ポリエーテル系共重合体
ポリエーテル系共重合体は、エチレンオキシド50〜93モル%、プロピレンオキシド0〜35モル%、及び不飽和エポキシド7〜15モル%からなり、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が70〜150の範囲にあるコポリマーである。ここで、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び不飽和エポキシドのモル%は、各単量体の結合単位を基準とする。
不飽和エポキシドとしては、分子内に少なくとも一つの炭素−炭素不飽和結合と少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物であれば格別な限定はないが、例えば、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、オクテニルグリシジルエーテルなどのアルケニルグリシジルエーテル;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド;スチレンエポキシド、グリシジルフェニルエーテルなどのアリールエポキシド;などが挙げられる。これらの中でも、アルケニルグリシジルエーテルが好ましく、アリルグリシジルエーテルが特に好ましい。
本発明で使用するポリエーテル系共重合体は、エチレンオキシド65〜92モル%、プロピレンオキシド0.5〜25モル%、及びアリルグリシジルエーテル7.5〜13モル%からなり、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が70〜150の範囲であるポリエーテル系共重合体である。
ポリエーテル系共重合体の具体例としては、エチレンオキシド・不飽和エポキシド共重合体、及びエチレンオキシド・プロピレンオキシド・不飽和エポキシド三元共重合体を挙げることができ、より具体的には、エチレンオキシド・アリルグリシジルエーテル共重合体、エチレンオキシド・プロピレンオキシド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体などを挙げることができる。
エチレンオキシドの共重合割合を50〜93モル%の範囲とすることにより、耐発熱性、反発弾性、機械的強度、及び加工性を高度にバランスさせることができ、帯電防止性が要求される分野への用途にも好適となる。エチレンオキシドの共重合割合が過小であると、加工性及び帯電防止性が低下し、過大であると、不飽和エポキシドの共重合割合が小さくなり、耐摩耗性が低下する。前記共重合割合の範囲内において、エチレンオキシドの共重合割合が高くなるほど、ゴム組成物の耐発熱性、反発弾性、及び引張強度などの機械的特性が向上する。エチレンオキシドの共重合割合は、好ましくは65〜92モル%、より好ましくは70〜91モル%である。本発明では、エチレンオキシドの共重合割合は、65〜92モル%である。
不飽和エポキシドの共重合割合を7〜15モル%の範囲とすることにより、耐発熱性、反発弾性、機械的強度、加工性などの諸特性を保持しつつ、耐摩耗性を向上させることができる。不飽和エポキシドの共重合割合が過小であると耐摩耗性の改善効果が低下し、過大であると耐発熱性、反発弾性、機械的強度、帯電防止性などが低下する。不飽和エポキシドの共重合割合は、好ましくは7.5〜13モル%、より好ましくは8〜12モル%である。本発明では、不飽和エポキシドであるアリルグリシジルエーテルの共重合割合は、7.5〜13モル%である。
プロピレンオキシドの共重合割合は、0〜35モル%、好ましくは0.5〜25モル%、より好ましくは1〜20モル%である。本発明では、プロピレンオキシドの共重合割合は、0.5〜25モル%である。プロピレンオキシドを共重合することにより、エチレンオキシドによる結晶性を低下させ、帯電防止性を向上させることができる。プロピレンオキシドの共重合割合が過大であると、帯電防止性や加工性が低下する。
本発明で使用するポリエーテル系共重合体は、通常、溶液重合法または溶媒スラリー重合法などにより得ることができる。触媒としては、例えば、有機アルミニウムに水、アセチルアセトンを反応させた系(特公昭35−15797号公報)、トリイソブチルアルミニウムにリン酸、トリエチルアミンを反応させた系(特公昭46−27534号公報)、トリイソブチルアルミニウムにリン酸、ジアザビシクロウンデセンの有機酸塩を反応させた系(特公昭56−51171号公報)などの均一系触媒;アルミニウムアルコキシドの部分加水分解物と有機亜鉛化合物とからなる系(特公昭43−2945号公報)、有機亜鉛化合物と多価アルコールとからなる系(特公昭45−7751号公報)、ジアルキル亜鉛と水からなる系(特公昭36−3394号公報)などの不均一系触媒が挙げられる。溶媒スラリー重合法を採用する場合には、重合溶媒に可溶な重合体を与える単量体と、該重合溶媒に不溶な重合体を与える単量体との両者で、予め処理した触媒を用いる方法(特開平10−195190号公報)が、重合反応系の安定性の観点から好ましい。
溶媒としては、トルエンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタンなどのペンタン類;n−ヘキサンなどのヘキサン類;シクロペンタンなどの脂環式炭化水素;などが使用される。
n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロペンタンなどの溶媒を用いて、溶媒スラリー重合法を採用する場合には、例えば、溶媒に不溶な重合体を与えるエチレンオキシドと溶媒に可溶な重合体を与えるプロピレンオキシドとで予め触媒を処理しておくことが、重合反応系の安定性の観点から好ましい。触媒の処理は、触媒成分と少量の各単量体とを混合し、0〜100℃、好ましくは30〜50℃の温度で熟成させればよい。
重合反応は、単量体成分、触媒成分、重合溶媒などを反応器内に仕込み、0〜100℃、好ましくは30〜70℃の温度で、回分式、半回分式、連続式など任意の方式で行うことができる。
本発明で使用するポリエーテル系共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、70〜150、好ましくは80〜150、より好ましくは90〜150の範囲である。ポリエーテル系共重合体のムーニー粘度が上記範囲にあるときに、耐発熱性、引張強度、及び加工性が高度にバランスされる。
本発明のゴム組成物およびその加硫ゴムでは、これらのポリエーテル系共重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリエーテル系共重合体の配合割合は、使用用途に応じて適宜選択されるが、ジエン系ゴム100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは3〜20重量部の範囲である。ポリエーテル系共重合体の配合割合が過小であると、耐発熱性、引張強度、加工性、帯電防止性などの改善の効果が十分でなく、過大であると耐発熱性が十分でなく、いずれも好ましくない。
ジエン系ゴム
ジエン系ゴムとしては、共役ジエンの単独重合体、2種以上の共役ジエンの共重合体、及び少なくとも1種の共役ジエンと該共役ジエンと共重合可能な単量体とのゴム状共重合体を挙げることができる。ジエン系ゴムとしては、共役ジエン単位の含有量が、通常40重量%以上、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは55〜100重量%の範囲の(共)重合体であることが望ましい。
