JP4784907B2 - 潜在捲縮性複合繊維トウ、その製造方法及び繊維構造物 - Google Patents
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しかし、スパイラル捲縮を発現させた繊維或いは不織布は、それ自身嵩高な為、梱包、貯蔵、輸送の各段階で場所を取り不経済であるばかりでなく、圧縮梱包して貯蔵するとせっかくの嵩高性が失われるという問題があった。
しかしながら、この複合繊維は実質的に顕在捲縮繊維であり、この繊維が吸湿で発生する捲縮率の変化は小さく、スパイラル捲縮の発現は起こらない。
この課題を解決する方法として、機械捲縮を付与した連続長繊維不織布の製造方法が開示されている(例えば特許文献7、8)。しかし、この方法では前述したスパイラル捲縮を発現させた繊維或いは不織布と同様に、それ自身嵩高な為、梱包、貯蔵、輸送の各段階で場所を取り、圧縮梱包して貯蔵するとせっかくの嵩高性が失われるという問題がある。
従って本発明は、単糸繊度0.5〜100dtex/fの繊維が収束されたトータル繊度1万〜100万dtexのトウであり、前記繊維が、水不溶性熱可塑性樹脂成分Aと水不溶性熱可塑性樹脂成分Bとによる並列型もしくは該成分Aを鞘とする偏心比0.1以上の偏心鞘芯型の複合繊維を含み、該複合繊維が、水温20℃の水分に接触する前と、水温20℃の水に5秒間接触後60秒経過後の、成分Aと成分Bの各々の横断面積変化率が下記関係式(1)を満たす潜在捲縮性複合繊維であることを特徴とする、潜在捲縮性複合繊維トウである。
A2/A1 > B2/B1 (式1)
(A1=成分Aの水分接触前の横断面積
A2=成分Aの水分接触後の横断面積
B1=成分Bの水分接触前の横断面積
B2=成分Bの水分接触後の横断面積)
本発明の潜在捲縮性複合繊維トウは、下記所定の通常条件下と吸湿条件下とで測定した際の吸湿量の変化率が5%未満であることが特に望ましい。このような性質を有することにより、空気中の湿気との接触(吸湿)によって著しく体積及び質量が増加することを避けることができる。
通常条件:25℃、相対湿度65%下1日放置
吸湿条件:40℃、相対湿度80%下2時間吸湿
吸湿量の変化率=[(吸湿条件下での質量−通常条件下での質量)/通常条件下での質量]×100(%) (式2)
本発明はまた、異なる2種類の水不溶性熱可塑性樹脂を、一方の樹脂の吸水率と他方の樹脂の吸水率との差が6質量%以上あるように選択し、吸水率が高い方を水不溶性熱可塑性樹脂成分Aとし、吸水率が低い方を水不溶性熱可塑性樹脂成分Bとし、溶融複合紡糸装置へ両樹脂成分を並列的に導入し、紡糸し、未延伸糸を得て、次いで任意に延伸し、及び任意に熱処理して、並列型で単糸繊度0.5〜100dtex/fの複合繊維からなるトータル繊度1万〜100万dtexのトウを得ることを含む、潜在捲縮性複合繊維トウの製造方法である。
本発明における複合樹脂を構成する水不溶性熱可塑性樹脂成分Aとして、好ましくはポリエーテル・ポリアミドブロック共重合体又はポリアミドとポリエチレングリコールとのブロック共重合体が挙げられ、水不溶性熱可塑性樹脂成分Bとして好ましくはポリオレフィン、ポリアミド及びポリアミドアロイから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
また、本発明の潜在捲縮性複合繊維トウ及びこのトウを用いた繊維構造物は、梱包、貯蔵、輸送の各物流段階では、嵩による貯蔵場所を取らず、使用時に水分と接触することにより捲縮が発現し、伸縮性、嵩高性を有する良好な風合いの繊維構造物となり、良好な水分保持性を有する。
