以下、本発明の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本実施の形態の内視鏡装置10を示すものである。図1に示すように、この実施の形態に係わる内視鏡装置10は、内視鏡1と、導管(第2の管状部材)80と、トロッカー(第1の管状部材)90とを組み合わせて使用される。
図1に示すように内視鏡1は細長い挿入部2を備えている。この挿入部2の基端側には、術者が把持する把持部を兼ねた操作部3が接続されている。この操作部3の基端側、つまり挿入部2が配設された側に対して反対側には、ユニバーサルケーブル4の一端側が連結されている。このユニバーサルケーブル4の内部には、図示しないライトガイドや撮像ケーブルなどが配設されている。このユニバーサルケーブル4の他端側には、挿入部2の先端側に向けて光を導くライトガイドコネクタ21が配設されている。このライトガイドコネクタ21には図示しない光源装置が接続される。
このライトガイドコネクタ21の側部には、カメラケーブル24の一端部が連結されている。このカメラケーブル24の他端部には、図示しないカメラコントロールユニット(以下CCU)に接続させるカメラコネクタ25が設けられている。なお、カメラコネクタ25が接続されるCCUにはモニタ(不図示)が接続される。このため、被検部の光学像が撮像ユニットの固体撮像素子で撮像されると、CCUで信号処理されてモニタにその被検部の画像が表示される。
上述した挿入部2の最先端位置には、略円柱状のヘッド部(先端硬性部)7が形成されている。ヘッド部7の外周面は、長手方向全長に亘って微細凹凸からなる非鏡面状態(いわゆる梨地面)に成形された非鏡面部15が設けられている。この非鏡面部15は、例えば、ヘッド部7を金属素材で構成し、その表面をサンドブラスト加工などの表面処理を施したり、切削加工で削り出したままの挽目が残った状態にしたりしたものでもよい。ヘッド部7の先端面9には、撮像光学系および照明光学系の各種レンズが配置されている。先端面9は全面が鏡面状態の鏡面部17となっている。これにより、先端面9の鏡面部17に血液などの汚れが付着した際には、先端面9を拭うことでレンズ面を含む先端面9の鏡面部17全体を容易に清浄な状態にすることができる。
このヘッド部7の基端側には、湾曲自在な湾曲部6の先端部が連接されている。湾曲部6は伸縮性のあるフッ素ゴムなどからなる被覆チューブ8が外装している。この被覆チューブ8は、湾曲部6に組み付ける前の自然状態では、ヘッド部7の外径寸法よりも小さい内径をもつ。この湾曲部6の基端側には、湾曲部6に隣接して、細長く硬質の硬性部5が連接されている。なお、ヘッド部7、湾曲部6、硬性部5の外径はそれぞれ等しいか、またはヘッド部7の外径が最も太くなるように形成されている。
ヘッド部7の基端側(湾曲部6に近接する側)の外周には、環状溝(凹部)7aが形成されている。なお、図示しないが、さらに、ヘッド部7の内部には、撮像ユニットと照明光学系としてライトガイドとが内蔵されている。このライトガイドは内視鏡1の外部(上述した光源装置)から照明光を導光してヘッド部7の先端面に固定した照明窓から照明光を例えば体腔内の被検部に照明する。撮像ユニットには、CCD等の固体撮像素子とライトガイドからの照明光で照明された被検部の光学像を取り入れて固体撮像素子に結像させる対物レンズ系とを備えている。このため、内視鏡1で、そのヘッド部7の例えば前方側の被検部を観察することができる。
また、撮像ユニットの後側には図示しない撮像ケーブルが接続されている。この撮像ケーブルは内視鏡1の挿入部2(湾曲部6および硬性部5)、操作部3、ユニバーサルケーブル4、ライトガイドコネクタ21、およびカメラケーブル24内を通してカメラコネクタ25に導かれている。そして、撮像ケーブルは、カメラコネクタ25から図示しないビデオプロセッサ等に接続される。また、ライトガイドは内視鏡1の挿入部2、操作部3、ユニバーサルケーブル4、ライトガイドコネクタ21に導かれ、上述した光源装置に接続される。
上述した操作部3は、挿入部2の硬性部5の基端側に連接されている。操作部3の挿入部2側の部位には、術者が内視鏡1を把持する第1の把持部としての副グリップ14が形成されている。この副グリップ14の先端側には、略円錐台形状や略テーパ状に挿入部2側に近づくにつれて細径となったグリップ細径部48が形成されている。そして、略円筒形状の副グリップ14には図示しないVTRなどの映像記録装置やCCUなどを遠隔操作する複数のリモートスイッチ13が設けられている。これらリモートスイッチ13は、副グリップ14の内部で図示しないリモートスイッチケーブルに接続され上述した撮像ケーブルとともにユニバーサルケーブル4内へと導かれている。
