本発明の一実施形態に係る加工装置を、図1〜20を用いて説明する。図1は、本実施形態の加工装置10を示す概略図である。図1に示すように、加工装置10は、レーザ発振器20を備えている。加工装置10は、レーザ発振器20から発振されるレーザ光によって、被加工物を加工する。
本実施形態では、被加工物の一例として、インクジェットプリンタに用いられるプリンタヘッド30が加工される。具体的には、加工装置10は、プリンタヘッド30においてインクを噴射するノズルを形成する。
図2は、加工装置10によって加工された後のプリンタヘッド30を示している。図2は、プリンタヘッド30を上方から見た平面図を示している。図3は、図2に示されるF3−F3線に沿って示すプリンタヘッド30の断面図を示している。
図2,3に示すように、プリンタヘッド30は、基板31と、圧電体素子32と、ポリイミドフィルム33とを備えている。
基板31は、例えば平板状であって、セラミック製である。圧電体素子32は、平板状であって、基板31の一端面上の略中央に固定されている。圧電体素子32において基板31と反対側の面には、ポリイミドフィルム33が固定されている。図2は、プリンタヘッド30を、ポリイミドフィルム33側から見ている。図2に示すように、圧電体素子32の平面形状とポリイミドフィルム33の平面形状とは略同じである。
図3に示すように、圧電体素子32には、インクをためる複数のインク溜め部34が形成されている。インク溜め部34は、凹状であって、ポリイミドフィルム33が載置される面に開口している。図2中ではインク溜め部34の縁を点線で示す。
インク溜め部34の配置について、具体的に説明する。図2に示すように、プリンタヘッド30に長手方向A1と交差方向A2とを設定する。基板31は、平面形状が長方形である。長手方向A1は、長手方向である。交差方向A2は、長手方向A1と直行する方向である。
インク溜め部34は、長手方向A1と交差方向A2とに対して斜め方向である斜め方向A3(矢印で示す)に3つ一組となっており、当該組が長手方向A1に平行に複数配置されて列35をなしている。また、当該列35は、交差方向A2に一対設けられている。なお、図中、一例として一組を2点鎖線で囲って示す。
図3は、インク溜め部34を通る断面図である。図3に示すように、各インク溜め部34は、圧電体素子32においてポリイミドフィルム33が載置される面に開口している。各インク溜め部34は、ポリイミドフィルム33によって覆われている。
図2,3に示すように、ポリイミドフィルム33においてインク溜まり部34と対向する部位には、インクを噴射する孔状のノズル36が形成されている。ノズル36は、ポリイミドフィルム33を貫通している。1つのインク溜まり部34に対して1つのノズル36が形成されている。加工装置10は、レーザ発振器20から発振されたレーザ光によって、ノズル36を加工形成する。
図2に示すように、基板31の周縁部には、基板用第1の基準マーク37と、基板用第2の基準マーク38とが形成されている。基板用第1の基準マーク37と基板用第2の基準マーク38とは、お互いを結ぶ線が長手方向A1に平行に並ぶとともに、お互い基板31の長手方向A1の両端部に離れて配置されている。
加工装置10の説明に戻る。図1に示すように、加工装置10は、1つのレーザ発振器20と、複数の加工ユニット50と、1つの全体制御装置25とを備えている。レーザ発振器20は、レーザ光を発振する。全体制御装置25は、レーザ発振器20の動作を制御する。全体制御装置25については、後で詳細に説明する。
本実施形態では、1つの加工ユニット50が1つのプリンタヘッド30を加工する。本実施形態では、一例として、4つの加工ユニット50が用いられている。このため、加工装置10は、同時に4つのプリンタヘッド30を加工することができる。各加工ユニット50は、略同様の構造であってよい。なお、加工ユニット50の数は4つに限定されない。5つや6つのなど他の複数であってもよい。
加工ユニット50は、レーザ発振器20から発振されたレーザ光をプリンタヘッド30に照射すべくプリンタヘッド30を移動可能に保持する保持部60と、位置検出部140と、加工レンズ160と、カメラ190と、ミラー170と、シャッター180と、個別制御装置200とを備えている。
レーザ発振器20は、例えば固定されており、保持部60に到達するレーザ光Lの位置は、一定である。これに対して、保持部60がプリンタヘッド30を、当該プリンタヘッド30の作業点にレーザ光Lが照射されるように移動する。このように、レーザ光の固定された到達位置に対してプリンタヘッド30が移動することによって、互いに相対位置が変化する。
図5は、保持部60を示している。図6は、保持部60が分解された状態を示す斜視図である。図5,6に示すように、保持部60は、プリンタヘッド30を互いに直行する2方向(X軸方向X、Y軸方向Y)に移動可能とするX・Yステージ70と、プリンタヘッド30をX・Yステージ70の移動方向と直行する方向(Z軸方向Z)に移動可能とする保持台90と、プリンタヘッド30が固定される加工ステージ110とを備えている。
X軸方向Xは、本発明で言う第1の方向の一例である。Y軸方向Yは、本発明で言う第2の方向の一例である。Z軸方向Zは、本発明で言う第3の方向の一例である。なお、本実施形態では、保持部60は、X・Yステージ70と保持台90とによって、互いに直行する3方向(X,Y,Z方向X,Y,Z)に移動可能となっているが、これに限定されない。例えば、他の機構によって移動可能となってもよい。
X・Yステージ70は、X軸方向移動部71と、Y軸方向移動部80とを備えている。Y軸方向移動部80は、加工ステージ110を、上記2方向のうち1方向に移動可能とする。X軸方向移動部71は、加工ステージ110を、上記2方向のうち他の1方向に移動可能とする。
Y軸方向移動部80は、Y軸ステージ駆動部81と、Y軸ステージ82とを備えている。Y軸ステージ駆動部81は、Y軸ステージ82を一方向(Y軸方向Y)に変位可能であって、所望の位置まで移動可能に支持する。本実施形態では、Y軸ステージ82が移動可能な方向をY軸方向Yとする。Y軸ステージ駆動部81は、Y軸用基部83と、Y軸用駆動機構84と、Y軸用ガイド部85とを備えている。
Y軸用基部83は、例えば、加工装置10が収容される建物などの床5(図5に一部示す)上に配置されて固定されている。Y軸用基部83は、Y軸方向Yに長い形状である。Y軸用基部83の中央には、Y軸方向Yに延びる凹部86が形成されている。
Y軸用駆動機構84は、Y軸用ボールねじ87と、Y軸用アクチュエータ88とを備えている。Y軸用ボールねじ87は、Y軸用基部83の凹部86内に収容されて支持されている。Y軸用ボールねじ87のねじ部87aは、Y軸方向Yに延びている。ねじ部87aは、Y軸用アクチュエータ88によってその軸心線回り(Y軸方向Y回り)に回転されるとともに、当該回転が制御される。
Y軸用アクチュエータ88によってねじ部87aが回転されると、ねじ部87aに組みつけられたナット87bの位置が、ねじ部87aに沿って変位する。この結果、ナット87bは、Y軸方向Yに平行に直線運動する。
Y軸用ガイド部85は、一対のガイドレール85aと、一対のスライド部85bとを備えている。各ガイドレール85aは、Y軸用基部83において凹部86を挟んで両側に1つずつ固定されている。各ガイドレール85aは、Y軸方向Yに平行に延びている。
各スライド部85bは、各ガイドレール85aに1つずつ組み付けられており、当該ガイドレール85aに沿ってスライド可能である。
Y軸ステージ82は、例えば平板状であって、スライド部85bに固定されている。Y軸ステージ82は、ナット87bが固定されている。このため、Y軸用アクチュエータ88の駆動によってねじ部87aが回転すると、ナット87bの変位に合わせてY軸ステージ82がY軸方向Yに平行に変位する。この際のY軸ステージ82のスライドは、各スライド部85bが対応するガイドレール85aに対してスライドすることによって、ガイドされる。
X軸方向移動部71は、X軸ステージ駆動部72と、X軸ステージ73とを備えている。X軸ステージ駆動部72は、X軸ステージ73を、Y軸方向Yと直行する一方向であるX軸方向Xに平行に移動可能に支持する。
X軸ステージ駆動部72は、X軸用駆動機構74と、X軸用ガイド部76とを備えている。X軸用駆動機構74は、X軸用ボールねじ75と、X軸用アクチュエータ77とを備えている。なお、Y軸ステージ82は、X軸方向移動部71の基部としての機能を有している。
Y軸ステージ82は、Y軸用基部83と反対側においてY軸方向Yの略中央に、Y軸方向Yと直交するX軸方向Xに延びる凹部78が形成されている。X軸用ボールねじ75のねじ部75aは、凹部78内に収容され支持されている。ねじ部75aは、X軸方向Xに平行に延びている。
X軸用アクチュエータ77は、ねじ部75aに組み付けられている。ねじ部75aは、X軸用アクチュエータ77によってその軸心線回りに回転されるとともに、当該回転が制御される。ねじ部75aが回転されると、ねじ部75aに組みつけられたナット75bがねじ部75aに沿って変位する。言い換えると、ナット75bは、X軸用アクチュエータ77によって、X軸方向Xに平行に変位する。
X軸用ガイド部76は、一対のX軸用ガイドレール76aと、例えば4個のX軸用スライド部76bとを備えている。X軸用ガイドレール76aは、Y軸ステージ82(X軸方向移動部71の基部として機能している)において凹部78を挟んで両側に1つずつ配置固定されており、X軸方向Xに平行に延びている。一つのX軸用ガイドレール76aには、2つのX軸用スライド部76bがX軸用ガイドレール76aに沿ってスライド可能に組み付けられている。同一X軸用ガイドレール76a上に配置される一対のX軸用スライド部76bは、当該X軸用ガイドレール76a上において互いにX軸方向Xに離間して配置されている。
