JP4792445B2 - 燃料電池セパレータ - Google Patents

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本発明は、板状に形成された予備成形体を、成形型を用いてプレス成形することによって作成される燃料電池セパレータに関するものである。
燃料電池セパレータとは、MEA(膜・電極接合体)を適切に燃料電池セル(燃料電池セパレータの間にMEAを挟み込んだ単位体)内に保持するとともに前記電気化学反応に必要な燃料(水素)及び空気(酸素)を供給する役割、さらには燃料電池として機能するための電気化学反応により得られた電子を損失なく集電する役割等を担っている。これらの役割を担うために燃料電池セパレータには、1.機械的強度、2.可撓性、3.導電性、4.成形加工性、5.ガス不透過性という特性が要求される。
従来、この種の燃料電池セパレータの材料としては、耐食性に優れたものとする点から黒鉛を主原料とするものが一般的であり、開発の初期段階では、焼結カーボンを切削することによって燃料電池セパレータを製作していた。しかしながら、コスト的な問題から近年ではフェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と黒鉛とのコンパウンドを成形材料として作成し、そのコンパウンドを圧縮成形することによって燃料電池セパレータとする手段が採られていた。成形材料のコンパウンドは、通常、粉末の状態で供給されるので、一旦樹脂の反応しない低温で予備成形体を作成する一次成形を行ってから、二次成形であるプレス成形型に送られるようになる。このように、一次成形によって一旦予備成形体を作ってから二次成形を行うことで、前記成形加工性に優れる燃料電池セパレータやその製造方法としては特許文献1において開示されたものが知られている。
一方、燃料電池セパレータの主原料である黒鉛として膨張黒鉛を用いるものがあり、例えば特許文献2において開示されたものが知られている。膨張黒鉛を用いた燃料電池セパレータでは、膨張黒鉛が本来有する耐熱性、耐食性、電気特性(導電性)、熱伝導特性等を有効に利用して所定の電池性能を発揮させることができる手段として望ましいものである。つまり、前記導電性に優れるものとすることができる。そして、数百枚〜千枚といった多量のセパレータを用いる自動車用等として求められる軽量でコンパクトな燃料電池とするには、セパレータ単体での厚さを、必要な機能を損なうことなく極力薄くすることが必要になる。
しかしながら、膨張黒鉛を主原料とする従来の燃料電池セパレータでは、薄くすると割れ易くなるとともに、ガスを透過し易くなるので、前述の機械的強度、ガス不透過性の各点で難点がある。
特開2004−216756号公報 特開2000−231926号公報
そこで本発明の目的は、導電性と成形加工性とに優れるものとなるよう、膨張黒鉛を主原料とする予備成形体のプレス成形によって作成される燃料電池セパレータを、その予備成形体を抄造法を用いて作成するように工夫することにより、機械的強度、可撓性、ガス不透過性の各特性が改善され、自動車用等に好適となる軽量、コンパクト化が可能となるようにする点にある。
請求項1に係る発明は、板状に形成された予備成形体14を、成形型を用いてプレス成形することによって作成される燃料電池セパレータにおいて、
前記予備成形体14が、膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いての抄造によって得られる第1シート14Aの一対の間に、黒鉛に熱可塑性樹脂をその材料比率が5〜20%の範囲で塗して成る第2シート14Bが介装されるサンドイッチ構造に構成されていることを特徴とするものである。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の燃料電池セパレータにおいて、前記第1シート14Aは、前記抄造後において含浸される熱可塑性樹脂を有していることを特徴とするものである。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の燃料電池セパレータにおいて、前記第1シート14Aに用いられる前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であることを特徴とするものである。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の燃料電池セパレータにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の含浸率が5%以上の範囲、好ましくは5〜35%の範囲に設定されていることを特徴とするものである。