本発明においては、耐摩耗性、耐発熱性、反発弾性、引張強度、加工性などの諸特性を高度にバランスさせる上で、分子内に極性基を有するジエン系ゴム(A1)を使用するのが好適である。極性基含有ジエン系ゴム(A1)の極性基としては、格別な制限はないが、ヘテロ原子を含有する極性基が好適に用いられる。ヘテロ原子としては、周期律表の第2周期ないし第4周期で、かつ、第5B族または第6B族に属する原子、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。これらの中でも、窒素原子と酸素原子が好ましい。
ヘテロ原子を有する極性基の具体例としては、例えば、ヒドロキシル基、オキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、イミノ基、アミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基などが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基、オキシ基、スルフィド基、ジスルフィド基、イミノ基、アミノ基が好ましく、ヒドロキシル基、アミノ基、オキシ基がより好ましく、ヒドロキシル基とアミノ基が最も好ましい。
極性基を含有するジエン系ゴム(A1)としては、例えば、(1)共役ジエン単量体単位及び必要に応じてその他の共重合可能な単量体単位を含んでなるジエン系重合体の一部分、好ましくは分子鎖末端に、極性基が結合した極性基含有ジエン系ゴム(A2)、(2)共役ジエン単量体単位、極性基含有ビニル系単量体単位、及び必要に応じてその他の共重合可能な単量体単位を含んでなるジエン系ゴム(A3)などを挙げることができる。
共役ジエンとしては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
極性基含有ビニル系単量体としては、分子内に少なくとも一つの極性基を有する重合性単量体であれば特に制限はされない。具体的には、例えば、アミノ基含有ビニル系単量体、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体、オキシ基含有ビニル系単量体などが挙げられ、好ましくは、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体、アミノ基含有ビニル系単量体である。これらの極性基含有ビニル系単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミノ基含有ビニル系単量体としては、1分子中に第1級、第2級、及び第3級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ基を有する重合性単量体が挙げられる。これらの中でも、第3級アミノ基含有ビニル系単量体が特に好ましい。これらのアミノ基含有ビニル系単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
第1級アミノ基含有ビニル系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、p−アミノスチレン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
第2級アミノ基含有ビニル系単量体としては、例えば、特開昭61−130355号公報に開示されているアニリノスチレン類;特開昭61−130356号公報に開示されているアニリノフェニルブタジエン類;及びN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド,N−メチロールアクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタアクリルアミドなどN−モノ置換(メタ)アクリルアミド類;等が挙げられる。
第3級アミノ基含有ビニル系単量体としては、例えば、N,N−ジ置換アミノアルキルアクリレート、N,N−ジ置換アミノアルキルアクリルアミド、N,N−ジ置換アミノ芳香族ビニル化合物、及びピリジル基を有するビニル化合物などが挙げられる。
N,N−ジ置換アミノアクリレートとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフオリンなどのアクリル酸またはメタアクリル酸のエステルなどが挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
N,N−ジ置換アミノアルキルアクリルアミドとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド化合物またはメタアクリルアミド化合物などが挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
N,N−ジ置換アミノ芳香族ビニル化合物としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、N,N−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジプロピルアミノエチルスチレン、N,N−ジオクチルアミノエチルスチレンなどのスチレン誘導体が挙げられる。
ピリジル基を有するビニル化合物としては、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジンなどが挙げられる。これらの中でも、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンが好ましい。
ヒドロキシル基含有ビニル系単量体としては、1分子中に少なくとも1個の第1級、第2級または第3級ヒドロキシル基を有する重合性単量体が挙げられる。このようなヒドロキシル基含有ビニル系単量体としては、例えば、それぞれヒドロキシル基を含有する不飽和カルボン酸系単量体、ビニルエーテル系単量体、ビニルケトン系単量体などが挙げられ、これらの中でも、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体が好適である。ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−不飽和酸のエステル、アミド、無水物などの誘導体が挙げられ、好ましくはアクリル酸、メタアクリル酸などのエステル化合物である。
ヒドロキシル基含有ビニル系単量体の具体例としては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−クロロ−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、ジ−(プロピレングリコール)イタコネート、ビス(2−ヒドロキシプロピル)イタコネート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イタコネート、ビス(2−ヒドロキシエチル)フマレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシメチルビニルケトン、アリルアルコールなどが例示される。これらの中でも、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