X軸ステージ73は、例えば平板状であって、X軸用スライド部76b上に固定されている。X軸ステージ73は、ナット75bが固定されている。このため、X軸用アクチュエータ77によってねじ部75aが回転されると、X軸ステージ73は、ナット75bの変位にともなって、X軸方向Xに平行に変位する。
X軸方向移動部71とY軸方向移動部80とには、X軸ステージ73とY軸ステージ82との移動を規制するストッパ機構100が設けられている。ストッパ機構100は、第1の係合部101と、第2の係合部102とを備えている。
第1の係合部101は、Y軸用基部83と、Y軸ステージ82とに、2つ設けられている。第2の係合部102は、Y軸ステージ82と、X軸ステージ73とに設けられている。
Y軸用基部83に設けられる第1の係合部101は、Y軸用基部83の周面においてY軸方向に沿う面上に配置されており、外側に突出するとともに、Y軸方向Yに互いに離間して配置されている。Y軸ステージ82に設けられる第2の係合部102は、Y軸ステージ82の周縁部においてY軸方向Yに沿う部分に設けられており、Y軸用基部83に向かって突出している。第2の係合部102は、Y軸方向Yに2つの第1の係合部101間に配置されている。第2の係合部102が第1の係合部101に当接することによって、Y軸ステージ82の移動がストップされる。なお、第1の係合部101間の距離は、任意に設定されている。
Y軸ステージ82に設けられる第1の係合部101は、Y軸ステージ82の周縁部においてX軸方向Xに沿う部位に、一対配置されている。各第1の係合部101は、X軸方向Xに離間して配置されている。X軸ステージ73に設けられる第2の係合部102は、X軸ステージ73においてX軸方向Xに沿う部分に設けられている。第2の係合部102は、2つの第1の係合部101の間に配置されている。X軸ステージ73が移動する際に、第2の係合部102が第1の係合部101に当接することによって、X軸ステージ73の移動がストップする。2つの第1の係合部101の間の距離は、任意に設定される。
保持台90は、X軸ステージ73に固定されている。加工ステージ110は、保持台90に固定されている。このため、加工ステージ110は、Y軸方向移動部80とX軸方向移動部71とによって、X・Y軸方向X,Yに変位可能となる。加工ステージ110の表面110a(被加工物が載置されて固定される面)は、X・Y軸方向X,Yによって規定される仮想平面と平行な面である。
保持台90は、図示しないZ軸移動機構を備えている。Z軸移動機構は、加工ステージをZ軸方向Zに移動する機能を有している。Z軸方向Zは、X軸方向XとY軸方向Yとに垂直に交わる方向である。なお、本実施形態では、Z軸方向Zは、例えば図中上下方向である。
加工ステージ110の上面は、例えば、X軸方向XとY軸方向Yとによって規定される仮想平面と平行な平面である。加工ステージ110上には、プリンタヘッド30を固定する固定機構120が設けられている。
固定機構120は、図示しないバキュームチャックと、2つの固定ピン121と、2つの可動ピン122とを備えている。バキュームチャックは、例えば加工ステージ110内に配置されており、加工ステージ110上に配置されるプリンタヘッド30を吸い込み力によって固定する。
固定ピン121と可動ピン122とは、例えば円筒状である。固定ピン121と可動ピン122とは、加工ステージ110上においてプリンタヘッド30の周縁を周方向外側から内側に向かって挟み込むことによって、プリンタヘッド30を支持する。
このとき、プリンタヘッド30は、上記で設定された長手方向A1がX軸方向Xに平行になるように、かつ、交差方向A2がY軸方向Yと平行になるように配置固定される。
固定ピン121は、加工ステージ110に固定されている。可動ピン122は、例えば図中矢印で示す方向に移動可能であるとともに、プリンタヘッド30を挟むように図示しない付勢機構によってプリンタヘッド30側に付勢されている。
なお、固定機構120の構造は、上記に限定されない。例えば他の構造によってプリンタヘッド30が加工ステージ110に固定されてもよい。要するに、固定機構120は、プリンタヘッド30などの被加工物を加工ステージ110に固定する機能を有していればよい。
図9は、加工ステージ110を示す平面図である。図9に示すように、加工ステージ110上には、位置決め用の基準ゲージ130が固定されている。図10は、基準ゲージ130を拡大して示す平面図である。図10に示すように、基準ゲージ130は、例えば平板状である。
基準ゲージ130上には、ゲージ用第1の基準マーク131と、ゲージ用第2の基準マーク132とが形成されている。ゲージ用第1の基準マーク131とゲージ用第2の基準マーク132との相対位置関係(Z軸方向Zの位置関係は、考慮せず、X・Y軸方向X,Yでの相対位置関係)は、プリンタヘッド30に形成される基板用第1の基準マーク37と基板用第2の基準マーク38との相対位置関係(Z軸方向Zの位置関係は考慮せず、X・Y軸方向X,Yでの相対位置関係)と同じである。
図9に示すように、基準ゲージ130は、加工ステージ110上に、ゲージ用第1,2の基準マーク131,132が並ぶ方向がX軸方向Xと平行になるように配置固定されている。
基準ゲージ130には、複数の加工点マーク133が形成されている。加工点マーク133とゲージ用第1,2の基準マーク131,132との相対位置関係(Z軸方向Zの位置関係は、考慮せず、X・Y軸方向X,Yの相対位置関係)は、プリンタヘッド30の基板用第1,2の基準マーク37,38とポリイミドフィルム33におけるノズル36が配置されるべき位置とを上方から見た際の平面視での相対位置関係と同じである。
言い換えると、基準ゲージ130にはポリイミドフィルム33に形成すべきノズル36と同じ数の加工点マーク133が形成されており、これら加工点マーク133のお互いの平面視上の相対位置関係は、ポリイミドフィルム33に形成すべき複数のノズル36のお互いの平面視上の相対位置関係と同じである。平面視上の相対位置関係とは、Z軸方向Zの相対位置関係は、考慮せず、X・Y軸方向X,Yの相対位置関係である。なお、図中加工点マーク133は、誇張して大きく書かれている。
図5,6に示すように、位置検出部140は、Y軸方向Yに沿う加工ステージ110の位置を検出するY軸座標計測器141と、X軸方向Xに沿う加工ステージ110の位置を検出するX軸座標計測器142と、Z軸方向Zに沿うポリイミドフィルム33上の作業点(レーザ光が照射される点)の位置を検出するレーザ変位センサ143とを備えている。なお、本実施形態では、X・Y・Z軸方向X,Y,Zの位置が座標で表される。
図6に示すように、Y軸座標計測器141は、一例として、リニアエンコーダが用いられている。Y軸座標計測器141は、本発明で言う位置計測器および第1の位置計測器の一例である。Y軸座標計測器141は、Y軸用リニアスケール144と、Y軸用インデックススケール145とを備えている。
Y軸用リニアスケール144は、Y軸方向移動部80のY軸用基部83に固定される支持部146に、固定されている。Y軸用リニアスケール144は、光を透過する性質を有する材質として例えばガラスが用いられており平板状に形成されている。Y軸用リニアスケール144には、一定の間隔でクローム金属が設けられている。このため、Y軸用リニアスケール144は、Y軸方向Yに一定の間隔で明暗が形成されている。
図7は、保持部60をY軸方向Yに沿って見た状態を示す側面図である。図6,7に示すように、支持部146は、例えば平板状であって、Y軸用基部83の周面のうち、Y軸方向Yに沿う周面に例えばボルト147によって固定されている。Y軸用リニアスケール144は、支持部146の上端部(基部83と反対側の端部)に配置固定されており、クロームめっきによる明暗の並ぶ方向がY軸方向Yに平行になるように配置されている。
Y軸用インデックススケール145は、Y軸ステージ82に固定されている支持部148に、固定されている。支持部148は、Y軸ステージ82の周縁部のうち支持部146と対向する部位に、例えばボルト149によって固定されている。Y軸用インデックススケール145は、支持部148の端部150(Y軸ステージ82と反対側)に配置固定されており、Y軸用リニアスケール144と対向するように配置されている。
Y軸ステージ82は、Y軸用基部83に対してY軸方向Yに平行に相対的に変位可能である。このため、Y軸用インデックススケール145とY軸用リニアスケール144との相対位置は、互いにX軸方向Xに対向したまま、Y軸方向Yに変位可能となる。言い換えると、Y軸用インデックススケール145は、Y軸用リニアスケール144に対してY軸方向Yに移動可能である。
支持部146内には、発光素子146a(点線で示されている)が組み込まれている。また、支持部148内には、受光素子148a(点線で示されている)が組み込まれている。発光素子146aから発せられる光は、Y軸用リニアスケール144とY軸用インデックススケール145とを通って受光素子148aによって検出される。
この際、Y軸用リニアスケール144に対してY軸用インデックススケール145がY軸方向Yに変位すると(Y軸ステージ82がY軸方向Yに変位すると)、Y軸用リニアスケール144に形成される明暗によって、受光素子148aによって検出される光に明暗が発生する。受光素子148aによって検出された光の明暗をカウントすることによって、Y軸方向Yに沿う加工ステージ110の座標を検出する。
発光素子146aと受光素子148aとは、後述される個別制御装置200に接続されており、加工ステージ110の位置は、個別制御装置200によって把握される。