請求項5に係る発明は、請求項2〜4のうちの何れか一項に記載の燃料電池セパレータにおいて、前記第1シートに用いられる膨張黒鉛の材料比率が60〜90%に設定されていることを特徴とするものである。
請求項6に係る発明は、請求項3〜5のうちの何れか一項に記載の燃料電池セパレータにおいて、前記ポリプロピレン樹脂には黒鉛が含有されていることを特徴とするものである。
請求項7に係る発明は、請求項3〜5のうちの何れか一項に記載の燃料電池セパレータにおいて、ポリプロピレン樹脂の含浸後において塗される黒鉛を有することを特徴とするものである。
請求項8に係る発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の燃料電池セパレータにおいて、前記繊維質充填材は、炭素繊維或いはアクリル繊維を有するものであることを特徴とするものである。
請求項9に係る発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の燃料電池セパレータにおいて、前記第2シート14Bに用いられる前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項において説明するが、予備成形体が、抄造による第1シートの二枚の間に材料比率5〜20%の熱可塑性樹脂と黒鉛とを主原料とする第2シートを挟む計三層のサンドイッチ構造のもの、即ち、機械的、電気的特性に優れ、薄肉で、かつ、固有抵抗値等の特性のばらつきが少なく、大量生産が容易で製造コストも有利となる一対の第1シートの間に、成形性に優れる第2シートが挟まれる構成となっている。その結果、導電性と成形加工性とに優れるものとなるよう、膨張黒鉛を主原料とする予備成形体のプレス成形によって作成される燃料電池セパレータを、その予備成形体を抄造法を用いて作成する抄造シートが表面に位置するサンドイッチ構造に工夫することにより、機械的強度、可撓性、ガス不透過性の各特性が改善され、自動車用等に好適となるように軽量、コンパクト化が可能な燃料電池セパレータを提供することができる。また、添加される樹脂が熱可塑性のものであるから、容易に再利用が可能であって、優れたリサイクル性を有する利点もある。
請求項2の発明によれば、膨張黒鉛を主原料とする抄造によって成る第1シートに熱可塑性樹脂を後から含浸させてあるので、熱可塑性樹脂が配合されることによる一般的な作用、効果に加えて、抄造されたシート状体における隙間に熱可塑性樹脂が入り込んで隙間を埋めるようになり、ガス透過性やかさ密度に好影響を与えてさらなる性能向上が可能となる利点がある。この場合、請求項3のように、熱可塑性樹脂をポリプロピレン樹脂とすれば、絶縁性・耐水性・耐薬品性等に優れるというより好ましい作用、効果が追加される。
請求項4のように、ポリプロピレン樹脂の含浸率を5%、好ましくは5〜35%の範囲に設定したり、請求項5のように、膨張黒鉛の材料比率を60〜90%に設定することにより、接触抵抗30mΩ・cm以下 、固有抵抗30mΩ・cm以下、曲げ強度60MPa以上、曲げ歪1%以上、ガス透過係数2×10−9mol・m/m・s・MPa以下の各特性の目標値をクリアすることができて好都合である(図6参照)。請求項6のように、黒鉛が含有されているポリプロピレン樹脂を後含浸したものや、請求項7のように、ポリプロピレン樹脂の含浸後において塗される黒鉛を有するものでは、前述の各特性値のより高レベル化が可能となる燃料電池セパレータを提供することができる。
請求項8のように、繊維質充填材を、機械的強度の改善に有効な炭素繊維或いはアクリル繊維を有するものとすることができる。また、請求項9のように、第2シートに用いられる熱可塑性樹脂をポリプロピレン樹脂として、ガス透過係数の向上と優れた成形性との双方をより効果的に得ることができるサンドイッチ構造の燃料電池セパレータを提供することができる。
