JP4787060B2 - 光ピックアップおよび光情報処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光情報処理装置に用いられる光ピックアップに係り、特に、光源の波長または光記録媒体の透明基板厚が異なることで、記録密度が異なる3種類の光記録媒体に対して情報を記録,再生する際に、互換性を有する光ピックアップおよび光情報処理装置に関するものである。
映像情報、音声情報、またはコンピュータ上のデータを保存する手段として、記録容量0.65GBのCD、記録容量4.7GBのDVDなどの光記録媒体が普及しつつある。そして、近年、さらなる記録密度の向上および大容量化の要求が強くなっている。
このような光記録媒体の記録密度を向上させる手段としては、光記録媒体に情報の書き込みまたは読み出しを行う光ピックアップにおいて、対物レンズの開口数(以下、NAという)を大きくすること、あるいは、光源の波長を短くすることにより、この対物レンズによって集光され、光記録媒体上に形成されるビームスポットを小径化することが有効である。
そこで、例えば「CD系光記録媒体」では、対物レンズのNAが0.50、光源の波長が780nmとされているのに対して、「CD系光記録媒体」よりも高記録密度化がなされた「DVD系光記録媒体」では、対物レンズのNAが0.65、光源の波長が660nmとされている。そして、光記録媒体は、前述したように、さらなる記録密度の向上および大容量化が望まれており、そのためには、対物レンズのNAを0.65よりもさらに大きく、あるいは、光源の波長を660nmよりもさらに短くすることが望まれている。
このような大容量の光記録媒体および光情報処理装置として、2つの規格が提案されている。1つは、青色の波長領域の光源とNA0.85の対物レンズを用いて、22GB相当の容量確保を満足する「Blu-ray Disc」の規格(以下、BDという)である。もう1つは、青色波長は同じであるが、NA0.65の対物レンズを用いて、20GB相当の容量確保を満足する「HD−DVD」の規格(以下、HDという)である。
前者はDVD系に比べ短波長化、高NA化の変更により大容量化を行い、後者は高NA化を行わない代わりに信号処理の工夫により線記録密度の向上を可能とし、ランド・グルーブ記録の採用により大容量化を行っている。
また、BDとHDは、光源の発振波長が405nm程度の青紫色半導体レーザの光源を用いる点で共通しているが、光記録媒体は基板厚さがそれぞれ0.1mm、0.6mmと異なる。
BDとHDのような高密度な情報の記録および/または再生を行える光ピックアップであっても、従来から大量に供給されたCD、DVDに対しても情報の記録および/または再生を確保する必要があり、BDまたはHDと、DVD、CDの光学系を一体にすることが望ましい。
そして、記録,再生すべき光記録媒体の種類に応じて、適切な波長の光源を選択し、この選択した光束に対して適切な光学処理を施し、それぞれの光記録媒体の基板厚さの違いによって生じる球面収差を補正することが望ましい。
3つの異なる光記録媒体を1つの光ピックアップを用いて記録あるいは再生するものとしては、回折素子を用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。
特開2005−158217号公報
しかしながら、前記の手段では、2つの回折面を使用するため、回折素子の製造工程や成型に必要な金型の数が多く必要となる。また、光ピックアップの部品点数が多くなり、小型化、低コスト化に適さないという問題が生じる。
さらに、前述の手段では回折面を2面用いるために、回折させないで用いるBDの光束に対して、DVDやCDに対する効率がさらに低下するという問題が生じることから、回折面の面数は少ない方が望ましい。
本発明は、前記従来技術の問題を解決することに指向するものであり、使用波長に応じた複数の光源を備えながら、単一の対物レンズと回折面一面により、異なる基板厚さを有する3種類の光記録媒体の記録面に、必要な開口数(NA)で光束を収束する光ピックアップおよび光情報処理装置を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載した光ピックアップは、記録密度の異なる複数種類の光記録媒体に対して記録,再生,消去のうち1以上行う光ピックアップにおいて、光記録媒体の記録密度が大きい順に第1,第2,第3の光記録媒体として、第1の光記録媒体に対応した第1の波長λ1を有する第1の光束を出射する第1の光源と、第2の光記録媒体に対応した第2の波長λ2を有する第2の光束を出射する第2の光源と、第3の光記録媒体に対応した第3の波長λ3を有する第3の光束を出射する第3の光源と、第1〜第3の光束を第1〜第3の光記録媒体の各記録面に集光させる単一の対物レンズと、対物レンズと第1〜第3の光源の間に設けた収差補正手段とを備え、光源の第1,第2,第3の波長はλ1<λ2<λ3の関係であり、収差補正手段の1面に、断面形状が同心円状の凹凸形状となる回折構造を有する回折面を設けたことによって、3種類の光記録媒体に対して回折面一面で、発生する収差を補正でき、効率低下を抑制する
即ち、単一の対物レンズは、最も短い波長λ1の光束に対して収差が最小になるように設計される。
前記収差補正手段の一方の面に形成された回折面の回折構造は、光束が通過する光線有効径内で、少なくとも3つの同心円状の領域に分割した領域のうち中心側から順に、2つの領域のそれぞれで断面形状が凹凸形状で溝深さの異なる回折構造である。
中心領域に形成した回折構造は、波長λ1の光束を回折せずに波長λ2,波長λ3の光束を回折し、前記波長λ2の光束の最大回折角より前記波長λ3の光束の最大回折角の方が大きい回折面として形成されている。
そして、収差補正手段は、平行光として入射する波長λ2、λ3の光束を発散方向に回折させ、「波長λ2、λ3の光束が対物レンズへ入射するときに発生する収差」と「基板厚・波長の違いにより発生する収差」を、互いに逆極性にすることで収差補正する。
また、請求項に記載した光ピックアップは、請求項1記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心領域に形成した回折構造は、波長λ1,λ2,λ3の光束により最も強く発生する回折光の次数を、それぞれN11,N12,N13とするとき、次の条件:|N11|<|N12|<|N13|が成り立つことによって、波長λ2の光束の最大回折角より前記波長λ3の光束の最大回折角の方を大きくでき、3種類の光記録媒体に対して回折面一面で、収差を良好に補正することができる。
また、請求項に記載した光ピックアップは、請求項1または2記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造は、波長λ1,λ2の光束により最も強く発生する回折光の次数を、それぞれN21,N22とするとき、次の条件:|N21|<|N22|が成り立つことによって、3種類の光記録媒体に対して回折面一面で、収差を補正することができる。
また、請求項に記載した光ピックアップは、請求項1〜のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折構造の回折光における次数N11,N12,N13と次数N21,N22とは次数の符号が逆であることによって、溝深さが低く段数を多くできる回折構造が形成でき、高効率の収差補正が可能となり、3種類の光記録媒体に対して、別素子を設けることなく、効率的に開口を切り替えることができる。
また、請求項に記載した光ピックアップは、請求項記載の光ピックアップであって、回折光の次数N11,N12,N13が、「N11=0,N12=−1,N13=−2」であることによって、3種類の光記録媒体に対して、回折面一面で、収差を良好に補正でき、また溝深さが低く段数を多くできる回折構造が形成できる。
また、請求項に記載した光ピックアップは、請求項記載の光ピックアップであって、回折光の次数N21,N22が、「N21=0,N22=+1」であることによって、3種類の光記録媒体に対して、回折面一面で、収差を良好に補正し、開口を切り替えることができ、また溝深さが低く段数を多くできる回折構造が形成できる。
また、請求項に記載した光ピックアップは、請求項1または2記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造は、波長λ1,λ2の光束により最も強く発生する回折光の次数を、それぞれN21,N22とするとき、「N21=0,N22=−1」であることによって、3種類の光記録媒体に対して、回折面一面で、収差を良好に補正し、開口を切り替えることができる。
また、請求項に記載した光ピックアップは、請求項1〜のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心領域および中心から2番目の領域に形成した回折構造は、階段形状を繰り返して形成し、各階段形状の傾斜方向が、中心領域と中心から2番目の領域では逆になることによって、溝深さが低く段数を多くできる回折構造が形成でき、効率の良い収差補正ができ、また3種類の光記録媒体に対して、別素子を設けることなく、効率的に開口を切り替えることができる。
