JP4789822B2 - ガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドに対する阻害剤を含んでなる癌治療剤 - Google Patents

ガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドに対する阻害剤を含んでなる癌治療剤 Download PDF

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Description

本発明は新規蛋白質ガンキリン(gankyrin)の生物学的活性を有するポリペプチドに対する阻害剤(ガンキリン阻害剤)を含んでなる癌治療剤に関する。
肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;HCC)は東洋及び南アフリカにおける最も普通に見出される癌の1種である。過去10年間にHCC患者の診断及び治療は大きな進展があり、その結果、切除可能な症例が増加している(Arii, S.et al., Primary liver cancer in Japan, Springer-Verlag (1992) 243-255 ; The liver cancer Study Group of Japan, Primary liver cancer in Japan, Springer-Verlag (1992) 445-453) 。しかしながら、その著しい進展にも拘らず、生存率は低いままである。生存期間の延長に対する主たる障害の1つは腫癌を巨視的に完全に除去した後の肝内再発のようである (The Liver Cancer Study Group of Japan, Ann.Surg.(1990) 211, 277-287; Belghiti,J.et al.,Ann.Surg.(1991) 214,114-117)。
これに関して、肝内再発及び生存期間の延長に影響する予後判定因子を決定するために大きな努力が払われてきた。今まで、本発明者らはHCCの幾つかの遺伝子の発現を分析した (Mise, M.et al., Hepatology (1996) 23, 455-464; Furutani, M.et al., Hepatology (1996) 24, 1441-1445; Furutani, M.et al., Cancer Lett. (1997) 111, 191-197)。その結果得られたkan-1(胆汁酸CoA:アミノ酸N−アシルトランスフェラーゼ)mRNAを新規な予後判定因子として同定した。この因子の発現は、予後不良例のHCC中で減少する (Furutani, M.et al., Hepatology (1996) 24, 1441-1445)。
この他にも、門脈併発、α−フェトプロテイン(AFP)レベル、腫瘍サイズ、腫瘍の数のごとき従来からの臨床予後因子に予測価値を付加するHCCの新規な分子マーカーが求められている (Theliver Cancer Study Group of Japan, Primary liver Cancer in Japan, Springer-Verlag (1992) 445-453; The liver Cancer Study Group of Japan, Ann.Surg. (1990) 211, 277-287; The liver Cancer Study Group of Japan, Cancer (1994) 74, 2772-2780; Franco, D.et al., Gastroenterology (1990) 98, 733-738; Calvet, X.et al., Hepatology (1990) 12, 753-760) 。
本発明者は、HCCにおいて発現が増加する分子マーカーを同定するために、HCC患者の切除肝のcDNAから健常人の肝臓cDNAをサブトラクト(subtract)した。その結果、アンキリンリピートモチーフ(ankyrin repeat motif)のみからなり、in vitroおよびin vivo のアッセイ系で癌原性を示す新規な遺伝子、ガンキリンを単離した。
従って本発明は、新規なガンキリンポリペプチド、それをコードする遺伝子系、該ポリペプチドの製造方法、及び該ポリペプチドに対する抗体、並びにそれらの用途を提供する。
上記の課題を解決するため、本発明は、配列番号:2に示す14位のAlaから226位のGlyまでのアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:2に示す14位のAlaから226位のGlyまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を維持しているポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:2に示す1位のMetから226位のGlyまでのアミノ酸配列から成り、ガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:2に示す1位のMetから226位のGlyまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を維持しているポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:1に示す塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAによりコードされており、且つガンキリンの生物学的性質を有するポリペプチドを提供する。ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1%SDSにより与えられる条件である。
本発明はまた、配列番号:2に示す14位のAlaから226位のGlyまでのアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドをコードするDNA 、配列番号:2に示す14位のAlaから226位のGlyまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を維持しているポリペプチドをコードするDNA 又は配列番号:1に示す塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAによりコードされており、且つガンキリンの生物学的性質を有するポリペプチドにシグナル配列が付加されたシグナル付加ポリペプチドを提供する。ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1%SDSにより与えられる条件である。
本発明はまた、配列番号:4に示す14位のAlaから231位のMetまでのアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:4に示す14位のAlaから231位のMetまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を維持しているポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:4に示す1位のMetから231位のMetまでのアミノ酸配列から成り、ガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:4に示す1位のMetから231位のMetまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を維持しているポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:3に示す塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAによりコードされており、且つガンキリンの生物学的性質を有するポリペプチドを提供する。ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1%SDSにより与えられる条件である。
本発明はまた、配列番号:4に示す14位のAlaから231位のMetまでのアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドをコードするDNA、配列番号:4に示す14位のAlaから231位のMetまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を維持しているポリペプチドをコードするDNA又は配列番号:3に示す塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAによりコードされており、且つガンキリンの生物学的性質を有するポリペプチドにシグナル配列が付加されたシグナル付加ポリペプチドを提供する。ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1%SDSにより与えられる条件である。
本発明はまた、配列番号:6に示す14位のAlaから231位のMetまでのアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:6に示す14位のAlaから231位のMetまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を維持しているポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:6に示す1位のMetから231位のMetまでのアミノ酸配列から成り、ガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:6に示す1位のMetから231位のMetまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を維持しているポリペプチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:5に示す塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAによりコードされており、且つガンキリンの生物学的性質を有するポリペプチドを提供する。ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1%SDSにより与えられる条件である。
本発明はまた、配列番号:6に示す14位のAlaから231位のMetまでのアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドをコードするDNA、配列番号:6に示す14位のAlaから231位のMetまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列から成り、且つガンキリンの生物学的活性を維持しているポリペプチドをコードするDNA又は配列番号:5に示す塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAによりコードされており、且つガンキリンの生物学的性質を有するポリペプチドにシグナル配列が付加されたシグナル付加ポリペプチドを提供する。ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1%SDSにより与えられる条件である。
本発明はまた、前記のポリペプチドと他のペプチド又はポリペプチドとから成る融合ポリペプチドを提供する。
本発明はまた、前記のポリペプチドをコードするDNAを提供する。
本発明はまた、前記のDNAを含んで成るベクターを提供する。
本発明はまた、前記のベクターにより形質転換された宿主を提供する。
本発明はまた、前記のポリペプチドの製造方法であって、該ポリペプチドをコードするDNAを含んで成る発現ベクターにより形質転換された宿主を培養し、該培養物から目的ポリペプチドを採取することを特徴とする方法を提供する。
本発明はまた、前記のポリペプチドに対して特異的に反応する抗体を提供する。この抗体は好ましくはモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。
本発明はまた、前記の抗体と、ガンキリンポリペプチドが含まれると予想される試料とを接触せしめ、前記抗体とガンキリンポリペプチドとの免疫複合体の生成を検出又は測定することを含んで成るガンキリンポリペプチドの検出又は測定方法を提供する。
本発明はまた、配列番号:1に示される塩基配列のいずれかの箇所にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
本発明はまた、配列番号:1に記載の塩基配列中の連続する少なくとも20個以上のヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。前記連続する少なくとも20個以上のヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは好ましくは翻訳開始コドンを含む。
本発明はまた、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有してなるガンキリンポリペプチドの発現阻害剤を提供する。
本発明はまた、ガンキリンポリペプチドとRbとの結合に対するガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストのスクリーニング方法において、Rbの存在下でガンキリンポリペプチド又はガンキリンポリペプチド含有物と、ガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを含むと予想される試料とを接触せしめ、そして遊離のガンキリンポリペプチド又はRbを検出する、ことを特徴とする方法を提供する。前記ガンキリン含有物は、例えばガンキリンを発現する細胞の溶解物である。
本発明はまた、ガンキリンポリペプチドとNFκBとの結合に対するガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストのスクリーニング方法において、NFκBの存在下でガンキリンポリペプチド又はガンキリンポリペプチド含有物と、ガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを含むと予想される試料とを接触せしめ、遊離のガンキリンポリペプチド又はNFκBを検出する、ことを特徴とする方法を提供する。前記ガンキリン含有物は、例えばガンキリンを発現する細胞の溶解物である。
本発明によれば、ガンキリンポリペプチドとは、ガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドを意味する。ガンキリンの生物学的活性とは癌原性であり、その具体的な作用は実施例4に示すとおり、細胞の軟寒天中でのコロニー形成能の増加、マウスにおける造
腫瘍能及びアポトーシス誘導の抑制である。