以下に、本発明による燃料電池セパレータの実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1〜図3は、スタック構造の分解斜視図、セパレータの外観正面図、セル構造を示す要部の拡大断面図、図4は別構造の単セルを示す要部の拡大図、図5はセパレータの製造原理例を示す概略の工程図、図6は各種実施例や比較例の特性表を示す図、図7はポリプロピレン含浸率とガス透過係数との関係グラフを示す図である。尚、以下においては「燃料電池セパレータ」を、単に「セパレータ」と略称するものとする。
まず最初に、本発明のセパレータを備えた固体高分子電解質型燃料電池の構成及び動作について、図1〜図3を参照して簡単に説明する。固体高分子電解質型燃料電池Eは、例えばフッ素系樹脂より形成されたイオン交換膜である電解質膜1と、炭素繊維糸で織成したカーボンクロスやカーボンペーパーあるいはカーボンフェルトにより形成され、上記電解質膜1を両側から挟みサンドイッチ構造をなすガス拡散電極となるアノード2及びカソード3と、そのサンドイッチ構造をさらに両側から挟むセパレータ4,4とから構成される単セル5の複数組を積層し、その両端に図示省略した集電板を配置したスタック構造に構成されている。
両セパレータ4は、図2に示すように、その周辺部に、水素を含有する燃料ガス孔6,7と酸素を含有する酸化ガス孔8,9と冷却水孔10とが形成されており、前記単セル5の複数組を積層した時、各セパレータ4の各孔6,7、8,9、10がそれぞれ燃料電池E内部をその長手方向に貫通して燃料ガス供給マニホールド、燃料ガス排出マニホールド、酸化ガス供給マニホールド、酸化ガス排出マニホールド、冷却水路を形成するようになされている。各セパレータ4は、基本の断面形状が角波型となるように表裏に凸条(リブ)11が形成されており、アノード2と各凸条11とが当接することによる燃料ガス流路12、及びカソード3と各凸条11とが当接することによる酸化ガス流路13が形成されている。また、電解質膜1の存在側を内とした場合において、各セパレータ4,4における外向き凸条11の裏側(内側)部分が隣合わされることにより、独立した冷却水通路10に形成することができる。
前記構成の固体高分子電解質型燃料電池Eにおいては、外部に設けられた燃料ガス供給装置から燃料電池Eに対して供給された水素を含有する燃料ガスが上記燃料ガス供給マニホールドを経由して各単セル5の燃料ガス流路12に供給されて各単セル5のアノード2側において電気化学反応を呈し、その反応後の燃料ガスは各単セル5の燃料ガス流路12から燃料ガス排出マニホールドを経由して外部に排出される。同時に、外部に設けられた酸化ガス供給装置から燃料電池Eに対して供給された酸素を含有する酸化ガス(空気)が上記酸化ガス供給マニホールドを経由して各単セル5の酸化ガス流路13に供給されて各単セル5のカソード3側において電気化学反応を呈し、その反応後の酸化ガスは各単セル5の酸化ガス流路13から上記酸化ガス排出マニホールドを経由して外部に排出される。
前述の電気化学反応に伴い、燃料電池E全体としての電気化学反応が進行して、燃料が有する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換することで、所定の電池性能が発揮される。なお、この燃料電池Eは、電解質膜1の性質から約80〜100℃の温度範囲で運転されるために発熱を伴う。そこで、燃料電池Eの運転中は、外部に設けられた冷却水供給装置から燃料電池Eに対して冷却水を供給し、これを前記冷却水路に循環させることによって、燃料電池E内部の温度上昇を抑制している。
尚、セルの構造としては、図4に示す構造のものでも良い。即ち、図4のセルは、各セパレータ4を、その表面が縦横に点状のリブ(所定形状のリブ)11の多数が均等間隔毎に並べられて成るものとして、それらリブ11とアノード2の表面との間に縦横の燃料ガス流路12が形成されるとともに、リブ11とカソード3の表面との間に縦横の酸化ガス流路13が形成される構造のものに構成してある。二次成形S2において、中間層で成形性の良い第2シート14Bが厚みの大きい部分に流れて密度不均一状態に容易に変化できることから、機械的、電気的特性を向上させるべく両端に厚み変化が不得意な第1シート14Aを設ける構成としながらも、従来では困難であったリブ11等の凹凸を有する(厚み分布のある)タイプのセパレータ4の実現を可能としている。