本発明の潜在捲縮性複合繊維トウは、水分との接触によりスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性を有する複合繊維トウであり、単糸繊度0.5〜100dtex/fの繊維が収束されてトータル繊度1万〜100万dtexを示し、該複合繊維は詳しくは、水不溶性の熱可塑性樹脂である成分Aと、前記成分Aとは異なる水不溶性の熱可塑性樹脂である成分Bとが、並列型もしくはA成分を鞘とする偏心比0.1以上の偏心鞘芯型に配置されている複合繊維である。
ここで、偏心比(E)とは、図1に示すごとく複合繊維の中心点(O1)と芯成分の中心点(O2)との距離(d)と複合繊維の半径(R)との比(下記式(3)参照)で表される。
E=d/R (式3)
本発明の潜在捲縮性複合繊維トウは、水不溶性熱可塑性樹脂成分Aと水不溶性熱可塑性樹脂成分Bとが並列型でなかったり、偏心比が0.1未満であると、スパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性能(発現捲縮数)が低下し、嵩高性、伸縮性、風合い等の性能を充分満足させることが困難になる。
A2/A1 > B2/B1 (式1)
(A1=成分Aの水分接触前の横断面積
A2=成分Aの水分接触後の横断面積
B1=成分Bの水分接触前の横断面積
B2=成分Bの水分接触後の横断面積)
本発明でいう「水に接触」とは試料を水分中に5秒間浸すことを意味する。
このような横断面積は、具体的には、電子顕微鏡を用いて、トウの水分接触前の各成分の横断面積と、水温20℃の水にトウを5秒間浸漬させ、次いで引き上げ、60秒放置した後の各成分の横断面積を測定することによって、求めることができ、上記関係式(1)を満たすことを確認することができる。
通常条件:25℃、相対湿度65%下1日放置
吸湿条件:40℃、相対湿度80%下2時間吸湿
吸湿量の変化率=[(吸湿条件下での質量−通常条件下での質量)/通常条件下での重量]×100(%) (式2)
空気中の湿気との接触(吸湿)によって著しく体積及び重量が増加してしまう、式(2)で表される吸湿量の変化率が5%以上になるような繊維となる樹脂を用いることは本発明において望ましくない。また、本発明の潜在捲縮性複合繊維トウは、水分接触により捲縮が発現した場合、捲縮は乾燥後にも保持され、乾燥により可逆的に捲縮が消失するものではなく、上記式1の条件を満たしていれば乾燥後にも捲縮は保持される。このことは、本発明の「実施例」によって支持される。なお、乾燥後の捲縮の保持に関しては、乾燥後にも伸縮性、嵩高性、風合い等の効果が損なわれない程度に捲縮が保持されていれば良い。しかしながら、もしも乾燥後に捲縮が消失し、十分な効果が得られない樹脂の組み合わせがあるならば、本発明の対象から除外されるべきものである。
吸水率(質量%)=[(水切り後の繊維質量)/(初期繊維質量)]×100 (式4)
なお、本発明でいう「吸水率」とは、20℃の液体状の水分との接触によって60秒間に吸水する場合を意味する。
吸水率が1質量%以上であると、水分接触から特に短時間で膨潤過程による伸張差が生じてスパイラル発生に至る。
従って本発明は潜在捲縮性複合繊維トウの製造方法にも向けられ、異なる2種類の水不溶性熱可塑性樹脂を、一方の樹脂の吸水率と他方の樹脂の吸水率との差が6質量%以上あるように選択し、吸水率が高い方を水不溶性熱可塑性樹脂成分Aとし、吸水率が低い方を水不溶性熱可塑性樹脂成分Bとし、溶融複合紡糸装置へ、該樹脂成分Aを鞘成分として及び該樹脂成分Bを芯成分として、偏心するように導入し、紡糸し、未延伸糸を得て、次いで任意に延伸し、及び任意に熱処理して、偏心比0.1以上の偏心鞘芯型で単糸繊度0.5〜100dtex/fの複合繊維からなるトータル繊度1万〜100万dtexのトウを得ることを含む、潜在捲縮性複合繊維トウの製造方法である。