本発明のガンキリン遺伝子又はそのcDNAは、肝癌細胞又は肝癌組織を取得源としてスクリーニングを行い、遺伝子又はそのcDNAを得ることができる。遺伝子又はそのcDNAのスクリーニング方法又は単離方法としては、サブトラクション法(Nucleic Acids Research (1988) 16, 10937 )、ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法(Cell (1979) 16, 443-452 )等、発現量の変化する遺伝子を選択的にスクリーニングできる方法を用いることができる。
本発明のガンキリンポリペプチドをコードする遺伝子は、例えば、正常肝組織から調製したcDNAライブラリーと、肝癌組織から調製したcDNAライブラリーとのサブトラクション法により、肝癌組織では転写されているが正常組織では転写されていないmRNAに由来するcDNAを選択することにより得られる。
例えば、サブトラクション法は、肝癌組織又は正常肝組織から得られたcDNAをプライマーにより増幅する。正常肝組織を増幅するためのプライマーは標識化合物、例えばビオチンで標識する。次いで、過剰量の正常肝組織由来の二本鎖cDNAと少量の肝癌組織由来の二本鎖cDNAとを混ぜ、熱変性することにより一本鎖にして、これを二本鎖にもどす。肝癌組織由来のcDNAのうち、正常肝組織にも発現していたものは、そのほとんどが過剰に存在する正常肝組織由来のcDNAと二本鎖を形成し、標識を持つようになる。
しかしながら、肝癌組織に由来するcDNA同士が二本鎖を形成すると、標識を持たない。そこで、標識を有するcDNA二本鎖DNAを除去すれば、肝癌組織に特異的なcDNAが得られる。この操作を繰り返すことにより肝癌組織に特異的なcDNAを濃縮することができる。この具体的な方法は、実施例1に示す。さらに得られたcDNA断片や全長のcDNAをプローブとして用いて、ガンキリンポリペプチドを発現する細胞又は組織及びガンキリンポリペプチドを発現しない細胞又は組織のmRNAに対してノーザンブロッティングを行うことにより、選択した遺伝子のmRNAが特異的に発現していることを確認することができる。
上記のように得られたcDNA又はcDNA断片をプローブとして、cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより異なる細胞、組織、臓器又は種からガンキリン遺伝子を得ることができる。また、得られたcDNAの塩基配列を決定することにより、ガンキリン遺伝子産物のポリペプチドをコードする翻訳領域を決定でき、このポリペプチドのアミノ酸配列を得ることができる。また、得られたcDNAをプローブとしてジェノミックDNA ライブラリーをスクリーニングすることにより、染色体DNA を単離することができる。
cDNAライブラリーやジェノミックDNA ライブラリー等のDNA ライブラリーは、例えばSambrook, J. et al., Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載の方法により調製してもよいし、市販のDNA ライブラリーを用いてもよい。
本発明の遺伝子もしくはDNA は、その塩基配列又はその一部が明らかな場合、それをプライマーとしてPCR 法を用いることにより得ることができる。
本発明のガンキリンポリペプチドはまた、配列番号:1に示す塩基配列を有する核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされており、且つガンキリンの生物学的活性を有するポリペプチドを含む。
ストリンジェントな条件としては、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントの条件とは、例えば50℃、2×SSC 、0.1%SDSである。またより好ましくは、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1%SDSが挙げられる。
上記のハイブリダイズするDNAは好ましくは天然由来のDNA、例えばcDNA又はジェノミックDNAであってよい。配列番号:2に示したアミノ酸配列、配列番号:1に示した塩基配列について、既知DNA データベース(GenBank 、EMBL)及び蛋白質データベース(SWISS-PLOT)に含まれる全ての配列に対して相同性検索を行った結果、一致するものは見いだせなかった。このことから本発明の遺伝子とその遺伝子産物であるポリペプチドは新規な分子であることが明らかとなった。
実施例1に示すごとく、本発明の新規なガンキリンポリペプチドのcDNAとハイブリダイズする遺伝子は、本発明においてヒト以外の動物、例えばラット、マウス等にも広く分布し、またヒトの種々の組織にも分布していることが判明した。従って、上記の天然由来のDNAは、例えば実施例1においてヒトガンキリンポリペプチドのcDNAとハイブリダイズするmRNAが検出される組織由来のcDNAやジェノミックDNAであってもよい。
本発明はまた、上記のごとく配列番号:2に示す塩基配列を有する核酸とハイブリダイズし且つガンキリンの活性を有するポリペプチドをコードするDNAを包含する。このDNAも、前記の方法により発現させることができる。このようなガンキリンポリペプチドを得るために、ガンキリン遺伝子の塩基配列に所望の変異を導入するには合成オリゴヌクレオチドプライマーを利用することができる(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81,5662-5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、 Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413 )。
また、ガンキリンポリペプチドをコードするcDNAやジェノミックDNAの他、合成DNAであってもよい。具体的には、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するガンキリンをコードするDNAが挙げられ、例えば配列番号:1で表される塩基配列を有するDNAが用いられる。これらのDNAは、それ自体公知の遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。
後述の実施例1で得られたプラスミドpBS-t4-11 を保持する形質転換体大腸菌はEscherichia coli DH5a (pBS-t4-11 )と命名され、平成9 (1997)年9月29日に工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に寄託番号FERM BP−6128として寄託されている。
本発明のガンキリンポリペプチドとしては、例えば配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するガンキリンポリペプチド等が挙げられる。具体的には、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するガンキリンの他、配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1又は2個以上、好ましくは、2個以上30個以下、より好ましくは2個以上10個以下のアミノ酸が欠失したもの、配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1又は2個以上、好ましくは、2個以上30個以下、より好ましくは2個以上10個以下のアミノ酸が付加したもの、配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1又は2個以上、好ましくは、2個以上30個以下、より好ましくは2個以上10個以下のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたものが挙げられる。
また、本発明にはガンキリンの生物学的活性を有し、且つ配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと相同なポリペプチドも含まれる。相同なポリペプチドとは配列番号:2のアミノ酸配列とは、一般に少なくとも20個、好ましくは30個の連続したアミノ酸残基で、少なくとも70% 、好ましくは少なくとも80% 、より好ましくは少なくとも90% 、より好ましくは少なくとも95% 以上、アミノ酸配列上の相同性を有するポリペプチドを意味する。
本発明のガンキリンポリペプチドは、後述するそれを産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点又は糖鎖の有無や形態が異なっている。しかしながら、得られたガンキリンポリペプチドが天然のガンキリンポリペプチドと実質的に同質の活性を有するものである限り本発明に含まれる。ガンキリンポリペプチドと実質的に同質の活性としては、後述の実施例4に記載される癌原性、例えば細胞の軟寒天中でのコロニー形成能の増加、マウスにおける造腫瘍能及びアポトーシス誘導の抑制が挙げられる。実質的に同質とは、癌原性等が性質的に同質であることを示す。
本発明のガンキリンポリペプチドの部分ペプチドとしては、例えばガンキリンの分子のうち、疎水性プロット解析から推定される疎水性領域や親水性領域の1つあるいは複数の領域を含む部分ペプチドが挙げられる。これらの部分ペプチドは1つの疎水性領域の一部あるいは全部を含んでいてもよいし、1つの親水性領域の一部あるいは全部を含んでいてもよい。
本発明のガンキリンポリペプチドの部分ペプチドは、自体公知のペプチド合成法に従って、あるいは本発明のガンキリンポリペプチドを適切なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチド合成法としては、たとえば固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。
また反応後は通常の精製法、例えば溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、再結晶を組合わせて本発明の部分ペプチドを単離精製することができる。
前記のように構築したDNAは、公知の方法により発現させ、ガンキリンポリペプチドを取得することができる。哺乳類細胞を使用する場合、常用される有用なプロモーター/エンハンサー、発現される遺伝子、その3'側下流にポリA シグナルを機能的に結合させたDNA あるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirusimmediate early promoter/enhancer )を挙げることができる。
また、その他にガンキリンポリペプチド発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV 40 )等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1
α(HEF1α)の哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
例えば、SV 40 プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Nature (1979) 277, 108)、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushima らの方法(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)に従えば容易に実施することができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列、発現させる遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Nature (1098) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えばよい。
ガンキリンポリペプチド分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。
複製起源としては、SV 40 、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV )等の由来のものを用いることができる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH )遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明において、ガンキリンポリペプチドの製造のために、任意の産生系を使用することができる。ガンキリンポリペプチド製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用
する産生系が挙げられる。
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1) 哺乳類細胞、例えばCHO(J. Exp. Med. (1995) 108, 945)、COS 、ミエローマ、BHK (baby hamster kidney )、HeLa、Vero、(2) 両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle, et al., Nature (1981) 291, 358-340 )、あるいは(3) 昆虫細胞、例えばsf9 、sf21、Tn5 が知られている。CHO 細胞としては、特にDHFR遺伝子を欠損したCHO 細胞であるdhfr-CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216-4220 )やCHO K-1 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1968) 60, 1275)を好適に使用することができる。
植物細胞としては、Nicotiana tabacum 由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces )属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギウス属(Aspergillus )属、例えばアスペルギウス・ニガー(Aspergillus niger )が知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。
これらの細胞を目的とするDNAにより形質転換し、形質転換された細胞をin vitroで培養することによりガンキリンポリペプチドが得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM 、RPMI1640、IMDMを使用することができる。その際、牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。培養時のpHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜200時間行い、必要に応じて培地の交換、通気、撹拌を加える。