オキシ基含有ビニル系単量体としては、例えば、特開平1−188501号公報や特開平7−188356号公報で開示されているトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリ(2−メチルブトキシ)ビニルシラン、6−トリメトキシシリル−1,2−ヘキセン、p−トリメトキシシリルスチレン、トリフェノキシビニルシラン、メタアクリル酸3−トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸3−トリエトキシシリルプロピルなどのアルコキシシリル基含有ビニル系単量体などを挙げることができる。
これらの極性基含有ビニル系単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
その他の共重合体可能な単量体としては、本発明の目的を損なわないものであれば格別な限定はないが、耐発熱性とウエットスキッド抵抗とのバランスを重視するときには、通常、芳香族ビニルが用いられる。芳香族ビニルとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレンなどを挙げることができる。これらの中でも、スチレンが好ましい。これらのその他の共重合可能な単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
極性基含有ジエン系ゴム(A1)中の各単量体単位の含有量は、使用目的に応じて適宜選択される。
極性基が重合体の一部に結合する極性基含有ジエン系ゴム(A2)が共役ジエンとその他の共重合可能な単量体とからなる共重合体の場合の各単量体の含有量は、共役ジエン結合単位が、通常45〜95重量%、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは55〜85重量%の範囲であり、その他の共重合可能な単量体単位(好ましくは、芳香族ビニル結合単位)は、通常5〜55重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜45重量%の範囲である。
極性基含有ビニル系単量体を共重合して得られる極性基含有ジエン系ゴム(A3)中の各単量体の含有量は、共役ジエンと極性基含有ビニル系単量体との共重合の場合と共役ジエンと極性基含有ジエン系単量体とその他の共重合可能な単量体との共重合の場合とに分けられる。共役ジエンと極性基含有ビニル系単量体との共重合体の場合、共役ジエン結合単位の含有量は、通常80〜99.99重量%、好ましくは85〜99.95重量%、より好ましくは90〜99.9重量%の範囲であり、極性基含有ビニル系単量体結合単位の含有量は、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲である。共役ジエンと極性基含有ビニル系単量体とその他の共重合可能な単量体(好ましくは、芳香族ビニル)との共重合体の場合の各単量体結合単位の含有量は、共役ジエン結合単位の含有量が、通常45〜94.99重量%、好ましくは50〜85重量%、より好ましくは55〜80重量%の範囲、極性基含有ビニル系単量体結合単位の含有量が、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲であり、その他の共重合可能な単量体単位の含有量が、通常5〜55重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜45重量%の範囲である。
これらの極性基含有ジエン系ゴム(A1)は、常法に従って製造することができる。前記重合体の一部分に極性基が結合する極性基含有ジエン系ゴム(A2)は、例えば、炭化水素系溶媒中、開始剤として有機活性金属化合物を用いて、共役ジエンあるいは共役ジエンとその他の共重合可能な単量体とを(共)重合させて得られる重合体鎖末端に活性金属を結合した活性(共)重合体と、変性剤とを反応させて重合体鎖末端に極性基を導入させる方法(製法a)、炭化水素系溶媒中、極性基含有有機活性金属化合物を開始剤として共役ジエンあるいは共役ジエンとその他の共重合可能な単量体とを(共)重合させる方法(製法b)などにより製造することができる。極性基含有ジエン系ゴム(A3)は、例えば、共役ジエンと極性基含有ビニル系単量体、あるいは共役ジエンと極性基含有ビニル系単量体とその他の共重合可能な単量体とを共重合させる方法(製法c)などにより製造することができる。
以下、これらの製造方法(a〜c)について詳述する。
製法aで用いられる有機活性金属化合物としては、アニオン重合で一般に使用されるものが用いられ、例えば、有機アルカリ金属、有機アルカリ土類金属、有機酸ランタノイド系列希土類金属などが挙げられる。これらの中でも、有機アルカリ金属が好ましい。
有機アルカリ金属としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどのモノ有機リチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレンなどが挙げられる。これらの中でも、有機リチウム化合物が好ましく、モノ有機リチウム化合物が特に好ましい。
有機アルカリ土類金属としては、例えば、n−ブチルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。
有機酸ランタノイド系列希土類金属としては、例えば、特公昭63−64444号公報に記載されるようなバーサチック酸ネオジウム/トリエチルアルミニウムハイドライド/エチルアルミニウムセスキクロライドからなる複合触媒などが挙げられる。
これらの有機活性金属化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。有機活性金属化合物の使用量は、要求される生成重合体の分子量によって適宜選択され、単量体100g当り、通常0.01〜20ミリモル、好ましくは0.05〜15ミリモル、より好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲である。
上記有機活性金属化合物を開始剤として用いた重合反応は、該開始剤を破壊しない炭化水素系溶媒中で行われる。適当な炭化水素系溶媒としては、通常の溶液重合に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられ、好ましくはn−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどである。また、必要に応じて、1−ブテン、シス−2−ブテン、2−ヘキセンなどの重合性の低い不飽和炭化水素などを使用してもよい。これらの炭化水素系溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて、通常、単量体濃度が1〜30重量%になる量比で用いられる。
重合反応に際し、共役ジエン結合単位のミクロ構造あるいは共役ジエンと共重合させる芳香族ビニルの共重合体鎖中の分布を調整するために、ルイス塩基性化合物を用いることができる。ルイス塩基性化合物としては、有機活性金属化合物を開始剤とする通常のアニオン重合で使用されるものであれば格別制限はなく、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなど第3級アミン類;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;などが挙げられる。これらの中でも、エーテル類と第3級アミン類が好ましい。