また、請求項に記載した光ピックアップは、請求項1〜のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心領域に形成した回折構造は、階段形状を繰り返して形成し、各階段形状が、光軸中心から外側に向かって、光軸方向の溝深さが低くなるように形成したことによって、3種類の光記録媒体に対して、回折面一面で、収差を良好に補正でき、また溝深さが低く段数を多くできる回折構造が形成できる。
また、請求項10に記載した光ピックアップは、請求項1〜のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造は、階段形状を繰り返して形成し、各階段形状が、光軸中心から外側に向かって、光軸方向の溝深さが高くなるように形成したことによって、3種類の光記録媒体に対して、回折面一面で、収差を良好に補正し、開口を切り替えることができ、また溝深さが低く段数を多くできる回折構造が形成できる。
また、請求項1112に記載した光ピックアップは、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心領域に形成した回折構造は、階段形状であり一段当たりの高さを、「波長λ1の光束に対しては、N1・M・λ1の位相差、波長λ2の光束に対しては、(N2+(M−1)/M)λ2の位相差、波長λ3の光束に対しては、(N3+(M−2)/M)λ3の位相差、ただし、Mは階段形状の段数、N1,N2,N3は0以上の整数」を付与する寸法に設定したこと、また段数Mを「4」としたことによって、3種類の光記録媒体に対して、回折面一面で、収差を良好に補正することができ、また溝深さが低く段数を多くできる回折構造が形成できる。
また、請求項1314に記載した光ピックアップは、請求項1〜12のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造は、階段形状であり一段当たりの高さを、「波長λ1の光束に対しては、N1・M・λ1の位相差、波長λ2の光束に対しては、(N2+1/M)λ2の位相差、波長λ3の光束に対しては、(N3・M)λ3の位相差、ただし、Mは階段形状の段数、N1,N2,N3は0以上の整数」を付与する寸法に設定したこと、また段数Mを「5」としたことによって、3種類の光記録媒体に対して、回折面一面で、収差を良好に補正することができ、また溝深さが低く段数を多くできる回折構造が形成できる。
また、請求項1516に記載した光ピックアップは、 請求項1,2のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造は、階段形状であり一段当たりの高さを、「波長λ1の光束に対しては、N1・M・λ1の位相差、波長λ2の光束に対しては、(N2+(M−1)/M)λ2の位相差、波長λ3の光束に対しては、(N3+(M−1)/M)λ3の位相差、ただし、Mは階段形状の段数、N1,N2,N3は0以上の整数」を付与する寸法に設定したこと、また段数Mを「3」としたことによって、3種類の光記録媒体に対して、回折面一面で、収差を良好に補正することができ、また溝深さが低く段数を多くできる回折構造が形成できる。
また、請求項17に記載した光ピックアップは、請求項1〜16のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、回折構造を形成した領域は、階段形状であり、中心から2番目の領域の溝深さが、中心領域より低いことによって、3種類の光記録媒体に対して、回折面一面で、収差を良好に補正し開口を切り替えることができ、また周辺領域の効率低下を抑制できる。
また、請求項18に記載した光ピックアップは、請求項1〜17のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心から3番目の領域を平坦部としたことによって、高い効率で開口を切り替えることができる。
また、請求項19に記載した光ピックアップは、請求項1〜18のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心から3番目の領域に光軸方向の厚さが異なる段差を形成したことによって、3種類の光記録媒体に対して、回折面一面で、収差を良好に補正し開口を切り替えることができ、かつ波長変動による色収差を補正することができる。
また、請求項20に記載した光ピックアップは、請求項1〜19のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心領域に形成した回折構造のピッチが、単一の対物レンズを用いて、波長λ2の光束が第2の光記録媒体の基板を透過する際に生じる球面収差と、波長λ3の光束が第3の光記録媒体の基板を透過する際に生じる球面収差とを打ち消すように、回折構造に形成したことによって、3種類の光記録媒体に対して回折面一面で、収差を良好に補正することができる。
また、請求項21に記載した光ピックアップは、請求項1〜20のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造のピッチが、単一の対物レンズを用いて、波長λ2の光束が第2の光記録媒体の基板を透過する際に生じる球面収差を打ち消すように、回折構造に形成したことによって、3種類の光記録媒体に対して回折面一面で、収差を良好に補正することができる。
また、請求項22に記載した光ピックアップは、請求項1〜21のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、対物レンズは、最も記録密度の大きい第1の光記録媒体に対して、波長λ1の光束により収差が最小になるように設計したことによって、3種類の光記録媒体のうち、1種類に0次回折光を用いることができ、回折面一面での収差補正を高効率に行うことができる。
また、請求項2324に記載した光ピックアップは、請求項1〜22のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面の回折構造を対物レンズの面上に形成したこと、また回折面を設けた収差補正手段の回折面と反対側の面に波長板を形成したことによって、部品点数を削減して、組立および調整作業の工数を低減することができる。
また、請求項25に記載した光ピックアップは、請求項1〜24のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面の回折構造を樹脂材料により構成したことによって、成型加工が容易であるため大量生産がしやすく、かつ軽量化により対物レンズの可動部の負荷を低減することができる。
また、請求項26に記載した光ピックアップは、請求項1〜25のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、回折面を有する収差補正手段の外形形状を回折面と同心円の円形状としたことによって、外部環境が変動しても形状の変化が均一化され、うねりを低減することができ、波面精度の良い安定した素子を実現できる。
また、請求項27に記載した光情報処理装置は、記録密度の異なる複数種類の光記録媒体に対して記録,再生,消去のうち1以上行う光情報処理装置であって、請求項1〜26のいずれか1項に記載の光ピックアップを備えたことによって、3種類の光記録媒体に対して、発生する収差を補正することができ、効率低下を抑制することができる。
本発明によれば、使用波長に応じた複数の光源を備えながら、単一の対物レンズにより基板厚さと記録密度の異なる3種類の光記録媒体の記録面に良好な集光し、安定した記録,再生の動作ができ、小型化,低コスト化,高効率化した高精度な光ピックアップおよび光情報処理装置が実現できるという効果を奏する。
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態1における光ピックアップの概略構成を示す図である。図1に示すように、単一の対物レンズ106により、異なる光源波長を用いて、3種類の光記録媒体(BD系,DVD系,CD系)を異なる開口数(NA)で記録または再生を行う互換型の光ピックアップである。
この3種類のBD系光記録媒体107,DVD系光記録媒体127,CD系光記録媒体137の基板厚は、それぞれ0.1mm,0.6mm,1.2mmであり、開口数は、それぞれNA0.85,NA0.65,NA0.45であり、それぞれBD,DVD,CDの各光記録媒体に対応し、また光源の使用波長は、それぞれλ1=405nm,λ2=660nm,λ3=785nmである。
図1に示す光ピックアップは、BD系光記録媒体107に対する光学系として、半導体レーザ101,コリメートレンズ102,偏光ビームスプリッタ103,プリズム104,1/4波長板105,対物レンズ106,検出レンズ108,受光素子110,収差補正手段501により構成される。第1の光源である半導体レーザ101の中心波長は405nmであり、対物レンズ106の開口数(NA)は0.85である。BD系光記録媒体107の基板厚は0.1mmである。