また、グリップ細径部48の外周には、副グリップ14に近接する側に環状凸部52が形成されている。一方、グリップ細径部48の外周の挿入部2側の基端部に近接する側には、環状凹溝54が形成されている。
操作部3は、副グリップ14に連設する湾曲操作機構を内蔵した操作部本体12と、この操作部本体12の後方に設けられ、術者が内視鏡1を把持する第2の把持部としてのグリップ16とを備える。
操作部3の操作部本体12には、湾曲操作部材として、図1中で、右側に配置した上下湾曲レバー31と、同図中で、左側に配置した左右湾曲レバー32とが設けられている。これらの湾曲レバー31,32によって操作部本体12内に組み込まれたそれぞれの湾曲操作機構部を個別的に操作するようになっている。上下湾曲レバー31は、操作部本体12の右側に配置され、左右湾曲レバー32は、操作部本体12の左側に配置されている。これにより、上下湾曲レバー31の軸支部を操作部本体12の右側面部に位置させ、左右湾曲レバー32の軸支部を操作部本体12の左側面部に位置させている。また、上下湾曲レバー31の軸中心と、左右湾曲レバー32の軸中心は、操作部本体12を左右に貫通する同一直線上において一致する。
また、図3に示したように、術者が片手でグリップ16を把持したとき、上下湾曲レバー31の操作用指当て部31aと、左右湾曲レバー32の操作用指当て部32aは、その手の親指が自然に位置する領域である操作部本体12の上面側において左右に並び配置される(図1または図2(B)を参照)。
図1乃至図3に示したように、グリップ16の上面には、操作部3の上側向きを指標する突起状のUP指標30が付設されている。なお、グリップ16に対するUP指標30の位置(向き)は、内視鏡画像のUP方向と一致する。
また、図1乃至図3に示したように、操作部本体12には後述するように湾曲制動用操作部材としての湾曲ロックレバー35が設けられている。この湾曲ロックレバー35は操作部本体12の左右両側面領域に軸支中心部を持ち、その指当て部35aは、図3に示したように術者が片手でグリップ16を把持したとき、その手の人差し指が自然に位置する領域である操作部本体12の下側に自然に配置される。このため、術者は、操作部3を把持する手の人差し指で湾曲ロックレバー35を容易に操作することができる。したがって、操作部本体12に配設した湾曲レバー31,32及び湾曲ロックレバー35のいずれもが、操作部3を把持する術者の片手で操作できる。
次に、操作部本体12内に組み込まれた湾曲操作機構について説明する。湾曲操作機構は、図4中で右側に配置される上下湾曲操作機構部41と、同図中に左側に配置される左右湾曲操作機構部42との両者を含む。各々の湾曲操作機構部41,42は、操作部本体12を構成するケース43の両側壁面にそれぞれが個別に組み付けられる。各々の湾曲操作機構部41,42には後述するような湾曲制動機構部がそれぞれ組み込まれる。
以下、両湾曲操作機構部41,42及び両湾曲制動機構部について説明する。ここでの両湾曲操作機構部41,42及び両湾曲制動機構部は基本的に操作部本体12の中央を通る上下方向線に対して左右線対称な鏡像関係になるように構成される。このため、左右の構成について原則的に区別なく説明する。
図4に示したように、左右のカバー47a,47bの中央には、湾曲レバー31,32の軸体51を貫通させる孔47cが形成されている。この孔47cの内面と軸体51の外周との間は、シールリング53によって液密的に封止されている。
図4に示したように、湾曲操作用軸体51は、円筒状の軸受け部材55によって軸支されている。軸受け部材55はカバー47a,47bの内面壁に取付け固定された支持盤56に固定的に支持されている。湾曲操作用軸体51の内方突出先端には、湾曲操作体としてのプーリ61が止めネジ64により係止固定的に取り付けられ、両者は一体になって回動するようになっている。
図4に示したように、湾曲操作用軸体51の途中には規制ピン65が植設されている。規制ピン65は軸体51の外周から一端が突き出している。また、図5に示したように、軸体51が回動したときに規制ピン65が移動する領域の両端位置に対応してそれぞれの位置には、規制ピン65が当るストッパ枠66が配置されている。両ストッパ枠66は、湾曲レバー31,32の回動領域の終端を規制する手段を構成している。
