JP4782863B2 - 厚膜のレベリング方法、厚膜のレベリング装置および薄膜el素子の製造方法 - Google Patents

厚膜のレベリング方法、厚膜のレベリング装置および薄膜el素子の製造方法 Download PDF

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本発明は、誘電体、導電体等からなる機能性微粒子を含有する厚膜ペーストを塗布して機能性厚膜を形成する際に用いる塗膜のレベリング方法およびこの方法に用いる装置と、このレベリング方法を利用して薄膜EL素子の誘電体層または電極層を形成する方法とに関する。
導電性、電気絶縁性、強誘電性、半導体性、磁性などの各種機能性を示す粒子や顔料粒子などの機能性微粒子を含有する機能性厚膜を形成する方法は、低コストで生産性がよいという特徴をもち、特にエレクトロニクス分野においては極めて重要な製造技術として知られている。
機能性厚膜を得るには、まず、バインダ樹脂および有機溶媒を含むビークル成分と機能性微粒子とを混練して厚膜ペーストを調製した後、これを塗布(転写を含む)する。塗布には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法、プレートコーター等の各種手法が用いられる。次いで、有機溶媒を蒸発させて塗膜を乾燥することにより、機能性微粒子がバインダ樹脂によって基板上に固定された状態とする。この状態で機能性厚膜として使用することもあるが、用途によっては、乾燥後に塗膜を焼成してバインダ樹脂を分解し、機能性微粒子のみとしたり、さらに機能性微粒子を溶融あるいは焼結したりする。また、バインダ樹脂を用いずに厚膜を形成することも可能である。
たとえば特許文献1(特開平10−208913号公報)では、セラミック絶縁性基板上にAgPd等の微粒子を含有する導電性金属ペーストをスクリーン印刷法によりパターン印刷した後、焼成して電極層を形成し、さらに厚膜抵抗ペーストを同じくパターン印刷、焼成することにより、厚膜抵抗体を作製している。また、同様な技術はセラミック機能性素子を製造する場合にも多用される。例えばNTCサーミスタやガスセンサ等の厚膜型センサにおいても、無機組成としてMnNiCo酸化物微粒子やSnO微粒子を用いた厚膜ペーストを電極上に塗布し、乾燥、焼成することで、機能性厚膜層を形成する。さらに、たとえば特許文献2(特開平5−67693号公報)および特許文献3(特開平7−330474号公報)に記載されているように、薄膜サーマルヘッド用基板として、アルミナ等のセラミック基板上に厚膜ガラスグレーズからなる平坦化層を形成したものが通常用いられる。
このような厚膜作製技術を利用したエレクトロニクスデバイスとして近年開発が進み注目されているものに、たとえば特許文献4(特開平7−50197号公報)に記載された、誘電体厚膜を有する薄膜EL素子がある。
従来実用化されていた薄膜EL素子には、交流駆動されるEL発光層の駆動電流を低く抑えるために薄い誘電体層(薄膜誘電体層)を設けていたが、薄膜誘電体層は絶縁破壊強度が低いという問題があった。これに対し新たに開発された薄膜EL素子は、従来の薄膜誘電体層を、誘電率がより高く絶縁破壊強度が高い厚膜誘電体層に置き換えることで、駆動電流の増大を抑えながら絶縁破壊強度を高くしたものであり、薄膜EL素子の実用性を大幅に改善したものである。
このように、機能性厚膜を形成する方法は、近年特に応用範囲とその重要性を高めている。厚膜ペーストを基板上に塗布する方法としては、特にスクリーン印刷法が、そのパターニング性、量産性、低コスト性、の点から最も重要な技術である。
特開平10−208913号公報 特開平5−67693号公報 特開平7−330474号公報 特開平7−50197号公報
スクリーン印刷法に用いられるスクリーン版は、通常、テトロン、ナイロン等の高分子やステンレス等の金属からなるワイヤメッシュを枠に張り、このワイヤメッシュのうち印刷パターン以外の部分を、レジストなどからなる版膜でマスキング(目止め)することにより形成される。
印刷に際しては、枠内に厚膜ペーストを入れ、スキージと呼ばれるヘラ状の板でスクリーン版の内面を加圧しながらスキージを移動させる。スキージの移動に伴い、厚膜ペーストはスキージにより加圧されて、メッシュの開口部からドット状に押し出され、基板表面に塗膜を形成する。ペーストはある程度の流動性をもつため、ドット状の塗膜を放置すれば、塗膜は平準化(レベリング)する。このためスクリーン印刷法では、通常、印刷後に一定時間塗膜(印刷パターン)を放置してレベリングする工程を設ける。
しかし、従来、スクリーン印刷法は微視的に均一な厚膜層を作る上で問題があることが指摘されている。スクリーン印刷において微視的均一性の良い印刷パターンを形成するためには、厚膜ペーストの流動性を高めてレベリング性を良くすることが必要であるが、ペーストの流動性を高くし過ぎると、印刷時のスクリーン版からの厚膜ペーストの離脱性(通常、版離れ性と言われる)が悪化して印刷が困難になる。そのため、厚膜ペーストの流動性を高くすることで印刷パターンの均一化を図ることには限界がある。