半導体レーザ101からの出射光は、コリメートレンズ102により略平行光にされる。コリメートレンズ102を通過した光束は偏光ビームスプリッタ103に入射し、プリズム104より偏向される。さらに、1/4波長板105で円偏光に変換され、収差補正手段501,対物レンズ106を介して集光されることにより、情報の記録,再生がされる。
そして、BD系光記録媒体107からの反射光は、1/4波長板105を通過した後、往路の光束の偏光方向とは直交する直線偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ103により反射、入射光と分離して偏向され、検出レンズ108により受光素子110上に導かれ、再生信号,フォーカス誤差信号,トラック誤差信号が検出される。
また、DVD系光記録媒体127に対して、中心波長が660nmの半導体レーザ130aから出射した光束は、発散角変換レンズ132,波長選択性ビームスプリッタ133を経て、プリズム104より偏向される。さらに、1/4波長板105,収差補正手段501,対物レンズ106を介して、DVD系光記録媒体127に集光される。DVD系光記録媒体127の基板厚は0.6mmであり、対物レンズのNAは0.65である。NAの切り替えは、収差補正手段501により制限される。
そして、DVD系光記録媒体127からの反射光は対物レンズ106,1/4波長板105を通過した後、波長選択性ビームスプリッタ133により偏向され、ホログラム素子130bにより回折され、入射光と分離して受光素子130c上に導かれ、再生信号,フォーカス誤差信号,トラック誤差信号が検出される。
また、CD系光記録媒体137に対して、中心波長が785nmの半導体レーザ140aから出射した光束は、発散角変換レンズ142,波長選択性ビームスプリッタ143を経て、プリズム104より偏向される。さらに、1/4波長板105,収差補正手段501,対物レンズ106を介して、CD系光記録媒体137に集光される。CD系光記録媒体137の基板厚は1.2mmであり、対物レンズのNAは0.45である。NAの切り替えは、収差補正手段501により制限される。
そして、CD系光記録媒体137からの反射光は対物レンズ106,1/4波長板105を通過した後、波長選択性ビームスプリッタ143により偏向され、ホログラム素子140bにより回折され、入射光と分離して受光素子140c上に導かれ、再生信号,フォーカス誤差信号,トラック誤差信号が検出される。
また、図1に示す光ピックアップは、DVD系およびCD系に用いる半導体レーザ130a,140aと受光素子130c,140cとホログラム素子130b,140bが一体化されたモジュール構成を用いている。光ピックアップの構成は、これに限られるものでなく、例えば図2に示すような構成であっても良い。
図1に示す対物レンズ106は、厚さ0.1mmのBD系光記録媒体107を高精度に記録,再生できるように最適に設計されている。つまり、設計波長は405nmであり、波長405nmでは波面収差0.01λrms以下と十分小さくなるよう設計されている。これは、対物レンズ106は、高NA化、短波長化に伴い製造誤差の影響を受けやすく、言い方をかえると製造マージンが狭いため、本実施形態1では対物レンズ106を3種類の光記録媒体のうちのBD系光記録媒体107に対応した設計としている。
なお、本実施形態1の対物レンズ106は、厚さ0.1mmのBD系光記録媒体107に最適(収差が最小になるよう)に設計されているが、これに限定されるものではない。例えば、情報記録面を2層有する2層BD系光記録媒体では、情報記録面を光入射側か0.075mmと0.100mmの位置に情報記録面を有するために、その中間の値である厚さ0.0875mmを設計中央値とするように、異なる厚さの基板厚に最適に設計した対物レンズであっても良い。
本実施形態1における対物レンズ106は両面非球面形状であり、面の頂点を原点とし、光軸方向をX軸とした直交座標系において、rを近軸曲率半径、κを円錐形数、A,B,C,D,E,F,G,H,J,・・・を非球面係数とするとき、面の光軸方向の距離xと半径Rの関係より、非球面形状は、(数1)
Figure 0004787060
で表される。各面および各領域の面データを(表1)に示す。
Figure 0004787060
ここで、ガラスの硝材は住田光学製のKVC81、対物レンズの有効瞳半径は2.15mmである。なお、対物レンズ106の材料としては、ガラスに限らず、樹脂を用いても良い。
図2〜図4は収差補正手段501を説明するための図であり、図2,図3は拡大した断面図、図4は回折面を示す図である。
収差補正手段501は、DVD系光記録媒体127に対して、中心波長が660nmの半導体レーザ130aから出射した光束と、CD系光記録媒体137に対して、中心波長が780nmの半導体レーザ140aから出射した光束が、基板厚さの違いと、波長の違いにより発生する球面収差を補正するための互換素子である。さらに、収差補正手段501は、それぞれの光記録媒体に対して、対物レンズ106の開口切り替えするための開口制限の機能を有する。
図2は本実施形態1における収差補正手段501と対物レンズ106の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、収差補正手段501と対物レンズ106は、鏡筒121により同軸で一体化されている。具体的には、円筒状の鏡筒121の一端に、収差補正手段501を固定し、他端に対物レンズ106を固定して、これらを光軸に沿って同軸に一体化した構成となっている。
いま、BD系,DVD系,CD系光記録媒体107,127,137を記録,再生するときに、対物レンズ106はトラッキング制御により、光軸に対して垂直方向に±0.5mm程度の範囲内で移動する。ところが、DVD系,CD系光記録媒体127,137に対しては、収差補正手段501により回折を受けるため、収差補正手段501が移動せずに、対物レンズ106だけが移動すると、収差が発生して集光スポットが劣化してしまう。そこで、収差補正手段501と対物レンズ106を一体化させ、トラッキング制御時に一体で移動させることにより、良好な集光スポットを得る構成としている。
なお、収差補正手段501または対物レンズ106の少なくとも一方にフランジを設け、このフランジを介して直接一体化する構成にしても良い。また、対物レンズ106と鏡筒121、さらには対物レンズ106、鏡筒121、収差補正手段501すべてが一体化する構成にしても良い。
また、本実施形態1では、第1,第2,第3の光束は、いずれも収差補正手段501に平行光で入射する。つまり、発散光や収束光ではないため、光記録媒体の記録再生時に、トラッキング制御により一体化された対物レンズ106と収差補正手段501が偏芯しても、コマ収差が発生しないという利点がある。なお、発散光や収束光として入射する構成にしても良い。
図3に本実施形態1の収差補正手段501の断面図を示す。収差補正手段501は、回折構造が形成されている回折面502を有する。この回折面502とは、垂直断面形状を凹凸形状とした回折構造が形成されている面である。平板面の一部に回折構造が形成されていれば良く、回折構造が形成されていない領域があっても良い。
また、収差補正手段501の材料として樹脂を用いる。樹脂は、ガラスと比べて軽く、かつ成型加工が容易であるため大量生産がしやすい。本実施形態1の収差補正手段501は対物レンズ106の可動部120に搭載され、対物レンズ106と一体駆動するため、軽い方が望ましい。樹脂として例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)を用いる。PMMAは、高い透明性,耐候性を有し、特に射出成形に適合する強みがあるため光学部品に最も広く使用されている樹脂の1つである。また吸湿が小さい日本ゼオン社製の光学樹脂であるZEONEX(ゼオネックス:登録商標)を用いても良い。さらに、収差補正手段501の材料としては、紫外線硬化樹脂を含むあらゆる光学樹脂、光学ガラスに適応可能である。
そして、回折面502には、図4に示すように光束が通過する範囲内に、同心円状に分割された3つの領域、第1の中心領域502a、第2の中心から2番目の領域502b、第3の前記中心から3番目の領域502cを有する。
中心領域502aはCD系光記録媒体137に対するNA0.45の領域に相当し、本実施形態1では半径1.25mmと設定する。中心領域502aには、波長405nmの第1の光束をそのまま透過させ、DVD系,CD系光記録媒体127,137の基板厚の違いと、波長の違いにより生じる球面収差を補正するように、第2,第3の光束を回折させる回折構造が形成されている。
2番目の領域502bは、CD系光記録媒体137に対するNA0.45の領域からDVD系光記録媒体127に対するNA0.65の領域に相当し、本実施形態1では半径1.25mmから1.715mmに設定する。2番目の領域502bには、波長405nmの第1の光束をそのまま透過させ、DVD系光記録媒体127の基板厚の違いと、波長の違いより生じる球面収差を補正するように、第2の光束を回折させ、かつ第3の光束は、CD系光記録媒体137の記録面に集光しないような回折構造が形成されている。
