JP4793520B2 - 無色重合ロジンエステルの製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無色重合ロジンエステルの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガムロジン、ウッドロジンまたはトール油ロジンから得られる重合ロジンのエステル化物は、顔料分散性、相溶性、粘・接着力などの特性に優れているため、印刷インキ、塗料、粘・接着剤などの広範な分野においてバインダーや添加剤として賞用されている。しかしながら、これらの外観は、一般的に黄色〜褐色であり、ガードナー色数で7〜11程度である。このような色調の劣る重合ロジンエステルを前記用途に使用した場合には、印刷インキや塗料の色相が変化したり、粘・接着剤として黄味を帯びるなど、それらの商品価値を低減させる不利がある。
【0003】
そのため、これら用途において、無色の重合ロジンエステルの開発要請がある。しかしながら、本出願人の知る限りでは、このような問題点を解決できる無色重合ロジンエステルは未だに開発上市されていないのが実情である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の重合ロジンエステルが有する諸特性を保持し、しかも当該色調を顕著に改善した無色の重合ロジンエステルを与えることのできる、新規な製造法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来の重合ロジンエステルに見られる前記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、原料ロジンとして特定のロジンを用い、これを重合した後、エステル化し、更に水素化することにより、上記課題を解決しうる無色の重合ロジンエステルを収得しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、精製ロジンを重合してなる精製重合ロジン(1)をアルコールでエステル化し、次いで該エステル(2)を水素化することを特徴とする無色重合ロジンエステルの製造法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明では、第一に、出発原料であるロジンとして、精製ロジン(精製ガムロジン、精製ウッドロジン、精製トール油ロジン)を使用することが必須である。ここで精製とは、出発原料である未精製ロジンに含まれていた過酸化物から生起したと考えられる高分子量物、および該ロジンにもともと含まれている不ケン化物を除去することを意味する。具体的には蒸留、再結晶、抽出等の操作を行なえばよく、工業的には蒸留による精製が好ましい。蒸留による場合は、通常は温度200〜300℃、圧力130〜1300Paの範囲から蒸留時間を考慮して適宜選択される。再結晶の場合は、例えば未精製ロジンを良溶媒に溶解し、ついで溶媒を留去して濃厚な溶液となし、この溶液に貧溶媒を添加することにより行なうことができる。良溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、低級アルコール、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等の酢酸エステル類等が挙げられ、貧溶媒としてはn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタン等が挙げられる。更に前記精製は未精製ロジンをアルカリ水を用いてアルカリ水溶液となし、生じた不溶性の不ケン化物を有機溶媒により抽出したのち水層を中和して、精製ロジンを得ることもできる。
【0008】
本発明では、前記の精製ロジンを重合して、精製重合ロジン(1)を得る工程が必須とされる。かかる重合反応の条件は、格別に限定されるものではなく、従来公知の条件から適宜に選択して決定される。たとえば、精製ロジンを硫酸、フッ化水素、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、四塩化チタン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体スルホン化物等の触媒を含むトルエン、キシレン、ハロゲン化炭化水素等の溶媒中、温度40〜160℃程度で、1〜10時間程度反応させる方法等があげられる。当該重合反応が終了した後、必要に応じて、当該重合反応物から使用した溶剤、触媒および未反応精製ロジン並びに分解物を除去することにより、精製重合ロジン(1)を得ることができる。触媒除去方法としては、たとえば水洗、ろ過などを採用でき、未反応精製ロジンおよび分解物の除去方法としては、減圧蒸留を採用できる。上記のようにして得られる精製重合ロジン(1)の色調(ガードナー色数)は、4〜7程度であり、この水準では無色や淡色とは言い難いものである。
【0009】