本発明はまた、異なる2種類の水不溶性熱可塑性樹脂を、一方の樹脂の吸水率と他方の樹脂の吸水率との差が6質量%以上あるように選択し、吸水率が高い方を水不溶性熱可塑性樹脂成分Aとし、吸水率が低い方を水不溶性熱可塑性樹脂成分Bとし、溶融複合紡糸装置へ両樹脂成分を並列的に導入し、紡糸し、未延伸糸を得て、次いで任意に延伸し、及び任意に熱処理して、並列型で単糸繊度0.5〜100dtex/fの複合繊維からなるトータル繊度1万〜100万dtexのトウを得ることを含む、潜在捲縮性複合繊維トウの製造方法である。
水不溶性熱可塑性樹脂成分Aと水不溶性熱可塑性樹脂成分Bを選択するとき、吸水率(質量%)の差が6質量%以上となるようにすれば良く、さらに好ましくは差が8質量%以上となるようにする。なお、樹脂成分の吸水率もまた、上記で説明した20℃の液体状の水分との接触によって60秒間に吸水する場合を意味する。
成分Aと成分Bの吸水率の差が6質量%以上であると、吸水率の高い成分Aと吸水率の低い成分Bとの両者間の水分接触から膨潤過程による伸張差が十分に生じるので、顕著なスパイラルが発生し、捲縮発現性も向上する。
成分Bに使用されるポリオレフィン系樹脂としては、上述のように種々あるが、特にポリプロピレン、ポリエチレンが好ましい。
成分Bに使用されるポリアミド系樹脂としては、上述のように種々あるが、特にナイロン−6、ナイロン−66が好ましい。また、ポリアミドアロイとしては、例えばATOFINA社製ORGALLOY(商品名)が販売されており、本発明に利用して好ましい結果を得ることができる。
本発明の潜在捲縮性複合繊維トウの製造には通常の溶融複合紡糸機を用いることが一般的で、使用する並列型または偏心鞘芯型複合紡糸装置は、特殊なものでなく、通常のものでよい。得られた未延伸糸は、延伸を行ってもまた行わなくてもよく、熱処理を行っても行わなくてもよく、また、通常の繊維と同様に機械的に捲縮加工してもよい。このようにして得られる本発明の潜在捲縮性複合繊維トウは、フィラメント等種々の形態で用いることができ、水分との接触によりスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性を有している。具体的には、溶融複合紡糸機を用いて、成分Aと成分Bとからなる潜在捲縮性を有する複合繊維トウを紡出し、紡糸に際し、紡糸温度は120〜330℃の範囲で紡糸することが好ましく、引き取り速度は40m/分〜1500m/分程度とするのがよい。延伸は必要に応じて行うか、または行わなくてもよく、多段延伸を行ってもよい。延伸倍率は通常1.2〜9.0倍程度とするのがよく、延伸温度は、通常、複合繊維が融着しない程度の温度で加熱するのがよい。更に前記加工を経た複合繊維トウに対し、必要に応じてスタッフィングボックス等のクリンパーで捲縮を付与する。
他種繊維の使用量は、潜在捲縮性複合繊維トウとの総量に対して、70質量%以下の割合で混合するのが好ましい。本発明の潜在捲縮性複合繊維の量が30質量%以上であれば、水分接触時に捲縮が発現して不織布が嵩高になるという本発明の効果が有効に発揮される。
(MFR)
JIS K 7210、ASTM D638等に準拠して測定した。各種樹脂のMFR測定条件を示す。
ポリエーテル・ポリアミドブロック共重合体:測定温度235℃/公称荷重1kgf
ポリプロピレン:測定温度230℃/公称荷重2.16kgf(JIS K 7210附属書A表1の条件M)
ポリエチレン:測定温度230℃/公称荷重2.16kgf(JIS K 7210附属書A表1の条件D)
ポリアミドアロイ:測定温度235℃/公称荷重5kgf
デュポン社製熱分析装置DSC10(商品名)を用い、JIS K 7122に準拠して測定を行った。
(偏心比)
偏心比(E)は、図1に示すごとく複合繊維の中心点(O1)と芯成分の中心点(O2)との距離(d)と複合繊維の半径(R)の値を使用し、式3にて求めた。
E=d/R (式3)