3番目の領域502cは、DVD系光記録媒体127に対するNA0.65からBD系光記録媒体107に対するNA0.85の領域に相当し、本実施形態1では半径1.715mmから2.15mmに設定する。3番目の領域502cは回折構造が形成されない平坦部であり、第1,第2,第3の光束をそのまま透過させるため、BD系光記録媒体107に対しては対物レンズ106より集光され、DVD系,CD系光記録媒体127,137に対しては集光されない構造となる。
したがって、回折面502は、DVD系,CD系光記録媒体127,137に対して、第2,第3の光束で発生する球面収差を補正し、かつ開口を切り替えるような構成となり、良好なスポットを形成できる。
また、収差補正手段501は、平行光で入射してきた光束を発散方向に回折させることで、収差の補正を行っている。つまり、発散光を対物レンズ106へ入射するときに発生する収差と、基板厚や波長の違いによって発生する収差を逆極性にすることで補正している。発散光を対物レンズ106へ入射させると、対物レンズ106と光記録媒体との距離であるワーキングディスタンスが広がるため、高NAの対物レンズ106でCD系光記録媒体137のような基板厚の厚いものに集光させる際には、都合の良い構成となる。
収差補正手段501の中心領域502aの断面は図3に示されるように同心円状に形成された複数の輪帯状の凹凸部からなる。各輪帯状の凹凸部は階段形状であり、4つの段数を有する。ここで、段数とは、最下段も含めて数えている。輪帯状の凹凸部のピッチは、この回折構造がレンズ効果を有するように内側から外側に向かって徐々に狭くなっている。
輪帯状の凹凸部のピッチは、DVD系光記録媒体127に対しては、−1次回折光、CD系光記録媒体137に対しては、−2次回折光を用い、それぞれで発生する収差を補正するよう設定される。
ここで、−1次回折光について図5を参照しながら説明する。図5は入射光201aが、4段の階段形状の回折構造を通過する際の波面の様子を示している。入射光201aの波面は、4段の階段形状の回折構造を通過すると、それぞれ階段形状に応じて位相差が生じ、結果として出射光201bのように−1次回折光として回折される。階段形状の各段の高さは0.75λの位相差が付与されるよう設定されている。
また、−2次回折光について図6を参照しながら説明する。図6は入射光202aが、4段の階段形状の回折構造を通過する際の波面の様子を示している。入射光202aの波面は、4段の階段形状の回折構造を通過すると、それぞれ階段形状に応じて位相差が生じ、結果として出射光202b,202cのように−2次回折光と、+2次回折光として回折される。このとき階段形状の各段の高さは、0.5λの位相差が付与されるよう設定されている。
以上のようにして発生する−1次回折光が対物レンズ106により集光されDVD系光記録媒体127に、−2次回折光がCD系光記録媒体137に良好集光するように、ピッチを設定している。
回折面502の光路差関数は、(数2)
Figure 0004787060
と定義される。
ただし、光軸垂直面の光軸と交わる点を原点とし、光軸方向をX軸とした直交座標系において、φは光路差関数、Rは半径(光軸からの距離)、C1,C2,・・・は光路差係数である。中心領域502aの面における光路差係数を(表2)に示す。また、中心領域502aのピッチの最小値は21μm、輪帯数は28である。輪帯数とは回折構造の1周期(図5に示すピッチ200)の数である。
Figure 0004787060
図5,図6を比較すると分かるように、同じピッチであれば、回折光の次数の絶対値が大きいほど、回折する角度が大きい。DVD系,CD系光記録媒体127,137において発生する球面収差量は、DVD系よりCD系の光記録媒体の方が大きい。これは基板厚さや波長の差が大きいためである。
したがって、収差補正量がより大きいCD系光記録媒体137に対して用いる回折光の次数の方を、DVD系光記録媒体127より大きくすると、DVD系,CD系光記録媒体127,137に対して同時に、収差を補正することが可能となる。つまり、第1,第2,第3の光束で最も強く発生する回折光の次数を、それぞれN11,N12,N13とするとき、|N11|<|N12|<|N13|の関係が成り立つ必要がある。
本実施形態1では、N11=0,N12=−1,N13=−2としている。これは用いる次数は小さい方が、回折効率が高いためである。
また、収差補正手段501の2番目の領域502bの断面は、図3に示されるように同心円状に形成された複数の輪帯状の凹凸部からなる。各輪帯状の凹凸部は階段形状であり、5つの段数を有する。輪帯状の凹凸部のピッチは、この回折構造がレンズ効果を有するように内側から外側に向かって徐々に狭くなっている。
この輪帯状の凹凸部のピッチは、DVD系光記録媒体127に対して、発生する収差を補正するよう設定される。したがって、第1,第2の光束で最も強く発生する回折光の次数を、それぞれN21,N22とするとき、|N21|<|N22|が成り立つよう設定する。本実施形態1ではN21=0,N22=+1を用いた。
2番目の領域502bの光路差係数を(表3)に示す。
Figure 0004787060
2番目の領域502bは、CD系光記録媒体137に対しては開口を制限する機能を有するよう、−2次回折光が発生しない階段状の溝深さが設定されている。この詳細については後述する。また、本実施形態1の2番目の領域502bのピッチの最小値は17.8μm、輪帯数は24である。
次に、回折面502の各段の高さについて図7を用いて説明する。回折光学系では、入射光のすべてのエネルギーが射出光に変換されるのではなく、回折効率と呼ばれる効率でしか変換されない。図7の破線に示すような鋸歯状のキノフォーム形状は、ある波長でブレーズ化されると、その波長での回折効率は薄型近似の場合、理論的には100%である。回折面502は、3波長のうち、405nmの第1の光束に対しては0次回折光、660nm,785nmの第2,第3の光束に対しては±1次以上の回折光として使用し、図7のような階段近似した形状とする。
なお、階段形状とは、鋸歯状のキノフォーム形状を近似した形状のことであり、階段形状の傾斜方向とは、鋸歯状の傾斜方向のことである。また、階段形状にすると、理想的なキノフォーム形状を製作するよりも容易となる。さらに、0次回折光とは、入射光の入射する際の進行方向をそのまま保つ透過光のことである。
回折面502における中心領域502aは、第2の光束に対して回折効率が最も大きくなる次数N12と、第3の光束に対して回折効率が最も大きくなる次数N13の関係が|N12|<|N13|となる必要がある。さらに、第1の光束に対しては、0次回折光を用いる。したがって、それぞれの光束における回折光の効率が大きくなるように、回折構造の高さを設定しなければならない。
図7に示すように、階段形状の溝深さをD、鋸歯状の溝深さをH、階段形状の段数をMとすると、例えば、4段の場合、0次回折光、±1次回折光と±2次回折光の最大の回折効率となる溝深さの位相差は(表4)のようになる。
Figure 0004787060
(表5)は、M段の場合に一般化したときの、一段当たりの位相差を示している。(表5)のような条件に一段の高さを設定すると、所望の回折次数を最も効率よく得ることができる。
Figure 0004787060
本実施形態1のように4段の場合、第1の光束405nmに対しては、階段の1段分の位相差が波長の整数(N1)倍になるようにして0次回折光の効率を最大にする。第2の光束660nmに対しては、一段分の位相差が波長の0.75倍と波長の整数(N2)倍を加算した値になるようにして−1次回折光の効率を最大にする。または0.25倍と波長の整数(N2)倍を加算した値になるようにして+1次回折光の効率を最大にする。第3の光束785nmに対しては、一段分の位相差が波長の0.5倍と波長の整数(N3)倍を加算した値になるようにして±2次回折光の効率を最大にする。原理は、図5,図6で示したように回折構造の段数に応じて、一段の高さを所望の位相差を得られるように設定すると、回折効率が大きくなる。さらに、回折効率を高くするためには、N1,N2,N3の数が小さい方が良い。
各光束で所望の回折光の次数で効率が大きくなるように、材料と高さを選定する。階段形状の4段においては、第2の光束に対しては−1次回折光、第3の光束に対しては−2次回折光を用いる。
図8(a),(b),(c)は階段形状の深さDと回折効率の関係を示す図であり、(a)は第1の光束、(b)は第2の光束、(c)は第3の光束に対する関係であり、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)法を用いたベクトル計算の結果である。効率計算時のピッチは20μmとした。材料にPMMAを用いる場合、全段数の溝深さDを7.2μmとすると、どの波長に対しても所望の効率を得ることができる。