また、前述したように、厚膜ペーストは、通常、比重の高い固形成分である微粒子と比重の低いビークルとの混合体であるため、印刷パターン中において、メッシュの開口部を通してドット状に転写された部分と、印刷直後にドット間にあった部分(ペーストの流動によって埋められた部分)とでは、固形成分の比率が相違し、通常、流動によって埋められた部分では固形成分比率が低くなる。そのため、印刷パターンを乾燥すると、固形成分比率の低い部分が凹む傾向がある。すなわち、メッシュ跡が残りやすい。
さらに、厚膜ペーストがスクリーンを通過する際に、微小な気泡をペースト中に巻き込みやすく、その結果、印刷パターン中に気泡が含まれやすい。
これらの現象のため、スクリーン印刷された厚膜パターンでは、表面のうねり、メッシュ跡、微視的な膜厚の分布、内部空孔等の欠陥の発生が避けられない。
スクリーン印刷された厚膜パターンの微視的不均一性は、たとえば厚膜抵抗体の場合には、抵抗値のバラツキが大きくなる等の問題を引き起こすことが知られている(例えば前記特許文献1(特開平10−208913号公報))。
スクリーン印刷法による厚膜の欠陥が特に問題となる分野としては、厚膜誘電体層を利用した前記薄膜EL素子が挙げられる。この薄膜EL素子の場合、厚膜誘電体層の厚さは、通常、数マイクロメートルから数十マイクロメートルであり、これに対し発光層(薄膜EL層)の厚さは1μm以下である。厚膜誘電体層に欠陥や厚さのばらつきがあると、発光層に印加される電圧にばらつきが発生し、印加電圧/発光輝度特性に異常が生じたり、発光層の面内において輝度ムラが発生してしまう。
ところで、スクリーン印刷法以外、たとえばグラビア印刷法やオフセット印刷法によっても厚膜ペーストの印刷パターンを形成することは可能である。これらの印刷法を用いる場合でも、基板表面の凹凸や塗布ムラなどに起因して塗膜に微視的な不均一が生じてしまうのでレベリング工程を設けるが、これらの方法においても、レベリング性向上のためにペーストの流動性をむやみに高くすることはできない。
本発明の目的は、特にスクリーン印刷法において問題となる機能性厚膜の欠陥発生を防ぎ、微視的にも均一な機能性厚膜の形成を可能とすることにある。
また、本発明の他の目的は、厚膜誘電体層を設けた薄膜EL素子において問題とされている、印刷時に生じる厚膜誘電体層の厚さばらつきや印刷欠陥をなくし、発光層に印加される電圧の面内分布をなくすことにより、輝度ムラがなく高い表示品質が得られる薄膜EL素子を提供することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の厚膜のレベリング方法では、基板上に、少なくとも機能性微粒子と有機溶媒とを含有する厚膜ペーストの塗膜を形成し、この塗膜を昇温させることによりレベリングを行うに際し、塗膜を閉鎖空間内に配置し、前記閉鎖空間に露出している面のうち塗膜を除く部分の温度が、前記塗膜の温度を下回らないように、前記露出している面の温度制御を行う。
前記露出している面のうち塗膜を除く部分の少なくとも一部の温度が、前記塗膜の温度より高くなるように、前記露出している面の温度制御を行うことが好ましい。
前記塗膜はスクリーン印刷法により形成することが好ましい。
前記閉鎖空間は、塗膜をキャップで覆うことにより形成することが好ましい。このとき、閉鎖空間は、前記キャップと前記基板と前記塗膜とに包囲されるものとなる。この場合、前記温度制御には、前記キャップの加熱を利用することが好ましい。また、この場合、前記温度制御には、前記基板の冷却を利用することが好ましい。このような方法に用いるレベリング装置には、前記キャップと、このキャップとを加熱する手段とが設けられ、さらに、必要に応じ、前記基板を冷却する手段が設けられる。
本発明の薄膜EL素子の製造方法では、基板上に、下部電極層、少なくとも1層の誘電体層、発光層および上部電極層をこの順で形成する。前記誘電体層の少なくとも1層および/または前記下部電極層を形成するに際しては、本発明の厚膜のレベリング方法を利用する。
本発明では、機能性微粒子、樹脂および溶媒を含有する厚膜ペーストの塗膜を加熱しながらレベリングする際に、塗膜中の溶媒減少を抑えることができる。そのため、厚膜ペーストの初期粘度を著しく低くしなくてもレベリング時の加熱により塗膜粘度を十分に低くすることが可能となる。したがって本発明では、厚膜ペーストの印刷しやすさを犠牲にすることなく良好なレベリング性を実現できる。
本発明のレベリング方法を、薄膜EL素子の厚膜誘電体層や厚膜電極層を形成する際に利用すれば、薄膜EL素子の発光層に印加される電圧を発光層面内において均一にできるので、輝度ムラのない高い表示品質の薄膜EL素子が得られる。
本発明のレベリング方法において塗膜を加熱したときの溶媒蒸気の挙動を示す図である。 厚膜ペーストの粘度と温度との関係を示すグラフである。 開放空間中で厚膜ペーストの塗膜を加熱したときの溶媒蒸気の挙動を示す図である。 閉鎖空間中で厚膜ペーストの塗膜を加熱したときの溶媒蒸気の挙動を示す図である。 本発明のレベリング方法を実施するための装置の他の一例を示す断面図である。 本発明のレベリング方法を実施するための装置の他の一例を示す断面図である。 薄膜EL素子の構成例を示す断面図である。