つぎに、Y軸用リニアスケール144と、Y軸用インデックススケール145との位置を具体的に説明する。図7に示すように、Y軸用リニアスケール144とY軸用インデックススケール145とは、Z軸方向Zに加工ステージ110上のプリンタヘッド30と同じ高さになるように設定されている。
なお、本発明で言う同じ高さとは、厳密に同じ高さであることに加えて、Y軸用リニアスケール144(具体的には発光素子146aなどの実際に検出する部位)の少なくとも一部とY軸用インデックススケール145(具体的には、受光素子148aなどの実際に検出する部位)との少なくとも一部とが、Z軸方向Zを垂直に横切る同一平面内にプリンタヘッド30の少なくとも一部とともに位置する場合も含む。
本実施形態では、X軸方向XとY軸方向Yとによって規定される仮想平面V1(Z軸方向Zを垂直に横切る平面の一例)上に、ポリイミドフィルム33の表面33aと、受光素子148aと発光素子146aとなどの実際に位置を検出する検出部(センサなど)の一部とが位置する。
このため、Y軸用リニアスケール144(具体的には、発光素子146aなどの実際に検出する部位)とY軸用インデックススケール145(具体的には、受光素子148aなどの実際に検出する部位)とは、加工ステージ110の表面110aの延長面V2(図中2点鎖線で示される)上に配置されることになる。
なお、Y軸座標計測器141の構造は、上記に限定されない。要するに、Y軸方向Yの座標を検出できればよい。そして、位置を計測する機構と被加工物とのZ軸方向Zに沿う位置が同じあればよく、好ましくは、実際に位置を検出するセンサなどの検出部(本実施形態では、受光素子148aや発光素子146a)と、被加工物の表面(本実施形態では、ポリイミドフィルム33の表面33a)とが、被加工物の移動方向(本実施形態では、X軸方向XとY軸方向Y)とによって規定される仮想平面V1上にあればよい。
なお、受光素子148aと発光素子146aとが仮想平面V1上にあるということは、受光素子148aと発光素子146aとが仮想平面V1に重なる位置にあることも含まれる。
または、好ましくは、実際に位置を検出するセンサなどの検出部(本実施形態では、受光素子148aや発光素子146a)が加工ステージ110の表面110aの延長面V2上に配置されればよい。
図8は、保持部60を、X軸方向Xに沿って見た状態を示す側面図である。図8に示すように、X軸座標計測器142は、一例として、リニアエンコーダが採用されている。X軸座標計測器142は、本発明で言う位置計測器および第2の位置計測器の一例である。X軸座標計測器142は、X軸用リニアスケール151と、X軸用インデックススケール152とを備えている。
X軸用リニアスケール151は、Y軸ステージ82の周面のうちX軸方向Xに沿う周面に固定される支持部153に、固定されている。X軸用リニアスケール151は、Y軸座標計測器141のY軸用リニアスケール144と同様の構造でよい。X軸用リニアスケール151は、支持部153の端部(Y軸ステージ82と反対側の端部)に、明暗が並ぶ方向がX軸方向Xに平行になるように配置固定されている。
X軸用インデックススケール152は、X軸ステージ73の周縁部において支持部153と対向する部位に固定される支持部154に、固定されている。支持部154は、支持部153と対向するように配置されている。X軸用インデックススケール152は、支持部154の端部(X軸ステージ73と反対側の端部)においてX軸用リニアスケール151とY軸方向Yに対向するように配置されている。
X軸ステージ73は、Y軸ステージ82に対してX軸方向Xに相対的に変位可能である。このため、X軸用インデックススケール152とX軸用リニアスケール151との相対位置は、Y軸方向Yに対向した状態を保持したまま、X軸方向Xに変位可能である。言い換えると、X軸用インデックススケール152は、X軸用リニアスケール151に対してX軸方向Xに移動可能である。
支持部153内には、発光素子153aが組み込まれている。また、支持部154内には、受光素子154aが組み込まれている。発光素子153aから発せられる光は、X軸用リニアスケール151とX軸用インデックススケール152とを通って受光素子154aによって検出される。
X軸用リニアスケール151に対してX軸用インデックススケール152がX軸方向Xに変位すると(X軸ステージ73がX軸方向Xに変位すると)、X軸用リニアスケール151に形成される明暗によって、受光素子154aによって検出される光に明暗が発生する。受光素子154aが検出する光の明暗をカウントすることによって、X軸方向Xに沿う加工ステージ110の座標が検出される。
発光素子153aと受光素子154aとは、後述される個別制御装置200に接続されており、加工ステージ110の位置は、個別制御装置200によって把握される。
つぎに、X軸用リニアスケール151と、X軸用インデックススケール152との位置を具体的に説明する。図8に示すように、X軸用リニアスケール151とX軸用インデックススケール152とは、Z軸方向Zに加工ステージ110上のプリンタヘッド30と同じ高さになるように設定されている。
より具体的には、X軸方向XとY軸方向Yとによって規定される仮想平面V1上に、ポリイミドフィルム33の表面33aと、受光素子154aと発光素子153aとなどの実際に位置を検出する検出部(センサなど)とが位置する。
なお、本発明で言う同じ高さとは、厳密に同じ高さであることに加えて、X軸用リニアスケール151(具体的には、発光素子153aなどの実際に検出する部位)の少なくとも一部とX軸用インデックススケール152(具体的には、受光素子154aなどの実際に検出する部位)の少なくとも一部が、Z軸方向Zを垂直に横切る同一平面にプリンタヘッド30とともに位置する場合も含む。
本実施形態では、X軸方向XとY軸方向Yとによって規定される仮想平面V1(Z軸方向Zを垂直に横切る平面の一例)上に、ポリイミドフィルム33の表面と、発光素子153aと受光素子154aとなどの実際に位置を検出する検出部(センサなど)の一部とが位置する。
このため、X軸用リニアスケール151(具体的には、発光素子153aなどの実際に検出する部位)とX軸用インデックススケール152(具体的には、受光素子154aなどの実際に検出する部位)とは、加工ステージ110の表面110aの延長面V2(図中2点鎖線で示される)上に配置されることになる。
なお、X軸座標計測器142の構造は、上記に限定されない。要するに、X軸方向Xの座標を計測できればよい。そして、位置を計測する機構が被加工物と同じ高さに配置されていればよく、好ましくは、実際に位置を検出するセンサなどの検出部(本実施形態では、受光素子154aや発光素子153a)と、被加工物の作業点(本実施形態では、ポリイミドフィルム33の表面33a)とが、X軸方向XとY軸方向Yとによって規定される仮想平面V1上にあればよい。
なお、受光素子154aと発光素子153aとが仮想平面V1上にあるということは、受光素子154aと発光素子153aとが仮想平面V1と重なる、ということも含む。
または、実際に位置を検出するセンサなどの検出部(本実施形態では、受光素子154aや発光素子153a)が加工ステージ110の表面110aの延長面V2上に配置されればよい。
支持部146,148,153,154の固有振動数は、加工装置10の設置環境、具体的には、加工装置10が収容される建物においてX・Yステージ70が配置固定される部位(本実施形態では、床5)の固有振動数と保持部60全体の固有振動数などと異なるように設定されている。床5は、本発明で言う保持部が載置される部位の一例である。
例えば、保持部60全体の固有振動数と床5の固有振動数より大きな値となるように、支持部146,148,153,154を構成する部材の選定、形状などが考慮されている。
また、支持部146,148は、Y軸ステージ82のY軸方向Yに沿う移動の加減速中における慣性力によってたわまないように考慮されている。例えば、支持部146,148は、Y軸方向Yに所定の幅を有しており、それゆえ、Y軸方向Yの変形を抑制している。または、支持部146,148を形成する材料の選定や、形状が考慮されている。
同様に支持部153,154は、X軸ステージ73のX軸方向Xに沿う移動の加減速中における慣性力によってたわまないよう考慮されている。例えば、支持部153,154は、X軸方向Xに所定の幅を有しており、それゆえ、X軸方向Xの変形を抑制している。または、支持部153,154を形成する材料の選定や、形状が考慮されている。
図1に示すように、レーザ変位センサ143は、加工ステージ110に対してZ軸方向Zに離れた位置に設けられている。レーザ変位センサ143は、ポリイミドフィルム33の表面33aの各作業点(ノズル36が形成される位置)のZ軸方向Zに沿う位置を検出する。
ポリイミドフィルム33の表面33aは、例えばゆがみなどによって非常に小さい値でZ軸方向Zに位置のばらつき生じることがある。このため、実際にレーザ光が照射される点を正確に計測する必要がある。
レーザ変位センサ143は、例えば「共焦点の原理」を利用したもので、レンズの焦点距離を検出する変位計である。レーザ変位センサ143から照射されるレーザ光の焦点をポリイミドフィルム33上の作業点(ノズル36が形成される点)と一致させることによって、当該加工点のZ軸方向Zに沿う位置を検出する。
レーザ変位センサ143は、後述される個別制御装置200に接続されており、プリンタヘッド30においてレーザが照射すれる作業点のZ軸方向Zに沿う位置が個別制御装置200によって把握されている。
Z軸方向Zに沿う作業点(レーザが照射される点)の位置の検出方法は、上記のレーザ変位センサ143を用いることに限定されない。他の装置を用いてZ軸方向Zに沿う加工点の位置を検出してもよい。要するに、ポリイミドフィルム33の作業点(レーザ光が照射される位置)のZ軸方向Zに沿う位置を検出できればよい。