こうして得られる精製重合ロジン(1)は、一般的に、未反応物としての精製ロジン(単量体)、これが二量化したダイマー成分、更にはダイマー成分より大きい分子量を持つ成分などから構成された混合物である。精製重合ロジン(1)中の重合物の含有率は、重合反応時の反応温度、反応時間、触媒種、および重合反応物から未反応精製ロジンを除去する条件等により異なるため、所望の重合ロジン含有率となるよう反応条件等を適宜に選択できる。本発明で用いる精製重合ロジン(1)中の重合物含有率は、格別の限定はされず、最終的に得られる無色重合ロジンエステルの用途に応じて決定すればよい。通常は10〜85重量%程度、好ましくは20〜80重量%である。
【0010】
本発明の製造法では、前記の精製重合ロジン(1)をアルコールでエステル化する工程が必須とされる。当該エステル化反応においては、通常の条件をそのまま採用でき、例えば、不活性ガス気流下に精製重合ロジン(1)と以下のようなアルコールとを通常150〜300℃に加熱し、生成水を系外に除去することにより行なえばよい。当該アルコールとしては、特に限定はされないが、たとえばn−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコールのような1価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコールがあげられる。尚、当該反応に際しては、必ずしもエステル化触媒を必要としないが、反応時間の短縮のために酢酸、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒、水酸化カルシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物等を使用することもできる。また、当該工程において、必要に応じて酸化防止剤を用いることもできる。
【0011】
こうして得られた精製重合ロジンエステル(2)は、通常は色調(ガードナー色数)5〜8程度のものである。
【0012】
本発明の製造法では、最終工程として、前記の精製重合ロジンエステル(2)を水素化する工程が必須とされる。該水素化反応に際しては、公知の水素化反応条件を適宜に選択できる。即ち、水素化触媒の存在下に通常1〜25MPa、好ましくは5〜20MPaの水素加圧下で、精製重合ロジンエステル(2)を加熱することにより行なう。水素化触媒としては、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、ルテニウムカーボン、白金カーボンなどの担持触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物等、各種公知のものを例示しうる。特に好ましくは、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたは白金系触媒である。該触媒の使用量は、精製重合ロジンエステル(2)に対して通常0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%であり、反応温度は100〜300℃、好ましくは150〜290℃である。
【0013】
本製造法により得られた無色重合ロジンエステルは、色調(ガードナー色数)が1以下、ハーゼン色数で300〜30程度、好ましくは200〜30である。無色重合ロジンエステルの軟化点、分子量および酸価は、主としてその構成成分であるアルコール種に依存するため、これらの範囲を格別に限定することはできないが、当該用途に応じ適宜にそれらの範囲を決定すればよい。また当該無色重合ロジンエステルの軟化点は、通常は100〜175℃程度、好ましくは130〜170℃であり、重量平均分子量(ポリスチレン換算)は1000〜3000程度、好ましくは1500〜2500であり、酸価は10〜30mgKOH/g程度、好ましくは10〜20mgKOH/gである。
【0014】
なお、本発明の製造法で得られた無色重合ロジンエステルには、適宜にフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤など各種の添加剤を添加することができる。無色重合ロジンエステルは、そのままの形態で、または適宜に溶媒中に分散させたディスパージョンやエマルジョンの形態で、前記の如き各種用途に好適に使用できる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の重合ロジンエステルの特性(顔料分散性、相溶性、粘・接着性など)を保持し、しかもその色調および加熱時の色調安定性を顕著に改善した、無色の重合ロジンエステルを提供できる。
【0016】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、各例中、%は重量基準である。
【0017】
実施例1
(1)精製