回折効率は、第1,第2,第3の光束でそれぞれ86%,67%,39%となる。7.2μmの溝深さDは一段に換算すると、溝の深さは2.4μmとなる。これは、405nmの波長に対しては、波長の約3倍の位相差(N1=3)、660nmの波長に対しては、波長の整数倍と0.75波長を加算した分の位相差、780nmに対しては、波長の整数倍と0.5波長を加算した分の位相差を発生させる溝深さとなっている。
このように、4段の階段状で形成される回折構造で、|N12|<|N13|となる次数でそれぞれ回折効率が高く、かつ第1の光束に対して透過してくる0次回折効率が高くなる条件は、N12=−1、N13=−2となる。
また、2番目の領域502bは、第2の光束に対しては回折して収差を補正し、第3の光束に対してはCD系光記録媒体137上に集光しないようにする。例えば、0次回折光、±1次回折光と±2次回折光の最大の回折効率となる溝深さの位相差は(表6)のようになる。
Figure 0004787060
また、階段形状が5段の場合、405nmに対しては、階段の1段分の位相差が波長の整数倍になるようにして0次回折光の効率を最大にする。第2の光束660nmに対しては、一段分の位相差が波長の0.2倍と波長の整数倍を加算した値になるようにして+1次回折光の効率を最大にする。第3の光束785nmに対しては、±2次回折光を発生させないようにする。
図9(a),(b),(c)は階段形状の全段の溝深さDと回折効率の関係を示す図であり、段数は5段である。図9(a)は第1の光束、図9(b)は第2の光束、図9(c)は第3の光束に対する関係であり、RCWA法を用いたベクトル計算の結果である。効率計算時のピッチは20μmとした。材料にPMMAを用いる場合、全段数の深さDを6.4μmとすると、どの波長に対しても所望の効率を得ることができる。つまり、第1の光束の0次回折光の効率は84%、第2の光束の+1次回折光の効率は73%、第3の光束の−2次回折光の効率は0%となる。第3の光束に対しては、0次回折光が78%と効率が良い。
図10(a)はCD系光記録媒体上に集光するときの光束、図10(b)はCD系光記録媒体上に形成されるスポットを示す図である。中心領域502aを通過する光束は−2次回折光として、CD系光記録媒体137上に集光される。一方、2番目の領域502bを通過する光束は、0次回折光として、そのまま透過するため、CD系光記録媒体137上では、集光せず周辺にフレア光として大きく広がり、記録再生に影響しない。
また、その他の構成例としては、材料がPMMAの場合に、段数が4段であり溝深さDが4.8μm(N1=2)、段数が3段であり溝深さDが3.2μm(N1=2)、あるいは段数が3段であり溝深さDが6.4μm(N1=4)といった構成であっても良い。
また、3番目の領域502cは、回折構造のない平坦部になっている。図3に示すように、3番目の領域502cである平坦部の高さは、回折構造の最下段に対して第1の光束の波長の整数倍になるように設定する。本実施形態1では、波長の5倍の位相差に相当する4.0μmに設定した。
この3番目の領域502cの平坦部を透過した光束は、第2,第3の光束に対しては有効径外となるため、スポット形成には不要光となる。DVD系,CD系光記録媒体127,137上では、図10(b)に示したのと同様にフレア光として大きく広がる。一方、第1の光束に対しては、中心領域502a,2番目の領域502bの最下段に対して、波長の整数倍の位相差となるように高さを設定した。本実施形態1では波長の5倍の4μmとしたが、これに限定されるものではない。
次に、図11に収差補正手段の回折面に形成された回折構造の実形状を示す。中心領域502aと2番目の領域502bの境界部は、光路差係数が異なるため、滑らかにはつながらない。そのため、第1の光束に対して、波長の整数倍になる高さの領域を設け、滑らかにつながるような構造にする。本実施形態1では、溝の最下段の高さに設定した。
階段形状の回折面の回折効率は、段数が多いほど、図7の破線に示すような鋸歯状のキノフォーム形状に近づくため、回折効率は向上する。しかしながら、段数が多いと一段当たりのピッチ200が狭くなり、製造が困難になり、製造誤差によるだれなどの影響で効率低下が発生する。
また、ピッチ200が同じ場合、溝深さDは低く、N1が小さい方が、回折効率が良い。さらに波長や温度変動による効率低下の影響を受けにくい。そのため、回折構造としては、溝深さDが低く、N1が小さく、段数Mが多い方が望ましい。
本実施形態1では、回折光の次数の符号を中心領域502aと2番目の領域502bで反転させることにより、第1,第2,第3の光束の回折効率と凹凸形状と溝深さの関係を大きく変化させることができる。そのため、溝深さが低く、段数が多い回折構造のまま、効率の良い収差補正手段および記録再生に影響しない開口制限素子としての機能を一面で提供することができる。
また、回折面はピッチが狭くなると、効率が低下することが知られている。したがって、ピッチが狭くなる周辺部は効率が低下する。その様子を図12に示す。光源の強度分布203に対して、中心領域502aは周辺にいくに従い、光量の低下が著しくなることが分かる。また、2番目の領域502bは中心領域502aよりもさらにピッチが狭くなるが、本実施形態1では、2番目の領域502bは段数が5段、かつ中心領域502aよりも溝深さが低いため、効率の低下を低減することができ、光利用効率を向上することができる。
なお、段数Mと溝深さDは、前述の記載に限定されず、回折光の次数の符号を反転させれば、容易にスポットにとって不要光が発生しない開口制限を実現することができる。
次に、本実施形態1の収差補正手段の外形形状について、詳細に説明する。図4に示すように、収差補正手段の外形の形状として、回折面502の回折構造を有する領域と平坦部との境界と同様の円形状とする。なお、円形状とは、多角形を含み、図13に示すような8角形においても、同様の効果が得られる。
本実施形態1で用いているPMMA等の樹脂は、射出成形ができる等の強みがあるため光学部品に最も広く使用され、かつ大量生産しやすいという特徴があるが、一方で吸湿性が弱点として挙げられる。これは屈折率や透過率といった光学特性を変動させるだけでなく、変形としても現れる。
図14(a)〜(d)に収差補正手段501が四角の形状の場合の波長405nmの透過光の波面形状を示す。図14(a)は光線有効径内における中心領域502a,2番目の領域502b,3番目の領域502cすべての領域における透過波面測定の結果であり、波面形状を示す。図14(b),(c)は図14(a)の結果を領域(回折部と平坦部)に分割して波面測定した結果である。図14(b)は回折部(回折構造が形成された中心領域502aと2番目の領域502b)領域内のみの透過波面形状502g、図14(c)は平坦部(3番目の領域502c)のみの透過波面形状502fを示す。
波面精度が非常に悪く、光線有効径内の波面精度が悪い原因は、平坦部にあることが分かる。図14(d)は平坦部の波面形状を円周方向に沿って、プロットしたものである。平坦部は収差補正手段501の四角の形状に沿って、うねりが発生しており波面劣化の要因となっていると考えられる。
このうねりの要因は、回折部と平坦部との境界において、外形の四角形の辺から近いところ502dと遠いところ502eが存在し、近いところ502dと遠いところ502eではPMMAの吸湿に差異がある。この吸湿の差異が変形の差異となり、うねりが発生している。
図15(a)〜(d)は本実施形態1の収差補正手段501の波長405nmの透過光の波面形状を示す図である。形状は円である。図15(a)は光線有効径内における中心領域502a,2番目の領域502b,3番目の領域502cの透過波面測定の結果であり、波面形状を示す。図15(b),(c)は図15(a)の結果を領域(回折部と平坦部)に分割して波面測定した結果である。図15(b)は回折部(回折構造が形成された中心領域502aと2番目の領域502b)領域内のみの透過波面形状502g、図15(c)は平坦部(3番目の領域502c)のみの透過波面形状502fを示す。
図15(d)は平坦部の波面形状を円周方向に沿って、プロットしたものである。周辺部のうねりはなく良好な波面精度である。このように、収差補正手段501の外形形状を、回折部と平坦部との境界と同様の円形状にすることで、PMMAの吸湿による形状の変化が均一化され、うねりを低減することができ、高精度な光ピックアップを提供することができる。
図16は本発明の実施形態2における収差補正手段を説明するための図である。本実施形態2において、光ピックアップの構成や対物レンズは前述した実施形態1と同じである。
また、回折面602は、図17に示すように光束が通過する範囲内に、同心円状に分割された3つの領域からなり、中心領域602a,2番目の領域602b,3番目の領域602cを有する。
中心領域602a,2番目の領域602bは、実施形態1と同様に、CD系光記録媒体137に対するNA0.45、DVD系光記録媒体127に対するNA0.65でそれぞれ分割され、半径はそれぞれ1.25mm、1.715mmに設定する。