図4に示したように、上記プーリ61の外周溝67には一対の操作ワイヤ68がそれぞれ巻き付けられ固定されている。操作ワイヤ68の他端側部分は、湾曲部6を湾曲操作する不図示の湾曲操作ワイヤに連結される。そして、上述した湾曲操作機構部41,42により、操作ワイヤ68を押し引きすることにより、挿入部2の湾曲部6を湾曲できるようになっている。
次に、上述した各々の湾曲操作機構部41,42に組み込まれた湾曲制動機構について説明する。図4に示したように、湾曲操作用軸体51を支持する円筒状の軸受け部材55の内方端部分は支持盤56から内方へ突き出している。この軸受け部材55の突出し端部71の外周には、図7に示すような複数の制動要素、つまり、制動調整板72、第1のカム73、第2のカム74及び摩擦部材75が、カバー47a,47b側からその列挙する順に揃えて嵌め込まれている。
上記制動調整板72は、例えばポリアセタールなどの滑り性の良い樹脂製の円板からなり、その中央には軸受け部材55を貫通させる孔76が形成されている。制動調整板72の上部領域部分は、後述する制動操作体を配置する領域を空けるための切欠き部77となっている。制動調整板72の外方側片面には後述する調整ビス(ネジ)107を受ける凹部からなる穴78が均等に3箇所配置して設けられている。
図8は、第1のカム73を図7の矢印a方向から見た図である。第1のカム73は軸受け部材55を通す孔81を中央に形成した金属製円板からなり、片面には略均等な3箇所に突出(図8の紙面上方に向けて突出)した凸面83と、凸面83の両側には面周方向に沿ってなだらかな傾斜面82とが形成されている。
なお、図6に示すように、制動調整板72と第1のカム73を重ね合わせたとき、制動調整板72の穴78と、第1のカム73の凸面83とは近位置にある。
さらに第1のカム73には、軸受け部材55を通す孔81に連通するカム孔(溝)87が形成されている。カム孔87は中心Oから放射方向に沿って延びて形成されており、凸面83の位置が対象となる中心線Lの向きに形成されている。上記中心Oからカム孔87の終端87aまでの距離は上記制動用凸面83の高さや傾斜面82の傾斜角度(勾配)及びその長さに応じて決定する。このように中心線Lを挟んで対象な形状として、左右どちらの湾曲制動機構にも共通に使用できるようにしている。
図9は、第2のカム74を図7のa方向から見た図である。第2のカム74は、第1のカム73と同様、軸受け部材55を通す孔91を中央に形成した金属製円板からなり、その外方側面の周辺部には、なだらかな傾斜面92と、これに続く凸面93(図9では紙面裏側に突出)が略均等3箇所に形成されている。
また、第2のカム74における凸面93は、第1のカム73の凸面83に対応させて形成されており、その高さ、傾斜面92の長さ及び傾斜角度(勾配)は傾斜面82,92が一部重なるように定められる。
図9に示したように、第2のカム74の周縁には複数の位置決め固定片101が形成されており、固定片101は第2のカム74に対して非対称的に形成されている。図4に示したように、位置決め固定片101は、湾曲操作機構部41,42を覆う内部カバー102に切り欠き形成された溝103に嵌り込んで係止する。このため、第2のカム74の回動は阻止される。溝103は第2のカム74の軸方向への移動を阻害しない軸方向長さを有する。内部カバー102は支持盤56に支持されている。
図10、図11は、第1のカム73と第2のカム74を組み合わせた状態を平面的に見たものである。回動側となる第1のカム73における凸面83の側面が、固定側となる第2のカム74における凸面93の側面に近接する状態で向き合い、傾斜面82,92は互いに重なり合うようになっている。
図7に示したように、摩擦部材75は、例えば、ポリアセタールなどの樹脂製円板からなり、摩擦部材75の中央には、軸受け部材55を貫通させる孔106が形成されている。図4に示したように、摩擦部材75は、第2のカム74の内方片面に接合され、プーリ61の外方端面(被摩擦面70)に摺接させるようになっている。プーリ61の被摩擦面70は摩擦部材75を当接する平面になっている。なお、摩擦部材75をプーリ61の外方端面に固定的に接合させておいて、この摩擦部材75を第2のカム74の内方片面に摺接させるようにしても良い。また、摩擦部材75をプーリ61とも第2のカム74とも固定させることなく、プーリ61と第2のカム74の間に挟み込み、両者とも摺接させるようにしても良い。