酸価170.0mgKOH/g、軟化点78℃、色調ガードナー6の未精製ロジン(中国産ガムロジン)を窒素シール下に400Paの減圧下で蒸留し、表1に示す主留を精製ロジンとした。当該精製ロジンは、酸価178.4mgKOH/g、軟化点88℃、色調(ガードナー色数)3の一般恒数を有する。
【0018】
【表1】
Figure 0004793520
【0019】
(2)重合反応
温度計、攪拌機、窒素導入管および減圧装置を備えた反応装置に、(1)で得られた精製ロジン700g、キシレン700g、および重合触媒として塩化亜鉛17.5gを仕込み、140℃で7時間、重合反応を行なった。反応生成物のキシレン溶液1417gを温水500gで洗浄した後、濃塩酸7gおよび温水500gを加えて洗浄した。更に各500gの温水にて2回洗浄した後、液温200℃未満、減圧度1300Paの条件下でキシレンを留去した。更に液温200〜275℃、減圧度400Paの条件下で精製ロジンの分解物及び未反応精製ロジン(計200g)を留去して、酸価135.3mgKOH/g、軟化点146℃、色調(ガードナー色数)6の精製重合ロジン471gを得た。GPC測定により、当該精製重合ロジン中の重合物含有率は71.3%、単量体(精製ロジンの水素化物)は27.1%、分解物は1.6%であることが認められた。
【0020】
(3)エステル化反応
温度計、攪拌機、窒素導入管および減圧装置を備えた反応装置に、(2)で得られた精製重合ロジン230g、グリセリン21.2g、を仕込み、窒素気流下に250℃で2時間および270℃で10時間、エステル化反応を行ない、酸価10.2mgKOH/g、軟化点168℃、色調(ガードナー色数)6の精製重合ロジンエステルを得た。
【0021】
(4)水素化反応
ついでオートクレーブ反応装置に、(3)で得た精製重合ロジンエステル150g、水素化触媒として5%パラジウムカーボン(含水率50%)1.5g、およびシクロヘキサン150gを仕込み、系内の酸素を除去した後、系内を水素にて10MPaに加圧後、撹拌下に260℃まで昇温して、同温度で3時間水素化反応を行ない、酸価17.4mgKOH/g、軟化点148℃、色調(ハーゼン色数)50の無色重合ロジンエステルを得た。
【0022】
実施例2
実施例1(3)において、グリセリン21.2gに代えてペンタエリスリトール25.3gおよびグリセリン1.2gを用いた他は、同様にエステル化反応を行ない、酸価17.3mgKOH/g、軟化点171℃、色調(ガードナー色数)7の精製重合ロジンエステルを得た。ついで、実施例1(4)と同様にして水素化反応を行ない、酸価18.1mgKOH/g、軟化点161℃、色調(ハーゼン色数)80の無色重合ロジンエステルを得た。
【0023】
比較例1(未精製重合ロジンエステルの水素化物)
酸価170.0mgKOH/g、軟化点78℃、色調ガードナー6の未精製ロジン(中国産ガムロジン)を使用し、実施例1(2)〜実施例1(4)と同様の条件で、重合反応、エステル化反応および水素化反応を行い、未精製重合ロジンエステルの水素化物を得た。当該水素化物は、酸価17.5mgKOH/g、軟化点147℃、色調(ガードナー色数)5であった。
【0024】
比較例2(未精製重合ロジンエステルの水素化物)
比較例1と同一の未精製ロジンを使用し、ついで実施例2と同様の条件で重合反応、エステル化反応および水素化反応を行い、未精製重合ロジンエステルの水素化物を得た。当該水素化物は、酸価18.8mgKOH/g、軟化点160℃、色調(ガードナー色数)6であった。
【0025】
(性能評価)
各実施例および比較例にて得た各種の重合ロジンエステルを以下の条件にて性能評価した。結果は表2に示す。
(加熱安定性)
内径1.5cm、高さ15cmの試験管にサンプル10gを入れ、蓋をしないまま200℃の循風乾燥器に静置して経時による色調(ガードナー色数)の変化を観察した。
【0026】
【表2】
Figure 0004793520

Claims (7)

  1. 精製ロジンを重合してなる精製重合ロジン(1)をアルコールでエステル化し、次いで該エステル(2)を水素化することを特徴とする無色重合ロジンエステルの製造法。
  2. 精製重合ロジン(1)の色調(ガードナー色数)が4〜7である請求項1記載の製造法。
  3. 精製重合ロジン(1)中の重合物含有率が10〜85重量%である請求項1または2記載の製造法。
  4. 精製重合ロジンエステル(2)の色調(ガードナー色数)が5〜8である請求項1〜3のいずれかに記載の製造法。
  5. 水素化条件が、水素圧1〜25MPaであり、かつ温度100〜300℃である請求項1〜4のいずれかに記載の製造法。
  6. 水素化触媒がパラジウム、ロジウム、ルテニウムおよび白金系触媒からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の製造法。
  7. 無色重合ロジンエステルの色調(ガードナー色数)が1以下である請求項1〜6のいずれかに記載の製造法。
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