JP4792013B2 - 硫化水素除去方法およびガス精製装置 - Google Patents
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(ア)一般に硫化鉄や水酸化鉄は使い捨てであり、例えば半年から一年ごとに剤を廃棄し、また新たなものに入れ替える際に多くのコストを要する;
(イ)年間の剤の廃棄量が数十トンオーダーとなることが一般的であり、循環型エネルギー利用というバイオマスの思想に反する;
(ウ)剤の入れ替えの際に、反応性の高い吸着済みの剤が空気に曝されると発火等の事故が起きる虞がある;
などの問題がある。例えば下記特許文献1には、バイオガスよりまず酸化鉄により硫化水素を反応除去し、ついで脱水装置で水蒸気を除去した後、さらに活性炭やゼオライトを充填した補助脱硫装置で硫化メチルやメチルメルカプタンを除去する脱硫装置の発明が記載されているが、剤である酸化鉄を再生処理する観点からの検討はなされていない。
H2S+CO2→COS+H2O (1)
(1)二酸化炭素と硫化水素をともに含有する被処理ガスを、硫化カルボニルの生成を抑制する触媒反応抑制剤として水またはアンモニアを予め吸着させたゼオライトに流通させることにより、前記被処理ガスから硫化水素を除去する硫化水素除去方法;
(2)ゼオライトに吸着させる水分量が、該ゼオライトの乾燥質量の0.2〜3.3重量%である上記(1)に記載の硫化水素除去方法;
(3)被処理ガスに脱水処理を施した後に、前記ゼオライトへの流通を行うことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の硫化水素除去方法;
(4)被処理ガスが、二酸化炭素を5〜60%含有するバイオガスである上記(1)から(3)のいずれかに記載の硫化水素除去方法;
(5)ゼオライトが、A型ゼオライト、X型ゼオライトまたはフェリエライト型ゼオライトである上記(1)から(4)のいずれかに記載の硫化水素除去方法;
(6)ゼオライトの陽イオン種が、第2族元素のイオンである上記(1)から(5)のいずれかに記載の硫化水素除去方法;
(7)陽イオン種がカルシウムイオンである上記(6)に記載の硫化水素除去方法;
(8)ゼオライトのイオン交換サイトには、前記第2族元素のイオンを70%以上含有する複数種類の陽イオン種が存在する上記(6)または(7)に記載の硫化水素除去方法;
を要旨とする。
(9)二酸化炭素と硫化水素をともに含有する被処理ガスより前記硫化水素をゼオライトにより吸着除去する少なくとも二基の吸着塔と、それぞれの吸着塔に再生用ガスを供給して前記硫化水素を吸着したゼオライトを加熱条件下で再生する加熱再生手段と、被処理ガスの導入先を一の吸着塔から他の吸着塔に切り替えるとともに再生用ガスの供給先を前記他の吸着塔から前記一の吸着塔に切り替える切替手段と、を備えるガス精製装置であって、
前記ゼオライトには、アンモニア、または前記ゼオライトの乾燥質量に対し0.2〜3.3重量%の水が、硫化カルボニルの生成を抑制する触媒反応抑制剤として吸着されていることを特徴とするガス精製装置;
を要旨とする。
(10)飽和水蒸気を吸着させた前記ゼオライトを所定の加熱条件下で脱着ガスと接触させることにより前記水分量を調整する上記(2)または上記(2)に従属する(3)〜(8)のいずれかに記載の硫化水素除去方法;
(11)硫化水素を吸着させた前記ゼオライトを、熱スイング吸着方式により再生することを特徴とする上記(1)から(8)または(10)のいずれかに記載の硫化水素除去方法;
(12)前記熱スイング吸着方式によるゼオライトの再生温度を、前記脱着ガスとの接触温度以下とすることを特徴とする上記(10)または上記(10)に従属する(11)に記載の硫化水素除去方法;
によっても上記本発明の目的を達成することができる。
ただし本発明においては、少なくとも二系統の吸着ラインが並列に設けられている限り、系統数は三ライン以上としてもよく、各系統に複数の吸着塔が直列に配設されていてもよい。