一方、in vivo の産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。これらの動物又は植物に目的とするDNAを導入し、動物又は植物の体内でガンキリンポリペプチドを産生させ、回収する。本発明における「宿主」とは、これらの動物、植物を包含する。
動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
例えば、目的とするDNAをヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。このDNAが挿入された融合遺伝子を含むDNA 断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁からガンキリンポリペプチドを得る。トランスジェニックヤギから産生されるガンキリンポリペプチドを含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい。(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702 )。
また、昆虫としては、例えばカイコを用いることができる。カイコを用いる場合、目的とするDNAを挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望のガンキリンポリペプチドを得る(Susumu, M. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。
さらに植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的とするDNAを植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciens のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacum に感染させ、本タバコの葉より所望のポリペプチドを得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138)。宿主への発現ベクターの導入方法としては、公知の方法、例えばリン酸カルシウム法(Virology (1973) 52, 456-467 )やエレクトロポレーション法(EMBO J. (1982) 1, 841-845 )等が用いられる。また、発現に使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現効率の高い配列を設計することができる(Grantham, R. et al., Nucelic Acids Research (1981) 9, r43-r74)。
このようにして得られたガンキリン遺伝子産物がガンキリンの生物学的活性を有していることは、例えば次ぎのようにして確認することができる。例えば、後述の実施例4に記載されている方法を用い、ガンキリンポリペプチド産生細胞を軟寒天中で培養する。ガンキリンポリペプチド発現細胞は軟寒天中でコロニー形成能が増加している。また、ガンキリンポリペプチド発現細胞をマウスに移植する。ガンキリンポリペプチド発現細胞はマウス体内で造腫瘍能を示す。また、ガンキリンポリペプチド発現細胞をアポトーシス誘導条件下におく。ガンキリンポリペプチド発現細胞はアポトーシス誘導を抑制する。
上記で得られたガンキリンポリペプチドは、細胞内外、宿主から単離し実質的に純粋で均一なポリペプチドとして精製することができる。ガンキリンポリペプチドの分離、精製は、通常の蛋白質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、免疫沈降、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析等を適宜選択、組み合わせればガンキリンポリペプチドを分離、精製することができる。
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。なお、ガンキリンポリペプチドを精製前又は精製後に適当なタンパク修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり部分的にペプチドを除去することもできる。タンパク修飾酵素としては、トリプシン、キモトリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グルコシダーゼ、プロテインキナーゼ、グルコシダーゼが用いられる。
本発明のガンキリンポリペプチドは、スクリーニング方法に使用されるために有用である。すなわち、Rb(DeCaprio, J.A.et al., Cell (1989) 58, 1085-1095 )の存在下でガンキリンポリペプチド又はガンキリンポリペプチド含有物と、ガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを含むと予想される試料とを接触せしめ、そして遊離のガンキリンポリペプチド又はRbを検出又は測定する、ことからなるガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はガンキリンアンタゴニストのスクリーニング方法;又は、NFκB(Baeuerle, P.A.et al., Cell (1988) 53, 211-217)の存在下でガンキリンポリペプチド又はガンキリンポリペプチド含有物と、ガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを含むと予想される試料とを接触せしめ、そして遊離のガンキリンポリペプチド又はNFκBを検出又は測定する、ことからなるガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はガンキリンアンタゴニストのスクリーニング方法において使用されるために有用である。
これらのスクリーニング方法に用いられるガンキリンポリペプチドは組換え型、天然型のいずれであっても使用し得る。また、Rb又はNFκBとの結合性を維持している限り、ガンキリンポリペプチドの部分ペプチドであってもよい。ガンキリンポリペプチド含有物としては、ガンキリンポリペプチドを発現する細胞の溶解物が挙げられる。
すなわち、本発明は、Rbの存在下で、ガンキリンポリペプチド又はガンキリンポリペプチド含有物と、ガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを含むと予想される試料とを接触せしめた場合と、ガンキリンポリペプチド又はガンキリンポリペプチド含有物と、ガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを含まない試料を接触せしめた場合の、検出又は測定された遊離のガンキリンポリペプチド又はRbを比較することから成るガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストのスクリーニング方法に係わる。
本発明はまた、NFκBの存在下で、ガンキリンポリペプチド又はガンキリンポリペプチド含有物と、ガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを含むと予想される試料とを接触せしめた場合と、ガンキリンポリペプチド又はガンキリンポリペプチド含有物と、ガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを含まない試料を接触せしめた場合の、検出又は測定された遊離のガンキリンポリペプチド又はNFκBを比較することから成るガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストのスクリーニング方法に係わる。
これらのスクリーニング方法において、遊離のガンキリンポリペプチド、Rb又はNFκBを検出又は測定するためには、例えばガンキリンポリペプチド、Rb又はNFκBを標識化合物、例えばビオチン、アビディン、放射性同位元素、例えば〔 125I〕、〔35S〕、〔 3H〕、〔14C〕、蛍光物質、酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼを用いて標識し、これを検出又は測定することができる。これらの標識化合物はすでに公知であり、通常の方法に従って標識することができる。また、遊離のガンキリンポリペプチド、Rb又はNFκBを検出又は測定するためには、ガンキリンポリペプチド、Rb又はNFκBに対する抗体を用いて行うことができる。
具体的には、ガンキリンポリペプチドを支持体、例えばビーズ、プレートに固定し、Rb又はNFκBの存在下でガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを含むと予想される試料を加え、インキュベートの後、溶液中に含まれるRb又はNFκBを抗体により検出又は測定すればよい。また、遊離のRb又はNFκBを検出又は測定するために、プレートに固定したガンキリンポリペプチドに結合したRb又はNFκBを検出又は測定してもよい。
その際、ガンキリンポリペプチドを他のペプチド又はポリペプチドと遺伝子工学的に融合させた融合ポリペプチドを用いることができる。融合に付される他のペプチド又はポリペプチドとしてはHA(ヘモグルアチニン)、FLAG等が挙げられ、遊離のガンキリンポリペプチドをこれら融合に付される他のペプチド又はポリペプチドに対する抗体を用いて検出又は測定することができる。したがって、ガンキリンポリペプチドを他のペプチド又はポリペプチドと遺伝子工学的に融合させた融合ポリペプチドは、本発明において有用である。
本発明のスクリーニング方法で使用されるガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを含むと予想される試料としては、例えばペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、微生物発酵生産物、海洋生物抽出液、植物抽出液、細胞抽出液、動物組織抽出液が挙げられる。これらの試料は新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。
本発明のスクリーニング方法は、癌原性を有するガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを検出又は測定することができるため有用である。
ガンキリンポリペプチドは、本発明においてRb又はNFκBと相互作用することが見いだされた。ガンキリンポリペプチドは癌原性を有することから、ガンキリンポリペプチドとRb又はNFκBとの結合を調節するガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストは医薬品として有用である。
具体的には、上記のスクリーニング方法を実施するには、まず、本発明のガンキリンポリペプチド又はガンキリンポリペプチド含有物を、スクリーニングに適した緩衝液に懸濁し、プレートに固定することによりガンキリンポリペプチド標品を調製する。
緩衝液としては、ガンキリンポリペプチドの結合を阻害しないものであれば何でもよく、例えばpH6〜8のリン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、PBS、HBSSが用いられる。また、非特異的結合を低減させる目的で、ウシ血清アルブミンのタンパク質、CHAPSやTween80TM、ジギトニン等の界面活性剤を加えることもできる。さらに、タンパク質分解酵素によるガンキリンポリペプチドの分解を抑えるために、PMSF、ペプスタチン、ロイペプチン等のタンパク質分解酵素阻害剤を添加することもできる。
次いで、該ガンキリンポリペプチド標品に、放射性同位元素により標識したRb又はNFκBと適当な濃度の試料を同時に添加し、約0〜50℃(望ましくは約4〜37℃)で、約0.5〜24時間(望ましくは約0.5〜3時間)反応させる。反応後、適量の緩衝液で洗浄したのち該ガンキリンポリペプチド標品に残存する放射線量をガンマカウンター又は液体シンチレーションカウンターで測定する。このとき、ガンキリンポリペプチド標品に対する非特異的な結合を測定するために、ガンキリンポリペプチドと相互作用しない別のポリペプチドを同様に標識して添加したガンキリンポリペプチド標品を調製する。また、試料を含まない緩衝液を添加したガンキリンポリペプチド標品をネガティブコントロールとする。
試料を含むときの残存放射線量から非特異的結合量を差し引いた値が特異的結合量である。反応液に試料を添加しない場合に比べて、この特異的結合量を低下させる試料をガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの候補物質として選択することができる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られるガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストは、スクリーニング方法を用いて試料、例えばペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、微生物発酵生産物、海洋生物抽出液、植物抽出液、細胞抽出液、動物組織抽出液をスクリーニングすることができる。これらの試料は新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。
これらのガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストは、ガンキリンポリペプチドとRb又はNFκBとの結合を阻害する物質である。本発明のスクリーニング方法を用いて得られるガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの構造の一部を、付加、欠失あるいは置換により変換される物質も本発明のスクリーニング方法を用いて得られるガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストに含まれる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られるガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストをヒトや哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、マントヒヒ、チンパンジーの医薬として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。
例えば必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えばガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを生理学的に認められる単体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤とともに一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状単体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油のような天然産出植物油を溶解又は懸濁させるの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80TM、HCO-50と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
ガンキリンポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの投与量は、症状により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1から100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgである。
非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.01から30mg、好ましくは約0.1から20mg、より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本発明の抗ガンキリンポリペプチド抗体は、公知の手段を用いてモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体として得ることができる。
モノクローナル抗体は、ガンキリンポリペプチドを感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナル抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるガンキリンポリペプチドは、その由来となる動物種に制限されないが哺乳動物、例えばヒト、マウス又はラット由来のガンキリンポリペプチドが好ましい。これらのヒト、マウス又はラットガンキリンポリペプチドは、本明細書に開示される遺伝子配列を用いて得ることができる。
本発明において、感作抗原として使用されるガンキリンポリペプチドは、本明細書に記載された全てのガンキリンポリペプチドの生物学的活性を有するガンキリンポリペプチドを使用できる。また、ガンキリンポリペプチドの断片も用いることができる。ガンキリンポリペプチドの断片としては、例えばガンキリンポリペプチドのカルボキシ(C )末端断片が挙げられる。本明細書で「抗ガンキリンポリペプチド抗体」とはガンキリンポリペプチドの全長又は断片に特異的に反応する抗体を意味する。
ガンキリンポリペプチド又はその断片をコードする遺伝子を公知の発現ベクター系に挿入して本明細書で述べた宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞内外又は、宿主から目的のガンキリンポリペプチド又はその断片を公知の方法で得、このガンキリンポリペプチドを感作抗原として用いればよい。また、ガンキリンポリペプチドを発現する細胞又はその溶解物を感作抗原として使用してもよい。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が使用される。
げっ歯目の動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。ウサギ目の動物としては、例えば、ウサギが使用される。霊長目の動物としては、例えばサルが使用される。サルとしては、狭鼻下目のサル(旧世界ザル)、例えば、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline) や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に投与し、以降フロイント不完全アジュバントに適量混合した感作抗原を、4〜21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを常法により確認する。
ここで、ガンキリンポリペプチドに対するポリクローナル抗体を得るには、血清中の所望の抗体レベルが上昇したことを確認した後、抗原を感作した哺乳動物の血液を取り出す。この血液から公知の方法により血清を分離する。ポリクローナル抗体としてポリクローナル抗体を含む血清を使用してもよいし、必要に応じこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離してもよい。
モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物の血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を取り出し、細胞融合に付せばよい。この際、細胞融合に使用される好ましい免疫細胞として、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞としては、既に公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(Kearney, J. F. et al., J. Immunol. (1979) 123, 1548-1550) 、P3x63Ag8.U1 (Yelton, D. E. et al., Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81, 1-7) 、NS-1(Kohler, G. and Milstein, C., Eur. J.Immunol. (1976) 6, 511-519) 、MPC-11(Margulies, D. H.et al., Cell (1976) 8, 405-415) 、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature (1978) 276, 269-270) 、FO (de St. Groth, S. F. and Scheidegger, D., J. Immunol. Methods (1980) 35, 1-21)、S194(Trowbridge, I. S., J. Exp. Med. (1978) 148, 313-323) 、R210(Galfre, G. et al., Nature (1979) 277, 131-133) 等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、例えば、ミルステインらの方法(Galfre, G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73, 3-46) 等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG溶液、例えば、平均分子量1000〜6000程度のPEG溶液を通常、30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球、例えばEBウィルスに感染したヒトリンパ球をin vitroでガンキリンポリペプチド、ガンキリンポリペプチド発現細胞又はその溶解物で感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、ガンキリンポリペプチドへの結合活性を有する所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる(特開昭63-17688)。
さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるガンキリンポリペプチド、ガンキリンポリペプチド発現細胞又はその溶解物を免疫して抗ガンキリンポリペプチド抗体産生細胞を取得し、これをミエローマ細胞と融合させたハイブリドーマを用いてガンキリンポリペプチドに対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO92-03918、WO93-2227、WO94-02602、WO94-25585、WO96-33735およびWO96-34096参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に移植して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
ハイブリドーマを用いて抗体を産生する以外に、抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞を癌遺伝子 (oncogene) により不死化させた細胞を用いてもよい。
このように得られたモノクローナル抗体はまた、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体として得ることができる。例えば、組換え型抗体は、抗ガンキリンポリペプチド抗体遺伝子をハイブリドーマ又は抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させる。本発明には、この組換え型抗体を用いることができる(例えば、Borrebaeck, C. A. K. and Larrick, J. W., THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照) 。
具体的には、抗ガンキリンポリペプチド抗体を産生するハイブリドーマから、抗ガンキリンポリペプチド抗体の可変領域(V領域)をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299) 、AGPC法 (Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-159) 等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia) 等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia) を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、 AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)等を用いて行うこともできる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5'-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech)およびポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction ; PCR)を用いた5′-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998-9002 ; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932) を使用することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を調製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認する。
目的とする抗ガンキリンポリペプチド抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。又は、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを既に含む発現ベクターに組み込んでもよい。抗体C領域としては、V領域と同じ動物種由来の抗体C領域を用いてもよいし、V領域と異なる動物種由来の抗体C領域を用いてもよい。
本発明で使用される抗ガンキリンポリペプチド抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H鎖)又は軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで、宿主細胞を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO94-11523参照)。
本発明で使用される抗体は、ガンキリンポリペプチドに結合するかぎり、その抗体断片や抗体修飾物であってよい。例えば、抗体断片としては、Fab、F(ab′)2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照) 。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域を連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される (Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883) 。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12〜19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖又は、H鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖又は、L鎖V領域をコードするDNAを鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNAおよびその両端を各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合わせて増幅することにより得られる。
一旦scFvをコードするDNAが作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
また、抗体断片は、一部の配列が変異、置換、欠失又は挿入を受けた抗体断片であってよい。これら抗体断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体断片も包含される。
抗体修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗ガンキリンポリペプチド抗体を使用することもできる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
また、本発明の抗ガンキリンポリペプチド抗体は、公知の技術を使用してキメラ抗体又はヒト型化抗体として得ることができる。
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。例えば、本明細書に記載したガンキリンポリペプチドの産生のためのプロモーター/エンハンサーを用いることができる。