測定試料を20℃の水に60秒間浸漬後、濾紙(東洋濾紙(株) NO.2濾紙)3枚重の間にはさみ0.5kg/cm2の圧力をかけ水切りを行う。濾紙を新しいものに取替えて、この水切り操作を更に2回繰返した後質量を測定し、式4により吸水率を求めた。
吸水率(質量%)=[(水切り後質量−初期質量)/初期質量]×100 (式4)
電子顕微鏡にて、複合繊維トウの水分接触前の各成分A及びBの横断面積を測定し、及び水温20℃の水分に5秒間浸漬させ、次いで取り出し、60秒放置した各成分A及びBの横断面積を測定し、式5にて横断面積変化率を求めた。測定は3回実施し、その平均値を取った。
A1:A成分の水分接触前の横断面積
A2:A成分の水分接触後の横断面積
B1:B成分の水分接触前の横断面積
B2:B成分の水分接触後の横断面積
V(%)= (A2/A1)×100 又は
V(%)= (B2/B1)×100 (式5)
下記条件下に置いた測定試料の質量を測定し、式2にて求めた。複合繊維トウを25℃、相対湿度65%下で1日放置し(通常条件)、該トウの質量を測定したのち、40℃相対湿度80%下で2時間放置した(吸水条件)。このときの該トウの質量を測定し、通常条件と吸水条件での吸湿量の変化率(%)を式2から求めた。
通常条件:25℃、相対湿度65%下1日放置
吸湿水条件:40℃、相対湿度80%下2時間吸湿
吸湿量変化率=[(吸湿条件下での質量−通常条件下での質量)/通常条件下での質量]×100(%) (式2)
水分接触前(初期)及び水温20℃の水分に5秒間浸漬させ60秒間放置した繊維束(10本)を濾紙(東洋濾紙(株) NO.2濾紙)ではさみ余分な水分を除去する。この操作を3回繰返し、合計30本の繊維について、1本あたりの25.4mmにおける山数を数え、最大値と最小値を外した28本の山数の平均値を捲縮数とした。
PX:ポリエーテル・ポリアミドブロック共重合体
ATOFINA社製 PEBAX MV1074
MFR:14g/10min MP:158℃
NP:ポリエチレングリコール・ポリアミドブロック共重合体
Allied Signal社製 Hydrofil CFX−6809
PP:ポリプロピレン
日本ポリプロ(株)製 ノバテックPP SA2E
MFR:14g/10min MP:160℃
PE:ポリエチレン
京葉ポリエチレン(株)製 S6900
MFR:16g/10min MP:132℃
Ny6:ナイロン6
宇部興産(株)製 UBEナイロン6 1011FB
Ny66:ナイロン66
旭化成ケミカルズ(株)製 レオナ FR200
PAA:ポリアミドアロイ
ATOFINA社製 ORGALLOY RS60E10
MFR:13g/10min MP:220
並列型複合紡糸用口金を取り付けた、2機の押出機を有する複合紡糸装置を使用し、並列型複合繊維トウを製造した。ホッパーの成分A側にPXを投入し、成分B側にNy6を投入して、230℃の紡糸温度で、成分Aと成分Bとの容積比率が50/50の並列型の繊維断面形状となるように複合繊維トウを吐出し、ワインダーによってこれを引き取った。なお、前記引き取り工程において、吐出された複合繊維トウの表面に、界面活性剤としてアルキルフォスフェートカリウム塩を付着させた。次に、ワインダーで巻き取った複合繊維トウ(未延伸糸)を延伸機によって、2.0倍(延伸温度90℃)に延伸した後、スタッフィングボックスに通して機械捲縮を付与させ、捲縮が施された3.3デシテックスのトウを得た。次にトウを20℃の水に浸しスパイラル捲縮を発現させた。得られた繊維トウの水分接触によるスパイラル捲縮の発現を表1に示す。
実施例1に準拠した製造方法により、表1に示した原料樹脂の組合せ、繊維の断面形状、製造条件で、潜在捲縮性複合繊維トウを製造した。但し、実施例5では、成分Bの紡糸温度を実施例1よりも50℃高く設定して紡糸を行った。また、実施例6及び7では、成分Aが鞘側になり成分Bが芯側になるように偏心鞘芯型複合紡糸装置にて、紡糸した。得られたトウの水分接触によるスパイラル捲縮の発現を表1に示す。