前述したように、厚膜ペーストは、機能性微粒子と有機溶媒とを少なくとも含有し、さらに、通常、バインダとなる樹脂も含有する。図2に、典型的な厚膜ペーストについて、ペースト粘度と温度との関係を示す。厚膜ペーストの流動性(粘度)は、ペーストに含有される溶媒量およびペーストの温度に依存し、溶媒量の増大または加熱により流動性の増大(粘度の低下)が生じる。したがって、高温で厚膜ペーストをレベリングすれば、ペーストの流動性増大により良好なレベリング性が期待できる。
しかしながら、温度の増大はペースト中の溶媒の蒸発速度を著しく増大させる結果、ペースト中の溶媒量が急激に減少し、逆にペーストの流動性が低下してしまう。このため、塗膜を単純に加熱するだけではレベリング性の改善は困難である。図3に、開放空間中で塗膜を加熱する場合を例示する。図3では、表面に塗膜100が形成された基板2を、その裏面側から加熱手段200で加熱している。この場合、加熱された塗膜100から蒸発した溶媒蒸気は、図中に矢印で示されるように対流、拡散を通じて開放空間中に取り去られるので、塗膜100表面付近の溶媒蒸気圧は飽和蒸気圧に達することがない。そのため、溶媒は塗膜100から蒸発する一方となって塗膜100中の溶媒量が急減し、塗膜100の流動性がまったく向上しないことは明らかである。
開放空間中でペースト塗膜を加熱することにより上記した問題が生じるので、次に、塗膜を閉鎖空間中で加熱する場合について考える。図4に示すレベリング装置では、基板2表面に厚膜ペーストの塗膜100を形成した後、この塗膜100に対し接触せずに覆うキャップ300を、基板2に密着して設けることにより、キャップ300、基板2および塗膜100によって包囲された閉鎖空間400を構成している。すなわち、塗膜100を閉鎖空間400に閉じ込めている。図4では、図3と同様に基板2裏面側から加熱手段200で加熱しているので、閉鎖空間400内では温度分布が生じている。閉鎖空間400内の露出面(内面)のうち温度がもっとも高いのは、塗膜100の表面Dであり、位置A、B、Cの温度は位置Dの温度より低い。
図4において、塗膜100から蒸発した溶媒は、塗膜100(位置D)の温度における飽和蒸気圧で閉鎖空間400を満たそうとする。しかし、キャップ300内面(位置A、B)は塗膜100(位置D)よりも温度が低いため、ここで結露して液滴500を形成し、結露部近傍での溶媒の蒸気圧は、キャップ300の内面温度における飽和蒸気圧まで低下する。その結果、閉鎖空間400中の溶媒蒸気圧が、塗膜100の温度における飽和蒸気圧より下がるので、塗膜100近傍では気液平衡に達せず、溶媒蒸発による塗膜100の溶媒減少が進んでしまう。その結果、最終的に塗膜100中の溶媒はほとんど放出されてしまう。そのため、閉鎖空間400中で塗膜100を加熱しても、塗膜100の流動性は向上しないことになる。
図4に示す装置で生じる問題を解決するために、本発明では、塗膜100を昇温してレベリングするに際し、塗膜100を閉鎖空間400に閉じ込めると共に、閉鎖空間400の内面(閉鎖空間内で露出している面)のうち塗膜100以外の面の温度が塗膜100の温度を下回らないように、好ましくは、前記露出している面のうち塗膜100を除く部分の少なくとも一部の温度が、塗膜100の温度より高くなるように、温度制御を行う。
図1に、本発明で用いるレベリング装置の一例を示す。この装置は、加熱手段200の位置を基板2側からキャップ300側に移動させたほかは図4に示す装置と同じである。この装置では、閉鎖空間400の内面のうち、加熱手段200からの熱がもっとも伝導しにくいのは塗膜100(位置D)であるため、通常、位置A、B、Cの温度が位置Dの温度を下回ることはなく、位置Dの温度は少なくとも位置Aよりは低くなり、位置B、Cの温度よりも低くなるのが一般的である。ただし、基板2、キャップ300等の各部の材質や熱容量などの条件によっては、キャップ300の加熱だけで上記温度制御を行うことは難しい場合がある。その場合には、キャップ300を加熱すると共に基板2を冷却すれば、容易に上記温度制御を行うことが可能となる。
上記のように閉鎖空間400内面の温度制御をしながら昇温すると、昇温に対応して塗膜100中の溶媒が蒸発するが、
(1)閉鎖空間400の容積が十分小さいこと、
(2)閉鎖空間400内の露出面のうち塗膜100を下回る温度をもつ面が存在しないこと、
(3)閉鎖空間400の容積が小さいため対流現象が起こりがたいこと、
等の効果により、塗膜100からの溶媒蒸発は、閉鎖空間400中の溶媒蒸気圧が塗膜100温度における溶媒飽和蒸気圧となったときに平衡する。すなわち、たとえ結露が発生しても、図1中に矢印で溶媒蒸気の挙動を示すように、その結露位置は閉鎖空間400中で最も低温でかつ溶媒放出源でもある塗膜100である。このため、加熱による塗膜100からの溶媒の蒸発量(減少量)は、閉鎖空間400中の飽和蒸気総量と一致することになる。閉鎖空間400の容積は十分に小さいため、塗膜100を高温に加熱した場合でも塗膜100からの溶媒の蒸発量は微量である。そのため本発明では、塗膜100に関し、溶媒蒸発による粘度増大を実質的に生じさせることなく加熱による粘度低下(流動性向上)を実現できるので、従来に比べ著しく良好なレベリング性が得られる。