これらのルイス塩基性化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ルイス塩基性化合物の使用量は、開始剤(有機活性金属化合物)1モルに対して、通常0〜200モル、好ましくは0.1〜100モル、より好ましくは0.5〜50モル、最も好ましくは0.8〜20モルである。
重合反応は、共役ジエン単独、あるいは共役ジエンとその他の共重合体可能な単量体を(共)重合して行われる。共役ジエン及びその他の共重合可能な単量体は、それぞれ2種以上を組み合わせて用いてもよい。共役ジエンとその他の共重合可能な単量体を併用する場合の各単量体の全単量体中での割合は、共役ジエンが、通常45〜95重量%、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは55〜85重量%の範囲であり、その他の共重合可能な単量体が、通常5〜55重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜45重量%の範囲である。
重合反応は、通常、−78〜150℃の範囲で、回分式あるいは連続式等の重合様式で行われる。その他の共重合可能な単量体として芳香族ビニルを共重合させる場合は、芳香族ビニル単位のランダム性を向上させるため、例えば、特開昭59−140211号公報や特開昭56−143209号公報に記載されているように、重合系中の芳香族ビニルと共役ジエンの組成比における芳香族ビニル含有量が特定濃度範囲になるように、共役ジエンあるいは共役ジエンと芳香族ビニルとの混合物を、反応系に連続的または断続的に供給するのが望ましい。
重合反応により生成する重合体として、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体などが例示できる。かくして、重合体鎖の末端に活性金属が結合した重合体(すなわち、活性重合体)が得られる。
かかる活性重合体と反応させて、重合体鎖末端に極性基を導入することができる変性剤は、公知であり、例えば、特開昭59−191705号公報、特開昭60−137913号公報、特開昭62−86074号公報、特開昭62−109801号公報、特開昭62−149708号公報、特開昭64−22940号公報などに開示されている各種変性剤を用いることができる。
変性剤の具体例としては、分子内にカルボニル基、チオカルボニル基、アジリジン基、エポキシ基などの活性金属と反応する反応性極性基を少なくとも1つ有する化合物(以下、変性剤Xという。);分子内にカルボニル基、チオカルボニル基、アジリジン基、エポキシ基、ハロゲン原子、炭素−炭素不飽和結合基などの活性金属と反応する反応性基を少なくとも1つと前記極性基を少なくとも1つ有する化合物(以下、変性剤Yという。);などが挙げられる。
変性剤Xとしては、例えば、アセトン、ベンゾフェノン、アセチルアセトンなどのケトン類;ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;オキシラン類;カルボジイミド類;N−エチルエチリデンイミン、N−メチルベンジリデンイミン、N−ヘキシルシンナミリデンイミン、N−デシル−2−エチル−1,2−ジフェニルブチリデンイミン、N−フェニルベンジリデンイミン、N−ドデシルシクロヘキサンイミン、N−プロピル−2,5−シクロヘキサジエンイミン、N−メチル−1−ナフタレンイミンなどのシッフ塩基類;炭素数2〜3の環状イミン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、オキシラン類;カルボジイミド類;炭素数2〜3の環状イミン化合物;などが特に好ましい。
オキシラン類としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシ−iso−ブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシ−2−ペンチルプロパン、3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロドデカン、1,2−エポキシエチルベンゼン、1,2−エポキシ−1−メトキシ−2−メチルプロパン、グリシジルメチルエーテル、グリシジルエチルエーテル、グリシジルイソプロピルエ−テル、グリシジルアリルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルブチルエーテル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、2,3−エポキシ−1,1,1−トリフルオロプロパン、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,3H,3H,−ヘプタデカフルオロウンデカンなどが挙げられる。これらの中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシ−iso−ブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、グリシジルメチルエーテル、グリシジルエチルエーテル、グリシジルイソプロピルエ−テル、グリシジルアリルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルブチルエーテル、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンが好ましい。
カルボジイミド類としては、例えば、ジメチルカルボジイミド、ジエチルカルボジイミド、ジプロピルカルボジイミド、ジブチルカルボジイミド、ジヘキシルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジベンジルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、メチルプロピルカルボジイミド、ブチルシクロヘキシルカルボジイミド、エチルベンジルカルボジイミド、プロピルフェニルカルボジイミド、フェニルベンジルカルボジイミドなどが挙げられる。これらの中でも、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミドなどが好ましい。
炭素数2〜3の環状イミン化合物としては、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミンなどのN−非置換のアジリジン化合物やトリメチレンイミンなどのN−非置換アゼチジン化合物などが挙げられる。
変性剤Yとしては、例えば、分子内にビニル基とヒドロキシル基とを持つ化合物;分子内にビニル基とアミノ基とを持つ化合物;分子内にビニル基とアルコキシシリル基とを持つ化合物;分子内にハロゲン原子とアルコキシシリル基とを持つ化合物;分子内にカルボニル基とアミノ基とを持つ化合物;等が挙げられる。これらの中でも、分子内にビニル基とヒドロキシル基とを持つ化合物;分子内にビニル基とアミノ基とを持つ化合物;分子内にビニル基とアルコキシシリル基とを持つ化合物;分子内にハロゲン原子とアルコキシシリル基とを持つ化合物;分子内にカルボニル基とアミノ基を持つ化合物などが好ましく、分子内にカルボニル基とアミノ基を持つ化合物が特に好ましい。