中心領域602aは、実施形態1と同様に波長405nmの第1の光束をそのまま透過させ、DVD系,CD系光記録媒体127,137の基板厚の違いと、波長の違いより生じる球面収差を補正するように、第2,第3の光束を回折させる回折構造が形成されている。
2番目の領域602bは、波長405nmの第1の光束をそのまま透過させ、DVD系光記録媒体127の基板厚の違いと、波長の違いより生じる球面収差を補正するように、第2の光束を回折させ、かつ第3の光束は、CD系光記録媒体137の記録面に集光しないような回折構造が形成されている。
3番目の領域602cは、回折構造が形成されない平坦部であり、第1,第2,第3の光束をそのまま透過させるため、BD系光記録媒体107に対しては対物レンズ106より集光され、DVD系,CD系光記録媒体127,137に対しては集光されない構造となる。
したがって、回折面602は、DVD系,CD系光記録媒体127,137に対して、第2,第3の光束で発生する収差を補正し、かつ開口を切り替えるような構成となり、良好なスポットを形成できる。
図16に示すように、収差補正手段601の中心領域602aの断面は、実施形態1の中心領域502aと段数、溝深さ、回折光の次数ともに同様である。回折構造がレンズ効果を有するように内側から外側に向かって徐々に狭くなっている。輪帯状の凹凸部のピッチは、DVD系光記録媒体127に対しては−1次回折光を、CD系光記録媒体137に対しては、−2次回折光を用いて、発生する収差を補正するよう設定される。この中心領域602aの面の光路差係数を(表7)に示す。
Figure 0004787060
また、収差補正手段601の2番目の領域602bの断面は、図16に示されるように同心円状に形成された複数の輪帯状の凹凸部からなる。各輪帯状の凹凸部は階段形状であり、3つの段を有する。輪帯状の凹凸部のピッチは、この回折構造がレンズ効果を有するように内側から外側に向かって徐々に狭くなっている。そして、輪帯状の凹凸部のピッチは、DVD系光記録媒体127に対しては−1次回折光を用い、発生する収差を補正するよう設定される。2番目の領域602bの面の光路差係数を(表8)に示す。
Figure 0004787060
この2番目の領域602bは、CD系光記録媒体137に対しては開口を制限する機能を有するよう、−2次回折光が発生しない階段状の溝深さが設定されている。また、本実施形態2の2番目の領域602bのピッチの最小値は17.8μm、輪帯数は24である。
そして、3番目の領域602bは、実施形態1と同様に、第2の光束に対しては回折して収差を補正し、第3の光束に対してはCD系光記録媒体137上に集光しないようにする。
本実施形態2の段数が3段の場合、第1の光束405nmに対しては、階段の1段分の位相差が波長の整数(N1=1)倍になるようにして0次回折光の効率を最大にする。第2の光束660nmに対しては、一段分の位相差が波長の0.33倍と波長の整数(N2=0)倍を加算した値になるようにして+1次回折光の効率を最大にする。第3の光束785nmに対しては、±2次回折光を発生させないようにする。
図18(a),(b),(c)は回折構造における階段の溝深さDと回折効率の関係を示す図である。段数Mは3段であり、図18(a)は第1の光束、(b)は第2の光束、(c)は第3の光束に対する効率との関係を示す、RCWA法を用いたベクトル計算の結果である。効率計算時のピッチは20μmとした。材料にPMMAを用いる場合、全段数の深さDを1.6μmとすると、どの波長に対しても所望の効率を得ることができる。つまり、第1の光束の0次回折光の効率は94%、第2の光束の−1次回折光の効率は56%、第3の光束の−2次回折光の効率は8%となる。第3の光束に対しては、±1次回折光が30%と効率が良い。
図10(a)に示したCD系光記録媒体上に集光するときの光束、図10(b)に示したCD系光記録媒体上に形成されるスポットの状態と同様に、収差補正手段601の中心領域602aを通過する光束は−2次回折光として、CD系光記録媒体137上に集光される。一方、2番目の領域602bを通過する光束は、±1次回折光として回折されるが、CD系光記録媒体137上では、集光せず周辺にフレア光として大きく広がるため、記録再生には影響しない。
図19に本実施形態2の収差補正手段の回折面に形成された回折構造の実形状を示す。中心領域602aと2番目の領域602bの境界部は、光路差係数が異なるため、滑らかにはつながらない。そのため、第1の光束に対して、波長の整数倍になる高さの領域を設け、滑らかにつながるような構造にする。このような構成にすることにより、効率の良い収差補正手段および記録再生に影響しない開口制限素子としての機能を一面で提供することができる。
図20は本発明の実施形態3における収差補正手段の構成を示す断面図である。図20に示すように、前述した実施形態1,2に示した収差補正手段の平坦部を有する3番目の領域502c,602cのいずれかに相当する3番目の領域702cに段差704を設けたものである。この段差704により、波長が短く、NAの大きいBD系光記録媒体107に対して発生する色収差を補正する。
光記録媒体に情報の記録,再生を行う光情報処理装置は、半導体レーザを光源としているが、この半導体レーザの発振波長は、個々に異なっていたり、温度の変化に伴い変動したりする。このため光学材料の屈折率は、波長により変化する性質(分散)を持つため、光源の波長が変動すると3次の球面収差が発生する。したがって、情報の記録,再生時、この球面収差が光学的な課題の1つとなる。この波長が変化したときの球面収差の発生量は、光源の短波長化と高NA化により大きくなる。
これは、波長を短くすると光学材料の屈折率変化が大きくなり、波長が変化したときの球面収差の変化量が大きくなることと、球面収差変化はNAの4乗に比例して大きくなるためである。したがって、波長が変化したときの記録,再生における光情報の劣化に与える影響はより大きくなる。
図21に、波長405nmにおいてNA0.65とNA0.85の対物レンズを使用したときの波長変動による波面収差の変化を示す。
一般的に光情報処理装置の動作環境として、温度を10℃から80℃まで想定すると、半導体レーザの波長は、3nm程度変動する。また、中心波長ばらつきが±5nm程度と想定する必要がある。このため、NA0.85の対物レンズを用いる光学系では、このような波長変化による球面収差を補正する必要がある。
また図20に示す段差704の構造は、光軸方向に、光軸を中心とした同心円状の領域に分割されており、光軸から離れるにしたがって、厚みが増すように形成されている。それぞれの領域における厚みの段差は、対物レンズの設計波長405nmの整数倍の光路差を生じるように、形成されている。
図22には収差補正手段に形成された位相段差を示す。図22において横軸は半径位置、縦軸は位相段差数Nである。本実施形態3では、N=8,14を用い、3番目の領域702cに段差704を設けた。したがって、この段差704に影響を受けるのは、BD系光記録媒体107にスポットを形成するときである。
段差704がないときの波長変化による球面収差量は、図23の破線のようになるのに対して、段差704を形成すると、図23の実線のように3次の球面収差を補正することができる。ここで例えば、波長が6nm変化した場合の、波面の位相の様子を図24に示す。位相段差を付与したところで、波面の位相が不連続になっているのが分かる。このように波面を不連続に変化させ、3次の球面収差を補正している。
なお、段差704の高さ、段差704の境の半径位置は、対物レンズの形状、対物レンズの設計波長、収差補正手段701を構成する材料、開口数(NA)によって異なり、本実施形態3に示した例に限定されるものではない。
本発明の実施形態4における収差補正手段は、実施形態1〜3に記載した回折面を対物レンズと一体化した構成である。
図25,図26には、実施形態1に記載した収差補正手段501と対物レンズ106を一体化した構成図を示す。図25,図26に示したように対物レンズ106の面上に回折補正素子501の回折面を一体に形成すると、対物レンズ106と回折補正素子501との軸ずれによる波面劣化が低減できるだけでなく、組み付け工程も削減でき、低コスト化を実現できる。なお、回折面を対物レンズ106の入射側の面、出射側の面のどちらに形成しても良い。
さらに、回折面の形成は、対物レンズ106と一体に成型しても良い。あるいは、対物レンズ106の面上に回折構造を別途形成しても良い。その場合、回折構造の材料としては、紫外線硬化樹脂が製造上適している。
本発明の実施形態5における収差補正素子を設ける光ピックアップの構成や対物レンズは実施形態1と同じである。図27(a),(b)に示すように本実施形態5の収差補正手段801は、実施形態2の収差補正手段601の裏面に図1に示した1/4波長板105に代えて、波長板805aまたは波長板805bが形成されている。