吸着塔9a,9bに充填されるゼオライトとは、分子サイズの細孔を多数もつ結晶性のアルミノ珪酸塩の総称であり、狭義には珪素とアルミニウムとが酸素を共有したTO4四面体(T=Si,Al)が結合して三次元ネットワークの骨格をなし、細孔(吸着サイト)に交換可能な陽イオンが存在して他の分子を吸着可能な物質を意味する。また近年では上記T原子としてリン(P),ガリウム(Ga)などのIIB,IVb、Vb族元素を含む物質や、AlPO4など陽イオンを含まないゼオライト類縁化合物も合成されており、本発明はゼオライトおよびゼオライト類縁化合物を総称してゼオライトとよぶ。
aAk+・bBl+・cCm+・(SiO2)12(AlO2)12 (2)
陽イオン種Aのゼオライト中含有率
=当該陽イオン原子数×価数/ゼオライト骨格中のアルミ原子数
=a×k/12 (3)
本発明は、吸着剤として用いるゼオライトの触媒活性を抑制し、硫化水素を飽和状態まで吸着させる間に上記反応式(1)に基づく硫化カルボニルの生成を抑えることを趣旨とするものである。
ゼオライトに対して触媒反応抑制剤を極微量だけ吸着させた場合、硫化水素の飽和吸着力はほとんど低下しない代わりに、硫化カルボニルが上記反応式(1)に基づいて高い頻度で変わらず生成されるため、バイオガスのように二酸化炭素を大量に含む処理ガスを精製する場合、ゼオライトが硫化水素によって破過する前に硫化カルボニルが吸着塔より漏出することとなる。
これに対し、ゼオライトに対して触媒反応抑制剤を大量に吸着させた場合は、硫化カルボニルの生起確率を大幅に低下させることができる反面、硫化水素の吸着可能時間が過少となって吸着ラインA,Bの切り替え頻度が高くなる。一方、TSA方式によってゼオライトを再生するためには所定の冷却時間が必要であるため、破過時間が所定以下となった場合は再生工程がこれに間に合わず、その結果、不完全な再生と吸着ラインA,Bの切り替えとを繰り返すことで徐々に吸着可能時間が短くなり遂には被処理ガスの連続的な精製処理が不可能となるか、または吸着ラインの数を増やす必要がある。
本発明の硫化水素除去方法においては、吸着剤に用いるゼオライトの質量に対し0.2〜3.3wt%の比率で水分を吸着させるとよい。かかる質量比でゼオライトに水分を含有させることが好適であることは、後述する実施例1および2により明らかとなる。また、ゼオライトの触媒活性がその細孔の大小や多寡ではなく吸着サイトに担持されている陽イオン種の種類と量に依存するという知見から、上記水分含有比率はゼオライトの結晶構造型に依存しないことが本発明者らの検討により明らかとなっている。
本発明の硫化水素除去方法の対象とする被処理ガスは硫化水素含有ガスであるが、二酸化炭素をパーセントオーダー、特に10%以上含有する硫化水素含有ガスの場合であっても硫化カルボニルの生成を抑制し、長時間にわたる精製処理が可能であるために本発明の効果を十分に享受することができる。具体的には、上述のようにメタンとともに高濃度の二酸化炭素を含有するバイオガスをその対象とする。本発明にて好適に精製処理されるバイオガスの組成は原料および発生条件により異なるが、微量成分として1〜10000ppmの硫化水素のほか窒素、酸素および飽和水蒸気を含み、かかる微量成分を除く主成分メタンが40〜95%、副成分二酸化炭素が60〜5%の混合比であることが一般的である。
図1で、吸着ラインAにより被処理ガスRAの精製を行う場合、バルブV1,V7,V9,V10のみを開放し、バルブV2,V3,V4,V5,V6,V8を閉止しておく。かかる状態で、配管2および4aを通じて吸着塔9aに導入された被処理ガスRAは、吸着塔9aに充填されたゼオライトを流通することでこれと接触し、含有している硫化水素が除去されて精製ガスとなり配管6aを通じて吸着塔9aより導出される。
(ア)被処理ガスRAの単位時間あたりの流量およびこれに含有する硫化水素の濃度と、ゼオライトの吸着能力および充填量とから求められる被処理ガスRAの通気可能時間に所定の安全率を乗じた切替時間を予め求め、これにしたがってバルブの上記切り替えを行う方法。通気可能時間は、吸着等温線や破過吸着等温線に基づいて求めることができる。
(イ)吸着塔9a,9bに充填されたゼオライトの内部に、硫化水素の到達を視覚的に検知することのできる破過検知剤を埋設し、ゼオライトの破過のタイミングが近づいていること、すなわち吸着ラインを切り替えるべきタイミングが訪れたことを検知する方法。破過検知剤には硫化水素との反応により変色する薬剤を用い、またかかる変色を外部より観察できるよう吸着塔9a,9bには検知窓を設けるとよい。