制動調整板72は、支持盤56から突き出した調整ビス107の先端部分を凹部からなる穴78に差し込むことにより、その調整ビス107に支持される。このため、制動調整板72は、軸回りに回動することができない非回転状態に支持されている。また、調整ビス107の突き出し量を変えることにより、第1のカム73等の制動要素を収納する幅が自由に調整できる。つまり、図5に示したように、調整ビス107は支持盤56に貫通するネジ孔108にねじ込まれていて、支持盤56の外方側から操作して調整ビス107のねじ込み量を調整できるようになっている。
支持盤56は操作部3における図示しない他の内部構成部材に取り付けられる。この支持盤56は非移動部材であり、操作部本体12に対して常に定位置にある。また、プーリ61は湾曲操作用軸体51に固定的に取り付けられ、軸方向には移動しない。このため、上述した各制動要素は軸方向の収納幅が決まっており、後述する操作手段によって制動調整板72は軸方向に位置を変え、このことで、他の制動要素の収納幅を変更し、制動力を調整することができる。
次に、上記湾曲制動機構を操作する操作体の機構について説明する。図1及び図2に示したように、湾曲制動操作体としての湾曲ロックレバー35は、操作部本体12の下側を通る全体として「U」または「コ」の字様に湾曲した単一の一体化操作体として形成される。
図4に示したように、1本の湾曲ロックレバー35は、操作部本体12の下側に回り込み配置される。湾曲ロックレバー35の両端部は、操作部本体12の左右側面部にある左右の湾曲制動機構の軸体111にそれぞれ接続されている。左右の湾曲制動機構の軸体111はそれぞれ円筒状の軸受け部材112に軸支されている。左右の軸受け部材112はそれぞれ、左右のカバー47a,47bと、支持盤56を貫通して支持盤56にねじ込まれ、その支持盤56に固定されている。カバー47a,47bと、軸受け部材112の間の部分は、シール部材113によって液密的にシールされている。
軸体111の軸中心は操作部本体12を左右に貫通する向きの同一直線上において略一致しており、これが1本の湾曲ロックレバー35の回動中心になる。
図4に示したように、軸体111の内方端は軸受け部材112の内端から支持盤56よりも内方へ突き出しており、内方端部は略円盤形状のフランジ部88が形成されている。フランジ部88は、肉厚部88aと、この肉厚部88aより薄肉で後述するアーム115が配置される薄肉部88bとから構成される。肉厚部88aには図6、図10、図11に示すような切欠き部88cが形成されている。この切欠き部88cが位置する領域の支持盤56上には、回動規制ピン45が固定されている。
薄肉部88bにはアーム115が軸体111と一体となるよう、かしめ固定される。薄肉部88bとアーム115を重ね合わせた厚みは、肉厚部88aと略等しい。さらに、アーム115の回動先端にはカムピン116がかしめ固定されている。このカムピン116は上述した湾曲制動機構の第1のカム73におけるカム孔87に嵌め込まれる。なお、軸体111、アーム115、カムピン116の連結固定は、接合部の厚みを薄くするために、かしめ固定としている。
そして、この一本の湾曲ロックレバー35を回動操作することにより、左右の湾曲操作機構部41,42に組み込まれたそれぞれの湾曲制動機構が同時に操作される。つまり、左右の湾曲制動機構における軸体111とアーム115が一緒に回動し、カムピン116が移動する。これにより、両方の湾曲制動機構における第1のカム73が回動させられ、両方の湾曲制動機構の制動が同時に行われる。
湾曲ロックレバー35を操作しない通常の状態(図2に実線で示す解除の位置)では、図11に示したように、湾曲制動機構における第1のカム73の傾斜面82と、第2のカム74の傾斜面92とがほとんど干渉しない状態にあるので、第2のカム74はプーリ61の被摩擦面70へ、摩擦部材75を強く押し付けることがない。したがって、プーリ61と摩擦部材75は、ほとんど摩擦力が生じない。このため、湾曲レバー31,32を操作することで、プーリ61を容易かつ軽く回転させ、それぞれの向きに湾曲部6を湾曲させることができる。
このときの湾曲ロックレバー35の回動規制は、図11に示すようにフランジ部88の切欠き部88cと回動規制ピン45が当接することにより行われる。また、この回動規制状態ではカムピン116が、カム孔87の終端87aに突き当たらないようにカム孔87の長さが設定されている。従って、回動規制位置から湾曲ロックレバー35にさらに力を加えることがあっても、軸体111、アーム115、カムピン116のかしめ固定部およびアーム115本体に必要以上の負荷は掛からないため、これら機構部の破損を防ぐことができる。フランジ部88の肉厚部88aは、回動規制ピン45と当接した状態からさらに力を加えて当て付けても変形しない、十分な剛性をもつ肉厚、形状としている。さらに、上記の回動規制部は左右の湾曲操作機構部41,42に対称に設けられている。