なお、ポリイミドフィルム33の表面33aのたわみに起因する各作業点のZ軸方向Zに沿う位置のばらつきは、非常に小さいものである。このため、本実施形態では、当該ばらつきによって加工ステージ110をZ軸方向Zに変位した場合であっても、ポリイミドフィルム33の作業点は、発光素子146a,153aと受光素子148a,154aとともに、仮想平面V1内に位置する。同様に、発光素子146a,153aと受光素子148a,154aは、仮想平面V2上に位置する。
図4は、加工ユニット50における保持部60の一部およびその近傍を示している。レーザ発振器20から照射されたレーザ光は、加工レンズ160を介してポリイミドフィルム33においてノズル36が形成されるべき作業点で集光される。この結果、アブレーション作用によって、ポリイミドフィルム33にノズル36が形成される。
図1,4に示すように、加工レンズ160は、保持部60に対してZ軸方向Zに離れた位置に固定されている。加工レンズ160を通過したレーザ光Lは、ポリイミドフィルム33に到達する。
図1に示すように、ミラー170は、レーザ発振器20と加工レンズ160との間に配置固定されている。ミラー170は、レーザ発振器20から照射されたレーザ光Lの一部を反射して加工レンズ160に導くとともに、残りを透過する機能を有している。または、ミラー170は、到達したレーザ光を全て反射する機能を有している。ミラー170は、本発明で言うミラーの一例である。
ここで、各加工ユニット50のミラー170について、具体的に説明する。図1に示すように、各加工ユニット50のミラー170は、レーザ発振器20から照射されるレーザ光Lの進行方向に並んでいる。本実施形態では、例えば直線状に並んでいる。
各ミラー170は、当該ミラー170によって反射されたのち各プリンタヘッド30に到達したレーザ光Lの強度が各加工ユニット50で一定となるように、言い換えると、各加工ユニット50の加工レンズ160に到達するレーザ光Lの強度が、各加工ユニット50で一定になるように設定されている。本実施形態では、4つの加工ユニット50が用いられているので、各加工レンズ160には、レーザ発振器20から照射されるレーザ光Lの25パーセントの強度のレーザ光Lが到達するように設定されている。
レーザ発振器20から照射されたレーザ光Lが最初に到達するミラー170(図1中、左に配置される加工ユニット50のミラー170)は、レーザ発振器20から照射されたレーザ光Lの25パーセントを反射し、75パーセントを透過する性質を有している。
つぎに到達するミラー170(図中左から2番目の加工ユニット50のミラー170)は、到達したレーザ光Lの33パーセントを反射し、67パーセントを透過する性質を有している。つぎに到達するミラー170(図中、左から3番目の加工ユニット50のミラー170)は、到達したレーザ光Lの50パーセントを反射し、50パーセントを透過する性質を有している。
複数の加工ユニット50のうち、最後にレーザ光が到達する加工ユニット50のミラー170(図中、右に配置される加工ユニット50のミラー170)は、到達するレーザ光Lの全てを反射する性質を有している。
このように、加工装置10では、1つのレーザ発振器20から照射されるレーザ光Lを利用して、全ての加工ユニット50にレーザ光Lを供給している。このため、図1では、4つの加工ユニット50が用いられる状態を示しているが、加工ユニット50の数を比較的容易に増減することができる。
図11は、図1に示した加工装置10に、さらに加工ユニット50を1つ加えた状態を示している。図11中、図1に対して加えられた加工ユニット50を2点鎖線で示している。
図11に示すように、加工ユニット50を増加する場合、各加工ユニット50のミラー170を変更する。これは、加工ユニット50の数が増加することにともなって、各加工ユニット50に分配されるレーザ光Lの強度を一定にするためである。加工ユニット50の数を減少する場合であっても、各加工ユニット50のミラー170を変更する。
ミラー170と加工レンズ160とは、レーザ光をプリンタヘッド30に導く光学系300を構成している。光学系300は、本発明で言う光学系の一例である。なお、光学系300は、ミラー170と加工レンズ160とを備えることに限定されない。他の構成であってもよい。要するに、光学系300は、レーザ光Lをプリンタヘッド30に導くことができればよい。
図1に示すように、シャッター180は、ミラー170よって反射されて加工レンズ160に向かうレーザ光Lの通り道に配置されている。シャッター180は、本体部181と、駆動部182とを備えている。
本体部181は、レーザ光を遮り、レーザ光Lが加工レンズ160に到達することを阻止する機能を有している。本体部181は、レーザ光Lを遮る位置P1と、レーザ光Lの進行を遮らない位置P2との間で変位可能である。
本体部181の変位は、駆動部182によって行われる。駆動部182は、全体制御装置25によって制御される。本体部181が遮る位置P1にある状態では、ミラー170を通過したレーザ光Lは本体部181に当たり、それゆえ、遮られる。この結果、レーザ光Lは、加工レンズ160に到達せず、それゆえ、ポリイミドフィルム33が加工されない。
なお、シャッター180の構造は、上記に限定されない。要するに、シャッター180は、レーザ光Lがポリイミドフィルム33などの被加工物の作業点に到達することを選択的に遮る機能を有していればよい。
カメラ190は、本発明で言う撮影部の一例である。図4に示すように、カメラ190は、加工ステージ110に対してZ軸方向Zに離れた位置に固定されており、移動しない。カメラ190は、加工ステージ110上を撮影する。図12は、カメラ190によって撮影された画像191を示している。図12は、基準ゲージ130の一部が撮影された状態を示している。
図12に示すように、カメラ190によって撮影される範囲は、基準ゲージ130の全体ではなく、一部である。なお、図12は、基準ゲージ130の加工点マーク133を撮影している状態を示している。
上記された、X軸座標計測器142とY軸座標計測器141とによって計測される加工ステージ110の座標位置は、カメラ190の画像191の中心位置195の座標である。個別制御装置200は、得られた画像191の中心位置195の座標に基づいて、画像191内の全て位置の座標を把握する。
カメラ190と加工レンズ160との位置関係を説明する。カメラ190と加工レンズ160との位置関係は、カメラ190の画像191の中心位置195に加工点マーク133が位置した状態では、加工レンズ160を通って照射されるレーザ光Lが、画像191の中心位置195に位置する加工点マーク133に対応するポリイミドフィルム33に形成されるべきノズル36の作業点に照射される関係である。
なお、この関係は、理想であり、加工ステージ110に対するプリンタヘッド30の位置ずれ、装置特有の動作誤差など(X・Yステージ70の動作誤差など)がない場合である。実際には、上記各種誤差が発生することがある。各種誤差に対する補正は、後で詳細に説明する。
図1に示すように、個別制御装置200は、Y軸用のY軸用アクチュエータ88の動作と、X軸用アクチュエータ77の動作と、Z軸移動機構の動作とを制御する。具体的には、個別制御装置200は、アクチュエータ77,88の動作を制御して、加工ステージ110に固定されるプリンタヘッド30の位置を、レーザ光Lが所望の位置(ノズル36が形成されるべき位置)に到達するように移動する。また、個別制御装置200は、Z軸移動機構の動作を制御して、レーザ光Lが所望の位置で焦点を結ぶようにする。
また、個別制御装置200は、カメラ190と接続されており、カメラ190によって撮影された画像191から加工ステージ110の座標(撮影画像の中心位置195の座標)を検出するとともに、得られた座標に基づいて画像191内の全ての位置の座標を検出する。
また、個別制御装置200は、基準ゲージ130のゲージ用第1,2の基準マーク131,132と、各加工点マーク133の座標のデータ(あらかじめ入力されている)を有している。さらに、加工ステージ110上において、プリンタヘッド30が配置されるべき位置の座標データ、具体的には、基板用第1,2の基準マーク37,38が配置されるべき座標データを有している。
つぎに、加工装置10の動作を説明する。まず、加工装置10を初めて動作する場合を説明する。図13は、加工装置10を始めて動作する場合の動作を示すフローチャートである。加工装置10を初めて動作する際には、各加工ユニット50に特有の誤差を検出する。これは、X・Yステージ70の動作誤差や、レーザ光Lの照射位置のずれを検出するものである。
図13に示すように、まずステップST11で、プリンタヘッド30を、各加工ユニット50の加工ステージ110上に、固定機構120によって固定する。このとき、加工ステージ110上において、基板用第1,2の基準マーク37,38が、当該基板用第1,2の基準マーク37,38が配置されるべき位置に配置されるようにする。
具体的には、X・Yステージ70を移動してカメラ190で基板用第1,2の基準マーク37,38を撮影することによって、基板用第1,2の基準マーク37,38があるべき位置にあるか確認するとともに、そうでない場合は、微調整を繰り返すことによって、基板用第1,2の基準マーク37,38の位置を正確に合わせる。
ついで、ステップST12に進む。ステップST12では、プリンタヘッド30のポリイミドフィルム33上に、ノズル36を加工する座標を設定する。具体的には、ゲージ用第1,2の基準マーク131,132と各加工点マーク133との平面視での相対位置関係と同じになるように、ポリイミドフィルム33上に基板用第1,2の基準マーク37,38に対するノズル36を形成する点の座標を生成する。