次に、セパレータ4についてその作り方(製造方法)も交えて説明する。セパレータ4の製造方法は、板状に形成された予備成形体を、成形型を用いてプレス成形することによって作成するものであり、図5に示すように、セパレータの形に近似した板状の予備成形体14を作成する一次成形工程S1と、その予備成形体14を成形金型15で加圧して最終形状のセパレータ4を形成する二次成形工程S2とから成る。ここで、セパレータ4の目標とする特性は、接触抵抗が30mΩ・cm以下、固有抵抗が30mΩ・cm以下、曲げ強度が60MPa以上、曲げ歪が1%以上、ガス透過係数が2×10−9mol・m/m・s・MPa以下、厚さ0.15mm以下である。
一次成形工程S1は、図5に示すように、第1シート作成工程dと積層工程cとを有している。第1シート作成工程dは、膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いての抄造によって第1シート14Aを得る工程であり、抄造工程aと後含浸工程bとを有している。積層工程cは、一対の第1シート14,14の上下間に、熱可塑性樹脂に黒鉛粉末を塗して成る第2シート14Bを挟むことで成る三層構造、即ちサンドイッチ構造で、かつ、所定の大きさに形成される予備成形体14を作成する工程である。
抄造工程aは、膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いての抄造によって第1シート14Aを作成する工程であり、主原料である膨張黒鉛(導電材)と繊維質充填材とを所定の配合比率で有する原料を用いて抄造し、それによって予備成形体14用の第1シート14Aを形成する。抄造の本来の意味は「紙の原料をすいて紙を作ること」であるが、ここで言う抄造は『第1シート用の上記材料をすいて第1シートを作ること』である。
後含浸工程bは、抄造工程aによって抄造された第1シート14Aにポリプロピレン樹脂(熱可塑性樹脂の一例)を含浸する工程であり、それによって予備成形体14の構成部品となる状態の第1シート14Aが作成される。積層工程cは、抄造工程a及び後含浸工程bで作成された第1シート14Aの一対の間に、黒鉛(黒鉛粉末等)にポリプロピレン樹脂(熱可塑性樹脂の一例)を塗して成る第2シート14Bが介装された状態、即ち、上下の第1シート14A,14Aと中間の第2シート14Bとの三層によるサンドイッチ構造の予備成形体14を作成する工程である。
二次成形工程S2は、例えば、上金型15aと下金型15bから成る成形金型15を用いて三層構造の予備成形体14をプレスによって加圧することにより、所定の最終形状を呈するセパレータ4を作成する工程である。次に、作り方やその実施例等について説明する。
まず、一次成形工程S1における抄造工程aに関しては、次のようである。炭素繊維3%、アクリル繊維10%、PET繊維5%を配合して成る繊維質充填材を、家庭用ミキサーを用いて離解し、所定のパルプ濃度(例:1%)に調整する。調整後のパルプスラリーに、例えば40μmの膨張黒鉛を82%添加し、さらに水を追加して固形分濃度0.1%に再調整してから、若干のその他の配合材[硫酸バンド、歩留り向上材〔ハイモロックNR11−LH(商品名)〕]を添加して抄紙用原料として抄造(図5参照)し、シート状体の第1シート14Aを得る。尚、この段階で、標準角型シートマシンを用いて加工することにより、坪量70g/mで25cm角シート形状の第1シート14Aを得ることも可能である。
一次成形工程S1における後含浸工程bに関しては、ポリプロピレン樹脂液、或いはポリプロピレンフィルムを加熱溶融させて含浸を行い、予備成形体14用の第1シート14Aを得る。例えば、実施例1におけるポリプロピレン樹脂の含浸量は、含浸後における配合率が20%になるように定められる(5%以上で、好ましくは5〜35%が良い)。抄造による第1シート14Aは、曲げ難い等、成形性にはやや劣る面があるが、優れた機械的及び電気的特性を持っている。