本発明の抗ガンキリンポリペプチド抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができ、本明細書に記載したガンキリンポリペプチドの産生のための産生系を用いることができる。例えば、抗ガンキリンポリペプチド抗体製造のための産生系は、in vitroおよび in vivoの産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。 invivoの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシ、例えばそれらのトランスジェニック動物を用いることができる(Glaser, V., SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993) 。また、昆虫としては、カイコを用いることができる。さらに、植物を使用する場合、例えばタバコ、例えばニコティアナ タバカム(Nicotiana tabacum) を用いることができる(Ma, J. K. et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138) 。
これらの動物又は植物に上記のように抗体遺伝子を導入し、動物又は植物の体内で抗体を産生させ、回収する。
上述のようにin vitro又は in vivoの産生系にて抗体を産生する場合、抗体H鎖又はL鎖をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよい。あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO94-11523参照)。
前記のように発現、産生された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製は通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。
例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies : A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988) 。
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D, POROS, Sepharose F. F. (Pharmacia) 等が挙げられる。
アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization : A Laboratory Course Manual. Ed DanielR. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996) 。これらのクロマトグラフィーはHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
上記で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定又は酵素結合免疫吸着検定法(Enzyme-linked immunosorbent assay;ELISA)等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、得られた抗体をPBSで適当に希釈した後、280nmの吸光度を測定し、種およびサブクラスにより吸光係数は異なるが、ヒト抗体の場合1mg/mlを1.4ODとして算出する。
また、ELISAによる場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6)で1μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG抗体100μlを96穴プレート(Nunc)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化する。ブロッキングの後、適宜希釈した本発明の抗体又は抗体を含むサンプル、あるいは濃度標準品として既知の濃度のヒトIgG 100μlを添加し、室温にて1時間インキュベーションする。
洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG抗体100μlを加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad) を用いて405nmでの吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を濃度標準ヒトIgGの吸光度より算出する。
また、抗体の濃度測定には、BIAcore(Pharmacia) を使用することができる。
本発明の抗ガンキリンポリペプチド抗体の活性の評価は、通常知られた方法を使用することができる。ガンキリンポリペプチドを固定したプレートに125I標識抗ガンキリンポリペプチド抗体を添加し、公知の方法に従い洗浄して、放射活性を測定することにより、抗ガンキリンポリペプチド抗体の活性を評価することができる(Antibodies : A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988) 。
また、本発明で使用される抗ガンキリンポリペプチド抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。
例えば、ELISAを用いる場合、抗ガンキリンポリペプチド抗体を固相化したプレートにガンキリンポリペプチドを添加し、次いで目的の抗ガンキリンポリペプチド抗体を含む試料、例えば、抗ガンキリンポリペプチド抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。酵素、例えばアルカリフォスファターゼ等で標識した抗ガンキリンポリペプチド抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートをインキュベーション、洗浄した後、p−ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。ガンキリンポリペプチドとしてガンキリンポリペプチドの断片、例えばそのC 末端からなる断片あるいはN 末端からなる断片を使用してもよい。本発明の抗ガンキリンポリペプチド抗体の活性評価には、BIAcore(Pharmacia) を使用することができる。
これらの手法を用いることにより、本発明の抗ガンキリンポリペプチド抗体と試料中に含まれるガンキリンポリペプチドが含まれると予想される試料とを接触せしめ、前記抗体とガンキリンポリペプチドとの免疫複合体を検出又は測定することから成るガンキリンポリペプチドの検出又は測定方法を実施することができる。
具体的には、例えばELISAを用いる場合、抗ガンキリンポリペプチド抗体を固相化したプレートにガンキリンポリペプチドを含む試料を添加し、次いで抗ガンキリンポリペプチド抗体を加える。
酵素、例えばアルカリフォスファターゼ等で標識した抗ガンキリンポリペプチド抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートをインキュベーション、洗浄した後、p−ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで試料中のガンキリンポリペプチドの存在を評価することができる。ガンキリンポリペプチドとしてガンキリンポリペプチドの断片、例えばそのC 末端からなる断片あるいはN 末端からなる断片を使用してもよい。本発明の抗ガンキリンポリペプチド抗体の活性評価には、BIAcore(Pharmacia) を使用することができる。
本発明のガンキリンポリペプチドの検出又は測定方法は、ガンキリンポリペプチドを特異的に検出又は測定することができるため、ガンキリンポリペプチドを用いた種々の実験等に有用である。
本発明には、本発明の遺伝子と選択的にハイブリダイズし得るヌクレオチド(DNA 又はRNA )又はヌクレオチド誘導体、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム等が含まれる。本発明は例えば、配列番号:1に示される塩基配列中のいずれかの箇所にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは配列番号:1に示される塩基配列中の連続する少なくとも20個以上のヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。さらに好ましくは、前記連続する少なくとも20個以上のヌクレオチドが翻訳開始コドンを含む、前記のアンチセンスオリゴヌクレオチドである。例えば、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:8を有するものである。また例えば、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:9を有するものである。
ここでいう「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、DNA 又はmRNAの所定の領域を構成するヌクレオチドに対応するヌクレオチドが全て相補的であるもののみならず、DNA 又はmRNAとオリゴヌクレオチドとが配列番号:1に示される塩基配列に選択的に安定にハイブリダイズできる限り、1 又は複数個のヌクレオチドのミスマッチが存在していてもよい。選択的に安定にハイブリダイズするとは、少なくとも20個、好ましくは30個の連続したヌクレオチド配列領域で、少なくとも70% 、好ましくは少なくとも80% 、より好ましくは90% 、さらに好ましくは95% 以上の塩基配列上の相同性を有するものを示す。
本発明の1 つの態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは配列番号:8に示される塩基配列を有する。また、本発明の1 つの態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは配列番号:9に示される塩基配列を有する。
本発明において使用されるオリゴヌクレオチド誘導体がデオキシリボヌクレオチドの場合、各々の構造は式Iに示したとおりである。
ここで、X は独立して酸素(O )、イオウ(S )、低級アルキル基あるいは一級アミン又は二級アミンのいずれであってもよい。Yは独立して酸素(O )あるいはイオウ(S )のいずれでもよい。Bはアデニン、グアニン、チミン、あるいはシトシンのいずれかから選ばれ、主としてヒトガンキリン遺伝子のDNA 又はmRNAの相補的オリゴヌクレオチドである。R は独立して水素(H )又はジメトキシトリチル基あるいは低級アルキル基である。n は7-28である。
好ましいオリゴヌクレオチド誘導体としては、修飾されていないオリゴヌクレオチドだけではなく、下に示すごとく、修飾されたオリゴヌクレオチドでもよい。このような修飾体として、例えばメチルホスホネート型又はエチルホスホネート型のような低級アルキルホスホネート修飾体、ホスホロチオエート修飾体又はホスホロアミデート修飾体等が挙げられる。
これらのオリゴヌクレオチド修飾体は、次の通り常法により得ることができる。化1 のX 及びY がO であるオリゴヌクレオチドは市販のDNA 合成装置、例えばApplied Biosystems製によって容易に合成される。合成方法はホスホロアミダイトを用いた固相合成法、ハイドロジェンホスホネートを用いた固相合成法等で得ることができる(Atkinson, T. & Smith, M. in Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, ed. Gait, M. J. IRL Press, 35-81 (1984)、Caruthers, M. H. Science (1985) 230, 281、Kume, A. et al., J. Org. Chem. (1984) 49, 2139、Froehler, B. C. et al., Tetrahedron Lett. (1986) 27, 469、Garegg, P. J. et al., ibid (1986) 27, 4051、Sproat, B. S. et al., in Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, ed. Gait, M. J. IRL Press, 83-115 (1984)、Beaucage, S. L. & Caruthers, M. H. Tetrahedron Lett. (1981) 22, 1859-1862 、Matteucci, M. D. & Caruthers, M. H. Tetrahedron Lett. (1980) 21, 719-722、Matteucci, M. D. & Caruthers, M. H. J. Am. Chem. Soc (1981) 103, 3185-3191)。
X が低級アルコキシ基であるリン酸トリエステル修飾体は、常法、例えば化学合成で得られたオリゴヌクレオチドをトシルクロリドのDMF/メタノール/2,6- ルチジン溶液で処理することにより得ることができる(Moody, H. M. et al., Nuclein Acids Res. (1989) 1
7, 4769-4782)。
X がアルキル基であるアルキルホスホネート修飾体は、常法、例えばホスホアミダイトを用いて得ることができる(Dorman, M. A.et al., Tetrahedron Lett. (1984) 40, 95-102 、Agarwal, K. L. & Riftina, F. Nucleic Acids Res. (1979) 6, 3009-3024 )。
X がS であるホスホロチオエート修飾体は、常法、例えばイオウを用いた固相合成法(Stein, C. A. et al., Nucleic Acids Research (1988) 16, 3209-3221)あるいはテトラエチルチウラム ジスルフィドを用いて、固相合成法により得ることができる(Vu, H. & Hirschbein, B. L. Tetrahedron Lett. (1991) 32, 3005-3008 )。
X 、Y が共にS であるホスホロジチオエート修飾体は、例えばビスアミダイトをチオアミダイトに変換し、イオウを作用させることにより固相合成法により得ることができる(Brill, W. K-D. J. Am. Che. Soc. (1989) 111, 2321-2322 )。
X が一級アミンあるいは二級アミンであるホスホロアミデート修飾体は、例えばハイドロジェンホスホネートを一級あるいは二級アミンで処理することにより固相合成法により得ることができる(Froehler, B. et al., Nucleic Acids Res. (1988) 16, 4831-4839)。あるいは、アミダイトをtert- ブチルハイドロパーオキサイドで酸化しても得ることができる(Ozaki, H. et al., Tetrahedron Lett. (1989) 30, 5899-5902)。