湾曲部6を湾曲させた状態で制動を働かせる場合には図3に示したように、湾曲ロックレバー35を人差し指で操作し、図2に点線で示す固定位置まで湾曲ロックレバー35を引き、回動する。すると、湾曲ロックレバー35に連結した左右の軸体111とアーム115が一緒になって回動し、この回動するアーム115によってカムピン116が移動する。カムピン116により第1のカム73が回動し、フランジ部88の切欠き部88cが回動規制ピン45に当接する(第2の当接位置)まで回動する。すなわち、図11の状態から図10の状態まで回動して、制動完了状態になる。
つまり、それまで互いに干渉していなかった第1のカム73における制動用凸面83の傾斜面82と、非回動側の第2のカム74における制動用凸面93の傾斜面92とが当接するようになり、第1のカム73と第2のカム74は互いに強く押し合う関係になる。ここで、第1のカム73は制動調整板72により外方側への移動が阻止されている。このため、第2のカム74の方がプーリ61側へ移動し、摩擦部材75をプーリ61の被摩擦面70に押し付ける。
そして、プーリ61と第2のカム74は摩擦部材75を挟み付け、そのときに発生する摩擦力によって、プーリ61に制動を掛け、湾曲部6の湾曲状態を維持することができる。
なお、ここで、湾曲を制動またはロックする状態とは、湾曲レバー31,32の操作力量が重くなる場合を含み、完全に固定してしまう場合のみではない。より理想的な状態として、以下のような制動力量に設定することが望ましい。
本実施の形態の内視鏡1は、図12に示すように体腔内に刺入したトロッカー90に挿入部2を通し、トロッカー90先端より挿入部2を露出させて体腔内の観察を行う。さらにトロッカー90より挿入部2を抜去する際、図13に示すように、仮に湾曲部6を湾曲状態かつ制動状態のまま無理に引き抜いた場合は、図14(A)のように湾曲部6の表面がトロッカー90の先端にしごかれることになる。通常、湾曲部6の外装部分は伸縮性のある被覆チューブ8で構成するため、トロッカー90の先端で部分的に強くしごかれると被覆チューブ8にしわが発生したり、被覆チューブ8が破れたりする可能性がある。また、このとき、湾曲部操作を行うための湾曲操作ワイヤ(図示せず)に過剰なテンションがかかり、湾曲操作ワイヤが伸びてしまい十分な湾曲操作ができなくなるなどの不具合が生じるおそれもある。
これを防止するために、制動力量としては、少なくとも湾曲部の最大角度が維持出来る制動力量であって、さらに湾曲制動状態の湾曲部を、湾曲レバー31,32の操作ではなく、挿入部2の先端近傍に力を加えて押し戻したとき、湾曲操作ワイヤに加わるテンションが、ワイヤの引っ張り限界値以下でプーリ61が動き出す、あるいは、トロッカー90から湾曲制動状態で引き抜いたときに、トロッカー90の先端に干渉した湾曲部6の被覆チューブ8にダメージが加わる前にプーリ61が動き出す(図14(B)の状態になる)ような制動力量の設定が望ましい。
上記制動完了状態では、図10に示したように、カムピン116が第1のカム73におけるカム孔87の終端87aに達する前に、フランジ部88の切欠き部88cが回動規制ピン45に当接し(第2の当接位置)、それ以上のアーム115の回動が阻止される。この制動完了状態では、第1のカム73における制動用凸面83の傾斜面82と、第2のカム74における制動用凸面93の傾斜面92とが、規定量だけ押し合う状態となる。
上記、湾曲制動機構の制動力を調整する際は、調整ビス107により行う。調整ビス107は制動調整板72の凹部からなる穴78に差し込まれているので、調整ビス107により制動調整板72の軸方向の外方終端位置を調節する。これにより、第1のカム73、第2のカム74及び摩擦部材75の配置間隔を決め、制動力を調整できる。また、調整ビス107は制動調整板72の回動を阻止するので、制動調整板72のための回転規制機構を別に設ける場合に比べて構成が簡略化する。
また、ライトガイドコネクタ21のカメラケーブル24と異なる側壁面には、通気口金23が設けられている。この通気口金23から内視鏡1の内部に向けて空気を供給する。この状態で内視鏡1を水中に浸漬させて気泡を視認することによって、内視鏡1の水漏れ検査が行える。なお、通気口金23は送気用コネクタを取り外した図1の状態では閉鎖しており、内視鏡1の内部に水が浸入しない水密な状態にある。