(ウ)吸着塔9a,9bの二次側に分析計または検知器を連設し、硫化水素が精製ガスに混入したことを迅速に検知してバルブの上記切り替えを行う方法。この場合、精製ガスへの硫化水素の混入、すなわち吸着塔9a,9bの破過が既に生じたことが検知された際に、当該混入した硫化水素がバルブV7,V8を経由して系外に排出されることのないよう、分析計または検知器とバルブV7,V8との間にはそれぞれバックアップ用のゼオライトを設けるとよい。
(エ)後述する再生工程の完了をもって、吸着ラインAとBを切り替える方法。すなわち吸着塔9aまたは9bに充填されたゼオライトがガスパージにより完全に再生された場合に、吸着工程にある吸着塔9bまたは9aに残存する吸着性能の多寡によらず吸着ラインを切り替えることとしてもよい。
吸着ラインBによる硫化水素の吸着除去が行われている間に、吸着塔9aに充填されたゼオライトをTSA方式により再生する。すなわちガス精製装置1は、硫化水素を吸着したゼオライトに加熱された再生用ガスRVを通気するか、またはゼオライトをヒーター等により加熱しつつ常温または加熱された再生用ガスRVを通気してガスパージする加熱再生手段を備えている。
メタンガスを主成分とするバイオガスを被処理ガスRAとする場合、再生工程時のガス組成がメタンの爆発範囲に入らぬよう、再生用ガスRVには、高純度の窒素やアルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましいが、このほか圧縮空気から圧力スイング(PSA)法によって抽出した窒素ガスを用いてもよい。
なお、ゼオライトの好適な加熱再生条件については、後述の予備実験および実施例1より明らかとなる。
吸着ラインBでの吸着処理工程が終了した場合、バルブV2を閉止してV1を開放することで、被処理ガスRAの導入経路を再び吸着ラインAとすることができる。この場合、吸着塔9aによる硫化水素の除去を開始すると同時に、またはこれに続けて、今度は吸着塔9bの再生を行うことで、さらに被処理ガスRAの連続精製処理が継続可能となる。具体的には、バルブV2,V8,V5,V3を閉止し、バルブV1,V7,V6,V4を開放することで、吸着塔9aには被処理ガスRAを導入して硫化水素の除去を行い、吸着塔9bには再生用ガスRVを導入してこれに充填されたゼオライトのガスパージを行う。
以降は、上記各工程を順次繰り返すことで、吸着ラインAまたはBにより被処理ガスRAの長時間にわたる連続的な硫化水素除去処理を継続することができる。
図2に系統図を示す再生試験装置40を用い、CaA型ゼオライトの再生温度と含水量との関係を評価して最適含水状態を決定する試験を行った。評価試験は以下のように行った。
すなわち、飽和状態まで含水したCaA型ゼオライト1gを容器291に層状に充填し、外部よりヒーター33にて所定の再生温度に加熱しつつ、乾燥窒素を成分とする再生用ガスRVを脱着ガスとしてこれに十分に通気して、ゼオライトの質量が安定化するまで水分を脱着させた。
図3に系統図を示す破過試験装置41を用いて硫化水素を含有する被処理ガスRAの流通破過試験を行った。容器291は内容積17.3mlであり、これに上記予備実験と同様に100℃〜350℃でそれぞれ加熱再生され所定の含水率の水分を吸着したCaA型ゼオライト13gを層状に充填している。
被処理ガスRAとしては二酸化炭素50%、メタン50%、硫化水素500ppmの混合ガスを用い、これを200ml/minの流量で容器291に流通させた。なお、二酸化炭素とメタンの上記混合比は、硫化水素を除いたガス成分に対する比率である。
容器291の出口より排出される排気ガスEXの含有成分を、(株)島津製作所製のガスクロマトグラフィー(TCD)により6分間隔で測定した。
下表3に示す各種のゼオライト、および活性アルミナ、シリカゲル、活性炭を吸着剤に用いて、実施例1と同様に被処理ガスRAの流通破過試験をおこなった。ただし本比較例では、各吸着剤を十分に乾燥させた状態で容器291に充填している。すなわち本比較例は、触媒反応抑制剤としての水をゼオライト等の吸着剤に吸着させることなく被処理ガスRAと接触させた場合の破過時間を調べるものである。シリカゲルには富士シリシア製:フジシリカゲルA型、活性炭には日本エンバイロケミカルズ製:粒状白鷺炭(G2X)を使用した。