本発明の作用効果を十分に発揮させるためには、上記したように閉鎖空間400の容積は小さいほど好ましい。たとえば図1に示す構成では、閉鎖空間400の高さ(図中の上下方向の寸法)をできるだけ小さく、具体的には3mm以下、特に1mm以下とすることが好ましい。閉鎖空間400の高さの下限は特になく、キャップ300が塗膜100に接触しない程度の高さがあればよいが、通常、0.5mm以上とすることが好ましい。
なお、レベリングの際の塗膜温度の最適値およびレベリング処理時間の最適値は、塗膜の粘度、塗膜構成材料などの各種条件に応じて異なる。したがって、本発明においてレベリングの際の塗膜の温度および塗膜以外の閉鎖空間400内面の温度ならびにレベリング処理時間は特に限定されず、上記各種条件に応じてたとえば実験的に決定すればよいが、誘電体層形成などに用いる通常のスクリーン印刷用ペーストに対しては、その塗膜のレベリング処理時の温度を、室温より10℃以上、特に40℃以上高く設定することが好ましい。具体的には、加熱温度は40〜90℃とし、処理時間は1〜20分間とすることが好ましい。加熱温度が低すぎると、レベリングが不十分となりやすい。一方、加熱温度が高すぎると、閉鎖空間中の溶媒蒸気圧が高くなるため、塗膜の乾燥を防ぐために閉鎖空間の気密性を高くする必要が生じ、好ましくない。
通常のスクリーン印刷用ペーストとは、機能性微粒子からなる粉末に対し、バインダを0〜20質量%程度、有機溶媒を10〜60質量%程度含むものである。バインダとしてはたとえばエチルセルロースが用いられ、有機溶媒としてはたとえばターピネオール、ブチルカルビトールが用いられる。
本発明のレベリング方法は、具体的には図5に示すような構成の装置を用いて実施される。図5に示す装置では、キャップ300は、キャップ本体301とスペーサ302とから構成される。キャップ本体301は、温度制御機能を有する抵抗加熱器などからなる加熱手段200を内蔵するホットプレートである。スペーサ302は、シリコーンゴム等の耐熱性弾性体によって構成され、基板2とキャップ本体301との間に所定の空隙を設けて閉鎖空間400を形成すると共に、その閉鎖空間400をほぼ気密に保つために利用される。基板2の裏面において、基板2表面の塗膜100と対称の位置には、金属板等で構成される熱容量の大きな固体から構成される冷却手段600が接触しており、これにより閉鎖空間400内において塗膜100より低い温度の領域が生じないように塗膜100を冷却している。なお、前述したように、冷却手段600を設けることは必須ではない。たとえば基板2の裏面を空気(開放空間)にさらしておくだけでも、空気の対流によって基板2裏面が冷却されるため、このような冷却で十分であれば、冷却手段を設ける必要はない。
なお、上記冷却手段は、閉鎖空間内において塗膜を他の部分と同等またはそれ以下の温度に保つために用いられ、塗膜を室温より低い温度まで冷却するためのものではない。
図6に、本発明のレベリング方法に用いる装置の他の構成例を示す。図6に示す装置において、加熱手段200は図5と同様にキャップ本体301に組み込まれている。表面に塗膜100が形成された基板2は、搬送手段700により支持され、この搬送手段700によりキャップ300直下まで搬送された後、図中上方に移動されてスペーサ302に圧接される。これにより、基板2とキャップ300との間に閉鎖空間が形成される。搬送手段700には、基板2裏面の冷却が可能な位置に冷却手段600として空冷ファンが設けられており、基板2を介して閉鎖空間400内の塗膜100を冷却することが可能となっている。塗膜100のレベリングが終了すると、基板2は搬送手段により図中下方に移動される。このようにして、多数の塗膜100を連続的にレベリング処理することができる。
本発明において閉鎖空間の気密度は著しく高い必要はなく、たとえば図5に示すように、シリコーンゴム等の弾性体から構成したスペーサ302を、ホットプレートなど質量の比較的大きいキャップ本体301の自重で加圧することにより得られる程度の気密度で十分である。ただし、必要に応じ、図6に示すようにスペーサ302と基板2とを圧着させてもよい。必要とされる気密度は、加熱温度や加熱時間に応じて異なるため、具体的には実験的に決定すればよい。
上記した構成例では、キャップ300を加熱することにより閉鎖空間400内面に温度分布を設けているが、これに限らず、たとえば閉鎖空間400内面を均一に加熱した上で、塗膜100だけを冷却または塗膜100を重点的に冷却する構成としてもよい。本発明では、閉鎖空間400内の露出面のうち塗膜100を除く部分の温度が、塗膜100温度を下回らないように温度制御がなされればよく、温度制御手段の具体的構成は特に限定されない。たとえば、基板上の塗膜にキャップをかぶせて塗膜を封入することは必須ではなく、塗膜を形成した基板全体を閉鎖空間に封入するよう構成してもよい。
また、このほか、キャップによって塗膜を封入した基板を、炉中に入れて加熱する構成としてもよい。この場合、炉中におけるキャップ、基板それぞれと熱源との位置関係や、炉中において基板および/またはキャップに接触する部材の熱容量、熱伝導率等を制御することにより、本発明で必要とされる前記温度制御を行うことが可能である。炉としては乾燥炉が好ましく、バッチ炉やベルト搬送式の連続炉等のいずれであってもよい。