次に、トロッカー90について説明する。図1に示すように、トロッカー90は、硬性管からなるシース120と、このシース120の基端に設けられた口元部121とを備えている。そして、トロッカー90は、シース120と口元部121とが連通状態で形成されている。シース120および口元部121は、樹脂材や金属材などで硬質に形成されている。トロッカー90の長さは、トロッカー90内に内視鏡1の挿入部2が挿入された際に少なくとも湾曲部6およびヘッド部7がシース120の先端から突出する長さに形成されている。
図15(A)、図15(B)に示すように、口元部121の内腔には、気密シール部(封止部)122が配設されている。この気密シール部122は、第1および第2の口元シール部122a,122bを有する。第1および第2の口元シール部122a,122bは、トロッカー90の軸方向に並設され、トロッカー90の軸方向に対して直交する方向にそれぞれ保持されている。
第1の口元シール部122aは円盤状に形成され、所望の弾性力(可撓性)を有するゴム材などの弾性部材で形成されている。第1の口元シール部122aの中央部にはシース120の中心軸と同軸上に貫通孔が形成されている。この貫通孔は、挿入部2の外径よりも小さく形成されていて、挿入部2を前記貫通孔に挿通させた時には、第1の口元シール部122aを挿入部2の外周面に圧接させる状態に弾性変形させてシールするようにしている。
一方、図15(A)に示すように、第2の口元シール部122bは、第1の口元シール部122aと同様、弾性力(可撓性)を有するゴム材などの弾性部材で形成されている。その形状は、第2の口元シール部122bより先端側の加圧空気が外部に漏れ出ないように逆止弁状のバルブ形状を成している。すなわち、第2の口元シール部122bは、挿入部2を抜去した状態では、体腔内の加圧空気によってシール部の弁体がぴったりと閉塞して体腔内の空気が外部に漏れ出すことを防止する。
シース120の内周面は、全長に亘って梨地に成形している。これは、内視鏡1の挿入部2を挿通させるとき、伸縮性のあるフッ素ゴムなどからなる湾曲部6に外装被覆された被覆チューブ8がシース120内面に接触しても貼りつかないようにして挿脱時の抵抗を低減させている。
次に、好ましくは直管からなる導管80について説明する。導管80は、樹脂材や金属材などで硬質に形成され、かつ、適度な弾性力を有する。
図15(A)に示すように、導管80の内径は、内視鏡1の挿入部2の外径よりもやや大きく形成されており、挿入部2を挿通自在である。さらに、導管80の内径は後端側より徐々に縮径し、最小内径φx部を越えると、先端側に向けて徐々に拡張するような、テーパ形状をしている。なお、最小内径φx部は、導管80の後端側に位置するのが好ましい。
また、導管80の内周面は、シース120の内周面と同様に、全長に亘って梨地に成形してもよい。これは、後述のように挿入部2に導管80を装着して、主に湾曲部6を通過させるとき、伸縮性のあるフッ素ゴムなどからなる湾曲部6に外装被覆された被覆チューブ8が導管80の内面に接触しても貼りつかないようにして通過時の抵抗を低減させている。
ここで、導管80の最小内径φx部はトロッカー90のシース120の内径φy以下とする。これは、通常、術前の準備の際、挿入部2に導管80を装着するが、この行為が正常に行えることでトロッカー90(およびシース120)への挿通が確約される。仮に、湾曲部6の被覆チューブ8にめくれなどの異常があり、シース120の内径を越える湾曲部外形になっていた場合、前記の術前準備行為を行うことによって湾曲部6の異常確認が自然と行えるようにし、術中にトロッカー90への挿入部2の挿通困難などの不具合を未然に防止できる。
また、上記のように導管80の最小内径部を部分的につくることによって、主に湾曲部6の挿通性をできるだけ妨げないようにしている。なお、全長に亘って最小内径φxで導管80を構成すると、湾曲部6の挿通時に導管80内で湾曲部6が蛇行した場合、湾曲部6の被覆チューブ8が導管80の内面に強く当たり、貼りつきやすく、挿通性を悪化させる原因となる。