波長板は光学系が共通化されている光路中に設けられているため、波長405nm,660nm,785nmという広い範囲で、通過する光束のTM波、TE波に対して0.25±0.05の位相差を与える必要がある。一般的なものとして、波長板805aのように微細構造を有するもの、波長板805bのように水晶など高価な素材や樹脂フィルム製の位相差フィルムを用いているものが挙げられる。特に、波長板805aのように微細構造を有するものは、広い波長域で位相差を与えることができる。また、微細構造は収差補正手段と同じの材料であっても良いし、異なる材料であっても良い。
本実施形態5のように、収差補正手段801の両面に回折面801と波長板805を形成すれば部品点数を減らすことができ、小型化を実現することができる。また、微細構造により波長板を形成すると、一体に成型することができ、製造工程を減らすことができるため、低コスト化を実現することができる。
図28は本発明の実施形態6における光情報処理装置の概略構成を示す図である。本実施形態6は、光情報処理装置の1形態であり、前述の実施形態1〜5のいずれかの光ピックアップを用いて、光記録媒体に対する情報の再生、記録、消去のうちの、少なくとも1つを行う装置である。
図28に示すように、光情報処理装置は光学ピックアップ91、送りモータ92およびスピンドルモータ98等により構成されており、これらは光情報処理装置全体を制御するシステムコントローラ96により制御される。そして、光ピックアップ91のトラッキング方向への移動は、送りモータ92とサーボ制御回路93で構成される制御駆動手段により行われる。例えば、光記録媒体100を再生する場合、システムコントローラ96からのコントロール信号がサーボ制御回路93と変復調回路94に供給される。
サーボ制御回路93では、スピンドルモータ98を設定された回転数で回転させるとともに送りモータ92を駆動する。
変復調回路94には、光ピックアップ91の光検出器により検出されたフォーカシングエラー信号,トラッキングエラー信号および光記録媒体100の何処を読み出しているかの位置情報等が供給される。フォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号はシステムコントローラ96を介してサーボ制御回路93に供給される。
サーボ制御回路93は、フォーカシング制御信号によってアクチュエータのフォーカシングコイルを駆動し、トラッキング制御信号によってアクチュエータのトラッキングコイルを駆動する。トラッキング制御信号の低域成分はシステムコントローラ96を介してサーボ制御回路93に供給され、送りモータ92を駆動する。これらによって、フォーカシングサーボ、トラッキングサーボおよび送りサーボのフィードバックサーボが行われる。
また、光記録媒体100の何処を読み出しているかの位置情報は変復調回路94により処理され、スピンドル制御信号としてスピンドルモータ98に供給され、光記録媒体100の再生位置に応じた所定の回転数に制御駆動され、ここから実際の再生が開始される。そして、変復調回路94により処理されて復調された再生データは外部回路95を介して外部に伝送される。
データを記録する場合、フォーカシングサーボ,トラッキングサーボおよび送りサーボのフィードバックサーボをかけるまでは再生と同様の過程を経る。
外部回路95を介して入力される入力データを光記録媒体100の何処に記録するかのコントロール信号が、システムコントローラ96からサーボ制御回路93および変復調回路94に供給される。
サーボ制御回路93では、スピンドルモータ98を所定の回転数に制御するとともに、送りモータ92を駆動して光ピックアップ91を情報記録位置に移動させる。
また、外部回路95を介して変復調回路94に入力された入力信号は、記録フォーマットに基づく変調が行われ、光ピックアップ91に供給される。光ピックアップ91では出射光の変調および出射光パワーが制御されて、光記録媒体100への記録が開始される。
光記録媒体100の種類は再生データ信号で判別する。光記録媒体100の種類を判別する方法として、トラッキングサーボ信号やフォーカスサーボ信号を用いても良い。
再生専用の光情報処理装置および記録と再生の両方の処理可能な光情報処理装置に具備される光ピックアップに、本発明の収差補正手段を用いた光ピックアップを具備していれば、基板厚の異なる光記録媒体の情報の記録、再生品質の精度を高めることができる。
以上のように、本実施形態6における光情報処理装置によれば、単一の対物レンズ106により異なる基板厚さを有する3種類の光記録媒体(BD,DVD,CD)の記録面に良好なスポットが形成可能な光ピックアップを用いて、光記録媒体100に対して情報信号の記録,再生または消去の最適な処理を行うことができる。
本発明に係る光ピックアップおよび光情報処理装置は、使用波長に応じた複数の光源を備えながら、単一の対物レンズにより基板厚さと記録密度の異なる3種類の光記録媒体の記録面に良好に集光し、安定した記録,再生の動作ができ、異なる3種類の光記録媒体に対して情報を記録,再生する際に、互換性を有する装置として有用である。
本発明の実施形態1における光ピックアップの概略構成を示す図 収差補正手段の近傍を拡大した断面図 収差補正手段を拡大した断面図 収差補正手段の回折面を示す図 入射光が4段の階段形状の回折構造を通過する−1次回折光の波面の様子を示す図 入射光が4段の階段形状の回折構造を通過する±2次回折光の波面の様子を示す図 回折面の高さ(溝深さ)を説明する図 (a)は第1の光束、(b)は第2の光束、(c)は第3の光束に対する階段形状4段の深さDと回折効率の関係を示す図 (a)は第1の光束、(b)は第2の光束、(c)は第3の光束に対する階段形状5段の深さDと回折効率の関係を示す図 (a)はCD系光記録媒体上に集光する光束、(b)はCD系光記録媒体上に形成されるスポットを示す図 収差補正手段の回折面に形成された回折構造の実形状を示す図 回折面と回折光の強度分布の関係を示す図 収差補正手段の外形の形状を示す図 (a)〜(d)は収差補正手段が四角形状で波長405nmの透過光の波面形状を示す図 (a)〜(d)は収差補正手段が円形状で波長405nmの透過光の波面形状を示す図 本発明の実施形態2における収差補正手段の近傍を拡大した断面図 収差補正手段の回折面を示す図 (a)は第1の光束、(b)は第2の光束、(c)は第3の光束に対する階段形状3段の深さDと回折効率の関係を示す図 収差補正手段の回折面に形成された回折構造の実形状を示す図 本発明の実施形態3における収差補正手段を拡大した断面図 波長405nmにおけるNA0.65とNA0.85の波長変動による波面収差の変化を示す図 収差補正手段に形成された位相段差を示す図 段差の有無による波長変化の球面収差量を示す図 波長が6nm変化したときの波面位相の様子を示す図 本発明の実施形態4における収差補正手段を対物レンズの面上部に一体化した構成図 収差補正手段を対物レンズの面下部に一体化した構成図 本発明の実施形態5における(a),(b)は裏面に波長板を設けた収差補正手段の断面図 本発明の実施形態6における光情報処理装置の概略構成を示す図
符号の説明
91 光ピックアップ
92 送りモータ
93 サーボ制御回路
94 変復調回路
95 外部回路
96 システムコントローラ
98 スピンドルモータ
100 光記録媒体
101,130a,140a 半導体レーザ
102 コリメートレンズ
103 偏光ビームスプリッタ
104 プリズム
105 1/4波長板
106 対物レンズ
107 BD系光記録媒体
108 検出レンズ
110,130c,140c,150 受光素子
120 可動部
121 鏡筒
127 DVD系光記録媒体
130b,140b ホログラム素子
132,142,152 発散角変換レンズ
133,143 波長選択性ビームスプリッタ
137 CD系光記録媒体
200 ピッチ
201a,202a 入射光
201b,202b 出射光
203 光源の強度分布
501,601,701,801 収差補正手段
502,602,702,802 回折面
502a,602a,702a 中心領域
502b,602b,702b 2番目の領域
502c,602c,702c 3番目の領域
502d 近いところ
502e 遠いところ
502f 平坦部の透過波面形状
502g 回折部の透過波面形状
704 段差
805,805a,805b 波長板

Claims (27)

  1. 記録密度の異なる複数種類の光記録媒体に対して記録,再生,消去のうち1以上行う光ピックアップにおいて、
    前記光記録媒体の記録密度が大きい順に第1,第2,第3の光記録媒体として、前記第1の光記録媒体に対応した第1の波長λ1を有する第1の光束を出射する第1の光源と、前記第2の光記録媒体に対応した第2の波長λ2を有する第2の光束を出射する第2の光源と、前記第3の光記録媒体に対応した第3の波長λ3を有する第3の光束を出射する第3の光源と、前記第1〜第3の光束を前記第1〜第3の光記録媒体の各記録面に集光させ、波長λ1の光束に対して収差が最小になるように設計された単一の対物レンズと、前記対物レンズと前記第1〜第3の光源の間に設けた収差補正手段とを備え、
    前記光源の第1,第2,第3の波長はλ1<λ2<λ3の関係であり、