分子内にビニル基とヒドロキシル基、アミノ基またはアルコキシキ基とを持つ化合物としては、例えば、前記極性基含有ビニル系単量体の具体例と同じものが例示できる。
分子内にビニル基またはハロゲン原子とアルコキシシリル基とを持つ化合物としては、例えば、特開平1−188501号公報に開示されているトリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、ジエトキシメチルクロロシラン、トリフェノキシクロロシラン、ジフェノキシフェニルヨードシランなどのモノハロゲン化アルコキシシラン化合物;等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられるが、活性金属に対して、ビニル基やハロゲン原子などの官能基量が当量以上になるように化合物の添加量を決める必要がある。
分子内にカルボニル基とアミノ基とを持つ化合物、好ましくは、分子内にカルボニル基と第3級アミノ基とを持つ化合物は、両基が隣接していてもよいし、また、離れていてもよい。両基が隣接する化合物としては、例えば、N−置換アミド類、N−置換イミド類、N−置換尿素類、N−置換イソシアヌル酸類などが挙げられ、好ましくはこれらの環状化合物である。また、両基が離れている化合物としては、例えば、N−置換アミノケトン類、N−置換アミノアルデヒド類などが挙げられ、好ましくはN−置換アミノケトン類である。
N−置換環状アミド類としては、例えば、N−メチル−β−プロピオラクタム、N−フェニル−β−プロピオラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−メチル−5−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−フェニル−2−ピペリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタム、N−メチル−ω−ラウリロラクタム、N−ビニル−ω−ラウリロラクタムなどが挙げられる。これらの中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−メチル−ピペリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタムが好ましい。
N−置換環状尿素類としては、例えば、1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジビニルエチレン尿素、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられ、好ましくは1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジビニルエチレン尿素である。
N−置換アミノケトン類としては、例えば、4−N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、4−N−メチル−N−エチルアミノアセトフェノン、4−N,N−ジエチルアミノアセトフェノン、1,3−ビス(ジフェニルアミノ)−2−プロパノン、1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジ−t−ブチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。これらの中でも、4、4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノンが特に好ましい。
N−置換アミノアルデヒド類としては、例えば、4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ジビニルアミノベンズアルデヒドなどのN−置換アミノアルデヒド類などが挙げられる。
これらの変性剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用される。変性剤の使用量は、ジエン系ゴムの要求される特性によって適宜選択されるが、有機活性金属化合物当り、通常1〜50当量、好ましくは1〜20当量、より好ましくは1〜10当量の範囲である。
本発明に使用する極性基含有ジエン系ゴム(A1)は、該活性重合体に対して、変性剤と多官能カップリング剤とを組み合わせて反応させたものであってもよい。該活性重合体と変性剤及び多官能カップリング剤との反応は、変性剤と多官能カップリング剤とを同時に、あるいは両者を前後して別々に反応させてもよい。これらの場合の変性剤の使用量は、多官能カップリング剤と同時または多官能カップリング剤の前に反応させる場合、有機活性金属化合物当り、通常0.1〜0.9当量、好ましくは0.2〜0.8当量、より好ましくは0.3〜0.7当量の範囲であり、多官能カップリング剤の後に反応させる場合、通常0.1〜50当量、好ましくは0.2〜20当量、より好ましくは0.3〜10当量の範囲である。多官能カップリング剤の使用量は、変性剤と同時または変性剤の前に反応させる場合、有機活性金属化合物当り、通常0.1〜0.9当量、好ましくは0.2〜0.8当量、より好ましくは0.3〜0.7当量の範囲であり、変性剤の後に反応させる場合、通常0.1〜50当量、好ましくは0.2〜20当量、より好ましくは0.3〜10当量の範囲である。
多官能カップリング剤としては、例えば、特開昭56−143209号公報、特開昭56−17362号公報、特開昭57−55912号公報、特開昭58−162605号公報などに開示される各種多官能カップリング剤を用いることができる。
多官能カップリング剤の具体例としては、例えば、二塩化スズ、四塩化スズ、四臭化スズ、モノメチルトリクロロスズ、モノエチルトリクロロスズ、モノブチルトリクロロスズ、モノヘキシルトリクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズ、ジブチルジブロムスズ、テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラブトキシスズ、ビストリクロロスタニルエタンなどのスズ系カップリング剤;二塩化ケイ素、二臭化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、モノメチルトリクロロケイ素、モノエチルトリクロロケイ素、モノブチルトリクロロケイ素、モノヘキシルトリクロロケイ素、モノメチルトリブロモケイ素、ジメチルジクロロケイ素、ジエチルジクロロケイ素、ブチルトリクロロケイ素、ジブチルジクロロケイ素、ジヘキシルジクロロケイ素、ジメチルジブロモケイ素、テトラメトキシケイ素、テトラエトキシケイ素、テトラブトキシケイ素、ジフェニルジメトキシケイ素、ジフェニルジエトキシケイ素、モノクロロトリメトキシケイ素、モノブロモトリメトキシケイ素、ジクロロジメトキシケイ素、ジブロモジメトキシケイ素、トリクロロメトキシケイ素、トリブロモメトキシケイ素、アルキルトリフェノキシケイ素、ビストリクロロシリルエタンなどのケイ素系カップリング剤;二塩化鉛、四塩化ゲルマニウムなどのハロゲン化金属系カップリング剤;エチルアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル系カップリング剤;ジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジクロロプロパン、ジブロモプロパン