一次成形工程S1における第2シート形成工程は、図示は省略するが、黒鉛粉末(粒径1〜200μm程度が好ましい)にポリプロピレン樹脂をコーティングして樹脂カーボンである第2シート14Bを作成する工程である。樹脂カーボンである第2シート14Bは、機械的特性の点では劣るが成形性には優れている。
二次成形工程S2に関しては、一次成形工程S1によって作成された三層構造の予備成形体14を、170℃の金型を用いて20MPaの面圧で5分間加熱加圧成形し、セパレータ4を得る。この場合(実施例1)のセパレータ4の各種特性は、接触抵抗12mΩ・cm、固有抵抗6mΩ・cm、ガス透過係数5×10−11mol・m/m・s・MPa、曲げ強さ80MPa、曲げ歪2.2%、厚さ0.15mmであった。次に、セパレータ4の各比較例及び各実施例の緒元について述べる(図6参照)。
〔比較例1〕
比較例1によるセパレータは、黒鉛83%、フェノール樹脂17%の材料(樹脂カーボン)による1層構造のものであり、その特性を図6の特性表に示す。尚、樹脂カーボンは強度が低いという特性がある。
〔比較例2〕
比較例2によるセパレータは、第1シート(14A)として、膨張黒鉛粉末82%、炭素繊維3%、アクリル繊維10%、PET繊維5%の原料を使用して抄造法にて作製された抄紙に、ポリプロピレン樹脂20%を後含浸によって添加したシートを用いる。第2シート(14B)として、黒鉛97%とポリプロピレン樹脂3%とを混練した黒鉛粉末を用いる。一対の第1シート(14A)の間に第2シート(14B)を挟み込み170℃で成形を行う。後含浸は、材料比20%のポリプロピレンフィルムを抄紙に溶着させるも良い。
〔比較例3〕
比較例3によるセパレータは、第2シート(14B)用の黒鉛粉末の材料比を、黒鉛75%、ポリプロピレン樹脂25%とした以外は、比較例2のものと同じである。
〔実施例1〕
実施例1によるセパレータは、第2シート(14B)用の黒鉛粉末の材料比を、黒鉛95%、ポリプロピレン樹脂5%とした以外は、比較例2のものと同じである。
〔実施例2〕
実施例2によるセパレータは、第2シート(14B)用の黒鉛粉末の材料比を、黒鉛90%、ポリプロピレン樹脂10%とした以外は、比較例2のものと同じである。
〔実施例3〕
実施例3によるセパレータは、第2シート(14B)用の黒鉛粉末の材料比を、黒鉛85%、ポリプロピレン樹脂15%とした以外は、比較例2のものと同じである。
〔実施例4〕
実施例4によるセパレータは、第2シート(14B)用の黒鉛粉末の材料比を、黒鉛80%、ポリプロピレン樹脂20%とした以外は、比較例2のものと同じである。
図6に示す特性表から、比較例1のものは曲げ強さ、曲げ歪、角欠けの三点で目標値に達せず、比較例2のものは角欠けの点で目標値に達せず、比較例3のものは固有抵抗の点で目標値に達していないことが理解できる。これに対して、第2シート(14B)におけるポリプロピレン樹脂の配合割合が5〜20%の範囲内にある実施例1〜4のものでは、全ての項目で目標値をクリアしていることが理解できる。
図7に、第1シート14Aにおけるポリプロピレン樹脂の後含浸率とガス透過係数との関係グラフが示されている。目詰まりによってガス透過に差が出てくるので、目詰め機能を発揮するポリプロピレン樹脂と抄紙との比率がガス透過係数に大きく影響を及ぼすと考えられる。図7より、ポリプロピレン樹脂含浸率が5%以上であれば目詰まり作用が十分に発揮され、「2×10−9mol・m/m・s・MPa以下」というガス透過係数の目標値を達成できている。ポリプロピレン樹脂含浸率は、好ましくは5〜35%の範囲に設定するのが良いと思われる。
以上説明したように、本発明は、板状に形成された予備成形体を、成形型を用いてプレス成形することによって作成されるセパレータにおいて、予備成形体が、膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いての抄造によって得られる第1シートの一対の間に、黒鉛に熱可塑性樹脂をその材料比率が5〜20%の範囲で塗して成る第2シートが介装されるサンドイッチ構造に構成されていることにより、厚さを0.15mmとした場合において、接触抵抗が30mΩ・cm以下 、固有抵抗が30mΩ・cm以下、曲げ強度60MPa以上、曲げ歪1%以上、ガス透過係数2×10−9mol・m/m・s・MPa以下の各特性値目標をクリヤすることができる。その結果、導電性と成形加工性とに優れるものとなるよう、膨張黒鉛を主原料とする予備成形体のプレス成形によって作成される燃料電池セパレータを、抄造法による二枚の第1シートの間に、樹脂カーボン製の第2シートを挟むサンドイッチ構造のものとする工夫により、機械的強度、可撓性、ガス不透過性の各特性が改善され、自動車用等に好適となる軽量、コンパクト化が可能となるセパレータを提供することができる。