従来、スクリーン印刷法によって形成された厚膜パターンの微視的均一性を向上させることは困難であったが、本発明のレベリング方法を用いれば、前記微視的均一性を容易に向上させることが可能である。
厚膜形成法では、前述したように、スクリーン印刷法に限らずたとえばグラビア印刷法やオフセット印刷法を用いた場合でも、印刷された塗膜の平坦性には問題があり、レベリングが必要であった。溶媒蒸発による粘度増大を実質的に生じさせることなく、加熱による塗膜流動性の向上を可能にするという本発明の効果は、スクリーン印刷法以外の印刷法を用いて厚膜を形成する場合にも実現する。
本発明のレベリング方法は、薄膜EL素子において発光層より前(下側)に形成される機能性厚膜の形成に適用する場合に、特に有効である。このような機能性厚膜としては、たとえば電極層および誘電体層が挙げられる。
薄膜EL素子の構成例を図7に示す。この薄膜EL素子は、電気絶縁性を有する基板2上に、下部電極層3、下部誘電体層4、発光層5、上部誘電体層6および上部電極層7をこの順で有する。下部誘電体層4は、厚膜誘電体層41と表面平坦化層42とを積層したものである。下部電極層3および/または厚膜誘電体層41、特に厚膜誘電体層41の形成に際し本発明のレベリング方法を用いれば、発光層5に接する表面平坦化層42の表面が著しく平滑になるので、発光層5に均一な駆動電圧を印加することができる。そのため、均一なEL発光が可能となり、実用性の高いELディスプレイを実現することが可能となる。
次に、図7に示す薄膜EL素子の各部の構成を説明する。
基板2は、電気絶縁性を有し、かつ、その上に形成される下部電極層3および厚膜誘電体層41を汚染することがなく、かつ、所定の耐熱強度を維持できるものであれば特に限定されるものではない。具体的な材料としては、例えばアルミナ(Al)、石英ガラス(SiO)、マグネシア(MgO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ベリリア(BeO)、ジルコニア(ZrO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)等のセラミックや、結晶化ガラス、高耐熱ガラスが挙げられ、このほか、ホウロウ処理を行った金属基板も使用可能である。
下部電極層3の構成材料は、高い導電性が得られ、かつ厚膜誘電体層41形成時の高温酸化性雰囲気によってダメージを受けない必要がある。このような材料としては、Pt、Pd、Ir等の高融点貴金属、Au、Ag等の他の貴金属、Au−Pd、Au−Pt、Ag−Pd、Ag−Pt等の貴金属同士の合金、Ag−Pd−Cu等の貴金属を主成分とし非金属元素を添加した合金が挙げられる。下部電極層3の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法、蒸着法、めっき法、有機金属ペースト(レジネート金属ペースト)を用いた印刷法等の公知の技術を用いることができる。
下部絶縁体層4は、高誘電率でかつ高耐圧であることが必要である。下部絶縁体層4の大部分を厚膜誘電体層41から構成することにより、薄膜誘電体層を用いた場合と比較して100倍以上の高誘電率を達成できる。
ここで、厚膜誘電体層とは、いわゆる厚膜法により形成される誘電体層、すなわち、粉末状の絶縁体材料を焼成して形成されるセラミック層である。厚膜誘電体層41は、例えば、下部電極層3が形成された基板2上に、粉末状の絶縁体材料、バインダおよび溶媒を混合した絶縁体ペーストを印刷して焼成することにより形成できる。また、絶縁体ペーストをキャスティング成膜することによりグリーンシートを形成し、これを下部電極層3が形成された基板2上に積層して焼成することによっても形成できる。
厚膜誘電体層41の構成材料は特に限定されないが、例えば、BaTiO、(BaCa1−x)TiO、(BaSr1−x)TiO、PbTiO、PZT等のペロブスカイト構造を持った(強)誘電体材料や、Pb(Mg1/3Nb2/3)O等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料、BiTi12、SrBiTa等に代表されるビスマス層状化合物、(SrBa1−x)Nb、PbNbO等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料が好ましい。なお、PZTとは、Pb(ZrTi1−xである。これらの中でも、BaTiOやPZT等のペロブスカイト構造を持った強誘電体材料が、誘電率が高く焼成が容易なため好ましい。
厚膜誘電体層41の膜厚は、電極の段差や製造工程のゴミ等によって形成されるピンホールを排除するために厚いことが必要とされ、少なくとも10μm以上、好ましくは20μm以上である。ただし、発光しきい電圧の上昇を防ぐためには、厚膜誘電体層41と表面平坦化層42との合計厚さを100μm以下とすることが好ましい。
表面平坦化層42は、厚膜誘電体層41の表面凹凸による下部絶縁体層4の表面性悪化を軽減することを目的として設けられるため、表面平坦化層42の形成には溶液塗布焼成法を用いることが必要である。