精製及び純度確認は、高速液体クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で行うことができる。分子量の確認は、Electrospray Ionization Mass Spectrometry 又はFast Atom Bonbardment-Mass Spectrometry で行うことができる。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体はヒトガンキリンポリペプチドをコードするDNA 又はmRNAの塩基配列にハイブリダイズする配列を有するものであれば、その合成法や由来はいずれでもよい。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、後述の実施例7に示す通りヒトガンキリンポリペプチドの産生細胞に作用して、ヒトガンキリンポリペプチドをコードするDNA 又はmRNAに結合することにより、その転写又は翻訳を阻害したり、 mRNA の分解を促進したりして、ヒトガンキリンポリペプチドの発現を抑制することにより、結果的にヒトガンキリンポリペプチドの作用を抑制する効果を有する。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体により抑制されるヒトガンキリンポリペプチドの作用としては、後述の実施例7に記載される細胞の軟寒天中でのコロニー形成能の抑制が挙げられる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、それらに対して不活性な適当な基剤と混和して塗布剤、パップ剤等の外用剤とすることができる。
また、必要に応じて、賦形剤、等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、無痛化剤等を加えて錠剤、散財、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、液剤、点鼻剤など、さらに凍結乾燥剤とすることができる。これらは常法にしたがって調製することができる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は患者の患部に直接適用するか、又は血管内に投与するなどして結果的に患部に到達し得るように患者に適用する。さらには、持続性、膜透過性を高めるアンチセンス封入素材を用いることもできる。例えば、リポソーム、ポリ-L- リジン、リピッド、コレステロール、リポフェクチン又はこれらの誘導体が挙げられる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体の投与量は、患者の状態に応じて適宜調整し、好ましい量を用いることができる。例えば、0.1 〜100mg/kg好ましくは0.1 〜50mg/kg の範囲で投与することができる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはガンキリンポリペプチドの発現を阻害し、したがってガンキリンポリペプチドの生物学的活性を抑制することにおいて有用である。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するガンキリンポリペプチドの発現阻害剤は、ガンキリンの生物学的活性、すなわち癌原性を抑制することができ、癌や過増殖性疾患の治療剤として有用である。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
実施例1サブトラクション法によるcDNAのクローニング
サブトラクション法(Nakayama, H.et al., Develop.Growth Differ.(1996) 38, 141-151) を用いて、肝癌に特異的に発現する遺伝子のcDNAをクローニングした。
55歳男性の手術標本から原発性肝癌取扱い規約(日本肝癌研究会編)に規定されるステージ3の肝癌組織と正常肝組織とを採取した。各々の組織からTRIsol試薬(GIBCO BRL 製)を使用して全RNAを抽出した。
この全RNAからcDNA合成キット(Pharmacia 製)を使用してoligo-dTプライマーで二本鎖cDNAを合成した。ついで、このcDNAを制限酵素Rsa Iで消化後、リンカーアダプター(Nakayama, H.et al., Develop.Growth Differ.(1996) 38, 141-151)を付加し、PCR法によりプライマー(Nakayama, H.et al., Develop.Growth Differ.(1996) 38, 141-151)を用いてこれらのcDNAを増幅した。なお、正常肝組織由来のcDNAをPCR 法で増幅する際、末端をビオチンで標識したプライマーを用いた。
過剰量の正常肝組織由来の二本鎖cDNAを、少量の肝癌組織由来二本鎖cDNAに混ぜて、熱変性で一本鎖にした後に、二本鎖へアニーリングした。肝癌組織由来cDNAのうち正常肝組織にも発現していたものは、そのほとんどが大量に混在する正常肝由来の対応するcDNAと二本鎖を形成し、ビオチン標識を持つようになる。しかし肝癌組織に特異的な分子は、肝癌組織由来のcDNA同士で二本鎖を形成しビオチン標識を持たない。そこでビオチン標識を持つcDNA二本鎖を除去し、肝癌組織に特異的なcDNA分子を濃縮した。
濃縮した肝癌組織に特異的なcDNA分子をPCR法を用いて増幅し、同様の操作を繰り返して計5回濃縮を行った。こうして、ヒト肝臓組織由来の肝癌組織に特異的な250bpのcDNA断片を得た。全長cDNAを単離するため、ヒトの胎盤、マウスNIH/3T3細胞系、及びラットの胎盤から常法にしたがいcDNAライブラリーを作製し、λZAPIIファージベクター(Strategene製) に連結した。上記の250bpのヒトcDNA断片をプローブとして用いて、高ストリンジェント条件下に前記ヒト胎盤cDNAライブラリーをスクリーニングした。
すなわち、ハイブリダイゼーション溶液(5×SSPE、50%ホルムアミド、5×Denhardt′s溶液、0.5%SDS、100μg/ml変性DNA、10%硫酸デキストラン)中で、42℃でハイブリダイズさせ、次いで0.1×SSC、1.0%SDS、65℃の条件で洗浄した(Sambrook, J.et al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989)) 。その結果、678bp のORF を含む1542bpのヒトcDNAを得た。
このcDNA中の678bpのORF をPCR増幅し、これをプローブとして、低ストリンジェント条件下にラット胎盤及びマウスNIH/3T3細胞系のcDNAライブラリーをスクリーニングした。すなわち、ハイブリダイゼーション溶液(5×SSPE、50%ホルムアミド、5×Denhardt′s溶液、0.5%SDS、100μg/ml変性DNA、10%硫酸デキストラン)中で37℃にてハイブリダイズさせ、次いで1×SSC、1.0%SDS、37℃の条件で洗浄した(Sambrook, J.et al., Molecular Cloning, ColdSpring Harbour Laboratory Press (1989)) 。
その結果、ラット及びマウス由来のcDNAを単離した。これらのcDNAの塩基配列を常法により決定し、それらの塩基配列からアミノ酸配列を決定した。ヒト、ラット、マウスの推定アミノ酸配列を1文字標記により記載して比較した結果を次の表1に示す。このアミノ酸配列を有するポリペプチドをガンキリン (gankyrin) と命名した。ヒトガンキリン遺伝子とマウスガンキリン遺伝子は塩基配列レベルで90%の相同性を有し、アミノ酸配列レベルで93%の相同性を有していた。また、ヒトガンキリン遺伝子とラットガンキリン遺伝子は、塩基配列レベルで91%の相同性を有し、アミノ酸配列レベルで94%の相同性を有していた。
なお、ヒトガンキリンの塩基配列を配列番号:1に、アミノ酸配列を配列番号:2に示す。マウスガンキリンの塩基配列を配列番号:3に、アミノ酸配列を配列番号:4に示す。ラットガンキリンの塩基配列を配列番号:5に、アミノ酸配列を配列番号:6に示す。なお、ガンキリンのアミノ酸配列において1位のアミノ酸Metから13位のアミノ酸Leuまではシグナル配列であることが推測された。
得られたヒトガンキリンポリペプチドのアミノ酸配列は5.5個のアンキリンリピート(ankyrin repeat)(Lambert, S.et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, (1990) 87, 1730-1734)を有していた。この様子を次の表2に示す。
この表において、上の3行は典型的なアンキリンの配列を示し、下の6行は本発明のガンキリンポリペプチドのアミノ酸配列中のアンキリンリピートを示す。
また、図15には、種々の蛋白質中のアンキリンリピートの存在位置及びリピート数を示す。
ガンキリン遺伝子の染色体上の位置を決定するため、蛍光in situ ハイブリダイゼーション(in situ hybridization )を行った。すなわち、ヒトの血液から単離したリンパ球を、10%ウシ胎児血清及びフィトヘマグルチニン(PHA)を補充した最少必須培地(MEM)中で37℃にて68〜72時間培養した。このリンパ球培養物を0.18mg/mlのBrdU(Sigma 製)で処理することにより細胞集団の細胞周期を同調させた。細胞周期を同調させた細胞を無血清培地で3回洗浄した。細胞周期の停止を解除し、2.5μg/mlのチミジン(Sigma 製)を含有するMEM中で37℃にて6時間再培養した。細胞を集め、そして低張圧処理、固定及び空気乾燥を含む標準的方法を用いて染色体標本スライドを作製した。
約8.0kbのガンキリン遺伝子挿入部を有するファージDNA(Sambrook, J.et al., Moleculor Cloning 前出)を、 BRL BioNickラベルキットを用い、指示書にしたがってdATP及びビオチン-16-dCTPにより15℃にて1時間ニックトランスレーションを行うことによりビオチン標識した (Herg et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89 : 9509-9513 (1992)) 。
これをプローブとして用いて、蛍光イン・サイチュー・ハイブリダイゼーション (Fluorescence in situ hybridization;FISH)を行った (Herg et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89 : 9509-9531 (1992) ; Herg et al., Chromosoma, 102 : 325-332 (1993)) 。
すなわち、まずスライドを55℃にて1時間処理し染色体をスライドグラスに固着させた。RNase処理の後、スライドを2×SSC中70%ホルムアミドにより70℃にて2分間変性し、次にエタノールにより脱水した。50%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン及びヒトcot I DNAを含むハイブリダイゼーション混合物中で75℃にて5分間、プローブを変性した。反復配列を抑制するために37℃にて15分間インキュベートした後、前記の変性処理したスライド上に前記のプローブを添加した。一夜ハイブリダイゼーションを行った後、スライドを2×SSC中50%ホルムアミドにより37℃にて洗浄し、さらに1×SSC中で60℃にて洗浄した。
蛍光標識FITC−結合アビジン(Vector Laboratories製) によりビオチンを検出した後、DNAを染色する蛍光試薬であるDAPI(Sigma 製)を用いて染色し、染色体上にG/Q−バンドパターンを生じさせた。この方法を用いることにより、DNA を染色する蛍光試薬で染色体に特有な濃淡バンドパターンを作成することができ、染色体の帰属と染色体地図(位置)の作成が可能となる。
微弱な光を検出可能なTVカメラである冷却CCD カメラ(cooled charge-coupled device カメラ) (Photometrics 製) を用いて21の metaphase(分裂期)像を写真にとった。FISHシグナルとDAPIバンド形成染色体とを重ねることにより、FISHマップデータを染色体バンドに帰属させた (Hery et al., Methods in Molecular Biology : In situ hybridization protocols (K. H. A Choo. ed), p.35-49 (1994), Human Press, Clifton, NJ.)。
使用した条件下で、このプローブについて、ハイブリダイゼーション効率は約81%であった。すなわち、検査して100個の分裂図(mitotic figure) 中80個が1対の染色体上にシグナルを示した。特定の染色体を同定するためにDAPIバンド形成を用いたので、プローブからのシグナルはX 染色体の長腕(long arm)に帰属された。さらに、10枚の写真をまとめることにより詳細な位置決定を行った。結果を図1に示す。使用した条件下でFISH検出により検出されるその他の遺伝子座は存在しなかったので、プローブT4-11は染色体X領域q21.3-q22.2に位置付けられた。
得られたin situ ハイブリダイゼーションの結果(蛍光染色)を図2に示す。
実施例2ガンキリン遺伝子の組織発現レベルの検討
ガンキリン遺伝子の発現を調べるため、種々の組織及び細胞をTRIzo1試薬(GIBCO BRL製) 中でホモジナイズした。全RNA(20μg)を変性し、そして2.2Mホルムアルデヒドを含有する1.0%のアガロースゲル中での電気泳動により分離した。
ゲルをHybondN+ ナイロン膜(Amersham製)にブロットし、そして迅速ハイブリダイゼーション緩衝液(Rapid-hyb buffer,Amersham製)中で2時間、〔α−32P〕dCTP−ラベルcDNA断片(250bpのヒトガンキリンcDNA)にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションの後、0.1×SSC及び0.1%SDSを含む洗浄緩衝液中65℃にて30分間からなるストリンジェント条件下でフィルターを洗浄し、そして次に−80℃にてフィルムに露出した。フィルターを細長く切り、そして内部標準としての18S rRNA用のプローブと再度ハイブリダイズさせた。オートラジオグラムを走査デンシトメーター(アトー社製)により定量することによりRNAの発現レベルを評価した。
肝癌組織(T)及び肝非癌組織(N)からのサンプルの結果を図3に示す。下方は内部標準の結果を示し、上方はヒトガンキリンcDNAプローブにより検出した結果を示す。ガンキリンmRNAは肝癌組織のみで過剰発現していることが示された。
肝臓以外のヒト癌組織についての結果(陽性数/被験数)を下に示す。
RCC(腎細胞癌) 0/20
精巣癌 0/5
卵巣癌 0/5
胃癌 4/4
上記の結果、被験癌組織中、胃癌の組織にも、ガンキリンmRNAが過剰発現されていた。
種々の細胞系、すなわち、ヒト細胞系HepG2(レーン1)、Hela(レーン2)、K562(レーン3)、NC65(レーン4)、NEC8(レーン5)、T24(レーン6)、及びIMR90(レーン7)の結果を図4に示す。幾つかの細胞系においてガンキリンmRNAは発現されていた。
種々のヒト正常組織、すなわち、肝臓(レーン1)、脾細胞(レーン2)、膵臓(レーン3)、心臓(レーン4)、副腎(レーン5)、甲状腺(レーン6)、胎盤(レーン7)、卵巣(レーン8)、睾丸(レーン9)、腎臓(レーン10)、及び肺(レーン11)の結果を図5に示す。図5に示す通り、ヒト正常組織でのガンキリンmRNAの発現はわずかであった。