ついで、ステップST13に進む。ステップST13では、個別制御装置200は、X・Yステージ70を制御して、レーザ光Lの照射位置とポリイミドフィルム33上の最初に加工されるノズル36の位置とを合わせる。また、レーザ変位センサ143によって、最初に加工されるノズル36の加工位置のZ軸方向Zの位置を検出するともに当該加工位置のZ軸方向の位置を合わせる。加工点の位置決めが終了すると、ついで、ステップST14に進む。
ステップST14では、各個別制御装置200は、全体制御装置25にレーザ照射要求信号を送信する。ついで、ステップST15に進む。
ステップST15では、全体制御装置25は、全ての加工ユニット50の個別制御装置200からレーザ照射要求を受信したことを確認すると、各加工ユニット50のシャッター180を開く。なお、本実施形態で言うシャッターを開くとは、本体部181を位置P2に移動して、レーザ光Lがポリイミドフィルム33に到達するようにすることである。シャッター180を閉めるとは、本体部181を位置P1に移動して、レーザ光Lがポリイミドフィルム33に到達しないようにすることである。ついで、ステップST16に進む。
ステップST16では、全体制御装置25は、レーザ発振器20を制御して、レーザ光Lを照射する。レーザ発振器20は、例えば200Hzのレーザ光Lを1秒間照射する。レーザ光Lが照射された作業点は、アブレーション作用によってノズル36が形成される。なお、本実施形態では、レーザ光Lの1度の照射時間は1秒間としたが、これは、一つのノズル36を形成するために必要な時間である。レーザの照射時間は、被加工物に合わせて最適になるように設定されるものである。全体制御装置25は、レーザ光Lを1秒間照射すると、各加工ユニット50のシャッター180を閉じる。ついで、ステップST17に進む。
ステップST17では、加工されたノズル36の位置の誤差の確認が行われる。例えば、加工したノズル36をカメラ190によって撮影してノズル36の形成された位置座標を検出することによって、誤差を検出する。なお、この確認作業は、別途に用意される確認用の装置を用いて行われてもよく、限定されるものではない。要するに、ノズル36の位置に誤差がある場合、当該誤差を正確に検出できればよい。
当該誤差データは、各加工ユニット50に特有の誤差として各個別制御装置200に入力され、次以降、ノズル36を加工する際にX・Yステージ70の移動を補正すべく用いられる。
つぎに、通常時での加工装置10の動作を説明する。図14は、全体制御装置25側からみた制御の一例を示すフローチャートである。図15は、個別制御装置200側からみた制御の一例を示すフローチャートである。
まず、図15に示すように、ステップST21で、例えば作業員が、各加工ユニット50の加工ステージ110上に、ポリイミドフィルム33にノズル36が形成される前のプリンタヘッド30を配置し、当該プリンタヘッド30を固定機構120で固定する。
各加工ステージ110にプリンタヘッド30が固定されると、作業員が個別制御装置200の動作開始スイッチ(図示せず)を押すなどして、加工ユニット50を動作可能な状態とする。ついで、個別制御装置200が動作を開始する。個別制御装置200は、プリンタヘッド30が配置される位置の誤差を確認する。
具体的には、ステップST21では、個別制御装置200は、プリンタヘッド30の基板用第1,2の基準マーク37,38の座標を検出する。このため、個別制御装置200は、アクチュエータ77,88を制御して、カメラ190によって基板用第1,2の基準マーク37,38の画像191を取得し、当該画像191より基板用第1,2の基準マーク37,38の座標を得る。
ついで、プリンタヘッド30がずれなく設置された状態での基板用第1,2の基準マーク37,38の座標データ(プリンタヘッド30が理想的に固定された状態での基板用第1,2の基準マーク37,38の座標である。この座標データは、予め個別制御装置200に入力されている。)と、上記得られた実際の基板用第1,2の基準マーク37,38の座標データとを比較して、プリンタヘッド30の位置ずれを検出する。ついで、ステップST22に進む。
ステップST22では、個別制御装置200は、プリンタヘッド30のポリイミドフィルム33に実際のノズル36を形成する位置の座標を検出する。言い換えると、実際にレーザ光Lを照射する位置の座標データを生成する。
上記したように、基準ゲージ130におけるゲージ用第1,2の基準マーク131,132と各加工点マーク133との平面視での相対位置関係と、プリンタヘッド30における基板用第1,2の基準マーク37,38とノズル36が加工されるべき位置との平面視での相対位置関係は、同じである。なお、平面視で相対位置関係が同じとは、Z軸方向Zの位置関係を考慮せず、X・Y平面上での相対関係が同じであるということである。
プリンタヘッド30が位置ずれなく配置された場合では、カメラ190によって撮影された画像191の中心位置195に加工点マーク133があると、当該加工点マーク133に対応するポリイミドフィルム33上のノズル36を加工すべき位置にレーザ光Lが照射される。
ステップST21においてプリンタヘッド30の位置ずれが検出されない場合は、基準ゲージ130におけるゲージ用第1,2の基準マーク131,132と各加工点マーク133との平面視での相対位置関係が、プリンタヘッド30における基板用第1,2の基準マーク37,38とノズル36を加工すべき位置との平面視での相対位置関係とが同じになるように、レーザ光Lを照射する座標データを生成する。
一方、図16は、加工ステージ110上にプリンタヘッド30が位置ずれを有して固定されている状態における加工ステージ110を示している。なお、図16に示される位置ずれは、誇張して大きく書かれている。図16に示すように、プリンタヘッド30が位置ずれを有した姿勢で保持固定されると、ステップST22では、カメラ190によって撮影されて得られる実際の基板用第1,2の基準マーク37,38の座標データと、予め登録されている基板用第1,2の基準マーク37,38の位置すべき座標データとの比較によって、プリンタヘッド30の位置ずれが検出される。
プリンタヘッド30が位置ずれを有して加工ステージ110上に固定されることによって、当該ずれに起因して、加工レンズ160とプリンタヘッド30との位置関係が、変化する。上記ずれによって、カメラ190の画像191の中心位置195に基準ゲージ130の加工点マーク133が配置された場合であっても、当該加工点マーク133に対応する加工すべき位置にレーザ光Lが照射されなくなる。
このため、個別制御装置200は、プリンタヘッド30のずれに起因するレーザ光Lの照射位置のずれを補正すべく、画像191内での加工点マーク133の認識位置192を変更する。認識位置192とは、当該認識位置192に加工点マーク133の中心が配置されると、ポリイミドフィルム33上において当該加工点マーク133に対応する加工位置にレーザ光Lが照射される位置である。認識位置192は、カメラ190の撮影範囲(カメラ190が撮影できる範囲であって、画像191内示される範囲)に設定されており、それゆえ、画像191にも認識位置192が配置されるようになる。
図17は、上記補正を行った後のカメラ190が撮影した画像191である。上記したように、個別制御装置200は、プリンタヘッド30の固定位置にずれがない場合は、画像191の中心位置195を加工点マーク133の認識位置192としており、当該認識位置192と加工点マーク133の中心とが重なるようにX・Yステージ70を制御する。しかしながら、プリンタヘッド30の固定位置にずれがある場合(図16に示すように)は、当該ずれ分、画像191内での加工点マーク133の認識位置192を変更する補正が施される。
さらに、加工ユニット50が、当該加工ユニット50に特有の誤差(X・Yステージ70の動作誤差や、レーザの到達点の誤差など、図13を用いた説明において得られた誤差)を有する場合は、当該誤差を考慮して、画像191内での加工点マーク133の認識位置192を変更する補正が施される。言い換えると、認識位置192は、加工ユニット50に特有な誤差と、プリンタヘッド30の固定位置の誤差との2つの誤差と補正するように、画像191の中心位置195からずれた位置に補正される。
このように加工点マーク133の認識位置192を補正することによって、当該認識位置192に加工点マーク133がある状態では、当該加工点マーク133に対応するポリイミドフィルム33上のノズル36を加工すべき箇所にレーザ光Lが照射されるようになる。ついで、ステップST23に進む。
ステップST23では、個別制御装置200は、加工ステージ110においてレーザ光Lが照射される位置に、ポリイミドフィルム33のノズル36が形成されるべき位置を合わせる。
まず、あらかじめ記憶している加工点マーク133の座標に基づいて、認識位置192に加工点マーク133を合わせるべくX・Yステージ70が移動される。この点について具体的に説明する。
図18は、ポリイミドフィルム33に加工すべきノズル36の座標データを転写したプリンタヘッド30を示している。図中、加工すべきノズル36を2点鎖線で示している。なお、プリンタヘッド30に実際に2点鎖線で示されるようにノズル36の位置を示すマークなどが形成されるわけではない。図18は、ノズル36の加工の説明のために用いられる図面である。
図18に示すように、長手方向A1と交差方向A2とに対して斜め方向の斜め方向A3に並ぶ3つを1組とし(2点鎖線で囲って示している)、当該1組が長手方向A1に複数並んで列35を構成するとともに、当該列が交差方向A2に一対並んでいる。
本実施形態では、一例として、基板用第1の基準マーク37側の1組から基板用第2の基準マーク38側に向かって順番にレーザ光Lを照射する。レーザ光Lの照射する順番は、図中矢印で示している。