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、トリブロモメタン、トリクロロエタン、トリクロロプロパン、トリブロモプロパン、四塩化炭素、テトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系カップリング剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、トリメチル酢酸エチル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、安息香メチル、安息香酸エチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、安息香酸エチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチルなどのエステル系カップリング剤;テレフタル酸ジクロライド、フタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライドなどのハライド系カップリング剤;トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等のリン系カップリング剤;等を挙げることができる。これらの中でも、スズ系カップリング剤、ケイ素系カップリング剤、エステル系カップリング剤、ハロゲン化炭化水素系カップリング剤などが好ましく、スズ系カップリング剤、ケイ素系カップリング剤が特に好ましい。
これら多官能カップリング剤は、それぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
変性反応及びカップリング反応は、活性金属を有する活性重合体と、変性剤及び/または多官能カップリング剤とを接触させればよい。重合反応により活性重合体を製造した場合には、通常、重合停止前の活性重合体液中に変性剤及び/または多官能カップリング剤を所定量を添加することにより、反応を行うことができる。反応温度及び反応時間は、広範囲に選択できるが、一般に、室温〜120℃で、数秒〜数時間である。変性率は、通常10〜100%の範囲内から適宜選択される。変性率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の示差屈折計(RI)と紫外可視分光光度計(UV)で各吸収強度を測定して、その(UV/RI)値を求め、予め作成した検量線によって決定することができる。カップリング率は、適宜選択することができるが、通常10〜100%の範囲である。カップリング率は、GPC測定により示差屈折計の高分子量と低分子量の面積比から求めることができる。
製法bで用いられる極性基含有有機活性金属化合物としては、特に制限はなく、通常のアニオン重合の開始剤として用いられているものを使用することができる。一般には、有機活性金属アミドが用いられる。有機活性金属アミドは、有機活性金属化合物と第2級アミンとを前もって反応させたものを用いてもよいし、また、特開平6−199921号公報に開示されている方法のように、少なくとも1部の単量体と第2級アミンの存在下に有機活性金属化合物を加えて、重合反応系中で生成させたものであってもよい。
第2級アミンとしては、例えば、脂肪族第2級アミン化合物、芳香族第2級アミン化合物及び環状イミン化合物などが挙げられ、好ましくは脂肪族第2級アミン化合物、環状イミン化合物である。
脂肪族第2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルアミルアミン、アミルヘキシルアミン、ジエチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルヘキシルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、メチルシクロペンチルアミン、エチルシクロペンチルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。これらの中でも、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミンが好ましい。
芳香族第2級アミン化合物としては、例えば、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N−エチルフェネチルアミンなどが挙げられる。
環状イミン化合物としては、例えば、アジリジン、アセチジン、ピロリジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ドデカメチレンイミン、コニイン、モルホリン、オキサジン、ピロリン、ピロール、アゼピンなどが挙げられる。これらの中でも、ピロリジン、ピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミンが好ましい。
これらの第2級アミンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
前もって有機活性金属化合物と第2級アミンとを反応させて調製した有機活性金属アミドを用いる場合の有機活性金属アミドの使用量は、要求される生成重合体の分子量によって適宜選択されるが、単量体100g当り、通常0.1〜30mmol、好ましくは0.2〜15mmol、より好ましくは0.3〜10mmolの範囲である。
有機活性金属化合物と第2級アミンを重合系に添加して系中で有機活性金属アミドを生成させる場合の有機活性金属の使用量は、要求される生成重合体の分子量によって適宜選択されるが、単量体100g当り、通常0.1〜30mmol、好ましくは0.2〜15mmol、より好ましくは0.3〜10mmolの範囲である。この時の第2級アミンの使用量は、有機活性金属化合物に対して、通常0.5〜2当量、好ましくは0.8〜1.5当量、より好ましくは1〜1.2当量である。
製法bの重合反応は、常法に従って行えばよく、例えば、特開平6−199921号公報に開示されている方法に従って、前記単量体の少なくとも一部が存在する中で、有機活性金属化合物と第2級アミン化合物とを接触させて行うことができる。その他の重合条件は、前記製法aの重合条件と同様である。
製法bの方法においては、重合反応終了後に変性剤及び/または多官能カップリング剤と反応させることができる。変性剤/多官能カップリングの使用量及び反応条件は、前記製法aの具体例と同様である。
製法aまたはbの方法によって得られる極性基含有ジエン系ゴム(A1)の共役ジエン結合単位のビニル結合(1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合)割合は、格別な限定はないが、通常10%以上、好ましくは10〜90%、より好ましくは30〜85%、最も好ましくは50〜80%の範囲である。共役ジエン結合単位中のビニル結合量がこの範囲にあるときに、耐摩耗性や耐発熱性が高度にバランスされ好適である。ビニル結合以外の残部の共役ジエン結合単位は、1,4−結合であり、1,4−シス結合、1,4−トランス結合のいずれであってもよい。