以上の結果、癌組織におけるガンキリンmRNAの特異的な高発現が確認された。
実施例3ガンキリンポリペプチドに対する抗体の調製及び免疫組織化学的分析
抗ガンキリンポリペプチド抗体の調製のため、ガンキリンのC−末端領域に対応するペプチドMet-Glu-Gly-Cys-Val-Ser-Asn-Leu-Met-Val-Cys-Asn-Leu-Ala-Tyr (配列番号:7)を合成した。このペプチドをキーホールリンペットヘモシアニンに連結し、そしてウサギに免疫感作した。免疫感作から14、42及び56日後に再度ウサギを免疫感作し、抗血清を得た。
得られた抗血清を固相化した上記ペプチドを用いてアフィニティー精製し、ポリクローナル抗体を得た(Fmoc Chemistry, Research Gevetic Inc.)。本抗体のガンキリンポリペプチドに対する反応性・特異性は、ウエスタンブロット解析により確認した。すなわち、ガンキリン遺伝子発現プラスミドをTNT発現系 (Promega 製) に加え翻訳生成物(ガンキリンポリペプチド)を得た。この際、〔35S〕メチオニンを系に添加することにより〔35S〕メチオニン標識ヒトガンキリンポリペプチドを合成した。同じ条件を用いて非標識ガンキリンポリペプチドも合成した。
35S〕メチオニン標識および非標識ヒトガンキリンポリペプチドをSDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(条件は後述)し、非標識体の泳動パターンをウエスタンブロット法にて解析した。すなわち、非標識体泳動ゲルをイモビロン転写膜 (Immobilon transfer membrane)(Millipore製) に転写し、5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するTris緩衝液中でブロックした。次に、上記ブロッティング膜をTris緩衝液、0.1% Tween-20及びBSA中に1:2000〜1:10000に希釈した本ポリクローナル抗体と4℃にて16時間インキュベートした。
ブロッティング膜を、Tris緩衝液、0.1% Tween-20中で室温にて繰り返し洗浄した。そして、二次抗体としてのホースラディッシュパーオキシダーゼ標識した抗ウサギイムノグロブリン抗体と共に室温にて1時間インキュベートした。これを洗浄の後、電気化学発光試薬(Amersham製)により発色せしめた。
一方、標識体泳動ゲルについてはオートラジオグラフィーにより、ガンキリンポリペプチドの泳動位置を確認した。その結果、標識体のオートラジオグラフィーバンドに一致して、非標識体のウエスタンブロットのバンドが得られ、本ポリクローナル抗体がガンキリン遺伝子産物を認識することが示された。
また、同時に行った、鋳型DNA を含まないTNT 発現系やルシフェラーゼcDNA発現産物の本ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット解析ではこのような特異的なバンドは得られなかったことから、本ポリクローナル抗体のガンキリンポリペプチドに対する特異性が確認された。図8のAに、インビトロ翻訳された標識ガンキリン遺伝子生成物の結果を示す。鋳型(−)(レーン1)、陽性対照(〜60kDa に相当するルシフェラーゼcDNA)(レーン2)、ガンキリン(レーン3)。インビトロで翻訳されたガンキリン遺伝子産物(未標識)を抗ガンキリンポリペプチド抗体を用いるウエスタンブロットにより分析した結果を図8のBに示す。各レーンは、鋳型(−)(レーン1)、陽性対照(〜60kDa に相当するルシフェラーゼcDNA)(レーン2)、ガンキリン(レーン3)を示す。
3人の肝癌患者の肝非癌組織(N)及び肝癌組織(T)の溶解物中のガンキリンポリペプチドを上記と同様にアフィニティー精製した抗ガンキリンポリペプチド抗体を用いてウエスタンブロット法にて検出した結果を図6に示す。実施例2で示したmRNAレベルと同様、非癌部肝臓に比し、肝癌組織中により多くのガンキリンポリペプチドが検出された。
ヒト細胞系、すなわちHepG2(ATCCカタログ1994 (American Type Culture Collection))(レーン1)、HeLa(ATCCカタログ1994 (American Type Culture Collection))(レーン2)、T24(ATCCカタログ1994 (American Type Culture Collection))(レーン3)、NC65(Hoehn, W.and Schroeder, F.H., Invest.Urol. (1978) 16, 106) (レーン4)、NEC8(ヒューマンサイエンス研究資源バンク、細胞・遺伝子カタログ第2版、平成7(1995)年)(レーン5)、Jurkat(ATCCカタログ1994 (American Type Culture Collection))(レーン6)、293(ATCCカタログ1994 (American Type Culture Collection))(レーン7)及びCOS-7(ATCCカタログ1994 (American Type Culture Collection))(レーン8)の全細胞溶解物のガンキリンポリペプチドを、上記と同様にアフィニティー精製した抗ガンキリンポリペプチド抗体を用いてウエスタンブロット法で検出した結果を図7に示す。その結果、全ての株化細胞においてガンキリンポリペプチドの発現が確認された。
全細胞抽出物及び組織抽出物を、50mM Tris-HCl、pH7.4、400mM NaCl、1%SDS、1% Triton X-100、1%デオキシコール酸、5mM EDTAからなる放射性同位元素標識免疫沈降法用の改変緩衝液中で溶解した3〜5×106 個の細胞から調製し、そして次に短時間超音波処理してDNAを剪断した。すべての抽出液に、使用直前に15mM β−グリセロールホスフェート、2mMピロリン酸ナトリウム、1mM Na3 VO4 からなるホスファターゼ阻害剤及びアプロチニン、ロイペプチン及びフェニルメチルスルホニルフルオリドからなるプロテアーゼ阻害剤を添加した。
サンプルをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分離し、そしてSDS-PAGEに用いたゲルをイモビロン転写膜 (Immobilon transfer membrane)(Millipore製) に転写し、そして5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するTris緩衝液中でブロックした。次に、上記ブロッティング膜をTris緩衝液、0.1% Tween-20及びBSA中に1:2000〜1:10000に希釈した上記一次抗血清又は抗体と4℃にて16時間又は室温にて1時間インキュベートした。ブロッティング膜を、Tris緩衝液、0.1% Tween-20中で室温にて繰り返し洗浄した。そして、二次抗体としてのホースラディッシュパーオキシダーゼ標識した抗ウサギイムノグロブリン抗体又は抗マウスイムノグロブリン抗体と共に室温にて1時間インキュベートした。これを洗浄の後、電気化学発光試薬(Amersham製)により発色せしめた。
実施例4ガンキリンポリペプチドの特徴づけ
ヒトガンキリンポリペプチドをコードする678bpのcDNA(実施例1)を、p MKIT-NEO哺乳類発現ベクター(新細胞工学実験プロトコールP.259、東大医科研編、秀潤社)に、センス方向及びアンチセンス方向に連結した。このベクター中のSRαプロモーターは、挿入されたDNAからのRNAの合成を構成的に指令することができる。pMKIT-NEOベクターは、形質転換体の選択に適当なネオマイシン耐性遺伝子を有する。
30μgのプラスミド構成物をリン酸カルシウム法によりNIH3T3細胞(Jainchill, J.F.et al., J.Virol (1969) 4, 549-553)にトランスフェクトした。トランスフェクトして48時間後、培地に1000μg/mlの濃度でG418を添加した。個々のコロニーを単離し、さらなる解析のために増殖せしめた。こうして、5個のセンスクローン、5個のアンチセンスクローン、及び5個の対照クローンを樹立し、これらのクローンをインビトロ増殖、形態、細胞周期及び造腫瘍性 (tumorigenicity) により特徴付けた。
増殖曲線から倍化時間を決定した。下層(DMEM、10%FCS、0.6%寒天)及び上層(DMEM、10%FCS、0.3%寒天)から成る2層の軟寒天中で細胞を培養した。35mmの軟寒天プレートに5×103 個の細胞を接種し、37℃にて4〜5週間インキュベートした後細胞をカウントした。細胞数15個以上から成るコロニーの数の5クローンの平均は、対照クローンで25±2、センスクローンで123±1であった。したがって、ガンキリンポリペプチドを発現する細胞の軟寒天中でのコロニー形成能の増加が示された。
4週令の雌性ヌードマウス(Flanagan, S.P.Genet.Res.(1966) 8, 295-309)皮下に1×106 個の細胞を移植することによりNIH3T3細胞系での造腫瘍性を試験した。モック構成物を含有する5種類のクローン性細胞系及びセンスヒトガンキリン構成物を含有するクローン性細胞系のそれぞれを、3匹のマウス(合計18匹のマウス)に1×106 細胞/マウスを皮下移植した。皮下移植の後3ケ月間にわたり腫瘍の形成を観察した。腫瘍の測定は、同一の観察者による2つの直角方向に、直線キャリパーを用いて行った。また、細胞周期の解析のためフローサイトメトリーを用いた。
その結果、対照ベクターを含む細胞を接種した場合腫瘍の形成は4クローン中0クローン(腫瘍形成なし)であったのに対して、センスベクターを含む細胞クローンを接種した場合の腫瘍形成は4クローン中3クローンであった。したがって、ガンキリンポリペプチド発現細胞をマウスに移植すると造腫瘍能を示すことが明らかになった。なお、腫瘍を形成しなかった1クローンは他の3クローンよりガンキリンmRNAの発現レベルが低かった。
培養ヒト腎癌細胞株293は培地中より血清を除くことにより、アポトーシスが誘導され死細胞が増加する。この細胞系を用い、ガンキリン遺伝子のアポトーシス誘導に対する作用を検討した。実験に先立ち、10μgの上記のpMKIT-NEOベクターを用い、各遺伝子をリン酸カルシウム共沈法により293細胞にトランスフェクトし、G418選択培地にてそれぞれの遺伝子を安定に導入された複数個のクローンを得、以降の実験に供した。
なお、この際、3回のトランスフェクション実験のG418選択培地より得られたコロニーフォーカス数の平均値は、対照クローンで56±4、センスクローンで70±4、そしてアンチセンスクローンで23±3であった。したがって、ガンキリンポリペプチドが細胞増殖促進ないしアポトーシス誘導抑制に作用していることが示された。
各293細胞クローンを用い、2×105 細胞を60mmの組織培養用ペトリ皿(Nunc GmbH)にそれぞれ播き込んだ。血清を除去した後、細胞をトリプシン処理し、浮遊細胞と付着細胞の数、およびトリパンブルー染色により死細胞数をカウントし、全細胞数に対する死細胞数の割合を求めた。
また、アポトーシス細胞数の解析には組織化学的方法を用いた。すなわち、各クローン細胞をカバーグラス上で48時間60%飽和密度に達するまで増殖させ、血清除去後、ApopTagアポトーシス検出キット(Oncor製)によりアポトーシス細胞を染色し、光学顕微鏡撮影を行い全接着細胞数に対するアポトーシス細胞の割合を計測した。
上記2実験において、全細胞数に対するトリパンブルー染色全細胞数の比率(%)と、全細胞数に対するアポトーシス細胞の数の比率(%)はそれぞれ、対照クローンでは33±5%と45±5%であり、センスクローンでは59±6%と30±2%であった。したがって、ガンキリン遺伝子産物によるアポトーシスおよび細胞死が抑制されることが示された。
各クローン、2×106 個の細胞を10cmのペトリ皿に播手した。そしてインキュベートした後に血清を除去しアポトーシスを誘導した。アポトーシス細胞の顕著な特徴である、ヌクレオソーム間での遺伝子DNA 断片化を解析するため、所定の時間後に上記細胞を穏やかに剥がし取り、付着細胞と一緒に上清に集めた。細胞を、0.25%のNP-40及び0.1mg/mlのRNaseを含有するTBE(45mM Tris−硼酸塩、1mMEDTA、pH8.0)0.25mlに再懸濁した。
37℃にて30分間のインキュベーションの後、抽出物を1mg/mlのプロテイナーゼKによりさらに30分間、37℃で処理した。次に、30μlの抽出物を0.5μg/mlの臭化エチジウムの存在下で1.7%アガロースゲル電気泳動を行った。その結果、センスガンキリン遺伝子を導入した細胞では対照細胞に比し、ヌクレオソーム間DNA 断片化による梯子状の電気泳動パターンが減少していた。したがって、これら3実験よりガンキリン遺伝子産物がアポトーシス誘導に対し抑制的に働くことが示された。これは他のいくつかの癌原性遺伝子に認められる特徴であり、ガンキリン遺伝子が癌原性遺伝子であることを支持している。
実施例5ガンキリンポリペプチドの相互作用
サイトメガロウィルスのエンハンサー/プロモーターを有し且つインフルエンザウィルスHA(ヘモグルアチニン)エピトープの塩基配列を有するpCMV4-3HA′ベクター(Brockman, J.A.et al., Moleculor and Cellulor Biology (1995) 15, 2809-2818 )に、実施例1で得たヒトガンキリンcDNAを連結して、ガンキリンとインフルエンザウィルスHAからなる融合ポリペプチドを発現するプラスミドpCMV4-3HA+gankyrinを作製した。
さらに、ベクターpGEX(Pharmacia 製)にヒトガンキリンコード配列を挿入することによりGST(グルタチオン・S ・トランスフェラーゼ)とガンキリンからなる融合ポリペプチドを発現するプラスミドpGEX-gankyrinを作製した。
10μgのpCMV4-3HA+gankyrinを用いてリン酸カルシウム法により293細胞を一時的にトランスフェクトした。大腸菌にpGEX-gankyrinを導入し、そして1mM IPTGによりGST−ガンキリン融合ポリペプチドの生産を誘導した。4℃での遠心分離により細胞を回収し、そしてTriton-X100を含むPBS中での音波処理により細胞を溶解した。この細胞溶解物を、293細胞形質転換体からの全細胞抽出物と混合し、そして4℃にて16時間インキュベートした。
GST融合ポリペプチドをグルタチオン−Sepharose 4B(Pharmacia製) 上に集め、そして抗Rb抗体、抗NFκBp50抗体、及び抗NFκBp65( いずれもSanta Crutz 製) を用いるウエスタンブロット法により分析した。
細胞抽出物及び免疫沈澱の調製は次のようにして行った。50mM HEPES(pH7.5)、150mM NaCl、2.5mM EGTA、1mM DTT、0.1% Tween-20、10%グリセロール、プロテアーゼ阻害剤及びフォスファターゼ阻害剤を含有するIP緩衝液に細胞を懸濁し、音波処理し、そして次に4℃にて10分間10000×gで遠心分離した。抗HA抗体、抗Rb抗体、抗NFκBp50抗体又は抗NFκBp65抗体によりプレコートされたプロテインA−Sepharose CL4B(Pharmacia製)を用いて、4℃にて16時間、上清を沈降せしめた。