溶液塗布焼成法とは、誘電体材料の前駆体溶液を基板に塗布し、焼成によって誘電体層を形成する方法を指し、例えばゾルゲル法やMOD(Metallo−OrganicDecomposition)法が知られている。
ゾルゲル法とは、一般には溶媒に溶かした金属アルコキシドに所定量の水を加え、加水分解、重縮合反応させてできるM−O−M結合を持つゾルの前駆体溶液を基板に塗布し、焼成することによって膜を形成する方法である。また、MOD法とは、M−O結合を持つカルボン酸の金属塩などを有機溶媒に溶かして前駆体溶液を形成し、基板に塗布し焼成することによって膜を形成する方法である。ここで前駆体溶液とは、ゾルゲル法、MOD法などの膜形成法において原料化合物が溶媒に溶解して生成する中間化合物を含む溶液を指す。
ゾルゲル法とMOD法は完全に別個の方法ではなく、相互に組み合わせて用いることが一般的である。例えばPZTの膜を形成する際、Pb源として酢酸鉛を用い、Ti、Zr源としてアルコキシドを用いて溶液を調製することが一般的である。また、ゾルゲル法とMOD法の二つの方法を総称してゾルゲル法と呼ぶ場合もあるが、いずれの場合も前駆体溶液を基板に塗布し、焼成することによって膜を形成することから、本明細書ではこれらを総称して溶液塗布焼成法という。また、サブミクロンサイズの誘電体粒子と誘電体の前駆体溶液とを混合した溶液も本明細書では前駆体溶液と呼び、その溶液を基板に塗布して焼成する場合も溶液塗布焼成法と称する。
溶液塗布焼成法は、ゾルゲル法、MOD法いずれの場合も、誘電体を構成する化合物がサブミクロン以下のオーダーで均一に混合されるため、厚膜法のような本質的にセラミックス粉体焼結を用いた手法と比較して、極めて低温で緻密な誘電体を合成することが可能である点が特徴である。溶液塗布焼成法を用いる最大の理由は、前駆体溶液を塗布し焼成する工程を経るので、下地の凹み部には厚く凸部には薄く膜が形成され、その結果、この膜の表面に下地表面の凹凸や段差が反映されず、表面が平坦な膜が得られる点にある。従って、溶液塗布焼成法を用いて表面平坦化層42を形成することにより、厚膜誘電体層41表面の粗さが下部絶縁体層4の表面性に反映しなくなり、下部絶縁体層4上に形成される発光層5の均一性を大幅に改善することができる。
表面平坦化層42の膜厚は、厚膜誘電体層41表面の凹凸を十分に埋めることができるように決定すればよいが、通常、0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上とすればよい。なお、厚膜誘電体層41表面の凹凸を埋めることを目的とする場合には、表面平坦化層42の膜厚は10μmを超える必要はない。
表面平坦化層42の比誘電率は少しでも高い方が望ましく、好ましくは100以上、より好ましくは500以上である。このような高誘電率が得られる誘電体材料としては、例えば、BaTiO、(BaCa1−x)TiO、(BaSr1−x)TiO、PbTiO、PZT、PLZT等のペロブスカイト構造を持った(強)誘電体材料や、Pb(Mg1/3Nb2/3)O等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料や、BiTi12、SrBiTa等に代表されるビスマス層状化合物、(SrBa1−x)Nb、PbNbO等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料が好ましく、この中でも特にその基本組成に酸化鉛を含む、例えばPZTやPLZT等の鉛系複合ペロブスカイト構造を持った強誘電体材料が、誘電率が高くかつ700℃以下の比較的低温での合成が容易であるため好ましい。
上部誘電体層6は、設けることは必須ではないが設けることが好ましい。上部誘電体層6を設けることにより、発光層5との界面の電子状態を制御することができるので、発光層5への電子注入を安定化、効率化することができる。上部誘電体層6の構成材料としては、たとえば酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)、酸化タンタル(Ta)、酸化イットリウム(Y)、ジルコニア(ZrO)、シリコンオキシナイトライド(SiON)、アルミナ(Al)を用いることができる。上部誘電体層6の形成には、スパッタリング法や蒸着法、CVD法を用いることができる。
本発明の効果は発光層5の構成材料によらず実現する。したがって、発光層5を構成する蛍光体材料は特に限定されず、MnドープZnSなどのいずれの蛍光体材料を用いてもよい。発光層の膜厚は、特に制限されないが、厚すぎると駆動電圧が上昇し、薄すぎると発光効率が低下する。具体的には、発光体材料にもよるが、好ましくは100〜2000nm程度である。
発光層5の形成には、気相堆積法を用いることができる。気相堆積法としては、スパッタリング法や蒸着法等のPVD法やCVD法(化学的気相堆積法)が好ましい。また、前述したようにSrS:Ceからなる発光層を形成する場合には、HS雰囲気下、エレクトロンビーム蒸着法により成膜中の基板温度を500〜600℃に保持して形成すると、高純度の発光層を得ることが可能である。