比較例1と同種の吸着剤を用いて、予備実験と同様の最適含水状態決定試験、および実施例1と同様の流通破過試験を連続して行った。すなわち本実施例は、図2に示す再生試験装置40を用いて、それぞれのゼオライト種について最適含水状態を決定し、つづけて図3に示す破過試験装置41を用いて、かかる最適含水状態、すなわち最適反応制御状態における被処理ガスRAの流通破過試験を行ったものである。
硫化水素処理時間を下表4にあわせて示す。
陽イオン種として一価イオンと二価イオンをともに有するゼオライトにおいて、二価イオンの好適な含有率を知るため、NaA型ゼオライトのCa含有率を変化させてなるNaCaA型ゼオライトを調整し、これを吸着剤に用いて実施例2と同様の方法により被処理ガスRAの硫化水素流通破過試験を行った。すなわち硫化水素と硫化カルボニルの破過時間が同等となる最適含水状態にあるCaA型ゼオライトを容器291に充填し、バイオガスを模擬した被処理ガスRAをこれに通気してその破過を検知することにより硫化水素処理時間を測定した。実験結果を下表5および図5に示す。
図1に系統図を示すガス精製装置1の吸着塔9a,9bに、1.0wt%の水分を吸着させたCaA型ゼオライトを吸着剤として充填し、TSA式による被処理ガスRAの繰り返し精製処理試験を行った。吸着塔9a,9bは内容積80[ml]であり、これに上記ゼオライトを層状に60g充填した。
また40回の連続運転の間、吸着塔9aの出口から硫化カルボニルは検知されなかった。この結果から触媒反応活性の制御状態も、連続運転によって失われるものではないことが分かった。
被処理ガスRAとして2000ppmの硫化水素を含み、主成分を約60%のメタンおよび約40%の二酸化炭素とするバイオガスを用いた以外は実施例4と同様の流通破過試験を行った。すなわち下水処理場などで生じる実際のバイオガスの精製処理を連続して行うことができるかどうかを検証する実験である。吸着塔9aの破過時間を下表6に示す。
9a,9b 吸着塔
33 ヒーター
40 再生試験装置
41 破過試験装置
291 容器
A,B 吸着ライン
EX 排気ガス
RA 被処理ガス
RF 精製ガス
RV 再生用ガス
V1〜V10 バルブ
Claims (9)
- 二酸化炭素と硫化水素をともに含有する被処理ガスを、硫化カルボニルの生成を抑制する触媒反応抑制剤として水またはアンモニアを予め吸着させたゼオライトに流通させることにより、前記被処理ガスから硫化水素を除去する硫化水素除去方法。
- ゼオライトに吸着させる水分量が、該ゼオライトの乾燥質量の0.2〜3.3重量%である請求項1に記載の硫化水素除去方法。
- 被処理ガスに脱水処理を施した後に、前記ゼオライトへの流通を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の硫化水素除去方法。
- 被処理ガスが、二酸化炭素を5〜60%含有するバイオガスである請求項1から3のいずれかに記載の硫化水素除去方法。
- ゼオライトが、A型ゼオライト、X型ゼオライトまたはフェリエライト型ゼオライトである請求項1から4のいずれかに記載の硫化水素除去方法。
- ゼオライトの陽イオン種が、第2族元素のイオンである請求項1から5のいずれかに記載の硫化水素除去方法。
- 陽イオン種がカルシウムイオンである請求項6に記載の硫化水素除去方法。
- ゼオライトのイオン交換サイトには、前記第2族元素のイオンを70%以上含有する複数種類の陽イオン種が存在する請求項6または7に記載の硫化水素除去方法。
- 二酸化炭素と硫化水素をともに含有する被処理ガスより前記硫化水素をゼオライトにより吸着除去する少なくとも二基の吸着塔と、それぞれの吸着塔に再生用ガスを供給して前記硫化水素を吸着したゼオライトを加熱条件下で再生する加熱再生手段と、被処理ガスの導入先を一の吸着塔から他の吸着塔に切り替えるとともに再生用ガスの供給先を前記他の吸着塔から前記一の吸着塔に切り替える切替手段と、を備えるガス精製装置であって、
前記ゼオライトには、アンモニア、または前記ゼオライトの乾燥質量に対し0.2〜3.3重量%の水が、硫化カルボニルの生成を抑制する触媒反応抑制剤として吸着されていることを特徴とするガス精製装置。
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