実施例1で得られた潜在捲縮性複合繊維トウを、一対ずつのピンチロールを3段備え、且つ第三段目のピンチロールの直前にエアーブロー形の開繊補助装置を備えた高速開繊機を用い、延伸比1.5倍、速度230m/minで高速開繊処理しウェブを得た。得られたウエブを熱圧着装置に移送し、エンボスロール温度130℃、フラットロール130℃、線圧50N/mmの条件で熱圧着処理し、目付31g/m2、比容積10cm3/gの長繊維不織布(繊維構造物)を得た。次にこの不織布を20℃の水に浸しスパイラル捲縮を発現させたところ、比容積が25cm3/gまで増加した。
実施例1に準拠した製造方法により、表2に示した原料樹脂の組合せ、繊維の断面形状、製造条件で、複合繊維トウを製造した。次に得られた各トウを20℃の水に浸し、その挙動を観察した。得られたトウの捲縮数を表2に示す。比較例1〜3で得られたトウは、20℃の水に浸しても大きな変化は確認できなかった。
比較例3で得られた複合繊維トウを、一対ずつのピンチロールを3段備え、且つ第三段目のピンチロールの直前にエアーブロー形の開繊補助装置を備えた高速開繊機を用い、延伸比1.5倍、速度230m/minで高速開繊処理しウェブを得た。得られたウェブを熱圧着装置に移送し、エンボスロール温度130℃、フラットロール130℃、線圧50N/mmの条件で熱圧着処理し、目付30g/m2、比容積11cm3/gの長繊維不織布(繊維構造物)を得た。次にこの不織布を20℃の水に浸しその挙動を観察したが、大きな変化は確認できなかった。
これに対し、表2から明らかなように、比較例1〜3の複合繊維トウは、水分接触後もその捲縮数の変化に大きな差はなく、比較例4の長繊維不織布は、水分との接触後もその比容積には変化のないものであった。
実施例1で得られたトウを使用してモップ状の清掃部材を作成した。得られたモップ状清掃部材を水分と接触させて使用したところ、新たな捲縮の発現により繊維集合体部分の嵩が大きくなり埃が捕れやすく、かつ捕れた埃が水分接触により発現した捲縮によって捕集されたまま落下することがなく、清掃部材として非常に有用なものであり、実用性が高いと判断できた。
[比較例5]
比較例1で得られたトウを使用してモップ状の清掃部材を作成した。得られたモップ状清掃部材を使用したところ、水と接触させても新たな捲縮の発現はなく、埃を捕集する能力はあるものの、そのモップ状清掃部材としての性能は、一般的なモップ状清掃部材と比較して同等なものであった。
実施例11で得られたモップ状清掃部材は、使用時の水との接触により新たな捲縮が発現し、モップ状清掃部材として良好な性能を持ち合わせており、実用性に優れているのに対して、比較例5で得られたモップ状清掃部材は、その掃除用具としての性能は一般的なモップ状掃除用具と同等で、特徴のあるものではなかった。
また、本発明の潜在捲縮性複合繊維トウを用いた繊維構造物は、梱包、貯蔵、輸送の各物流段階では、嵩による貯蔵場所を取らず、使用時に水分と接触することにより新たな捲縮が発現し、伸縮性、嵩高性を有する良好な風合いの繊維構造物を形成する。なお、これらの繊維構造物は良好な水分保持性を有する。
本発明の潜在捲縮性複合繊維トウの特性を利用して、紙おむつ、生理用品などの衛生材料分野、吸音材、清掃部材、フィルター、クッション材、油吸着材、等の産業資材分野をはじめ、医療分野などにも好適に使用することができる。
O2:芯成分の中心点
d:O1とO2の距離
R:複合繊維の半径
Claims (11)