発光層5を形成後、アニールを施すことが好ましい。アニールは、発光層5が露出した状態で行ってもよく、キャップアニールとして、発光層5上に上部誘電体層6を形成した後、あるいはさらに上部電極層7を形成した後に行ってもよい。最適なアニール温度は発光層構成材料によって異なるが、SrS:Ceの場合、アニール温度は500℃以上、特に600℃以上かつ厚膜誘電体層41の焼成温度以下とし、処理時間は10〜600分とすることが好ましい。アニールはAr雰囲気中で行うことが好ましい。
この薄膜EL素子では、上部電極層7側から発光を取り出すため、上部電極層7は透明導電材料から構成される。透明導電材料としては、In、SnO、ITO、ZnO−Al等の酸化物導電性材料等を用いることができる。上部電極層7の形成には、スパッタリング法や蒸着法等の公知の技術を用いればよい。上部電極層7の膜厚は、0.2〜1μmとすればよい。
以下の本発明の実施例を具体的に示し、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
表面が研磨された平面寸法10cm□のガラス基板(表面の中心線平均粗さRa=0.004μm)を用意した。また、平均粒径約0.4μmのPb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiO(モル比9:1)粉末原料に若干のPbO−CuO系焼結助剤を添加してなる機能性粉末に、バインダとしてエチルセルロース(ハーキュレス社製、商品名:N200)5質量%と、溶媒としてα−ターピネオール45質量%とを混合することにより、誘電体ペーストを調製した。
次いで、開口部の平面寸法が5cm□であるスクリーンメッシュ版(ステンレスメッシュ#200)を用い、上記ガラス基板の研磨面に自動印刷機により上記誘電体ペーストを1層印刷した。
次に、図5に示される構造のレベリング装置を構成した。70℃に予熱したホットプレート(発熱部の有効寸法20cm×30cm)からなるキャップ本体301に、厚さ1mmの枠状のスペーサ302(シリコーンゴム製、平面寸法10cm□、開口部平面寸法7cm□)を載せ、前記ガラス基板2のペースト印刷面を、ペーストの塗膜100がスペーサ302の開口部内に位置するようにキャップ本体301に対向させて、スペーサ302に密着させた。また、ガラス基板2の裏面側(塗膜100形成位置の裏)に、平面寸法5cm□、厚さ1cmのステンレス・スチール板を冷却手段600として配置して、図5に示される構造の装置を構成した。
ホットプレートからなるキャップ本体301により70℃で10分間加熱することによりレベリングを行った後、ガラス基板2をスペーサ302から引き離し、120℃に加熱した他のホットプレートを用いて塗膜100を乾燥をした。乾燥後のこの塗膜を試料1とする。
また、比較のために、開放空間中において室温で10分間レベリングを行ったほかは試料1と同様にして乾燥塗膜を作製し、これを試料2とした。さらに、比較のために、開放空間中において、70℃に加熱したホットプレート上に基板の裏面を10分間接触させることによりレベリングを行ったほかは試料1と同様にして乾燥塗膜を形成し、これを試料3とした。さらにまた、比較のために、閉鎖空間中において塗膜がもっとも高温となるように温度制御を行ったほかは試料1と同様にして乾燥塗膜を形成し、これを試料4とした。試料4の作製に際しては、基板の裏面(塗膜形成面の反対側の面)にホットプレートを接触させて70℃で10分間加熱した。このとき、キャップ本体301は加熱しなかった。
各試料の表面性は、光学顕微鏡観察および表面粗さにより評価した。この表面粗さは、中心線平均粗さRaであり、デクタック表面粗さ計を用い、50μmのハイパスフィルターを掛けた条件で測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004782863
表1から明らかなように、本発明のレベリング方法を用いた試料1では、通常行われる室温放置のレベリング方法を用いた試料2と比較して、塗膜の表面性が著しく改善されることが明らかである。これは、高温加熱により塗膜の流動性が高まってレベリング性が大幅に向上した結果と考えられる。
比較例の試料3では、室温放置のレベリングを行った試料2と比較しても、表面性の悪化が明らかである。これは、加熱により塗膜中の溶媒が急速に揮発したため、塗膜中の溶媒減少による流動性低下が、加熱による流動性向上効果を上回った結果と考えられる。この結果から、単純な加熱では、塗膜の表面性、均一性の改善が困難であることがわかる。
比較例の試料4では、閉鎖空間中で基板側から加熱したため、図4に示すようにキャップ300の内面で溶媒が結露して液滴500を生じてしまった。これにより塗膜の乾燥が進み、レベリング性がかなり悪くなったことがわかる。
(実施例2)
図7に示す素子構造をもつELパネルを、以下の手順で作製した。
純度99.6%のアルミナ基板2上に、Auペーストをスクリーン印刷法により基板2全面に焼成後の膜厚が1μmとなるように印刷した後、850℃で焼成し、次いで、焼成後の膜をフォトエッチング法によりパターニングして、幅300μm、スペース30μmの多数のストライプからなる下部電極層3を得た。