ビーズ上の免疫沈降した蛋白質をIP緩衝液により10回洗浄した。2×SDSサンプル緩衝液中の沈澱をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、そして抗HA抗体、抗Rb抗体、抗NFκBp50抗体又は抗NFκBp65抗体を用いるウエスタンブロット法により分析した。
次に結果を示す。
インビトロで細胞の溶解物を用いた結果を図9に示す。GSTのみあるいはGSTとガンキリンの融合ポリペプチドを大腸菌で発現させ、これを回収した。ヒト293細胞の溶解物と先に得られたGSTのみあるいはGST−ガンキリン融合ポリペプチドを混ぜ、グルタチオン結合セファロースで沈降させこれを電気泳動した。
電気泳動したゲルをニトロセルロース膜に転写し(A)抗Rb抗体、(B)抗p50抗体および(C)抗p65抗体で検出した結果を示す。(A)において、レーン左から、ヒト293細胞の溶解物のみ、ヒト293細胞の溶解物と大腸菌で発現させた上記GSTポリペプチドをまぜ、グルタチオン結合セファロースで沈降させたもの、および、ヒト293細胞の溶解物と大腸菌で発現させた融合ポリペプチドをまぜ、グルタチオン結合セファロースで沈降させたものの結果を示す。
(B)において、レーン左から、ヒト293細胞の溶解物のみ、ヒト293細胞の溶解物と大腸菌で発現させたGSTポリペプチドをまぜ、グルタチオン結合セファロースで沈降させたもの、および、ヒト293細胞の溶解物と大腸菌で発現させた融合ポリペプチドをまぜ、グルタチオン結合セファロースで沈降させたものの結果を示す。(C)において、レーン左から、ヒト293細胞の溶解物のみ、ヒト293細胞の溶解物と大腸菌で発現させたGSTポリペプチドをまぜ、グルタチオン結合セファロースで沈降させたもの、および、ヒト293細胞の溶解物と大腸菌で発現させた融合ポリペプチドをまぜ、グルタチオン結合セファロースで沈降させたものの結果を示す。
細胞のインビボ実験を図10に示す。HAと融合させたガンキリンを発現するヒト293細胞の溶解物を(A)抗Rb抗体、(B)抗p50抗体あるいは(C)抗p65抗体で免疫沈降し、次いで抗HA抗体で検出するとHA融合ガンキリンポリペプチドが検出された。(A)において、ガンキリン遺伝子を含まないベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を非特異的イムノグロブリン(レーン1)又は抗Rb抗体(レーン2)で沈降させ、それを電気泳動して抗HA抗体で検出したもの、ガンキリン遺伝子を含むベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を非特異的イムノグロブリン(レーン3)又は抗Rb抗体(レーン4)で沈降させ、それを電気泳動して抗HA抗体で検出したものの結果を示す。
(B)において、レーンは、ガンキリン遺伝子を含まないベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を非特異的イムノグロブリン(レーン1)又は抗p50抗体(レーン2)で沈降させ、それを電気泳動して抗HA抗体で検出したもの、ガンキリン遺伝子を含むベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を非特異的イムノグロブリン(レーン3)又は抗p50抗体(レーン4)で沈降させ、それを電気泳動して抗HA抗体で検出したもの、およびガンキリン遺伝子を含むベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を電気泳動したもの(レーン5)を抗HA抗体で検出したものの結果を示す。
(C)において、レーンは、ガンキリン遺伝子を含まないベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を非特異的イムノグロブリン(レーン1)又は抗p65抗体(レーン2)で沈降させ、それを電気泳動して抗HA抗体で検出したもの、ガンキリン遺伝子を含むベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を非特異的イムノグロブリン(レーン3)又は抗p65抗体(レーン4)で沈降させ、それを電気泳動して抗HA抗体で検出したもの、およびガンキリン遺伝子を含むベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物(レーン5)を電気泳動したものを抗HA抗体で検出したものの結果を示す。
細胞のインビボ実験の結果を図11に示す。HAとガンキリンからなる融合ポリペプチドを発現するヒト293細胞の溶解物を抗HA抗体で免疫沈降し、(A)抗Rb抗体あるいは(B)抗p65抗体で検出すると各々Rbあるいはp65が検出された。
(A)において、レーンは、ガンキリン遺伝子を含まないベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を電気泳動して抗Rb抗体(レーン1)で検出したもの、ガンキリン遺伝子を含まないベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を非特異的イムノグロブリン(レーン2)又は抗HA抗体(レーン3)で沈降させ、それを電気泳動して抗Rb抗体で検出したもの、ガンキリン遺伝子を含むベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を非特異的イムノグロブリン(レーン4)又は抗HA抗体(レーン5)で沈降させ、それを電気泳動して抗Rb抗体で検出したものの結果を示す。
(B)において、レーンは、ガンキリン遺伝子を含まないベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を、非特異的イムノグロブリン(レーン1)又は抗HA抗体(レーン2)で沈降させ、それを電気泳動して抗p65抗体で検出したもの、ガンキリン遺伝子を含むベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物を非特異的イムノグロブリン(レーン3)又は抗HA抗体(レーン4)で沈降させ、それを電気泳動して抗p65抗体で検出したもの、およびガンキリン遺伝子を含むベクターで形質転換したヒト293細胞の溶解物(レーン5)を電気泳動したものを抗p65抗体で検出したものの結果を示す。
これらの結果、ガンキリンポリペプチドは細胞内(in vivo )でRb又はNFκBと相互作用することが示された。
実施例6細胞周期とガンキリン遺伝子発現
NIH/3T3細胞を72時間にわたる血清飢餓(serum starvation)により細胞周期を初期G1期に固定し、そして血清の再添加により細胞周期を同調させた。細胞を溶解し、mRNAを抽出して、ガンキリンcDNAをプローブとして検出を行った。すなわち、マウスガンキリンのコーディング領域のcDNAを鋳型としPCR法により増幅した後、32Pを用いてランダムプライミングで標識したものをプローブとして用い、ノーザンブロット法にてmRNAを検出した。
各々の細胞手段の細胞周期解析にはフローサイトメトリー(Flow Cytometry)を用いた。すなわち、Ca2+及びMg2+を含有しないPBSにて細胞を洗浄し、トリプシン処理を行った。次いで、10%FCSを含むDMEMで細胞を洗浄して回収し、サンプルバッファーでもう一度洗浄して再懸濁した後、70%エタノールで細胞を固定した。これをPI(Propiodium iodine)で染色してフローサイトメーターで測定した。
図12に結果を示す。図12において、各レーンは血清再添加後、1時間(レーン1)、3時間(レーン2)、6時間(レーン3)、9時間(レーン4)、12時間(レーン5)、15時間(レーン6)、18時間(レーン7)、21時間(レーン8)、24時間(レーン9)、27時間(レーン10)、30時間(レーン11)及び33時間(レーン12)の結果を示す。1〜9時間(レーン1〜4)はG1期であり、12〜18時間(レーン5〜7)はS期であり、21〜24時間(レーン8〜9)はG2+M期であり、27時間(レーン10)以後再びG1期にもどる。
種々の細胞濃度で増殖した細胞中に発現しているmRNAの検出の結果を図13に示す。この図において、細胞濃度1×106 細胞/100mmディッシュ(レーン1)、2×106 細胞(レーン2)、3×106 細胞(レーン3)及び4×106 細胞(レーン4)の結果を示す。
部分的肝切除を行った後のマウスの肝再生過程で発現するmRNAの検出結果を図14に示す。部分的肝切除前(レーン1)、並びに部分的肝切除から1時間後(レーン2)、6時間後(レーン3)、24時間後(レーン4)、48時間後(レーン5)、72時間後(レーン6)及び168時間後(レーン7)の結果を示す。
細胞周期を同調したNIH3T3細胞にてガンキリンのmRNAを調べると、ガンキリンは細胞周期にしたがい発現が変化した。また、部分肝切除マウスの肝でも同様に細胞周期にしたがい発現が変化した。これらのことからガンキリンは細胞周期の進行に伴い、G1期からS 期に発現が亢進することが示され、細胞周期制御との関連が示唆された。
実施例7アンチセンス鎖による肝癌細胞抑制効果
ヒト肝癌細胞株HepG2を用いて、ヒトガンキリン・アンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体(配列:CCTGTCGCTTTACCTCCCCA)(配列番号:8)及び(TACCTCCCCACACACAGATT)(配列番号:9)の肝細胞増殖抑制効果を調べた。培養液として2%ウシ胎児血清(FCS)を加えたRPMI1640(ニッスイ)を用いた。
1mlの培養液を入れた35mm培養皿を一晩37℃、5%CO2 インキュベーターで保存し、これに0.25%トリプシン処理とピペッティングにより単一細胞にしたHepG2細胞を1×102 個ずつ加えた。24時間後、ガンキリン遺伝子の開始コドンを含むヒトガンキリンアンチセンスオリゴヌクレオチド(0、2.5及び10μg/ml)を含む1mlの培養液と交換し、さらに4日間培養した。30個以上の細胞塊をコロニーとして定義し、倒立顕微鏡下でそれぞれの個数を数えた。すなわち、蒸留水を加えた対照を100%として、センスオリゴヌクレオチドを添加した場合のコロニー数は95±7%であるのに対してアンチセンスヌクレオチドを添加した場合にはコロニー数は70±5%に減少した。
ヒトガンキリンアンチセンスオリゴヌクレオチドはコロニーの形成に対する抑制効果を示した。この結果、ガンキリン遺伝子の開始コドンを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは肝癌細胞株HepG2の細胞増殖を抑制することが明らかになった。
発明の効果
本発明のガンキリンポリペプチドは細胞のコロニー形成能の増加、マウスにおける造腫瘍能及びアポトーシス誘導の抑制等の作用を示すことから、癌原性を有することが示された。ガンキリンポリペプチドおよびそれをコードするDNA は、発癌の作用機序の解明のために有用である。また、ガンキリンポリペプチドを使用したスクリーニング方法、ガンキリンポリペプチドに対する抗体、それを用いたガンキリンポリペプチドの検出又は測定方法およびガンキリンポリペプチドをコードするDNA に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドも同様に発癌の作用機序の解明のために有用である。
特許協力条約第13規則の2の寄託された微生物への言及及び寄託機関
寄託機関 名 称:工業技術院生命工学工業技術研究所
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1−3
微生物(1) 表 示:Escherichia coli DH5α〔pBS-t4-11 〕
寄託番号:FERM BP-6128
寄託日:1997年9月29日
図1はヒトのX染色体上のガンキリン遺伝子の位置を示す模式図である。 図2は、ヒトリンパ球中の染色体上のガンキリン遺伝子をイン・サイチュー・ハイブリダイゼーション法により蛍光染色して検出したことを示す写真である。 図3は、5人の肝癌患者(1〜5)の正常肝組織(N)及び肝癌組織(T)からのmRNAをヒトガンキリンcDNAをプローブとしてノザン法により検出した結果を示す電気泳動図である。 図4は、種々のヒト細胞系のmRNAをヒトガンキリンcDNAをプローブとしてノザン法により検出した結果を示す電気泳動図である。 図5は、種々の正常組織中のmRNAをヒトガンキリンcDNAをプローブとしてノザン法により検出した結果を示す電気泳動図である。
図6は、3人の肝癌患者(1〜3)の正常肝組織(N)及び肝癌組織(T)からの細胞溶解物中のガンキリンポリペプチドを、抗ガンキリンポリペプチド抗体を用いてウエスタンブロット法で検出した結果を示す電気泳動図である。 図7は、種々のヒト細胞系からの細胞溶解物中のガンキリンポリペプチドを、抗ガンキリンポリペプチド抗体を用いてウエスタンブロット法で検出した結果を示す電気泳動図である。 図8のAは、インビトロ翻訳されたガンキリン遺伝子生成物を図6と同様にして検出した結果を示し、Bはインビトロ翻訳されたガンキリン遺伝子生成物(未標識)を図6と同様にして検出した結果を示す電気泳動図である。 図9は、ガンキリンポリペプチドとGSTとの融合ポリペプチドを大腸菌で発現させ、種々の抗体により検出した結果を示す電気泳動図である。 図10は、ガンキリンポリペプチドとHAとの融合ポリペプチドを293細胞において発現させ、種々の抗体により検出した結果を示す電気泳動図である。
図11は、ガンキリンポリペプチドとHAとの融合ポリペプチドを293細胞において発現させ、種々の抗体により検出した結果を示す電気泳動図である。 図12は、NIH/3T3細胞の種々の細胞周期におけるmRNAをマウスガンキリンcDNAをプローブとしてノザン法により検出した結果を示す電気泳動図である。 図13は、種々の濃度で増殖したNIH/3T3細胞のmRNAを、図12と同様にして検出した結果を示す電気泳動図である。 図14は、マウスにおける部分的肝切除後の肝再生過程における肝組織のmRNAを、図12と同様にして検出した結果を示す電気泳動図である。 図15は種々の蛋白質中のアンキリンリピートの位置と反復数を示す図である。

Claims (1)

  1. ガンキリン(gankyrin)の生物学的活性を有するポリペプチドの発現を抑制するガンキリン阻害剤を含んでなる肝癌治療剤であって、該ガンキリン阻害剤が配列番号:8又は配列番号:9に記載の塩基配列を有し、そして下記式I
    (式中、X は独立して酸素(O )、イオウ(S )、低級アルキル基あるいは一級アミン又は二級アミンであり;Yは独立して酸素(O )またはイオウ(S )であり;Bはアデニン、グアニンチミンまたはシトシンであり、R は独立して水素(H )、ジメトキシトリチル基または低級アルキル基であり;そしてn は18である)
    で表されるオリゴヌクレオチドである、肝癌治療剤。
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