- 単糸繊度0.5〜100dtex/fの繊維が収束されたトータル繊度1万〜100万dtexのトウであり、前記繊維が、水不溶性熱可塑性樹脂成分Aと水不溶性熱可塑性樹脂成分Bとによる並列型もしくは該成分Aを鞘とする偏心比0.1以上の偏心鞘芯型の複合繊維を含み、該複合繊維が、水温20℃の水分に接触する前と、水温20℃の水に5秒間接触後60秒経過後の、成分Aと成分Bの各々の横断面積変化率が下記関係式(1)を満たす潜在捲縮性複合繊維であり、下記の通常条件下と吸湿条件下とで測定した際の吸湿量の変化率が5%未満であり、水分との接触によりスパイラル捲縮を発現可能なことを特徴とする、潜在捲縮性複合繊維トウ。
A2/A1 > B2/B1 (式1)
(A1=成分Aの水分接触前の横断面積
A2=成分Aの水分接触後の横断面積
B1=成分Bの水分接触前の横断面積
B2=成分Bの水分接触後の横断面積)
吸湿量の変化率=[(吸湿条件下での質量−通常条件下での質量)/通常条件下での質量]×100(%) (式2)
(通常条件:25℃、相対湿度65%下1日放置
吸湿条件:40℃、相対湿度80%下2時間吸湿) - 複合繊維において、水温20℃の水分に5秒間接触後、60秒経過後にスパイラル捲縮数が8個/25.4mm以上発現する、請求項1記載の潜在捲縮性複合繊維トウ。
- 水温20℃における吸水率が1%以上である、請求項1〜2のいずれか1項記載の潜在捲縮性複合繊維トウ。
- 水不溶性熱可塑性樹脂成分Aがポリエーテル・ポリアミドブロック共重合体又はポリアミドとポリエチレングリコールとのブロック共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項記載の潜在捲縮性複合繊維トウ。
- 水不溶性熱可塑性樹脂成分Bがポリオレフィン、ポリアミド及びポリアミドアロイから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項記載の潜在捲縮性複合繊維トウ。
- 異なる2種類の水不溶性熱可塑性樹脂を、一方の樹脂の吸水率と他方の樹脂の吸水率との差が6質量%以上あるように選択し、吸水率が高い方を水不溶性熱可塑性樹脂成分Aとし、吸水率が低い方を水不溶性熱可塑性樹脂成分Bとし、溶融複合紡糸装置へ、該樹脂成分Aを鞘成分として及び該樹脂成分Bを芯成分として、偏心するように導入し、紡糸し、未延伸糸を得て、次いで任意に延伸し、及び任意に熱処理して、偏心比0.1以上の偏心鞘芯型で単糸繊度0.5〜100dtex/fの複合繊維からなるトータル繊度1万〜100万dtexのトウを得ることを含む、請求項1記載の潜在捲縮性複合繊維トウの製造方法。
- 異なる2種類の水不溶性熱可塑性樹脂を、一方の樹脂の吸水率と他方の樹脂の吸水率との差が6質量%以上あるように選択し、吸水率が高い方を水不溶性熱可塑性樹脂成分Aとし、吸水率が低い方を水不溶性熱可塑性樹脂成分Bとし、溶融複合紡糸装置へ両樹脂成分を並列的に導入し、紡糸し、未延伸糸を得て、次いで任意に延伸し、及び任意に熱処理して、並列型で単糸繊度0.5〜100dtex/fの複合繊維からなるトータル繊度1万〜100万dtexのトウを得ることを含む、請求項1記載の潜在捲縮性複合繊維トウの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載のトウを少なくとも一部に用いた繊維構造物。
- 繊維構造物が、トウの繊維接点が熱接合あるいは繊維間が交絡によって固定された不織布、ネット状物、編物及び織物から選ばれる少なくとも一種の布帛で構成された構造である、請求項8記載の繊維構造物。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載のトウ又は請求項8又は9記載の繊維構造物を少なくとも一部に用いた清掃部材。
- 請求項10記載の清掃部材を組み込んでなるワイパー。
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