この下部電極層3が形成された基板2上に、実施例1で調製した誘電体ペーストをスクリーン印刷法により印刷した後、レベリング時の加熱温度を表2に示す値としたほかは実施例1の試料1と同様にして、レベリングおよび乾燥を行った。乾燥後、ベルト炉を用い、十分な空気を供給した雰囲気中において850℃で20分間塗膜を焼成し、厚膜誘電体層41を得た。
次に、溶液塗布焼成法を用いて表面平坦化層42を形成した。この溶液塗布焼成法では、PZTのゾルゲル液を前駆体溶液として用いた。この前駆体溶液を、厚膜誘電体層41の表面にスピンコーティング法にて塗布し、700℃で15分間焼成することを繰り返すことにより、膜厚が1μmの表面平坦化層42を形成した。
前駆体溶液は、以下の手順で調製した。まず、8.49gの酢酸鉛三水和物と4.17gの1,3−プロパンジオールとを混合して約2時間加熱攪拌し、透明な溶液を得た。また、これとは別に3.70gのジルコニウム・ノルマルプロポキシド70質量%1−プロパノール溶液と1.58gのアセチルアセトンとを乾燥窒素雰囲気中で30分間加熱攪拌し、これに3.14gのチタニウム・ジイソプロポキシド・ビスアセチルアセトネート75質量%2−プロパノール溶液と2.32gの1,3プロパンジオールとを加え、さらに2時間加熱攪拌して溶液を調製した。この溶液と前記透明な溶液とを80℃で混合し、乾燥窒素雰囲気中で2時間加熱攪拌し、褐色透明な溶液を作製した。この溶液を130℃で数分間保持することにより副生成物を取り除き、さらに3時間加熱攪拌することにより前駆体溶液を得た。前駆体溶液の粘度調整は、n−プロパノールを用いて希釈することにより行った。
次に、基板を200℃に加熱した状態で、MnをドープしたZnS蒸着源を用い、ZnS:Mnからなる厚さ0.8μmの発光層5を蒸着法により形成した後、真空中において600℃で10分間熱処理した。
次に、上部誘電体層6としてSi薄膜を、上部電極層7としてITO薄膜をそれぞれスパッタリング法により順次形成することにより、ELパネルを得た。上部電極層7は、メタルマスクを成膜時に用いることにより、幅1mmのライン状電極が並ぶストライプ状にパターニングした。
各ELパネルについて、下部電極層3および上部電極層7からそれぞれ電極を引き出して、1kHz、パルス幅50μsにて150Vの電圧をパネル全面に印加し、パネル面内において20箇所で輝度測定を行い、測定値の標準偏差を求めた。結果を表2に示す。
なお、比較のために、厚膜誘電体層41形成の際のレベリングを実施例1の試料2と同様に室温の開放空間中で行ったほかは上記ELパネルと同様にして、比較用のELパネルを作製した。このELパネルについても、輝度の標準偏差を表2に示す。
Figure 0004782863
表2から、本発明のレベリング方法を用いて作製された薄膜EL素子では、発光層面内における輝度の均一性が著しく良好となることがわかる。
2 基板
3 下部電極層
4 下部誘電体層
41 厚膜誘電体層
42 表面平坦化層
5 発光層
6 上部誘電体層
7 上部電極層
100 塗膜
200 加熱手段
300 キャップ
301 キャップ本体
302 スペーサ
400 閉鎖空間
500 液滴
600 冷却手段
700 搬送手段

Claims (3)

  1. 基板上に、下部電極層、少なくとも1層の誘電体層、表面平坦化層、発光層および上部電極層をこの順で形成することにより薄膜EL素子を製造する方法であって、
    前記誘電体層の少なくとも1層が、厚膜のレベリング方法を利用して塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥させた後、前記塗膜を焼結することによって形成され、
    前記厚膜のレベリング方法が、
    スクリーン印刷法によって少なくとも機能性微粒子と有機溶媒とを含有する厚膜ペーストの塗膜を形成し、この塗膜を昇温させることによりレベリングを行うに際し、塗膜をキャップで覆うことにより塗膜を閉鎖空間内に配置し、前記閉鎖空間に露出している面のうち塗膜を除く部分の温度が、前記塗膜の温度を下回らないように、前記キャップを加熱すると共に前記基板を冷却することによって前記露出している面の温度制御を行う厚膜のレベリング方法であり、
    前記表面平坦化層が、溶液塗布焼成法によって形成される、薄膜EL素子の製造方法。
  2. 前記厚膜のレベリング方法が、前記露出している面のうち塗膜を除く部分の少なくとも一部の温度が、前記塗膜の温度より高くなるように、前記露出している面の温度制御を行うものである請求項1記載の薄膜EL素子の製造方法。
  3. 基板上に、スクリーン印刷法によって少なくとも機能性微粒子と有機溶媒とを含有する厚膜ペーストの塗膜を形成し、この塗膜を昇温させることによりレベリングを行う際に用いられる装置であって、
    キャップと、このキャップを加熱する加熱手段と、前記基板を冷却する手段とを有し、
    塗膜をキャップで覆うことにより、キャップと前記基板と前記塗膜とに包囲された閉鎖空間を形成することが可能であり、
    前記閉鎖空間に露出している面のうち塗膜を除く部分の温度が、前記塗膜の温度を下回らないように、前記キャップを加熱すると共に前記基板を冷却することによって前記露出している面の温度制御が行われる厚膜のレベリング装置。
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