一方、導管80の外径は、トロッカー90の第1の口元シール部122aの貫通孔よりも大きく形成されている。この導管80は、湾曲部6全体を覆うように、湾曲部6の長さよりも長く形成されている。この導管80の先端部近傍には、内方側に突出し、挿入部2の環状溝7aと係合する係合手段として、対向する1対の突起部123が設けられている。これら突起部123は、弾性変形して挿入部2の上述した環状溝7aに係合(係止)され、湾曲部6上に位置するようになっている。
なお、この突起部123の突出量は、係合を解除するための力量が導管80をトロッカー90の第1の口元シール部122aに押し込んで嵌入させるのに必要な押し込み力量よりも小さくなるように設定される。
そして、本実施の形態の内視鏡1を用いて体腔内の観察を行う場合は、図12に示すように体壁に穿刺したトロッカー90に内視鏡1の挿入部2を挿通する。その際は、図15(A)に示すように導管80を湾曲部6上に位置するように環状溝7aに係止させる。この状態で、湾曲部6は導管80によって直線状に矯正される。そして、図15(B)に示すようにヘッド部7をトロッカー90の気密シール部122に差し込む。このとき、湾曲部6は導管18によって直線状に矯正されているので、湾曲部6が不用意に屈曲することなくトロッカー90内に挿通される。そして導管80の先端が口元シール部122aに当接すると、環状溝7aとの係合が解除され、自動的に挿入部2上を操作部側にスライド移動する。上記操作によって、挿入部先端を容易にトロッカー90のシース120内を通過させることができ、体腔内を観察することができる。
一方、この導管80の基端部近傍は、対向する1対の腕部124が形成されている。腕部124は、操作部3の環状凹溝54に着脱自在に係合する。すなわち、導管80を挿入部2に装着し、そのまま操作部3側まで導管80をスライドさせた状態で操作部基端に導管80をとめておくことができる。そして必要に応じて、係合を解除して、湾曲部6の規定位置に導管80を移動させることができる。
挿入部2におけるヘッド部7、湾曲部6、硬性部5の外径寸法を各々同じか、あるいはヘッド部7を最も太く構成する。これにより、トロッカー90のサイズが適正でない(例えば、シース120の内径寸法が小さすぎる)ものを誤って使用した場合に、挿入部2をシース120に無理に挿通され、挿通途中で引っ掛かりが生じ、進退不能になることを未然に防ぐことができる。ここで、挿入部2の先端が通過すれば、それ以降の湾曲部6、硬性部5は問題なく通過する。なお、サイズが合わない場合は最初から挿通できない。
また、図16(A)は、内視鏡1の節輪群11に被覆チューブ8を取り付ける作業時に使用する被覆チューブ装着具130を示す。この被覆チューブ装着具130は、従来から使用されているものと同等品である。この被覆チューブ装着具130は、被覆チューブ8を取り付ける筒体131と、筒体131の中央に分岐した吸引口132とを備えている。この筒体131の内径寸法は、被覆チューブ8の自然状態でのチューブ外径よりも大きな内径寸法に設定されている。また、吸引口132には、シリンジ133などの吸引手段が着脱可能に装着される。
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の内視鏡1の節輪群11に、被覆チューブ装着具130を使用して被覆チューブ8を装着する作業手順を図16(A)、図16(B)に示す。本実施の形態の内視鏡1の被覆チューブ8は機械的な耐性を向上させるため、他の内視鏡に使用されているものと比べて肉厚のものを用いている。例えば、被覆チューブ8の自然状態でのチューブ寸法は内径φ3.5〜φ4mm程度、肉厚は0.3〜0.5mm程度である。また、ヘッド部7の外径寸法はφ5〜φ5.5mm程度である。
そして、節輪群11に被覆チューブ8を取り付ける作業時には、まず、被覆チューブ装着具130の筒体131に被覆チューブ8を装着する。このとき、図16(A)に示すように被覆チューブ8の自然状態でのチューブ外径よりも大きな内径寸法をもつ筒体131に被覆チューブ8を挿通し、この被覆チューブ8の両端を裏返す状態で、筒体131の両端部に係止させる。これにより、被覆チューブ装着具130の筒体131に被覆チューブ8を装着する。
この状態で、吸引口132にシリンジ133などの吸引手段を装着し、吸引をかける。これにより、被覆チューブ8と筒体131との隙間が陰圧になり被覆チューブ8の内径が拡張していく。