製法cの共役ジエンと極性基含有ビニル系単量体あるいは共役ジエンと極性基含有ビニル系単量体とその他の共重合可能な単量体とを共重合する方法は、特に制限はないが、通常は乳化重合法が採用される。乳化重合法は、通常の乳化重合手法を採用することができ、例えば、少なくとも1種の単量体の所定量を乳化剤の存在下に水性媒体中に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合する方法が挙げられる。乳化剤としては、例えば、炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩及び/またはロジン酸塩が用いられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などのカリウム塩またはナトリウム塩などが例示される。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような過硫酸塩;過硫酸アンモニウムと硫酸第二鉄との組合わせ、有機過酸化物と硫酸第二鉄との組み合わせ、及び過酸化水素と硫酸第二鉄との組み合わせなどのレドックス系開始剤;などが用いられる。
共重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤を添加することができる。連鎖移動剤としては、例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ−テルピネン類などを用いることができる。
乳化重合の温度は、用いられるラジカル重合開始剤の種類によって適宜選択することができるが、通常0〜100℃で、好ましくは0〜60℃である。重合様式は、連続重合、回分重合等のいずれでの様式でも構わない。
乳化重合における単量体の重合転化率が大きくなると、ゲル化する傾向がみられる。そのため、転化率を90%以下に抑えるのが好ましく、特に、転化率50〜80%の範囲で重合を停止するのが好ましい。重合反応の停止は、通常、所定の転化率に達した時点で、重合系に重合停止剤を添加することによって行われる。重合停止剤としては、例えば、ジエチルヒドロキシルアミンやヒドロキシルアミン等のアミン系化合物、ヒドロキノンやベンゾキノンなどのキノン系化合物、亜硝酸ナトリウム、ソジウムジチオカーバメートなどの化合物が用いられる。
乳化重合反応の停止後、得られた重合体ラテックスから必要に応じて未反応モノマーを除去し、次いで、必要に応じて硝酸、硫酸等の酸を添加混合してラテックスのpHを所定の値に調整した後、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウムなどの塩を凝固剤として添加・混合し、重合体をクラムとして凝固させる。クラムは、洗浄、脱水後、バンドドライヤーなどで乾燥し、目的とする極性基含有ジエン系ゴムを得ることができる。
その他の極性基含有ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、乳化重合スチレン・アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられ、これらの中でも天然ゴムが好ましい。
極性基を含有しないその他のジエン系ゴムとしては、格別限定はないが、通常のゴム業界で用いられるジエン系ゴムを使用することができる。具体的には、例えば、ポリイソプレンゴム(IR)、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、溶液重合ランダムSBR(結合スチレン5〜50重量%、ブタジエン結合単位部分の1,2−ビニル結合量10〜80%)、高トランスSBR(ブタジエン結合単位部分の1,4−トランス結合量70〜95%)、低シスポリブタジエンゴム(BR)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン結合単位部分の1,4−トランス結合量70〜95%)、スチレン−イソプレン共重合ゴム(SIR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、溶液重合ランダムスチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム(SIBR)、乳化重合SIBR、高ビニルSBR−低ビニルSBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体などのブロック共重合体等が挙げられ、要求特性に応じて適宜選択できる。これらの中でも、BR、IR、SBR、SIBRが好ましい。
本発明で使用するジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、格別な制限はないが、通常10〜200、好ましくは20〜150、より好ましくは25〜120の範囲である。ムーニー粘度がこの範囲にあるときに耐発熱性や加工性が高度にバランスされ好適である。
ジエン系ゴムが芳香族ビニル単位を含有する場合の芳香族ビニル連鎖分布については、格別な制限はないが、芳香族ビニル単位1個の独立鎖の含有量が結合芳香族ビニル量の通常40重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは75重量%以上であり、かつ、芳香族ビニル単位が8個以上連なった芳香族ビニル長連鎖の含有量が、結合芳香族ビニル量の通常5重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下であるものが、耐発熱性、耐摩耗性、ウエットスキッド抵抗性などの諸特性を高値にバランスさせる上で適切である。
本発明で使用するジエン系ゴムは、極性基含有ジエン系ゴム及びその他のジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種をそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
シリカ
シリカとしては、特に制限はなく、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、及び特開昭62−62838号公報に開示されている沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが特に好ましい。
シリカの比表面積は、特に制限はされないが、窒素吸着比表面積(BET法)で、通常50〜400m2/g、好ましくは100〜250m2/g、より好ましくは120〜190m2/gの範囲であるときに、耐発熱性、引張強度、及び加工性等の改善が十分に達成され好適である。窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じBET法で測定される値である。
これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シリカの配合割合は、使用目的に応じて適宜選択され、ジエン系ゴム100重量部に対して、通常10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、より好ましくは30〜120重量部である。
また、本発明においては、シリカとカーボンブラックを併用して用いることができる。カーボンブラックとしては、特に制限はないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどを用いることができる。これらの中でも、特にファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、FEFなどの種々のグレードのものが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、特に制限はないが、通常5〜200m2/g、好ましくは50〜150m2/g、より好ましくは80〜130m2/gの範囲である。また、カーボンブラックのDBP吸油量は、特に制限はないが、通常5〜300ml/100g、好ましくは50〜200ml/100g、より好ましくは80〜160ml/100gの範囲である。
