical recording disk | |
JP2005011444A (ja) | 光記録ディスク | |
JP2005011446A (ja) | 光記録ディスク | |
JP2005011443A (ja) | 光記録ディスク | |
JP2005011445A (ja) | 光記録ディスク | |
JP2003260761A (ja) | 複合ハードコート層付き物体及び複合ハードコート層の形成方法 | |
JP2005011442A (ja) | 光記録ディスク | |
JP2005011441A (ja) | 光記録ディスク | |
JP2004335021A (ja) | 光記録ディスク | |
JP2005011440A (ja) | 光記録ディスク | |
JP2008287883A (ja) | 光情報媒体 | |
JP2005011447A (ja) | 光記録ディスク | |
JP4794116B2 (ja) | 光情報媒体 | |
JP4185496B2 (ja) | 光情報媒体の製造方法 | |
JP2004055093A (ja) | 光情報媒体用の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びこれを用いた光情報媒体 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060612 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20080729 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080826 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090120 |