まず、基板用第1の基準マーク37側に配置されるノズル36に対応する加工点マーク133が画像191の認識位置192に重なるように、X・Yステージ70が駆動される。このとき、各加工点マーク133の座標データは、予め個別制御装置200に登録されているので、当該データに基づいて、X・Yステージ70が制御される。ついで、ステップST24,ST25に進む。
ステップST24では、加工点マーク133の位置ずれを検出する。そして、ステップST25では、位置ずれが位置誤差許容範囲内であるか否かを判定する。
具体的には、X・Yステージ70の動作が終了すると、個別制御装置200は、カメラ190によって撮影された画像191内の加工点マーク133の位置を検出する。図19は、加工点マーク133を認識位置192上に配置すべく、予め登録されている加工点マーク133の座標データに基づいてX・Yステージ70を駆動した後の状態を示している。なお、図19では、認識位置192は、画像191の中心に設定されているものとする。
図19に示すように、画像191には、位置誤差許容範囲193と、半ピッチ範囲194とが設定される。
位置誤差許容範囲193は、当該範囲内に加工点マーク133があれば、ノズル36が形成される位置(レーザ光Lが照射される位置)が、許容誤差範囲内となる。位置誤差許容範囲193は、認識位置192を中心として予め設定されている長さを半径とする円で示されている。
なお、本実施形態では、一例として、位置誤差許容範囲193を規定する線(図中では2点鎖線で示されている)の内側に加工点マーク133の中心があれば、加工点マーク133が位置誤差許容範囲193内にあるとする。また、位置誤差許容範囲193を規定する線上に加工点マーク133の中心が配置される場合も、加工点マーク133が位置誤差許容範囲193内に配置されているとする。
図19に示すように、半ピッチ範囲194は、認識位置192に配置されるべき加工点マーク133と、当該加工点マーク133の周囲に配置される他の複数の加工点のうち最も近い位置に配置される加工点マーク133との間の距離の半分の長さを半径とする、認識位置192を中心とする円で示される。または、最も近い位置に配置される加工点マーク133との間の距離の半分の長さより若干小さい長さを半径とする円で示される。なお、半分の長さおよび半分の長さの近傍の長さを含めて略半分の長さとする。
各加工点マーク133に対して最も近い位置に配置される他の加工点マーク133の位置は、各加工点マーク133によって異なる。このため、各加工点マーク133によって半ピッチ範囲194は、異なる。
なお、本実施形態では、一例として、半ピッチ範囲194を規定する線(図中では、2点鎖線で示されている)内に加工点マーク133の中心があれば、加工点マーク133が半ピッチ範囲194内にあるとする。また、半ピッチ範囲194を規定する線上に加工点マーク133の中心が配置される場合も、加工点マーク133が半ピッチ範囲内に配置されているとする。
図12には、認識位置192に配置されるべき加工点マーク133に対して最も近い位置に配置される他の加工点マーク133を2点鎖線で示している。このように、認識位置192に配置されるべき加工点マーク133が位置誤差許容範囲193内に配置される場合では、他の加工点マーク133は、半ピッチ範囲194内(位置誤差許容範囲193も含む)には配置されない。
図19に示すように、個別制御装置200は、位置誤差許容範囲93内に加工点マーク133がない場合は、ステップST26に進む。ステップST26では、半ピッチ範囲194内に配置される加工点マーク133を検出するとともに、当該加工点マーク133が認識位置192に重なるように、X・Yステージ70を移動する。
上記したように、半ピッチ範囲194は、最も近い位置に配置される加工点マーク133との間の距離の半分の長さを半径とする(もしくは、半分の長さよりも若干小さい値を半径とする)円であるので、半ピッチ範囲194内に同時に複数の加工点マーク133が存在することはない。また、X・Yステージ70は、予め設定される各加工点マーク133の座標に基づいて制御されるので、認識位置192に配置されるべき加工点マーク133が半ピッチ範囲194より外側にあることは抑制される。このため、認識位置192に配置されるべき加工点マーク133は、少なくとも半ピッチ範囲194(位置誤差許容範囲193も含む)内に配置されるようになる。
図19は、位置誤差許容範囲193外であって半ピッチ範囲194内に配置された加工点マーク133を認識位置192に配置すべくX・Yステージ70が制御される状態を示している。図19に示すように、X・Yステージ70の制御後、加工点マーク133が位置誤差許容範囲193内に配置されればよい。位置誤差許容範囲193内に位置補正された加工点マーク133を2点鎖線で示す。
加工点マーク133が位置誤差許容範囲193内に配置されると、ついで、ステップST27に進む
ステップST27では、各個別制御装置200は、レーザ要求信号を全体制御装置25に送信する。
レーザ要求が送信されると、全体制御装置25が動作を開始する。図14に示すように、ステップST31では、全体制御装置25は、加工装置10を停止状態から稼動状態に移行して最初(1回目、ただし、図13に示す各加工ユニット50の動作誤差を検出する動作は含まない)にレーザ光Lを照射する際であるか否かを判定する。最初にレーザ光Lを照射する際であると、ステップST32に進む。
全体制御装置25は、ステップST32において、稼動する予定の加工ユニット50からのレーザ要求信号を受信したかどうかを確認する。レーザ要求信号を送信した加工ユニット50では、プリンタヘッド30の位置決めが終了している状態である。
本実施形態では、全ての加工ユニット50が稼動するので、ステップST32では、全ての加工ユニット50からレーザ要求信号が送信されたことを確認する。なお、全ての加工ユニット50が稼動されることに限定されない。例えば、3つや2つなどで十分である場合は、3つや2つの加工ユニット50が稼動される。この場合は、稼動予定である3つまたは2つの加工ユニット50からレーザ要求信号が送信されることを確認する。
なお、停止状態から稼動状態に移行するとは、例えば、加工装置10が稼動開始スイッチなどが押されておらず稼動していない状態から、稼動開始スイッチなどをおしてレーザ光Lを照射可能な状態となることである。加工ユニット50に特有な誤差を検出する際の動作は含まない。
ついで、ステップST33に進む。ステップST33では、全体制御装置25は、レーザ要求信号を受信した加工ユニット50のシャッター180を開く。なお、この時点では、全ての加工ユニット50のシャッター180を開く。ついで、ステップST34に進む。
ステップST34では、全体制御装置25は、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lを照射する。レーザ発振器20から照射されたレーザ光Lは、ミラー170と加工レンズ160とを通って、各加工ユニット50のポリイミドフィルム33に到達する。ついで、ステップST35に進む。
ステップST35では、全体制御装置25は、レーザ発振器20から照射されるレーザ光Lを監視する。全体制御装置25は、レーザ発振器20がレーザ光を200Hz照射したら、ステップST36に進み、レーザ光Lの照射を停止する。
ついで、ステップST37に進む。全体制御装置25は、ステップST37で、各加工ユニット50のシャッター180を閉める。
図15に示すように、各加工ユニット50では、ステップST28において個別制御装置200は、レーザ要求信号を送信した後シャッター180が閉まったことを確認すると、言い換えると、レーザ発振器20によるレーザ光Lの照射が完了してシャッター180が閉まると、ステップST29に進み全てのノズル36が加工されたかどうかを確認する。
なお、個別制御装置200がシャッター180が閉まったことを確認するためには、具体的には、全体制御装置25が各個別制御装置200に対して、シャッター180を閉める信号を送信したという報告(信号)を送信するようにしてもよい。このことによって、個別制御装置200は、シャッター180が閉じたことを認識できる。
この時点では、1つのノズル36のみが加工された状態であるので、ステップST23に戻る。ステップST23では、個別制御装置200は、X・Yステージ70を制御して、2個目の加工されるべきノズル36の位置を、レーザ光Lの到達点に移動する。
ついで、上記したようにステップST23〜ST27の動作を行い、全体制御装置25にレーザ要求信号を送信する。
なお、全体制御装置25は、レーザ発振器20のレーザ光Lの照射間隔を所定時間Tあけて連続して照射するように制御している。図20は、レーザ発振器20がレーザ光Lを照射する様子を示すグラフである。
図20に示すように、全体制御装置25は、ステップST34でレーザ光Lを1秒間照射するよう制御したら、ステップST36以降レーザ光の照射を所定時間T休む。そして、所定時間T内に各加工ユニット50からレーザ要求信号が送信されたら、所定時間Tが経過した後、再度レーザ光を照射する。上記されたステップST36でレーザの照射をとめるということは、レーザ光の照射を休止する期間(所定時間T)が始まったことを示している。
具体的には、レーザ光の照射休止後、ステップST38に進み、所定時間T内にいずれか1つの加工ユニット50からレーザ光の要求信号が送信されたかを確認する。