カーボンブラックとして、特開平5−230290号公報に開示されているセチルトリメチルアンモニウムブロマイドの吸着(CTAB)比表面積が110〜170m2/gで24,000psiの圧力で4回繰り返し圧縮を加えた後のDBP(24M4DBP)吸油量が110〜130ml/100gであるハイストラクチャーカーボンブラックを用いることにより、耐摩耗性を改善できる。
シリカとカーボンブラックを併用する場合の混合割合は、用途や目的に応じて適宜選択されるが、シリカ:カーボンブラック(重量比)は、通常10:90〜99:1、好ましくは30:70〜95:5、より好ましくは50:50〜90:10である。
シランカップリング剤
本発明において、シランカップリング剤を添加すると、耐発熱性がさらに改善されるので、好適である。
シランカップリング剤としては、特に限定はないが、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、及び特開平6−248116号公報に記載されているγ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類などを挙げることができる。
これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シランカップリング剤の配合割合は、シリカ100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは2〜10重量部の範囲である。
ゴム組成物
本発明のゴム組成物およびその加硫ゴムは、上記の各成分以外に、常法に従って、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤、老化防止剤、活性剤、可塑剤、滑剤、充填剤等のその他の配合剤をそれぞれ必要量含有することができる。本発明のゴム組成物およびその加硫ゴムは、加硫剤を含有する。
加硫剤としては、特に限定はないが、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルペルオキシド、ジターシャリブチルペルオキシドなどの有機過酸化物;p−キノンジオキシム、p,p′−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4′−メチレンビス−o−クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基を持つアルキルフェノール樹脂;などが挙げられ、これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄が特に好ましい。これらの加硫剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
加硫剤の配合割合は、ジエン系ゴム100重量部に対して、通常0.1〜15重量部、好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。加硫剤の配合割合がこの範囲にあるときに、引張強度に優れるとともに、耐発熱性や残留ひずみ等の特性にも優れるので特に好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;チオカルボアニリド、ジオルトトリルチオウレア、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア等のチオウレア系加硫促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールシクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸鉄、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアミン、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリン等のジチオカルバミン酸系加硫促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸系加硫促進剤;などの加硫促進剤が挙げられる。
これらの加硫促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられるが、少なくともスルフェンアミド系加硫促進剤を含むものが特に好ましい。加硫促進剤の配合割合は、ジエン系ゴム100重量部に対して、通常0.1〜15重量部、好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
加硫活性化剤としては、特に制限はないが、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などを用いることができる。酸化亜鉛としては、例えば、表面活性の高い粒度5μm以下のものを用いるのが好ましく、その具体例としては、粒度が、例えば、0.05〜0.2μmの活性亜鉛華や0.3〜1μmの亜鉛華などを挙げることができる。酸化亜鉛は、アミン系の分散剤や湿潤剤で表面処理したものなどをも用いることができる。
これらの加硫活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。加硫活性化剤の配合割合は、加硫活性化剤の種類により適宜選択される。高級脂肪酸を用いる場合、ジエン系ゴム100重量部に対して、通常0.05〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。酸化亜鉛を用いる場合は、ジエン系ゴム100重量部に対して、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。酸化亜鉛の配合割合がこの範囲にあるときに、引張強度及び加工性の特性が高度にバランスされ好適である。
その他の配合剤の例としては、例えば、シランカップリング剤以外のカップリング剤;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどの活性剤;炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの充填剤;プロセス油、ワックスなどが挙げられる。
本発明のゴム組成物およびその加硫ゴムは、常法に従って各成分を混練することにより得ることができる。例えば、加硫剤と加硫促進剤を除く配合剤とジエン系ゴムを混合後、その混合物に加硫剤と加硫促進剤を混合してゴム組成物を得ることができる。加硫剤と加硫促進剤と除く配合剤とジエン系ゴムの混合温度は、通常80〜200℃、好ましくは100〜190℃、さらに好ましくは140〜180℃であり、混合時間は、通常、30秒以上であり、好ましくは1〜30分間である。加硫剤と加硫促進剤の混合は、通常100℃以下、好ましくは室温〜80℃まで冷却後行われ、その後、通常120〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度でプレス加硫する。