    前記収差補正手段は、一面に回折構造が形成された回折面を有し、該回折面に光束が通過する光線有効径内で、少なくとも3つの同心円状の領域に分割した領域のうち中心側から順に、2つの領域のそれぞれで断面形状が凹凸形状で溝深さの異なる回折構造を形成され、
    中心領域に形成した前記回折構造は、波長λ1の光束を回折せずに波長λ2,波長λ3の光束を回折し、前記波長λ2の光束の最大回折角より前記波長λ3の光束の最大回折角の方が大きい回折面を設けてなり、
    前記収差補正手段は、平行光として入射する前記波長λ2、λ3の光束を発散方向に回折させ、前記波長λ2、λ3の光束が前記対物レンズへ入射するときに発生する収差と、基板厚・波長の違いにより発生する収差を、互いに逆極性にすることで収差補正することを特徴とする光ピックアップ。
  2. 請求項1記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心領域に形成した回折構造は、波長λ1,λ2,λ3の光束により最も強く発生する回折光の次数を、それぞれN11,N12,N13とするとき、次の条件
    |N11|<|N12|<|N13|
    が成り立つことを特徴とする光ピックアップ。
  3. 請求項1または2記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造は、波長λ1,λ2の光束により最も強く発生する回折光の次数を、それぞれN21,N22とするとき、次の条件
    |N21|<|N22|
    が成り立つことを特徴とする光ピックアップ。
  4. 請求項1,2または3記載の光ピックアップであって、
    前記回折構造の回折光における次数N11,N12,N13と次数N21,N22とは次数の符号が逆であることを特徴とする光ピックアップ。
  5. 請求項記載の光ピックアップであって、
    前記回折光の次数N11,N12,N13が、「N11=0,N12=−1,N13=−2」であることを特徴とする光ピックアップ。
  6. 請求項記載の光ピックアップであって、
    前記回折光の次数N21,N22が、「N21=0,N22=+1」であることを特徴とする光ピックアップ。
  7. 請求項1または2記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造は、波長λ1,λ2の光束により最も強く発生する回折光の次数を、それぞれN21,N22とするとき、「N21=0,N22=−1」であることを特徴とする光ピックアップ。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心領域および中心から2番目の領域に形成した回折構造は、階段形状を繰り返して形成し、前記各階段形状の傾斜方向が、中心領域と中心から2番目の領域では逆になることを特徴とする光ピックアップ。
  9. 請求項1〜6,8のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心領域に形成した回折構造は、階段形状を繰り返して形成し、前記各階段形状が、光軸中心から外側に向かって、光軸方向の溝深さが低くなるように形成したことを特徴とする光ピックアップ。
  10. 請求項1〜6,8,9のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造は、階段形状を繰り返して形成し、前記各階段形状が、光軸中心から外側に向かって、光軸方向の溝深さが高くなるように形成したことを特徴とする光ピックアップ。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心領域に形成した回折構造は、階段形状であり一段当たりの高さを、
    「波長λ1の光束に対しては、N1・M・λ1の位相差、
    波長λ2の光束に対しては、(N2+(M−1)/M)λ2の位相差、
    波長λ3の光束に対しては、(N3+(M−2)/M)λ3の位相差、
    ただし、Mは階段形状の段数、N1,N2,N3は0以上の整数」
    を付与する寸法に設定したことを特徴とする光ピックアップ。
  12. 請求項11記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心領域に形成した回折構造は、階段形状であり段数Mを「4」としたことを特徴とする光ピックアップ。
  13. 請求項1〜6,8〜12のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造は、階段形状であり一段当たりの高さを、
    「波長λ1の光束に対しては、N1・M・λ1の位相差、
    波長λ2の光束に対しては、(N2+1/M)λ2の位相差、
    波長λ3の光束に対しては、(N3・M)λ3の位相差、
    ただし、Mは階段形状の段数、N1,N2,N3は0以上の整数」
    を付与する寸法に設定したことを特徴とする光ピックアップ。
  14. 請求項13記載の光ピックアップであって、
    記回折構造は階段形状であり段数Mを「5」としたことを特徴とする光ピックアップ。
  15. 請求項1,2,7のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造は、階段形状であり一段当たりの高さを、
    「波長λ1の光束に対しては、N1・M・λ1の位相差、
    波長λ2の光束に対しては、(N2+(M−1)/M)λ2の位相差、
    波長λ3の光束に対しては、(N3+(M−1)/M)λ3の位相差、
    ただし、Mは階段形状の段数、N1,N2,N3は0以上の整数」
    を付与する寸法に設定したことを特徴とする光ピックアップ。
  16. 請求項15記載の光ピックアップであって、
    前記回折構造は階段形状であり段数Mを「3」としたことを特徴とする光ピックアップ。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、回折構造を形成した領域は、階段形状であり、中心から2番目の領域の溝深さが、中心領域より低いことを特徴とする光ピックアップ。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心から番目の領域を平坦部としたことを特徴とする光ピックアップ。
  19. 請求項1〜18のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心から3番目の領域に光軸方向の厚さが異なる段差を形成したことを特徴とする光ピックアップ。
  20. 請求項1〜19のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心領域に形成した回折構造のピッチが、単一の対物レンズを用いて、波長λ2の光束が第2の光記録媒体の基板を透過する際に生じる球面収差と、波長λ3の光束が第3の光記録媒体の基板を透過する際に生じる球面収差とを打ち消すように、前記回折構造に形成したことを特徴とする光ピックアップ。
  21. 請求項1〜20のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面において分割した領域のうち、中心から2番目の領域に形成した回折構造のピッチが、単一の対物レンズを用いて、波長λ2の光束が第2の光記録媒体の基板を透過する際に生じる球面収差を打ち消すように、前記回折構造に形成したことを特徴とする光ピックアップ。
  22. 請求項1〜21のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    対物レンズは、最も記録密度の大きい第1の光記録媒体に対して、波長λ1の光束により収差が最小になるように設計したことを特徴とする光ピックアップ。
  23. 請求項1〜22のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面の回折構造を対物レンズの面上に形成したことを特徴とする光ピックアップ。
  24. 請求項1〜22のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面を設けた収差補正手段の前記回折面と反対側の面に波長板を形成したことを特徴とする光ピックアップ。
  25. 請求項1〜24のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面回折構造を樹脂材料により構成したことを特徴とする光ピックアップ。
  26. 請求項1〜25のいずれか1項に記載の光ピックアップであって、
    前記回折面を有する収差補正手段の外形形状を前記回折面と同心円の円形状としたことを特徴とする光ピックアップ。
  27. 記録密度の異なる複数種類の光記録媒体に対して記録,再生,消去のうち1以上行う光情報処理装置であって、
    請求項1〜26のいずれか1項に記載の光ピックアップを備えたことを特徴とする光情報処理装置
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