各ポリイミドフィルム33において全てのノズル36が加工されていない間は、各加工ユニット50より、ステップST23〜ST27の動作が終了していれば、レーザ要求信号が送信される。この要求がレーザ光の照射休止期間(所定時間T)内であれば、ステップST31に戻る。なお、レーザ光Lを2回目以降照射する場合は、ステップST31からステップST33に進む。そして、所定時間Tの経過後、ステップST34において再びレーザ光を照射する。そして、以降のステップを繰り返す。
レーザ光Lの照射間隔(レーザ光Lを照射しない期間)である所定時間Tは、各加工ユニット50でのステップST23〜ST27の動作が終了し、ステップST34までいたる思われる時間である。この時間は、あくまで目安であって、必ずしも各加工ユニット50においてステップST23〜ST27の動作が終了するものではない。
このように、各加工ユニット50において全てのノズル36が加工されるまでは、個別制御装置200は、ステップST23〜ST29の動作を繰り返すとともに、全体制御装置25は、ステップSTST33〜ST38の動作を繰り返す。
各加工ユニット50においてすべてのノズル36の加工が終了すると、加工ユニット50の動作が終了する。このため、全てのノズル36が加工されたプリンタヘッド30と、これからノズル36が加工されるプリンタヘッド30が交換される。
この点について、具体的に説明する。例えば、加工ユニット50間では加工点マーク133を認識位置192に移動するためにかかる時間が異なり、それゆえ、上記理由より、加工ユニット50間で、処理に差が生じえる。
このため、ある時点で4つの加工ユニット50のうち1つの加工ユニット50のプリンタヘッド30の全てのノズル36が加工され、残りの3つの加工ユニット50のプリンタヘッド30のノズル36が加工途中(まだ未加工のノズルが残っている状態)という状況が生じえる。この場合では、当該加工が終了した加工ユニット50のプリンタヘッド30のみが交換される。
この場合、プリンタヘッド30が交換された加工ユニット50では、他の加工ユニット50と全体制御装置25との動作に関わらず、ステップST21から動作が始まる。ステップST23までの動作が完了すると、ステップST24において全体制御装置25にレーザ要求信号を送信する。
全体制御装置25は、加工装置10が稼動して最初にレーザを照射してからは、1つでもレーザ要求がある限り、一定の間隔(所定時間Tをあけて)でレーザ光Lを照射する。具体的には、200Hzのレーザを照射し、ついで、所定時間Tあけてから再びレーザを200Hz照射する。
プリンタヘッド30が交換された加工ユニット50の個別制御装置200が全体制御装置25にレーザ要求信号を送信した時期は、プリンタヘッド30の取付作業の時間によって変わるので、不定期となる。言い換えると、レーザ要求信号は、レーザ発振器20がレーザ光を照射しない期間(所定時間T)内に送信されることに限られず、実際にレーザ発振器20がレーザ光Lを照射している最中に個別制御装置200がレーザ要求信号を送信する場合もある。
このため、全体制御装置25は、レーザ光Lを照射しない所定時間T外に受信したレーザ要求信号に対しては、当該信号を受信した時期のすぐ後のレーザを照射しない期間(所定時間T)の直後からレーザ光Lが到達するように、シャッター180を開く。
このため、加工されるノズル36の位置は、各加工ユニット50によって異なる場合があるが、レーザ光Lは、各加工ユニット50のポリイミドフィルム33に同時に到達するようになる。
または、所定時間T内にプリンタヘッド30の位置決めが終了しなかった加工ユニット50、つまり、所定時間T外にレーザ要求信号を送信した加工ユニット50に対しては、全体制御装置25は、レーザ光照射休止期間に要求信号を受信することになる。このため、当該要求信号を送信した加工ユニット50に対しては、当該信号を受信した時期のすぐ後のレーザを照射しない期間(所定時間T)の直後からレーザ光Lが到達するように、シャッター180を開く。
いくつかの個別制御装置200がプリンタヘッド30の交換作業などによりレーザ要求信号を送信しなくても、複数の個別制御装置200のうち1つでもレーザ要求信号を送信すると、全体制御装置25は、レーザ光Lを照射するよう、レーザ発振器20を制御する。
図14に示すように、ステップST38でレーザ要求信号が1つも送信されない場合は、各加工ユニット50において加工すべき全てのポリイミドフィルム33の加工が終了したとして、加工装置10は、動作を停止する。
また、加工装置10は、複数の加工ユニット50を備える構造であることによって、複数種類の被加工物を同時に加工することができる。この点について、具体的に説明する。
上記したように、各加工ユニット50は、被加工物の保持、位置決めを、独立して行うことができる。また、全体制御装置25は、レーザ要求があった加工ユニット50のみにレーザ光Lが供給されるべくシャッター180を制御する。
このため、各加工ユニット50は互いに独立して制御されるとともに、全体制御装置25が各加工ユニット50へのレーザ光Lの供給を任意に制御できる。この結果、各加工ユニット50において各々異なる被加工物を加工できるようになる。
また、一例として、加工ユニット50が動作を行っている状態において、特定の時点で誤動作をすることが確認されると、次にその特定の時点では、当該誤動作を補正するようにしてもよい。
具体的には、個別制御装置200は、X・Yステージ70の移動後毎に検出される誤差を記憶している。X・Yステージ70が特定の座標に移動された際にレーザ光Lの照射位置がずれるという誤差が常に生じている場合では、個別制御装置200は、X・Yステージ70が特定の座標に移動される際には、上記誤差が生じないように、X・Yステージ70の移動を補正してもよい。一例として、上記特定の座標での位置ずれ量の所定回数(例えば、3回や4回など)での平均値を算出し、この平均値に基づいて補正値を算出する。そして、上記特定の座標に移動する際には、得られた補正値を移動量に組み込む。このようにすることによって、レーザ光Lの照射位置のずれが生じることが抑制される。
このように構成される加工装置10では、レーザ発振器20から発振されたレーザ光Lを、ミラー170によって分岐して各加工ユニット50に分配する構造である。このため、複数のプリンタヘッド30(被加工物)の加工を同時に行うことができるので、加工装置10の生産性が向上する。
また、全体制御装置25がシャッター180の動作を制御することによって、レーザ光Lの照射を要求する加工ユニット50のみにレーザ光Lを供給することができる。このため、プリンタヘッド30が交換作業中である加工ユニット50がある場合、または、プリンタヘッド30の位置決めが間に合わなかった加工ユニット50がある場合、当該加工ユニット50以外の加工ユニット50にレーザ光Lを供給することによって、加工装置10全体を停止することがないので、稼動率低下を招くことがない。
また、ミラー170を調整するだけで、加工ユニット50の数を増減可能である。このため、小規模な変更(各加工ユニット50のミラー170の変更など)で加工装置10の生産性を向上することができる。
また、複数の加工ユニット50を備えるとともに、各加工ユニット50が互いに独立して加工可能であるので、同時に複数種類の被加工物を加工可能である。つまり、加工装置10の加工のフレキシビリティが向上する。
このように、本発明の加工装置10は、生産性が向上するとともに、加工のフレキシビリティを向上できる。
また、光学系300が、ミラー170を備える構造であるので、比較的簡単な構造で、レーザ光Lを加工ユニット50に導くことができる。
また、各ミラー170は、各加工ユニット50に到達するレーザ光の強度が同じになるように調整されている。このことによって、同じ種類の被加工物を同時に加工することができるようになり、それゆえ、生産性を向上することができる。
また、X・Y軸座標計測器141,142は、リニアスケール144,151とインデックススケール145,152とが加工ステージ110の表面110aの延長面V2上に配置され、また、リニアスケール144,151とインデックススケール145,152とプリンタヘッド30のZ軸方向Zに沿う位置(高さ)が同じである。
このため、プリンタヘッド30においてノズル36が形成されるべき位置を、レーザ光Lの照射位置への位置決める際のずれを小さく抑えることができるようになる。この点について、具体的に説明する。
加工ステージ110が移動すると(X軸方向XとY軸方向Yとに移動すると)、当該移動にともなう加減速などに起因するX・Y軸方向X,Yに沿うピッチングの影響が、プリンタヘッド30と、X・Y軸座標計測器141,42とに作用する。この結果、当該影響によって、X・Yステージ70や加工ステージ110などが微小に変位(変形)し、それゆえ、プリンタヘッド30の位置が微小にずれ、X・Y軸座標計測器141,142の位置が微小にずれることがある。
このピッチングに起因するずれのうち、X軸方向Xのピッチングに起因するずれは、X軸ステージ73を駆動するX軸用ボールねじ75のナット75bからの距離に比例して大きくなる。同様に、Y軸方向Yのピッチングに起因するずれは、Y軸ステージ82を移動するY軸用ボールねじ87のナット87bからの距離に比例して大きくなる。
ナット75b,87bからのX・Y軸座標計測器141,142の距離とプリンタヘッド30の距離とが異なると、X・Y軸座標計測器141,142とプリンタヘッド30とに作用するずれ量が異なり、それゆえ、X軸座標計測器142とプリンタヘッド30との相対位置関係およびY軸座標計測器141とプリンタヘッド30との相対位置関係は、加工ステージ110が静止している状態と移動している状態とで変化することが生じえる。
このため、X・Y軸座標計測器141,142の検出結果に基づいてプリンタヘッド30をレーザ光の照射位置まで正確に移動することが難しくなる傾向にある。