この状態で挿入部2の先端であるヘッド部7を筒体131の一端側から被覆チューブ8内に差し込んでいく。このとき、肉厚に成形した被覆チューブ8の内空は、従来のそれと比べて広がりにくくなっているため、ヘッド部7がチューブ内面を押し広げながら挿通される。すなわち、ヘッド部7の外周面と被覆チューブ8の平滑な内面とがより密着した状態でヘッド部7が押し込まれていく。このとき、ヘッド部7の外表面は微細凹凸からなる梨地面の非鏡面部15としているため、ヘッド部7の非鏡面部15が被覆チューブ8の内面に貼りつくことなく、スムーズにヘッド部7を押し進めることができる。
上記押し込み作業をさらに円滑に行う方法として、図16(B)に示すようにしてもよい。ここでは、筒体131の、ヘッド部7が差し込まれた方向の端部とは逆側の端部に、送気管134を接続して被覆チューブ8内に加圧空気を送り込む。送気管134の他端側は、図示しない加圧手段に接続されている。
ここで、送気管134は、ヘッド部7の外径よりも十分広い寸法の内径をもち、筒体131に接続する部分は、口広となるようにラッパ状のテーパ部135を形成している。テーパ部135を筒体131に押し当てたとき、被覆チューブ8の折り返し部分がテーパ部135と気密的に密着する。
この状態で、加圧手段から被覆チューブ8内に加圧空気を送り込む。このとき、被覆チューブ8の他方はヘッド部7が挿入されて密閉状態になっているため、空気の逃げ場がなく被覆チューブ8内が加圧されていく。そして、ある圧力に達すると、ヘッド部7と被覆チューブ8の密着部を押し広げるようにして、挿入部2を挿通している側に加圧空気がリークする。このとき、ヘッド部7と被覆チューブ8の密着部が一時的に離れるため、挿通時の抵抗をさらに低減させることが可能となる。このようにして、湾曲部6を構成する節輪群11全長に亘って被覆チューブ8を外装し、液密な湾曲部6を構成する。
上記内視鏡1を用いた観察中においては、挿入部2の先端面9の鏡面部17が血液などで汚れて視野を妨げたり、照明光量が低下した場合、レンズが配置されている先端面9の鏡面部17を拭うことで、容易に先端面9の全体をきれいに拭い去ることができる。
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の内視鏡1では、挿入部2の最先端位置のヘッド部7の外周面に微小凹凸からなる非鏡面状態の梨地面の非鏡面部15を設けている。これにより、節輪群11に、被覆チューブ装着具130を使用して被覆チューブ8を装着する作業時に挿入部2の先端であるヘッド部7を筒体131の一端側から被覆チューブ8内に差し込んでいくとき、ヘッド部7の非鏡面部15が被覆チューブ8の内面に貼りつくことなく、ヘッド部7が被覆チューブ8の内面を押し広げながらスムーズにヘッド部7を押し進めることができる。そのため、被覆チューブ8の機械的な耐性向上を目的として被覆チューブ8を肉厚に成形し、従来の肉厚が小さい場合と比べて被覆チューブ8が広がりにくくなっている場合であってもヘッド部7の非鏡面部15が被覆チューブ8の内面に貼りつくことなく、スムーズにヘッド部7を押し進めることができる。そのため、湾曲部6の外径が挿入部2の先端のヘッド部7の外径を越えない範囲で、節輪群11を外装する被覆チューブ8の機械的な耐性向上を目的とした被覆チューブ8の肉増しを行っても、特別な装着具を用いることなく容易に被覆チューブ8を節輪群11に組み付ける組み付け作業を行うことが出来る。
また、本実施の形態では被覆チューブ8を組み付ける際に被覆チューブ8の内面と密着するヘッド部7の外周面のみ微細凹凸からなる梨地面の非鏡面部15とし、撮像光学系および照明光学系の各種光学レンズが配置される挿入部2の先端面であるヘッド部7の先端面9全体を鏡面の鏡面部17として汚れを落としやすく構成している。これにより、組み付け性と観察性を両立させることができる。
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
記
(付記項1) 略円筒形状の外周面を有する先端部と、前記先端部に連設し、前記先端部を所望の方向に変向する湾曲自在な節輪群と、前記先端部を通過させる状態で、前記節輪群に外装被覆される伸縮性のある被覆チューブとを有し、前記先端部の外周面に微小凹凸からなる非鏡面状態の非鏡面部を設けたことを特徴とする内視鏡。
(付記項2) 前記被覆チューブは、自然状態でのチューブ内径が、前記先端部の外径よりも小さいことを特徴とする付記項1に記載の内視鏡。
(付記項3) 前記先端部は、外径寸法が、湾曲部の外径寸法に対して同等かそれより大きい寸法のいずれか一方であることを特徴とする付記項1に記載の内視鏡。
(付記項4) 前記先端部は、各種光学レンズが配置される先端面に鏡面状態の鏡面部を設けたことを特徴とする付記項1に記載の内視鏡。