また、機械的、電気的特性に優れる一対の第1シート14Aの間に、成形性に優れる第2シート14Bを挟むサンドイッチ構造としてあるので、上述の各特性を満たすに加えて、シール性(ガス透過係数)のさらなる向上を図りながら成形性も良好なものとなっており、トータル性能により優れる燃料電池セパレータ、及び燃料電池セパレータの製造方法が実現できている。加えて、第1シートや第2シートに加える樹脂として、例えば、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いると、一度硬化させると材料の再利用が不可能になるが、本発明のように熱可塑性樹脂を用いた場合では、再利用が可能となる利点、即ちリサイクル可能になる利点がある。
セパレータ4の作り方としては、第2シート14Bの原料であるポリプロピレン等の熱可塑性樹脂と黒鉛との混合粉末を、第1シート14Aへの吹付けやコーティングによって膜状に形成させることも可能である。そして、その膜状第2シート14B付第1シート14Aの一対を、互いの膜状第2シート14Bが重なり合うように背中合せ状態(反転状態)で重ね合せて加熱加圧(熱プレス)させて圧着一体化させ、結果的に三層(圧着させる前は一時的に4層になる)の予備成形体14を作成して用いる、というものでも良い。
固体高分子電解質型燃料電池のスタック構造を示す分解斜視図 固体高分子電解質型燃料電池のセパレータを示す正面図 単セルの構成を示す要部の拡大断面図 別構造によるセルの構成を示す要部の拡大断面図 セパレータの製造方法を示す原理図 各種実施例及び比較例の特性表を示す図 ポリプロピレン含浸率とガス透過係数との関係グラフを示す図
符号の説明
4 燃料電池セパレータ
14 予備成形体
14A 第1シート
14B 第2シート

Claims (9)

  1. 板状に形成された予備成形体を、成形型を用いてプレス成形することによって作成される燃料電池セパレータであって、
    前記予備成形体が、膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられて成る原料を用いての抄造によって得られる第1シートの一対の間に、黒鉛に熱可塑性樹脂をその材料比率が5〜20%の範囲で塗して成る第2シートが介装されるサンドイッチ構造に構成されている燃料電池セパレータ。
  2. 前記第1シートは、前記抄造後において含浸される熱可塑性樹脂を有している請求項1に記載の燃料電池セパレータ。
  3. 前記第1シートに用いられる前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂である請求項2に記載の燃料電池セパレータ。
  4. 前記ポリプロピレン樹脂の含浸率が5%以上の範囲、好ましくは5〜35%の範囲に設定されている請求項3に記載の燃料電池セパレータ。
  5. 前記第1シートに用いられる膨張黒鉛の材料比率が60〜90%に設定されている請求項2〜4のうちの何れか一項に記載の燃料電池セパレータ。
  6. 前記ポリプロピレン樹脂には黒鉛が含有されている請求項3〜5のうちの何れか一項に記載の燃料電池セパレータ。
  7. ポリプロピレン樹脂の含浸後において塗される黒鉛を有する請求項3〜5のうちの何れか一項に記載の燃料電池セパレータ。
  8. 前記繊維質充填材は、炭素繊維或いはアクリル繊維を有するものである請求項1〜7の何れか一項に記載の燃料電池セパレータ。
  9. 前記第2シートに用いられる前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂である請求項1〜8の何れか一項に記載の燃料電池セパレータ。
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