しかしながら、本実施形態では、Y軸座標計測器141とX軸座標計測器142との発光素子146a,153aと受光素子148a,154aとが上記のように配置されることによって、X・Y軸座標計測器141,142がプリンタヘッド30の近傍に配置されるようになる。
このため、プリンタヘッド30の表面33a(レーザ光Lが照射する面)に対して作用するピッチングの影響と、発光素子146a,153aと受光素子148a,154aとに作用するピッチングの影響とは、略同じとなる。
つまり、プリンタヘッド30とX・Y軸座標計測器141,142との相対位置関係は、加工ステージ110が静止している状態および移動している状態で変化しなくなる。または、変化してもその程度は、非常に微小である。
この結果、加工ステージ110が移動している状態であっても、X・Y軸座標計測器141,142の検出結果に基づいて、プリンタヘッド30においてノズル36を形成すべき位置をレーザ光Lの照射位置に正確に移動することができるようになる。
また、支持部146,148,153,154の固有振動数は、保持部60全体の固有振動数や床5の固有振動数と異なる値となっている。このため、支持部146,148,153,154は、加工装置10の稼働中に、床5から入力される振動や保持部60全体の振動に共振することがないので、当該共振に起因するX,Y座標計測器141,142の計測結果への影響がない。この結果、X,Y座標計測器141,142の計測結果の精度が低下することが抑制される。
また、加工装置10は、基準ゲージ130とカメラ190を備えており、プリンタヘッド30においてノズル36を形成すべき位置をレーザ光Lの照射位置に正確に位置決めできる。
なお、位置検出部140は、上記された加工装置10に備えられることに限定されない。例えば、レーザ光ではなく、ドリルなど他の機構や装置で加工を施す加工装置に備えられてもよい。この場合であっても、位置検出部140は、プリンタヘッド30(被加工物)を正確に位置決めできるようになる。
同様に基準ゲージ130とカメラ190とによる位置決め機構は、上記された加工装置10に備えられることに限定されない。例えば、レーザ光ではなく、ドリルなど他の機構や装置で加工を施す加工装置に備えられてもよい。この場合であっても、基準ゲージ130とカメラ190とによって、プリンタヘッド30(被加工物)は、正確に位置決められるようになる。
なお、本発明では、X・Y軸座標計測器141,142が加工ステージ110の表面110aの延長面上に配置され、X・Y軸座標計測器141,142とプリンタヘッド30とがZ軸方向に同じ位置に配置されている。
しかしながら、X・Y軸座標計測器141,142は、上記の位置に配置されることに限定されない。例えば、これら2つのうち少なくとも1つの位置に配置されれば、同様の効果を得ることができる。
例えば、X・Y軸座標計測器141,142が加工ステージ110の表面110aの延長面上に配置されているだけであても、同様の効果を得ることができる。または、X・Y軸座標計測器141,142がZ軸方向に同じ位置に配置されるだけでも同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、X・Y軸座標計測器141,142が加工ステージ110の表面110aの延長面V2上に配置されているが、加工ステージ110の表面110a上に配置されていても同様の効果を得ることができる。例えば、X・Y座標計測器141,142のうち、インデックススケール145,152(受光素子148a,154aを含む)が配置されてもよい。
しかしながら、上記2つの位置に同時に配置されることによって、位置決め精度をより一層向上することができる。
また、本実施形態では、保持部60は、本発明で言う複数の移動方向として3方向(X軸方向X、Y軸方向Y、Z軸方向Z)に移動可能であり、位置計測器の一例として、X軸座標計測器142とY軸座標計測器141とが用いられている。つまり、3方向のうち2方向(X軸方向XとY軸方向Y)に位置計測器が設けられている。
しかしながら、これに限定されない。本発明の位置計測器がZ軸方向Zの位置を計測すべく設けられてもよい。
または、X軸方向の位置を計測する計測器のみに本願発明の位置計測器(本実施形態で言う、X軸座標計測器142)が用いられてもよい。同様に、Y軸方向の位置を計測する位置計測器のみに本発明の位置計測器(本実施形態で言う、Y軸座標計測器141)が用いられてもよい。同様に、Z軸方向の位置を計測する位置計測器のみに本願発明の位置計測器が用いられてもよい。
このように、被加工物の移動方向のうち、少なくとも1方向に位置計測器が設けられてもよい。
また、個別制御装置が位置誤差許容範囲193を設定するとともに、加工点マークが当該位置誤差許容範囲193内にない場合は、補正すべくX・Yステージ70を制御する。このため、ノズル36が精度よく形成されるようになる。
また、X・Yステージ70の移動の際に、移動誤差が生じやすい特定位置での位置ずれを記憶するとともに、所定回数分の平均量を求め、当該平均量に基づいて補正値を算出し、以降の特定位置への移動の際に当該補正値を組み込んでいる。このことによって、位置ずれが生じやすい位置であっても、補正値が予め組み込まれることによって、位置ずれの程度を小さく抑えることができる。
また、本実施形態では、位置計測器の一例であるX・Y軸座標計測器141,142が加工装置10に採用されているが、これに限定されない。例えば、レーザ光ではなくドリルなど他の加工手段を用いて加工する他の加工装置であっても、被加工物を移動可能に支持する保持部を備える加工装置であれば、本発明の位置計測器が用いられることによって、被加工物の位置決め精度を向上することができる。
この場合、位置計測器が以下に示す付記1〜4に示される加工装置に用いられることによって、同様の効果を得るこができるようになる。
付記1〜5に記載される保持部の一例は、本実施形態で説明される保持部60である。位置計測器の一例は、本実施形態で説明されるX軸座標計測器142と、Y軸座標計測器141である。保持部の一例は、本実施形態で言う支持部146,148,153,154である。第1の方向の一例は、X軸方向である。第2の方向の一例は、Y軸方向である。第3の方向の一例は、Z軸方向である。第1の位置計測器の一例は、本実施形態で言うX軸座標計測器141である。第2の位置計測器の一例は、本実施形態で言うY軸座標計測器142である。
また、本実施形態では、本発明で言う基準ゲージとカメラとの一例である基準ゲージ130とカメラ190とが加工装置10に採用されているが、これに限定されない。例えば、レーザ光ではなくドリルなどの他の加工手段を用いて被加工物を加工する加工装置であっても、被加工物を移動可能に支持する保持部を備える加工装置であれば、本発明の基準ゲージとカメラとが用いられることによって、被加工物の位置決め精度を向上することができる。
前記制御部は、前記保持部の移動後毎に検出される前記認識位置に対するずれを記憶するとともに、同じ位置への前記保持部の移動の際に検出される前記位置ずれの量の所定回数分の平均量を前記同じ位置への移動の際の移動量に補正値として予め組み込む
ことを特徴とする付記7に記載の加工装置。
従来、レーザ光などの加工手段によって被加工物を加工する加工装置は、被加工物の複数の加工点にレーザを照射すべく、移動可能な加工ステージを備えている。加工ステージを移動することによって、当該被加工物に照射されるレーザ光の位置を変更する。例えば、互いに直行する2方向の移動可能なX・Yステージ上に加工ステージを固定することによって、加工ステージを移動可能としている。
この種の加工装置は、被加工物に正確にレーザ光を照射すべく、加工ステージの位置を検出する位置検出部を有している。位置検出部の例としては、リニアエンコーダが用いられる。
リニアエンコーダは、例えばX・YステージをX軸方向に移動可能とするボールねじの近傍と、Y軸方向に移動可能とするボールねじの近傍とに設けられる。各位置に設けられたリニアエンコーダがX軸方向とY軸方向との位置を検出することによって、加工ステージの位置座標が検出される。
しかしながら、被加工物は、X・Y軸方向の移動に起因する加減速やピッチングの影響を受ける。このため、エンコーダと被加工物との相対位置関係は、加工ステージが静止している状態と移動している状態で、変化する。
この点について具体的に説明する。エンコーダがボールねじの近傍に配置されることによって、X・Yステージの移動の加減速やピッチングに起因するエンコーダへの影響は小さい。しかしながら、ボールねじから離れた位置に配置される加工ステージに固定される被加工物に作用する影響は大きい。
このため、加工ステージが静止している状態でのエンコーダと被加工物との相対位置関係に対して、加工ステージが移動している状態でのエンコーダに対する被加工物の相対位置がずれることになる。この結果、加工ステージが移動している状態において、エンコーダによって検出された位置座標に基づいて被加工物の加工点の位置をレーザ光の照射位置に正確に位置決めることが難しくなる。このため、加工精度が低下するおそれがある。
10…加工装置、20…レーザ光発振器、25…全体制御装置、30…プリンタヘッド(被加工物)、50…加工ユニット、60…保持部、110…加工ステージ、130…基準ゲージ、141…Y軸座標計測器(位置計測器、第1の位置計測器)、142…X軸座標計測器(位置計測器、第2の位置計測器)、146…支持部(第1の支持部),148…支持部(第1の支持部)、153…支持部(第2の支持部)、154…支持部(第2の支持部)、170…ミラー、180…シャッター、190…カメラ(撮影部)、192…認識位置、193…位置誤差許容範囲(誤差許容範囲)、200…個別制御装置、300…光学系、L…レーザ光、X…X軸方向(第2の方向)、Y…Y軸方向(第1の方向)、Z…Z軸方向(第3の方向)、V2…延長面。